(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗員によって選択された運転支援モードが、前記先行車の走行軌跡を追従するように乗員の運転操作を支援する運転支援モードであり、かつ前記基準走行経路が前記第2目標走行経路の場合、
前記所定値を、前記第1目標走行経路を前記基準走行経路とした場合の前記所定値よりも小さい値とした
請求項2または請求項3に記載の車両の運転支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑み、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援を確実に抑制できる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、自車の前方に位置する障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段が前記障害物を検知した場合、前記障害物への衝突を回避する衝突回避支援を、所定タイミングで開始する衝突回避支援手段とを備えた車両の運転支援装置であって、前記自車の前方を走行する先行車を検出する先行車検出手段と、前記自車が位置する走行路内の走行を維持するような第1目標走行経路を算出する第1目標走行経路算出手段と、前記先行車の走行軌跡を追従するような第2目標走行経路を算出する第2目標走行経路算出手段と、現在の自車の走行挙動に基づいて予測される予測走行経路を算出する予測走行経路算出手段と、前記第1目標走行経路または前記第2目標走行経路を、所定条件に応じた基準走行経路として決定する基準走行経路決定手段とを備え、前記衝突回避支援手段が、前記基準走行経路に対する前記予測走行経路の差が所定値以下の場合、前記所定タイミングを遅らせる構成であることを特徴とする。
【0011】
上記障害物は、例えば、路上に駐車された駐車車両、歩行者、あるいは路上に放置された落下物などとすることができる。
上記衝突回避支援とは、例えば、警告音などによる乗員への報知による支援、自動的な制動による支援、あるいは自動的な操舵による支援などをいう。
【0012】
上記第1目標走行経路は、例えば、走行路内において、走行路の略中央を走行する走行経路、あるいは自車前方に位置する駐車車両などを回避するような走行経路などとすることができる。
上記所定条件とは、乗員の運転操作を支援する複数の運転支援モードのうち、利用者によって選択された運転支援モード、走行路の検出可否、先行車の検出可否、あるいはこれらを組み合わせた条件とすることができる。
【0013】
この発明により、車両の運転支援装置は、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援を確実に抑制することができる。
具体的には、第1目標走行経路は、走行路内を維持するような走行経路のため、例えば、走行路内に存在する駐車車両に衝突するような危険な走行経路、あるいは区画線を超えて走行するような危険な走行経路となる可能性が低い。
【0014】
一方、第2目標走行経路は、先行車の走行軌跡を追従するような走行経路のため、例えば、先行車の前方に駐車車両が存在する場合、駐車車両への衝突を回避するような安全な走行経路である可能性が高い。
【0015】
そして、第1目標走行経路または第2目標走行経路を基準走行経路として、予測走行経路との差を算出することで、車両の運転支援装置は、比較的安全な走行経路である可能性が高い基準走行経路に、予測走行経路が略追従しているか否かを容易に判定することができる。
【0016】
つまり、自車前方に障害物を検知した際、基準走行経路に対する予測走行経路の差が小さいほど、車両の運転支援装置は、比較的安全な走行経路を略追従するように、自車が走行していると容易に判断することができる。
【0017】
例えば、基準走行経路が本線に沿った走行経路で、自車が位置する本線の延長線で分岐した支線に駐車車両が位置する場合、車両の運転支援装置は、基準走行経路に対する予測走行経路の差が所定値以下であれば、支線に位置する駐車車両を障害物として検出したとしても、衝突の危険性が低いと容易に判断することができる。
【0018】
これにより、車両の運転支援装置は、衝突回避支援を開始する所定タイミングを遅らせる機会を、基準走行経路と予測走行経路に基づいて適切に判断することができる。さらに、衝突回避支援の開始を中止しているわけではないため、車両の運転支援装置は、遅らせたタイミングに達した際、自車前方に障害物を検知していれば、衝突回避支援を即座に開始することができる。
【0019】
従って、車両の運転支援装置は、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援を確実に抑制することができる。
【0020】
この発明の態様として、乗員の運転操作を支援する複数の運転支援モードのうち1つを選択する乗員による選択操作を受付ける支援モード選択手段と、前記自車が位置する前記走行路を検出する走行路検出手段とを備え、前記所定条件を、前記乗員によって選択された前記運転支援モード、前記走行路の検出可否、及び前記先行車の検出可否として、前記基準走行経路決定手段が、前記乗員によって選択された前記運転支援モード、前記走行路の検出可否、及び前記先行車の検出可否に基づいて、前記第1目標走行経路、または前記第2目標走行経路を前記基準走行経路として決定する構成である。
【0021】
上記運転支援モードとは、例えば、自車前方の先行車に追従して走行する運転支援モード、予め定めた一定速度を維持するように自車の走行速度を制御して走行する運転支援モード、制限速度を超えないように走行速度を制御して走行する運転支援モード、及び乗員の意図した操作を優先する運転支援モードなどとすることができる。
【0022】
この発明により、車両の運転支援装置は、不要な衝突回避支援をより安全に抑制することができる。
具体的には、自車が位置する走行路を継続して検出できる場合、第1目標走行経路は、走行路を継続して検出できない場合に比べて、その安全性が高くなり易い。同様に、先行車の走行軌跡を継続して検出できる場合、第2目標走行経路は、先行車の走行軌跡を継続して検出できない場合に比べて、その安全性が高くなり易い。
【0023】
一方、乗員によって選択された運転支援モードには、例えば、自車が位置する走行路の検出、あるいは先行車の検出が必要な場合がある。このため、乗員によって選択された運転支援モードでの走行は、走行路の検出可否や先行車の検出可否によって、その安全性が左右されるおそれがある。
