(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1画素、第2画素、第3画素のそれぞれにおいて所望の共振波長の光を取り出すには、光学距離調整層の膜厚を第1画素、第2画素、第3画素のそれぞれにおいて精度よく実現することが求められる。しかしながら、上記特許文献1の電気光学装置の製造方法では、透光膜を精度よくエッチングすることが難しいという課題があった。その理由として、例えば、上記段階的なアッシングにおいて適正なアッシング量に対して過不足が生ずれば、アッシング後のマスクの膜厚にばらつきが生じ、透光膜を所望の範囲に亘って適正なエッチング量でエッチングできないことが挙げられる。また、例えば、安定したエッチング条件(エッチング速度など)を実現することが難しく、エッチング後の透光膜の膜厚がばらつきやすいということが挙げられる。
加えて、画素間の段差を極力小さくして、画素間の段差を跨ぐ配線や電極における電気抵抗の上昇を抑えたいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例]本適用例に係わる電気光学装置は、基板と、前記基板上に形成された第1の画素と、前記第1の画素に隣り合う第2の画素と、を有し、前記第1の画素は、光反射性を有する反射層と、光反射性及び光透過性を有する対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、絶縁層と、第1画素電極と、発光層を含む機能層とを含み、前記第2の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第2画素電極と、前記機能層とを含み、前記絶縁層は、前記反射層側から順に積層された第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を含み、前記第2絶縁層に第1開口が設けられ、前記第1画素電極は、前記第1開口において前記第1絶縁層上に設けられ、前記第3絶縁層に前記第1開口を含む第2開口が設けられ、前記第2画素電極は、前記第2開口において、前記第1画素電極と隣り合って前記第2絶縁層上に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本適用例の構成によれば、反射層と第1画素電極との間には第1絶縁層が存在し、反射層と第2画素電極との間には第1絶縁層と第2絶縁層とが存在する。また、隣り合う第1画素電極と第2画素電極との間には第1絶縁層と第2絶縁層とが存在する。したがって、反射層と第1画素電極との間の前記絶縁層の第1の膜厚と、反射層と第2画素電極との間の前記絶縁層の第2の膜厚とが異なると共に、第1画素電極と第2画素電極との間の領域の前記絶縁層の第3の膜厚は、前記第2の膜厚と略同じになる。
ゆえに、特許文献1のように透光膜を段階的にエッチングして光学距離調整層における光学距離を画素ごとに異ならせる場合に比べて、第1絶縁層をエッチングすることなく、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層の形成時にそれぞれが所望の膜厚となるようにすればよい。すなわち、画素ごとの光共振構造における光学距離を精度よく調整でき、第1の画素と第2の画素とにおいて、それぞれ所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を提供できる。
【0008】
[適用例]本適用例に係わる他の電気光学装置は、基板と、前記基板上に形成された第1の画素と、前記第1の画素に隣り合う第2の画素と、を有し、前記第1の画素は、光反射性を有する反射層と、光反射性及び光透過性を有する対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、絶縁層と、第1画素電極と、発光層を含む機能層とを含み、前記第2の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第2画素電極と、前記機能層とを含み、前記絶縁層は、前記反射層側から順に積層された第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を含み、前記第2絶縁層に第1開口が設けられ、前記第1画素電極は、前記第1開口において前記第1絶縁層上に設けられ、前記第3絶縁層が前記第1開口の一部を覆うことにより、前記第3絶縁層に前記第1画素電極上に開口する第2開口が設けられ、前記第2画素電極は、前記第1開口において前記第3絶縁層上に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本適用例の構成によれば、反射層と第1画素電極との間には第1絶縁層が存在し、反射層と第2画素電極との間には第1絶縁層と第3絶縁層とが存在する。また、隣り合う第1画素電極と第2画素電極との間には第1絶縁層と第3絶縁層とが存在する。したがって、反射層と第1画素電極との間の前記絶縁層の第1の膜厚と、反射層と第2画素電極との間の前記絶縁層の第2の膜厚とが異なると共に、第1画素電極と第2画素電極との間の領域の前記絶縁層の第3の膜厚は、前記第2の膜厚と略同じになる。
ゆえに、特許文献1のように透光膜を段階的にエッチングして光学距離調整層における光学距離を画素ごとに異ならせる場合に比べて、第1絶縁層をエッチングすることなく、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層の形成時にそれぞれが所望の膜厚となるようにすればよい。すなわち、画素ごとの光共振構造における光学距離を精度よく調整でき、第1の画素と第2の画素とにおいて、それぞれ所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を提供できる。
【0010】
上記適用例に係わる電気光学装置において、前記第2の画素に隣り合う第3の画素を有し、前記第3の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第3画素電極と、前記機能層とを含み、前記第3画素電極は、前記第3絶縁層上に設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、第1の画素、第2の画素、第3の画素のそれぞれにおける反射層と画素電極との間の絶縁層の膜厚は、第1の画素<第2の画素<第3の画素となる。つまり、第1の画素、第2の画素、第3の画素のそれぞれにおいて所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を提供できる。
【0011】
上記適用例に係わる電気光学装置において、前記第2画素電極と前記第3画素電極との間の領域の前記絶縁層の膜厚は、前記反射層と前記第2画素電極との間の前記絶縁層の膜厚と同じであることが好ましい。
【0012】
上記適用例に係わる電気光学装置において、前記第3絶縁層は、前記第3画素電極に対応した位置に島状に設けられてなるとしてもよい。
これらの構成によれば、第1画素電極と第2画素電極との間には、第2絶縁層の膜厚に相当する段差が生ずるだけなので、第1画素電極と第2画素電極の間の段差を小さくすることができる。また、第2画素電極と第3画素電極との間には、第3絶縁層の膜厚に相当する段差が生ずるだけなので、第2画素電極と第3画素電極の段差を小さくすることができる。
【0013】
上記適用例に係わる電気光学装置において、前記第2画素電極と前記第3画素電極との間の領域の前記絶縁層の膜厚は、前記反射層と前記第3画素電極の間の前記絶縁層の膜厚と同じであることが好ましい。
【0014】
上記適用例に係わる電気光学装置において、前記第3絶縁層は、前記第3画素電極に対応した位置から前記第2画素電極に対応した位置に亘って島状に設けられているとしてもよい。
これらの構成によれば、第1画素電極と第2画素電極との間、及び第2画素電極と第3画素電極との間には、第3絶縁層の膜厚に相当する段差が生ずるだけなので、第1画素電極と第2画素電極の間、及び第2画素電極と第3画素電極の間の段差を小さくすることができる。
また、これらの構成により、画素電極間の段差が小さくなれば、それぞれの画素電極上に設けられる機能層、対向電極、封止膜などの表面をそれぞれ平坦にし易い。つまり、該段差を跨ぐ対向電極や配線などの断線を防止することができる。また、対向電極を覆う封止膜の封止性能を向上させることができる。
【0015】
