【実施例】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はタイヤデフレクタ装置を示し、
図1は当該タイヤデフレクタ装置を備えた車両の要部正面図、
図2は
図1の左側面図、
図3は
図1の底面図、
図4はタイヤデフレクタ装置を備えた車両を、斜め下方から見上げた状態で示す斜視図である。
【0020】
図1〜
図4において、エンジンルームの前方に位置するフロントバンパフェース10を設け、このフロントバンパフェース10の車幅方向中央部には、
図1に示すように、フロントグリル11を設けると共に、上述のフロントバンパフェース10の車幅方向左右両サイド下部には、走行風導入部12(但し、図面では車両左側の走行風導入部12のみを示す)を設けている。
【0021】
上述のフロントバンパフェース10の車幅方向両端後部には、エンジンルームの側方部を覆うフロントフェンダパネルを連続して取付ける一方、前輪13(いわゆるフロントタイヤ)の上側過半部を離間して覆うホイールハウス部14を形成している。
【0022】
上述のホイールハウス部14は、ホイールハウスインナとホイールハウスアウタとを備えており、これらホイールハウスインナとホイールハウスアウタとで形成されたホイールアーチ部の前輪13対向面側には、
図3に示すように、スプラッシュシールド(splash sealed、いわゆる泥除け部材)15が設けられている。
【0023】
図1に示すように、車両前後方向から見て下方に凸状のデフレクタ20が前輪13前方の車両底部に配置されている。図面では車両左側の前輪13前方におけるデフレクタ20のみを示すが、車両右側の前輪前方においても、車両左側のデフレクタ20と左右対称構造または左右略対称構造のデフレクタが配置されている。
【0024】
図3、
図4に示すように、左右のデフレクタ20間における車両底部には、当該車両底部を流れる走行風を整流するためのアンダカバー16(詳しくは、センタアンダカバー)が設けられている。
【0025】
図5はデフレクタ20をスプラッシュシールド15に取付けた状態の斜視図、
図6はデフレクタ20を単体で示す拡大底面図、
図7はデフレクタ20単体を車両の斜め下方から見上げた状態で示す拡大斜視図、
図8の(a)はデフレクタ20単体の拡大正面図、
図8の(b)はデフレクタ20単体の拡大側面図、
図9の(a)は
図6のA−A線に沿う要部の矢視断面図、
図9の(b)は縦壁部構造の他の実施例を示す部分拡大断面図である。また、
図10の(a)は
図6のX−X線矢視断面図、
図10の(b)は
図6のY−Y線矢視断面図である。
【0026】
図3、
図6に示すように、上述のデフレクタ20は、車幅方向内側に位置する第1導風部21と、車幅方向外側に位置する第2導風部22と、上記第1導風部21と第2導風部22とを車両上下方向につなぐと共に車両前後方向に延びる連結部としての側壁26とを、合成樹脂や繊維強化プラスチックなどの材料により一体形成したものであって、該デフレクタ20を車両底部に取付けた時、
図3に示すように、上述の第1導風部21は、車幅方向で上述の前輪13と重複しない位置にあり、上述の第2導風部22は、車幅方向で上述の前輪13に重複する位置にある。
【0027】
図6、
図7、
図8に示すように、上述の第1導風部21は、車両前後方向に延び、かつ、後ろ下がりに傾斜する緩斜面23を有している。この実施例では、該緩斜面23の仮想水平線に対する傾斜角度を約10度に設定しているが、この数値に限定されるものではない。
【0028】
図6、
図7、
図8に示すように、上述の第2導風部22は、車両前方からの走行風を後方に案内する案内面として車両前後方向に延びる略水平な平坦面24と、この平坦面24の後部から斜め下方に延びると共に、車幅方向に延びる縦壁部25と、を有している。この縦壁部25の車幅方向に延びる長さは、平坦面24後部の車幅方向の長さに略相当する。
【0029】
そして、上述の案内面としての平坦面24は上述の緩斜面23よりも地上高が高くなるように配置されている。つまり、平坦面24は緩斜面23に対して上方に凹むように形成されている。
【0030】
