(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信系の装置において、光ファイバを伝搬してきた信号光を光導波路に入力して導波させる際に、光導波路に設けたグレーティングカプラを用いている。ここで、
図19を参照して従来のグレーティングカプラを用いた光結合構造を説明する。
【0003】
図19は、従来の光ファイバとグレーティングカプラの結合状態の説明図であり、
図19(a)は透視斜視図であり、
図19(b)は
図19(a)におけるA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。グレーティングカプラは、光導波路91を伝搬中の光をグレーティングカプラ部94に設けたグレーティング(回折格子)95により上方もしくは下方に放射し、外部の光ファイバ96などと結合させる構造である。逆に、反対方向の光ファイバから光導波路への結合にも用いられる。平面構造であることから、フォトリソグラフィー技術で容易に形成可能であり、特に、シリコンフォトニクスにおける光ファイバ・インターフェースの主流となっている。なお、
図19における符号92,93,97,98は、夫々、下部クラッド層、上部クラッド層、コア及びクラッドである。
【0004】
しかし、このような基本構造のままのグレーティングカプラでは原理的に100%の結合効率を期待できない。それには、いくつかの理由があるが、大きな原因の一つにビーム形状の不整合がある。
図20は、グレーティングカプラからの放射ビーム形状の説明図であり、図に示すように、光ファイバは、ガウスビーム様のプロファイルを有する。一方、グレーティングカプラからの放射ビーム形状は、光が次第に減衰していく指数関数形のプロファイルを有する。
【0005】
このミスマッチにより、ベストな状態でも約1dBの損失が発生する。また、製造公差により最適状態からずれると、さらに大きな損失が発生する。この課題は古くから知られており、根本的な解決はグレーティングカプラからガウスビームを放射させることである。
【0006】
指数関数ビームをガウスビーム化するためには、グレーティングと光導波路の結合を、グレーティングカプラの終端に向かって次第に強くしていけば良い。例えば、グレーティングの線幅を変化させることで、ガウスビームを放射させることが提案されている(例えば、特許文献1或いは非特許文献1参照)。しかし、
図20から容易に類推できるように、最も光強度の強い部分を最も弱くさせなければ、ガウスビーム化できない。これは非常に細い線幅を要求することを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態のグレーティングカプラを説明する。
図1は、本発明の実施の形態のグレーティングカプラの説明図であり、
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。グレーティングカプラは、基板11と、基板11上に設けられた第1のクラッド層12と、第1のクラッド層12上に設けられたコア層15と、コア層15上に設けられた第2のクラッド層16を備えている。
【0016】
また、コア層15と第1のクラッド層12或いは第2のクラッド層16のいずれかとの間には、屈折率がコア層15と異なる材料で形成された複数のストライプ状部材からなるグレーティング13
1〜13
3が設けられている。
【0017】
また、ストライプ状部材は複数の区画に区分されて配置されており、ストライプ状部材のコア層15に対向する面の反対側の面とコア層15との間隔hが区画毎に異なっている。また、コア層15とストライプ状部材の間に、コア層15より屈折率の低い低屈折率層14が設けられている。この低屈折率層14は、クラッド層(12,16)と同じ素材であっても良い。
【0018】
具体的には、各区画内に配置されたストライプ状部材を同じ本数の複数本とし、ストライプ状部材のコア層15に対向する面と反対側の面とコア層15との間隔hが、グレーティングカプラの端部に向かって区画毎に順次減少するようにしても良い。この場合は、各区画内においてストライプ状部材の光の導波方向の寸法wをグレーティングカプラの端部に向かって順次増大するようにする。
【0019】
このような関係に設定するためには、コア層15のストライプ状部材に対向する面を、面一の平坦面にして、各区画毎に設けるストライプ状部材を異なった層準に設けても良い。或いは、コア層15のストライプ状部材に対向する面を、各区画毎にコア層15の厚さが異なる段差面として、全てのストライプ状部材を同じ層準に設けるようにしても良い。いずれの場合にも、製造工程の容易性の観点から、グレーティング13