[適用例]本適用例に係わる電気光学装置の製造方法は、基板と、前記基板上に形成された第1の画素と、前記第1の画素に隣り合う第2の画素と、を有し、前記第1の画素は、光反射性を有する反射層と、光反射性及び光透過性を有する対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、絶縁層と、第1画素電極と、発光層を含む機能層とを含み、前記第2の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第2画素電極と、前記機能層とを含み、前記絶縁層は、前記反射層側から順に積層された第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を含む、電気光学装置の製造方法であって、前記第1の画素及び前記第2の画素に亘って前記第1絶縁層を形成する工程と、前記第1画素電極に対応した位置に第1開口を有する前記第2絶縁層を形成する工程と、前記第2絶縁層を覆い、前記第1画素電極及び前記第2画素電極に対応した位置に第2開口を有する前記第3絶縁層を形成する工程と、前記第1開口において前記第1絶縁層上に前記第1画素電極を形成すると共に、前記第2開口において前記第2絶縁層上に前記第2画素電極を形成する工程と、前記第1画素電極と前記第2画素電極とに接する前記機能層を形成する工程と、前記機能層を覆う前記対向電極を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本適用例の方法によれば、反射層と第1画素電極との間には第1絶縁層が形成され、反射層と第2画素電極との間には第1絶縁層と第2絶縁層とが形成される。また、隣り合う第1画素電極と第2画素電極との間には第1絶縁層と第2絶縁層とが形成される。したがって、反射層と第1画素電極との間の前記絶縁層の第1の膜厚と、反射層と第2画素電極との間の前記絶縁層の第2の膜厚とが異なると共に、第1画素電極と第2画素電極との間の領域の前記絶縁層の第3の膜厚は、前記第2の膜厚と略同じになる。
ゆえに、特許文献1のように透光膜を段階的にエッチングして光学距離調整層における光学距離を画素ごとに異ならせる場合に比べて、第1絶縁層をエッチングすることなく、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層のそれぞれを所望の膜厚となるように形成すればよい。すなわち、画素ごとの光共振構造における光学距離を精度よく調整でき、第1の画素と第2の画素とにおいて、それぞれ所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を製造できる。
【0017】
[適用例]本適用例に係わる他の電気光学装置の製造方法は、基板と、前記基板上に形成された第1の画素と、前記第1の画素に隣り合う第2の画素と、を有し、前記第1の画素は、光反射性を有する反射層と、光反射性及び光透過性を有する対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、絶縁層と、第1画素電極と、発光層を含む機能層とを含み、前記第2の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第2画素電極と、前記機能層とを含み、前記絶縁層は、前記反射層側から順に積層された第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層を含む、電気光学装置の製造方法であって、前記第1の画素及び前記第2の画素に亘って前記第1絶縁層を形成する工程と、前記第1画素電極及び前記第2画素電極に対応した位置に第1開口を有する前記第2絶縁層を形成する工程と、前記第2絶縁層を覆い、前記第1画素電極に対応した位置に第2開口を有する前記第3絶縁層を形成する工程と、前記第2開口において前記第1絶縁層上に前記第1画素電極を形成すると共に、前記第1開口において前記第2絶縁層上に前記第2画素電極を形成する工程と、前記第1画素電極と前記第2画素電極とに接する前記機能層を形成する工程と、前記機能層を覆う前記対向電極を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
本適用例の方法によれば、反射層と第1画素電極との間には第1絶縁層が形成され、反射層と第2画素電極との間には第1絶縁層と第3絶縁層とが形成される。また、隣り合う第1画素電極と第2画素電極との間には第1絶縁層と第3絶縁層とが形成される。したがって、反射層と第1画素電極との間の前記絶縁層の第1の膜厚と、反射層と第2画素電極との間の前記絶縁層の第2の膜厚とが異なると共に、第1画素電極と第2画素電極との間の領域の前記絶縁層の第3の膜厚は、前記第2の膜厚と略同じになる。
ゆえに、特許文献1のように透光膜を段階的にエッチングして光学距離調整層における光学距離を画素ごとに異ならせる場合に比べて、第1絶縁層をエッチングすることなく、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層のそれぞれを所望の膜厚となるように形成すればよい。すなわち、画素ごとの光共振構造における光学距離を精度よく調整でき、第1の画素と第2の画素とにおいて、それぞれ所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を提供できる。
【0019】
上記適用例に係わる電気光学装置の製造方法において、前記第2の画素に隣り合う第3の画素をさらに有し、前記第3の画素は、前記反射層と、前記対向電極と、前記反射層と前記対向電極との間に設けられた、前記絶縁層と、第3画素電極と、前記機能層とを含み、前記第3画素電極は、前記第1画素電極及び前記第2画素電極を形成する工程で、前記第3絶縁層上に形成されることが好ましい。
この方法によれば、第1の画素、第2の画素、第3の画素のそれぞれにおいて、光共振構造における光学距離が異なると共に精度よく調整され、所望の共振波長の光を取り出すことが可能な電気光学装置を製造できる。
【0020】
上記適用例に係わる電気光学装置の製造方法において、前記第3絶縁層を形成する工程では、前記第3画素電極に対応した位置に島状に前記第3絶縁層を形成することが好ましい。
【0021】
上記適用例に係わる電気光学装置の製造方法において、前記第3絶縁層を形成する工程では、前記第3画素電極に対応した位置から前記第2画素電極に対応した位置に亘って島状に前記第3絶縁層を形成することが好ましい。
これらの方法によれば、第1画素電極と第2画素電極との間、第2画素電極と第3画素電極との間には、それぞれの光共振構造における絶縁層の膜厚の差に相当する段差が生ずるだけなので、画素電極間の段差を小さくすることができる。
また、これらの方法により、画素電極間の段差が小さくなれば、それぞれの画素電極上に形成される機能層、対向電極、封止膜などの表面をそれぞれ平坦にし易い。つまり、該段差を跨ぐ対向電極や配線などの断線を防止することができる。また、対向電極を覆う封止膜の封止性能を向上させることができる。
【0022】
[適用例]本適用例に係わる電子機器は、上記適用例に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0023】
[適用例]本適用例に係わる電子機器は、上記適用例に記載の電気光学装置の製造方法を用いて形成された電気光学装置を備えたことを特徴とする。
これらの適用例によれば、画素ごとに所望の共振波長の光を取り出すことができ、優れた光学特性を有する電子機器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0026】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0027】
(第1実施形態)
<電気光学装置>
まず、本実施形態の電気光学装置の一例として、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と呼ぶ)を挙げ、
図1〜
図3を参照して説明する。
【0028】
図1は第1実施形態の電気光学装置としての有機EL装置の構成を示す概略平面図、
図2は発光画素の電気的な構成を示す等価回路図、
図3は発光画素の構成を示す概略平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL装置100は、基板としての素子基板10と、素子基板10の表示領域Eにマトリックス状に配置された複数の発光画素20と、複数の発光画素20を駆動制御する周辺回路であるデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路102と、外部回路との電気的な接続を図るための複数の外部接続用端子103とを備えている。
【0029】
発光画素20は、青色(B)の発光が得られる発光画素20Bと、緑色(G)の発光が得られる発光画素20Gと、赤色(R)の発光が得られる発光画素20Rとがある。また、同色の発光が得られる発光画素20が図面上において縦方向に配列し、異なる色の発光が得られる発光画素20が、図面上において横方向にB,G,Rの順に繰り返して配置されている。このような発光画素20の配置は、ストライプ方式と呼ばれるものであるが、これに限定されるものではない。例えば、異なる色の発光が得られる発光画素20の横方向における配置は、B,G,Rの順でなくてもよく、例えば、R,G,Bの順としてもよい。
以降、同色の発光が得られる発光画素20が配列した縦方向をY方向とし、Y方向に直交する方向をX方向として説明する。
【0030】
発光画素20の詳しい構成については後述するが、本実施形態における発光画素20B,20G,20Rのそれぞれは、発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶ)と、B,G,Rの各色に対応するカラーフィルターとを備え、有機EL素子からの発光をB,G,Rの各色に変換してフルカラー表示を可能とするものである。また、有機EL素子からの発光波長範囲のうち特定の波長の輝度を向上させる光共振構造が発光画素20B,20G,20Rごとに構築されている。
【0031】
有機EL装置100において、発光画素20B,20G,20Rは、サブ画素として機能するものであり、B,G,Rに対応する発光が得られる3つの発光画素20B,20G,20Rにより、画像表示における1つの画素単位が構成されている。なお、画素単位の構成はこれに限定されず、B,G,R以外の発光色(白色を含む)が得られる発光画素20が画素単位に含まれていてもよい。