【0024】
そこで、乗員によって選択された運転支援モード、走行路の検出可否、及び先行車の検出可否に基づいて、第1目標走行経路または第2目標走行経路を基準走行経路として決定することで、車両の運転支援装置は、より安全な基準走行経路を決定することができる。
【0025】
これにより、車両の運転支援装置は、衝突回避支援を開始する所定タイミングを遅らせる機会を、より安全な基準走行経路に基づいて安全に、かつより適切に判断することができる。
従って、車両の運転支援装置は、乗員によって選択された運転支援モード、区画線の検出可否、及び先行車の検出可否に基づいて基準走行経路を決定することで、不要な衝突回避支援をより安全に抑制することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記第1目標走行経路算出手段を、前記自車が位置する前記走行路の略中央を走行するような前記第1目標走行経路を算出する構成として、前記第1目標走行経路を前記基準走行経路とした場合の前記所定値を、前記第2目標走行経路を前記基準走行経路とした場合の前記所定値よりも大きい値としたものである。
【0027】
この発明により、車両の運転支援装置は、その機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援をより確実に抑制することができる。
具体的には、例えば、先行車の前方に駐車車両が存在する場合、第2目標走行経路は、駐車車両への衝突を回避するような安全な走行経路である可能性が高い。
【0028】
しかしながら、第2目標走行経路は、その安全性が先行車を運転操作する乗員の判断によるところが大きいため、障害物への衝突を回避するような走行経路であっても、障害物との間隔を十分に確保した走行経路、あるいは区画線を逸脱しない走行経路でない可能性がある。
つまり、先行車の走行軌跡を追従するような第2目標走行経路に比べて、走行路の略中央を走行するような第1目標走行経路の方が、障害物への衝突の可能性が低い場合がある。
【0029】
このため、走行路の略中央を走行するような第1目標走行経路を基準走行経路とした場合、車両の運転支援装置は、基準走行経路に対する予測走行経路の差が多少大きくても、例えば駐車車両や対向車などを障害物に衝突する危険性が、第2目標走行経路を基準走行経路とした場合に比べて低くなる。
【0030】
そこで、第1目標走行経路が走行路の略中央を走行するような走行経路の場合、車両の運転支援装置は、第2目標走行経路を基準走行経路とした場合よりも大きい所定値にすることで、不要な衝突回避支援をより確実に抑制することができる。
【0031】
従って、車両の運転支援装置は、走行路の略中央を走行するような第1目標走行経路を基準走行経路とした場合には所定値を大きくすることで、その機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援をより確実に抑制することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、乗員によって選択された運転支援モードが、前記先行車の走行軌跡を追従するように乗員の運転操作を支援する運転支援モードであり、かつ前記基準走行経路が前記第2目標走行経路の場合、前記所定値を、前記第1目標走行経路を前記基準走行経路とした場合の前記所定値よりも小さい値としたものである。
【0033】
この発明により、車両の運転支援装置は、先行車に対する自車の追従性をより厳しく判定することができる。
この際、乗員によって選択された運転支援モードが、先行車の走行軌跡を追従するように乗員の運転操作を支援する運転支援モードの場合、運転支援による走行は、自車前方の障害物への衝突を、先行車の走行軌跡に沿って回避する走行となる。
【0034】
そこで、先行車の走行軌跡を追従する運転支援モードの場合、第2目標走行経路に対する予測走行経路の追従性をより厳しく判定することで、車両の運転支援装置は、障害物への衝突を安全に回避できる走行経路から逸脱する可能性があるか否かをより厳しく判定することができる。
【0035】
これにより、車両の運転支援装置は、衝突回避支援を開始する機会をより適切に判断することができるため、必要な衝突回避支援の開始を誤って抑制することを防止できる。
従って、車両の運転支援装置は、必要な衝突回避支援を誤って抑制することの防止と、不要な衝突回避支援の抑制とを両立することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記障害物への衝突を回避する乗員の回避動作を検出する回避動作検出手段を備え、前記衝突回避支援手段が、乗員による前記回避動作を前記回避動作検出手段が検出した場合、前記所定値を大きくする構成である。
上記回避動作とは、乗員によるアクセル操作、乗員によるブレーキ操作、あるいは乗員によるステアリング操作などをいう。
【0037】
この発明により、車両の運転支援装置は、衝突回避支援を開始するタイミングをさらに遅らせることができる。
このため、乗員が自車前方の障害物を視認して、障害物への衝突を回避する回避動作を開始した際、車両の運転支援装置は、乗員が回避動作を開始しているにも関わらず、衝突回避支援が開始されることを抑制できる。
【0038】
これにより、車両の運転支援装置は、障害物への衝突を回避する乗員の運転操作に対して、衝突回避支援が開始されることを抑制でき、乗員に違和感や不快感を与えることを防止できる。
従って、車両の運転支援装置は、乗員による回避動作を検出した場合、所定値を大きくすることで、不要な衝突回避支援をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な衝突回避支援を確実に抑制できる車両の運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態における車両の運転支援装置1は、例えば自動車などの車両において、自車前方に駐車車両などの障害物を検出した場合、障害物への衝突を回避するために乗員を支援するような装置である。
このような車両の運転支援装置1について、
図1から
図5を用いて説明する。
【0042】
なお、
図1車両の運転支援装置1における内部構成のブロック図を示し、
図2は走行経路マップ19を説明する説明図を示し、
図3は第1目標走行経路L1を説明する説明図を示し、