1〜13
3はコア層15と第1のクラッド層12との間に設けることが通常であるが、コア層15と第2のクラッド層16との間に設けても良い。
【0020】
或いは、各区画内に配置されたストライプ状部材を同じ本数の複数本とし、ストライプ状部材のコア層15に対向する面の反対側の面とコア層との間隔hが、グレーティングカプラの端部に向かって区画毎に順次増大するようにしても良い。この場合には、各区画内においてストライプ状部材の光の導波方向の寸法w及びストライプ状部材の厚さdをグレーティングカプラの端部に向かって次増大するようにすれば良い。
【0021】
なお、ストライプ状部材が配置された区画数は2乃至4が典型的な値である。但し、各区画に配置されたストライプ状部材を1本とし、全てのストライプ状部材の厚さdと光の導波方向の寸法wを同じにしても良い。但し、この場合には、特性の設計が容易であるが、成膜工程が大幅に増加する。
【0022】
グレーティング13
1〜13
3に用いる材料は、Si、Si
3N
4、石英ガラス、光学ガラス、樹脂、半導体などを用いることができる。それぞれの材料を用いた場合の寸法はFDTD法(Finite−difference time−domain method)などを用いて求めることができる。また、低屈折率層としてはSiO
2やSiONを用いる。また、基板11としてはガラス基板でも良いが、シリコンフォトニクス技術との整合性の観点からはSOI基板を用いることが望ましい。
【0023】
一例を挙げれば、伝搬光の波長を1.55μmとし、クラッド層として屈折率が1.44のSiO
2を用い、厚さが1μmのコア層として、屈折率が1.48のSiONを用い、グレーティングとして、屈折率が2.00のSi
3N
4を用いる。区画数を3とし、各区画内のストライプ状部材の本数を7本(なお、図においては、図示の都合で5本にしている)とし、ストライプ状部材のピッチを0.909μmとして、全体の長さを約20μmにする。ストライプ状部材の幅はピッチの40%〜60%とし、ストライプ状部材の厚さを0.25μmとする。また、ストライプ状部材の頂面とコア層15の底面との間隔は、1.05μm、0.90μm、0.85μmとする。
【0024】
このグレーティングカプラの端部においてグレーティングと光結合するように光ファイバを設け、グレーティングカプラの端部と反対方向に延在するように光導波路を設けることによって光導波路装置が得られる。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態のグレーティングカプラの放射ビーム形状のシミュレーション結果の説明図である。ここでは、ストライプ幅を450nmとした従来の均等グレーティングカプラと、特許文献1或いは非特許文献1で提案されているストライプ幅を200nmから順次増大させたグレーティングカプラの放射ビーム形状を併せて示している。なお、本発明のグレーティングカプラとしては、区画を3区画とし、最小ストライプ幅を360nmとしてシミュレーションを行った。
【0026】
ストライプ幅を450nmとした従来の均等グレーティングカプラからの放射ビーム形状は指数関数的であるが、本発明のグレーティングカプラの放射ビーム形状はガウスビーム形状に近くなっている。また、最小ストライプ幅が200nmの特許文献1或いは非特許文献1で提案されているグレーティングカプラとの比較では、最小ストライプ幅が360nmであるにも拘わらず、ほぼ理想的なガウスビームが得られている。この360nmはi線ステッパ露光装置で実現できる寸法であり、露光装置を選ばずに理想的なグレーティングカプラを実現することができる。
【0027】
本発明によれば、グレーティングとコアとの間の距離を変えることで、グレーティングとコアの結合を調節しているので、現実的に形成可能な線幅を用いながらも、ガウスビーム放射するグレーティングカプラを得ることができる。さらに、区画内でグレーティングのストライプの幅を変化させることを併用すると、さらに効率が向上する。
【実施例1】
【0028】
次に、
図3乃至
図8を参照して、本発明の実施例1のグレーティングカプラを説明する。
図3は、本発明の実施例1のグレーティングカプラの説明図であり、単結晶Si基板21上に下部クラッド層となるBOX層22を介して3区画に分けて単結晶Si層からなるグレーティング25
1〜25
3を設ける。これらのグレーティング25
1〜25
3を覆うように、SiO
2膜からなる低屈折率層26を設け、グレーティング25
1〜25