【0032】
素子基板10の第1辺部に沿って、複数の外部接続用端子103がX方向に配列して設けられている。また、Y方向において外部接続用端子103と表示領域Eとの間にデータ線駆動回路101が配置され、X方向に延在している。また、X方向において表示領域Eを挟んで互いに対向するように一対の走査線駆動回路102が設けられている。
【0033】
前述したように表示領域Eには、複数の発光画素20がマトリックス状に設けられており、素子基板10には、
図2に示すように、発光画素20に対応する信号線として、走査線11、データ線12、点灯制御線13、電源線14が設けられている。
本実施形態では、走査線11と点灯制御線13とがX方向に並行して延びており、データ線12と電源線14とがY方向に並行して延びている。
表示領域Eには、マトリックス状に配置された複数の発光画素20におけるM行に対応して複数の走査線11と複数の点灯制御線13とが設けられ、
図1に示した一対の走査線駆動回路102のそれぞれに接続されている。また、マトリックス状に配置された複数の発光画素20におけるN列に対応して複数のデータ線12と複数の電源線14とが設けられ、複数のデータ線12は、
図1に示したデータ線駆動回路101に接続され、複数の電源線14は複数の外部接続用端子103のうちいずれかと接続されている。
【0034】
走査線11とデータ線12との交差部付近に、発光画素20の画素回路を構成する第1トランジスター21、第2トランジスター22、第3トランジスター23、蓄積容量24、そして発光素子である有機EL素子30が設けられている。
有機EL素子30は、陽極である画素電極31と、陰極である対向電極33と、これらの電極間に挟まれた、発光層を含む機能層32とを有している。対向電極33は、複数の発光画素20に跨って共通に設けられた電極であり、例えば、電源線14に与えられる電源電圧Vddに対して、低位の基準電位VssやGNDの電位が与えられる。
【0035】
第1トランジスター21及び第3トランジスター23は、例えばnチャネル型のトランジスターである。第2トランジスター22は、例えばpチャネル型のトランジスターである。
【0036】
第1トランジスター21のゲート電極は走査線11に接続され、一方の電流端はデータ線12に接続され、他方の電流端は第2トランジスター22のゲート電極と、蓄積容量24の一方の電極とに接続されている。
第2トランジスター22の一方の電流端は、電源線14に接続されると共に蓄積容量24の他方の電極に接続されている。第2トランジスター22の他方の電流端は、第3トランジスター23の一方の電流端に接続されている。言い換えれば、第2トランジスター22と第3トランジスター23とは一対の電流端のうち1つの電流端を共有している。
第3トランジスター23のゲート電極は点灯制御線13に接続され、他方の電流端は有機EL素子30の画素電極31に接続されている。
第1トランジスター21、第2トランジスター22及び第3トランジスター23のそれぞれにおける一対の電流端は、一方がソースであり、他方がドレインである。
【0037】
このような画素回路において、走査線駆動回路102から走査線11に供給される走査信号Yiの電圧水準がHiレベルになると、nチェネル型の第1トランジスター21がオン状態(ON)となる。オン状態(ON)の第1トランジスター21を介してデータ線12と蓄積容量24とが電気的に接続される。そして、データ線駆動回路101からデータ線12にデータ信号が供給されると、データ信号の電圧水準Vdataと電源線14に与えられた電源電圧Vddとの電位差が蓄積容量24に蓄積される。
【0038】
走査線駆動回路102から走査線11に供給される走査信号Yiの電圧水準がLowレベルになると、nチェネル型の第1トランジスター21がオフ状態(OFF)となり、第2トランジスター22のゲート・ソース間電圧Vgsは、電圧水準Vdataが与えられたときの電圧に保持される。また、走査信号YiがLowレベルになった後に、点灯制御線13に供給される点灯制御信号Vgiの電圧水準がHiレベルとなり、第3トランジスター23がオン状態(ON)となる。そうすると、第2トランジスター22のソース・ドレイン間には、第2トランジスター22のゲート・ソース電圧Vgsに応じた電流が流れる。この電流は、具体的には、電源線14から第2トランジスター22及び第3トランジスター23を経由して、有機EL素子30に至る経路で流れる。
【0039】
有機EL素子30は、有機EL素子30を流れる電流の大きさに応じて発光する。有機EL素子30を流れる電流は、第2トランジスター22のゲート・ソース間の電圧Vgsで設定される第2トランジスター22と有機EL素子30の動作点によって定まる。第2トランジスター22のゲート・ソース間の電圧Vgsは、走査信号YiがHiレベルのときに、データ線12の電圧水準Vdataと電源電圧Vddとの電位差によって蓄積容量24に保持された電圧である。このように、発光画素20は、データ信号における電圧水準Vdata及び第3トランジスター23がオン状態になる期間の長さによって発光輝度が規定される。つまり、データ信号における電圧水準Vdataの値により、発光画素20において画像情報に応じた輝度の階調性を与えることができ、フルカラー表示を可能としている。
【0040】
なお、本実施形態において、発光画素20の画素回路は、3つのトランジスター21,22,23を有することに限定されず、スイッチング用トランジスターと駆動用トランジスターとを有する構成としてもよい。また画素回路を構成するトランジスターは、nチャネル型のトランジスターでもよいし、pチャネル型のトランジスターでもよいし、nチャネル型のトランジスター及びpチャネル型のトランジスターの双方を備えるものであってもよい。また、発光画素20の画素回路を構成するトランジスターは、半導体基板にアクティブ層を有するMOS型トランジスターであってもよいし、薄膜トランジスターであってもよいし、電界効果トランジスターであってもよい。
また、走査線11、データ線12以外の信号線である点灯制御線13、電源線14の配置は、トランジスターや蓄積容量24の配置により左右され、これに限定されるものではない。
本実施形態では、発光画素20の画素回路を構成するトランジスターとして、半導体基板にアクティブ層を有するMOS型トランジスターを採用した例について、以降説明する。
【0041】
<発光画素の構成>
発光画素20の具体的な構成について
図3を参照して説明する。
図3に示すように、発光画素20B,20G,20Rのそれぞれは、平面視で矩形状となっており、長手方向がY方向に沿って配置されている。発光画素20B,20G,20Rのそれぞれには、
図2に示した等価回路の有機EL素子30が設けられている。発光画素20B,20G,20Rごとに設けられた有機EL素子30を区別するため、有機EL素子30B,30G,30Rとして説明することもある。また、有機EL素子30の画素電極31を発光画素20B,20G,20Rごとに区別するため、画素電極31B,31G,31Rとして説明することもある。
【0042】
発光画素20Bには画素電極31Bと、画素電極31Bと第3トランジスター23とを電気的に接続させるコンタクト部31Bcとが設けられている。同様に、発光画素20Gには画素電極31Gと、画素電極31Gと第3トランジスター23とを電気的に接続させるコンタクト部31Gcとが設けられている。発光画素20Rには画素電極31Rと、画素電極31Rと第3トランジスター23とを電気的に接続させるコンタクト部31Rcとが設けられている。
各画素電極31B,31G,31Rも平面視で略矩形状であり、長手方向の上方側に各コンタクト部31Bc,31Gc,31Rcがそれぞれ配置されている。
【0043】
発光画素20B,20G,20Rのそれぞれは、隣り合う画素電極31同士を電気的に絶縁すると共に、画素電極31B,31G,31R上に機能層32(
図4参照)と接する領域を規定する開口29B,29G,29Rが形成された絶縁構造を有している。
【0044】
なお、本実施形態において、発光画素20Bが本発明の第1の画素に相当するものであり、発光画素20Gが本発明の第2の画素に相当するものであり、発光画素20Rが本発明の第3の画素に相当するものである。したがって、画素電極31Bが本発明の第1画素電極に相当し、画素電極31Gが本発明の第2画素電極に相当し、画素電極31Rが本発明の第3画素電極に相当するものである。
また、有機EL素子30B,30G,30Rの機能層32に対して電荷を注入する画素電極31B,30G,30Rとして実質的に機能するのは、上記絶縁構造における開口29B,29G,29Rによって規定され、それぞれ機能層32と接する部分である。したがって、画素電極31B,31G,31Rのそれぞれにおいて、後述する第4絶縁層29(
図4、
図5参照)で覆われる部分は、上記各コンタクト部31Bc,31Gc,31Rcを経由して、第3トランジスター23に電気的に接続される配線部分である。すなわち、機能層32と接する画素電極31B,31G,31Rの部分が、本発明における第1画素電極、第2画素電極、第3画素電極に相当するものであると言い換えることもできる。
【0045】
次に、発光画素20の構造について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は発光画素をX方向に沿って切ったときの構造を示す概略断面図、