図4は第2目標走行経路L2を説明する説明図を示し、
図5は予測走行経路L3を説明する説明図を示している。
【0043】
車両の運転支援装置1は、
図1に示すように、エンジン2、ブレーキ装置3と、ステアリング装置4と、スピーカー5と、自車前方の情報を取得するための車載カメラ6、及びミリ波レーダ7と、自車の走行挙動を検出するための車速センサ8、加速度センサ9、ヨーレートセンサ10、操舵角センサ11、アクセルセンサ12、及びブレーキセンサ13と、自車の現在位置を特定するための位置情報検出部14、及びナビゲーションシステム15と、乗員による運転支援モードの選択操作を受付ける運転支援モード選択部16と、乗員による車速設定の入力操作を受付ける車速設定入力部17と、これらの動作を制御する電子制御装置(Electronic Control Unit、以下「ECU」と呼ぶ)18とを備えている。
【0044】
エンジン2は、詳細な図示を省略するが、エンジン本体、エンジン本体に燃料を供給する燃料噴射装置、エンジン本体に新気を供給するスロットルバルブ、燃料と新気との混合気に点火する点火装置、及びこれらを制御するエンジン制御部などで構成されている。このエンジン2は、ECU18からの出力信号を受信したエンジン制御部によって、そのエンジン出力、及びエンジン回転数が制御される。
【0045】
ブレーキ装置3は、詳細な図示を省略するが、ブレーキキャリパー、ブレーキアクチュエータ、及びブレーキアクチュエータを制御するブレーキ制御部などで構成されている。このブレーキ装置3は、ECU18からの出力信号を受信したブレーキ制御部によって、制動力を発生させるように制御される。
【0046】
ステアリング装置4は、詳細な図示を省略するが、乗員による操舵操作を受け付けるステアリングホイール、ステアリングシャフト、ステアリングシャフトを介して乗員のステアリング操作を支援する電動モータ、及び電動モータを制御するステアリング制御部などで構成されている。このステアリング装置4は、ECU18からの出力信号を受信したステアリング制御部によって、自車の進行方向を変更するように電動モータなどが制御される。
【0047】
スピーカー5は、車室内に配置され、ECU18からの報知信号に基づいた警告音を出力して、障害物への衝突を乗員に報知する機能を有している。
車載カメラ6は、例えば、フロントウインドウの車室側上部に配置され、自車前方を撮像する機能と、撮像した画像データをECU18に出力する機能とを有している。
【0048】
ミリ波レーダ7は、例えば、フロントバンパー内に配置されたレーダ装置であって、自車前方へ向けてミリ波を照射波として照射する機能と、先行車、駐車車両、及び歩行者などで反射した反射波を受信する機能と、照射波及び反射波によって得られた情報をレーダ信号としてECU18に出力する機能とを有している。
【0049】
車速センサ8は、例えば、車輪に連結されたドライブシャフトの回転数を検出する機能と、検出した回転数を回転数信号としてECU18に出力する機能とを有している。
加速度センサ9は、例えば、車両の車室内などに配置されセンサであって、車両の前後方向に沿った縦加速度、及び車両の車幅方向に沿った横加速度を検出する機能と、検出した縦加速度及び横加速度を加速度信号としてECU18に出力する機能とを有している。
【0050】
ヨーレートセンサ10は、例えば、車両の車室内などに配置されたセンサであって、車両のヨーレートを検出する機能と、検出したヨーレートをヨーレート信号としてECU18に出力する機能とを有している。
操舵角センサ11は、乗員の操作によるステアリングホイールの操舵角を検出する機能と、検出した操舵角を操舵角信号としてECU18に出力する機能とを有している。
【0051】
アクセルセンサ12は、乗員によって操作されるアクセルペダルに一体的に設けられたセンサであって、アクセルペダルの踏込み量であるアクセル開度を検出する機能と、検出したアクセル開度をアクセル開度信号としてECU18に出力する機能とを有している。
ブレーキセンサ13は、乗員によって操作されるブレーキペダルに一体的に設けられたセンサであって、ブレーキペダルの踏込み量を検出する機能と、検出した踏込み量をブレーキ信号としてECU18に出力する機能とを有している。
【0052】
位置情報検出部14は、例えば、GPSシステムまたは/およびジャイロシステムなどで構成され、車両の現在位置を示す現在位置情報を検出する機能と、現在位置情報をECU18に出力する機能とを有している。
ナビゲーションシステム15は、地図情報を記憶する機能と、地図情報、及び位置情報検出部14が検出した現在位置情報に基づいて、自車の位置、自車周辺の道路、交差点、信号、及び建物を示す情報を閲覧可能に表示する機能とを有している。
【0053】
運転支援モード選択部16は、車両の車室内に設けられスイッチ類であって、複数の運転支援モードのうち1つを選択可能に構成されている。この運転支援モード選択部16は、乗員による運転支援モードの選択操作を受付ける機能と、選択された運転支援モードを運転支援モード選択情報としてECU18に出力する機能とを有している。
【0054】
なお、複数の運転支援モードとして、自車前方を走行する先行車の走行軌跡に追従して自車を走行させる先行車追従モードと、乗員によって設定入力された設定車速、または予めECU18に設定された設定車速を維持して自車を走行させる自動速度制御モードと、速度標識に基づいた制限速度、または乗員によって入力設定された設定速度を超えないように自車を走行させる速度制限モードと、乗員に対する運転支援を行わない、所謂オフモードである基本制御モードとが設定されているものとする。
【0055】
車速設定入力部17は、運転者による車速の設定入力操作を受付ける機能と、入力された車速を設定車速情報としてECU18に出力する機能とを有している。
ECU18は、CPU及びメモリなどをハード構成と、プログラム及びデータなどのソフト構成とで構成されている。
【0056】
さらに、ECU18は、車載カメラ6、ミリ波レーダ7、車速センサ8、加速度センサ9、ヨーレートセンサ10、操舵角センサ11、アクセルセンサ12、ブレーキセンサ13、位置情報検出部14、ナビゲーションシステム15、運転支援モード選択部16、及び車速設定入力部17が出力した各種情報を取得する機能と、取得した各種情報に基づいた各種処理を行う機能と、エンジン2、ブレーキ装置3、ステアリング装置4、及びスピーカー5の動作を制御する機能とを有している。