3の区画毎に被覆する厚さを変えてグレーティングカプラの終端に向かって次第に回折強度を大きくする。この低屈折率層26上にSiON膜からなるコア層29を設け、その表面を平坦化したのち所定形状にパターニングし、SiO
2膜からなる上部クラッド層31で被覆する。
【0029】
図4は、本発明の実施例1のグレーティングカプラと光ファイバの結合状態の説明図であり、
図4(a)は透視斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)におけるA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。グレーティングカプラは、光導波路を伝搬中の光をグレーティング25
1〜25
3により上方に放射して、外部の光ファイバ96に光を導出する。
【0030】
次に、
図5乃至
図8を参照して、本発明の実施例1のグレーティングカプラの製造工程を説明する。まず、
図5(a)に示すように、単結晶Si基板21上に下部クラッド層となるBOX層22を介して厚さが0.1μm〜0.5μmの単結晶Si層23を設けたSOI基板20を準備する。この単結晶Si層23上に7本で1セットになった端部に向かって順次幅が広くなるストライプ状のレジストパターン24を区画に対応するように3セット設ける。なお、図示の関係で図では5本で1セットにしている。
【0031】
次いで、
図5(b)に示すように、レジストパターン24をマスクとしてドライエッチングにより単結晶Si層23をエッチングしてグレーティング25
1〜25
3を形成する。次いで、
図5(c)に示すように、レジストパターン24を除去したのち、グレーティング25
1〜25
3を覆うように、SiO
2膜からなる低屈折率層26を設ける。なお、この時、CMP(化学機械研磨)法を用いて、グレーティング25
1〜25
3上の膜厚が0.5μm〜2μmになるように平坦化する。
【0032】
次いで、
図6(d)に示すようにグレーティング25
1を覆うようにレジストパターン27を設ける。次いで、
図6(e)に示すように、低屈折率層26の厚さが約1/2になるようにドライエッチングする。
【0033】
次いで、
図6(f)に示すように、レジストパターン27を除去したのち、グレーティング25
1,25
2を覆うようにレジストパターン28を設ける。次いで、
図7(g)に示すように、低屈折率層26をドライエッチングする。図ではグレーティング25
3を露出させているが、低屈折率層26を残しても良い。次いで、
図7(h)に示すようにレジストパターン28を除去することによって、低屈折率層26によって階段状に覆われたグレーティング25
1〜25
3が得られる。
【0034】
次いで、
図7(i)に示すように、コア材料のSiON膜を堆積させたのち、グレーティング25
1上の厚さが1μmになるようにCMP法で研磨して平坦化してコア層29を形成する。次いで、
図8(j)に示すように、コア形状のレジストパターン30を形成する。
【0035】
次いで、
図8(k)に示すように、レジストパターン30をマスクとしてコア層29を所定形状にパターニングする。次いで、
図8(l)に示すように、レジストパターン30を除去したのち、全面にSiO
2膜を堆積させたのち、平坦化研磨を行うことによって、上部クラッド層31とすることによって、本発明の実施例1のグレーティングカプラの基本構造が完成する。
【0036】
本発明を用いることで、ガウスビームを出射するグレーティングカプラを容易に実現することができる。特に、汎用の解像度の露光精度を用いても、高精度のガウスビームを得ることができる。これにより、光ファイバとの高効率な結合を期待でき、高性能な光導波路装置を実現することができる。また、グレーティング層はSOI基板の単結晶Si層を用いているため、グレーティング層の成膜工程が不要であり、また、低屈折率層の成膜工程も一度で済むので製造工程が簡素になる。
【実施例2】
【0037】
次に、
図9乃至
図14を参照して、本発明の実施例2のグレーティングカプラを説明する。
図9は、本発明の実施例2のグレーティングカプラの説明図であり、単結晶Si基板41上に下部クラッド層となるBOX層42を介して3区画に分けて単結晶Si層或いは多結晶Si層或いはSi
3N
4層からなるグレーティング45
1〜45
3を設ける。これらのグレーティング45
1〜45
3は、SiO
2膜からなる低屈折率層46
1〜46
3により各区画毎に3段階に分かれて、グレーティング45
1〜45
3の底面とコア層48との間隔をグレーティングカプラの終端に向かって次第に狭くして回折強度を大きくする。この低屈折率層46