図5は発光画素をY方向に沿って切ったときの構造を示す概略断面図である。なお、
図4では画素回路のうち、第1トランジスター21及び第2トランジスター22と、第1トランジスター21及び第2トランジスター22に関連する配線などを示し、第3トランジスター23の図示を省略している。
図5では画素回路のうち、第2トランジスター22及び第3トランジスター23と、第2トランジスター22及び第3トランジスター23に関連する配線などを示し、第1トランジスター21の図示を省略している。また、
図5は発光画素20GをY方向に沿って切ったときの構造を示すものである。
【0046】
図4に示すように、有機EL装置100は、発光画素20B,20G,20R、カラーフィルター50などが形成された素子基板10と、透光性の封止基板70とを備えている。素子基板10と封止基板70とは、接着性と透明性とを兼ね備えた樹脂層60によって貼り合わされている。カラーフィルター50は、B,G,Rの各色に対応したフィルター層50B,50G,50Rを有している。各フィルター層50B,50G,50Rは、素子基板10において、発光画素20B,20G,20Rのそれぞれに対応して配置されている。機能層32から発せられた光は、対応するフィルター層50B,50G,50Rのいずれかを透過して封止基板70側から射出される。つまり、有機EL装置100は、トップエミッション構造となっている。
【0047】
素子基板10の基材10sは、有機EL装置100がトップエミッション構造であることから、透明なガラス基板だけでなく、不透明なセラミック基板や半導体基板を用いることができる。
本実施形態では、基材10sとして半導体基板を用いている。半導体基板は例えばシリコン基板である。
【0048】
基材10sには、半導体基板にイオンを注入することによって形成されたウェル部10wと、ウェル部10wとは異なる種類のイオンをウェル部10wに注入することにより形成されたアクティブ層であるイオン注入部10dとが設けられている。ウェル部10wは、発光画素20におけるトランジスター21,22,23のチャネルとして機能し、イオン注入部10dは、発光画素20におけるトランジスター21,22,23のソース・ドレインや配線の一部として機能するものである。
【0049】
次に、イオン注入部10dやウェル部10wが形成された基材10sの表面を覆う絶縁膜10aが形成される。絶縁膜10aはゲート絶縁膜として機能するものである。絶縁膜10a上に例えばポリシリコンなどの導電膜が成膜され、これをパターニングしてゲート電極22gが形成される。ゲート電極22gは、第2トランジスター22のチャネルとして機能するウェル部10wに対向するように配置されている。他の第1トランジスター21や第3トランジスター23に置いても同様にゲート電極が配置されている。
【0050】
次に、ゲート電極22gを覆う第1層間絶縁膜15が形成される。そして、第1層間絶縁膜15を貫通して、例えば第1トランジスター21のドレインや第2トランジスター22のゲート電極22gに至るコンタクトホールが形成される。このコンタクトホール内を少なくとも被覆し、第1層間絶縁膜15の表面を覆う導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、例えば、第1トランジスター21のドレイン電極21dと第2トランジスター22のゲート電極22gとに接続される配線が形成される。
【0051】
次に、第1層間絶縁膜15上の各種配線を覆う第2層間絶縁膜16が形成される。そして、第2層間絶縁膜16を貫通して、第1層間絶縁膜15上に形成された配線に至るコンタクトホールが形成される。このコンタクトホール内を少なくとも被覆し、第2層間絶縁膜16の表面を覆う導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、例えば、蓄積容量24の一方の電極24aと第2トランジスター22のゲート電極22gとを電気的に接続させるコンタクト部が形成される。また、一方の電極24aと同層にデータ線12が形成される。データ線12は、
図4では図示省略された配線によって、第1トランジスター21のソースに接続されている。
【0052】
次に、少なくとも一方の電極24aを覆う誘電体層(
図4では図示を省略している)が形成される。また、誘電体層を挟んで一方の電極24aに対向する位置に蓄積容量24の他方の電極24bが形成される。これにより、一対の電極24a,24b間に誘電体層を有する蓄積容量24が形成される。
【0053】
次に、データ線12及び蓄積容量24を覆う第3層間絶縁膜17が形成される。第3層間絶縁膜17を貫通して、例えば、蓄積容量24の他方の電極24bや第2層間絶縁膜16上に形成された配線に至るコンタクトホールが形成される。このコンタクトホール内を少なくとも被覆し、第3層間絶縁膜17の表面を覆う導電膜が成膜され、これをパターニングすることにより、電源線14や電源線14と他方の電極24bとを接続させるコンタクト部が形成される。本実施形態では、電源線14は光反射性と導電性とを兼ね備えた、例えばAl(アルミニウム)やAg(銀)などの金属、あるいはこれらの金属の合金を用いて形成される。また、電源線14は、発光画素20B,20G,20Rのコンタクト部31Bc,31Gc,31Rc(
図3参照)と重なる部分を除いて、画素電極31B,31G,31Rと対向し、表示領域Eに亘る平面を構成するように形成される。電源線14の画素電極31B,31G,31Rと対向する部分が反射層として機能する。
なお、導電性を有する材料で電源線14を形成し、電源線14と画素電極31B,31G,31Rとの間に反射層を設ける構成としてもよい。
【0054】
ここで、
図5を参照して、発光画素20(発光画素20G)におけるY方向の断面構造について説明する。
図5に示すように、基材10sには、第2トランジスター22と第3トランジスター23とが共用するウェル部10wが設けられている。当該ウェル部10wには、3つのイオン注入部10dが設けられている。3つのイオン注入部10dのうち中央側に位置するイオン注入部10dは、第2トランジスター22と第3トランジスター23とが共用するドレイン22d(23d)として機能するものである。当該ウェル部10wを覆う絶縁膜10aが設けられる。そして、絶縁膜10aを覆って例えばポリシリコンなどの導電膜が成膜され、この導電膜をパターニングすることによって、絶縁膜10a上に、第2トランジスター22のゲート電極22g及び第3トランジスター23のゲート電極23gが形成される。ゲート電極22g,23gのそれぞれは、中央側のイオン注入部10dと端側のイオン注入部10dとの間のウェル部10wにおけるチャネルとして機能する部分に対向するように配置されている。
【0055】
次に、第2トランジスター22のゲート電極22gは、第1層間絶縁膜15と第2層間絶縁膜16とを貫通するコンタクトホールによって、第2層間絶縁膜16上に設けられた蓄積容量24の一方の電極24aに接続されている。第2トランジスター22のソース電極22sは、第2層間絶縁膜16及び第3層間絶縁膜17を貫通するコンタクトホールによって、第3層間絶縁膜17上に設けられた電源線14に接続されている。
第3トランジスター23のゲート電極23gは、第1層間絶縁膜15を貫通するコンタクトホールによって、第1層間絶縁膜15上に設けられた点灯制御線13に接続されている。第1層間絶縁膜15上には、点灯制御線13以外に走査線11が設けられている。走査線11は、
図5には図示されていないコンタクトホールを経由して、第1トランジスター21のゲートに接続されている。
第3トランジスター23のソース電極23sは、第2層間絶縁膜16及び第3層間絶縁膜17、さらに絶縁層28を貫通するコンタクトホールによって、絶縁層28(第3絶縁層27)上に設けられた配線106に接続されている。配線106は、発光画素20Gのコンタクト部31Gcに対応して設けられたものであり、当該コンタクト部31Gcにおいて配線106と画素電極31Gとが接することにより、電気的な接続が図られている。
【0056】
発光画素20B,20Rの画素電極31B,31Rのそれぞれと対応する第3トランジスター23のソース電極23sとの電気的な接続は、発光画素20Gと同様にコンタクト部31Bc、コンタクト部31Rcを介して行われている(
図3参照)。
【0057】
有機EL素子30は、反射層として機能する電源線14上に設けられている。また、発光画素20B,20G,20Rごとに異なる共振波長の光を取り出すことができる光共振構造が電源線14上に構築されている。電源線14は、平面視で発光画素20B,20G,20Rが設けられた表示領域Eに亘って第3層間絶縁膜17の表面を覆うように形成されている。また、電源線14は、画素電極31B,31G,31Rのそれぞれと対応する第3トランジスター23との電気的な接続を図る上記コンタクト部31Bc,31Gc、31Rcが設けられる部分を除いてパターニングされている。したがって、電源線14よりも下層に設けられた画素回路の構成による凹凸が、電源線14よりも上層に設けられる光共振構造に影響を及ぼし難い構造となっている。
【0058】
電源線14よりも上層に設けられる光共振構造は、本発明の特徴部分に相当するので、以降、本実施形態の電気光学装置の製造方法として、
図6、
図7を参照して具体的に説明する。
図6は第1実施形態の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、