【0057】
加えて、ECU18には、複数の運転支援モード、目標走行経路、及び基準走行経路の関係を示す走行経路マップ19が記憶されている。
この走行経路マップ19は、
図2に示すように、運転支援モード欄、車線検出欄、先行車検出欄、目標走行経路欄、及び基準走行経路欄とで構成され、車線検出欄、先行車検出欄、目標走行経路欄、及び基準走行経路欄に登録された各種情報が、運転支援モード欄の運転支援モードに関連付けて登録されている。
【0058】
より詳しくは、運転支援モード欄には、乗員によって選択される運転支援モードを示す情報が登録されている。なお、運転支援モード欄には、上述した先行車追従モードが「先行車追従」、自動速度制御モードが「自動速度制御」、速度制限モードが「速度制限」、基本制御モードが「基本制御」として登録されている。
【0059】
車線検出欄には、自車が位置する車線を検出している場合を示す情報である「可」と、車線を検出できない場合を示す情報である「不可」とが、運転支援モード欄の各運転支援モードに関連付けて登録されている。
【0060】
先行車検出欄には、自車前方の先行車を検出している場合を示す情報である「可」と、先行車を検出していない場合を示す情報である「不可」とが、車線検出欄の「不可」に関連付けて登録され、先行車の検出を問わない場合を示す情報である「−」が車線検出欄の「可」に関連付けて登録されている。
【0061】
目標走行経路欄には、運転支援モード欄、車線検出欄、及び先行車検出欄の各情報の組合せに応じた最適な走行経路を示す情報が登録されている。この目標走行経路欄には、第1目標走行経路、第2目標走行経路、及び予測走行経路のいずれかが登録されている。
【0062】
基準走行経路欄には、後述する警告音による報知を開始する報知開始時間を判定する際の基準となる走行経路を示す情報が登録されている。この基準走行経路欄には、運転支援モード欄、車線検出欄、先行車検出欄、及び目標走行経路に登録された各情報の組合せに応じて、第1目標走行経路、または第2目標走行経路が登録されている。
【0063】
ここで、第1目標走行経路、第2目標走行経路、及び予測走行経路について、
図3から
図5の道路30を用いて説明する。
なお、道路30は、
図3から
図5に示すように、略直線に延びる直線区間31、直線区間31から緩やかにカーブしたカーブ区間32、及びカーブ区間32から略直線的に延びる直線区間33からなる片側一車線の道路である。この道路30において、自車である車両41は、左車線34の直線区間31をカーブ区間32へ向けて走行しているものとする。
【0064】
第1目標走行経路、第2目標走行経路、及び予測走行経路は、現時点から所定時間(例えば2〜4秒)経過後までの仮想の走行経路であって、車載カメラ6やミリ波レーダ7などから取得した各種情報に基づいて算出されている。
【0065】
第1目標走行経路L1は、
図3に示すように、左車線34における幅員略中央付近に沿って設定された仮想の走行経路である。より詳しくは、第1目標走行経路L1は、直線区間31、及び直線区間33では幅員略中央を通り、カーブ区間32では幅員略中央よりもやや内側(イン側)を通るように設定されている。
【0066】
また、第2目標走行経路L2は、
図4に示すように、車両41の前方を走行する先行車42の走行軌跡に沿って設定された仮想の走行経路である。
また、予測走行経路L3は、
図5に示すように、車速、操舵角、ヨーレートなど車両41の走行挙動に基づいて算出された車両41の予測走行経路である。
【0067】
次に、上述した構成の車両の運転支援装置1において、選択された運転支援モードに応じて乗員の運転操作を支援する運転支援の処理動作と、障害物への衝突回避を支援する衝突回避支援の処理動作とについて、
図7から
図11を用いて説明する。
【0068】
なお、
図6は運転支援の処理動作のフローチャートを示し、
図7は支線37を有する道路30を説明する説明図を示し、
図8は衝突回避支援の処理動作のフローチャートを示し、
図9は基準走行経路決定処理のフローチャートを示し、
図10は基準走行経路Lと予測走行経路L3との差Dを説明する説明図を示し、
図11はECUが出力する制御信号とTTCとの関係のタイムチャートを示している。
【0069】
まず、ECU18が実行する運転支援の処理動作について説明する。この運転支援の処理動作は、エンジン2が始動した直後に開始され、エンジン2が停止するまで繰り返し行われるものとする。
【0070】
運転支援の処理を開始すると、ECU18は、
図6に示すように、位置情報、自車前方情報、及びセンサ信号を取得する各種情報取得処理を開始する(ステップS101)。具体的には、ECU18は、位置情報検出部14が出力した現在位置情報、及びナビゲーションシステム15から取得した地図情報を、自車位置情報として取得する。
【0071】
さらに、ECU18は、車載カメラ6が出力した画像データ、及びミリ波レーダ7が出力したレーダ信号を、自車前方情報として取得する。加えて、ECU18は、車速センサ8、加速度センサ9、ヨーレートセンサ10、操舵角センサ11、アクセルセンサ12、及びブレーキセンサ13が出力した各信号を、センサ信号として取得する。
【0072】
その後、ECU18は、自車である車両41の走行挙動を示す走行挙動情報を算出する走行挙動情報算出処理を開始する(ステップS102)。具体的には、ECU18は、各種情報取得処理で取得したセンサ信号に基づいて、現在の車速、加速度、ヨーレート、操舵角、アクセル開度、及びブレーキ踏込量を算出して、走行挙動情報として一時記憶する。
【0073】
走行挙動情報を算出すると、ECU18は、ステップS101で取得した自車位置情報、及び自車前方情報に基づいて、自車前方の道路状況を解析、識別する道路状況識別処理を開始する(ステップS103)。
具体的には、ECU18は、自車である車両41の前方空間における道路形状を、自車前方情報に基づいて識別するとともに、道路形状情報として一時記憶する。この際、ECU18は、
図3及び
図7に示すように、車載カメラ6から取得した画像データを解析して、道路30上の道路区画線35や防護柵36を識別する。
【0074】
そして、ECU18は、道路区画線35や防護柵36の位置から、車両41が位置する左車線34の幅員方向両端を特定する。さらに、ECU18は、識別した幅員方向両端、及び自車位置情報に基づいて、左車線34の幅員W、及びカーブ区間32の曲率半径R(