3上にSiON膜からなるコア層48を設け、その表面を平坦化したのち、所定形状にパターニングし、SiO
2膜からなる上部クラッド層50で被覆する。
【0038】
図10は、本発明の実施例2のグレーティングカプラと光ファイバの結合状態の説明図であり、
図10(a)は透視斜視図であり、
図10(b)は
図10(a)におけるA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った断面図である。グレーティングカプラは、光導波路を伝搬中の光を3段階に区画されたグレーティング45
1〜45
3により上方に放射して、外部の光ファイバ96に光を導出する。
【0039】
次に、
図11乃至
図14を参照して、本発明の実施例2のグレーティングカプラの製造工程を説明する。まず、
図11(a)に示すように、単結晶Si基板41上に下部クラッド層となるBOX層42を介して厚さが0.1μm〜0.5μmの単結晶Si層43を設けたSOI基板40を準備する。この単結晶Si層43上に7本で1セットになった端部に向かって順次幅が広くなるストライプ状のレジストパターン44
1を第1の区画に対応するように設ける。なお、図示の関係で図では5本で1セットにしている。
【0040】
次いで、
図11(b)に示すように、レジストパターン44
1をマスクとしてドライエッチングにより単結晶Si層43をエッチングして第1の区画のグレーティング45
1を形成する。次いで、
図11(c)に示すように、レジストパターン44
1を除去したのち、グレーティング45
1を覆うように、SiO
2膜からなる低屈折率層46
1を設ける。次いで、CMP法を用いて、平坦化する。図では、グレーティング45
1の頂面が露出しているが、低屈折率層46
1を残しても良い。
【0041】
次いで、
図12(d)に示すようにグレーティング45
1を覆うように厚さが0.1μm〜0.5μmの多結晶Si層47
1を堆積させたのち、第2の区画に対応する1セットのレジストパターン44
2を設ける。なお、このレジストパターン44
2は配置場所が異なるだけで、レジストパターン44
1と同じパターンである。次いで、
図12(e)に示すように、レジストパターン44
2をマスクとしてドライエッチングを行うことによってグレーティング45
2を形成する。
【0042】
次いで、
図12(f)に示すように、レジストパターン44
2を除去したのち、グレーティング45
2を覆うように、SiO
2膜からなる低屈折率層46
2を設ける。次いで、CMP法を用いて、平坦化する。図では、グレーティング45
2の頂面が露出しているが、低屈折率層46
2を残しても良い。
【0043】
次いで、
図13(g)に示すようにグレーティング45
2を覆うように厚さが0.1μm〜0.5μmの多結晶Si層47
2を堆積させたのち、第3の区画に対応する1セットのレジストパターン44
3を設ける。なお、このレジストパターン44
3は配置場所が異なるだけで、レジストパターン44
1と同じパターンである。次いで、
図13(h)に示すように、レジストパターン44
3をマスクとしてドライエッチングを行うことによってグレーティング45
3を形成する。
【0044】
次いで、
図13(i)に示すように、レジストパターン44
3を除去したのち、グレーティング45
3を覆うように、SiO
2膜からなる低屈折率層46
3を設ける。次いで、CMP法を用いて、平坦化する。図では、グレーティング45
3の頂面が露出しているが、低屈折率層46
3を残しても良い。次いで、
図14(j)に示すように、全面にSiON膜を成膜したのち、CMP法により厚さが1μmになるように平坦化研磨を行って、コア層48を形成する。
【0045】
次いで、
図14(k)に示すように、コア形状のレジストパターン49を形成し、このレジストパターン49をマスクとしてコア層48を所定形状にパターニングする。次いで、
図14(l)に示すように、レジストパターン49を除去したのち、全面にSiO
2膜を堆積させ、次いで、平坦化研磨を行うことによって、上部クラッド層50とすることによって、本発明の実施例2のグレーティングカプラの基本構造が完成する。
【0046】
本発明の実施例2を用いることで、実施例1の場合と同様に、ガウスビームを出射するグレーティングカプラを容易に実現することができる。特に、汎用の解像度の露光精度を用いても、高精度のガウスビームを得ることができる。これにより、光ファイバとの高効率な結合を期待でき、高性能な光導波路装置を実現することができる。また、コア層は均一な厚さであるので、光学的特性の設計が容易になる。