図7(a)〜(f)は第1実施形態の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。なお、
図7は
図4における発光画素20B,20G,20RのX方向の概略断面図に相当するものであって、基材10sにおける電源線14よりも下層に設けられた画素回路や配線の図示を省略している。
【0059】
<電気光学装置の製造方法>
本実施形態の電気光学装置としての有機EL装置100の製造方法は、
図6に示すように、第1絶縁層の形成工程(ステップS1)、第2絶縁層の形成工程(ステップS2)、第3絶縁層の形成工程(ステップS3)、第2開口の形成工程(ステップS4)、第1開口の形成工程(ステップS5)、画素電極の形成工程(ステップS6)、第4絶縁層の形成工程(ステップS7)、機能層の形成工程(ステップS8)、対向電極の形成工程(ステップS9)を含んでいる。
【0060】
図6のステップS1〜ステップS3では、
図7(a)に示すように、電源線14を覆うように第1絶縁層25を形成する。続いて、第1絶縁層25に第2絶縁層26、第3絶縁層27を積層形成する。本実施形態では、第1絶縁層25を形成する絶縁材料として窒化シリコン(SiN)が用いられている。第2絶縁層26、第3絶縁層27を形成する絶縁材料として酸化シリコン(SiO
2)が用いられている。このように、異なる絶縁材料が用いられているのは、この後に行われる第2絶縁層26及び第3絶縁層27のパターニングにおいて、第1絶縁層25に対してエッチング選択比を持たせるためである。積層された第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27を総称して絶縁層28と呼ぶ。そして、ステップS4へ進む。
【0061】
次に、
図6のステップS4では、
図7(b)に示すように、絶縁層28を覆う感光性レジスト層を形成し、露光・現像することによりレジストパターン81を形成する。レジストパターン81には第2開口27a(
図7(c)参照)に対応した開口81aが形成される。そして、開口81aに露出した第3絶縁層27を部分的にエッチングして、
図3及び
図7(c)に示すように、平面視で発光画素20Bの画素電極31Bと発光画素20Gの画素電極31Gとが後に配置される第2開口27aを形成する。酸化シリコンを用いて形成された第3絶縁層27のエッチング方法としては、例えばCF
4、C
2F
8などのフッ素を含む処理ガスを用いたドライエッチング法を用いることが好ましい。そして、ステップS5へ進む。
【0062】
図6のステップS5では、
図7(d)に示すように、絶縁層28を覆う感光性レジスト層を形成し、露光・現像することによりレジストパターン82を形成する。レジストパターン82には第1開口26aに対応した開口82aが形成される。レジストパターン82は、開口82aの一方の端が第3絶縁層27の第2開口27aの一方の端と同じ位置にあり、第2開口27a内に露出した第2絶縁層26の面積うち、ほぼ半分が露出するように第2開口27aを覆って形成されている。さらに、第2開口27a内に露出させた第2絶縁層26を部分的にエッチングして、
図3及び
図7(e)に示すように、平面視で発光画素20Bの画素電極31Bが後に配置される第1開口26aを第2開口27a内に形成する。第2絶縁層26のエッチングも第3絶縁層27と同様にドライエッチング法を用いる。そして、ステップS6へ進む。
【0063】
図6のステップS6では、
図7(f)に示すように、第1開口26a及び第2開口27aを被覆すると共に、第3絶縁層27を覆う透明導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、第1開口26a内に画素電極31Bを形成し、第2開口27a内に画素電極31Gを形成し、第3絶縁層27上に画素電極31Rを形成する。透明導電膜は例えばITO(Indium Tin Oxide)膜、IZO(Indium Zinc Oxide)膜である。画素電極31B,31G,31Rの膜厚は、およそ100nmである。これにより、電源線14と画素電極31Bとの間には第1絶縁層25が存在し、電源線14と画素電極31Gとの間には第1絶縁層25と第2絶縁層26とが存在し、電源線14と画素電極31Rとの間には第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27が存在することになる。以降、電源線14と画素電極31との間に配置された絶縁層の層数に係わらず、これを絶縁層28と呼ぶこととする。第1絶縁層25の平均膜厚をd1とし、第2絶縁層26の平均膜厚をd2とし、第3絶縁層27の平均膜厚をd3とすると、画素電極31Bと画素電極31Gとの間の絶縁層28の膜厚は、d1にd2を加えたd4となる。また、画素電極31Gと画素電極31Rとの間の絶縁層28の膜厚は、d1にd2とd3とを加えたd5となる。言い換えれば、X方向における画素電極31Bと画素電極31Gとの間には、d2に相当する段差が生ずる。また、X方向における画素電極31Gと画素電極31Rとの間には、d3に相当する段差が生ずる。そして、ステップS7へ進む。
【0064】
図6のステップS7では、画素電極31B,31G,31Rを覆う第4絶縁層29が形成される。第4絶縁層29は例えば酸化シリコン(SiO
2)を用いて形成される。そして、この後に形成される機能層32と各画素電極31B,31G,31Rとが接する領域を規定するために、第4絶縁層29を部分的にエッチングして、画素電極31B,31G,31R上に開口する開口29B,29G,29Rを形成する(
図3及び
図4参照)。第4絶縁層29の膜厚はおよそ60nmである。第4絶縁層29のエッチングも第3絶縁層27と同様にドライエッチング法を用いることが好ましい。そして、ステップS8へ進む。
【0065】
図6のステップS8では、画素電極31B,31G,31Rが配置された表示領域Eに亘って、上記開口29B,29G,29Rを埋めるように機能層32を形成する(
図4参照)。
機能層32は、発光材料として有機半導体材料が用いられた発光層を含んでおり、例えば、画素電極31側から順に積層された、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含んで構成される。機能層32の構成は、特に限定されるものではなく、公知の構成を適用することができる。例えば、機能層32は、B(青),G(緑),R(赤)の各発光色が得られる発光層を含んで白色発光を実現するものや、B(青)と橙の発光色が得られる発光層を含んで擬似白色を実現するものでもよい。また、発光効率などを改善する目的で、発光層に注入されるキャリアとしての正孔や電子の移動を助けたり、妨げたりする中間層を含む構成としてもよい。
機能層32を構成する各層の形成方法についても特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法などの気相プロセスやインクジェット法などの液相プロセスを用いることができる。あるいは気相プロセスと液相プロセスの両方を組み合わせて機能層32を形成してもよい。そして、ステップS9へ進む。
【0066】
図6のステップS9では、少なくとも表示領域Eに跨って機能層32を覆うように共通の陰極である対向電極33を形成する。本実施形態では、対向電極33は、光反射性と光透過性とを有するように、例えば、Agを含む合金(MgAgなど)を用い膜厚を制御して形成する。対向電極33は、水分や熱などによる機能層32の損傷を考慮して、真空蒸着法などの気相プロセスを用いて形成することが好ましい。これにより、発光画素20B,20G,20Rごとに有機EL素子30が形成される(
図4参照)。
【0067】
次に、表示領域Eに形成された複数の有機EL素子30を覆う封止層40を形成する。本実施形態では、封止層40は、対向電極33の表面を覆う第1封止膜41と、緩衝層42と、緩衝層42を覆う第2封止膜43とにより構成されている。
【0068】
第1封止膜41は、水分や酸素などのガスを透過し難く(ガスバリア性)、且つ透明性が得られる、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化チタンなどの金属酸化物などの無機化合物を用いて形成する。形成方法としては、低温で緻密な膜を形成可能な気相プロセスを用いることが好ましく、例えば、プラズマCVD法やECRプラズマスパッタ法などの高密度プラズマ成膜法や、真空蒸着法、イオンプレーティング法を挙げることができる。第1封止膜41の膜厚はおよそ200nm〜400nmである。
【0069】
第1封止膜41の表面は、下層に設けられた有機EL素子30などの構造体の影響を受けて凹凸が生ずる。本実施形態では、該凹凸や異物の付着などに起因する第2封止膜43の封止機能の低下を防止するために、第1封止膜41の表面のうち少なくとも表示領域Eを覆い、少なくとも表示領域Eにおける該凹凸を緩和して平坦化する緩衝層42を形成する。
【0070】
緩衝層42は、例えば、透明性を有する有機樹脂を溶媒に溶解させた溶液を用い、印刷法やスピンコート法で該溶液を塗布して乾燥することにより形成された有機樹脂層である。有機樹脂としては、エポキシ樹脂などを挙げることができる。第1封止膜41の表面の該凹凸を緩和したり、第1封止膜41に付着した異物を覆って平坦化することから、その膜厚は、1μm〜5μmが好ましく、本実施形態では、エポキシ樹脂を用いて膜厚がおよそ3μmの緩衝層42を形成した。緩衝層42は、平面視で少なくとも機能層32を覆うように形成され、且つ対向電極33を覆うように形成されることが好ましい。緩衝層42を少なくとも機能層32を覆うように形成することで、機能層32の端部での凹凸を緩和することができる。なお、緩衝層42は、表示領域Eに加えて、周辺回路(データ線駆動回路101及び一対の走査線駆動回路102)の表示領域E側の少なくとも一部を覆うように形成してもよい(