図3参照)などを算出して、道路形状を示す道路形状情報を一時記憶する。
【0075】
なお、道路区画線35や防護柵36が途切れるなどした場合、ECU18は、道路区画線35や防護柵36が途切れる直前の道路形状、地図情報、車速、操舵角、加速度、及びヨーレートなどに基づいて、道路区画線35や防護柵36が途切れた部分の道路形状を類推して算出する。
【0076】
さらに、道路状況識別処理において、ECU18は、制限速度や信号機の点灯状態などを、自車位置情報、及び自車前方情報に基づいて識別するとともに、交通規制情報として一時記憶する。
加えて、ECU18は、自車前方情報に基づいて識別した障害物やその位置などを障害物情報として一時記憶するとともに、自車前方情報に基づいて識別した先行車やその走行軌跡などを先行車情報として一時記憶する。
【0077】
なお、障害物情報を取得する際、ECU18は、車両41の前方200m程度の範囲に存在する駐車車両や歩行者を障害物として識別する。例えば、
図7に示すように、左車線34の直線区間31から略直線的に延びて分岐した支線37に駐車車両43が位置する場合、ECU18は、車両41が支線37へ向かうか否かに関わらず、この駐車車両43を障害物として識別する。
【0078】
その後、ECU18は、第1目標走行経路L1、第2目標走行経路L2、及び予測走行経路L3を算出する走行経路算出処理を開始する(ステップS104)。このうち第1目標走行経路L1、及び予測走行経路L3は、乗員によって選択された運転支援モードに関わらず、逐次算出されているものとする。一方、第2目標走行経路L2は、乗員によって選択された運転支援モードに関わらず、車両41の前方に先行車42が検出されている場合に逐次算出されるものとする。
【0079】
詳述すると、第1目標走行経路L1を算出するためにECU18は、
図3に示すように、道路状況識別処理で取得した道路形状情報に基づいて予測される車両41の通過位置を、現時点から一定時間間隔で複数算出して、車両41の仮想の通過位置を示す目標通過点P1,2として設定する。
【0080】
この際、ECU18は、
図7に示すように、直線区間31から分岐した支線37を有する道路30において、自車が位置する直線区間31の防護柵36と連続するように道路区画線35がカーブ区間32に設けられた場合、複数の目標通過点P1,P2を、支線37上ではなく左車線34上に算出する。
【0081】
具体的には、ECU18は、
図3に示すように、車両41の車幅方向略中央が、左車線34における幅員略中央を通るように、直線区間31、及び直線区間33における幅員略中央に目標通過点P1を設定する。
一方、カーブ区間32において、ECU18は、幅員略中央を通る円弧Vの略中央からやや内側(イン側)へ所定のオフセット量Fだけオフセットした位置に、1つの目標通過点P2を設定する。なお、上述した所定のオフセット量Fは、カーブ区間32の幅員W、曲率半径R、及び車両41の車幅CWに基づいて算出された値とする。
【0082】
そして、ECU18は、目標通過点P2を通って、直線区間31の目標通過点P1と、直線区間33の目標通過点P1とを滑らかに繋ぐように、複数の目標通過点P1をカーブ区間32に算出する。
このようにして算出した目標通過点P1,P2を繋ぎ合わせることで、ECU18は、第1目標走行経路L1を算出する。
【0083】
また、第2目標走行経路L2を算出するためにECU18は、
図4に示すように、各種情報取得処理で取得した自車前方情報、及び走行挙動情報算出処理で取得した走行挙動情報に基づいて、車両41の前方を走行する先行車42の位置、及び相対速度を連続して算出して、先行車42の走行軌跡を示す走行軌跡情報を取得する。
【0084】
その後、ECU18は、走行軌跡情報に基づいて、先行車42の走行軌跡に重畳するような車両41の通過位置を、現時点から一定時間間隔で複数算出して、車両41の仮想の通過位置を示す目標通過点P3として設定する。このようにして算出した複数の目標通過点P3を繋ぎ合わせることで、ECU18は、第2目標走行経路L2を算出する。
【0085】
また、予測走行経路L3を算出するためにECU18は、
図5に示すように、走行挙動情報算出処理で取得した走行挙動情報に基づいて予測される車両41の通過位置を、現時点から一定時間間隔で複数算出して、車両41の仮想の通過位置を示す目標通過点P4として設定する。このようにして算出した複数の目標通過点P4を繋ぎ合わせることで、ECU18は、予測走行経路L3を算出する。
【0086】
走行経路算出処理を終了すると、ECU18は、
図6に示すように、現在の運転支援モードに応じた目標走行経路を決定する目標走行経路決定処理を開始する(ステップS105)。
具体的には、ECU18は、走行経路マップ19を参照して、現在の運転支援モード、車線の検出可否、及び先行車の検出可否に基づいて、目標走行経路欄に登録された走行経路を、運転支援モードに対応した目標走行経路として決定する。
【0087】
例えば、現在の運転支援モードが先行車追従モードで、かつ自車が位置する車線を検出できないが、先行車を検出した場合、ECU18は、走行経路マップ19に基づいて、第2目標走行経路L2を、運転支援モードに対応した目標走行経路として決定する。
あるいは、現在の運転支援モードが自動速度制御モードで、かつ車線を検出している場合、先行車の検出可否に関わらず、予測走行経路L3を、運転支援モードに対応した目標走行経路として決定する。
【0088】
走行経路選択処理を終了すると、ECU18は、決定された目標走行経路を補正する走行経路補正処理を開始する(ステップS106)。具体的には、ECU18は、例えば、信号機が「赤」の場合、車両41が停止線で停止する走行経路となるように、目標走行経路を補正する第1補正処理を、道路状況識別処理で取得した交通規制情報に基づいて行う。
【0089】
さらに、ECU18は、例えば、車両41の前方に障害物が位置する場合、障害物への衝突を回避する走行経路となるように、目標走行経路を補正する第2補正処理を、道路状況識別処理で取得した障害物情報に基づいて行う。
走行経路補正処理を終了すると、ECU18は、現在の運転支援モードが基本制御モードであるか否かを判定する(ステップS107)。
【0090】
現在の運転支援モードが基本制御モードでない場合(ステップS107:No)、ECU18は、運転支援制御信号出力処理を開始して(ステップS108)、補正された目標走行経路に沿って車両41が走行するように、運転支援モードに応じた制御信号を、エンジン2、ブレーキ装置3、及びステアリング装置4に出力する。その後、ECU18は、処理をステップS101に戻して、エンジン2が停止するまでステップS101からステップS108の処理を繰返す。