これにより、車幅方向で前輪13に重複しない走行風、つまり、第1導風部21を通る走行風は、車両前方からそのまま車両後方に流し、車幅方向で前輪13と重複する走行風、つまり、第2導風部22を通る走行風のみを前輪13に当たらないように、一旦縦壁部25に当てた後に、この縦壁部25にて走行風の流れを下方、かつ、車幅方向外側に変更することにより、前輪13直撃後の走行風がホイールハウス部14内に巻込まれることを抑制して、前輪13周りのCd値向上を図るよう構成したものである。
【0031】
図6、
図7に示すように、第1導風部21における緩斜面23の車幅方向外部と、第2導風部22における平坦面24の車幅方向内部と、は上下方向に延びる側壁26で連結されている。
【0032】
また、
図3、
図6に示すように、上述の第1導風部21と第2導風部22とは隣接して配置されると共に、これら第1導風部21と第2導風部22との境界部27、換言すれば、上記側壁26の下端部は、
図3に示すように、前輪13の最内側(車幅方向の最も内側)よりもさらに車幅方向内側に位置するように形成されている。
【0033】
このように、上述の境界部27を、前輪13の最内側よりも車幅方向内側に位置させることで、第2導風部22を通る走行風がホイールハウス部14内へ巻込まれることを防止するよう構成したものである。
【0034】
ここで、上述の境界部27は、前輪13の最内側よりも5〜40mm車幅方向内側に位置することが好ましい。
【0035】
すなわち、5mm未満の場合には、斜め前方から流入してくる走行風が前輪13に当たり、ホイールハウス部14内に走行風が入ることで、Cd値が悪化する一方、40mmを超過する場合には、ホイールハウス部14内に本来入らない走行風までも第2導風部22の平坦面24、縦壁部25にて下向きに制御することになり、縦壁部25下端で剥離が生じることにより、Cd値が悪化する。このため、上述の範囲内が好ましいものである。
【0036】
図5、
図6に示すように、上述の緩斜面23の前部と、上述の平坦面24の前部乃至車幅方向外端部とには、上下方向寸法が比較的小さい立上り片28を介してフランジ部29が一体連結されている。
【0037】
また、
図5、
図6、
図7に示すように、上述の緩斜面23の車幅方向内端部には、上下方向寸法が比較的小さい立上り片30を介してフランジ部31が一体連結されている。
【0038】
ここで、上述の立上り片28およびフランジ部29は、平面視で略円弧形状に形成される一方、上述の立上り片30およびフランジ部31は、平面視で車両前後方向に延びる直線形状に形成されている(
図6参照)。
【0039】
また、上述の立上り片28とフランジ部29とは、断面L字状(詳しくは、横向きL字状)になるように連結されており、同様に、上述の立上り片30とフランジ部31とは、断面L字状(詳しくは、横向きL字状)になるように連結されており、これにより、デフレクタ20の剛性向上を図るよう構成している(
図7参照)。
【0040】
さらに、上述の各フランジ部29,30には、車両底部に対する複数の取付け部32…が形成されている。
【0041】
一方、
図5に示すように、デフレクタ20の後端部、詳しくは、緩斜面23、平坦面24、側壁26および各フランジ部29,31の後端部には、スプラッシュシールド15の前部下端における湾曲形状に沿うように、上下方向に延びる取付け片33が一体形成されており、該取付け片33には複数の取付け部34…が形成され、該取付け部34を用いて、取付け片33をスプラッシュシールド15の前部下端前面に取付けることで、デフレクタ20を当該スプラッシュシールド15に支持すべく構成している。
【0042】
図2に示すように、車両上下方向において上述の緩斜面23の車両後方への延長線(EXT)上に対し、ロアアームなどのサスペンションアームやスタビライザ等の前輪懸架部品やステアリングロッド等の前輪操舵部品が重複しないように構成している。
【0043】
上述の第1導風部21を通る走行風は、緩斜面23にて緩やかに下方に傾斜して車両後方に流れるが、この場合、前輪13(特に、そのナックル部)に連結されたサスペンションアーム等の前輪懸架部品やステアリングロッド等の前輪操舵部品に走行風が当たらないように上述の緩斜面23の傾斜角度を設定することで、走行風の整流化を図るよう構成したものである。
【0044】
図7に示すように、上述の縦壁部25の下端と、上述の緩斜面23の後端との車両上下方向の高さは略同等と成している。