図1参照)。
【0071】
次に、緩衝層42を覆う第2封止膜43を形成する。第2封止膜43は、第1封止膜41と同様に、透明性とガスバリア性とを兼ね備え、耐水性、耐熱性に優れた無機化合物を用いて形成される。無機化合物としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンが挙げられる。第2封止膜43は、第1封止膜41と同じ方法を用いて形成することができる。第2封止膜43の膜厚は、成膜時にクラックが生じないように、200nm〜700nmの範囲で成膜されることが好ましく、300nm〜400nmの範囲で成膜することがより好ましい。これにより、少なくとも表示領域Eにおいて、緩衝層42を挟んで第1封止膜41と第2封止膜43とが積層された封止層40ができあがる(
図4及び
図5参照)。封止層40のうちの緩衝層42を対向電極33を覆うように形成すれば、第1封止膜41とこれに直接積層した第2封止膜43により、対向電極33の端部を覆うことができる。
【0072】
周辺回路(データ線駆動回路101及び一対の走査線駆動回路102)と素子基板10の端面との間の領域では、第1封止膜41と第2封止膜43とが接して積層されている。
素子基板10の第1辺部側において、第1封止膜41、第2封止膜43を貫通する開口が設けられ、開口内に外部接続用端子103が位置している(
図1参照)。
【0073】
次に、
図4及び
図5に示すように、封止層40上にカラーフィルター50を形成する。カラーフィルター50は、発光画素20B,20G,20Rに対応したフィルター層50B,50G,50Rを有するものである。フィルター層50B,50G,50Rのそれぞれは、例えば、染料や顔料などの色材が溶解あるいは分散された感光性樹脂材料を含む溶液を塗布して乾燥することにより得られた感光性樹脂層を露光・現像することにより形成される。したがって、3色のフィルター層50B,50G,50Rを形成する場合、少なくとも3回の露光・現像が行われる。
図4では、フィルター層50B,50G,50Rの膜厚が同じであるように示されているが、実際には、有機EL素子30からの発光が各フィルター層50B,50G,50Rを透過したときに、適正な色度やホワイトバランスなどの光学特性が得られるように、1.0μm〜2.0μmの範囲内でフィルター層50B,50G,50Rの膜厚がそれぞれ調整される。
また、フィルター層50B,50G,50Rは平面視でそれぞれ対応する画素電極31B,31G,31Rと重なり合うように露光・現像されている。さらに、隣り合うフィルター層の境界は、画素電極間に位置して、一方のフィルター層に対して他方のフィルター層の一部が重なるように露光・現像されていてもよい。
【0074】
基材10s上に形成された、画素回路、有機EL素子30、封止層40、カラーフィルター50を含む素子基板10は、接着性と透明性とを兼ね備えた樹脂層60を介して封止基板70と貼り合わされる(
図4及び
図5参照)。樹脂層60は、例えば、熱硬化型や光硬化型のエポキシ樹脂材料などを用いることができる。該樹脂材料を素子基板10に塗布した後に、封止基板70を素子基板10に押圧して、該樹脂材料を所定の範囲に押し広げた後に硬化させる。これにより、有機EL装置100ができあがる。
【0075】
本実施形態では、有機EL素子30から発せられた光がカラーフィルター50を透過することで、発光画素20B,20G,20Rごとに所望の発光色が得られる構成となっている。加えて、発光画素20B,20G,20Rごとに反射層として機能する電源線14と対向電極33との間で光共振構造が構築されており、B,G,Rの各発光色に対応した共振波長において輝度が強調された発光が得られる。
発光画素20B,20G,20Rごとの共振波長は、反射層としての電源線14と対向電極33との間の光学的な距離(光路長とも言う)によって決まる。
具体的には、反射層から対向電極33までの光学的な距離をD、反射層での反射における位相シフトをφL、対向電極33での反射における位相シフトをφU、定在波のピーク波長をλ、整数をmとすると、光学的な距離Dは、下記の数式(1)を満たす構造となっている。
D={(2πm+φL+φU)/4π}λ・・・(1)
発光画素20B,20G,20Rの光共振構造における光学的な距離Dは、B,G,Rの順に大きくなり、電源線14と画素電極31との間に配置された絶縁層28の膜厚を異ならせることによって調整されている。具体的には、電源線14と画素電極31Bとの間には第1絶縁層25が存在し、電源線14と画素電極31Gとの間には第1絶縁層25及び第2絶縁層26が存在し、電源線14と画素電極31Rとの間には絶縁層28(第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27)が存在することで該光学的な距離Dが発光画素20B,20G,20Rごとに異なっている。絶縁層28の光学的な距離は、光が透過する絶縁層28の膜厚(t)と屈折率(n)との積で表すことができる。
例えば、発光画素20Bにおける輝度のピーク波長(共振波長)は、470nmに設定されている。同じく、発光画素20Gにおける輝度のピーク波長(共振波長)は、540nmに設定され、発光画素20Rにおける輝度のピーク波長(共振波長)は、610nmに設定されている。
上記ピーク波長を実現するため、例えば、ITOなどの透明導電膜からなる画素電極31B,31G,31Rの膜厚を前述したようにおよそ100nmとし、機能層32の膜厚をおよそ110nmとして、上記数式(1)において、m=1として、反射層と対向電極33との間の絶縁層28の膜厚を算出すると、発光画素20Bでは50nm、発光画素20Gでは115nm、発光画素20Rでは170nmの値が得られる。したがって、窒化シリコン(SiN)からなる第1絶縁層25の膜厚の範囲を40nm〜100nmとし、酸化シリコン(SiO
2)からなる第2絶縁層26の膜厚の範囲を40nm〜50nmとし、酸化シリコン(SiO
2)からなる第3絶縁層27の膜厚の範囲を40nm〜70nmとすることができる。
【0076】
なお、上記ピーク波長を精度よく実現するため、光学的な距離Dを発光画素20ごとに調整する絶縁層28の膜厚は、絶縁層28を構成する第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27のそれぞれの屈折率、画素電極31及び機能層32の膜厚及び屈折率、反射層としての電源線14及び対向電極33の膜厚及び屈折率並びに消衰係数を鑑み、設定される。また、光が透過する層の屈折率は透過する光の波長に依存する。
【0077】
上記第1実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)発光画素20Bの反射層として機能する電源線14と画素電極31Bとの間には第1絶縁層25が配置されている。発光画素20Gの電源線14と画素電極31Gとの間には第1絶縁層25及び第2絶縁層26が配置されている。発光画素20Rの電源線14と画素電極31Rとの間には第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27が配置されている。このような光共振構造によれば、第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27を形成する際に、それぞれの膜厚を所定の範囲で制御すれば、有機EL素子30B,30G,30Rのそれぞれから所望のピーク波長の光を取り出すことができる。すなわち、透光膜を段階的にエッチングして発光画素ごとに光学的な距離を異ならせる光学距離調整層を構成又は形成する場合に比べて、発光画素20B,20G,20Rごとの光共振構造における光学的な距離を精度よく調整でき、それぞれに所望の光学特性を有する発光画素20B,20G,20Rを備えた有機EL装置100を提供又は製造することができる。
(2)画素電極31Bは、第2絶縁層26に形成された第1開口26aに露出した第1絶縁層25上に配置されている。X方向において画素電極31Bに隣り合う画素電極31Gは、第3絶縁層27に形成された第2開口27aに露出した第2絶縁層26上に配置されている。また、X方向において画素電極31Gに隣り合う画素電極31Rは、第3絶縁層27上に配置されている。第1絶縁層25は発光画素20B,20G,20Rに亘って共通に形成され、第2絶縁層26は発光画素20G,20Rに亘って共通に形成されている。したがって、X方向に隣り合う画素電極31Bと画素電極31Gとの間の段差は、第2絶縁層26の平均膜厚d2に相当する。また、X方向に隣り合う画素電極31Gと画素電極31Rとの間の段差は、第3絶縁層27の平均膜厚d3に相当する。それゆえに、発光画素ごとに反射層と画素電極との間に膜厚が異なる絶縁層を島状に配置する場合に比べて、画素電極間に生ずる段差を小さくすることができる。よって、当該段差を跨いで形成される機能層32、対向電極33、封止層40が当該段差の影響を受け難い。つまり、当該段差を跨ぐ対向電極33や配線などの断線を防止することができる。また、対向電極33を覆う第1封止膜41の封止性能を向上させることができる。また、例えば、第2絶縁層26と第3絶縁層27の平均膜厚をほぼ同じにすれば、画素電極間の段差のばらつきを小さくできる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電気光学装置としての有機EL装置について、