【0091】
例えば、先行車追従モードが選択されている場合、ECU18は、車速に応じた車間距離を維持しながら、補正された目標走行経路に沿って車両41が走行するように、エンジン2の制御、ブレーキ装置3の制御、及びステアリング装置4の制御を行う。
【0092】
また、自動速度制御モードが選択されている場合、ECU18は、設定車速を維持しながら、補正された目標走行経路に沿って車両41が走行するように、エンジン2の制御、及びブレーキ装置3の制御を行う。
なお、アクセルセンサ12が出力したアクセル開度信号、及びブレーキセンサ13が出力したブレーキ信号を検出した場合、ECU18は、乗員の意思を優先して、アクセルペダルの踏込み量、及びブレーキペダルの踏込み量に応じて、エンジン2の制御、及びブレーキ装置3の制御を行う。
【0093】
さらに、自車前方の先行車に追いついた場合、ECU18は、車速に応じた車間距離を維持しながら走行するように、エンジン2の制御、及びブレーキ装置3の制御を行い、自車前方から先行車が離脱すると、再び設定車速に復帰するようにエンジン2の制御、及びブレーキ装置3の制御を行う。
【0094】
また、車速制限モードが選択されている場合、ECU18は、制限速度を維持しながら、補正された目標走行経路に沿って車両41が走行するように、エンジン2の制御、及びブレーキ装置3の制御を行う。
なお、アクセルセンサ12が出力したアクセル開度信号を検出した場合、ECU18は、アクセルペダルの踏込み量が制限速度を超える踏込み量であっても、制限速度を超えないようにエンジン2の制御を行う。
【0095】
一方、上述したステップS107において、現在の運転支援モードが基本制御モードの場合(ステップS107:Yes)、乗員の運転操作に応じてエンジン2、ブレーキ装置3、及びステアリング装置4が制御されるため、ECU18は、処理をステップS101に戻して、エンジン2が停止するまでステップS101からステップS108の処理を繰返す。
【0096】
このようにして、車両の運転支援装置1は、運転支援モードに対応した目標走行経路を車両41が走行するように、エンジン2、ブレーキ装置3、及びステアリング装置4を制御することで、乗員の運転操作を支援する。
【0097】
引き続き、上述した運転支援の処理動作と略並行してECU18が実行する衝突回避支援の処理動作について説明する。なお、衝突回避支援の処理動作は、運転支援の処理動作で一時記憶された各種情報を取得して行われるものとする。
【0098】
衝突回避支援の処理動作を開始すると、ECU18は、
図8に示すように、運転支援の処理動作で取得した自車前方情報に基づいて、例えば車両41の前方200mの範囲に、支線37に位置する駐車車両43(
図7参照)などの障害物を検出しているか否かを判定する(ステップS201)。
【0099】
車両41の前方に障害物を検出していない場合(ステップS201:No)、ECU18は、警告音による報知を開始してなければ、警告音による報知を停止した状態を維持し、警告音による報知を開始していれば、警告音による報知を停止して(ステップS202)、障害物を検出するまで処理を待機する。
【0100】
一方、車両41の前方に障害物を検出している場合(ステップS201:Yes)、ECU18は、相対情報取得処理を開始して(ステップS203)、障害物との相対距離、及び相対速度を示す相対情報を取得する。この際、ECU18は、
図6の運転支援の処理動作で取得した走行挙動情報、及び障害物情報に基づいて、車両41と障害物との相対距離、及び相対速度を算出する。
【0101】
その後、ECU18は、車両41と障害物との相対距離、及び相対速度に基づいて、衝突までの残り時間である衝突余裕時間(Time To Collision、以下「TTC」と呼ぶ)を算出するTTC算出処理を開始する(ステップS204)。なお、TTCは、車両41と障害物との相対距離を、車両41と障害物との相対速度で除算した値である。
【0102】
TTC算出処理を終了すると、ECU18は、障害物への衝突回避を乗員に促すために、警告音による報知を開始するTTC、つまり警告音による報知を開始する報知開始時間を取得する報知開始時間取得処理を開始する(ステップS205)。この際、ECU18は、予め記憶した車速と報知開始時間との関係を示すマップ(図示省略)を参照して、現在の車速に応じた報知開始時間を取得する。
【0103】
さらに、ECU18は、基準走行経路Lを決定する基準走行経路決定処理を開始する(ステップS206)。
詳述すると、基準走行経路決定処理を開始したECU18は、
図9に示すように、運転支援の処理動作で取得した道路形状情報に基づいて、左車線34を検出しているか否かを判定する(ステップS231)。
【0104】
左車線34を検出している場合(ステップS231:Yes)、ECU18は、第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとして決定する(ステップS232)。さらに、ECU18は、予め記憶された第1閾値を、基準走行経路Lと予測走行経路L3との差D(
図10参照)に対する閾値として決定したのち(ステップS233)、基準走行経路決定処理を終了して、処理を
図8のステップS206に戻す。
なお、第1閾値は、第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとした場合における閾値であって、例えば±0.8mとする。
【0105】
一方、左車線34を検出できない場合(ステップS231:No)、ECU18は、先行車42を検出しているか否かを判定する(ステップS234)。先行車42を検出できない場合(ステップS234:No)、ECU18は、第1目標走行経路L1を基準走行経路として決定して(ステップS232)、第1閾値を閾値として決定したのち(ステップS233)、基準走行経路決定処理を終了して、処理を
図8のステップS206に戻す。
【0106】
ステップS234において、先行車42を検出している場合(ステップS234:Yes)、ECU18は、第2目標走行経路L2を基準走行経路として決定する(ステップS235)。さらに、ECU18は、予め記憶された第2閾値を、基準走行経路Lと予測走行経路L3との差D(