【0045】
このように、デフレクタ20後端部において縦壁部25下端と、緩斜面23後端との高さを揃えることで、縦壁部25の境目に付勢される応力集中を効果的に分散し、デフレクタ20後端部の剛性向上を図るよう構成したものである。
【0046】
ところで、
図6、
図7、
図10に示すように、上述の第1導風部21と連結部としての側壁26との境界部27は、湾曲形状の湾曲部40に形成されている。つまり、第2導風部22の平坦面24は第1導風部21の緩斜面23に対して地上高が高く形成されているので、上述の平坦面24と緩斜面23との間には、
図4、
図7に示すように、側壁26の高さに略相当する上下方向の段差が形成される。そこで、両者24,23間の境界部27を湾曲形状の湾曲部40にて連設したものである。
【0047】
これにより、車幅方向の内側前方から斜め外方に向けて流れてくる走行風が、第1導風部21から第2導風部22へと流れる時、第1導風部21と第2導風部22との段差間に存在する湾曲部40に沿うように流れ、湾曲部40で走行風が剥離することなく第2導風部22に流れ、その後、第2導風部22後部の縦壁部25に当たるように制御されることで、走行風がホイールハウス部14内に侵入することを防止して、前輪13周りのCd値向上を図るよう構成したものである。
ここで、上述の湾曲部40はその断面曲げ半径が5mmから40mmの範囲内で形成されている。
【0048】
すなわち、湾曲部40の断面曲げ半径が5mm未満の場合には、走行風が剥離される一方で、湾曲部40の断面曲げ半径が40mmを超過する場合には、デフレクタ20それ自体が大型化して、地上高が低くなるため、上記範囲内に設定するものである。
【0049】
このように、湾曲部40の断面曲げ半径を5〜40mmの範囲内に設定することで、車幅方向内側前方から斜め外方に向けて流れる走行風を確実に制御して、第1導風部21から第2導風部22へ走行風が流れる時、その剥離をより一層確実に防止すべく構成したものである。
【0050】
また、上述の湾曲部40は第1導風部21の車幅方向外側の前端部から後端部にかけて車両前後方向に連続して形成されており、これにより、第1導風部21と第2導風部22との間に存在する段差の前後方向全てに上記湾曲部40が連続して形成されることになり、車幅方向内側前方からの走行風の流れを確実に制御し、該走行風の剥離をより一層防止するように構成したものである。
【0051】
さらに、上述の湾曲部40の断面曲げ半径はデフレクタ20前部の断面曲げ半径に対して、デフレクタ20後部の断面曲げ半径が大きく形成されており、これにより、第1導風部21と第2導風部22との間の段差が車両後方に行く程大きくなっても、容易にデフレクタ20を形成する構造となっている。
【0052】
ところで、
図9の(a)に示すように、上述の平坦面24は車両前後方向で略水平に配置された略水平部であって、上述の縦壁部25の少なくとも下端部(
図9の(a)に示す実施例では縦壁部25の下端部を含む全体)と、上記略水平部である平坦面24に直交する仮想の直交面VERとが成す角度θ(前傾角度)が20度〜45度の範囲で形成されている。
【0053】
すなわち、上述の前傾角度θが20度未満の場合には、縦壁部25の車幅方向端部に渦が形成される一方で、前傾角度θが45度を超過する場合には、走行風が前輪13に当たる衝突ホイール高さが著しく高くなるので、上記範囲内に設定するものである。
【0054】
このように、縦壁部25の車両前方に略水平部である平坦部24を設け、かつ、縦壁部25を上記範囲内に前傾させることで、縦壁部25に当たる走行風の風量を増やし、走行風がホイールハウス部14内に巻込まれないようにして、前輪13側面後方に流れる風を制御し、これにより、前輪13周りのCd値向上を図るように構成したものである。
【0055】
図9の(a)に示す実施例では、縦壁部25の全体を上記前傾角度θの範囲内で前高後低形状に傾斜させたが、
図9の(b)に示すように、縦壁部25の下端部25aのみを上記範囲内で前傾させてもよい。
【0056】
図9の(b)に示すように、縦壁部25の下端部25aを前傾させる上下方向の高さHは、その下端25bから少なくとも10mm程度あればよい。
【0057】