【実施例3】
【0047】
次に、
図15を参照して本発明の実施例3のグレーティングカプラを説明する。
図15は本発明の実施例3のグレーティングカプラの説明図であり、
図15(a)はグレーティングカプラの断面図であり、
図15(b)乃至
図15(d)は製造工程の一部の説明図である。なお、グレーティング形成後の工程は上記の実施例1或いは実施例2と同様である。
【0048】
図15(a)に示すように、単結晶Si基板61上にSiO
2膜からなる下部クラッド層62を介して3区画に分けて多結晶Si層或いはSi
3N
4層からなるグレーティング65
1〜65
3を設ける。これらのグレーティング65
1〜65
3は、SiO
2膜からなる低屈折率層46
1〜46
3により各区画毎に厚さが異なり、グレーティング65
1〜65
3の底面とコア層66との間隔をグレーティングカプラの終端に向かって次第に大きくして回折強度を大きくする。このグレーティング65
1〜65
3に接するようにSiON膜からなるコア層66を設け、その表面を平坦化した後、SiO
2膜からなる上部クラッド層67で被覆する。
【0049】
このような構造を形成するためには、まず、
図15(b)に示すように、下部クラッド層62上にSiO
2膜からなる低屈折率層63
1を設けたのち、実施例1と同様に3区画に応じて3段階のエッチングを行う。次いで、
図15(c)に示すように、多結晶Si層64を堆積したのち、平坦化研磨を行う。次いで、
図15(d)に示すように、多結晶Si層64をエッチングすることによって、各区画毎に厚さの異なるグレーティング65
1〜65
3を形成する。
【0050】
以降は、図示を省略するが、全面にSiO
2膜からなる低屈折率層63
2を堆積したのち、グレーティング65
1〜65
3の頂面が露出するように平坦化研磨する。以降は実施例2と同様に、SiON膜からなるコア層66を形成したのち、所定の形状にパターニングし、SiO
2膜からなる上部クラッド層67を設けることによって、本発明の実施例3のグレーティングカプラの基本構造が完成する。
【0051】
本発明の実施例3においては、グレーティングのストライプ状部材の厚さを変化させて回折強度を調整しているので、簡単な製造工程で且つ均一な厚さのコア層を有するグレーティングカプラを実現することができる。なお、その他の作用効果は、上記の実施例1と同様である。
【実施例4】
【0052】
次に、
図16を参照して本発明の実施例4のグレーティングカプラを説明する。
図16は本発明の実施例4のグレーティングカプラの説明図であり、
図16(a)はグレーティングカプラの断面図であり、
図16(b)乃至
図16(d)は製造工程の一部の説明図である。なお、基本的な製造工程は、上記の実施例3と同様である。
【0053】
図16(a)に示すように、単結晶Si基板61上にSiO
2膜からなる下部クラッド層62を介して3区画に分けて多結晶Si層或いはSi
3N
4層からなるグレーティング65
1〜65
3を設ける。これらのグレーティング65
1〜65
3は、SiO
2膜からなる低屈折率層46
1〜46
3により各区画毎に厚さが異なり、グレーティング65
1〜65
3の底面とコア層66との間隔をグレーティングカプラの終端に向かって次第に大きくして回折強度を大きくする。このグレーティング65
1〜65
3に接するようにSiON膜からなるコア層66を設け、その表面を平坦化したのち所定形状にパターングし、SiO
2膜からなる上部クラッド層67で被覆する。但し、この実施例4においては、グレーティング65
1〜65
3の頂面とコア層66との間に薄い低屈折率層63
2を介在させる。
【0054】
このような構造を形成するためには、実施例3と同様に、まず、
図16(b)に示すように、下部クラッド層62上にSiO
2膜からなる低屈折率層63
1を設けたのち、実施例1と同様に3区画に応じて3段階のエッチングを行う。次いで、
図16(c)に示すように、多結晶Si層64を堆積したのち、平坦化研磨を行う。次いで、多結晶Si層64をエッチングすることによって、各区画毎に厚さの異なるグレーティング65
1〜65
3を形成する。
【0055】
次いで、
図16(d)に示すように、全面にSiO
2膜からなる低屈折率層63
2を堆積したのち、グレーティング65
1〜65
3の頂面が露出しない程度に平坦化研磨する。以降は実施例2と同様に、SiON膜からなるコア層66を形成したのち所定形状にパターングし、SiO
2膜からなる上部クラッド層67を設けることによって、本発明の実施例4のグレーティングカプラの基本構造が完成する。
【0056】