図10参照)に対する閾値として決定したのち(ステップS236)、基準走行経路決定処理を終了して、処理を
図8のステップS206に戻す。
なお、第2閾値は、第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとした場合における閾値で、かつ第1閾値よりも小さい値であって、例えば±0.5mとする。
【0107】
図8のステップS206に戻り、基準走行経路決定処理を終了すると、ECU18は、
図8に示すように、操舵角センサ11、アクセルセンサ12、及びブレーキセンサ13から取得したセンサ信号に基づいて、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知したか否かを判定する(ステップS207)。なお、ここでの乗員による運転操作とは、例えば、アクセルペダルが戻される、ブレーキペダルが踏込まれる、あるいはステアリングが操舵されることをいう。
【0108】
直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知した場合(ステップS207:Yes)、ECU18は、乗員が障害物を視認して、障害物への衝突を回避するための運転操作を開始したと判断する。そして、ECU18は、基準走行経路Lと予測走行経路L3との差D(
図10参照)に対する閾値を、予め定めた値だけ大きくする閾値補正処理を開始する(ステップS208)。例えば、閾値が±0.8mの場合、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知すると、ECU18は、閾値を±1.0mに補正して新しい閾値とする。
【0109】
閾値補正処理を終了する、あるいは直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知していない場合(ステップS207:No)、ECU18は、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差D(
図10参照)が閾値以下かを判定する(ステップS209)。
【0110】
基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが閾値以下の場合(ステップS209:Yes)、ECU18は、現在の車速に関わらず、一定時間だけ報知開始時間を遅らせる報知開始時間補正処理を開始する(ステップS210)。例えば、ECU18は、報知開始時間を1秒だけ遅らせる。
【0111】
報知開始時間補正処理を終了する、あるいは基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが閾値を上回る場合(ステップS209:No)、ECU18は、TTCが報知開始時間以下かを判定する(ステップS211)。TTCが報知開始時間以下であれば(ステップS211:Yes)、ECU18は、衝突回避のための制御信号を出力する衝突回避制御信号出力処理を開始する(ステップS212)。
【0112】
具体的には、ECU18は、スピーカー5に対して報知信号を出力することで、警告音による報知を開始する。その後、ECU18は、処理をステップS201に戻して、エンジン2が停止するまでステップS201からステップS212の処理を繰返す。
【0113】
なお、ステップS201の処理を繰り返した際、ステップS201で障害物を継続して検出し、かつ警告音による報知を開始している場合、ECU18は、TTCが制動を開始する所定時間に達すると、乗員の意思に関係なく、エンジン2の出力を低下させる制御信号と、ブレーキ制動を開始させる制御信号とを、エンジン2、及びブレーキ装置3に出力する。
さらに、道路形状情報、車両挙動情報、障害物情報に基づいて、ECU18は、操舵角を維持する、あるいは障害物を回避するように操舵角を変更する制御信号を、ステアリング装置4に出力する。
【0114】
例えば、ステップS205で取得した報知開始時間を4.0秒として、ステップS209において、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが閾値を上回る場合、ECU18は、
図11(a)に示すように、TTCが4.0秒に達するとスピーカー5に報知信号を出力して、警告音による報知を開始させる。
【0115】
さらに、TTCが2.3秒に達すると、ECU18は、エンジン2のスロットルバルブを閉じさせるオフ信号である開閉信号をエンジン2に出力するとともに、制動を開始させるブレーキ信号をブレーキ装置3に出力して、ブレーキ装置3による制動を開始させる。
【0116】
あるいは、ステップS205で取得した報知開始時間を4.0秒として、ステップS209において、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが閾値以下の場合、ECU18は、ステップS210の報知開始時間補正処理により、報知開始時間を4.0秒から1秒遅らせて3.0秒に補正する。
【0117】
そして、ECU18は、
図11(b)に示すように、TTCが3.0秒に達するとスピーカー5に報知信号を出力して、警告音による報知を開始させる。さらに、TTCが2.3秒に達すると、ECU18は、エンジン2のスロットルバルブを閉じさせるオフ信号である開閉信号をエンジン2に出力するとともに、制動を開始させるブレーキ信号をブレーキ装置3に出力して、ブレーキ装置3による制動を開始させる。
【0118】
一方、上述したステップS211において、現在のTTCが報知開始時間に達してなければ(ステップS211:No)、ECU18は、衝突回避制御信号出力処理をスキップして、処理をステップS201に戻して、エンジン2が停止するまでステップS201からステップS212の処理を繰返す。
【0119】
以上のような動作を実現する車両の運転支援装置1は、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な警告音による報知を確実に抑制することができる。
【0120】
具体的には、第1目標走行経路L1は、左車線34内を維持するような走行経路のため、例えば、左車線34内に存在する駐車車両に衝突するような危険な走行経路、あるいは道路区画線35を超えて走行するような危険な走行経路となる可能性が低い。
【0121】