加えて、上述の第2導風部22および縦壁部25は車幅方向で上記前輪13の車幅方向の最も内側を含む当該前輪13に重複する位置に設けられており、これにより、前輪13に直撃する走行風の流れを上記縦壁部25にて確実に抑制するよう構成したものである。
【0058】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0059】
このように、上記実施例のタイヤデフレクタ装置は、車両前後方向から見て下方に凸状のデフレクタ20が前輪13前方の車両底部に配置されたタイヤデフレクタ装置であって、上記デフレクタ20は車幅方向内側に位置する第1導風部21と、車幅方向外側に位置する第2導風部22とを備え、上記第1導風部21は後ろ下がりに傾斜する緩斜面23を有して、車幅方向で上記前輪13に重複しない位置にあり、上記第2導風部22は走行風を後方に案内する案内面(平坦面24参照)と、該案内面(平坦面24)の後部から下方に延びると共に、車幅方向に延びる縦壁部25とを有して、車幅方向で上記前輪13の車幅方向の最も内側を含む当該上記前輪13に重複する位置にあり、上記案内面(平坦面24)は上記緩斜面23よりも地上高が高くなるよう配置され、上記第1導風部21と上記第2導風部22とは隣接して配置されたものである(
図1、
図3、
図4参照)。
【0060】
この構成によれば、車幅方向で前輪13に重複しない走行風(上記第1導風部21を通る走行風)は車両前方からそのまま車両後方に流し、車幅方向で上記前輪13の車幅方向の最も内側を含む当該前輪13と重複する走行風(上記第2導風部22を通る走行風)のみを前輪13に当たらないように一旦縦壁部25に当てた後に、この縦壁部25にて走行風の流れを下方かつ車幅方向外側に変更することで、前輪13直撃後の走行風がホイールハウス部14内に巻込まれることを抑制して、前輪13周りのCd値向上を図ることができる。
【0061】
この発明の一実施形態においては、車両上下方向において上記緩斜面23の延長線(EXT)上に前輪懸架部品または前輪操舵部品が重複しないよう構成したものである(
図2参照)。
【0062】
この構成によれば、第1導風部21を通る走行風は緩斜面23にて緩やかに下方に傾斜して車両後方に流れるが、この場合、前輪13(特に、そのナックル部)に連結されたサスペンションアーム等の前輪懸架部品やステアリングロッド等の前輪操舵部品に走行風が当たらないよう上記緩斜面23を設定したので、走行風の整流化を図ることができる。
【0063】
この発明の一実施形態においては、上記第1導風部21と上記第2導風部22との境界部27は、上記前輪13の最内側よりも車幅方向内側に位置するものである(
図3参照)。
【0064】
この構成によれば、上述の境界線部27を、前輪13の最内側よりも車幅方向内側に位置させたので、第2導風部22を通る走行風がホイールハウス部14内へ巻込まれるのを防止することができる。
【0065】
なお、上記境界部27は前輪13の最内側よりも5〜40mm車幅方向内側に位置することが好ましい。すなわち、5mm未満の場合には、斜め前方から流入してくる走行風が前輪13に当たり、ホイールハウス部14内に走行風が入ることで、Cd値が悪化する一方、40mmを超過する場合には、ホイールハウス部14内に本来入らない走行風までも第2導風部22の案内面(平坦面24)、縦壁部25にて下向きに制御することになり、縦壁部25下端で剥離が生じることで、Cd値が悪化する。このため、上記範囲内が好ましい。
【0066】
この発明の一実施形態においては、上記縦壁部25の下端と、上記緩斜面23の後端との車両上下方向の高さを略同等となしたものである(
図7参照)。
【0067】
この構成によれば、デフレクタ20後端部の縦壁部25下端と、デフレクタ20後端部に位置する緩斜面23後端との高さを揃えたので、縦壁部25の境目に付勢される応力集中を効果的に分散することができ、デフレクタ20の後端部の剛性向上を図ることができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の案内面は、実施例の車両前後方向に延びる略水平な平坦面24に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。