本発明の実施例4においても、グレーティングのストライプ状部材の厚さを変化させて回折強度を調整しているので、簡単な製造工程で且つ均一な厚さのコア層を有するグレーティングカプラを実現することができる。この構造は実施例3のグレーティングの作用が強すぎる場合に有効である。なお、その他の作用効果は、上記の実施例1と同様である。
【実施例5】
【0057】
次に、
図17を参照して本発明の実施例5のグレーティングカプラを説明する。
図17は本発明の実施例5のグレーティングカプラの説明図であり、
図17(a)はグレーティングカプラの断面図であり、
図17(b)乃至
図17(d)は製造工程の一部の説明図である。なお、この実施例5のグレーティングカプラは、実施例2のグレーティングを上部クラッド層側に設けたものに相当する。
【0058】
図17(a)に示すように、単結晶Si基板71上にSiO
2膜からなる下部クラッド層72を介してSiON膜からコア層73を設ける。このコア層73上に3区画に分けて多結晶Si層或いはSi
3N
4層からなるグレーティング75
1〜75
3を設ける。これらのグレーティング75
1〜75
3は、SiO
2膜からなる低屈折率層74
1〜74
3により各区画毎にグレーティング75
1〜75
3の頂面とコア層73との間隔をグレーティングカプラの終端に向かって次第に狭くして回折強度を大きくする。このグレーティング75
1〜75
3に接するようにSiO
2膜からなる上部クラッド層76で被覆する。
【0059】
このような構造を形成するためには、まず、
図17(b)に示すように、下部クラッド層72上にSiON膜からなるコア層73を設け、その上に、SiO
2膜からなる低屈折率層74
1を介して多結晶Si層を設ける。次いで、多結晶Si層をエッチングすることによって第3の区画に対応するグレーティング75
3を形成する。
【0060】
次いで、
図17(c)に示ように、SiO
2膜からなる低屈折率層74
2及び多結晶Si層を堆積したのち、多結晶Si層をエッチングすることによって第2の区画に対応するグレーティング75
2を形成する。次いで、
図17(d)に示ように、SiO
2膜からなる低屈折率層74
3及び多結晶Si層を堆積したのち、多結晶Si層をエッチングすることによって第1の区画に対応するグレーティング75
1を形成する。
【0061】
以降は図示を省略するが、SiO
2膜からなる低屈折率層74
4を設けたのち、グレーティング75
1〜75
3を含めてコア層73を所定形状にパターンングする。次いで、SiO
2膜からなる上部クラッド層76を設けることによって、本発明の実施例5のグレーティングカプラの基本構造が完成する。
【0062】
本発明の実施例5においては、グレーティングを上部クラッド層側に設けているだけで、上記実施例2と同様の作用効果が得られる。
【実施例6】
【0063】
次に、
図18を参照して本発明の実施例6のグレーティングカプラを説明する。
図18は本発明の実施例6のグレーティングカプラの説明図であり、区画を細分化して1区画1ストライプと、各グレーティングとなるストライプを同じ幅且つ同じ厚さにしたものである。
【0064】
図18に示すように、単結晶Si基板81上にSiO
2膜からなる下部クラッド層82を介して低屈折率層83に埋め込まれたストライプからなるグレーティング84を形成する。このグレーティング84を含む低屈折率層84上にSiON膜からなるコア層85を設け、所定形状にパターンングし、次いで、SiO
2膜からなる上部クラッド層86で被覆する。
【0065】
このような構造を形成するためには、破線で引き出した円内に示すように、上記の実施例5と同様の手法で、1本のストライプ毎に成膜工程及びエッチング工程を繰り返す。即ち、まず、下部クラッド層82上にSiO
2膜からなる薄い低屈折率層83
1を介して多結晶Si層を設ける。次いで、多結晶Si層をエッチングすることによって1本のストライプからなる第1のグレーティング84
1を形成する。
【0066】
次いで、SiO
2膜からなる薄い低屈折率層83
2及び多結晶Si層を堆積したのち、多結晶Si層をエッチングすることによって1本のストライプからなる第2のグレーティング84
2を形成する。この工程をストライプの数だけ繰り返すことによって、グレーティング84
1,84
2上には薄い低屈折率層83
3,83
4,83
5・・・が順次積層される。
【0067】
本発明の実施例6においては、同じ幅で同じ膜厚のストライプによって段階的に変化するグレーティングを設けているので、光学的設計が容易になる。その他の作用効果は上記の実施例1と同様である。