図8〜
図10を参照して説明する。
図8は第2実施形態の有機EL装置の発光画素の構成を示す概略平面図、
図9は第2実施形態の有機EL装置の発光画素のX方向における構造を示す概略断面図、
図10は第2実施形態の有機EL装置の発光画素のY方向における構造を示す概略断面図である。第2実施形態の電気光学装置としての有機EL装置は、上記第1実施形態の有機EL装置100に対して発光画素20B,20G,20Rにおける光共振構造を異ならせたものである。したがって、有機EL装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。また、
図9は第1実施形態における
図4に対応する概略断面図であり、
図10は第1実施形態における
図5に対応する概略断面図である。
【0079】
図8に示すように、本実施形態の有機EL装置200における発光画素20B,20G,20Rのそれぞれは、第1実施形態と同様に平面視で矩形状となっており、長手方向がY方向に沿って配置されている。発光画素20B,20G,20Rに対応して、有機EL素子30B,30G,30Rが設けられている。
【0080】
発光画素20B,20G,20Rの各画素電極31B,31G,31Rも平面視で略矩形状であり、長手方向の上方側に、画素電極31B,31G,31Rのそれぞれと第3トランジスター23との電気的に接続を図るためのコンタクト部31Bc,31Gc,31Rcが配置されている。
【0081】
詳しくは後述するが、X方向において隣り合う画素電極31Bと画素電極31Gとに対応した第1開口26bが第2絶縁層26に設けられている。また、画素電極31Bに対応した第2開口27bが第3絶縁層27に設けられている。
【0082】
加えて、発光画素20B,20G,20Rのそれぞれは、隣り合う画素電極31同士を電気的に絶縁すると共に、画素電極31B,31G,31R上に機能層32と接する領域を規定する開口29B,29G,29Rが形成された絶縁構造を有している。
【0083】
次に、
図9及び
図10を参照して、本実施形態における発光画素20B,20G,20Rの構造について説明する。なお、素子基板10の電源線14よりも下層における画素回路の構造は、第1実施形態と同じであるため、第1実施形態に対して異なる電源線14よりも上層の光共振構造について説明する。
【0084】
図9に示すように、電源線14を覆って第1絶縁層25が形成されている。第1絶縁層25は、発光画素20B,20G,20Rに亘って共通に形成されている。
第1絶縁層25に第2絶縁層26が積層されている。第2絶縁層26には、X方向において隣り合う画素電極31Bと画素電極31Gとに対応した第1開口26bが形成されている。画素電極31Bは第1開口26bにおいて第1絶縁層25上に形成されている。
第2絶縁層26に第3絶縁層27が積層されている。詳しくは、第3絶縁層27は、第1開口26bのほぼ半分を埋めるように、第2絶縁層26に積層されている。これによって、第3絶縁層27には、画素電極31Bに対応した第2開口27bが形成される。画素電極31Gは第1開口26bにおいて第3絶縁層27上に形成されている。また、画素電極31Rは第2絶縁層26を覆う第3絶縁層27上に形成されている。言い換えれば、第3絶縁層27は、X方向において隣り合う画素電極31Gと画素電極31Rとに対応して形成されている。
【0085】
各画素電極31B,31G,31Rの外縁を覆って第4絶縁層29が形成される。これにより、画素電極31B,31G,31Rが互いに絶縁状態となり、画素電極31B,31G,31Rのそれぞれの上に開口29B,29G,29Rが形成される。
【0086】
機能層32は、各画素電極31B,31G,31Rに接し、発光画素20B,20G,20Rに共通して形成されている。対向電極33は機能層32を覆って形成されている。第1封止膜41は対向電極33を覆って形成されている。緩衝層42は少なくとも表示領域Eに亘って第1封止膜41を覆うように形成されている。第2封止膜43は、緩衝層42を覆って形成されている。また、
図9では図示を省略しているが、第2封止膜43は、緩衝層42で覆われていない第1封止膜41の部分を覆って形成されている。
緩衝層42によって平坦化された第2封止膜43上、つまり封止層40上に、発光画素20B,20G,20Rに対応したフィルター層50B,50G,50R(カラーフィルター50)が形成されている。
【0087】
次に、
図10を参照して、発光画素20(発光画素20G)のY方向における光共振構造について説明する。
図10に示すように、Y方向に隣り合う画素電極31Gは、第2絶縁層26の第1開口26bを埋めた第3絶縁層27上に形成されている。また、画素電極31Gは、第3トランジスター23のソース電極23sに電気的に接続されるコンタクトホール107と接するように、第3絶縁層27上に形成されている。コンタクトホール107は、絶縁層28(第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27)を貫通して形成されており、コンタクトホール107と画素電極31Gとが接した部分がコンタクト部31Gcである。他の発光画素20B,20Rにおける画素電極31B,31Rと対応する第3トランジスター23のソース電極23sとの電気的な接続は、発光画素20Gのコンタクト部31Gcと同様な構造のコンタクト部31Bc、31Rcによって実現されている。
【0088】
基材10s上に形成された、画素回路、光共振構造を含む有機EL素子30、封止層40、カラーフィルター50を含む素子基板10は、樹脂層60を介して封止基板70と貼り合わされている。つまり、有機EL装置200もまたトップエミッション型の発光装置である。
【0089】
<電気光学装置の製造方法>
次に、本実施形態の電気光学装置の製造方法としての有機EL装置200の製造方法について、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は第2実施形態の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、
図12(a)〜(f)は第2実施形態の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0090】
本実施形態の有機EL装置200の製造方法は、
図11に示すように、第1絶縁層の形成工程(ステップS11)、第2絶縁層の形成工程(ステップS12)、第1開口の形成工程(ステップS13)、第3絶縁層の形成工程(ステップS14)、第2開口の形成工程(ステップS15)、画素電極の形成工程(ステップS16)、第4絶縁層の形成工程(ステップS17)、機能層の形成工程(ステップS18)、対向電極の形成工程(ステップS19)を含んでいる。
【0091】
図11のステップS11〜ステップS12では、
図12(a)に示すように、電源線14を覆うように第1絶縁層25を形成する。続いて、第1絶縁層25に第2絶縁層26を積層形成する。本実施形態では、第1絶縁層25を形成する絶縁材料として窒化シリコン(SiN)が用いられている。第2絶縁層26を形成する絶縁材料として酸化シリコン(SiO
2)が用いられている。このように、異なる絶縁材料が用いられているのは、この後に行われる第2絶縁層26及び第3絶縁層27のパターニングにおいて、第1絶縁層25に対してエッチング選択比を持たせるためである。そして、ステップS13へ進む。
【0092】
図11のステップS13では、
図12(b)に示すように、第2絶縁層26を覆う感光性レジスト層を形成し、露光・現像することによりレジストパターン83を形成する。レジストパターン83には第1開口26b(
図12(c)参照)に対応した開口83aが形成される。そして、開口83aに露出した第2絶縁層26を部分的にエッチングして、
図8及び
図12(c)に示すように、平面視で発光画素20Bの画素電極31Bと発光画素20Gの画素電極31Gとが後に配置される第1開口26bを形成する。酸化シリコンを用いて形成された第2絶縁層26のエッチング方法としては、例えばCF
4、C
2F
8などのフッ素を含む処理ガスを用いたドライエッチング法を用いることが好ましい。そして、ステップS14へ進む。
【0093】
図11のステップS14〜ステップS15では、
図12(d)に示すように、まず、第2絶縁層26に形成された第1開口26bを埋めると共に、第2絶縁層26を覆う第3絶縁層27を形成する。第3絶縁層27を形成する絶縁材料として酸化シリコン(SiO
2)が用いられている。そして、第3絶縁層27を覆う感光性レジスト層を形成し、露光・現像することによりレジストパターン84を形成する。レジストパターン84には第2開口27b(
図12(e)参照)に対応した開口84aが形成される。レジストパターン84は、開口84aの一方の端が第2絶縁層26の第1開口26bの一方の端と同じ位置にあり、第1開口26bを埋めた第3絶縁層27の面積うち、ほぼ半分が露出するように第3絶縁層27を覆って形成されている。さらに、開口84a内に露出させた第3絶縁層27を部分的にエッチングして、
図8及び
図12(e)に示すように、平面視で発光画素20Bの画素電極31Bが後に配置される第2開口27bを第1開口26b内に形成する。第3絶縁層27のエッチングも第2絶縁層26と同様にドライエッチング法を用いる。そして、ステップS16へ進む。
【0094】
図11のステップS16では、第2開口27bを被覆すると共に、第3絶縁層27を覆う透明導電膜を成膜し、これをパターニングすることにより、
図12(f)に示すように、第2開口27b内に画素電極31Bを形成し、第1開口26bを埋めた第3絶縁層27上に画素電極31Gを形成する。また同時に、第2絶縁層26を覆う第3絶縁層27上に画素電極31Rを形成する。透明導電膜は例えばITO(Indium Tin Oxide)膜、IZO(Indium Zinc Oxide)膜である。画素電極31B,31G,31Rの膜厚は、およそ100nmである。これにより、電源線14と画素電極31Bとの間には第1絶縁層25が存在し、電源線14と画素電極31Gとの間には第1絶縁層25と第3絶縁層27とが存在し、電源線14と画素電極31Rとの間には第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27が存在することになる。第1絶縁層25の平均膜厚をd1とし、第2絶縁層26の平均膜厚をd2とし、第3絶縁層27の平均膜厚をd3とすると、X方向において隣り合う画素電極31Bと画素電極31Gとの間の絶縁層28の膜厚は、d1にd3を加えたd4となる。また、X方向に隣り合う画素電極31Gと画素電極31Rとの間の絶縁層28の膜厚は、d1にd2とd3とを加えたd5となる。言い換えれば、X方向における画素電極31Bと画素電極31Gとの間にはd3に相当する段差が生ずる。また、X方向における画素電極31Gと画素電極31Rとの間には、d2に相当する段差が生ずる。
【0095】
上記第2実施形態の効果は、以下の通りである。
(1)発光画素20Bの反射層として機能する電源線14と画素電極31Bとの間には第1絶縁層25が配置されている。発光画素20Gの電源線14と画素電極31Gとの間には第1絶縁層25及び第3絶縁層27が配置されている。発光画素20Rの電源線14と画素電極31Rとの間には第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27が配置されている。このような光共振構造によれば、第1絶縁層25、第2絶縁層26、第3絶縁層27を形成する際に、それぞれの膜厚を所定の範囲で制御すれば、有機EL素子30B,30G,30Rのそれぞれから所望のピーク波長の光を取り出すことができる。すなわち、透光膜を段階的にエッチングして発光画素ごとに光学的な距離を異ならせる光学距離調整層を構成又は形成する場合に比べて、発光画素20B,20G,20Rごとの光共振構造における光学的な距離を精度よく調整でき、それぞれに所望の光学特性を有する発光画素20B,20G,20Rを備えた有機EL装置200を提供又は製造することができる。
(2)画素電極31Bは、第2絶縁層26に形成された第1開口26bに露出した第1絶縁層25上に配置されている。X方向において画素電極31Bに隣り合う画素電極31Gは、第1開口26bを埋めた第3絶縁層27上に配置されている。また、X方向において画素電極31Gに隣り合う画素電極31Rは、第2絶縁層26に積層された第3絶縁層27上に配置されている。第1絶縁層25は発光画素20B,20G,20Rに亘って共通に形成され、第2絶縁層26は発光画素20Rに対応して形成されている。第3絶縁層27は、画素電極31Gと画素電極31Rとに対応して形成されている。したがって、X方向に隣り合う画素電極31Bと画素電極31Gとの間の段差は、第3絶縁層27の平均膜厚d3に相当する。また、X方向に隣り合う画素電極31Gと画素電極31Rとの間の段差は、第2絶縁層26の平均膜厚d2に相当する。それゆえに、発光画素ごとに反射層と画素電極との間に膜厚が異なる絶縁層を島状に配置する場合に比べて、画素電極間に生ずる段差を小さくすることができる。よって、当該段差を跨いで形成される機能層32、対向電極33、封止層40が当該段差の影響を受け難い。つまり、当該段差を跨ぐ対向電極33や配線などの断線を防止することができる。また、対向電極33を覆う第1封止膜41の封止性能を向上させることができる。また、例えば、第2絶縁層26と第3絶縁層27の平均膜厚をほぼ同じにすれば、画素電極間の段差のばらつきを小さくできる。
【0096】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態としての電子機器について、
図13を参照して説明する。
図13は電子機器の一例としてのヘッドマウントディスプレイを示す概略図である。
【0097】
図13に示すように、本実施形態の電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ(HMD)1000は、左右の目に対応して設けられた2つの表示部1001を有している。観察者Mはヘッドマウントディスプレイ1000を眼鏡のように頭部に装着することにより、表示部1001に表示された文字や画像などを見ることができる。例えば、左右の表示部1001に視差を考慮した画像を表示すれば、立体的な映像を見て楽しむこともできる。
【0098】
表示部1001には、上記第1実施形態の自発光型の表示装置である有機EL装置100(又は上記第2実施形態の有機EL装置200)が搭載されている。したがって、所望の光学特性が得られ、優れた表示品質を有する軽量なヘッドマウントディスプレイ1000を提供することができる。
【0099】
ヘッドマウントディスプレイ1000は、観察者Mが表示部1001の表示内容を直接見る構成に限定されず、ミラーなどによって間接的に表示内容を見る構成としてもよい。
また、ヘッドマウントディスプレイ1000は、2つの表示部1001を有することに限定されず、左右の目のいずれかに対応させた1つの表示部1001を備える構成としてもよい。
【0100】
なお、上記有機EL装置100又は上記有機EL装置200が搭載される電子機器は、ヘッドマウントディスプレイ1000に限定されない。例えば、ヘッドアップディスプレイや、デジタルカメラのEVF(電子ビューファー)、携帯型情報端末、ナビゲーターなどの表示部を有する電子機器が挙げられる。また、表示部に限定されず、本発明を照明装置や露光装置にも適用することができる。
【0101】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学及び該電気光学の製造方法ならびに該電気光学を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0102】
(変形例1)上記有機EL装置100における第3絶縁層27の配置は、これに限定されない。
図14は変形例1の有機EL装置における第3絶縁層の配置を示す概略平面図である。例えば、
図14に示すように、変形例1の有機EL装置150は、画素電極31Bに対応して第2絶縁層26に設けられた第1開口26aを有する。第1開口26aに露出した第1絶縁層25上に画素電極31Bが配置される。X方向において画素電極31Bに隣り合う画素電極31Gは、第1絶縁層25に積層された第2絶縁層26上に配置される。また、X方向において画素電極31Gに隣り合う画素電極31Rは、画素電極31Rに対応して第2絶縁層26上に島状に設けられた第3絶縁層27上に配置されている。これによれば、画素電極31Gの周辺部、特にコンタクト部31Gcの周辺には、第3絶縁層27が配置されないので、段差を跨ぐ画素電極31Gや他の配線における抵抗上昇などを低減できる。同様に、発光画素20Rのコタクト部31Rcの周辺部にも第3絶縁層27が配置されないので、同様な効果が得られる。
【0103】
(変形例2)上記有機EL装置200における第3絶縁層27の配置は、これに限定されない。
図15は変形例2の有機EL装置における第3絶縁層の配置を示す概略平面図である。例えば、
図15に示すように、変形例2の有機EL装置250は、画素電極31Bと画素電極31Gとに対応して第2絶縁層26に設けられた第1開口26bを有する。第1開口26bに露出した第1絶縁層25上に画素電極31Bが配置される。X方向において画素電極31Bに隣り合う画素電極31Gは、第1開口26bを埋めると共に、画素電極31Gと画素電極31Rとに対応して島状に配置された第3絶縁層27上に配置される。また、X方向において画素電極31Gに隣り合う画素電極31Rは、上記島状に配置された第3絶縁層27上に配置されている。これによれば、画素電極31G及び画素電極31Rの周辺部、特にコンタクト部31Gc,31Rc側には、第3絶縁層27が配置されないので、段差を跨ぐ画素電極31G,31Rや他の配線における抵抗上昇などを低減できる。また、X方向における画素電極31Gと画素電極31Rとの間の領域を平坦化できる。つまり、X方向における画素電極31Gと画素電極31Rとの間において段差が生ずることを低減できる。
【0104】
(変形例3)上記有機EL装置100又は有機EL装置200において、発光画素20B,20G,20Rの構成は、これに限定されない。例えば、カラーフィルター50は、素子基板10側に形成されることに限定されず、封止基板70側に形成されていてもよい。さらには、カラーフィルター50は必須ではなく、発光画素20B,20G,20Rのそれぞれにおいて有機EL素子30から所望の色の発光が得られる構成としてもよい。