一方、第2目標走行経路L2は、先行車42の走行軌跡を追従するような走行経路のため、例えば、先行車42の前方に駐車車両が存在する場合、駐車車両への衝突を回避するような安全な走行経路である可能性が高い。
そして、第1目標走行経路L1または第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとして、予測走行経路L3との差Dを算出することで、車両の運転支援装置1は、比較的安全な走行経路である可能性が高い基準走行経路Lに、予測走行経路L3が略追従しているか否かを容易に判定することができる。
【0122】
つまり、自車前方に障害物を検知した際、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが小さいほど、車両の運転支援装置1は、比較的安全な走行経路を略追従するように、自車が走行していると容易に判断することができる。
【0123】
例えば、基準走行経路Lが左車線34に沿った走行経路で、支線37に駐車車両43が位置する場合、車両の運転支援装置1は、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが閾値以下であれば、支線37に位置する駐車車両43を障害物として検出したとしても、衝突の危険性が低いと容易に判断することができる。
【0124】
これにより、車両の運転支援装置1は、警告音による報知を開始する報知開始時間を遅らせる機会を、基準走行経路Lと予測走行経路L3に基づいて適切に判断することができる。さらに、警告音による報知の開始を中止しているわけではないため、車両の運転支援装置1は、遅らせたタイミングに達した際、自車前方に障害物を検知していれば、警告音による報知を即座に開始することができる。
【0125】
従って、車両の運転支援装置1は、自車前方に存在する障害物への衝突を回避するために乗員を支援する機能を損なうことなく、不要な警告音による報知を確実に抑制することができる。
【0126】
また、運転支援モード、車線の検出可否、及び先行車の検出可否に基づいて、第1目標走行経路L1、または第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとして決定することにより、車両の運転支援装置1は、不要な警告音による報知をより安全に抑制することができる。
【0127】
具体的には、自車が位置する左車線34を継続して検出できる場合、第1目標走行経路L1は、左車線34を継続して検出できない場合に比べて、その安全性が高くなり易い。同様に、先行車42の走行軌跡を継続して検出できる場合、第2目標走行経路L2は、先行車42の走行軌跡を継続して検出できない場合に比べて、その安全性が高くなり易い。
【0128】
一方、乗員によって選択された運転支援モードには、例えば、自車が位置する左車線34の検出、あるいは先行車42の検出が必要な場合がある。このため、乗員によって選択された運転支援モードでの走行は、車線の検出可否や先行車の検出可否によって、その安全性が左右されるおそれがある。
【0129】
そこで、乗員によって選択された運転支援モード、車線の検出可否、及び先行車の検出可否に基づいて、第1目標走行経路L1または第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとして決定することで、車両の運転支援装置1は、より安全な基準走行経路Lを決定することができる。
【0130】
これにより、車両の運転支援装置1は、警告音による報知を開始する報知開始時間を遅らせる機会を、より安全な基準走行経路Lに基づいて安全に、かつより適切に判断することができる。
従って、車両の運転支援装置1は、乗員によって選択された運転支援モード、道路区画線35の検出可否、及び先行車42の検出可否に基づいて基準走行経路Lを決定することで、不要な警告音による報知をより安全に抑制することができる。
【0131】
また、左車線34の幅員略中央を走行するような第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとした場合の閾値(第1閾値)を、第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとした場合の閾値(第2閾値)よりも大きい値としたことにより、車両の運転支援装置1は、その機能を損なうことなく、不要な警告音による報知をより確実に抑制することができる。
【0132】
具体的には、例えば、先行車42の前方に駐車車両が存在する場合、第2目標走行経路L2は、駐車車両への衝突を回避するような安全な走行経路である可能性が高い。
【0133】
しかしながら、第2目標走行経路L2は、その安全性が先行車42を運転操作する乗員の判断によるところが大きいため、障害物への衝突を回避するような走行経路であっても、障害物との間隔を十分に確保した走行経路、あるいは道路区画線35を逸脱しない走行経路でない可能性がある。
つまり、先行車42の走行軌跡を追従するような第2目標走行経路L2に比べて、左車線34の幅員略中央を走行するような第1目標走行経路L1の方が、障害物への衝突の可能性が低い場合がある。
【0134】
このため、左車線34の幅員略中央を走行するような第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとした場合、車両の運転支援装置1は、基準走行経路Lに対する予測走行経路L3の差Dが多少大きくても、例えば駐車車両や対向車などを障害物に衝突する危険性が、第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとした場合に比べて低くなる。
【0135】
そこで、第1目標走行経路L1が左車線34の幅員略中央を走行するような走行経路の場合、車両の運転支援装置1は、第2目標走行経路L2を基準走行経路Lとした場合よりも大きい閾値にすることで、不要な警告音による報知をより確実に抑制することができる。
【0136】
従って、車両の運転支援装置1は、左車線34の幅員略中央を走行するような第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとした場合には閾値を大きくすることで、その機能を損なうことなく、不要な警告音による報知をより確実に抑制することができる。
【0137】
また、乗員によって選択された運転支援モードが先行車追従モードであり、かつ基準走行経路Lが第2目標走行経路L2の場合、閾値を、第1目標走行経路L1を基準走行経路Lとした場合の第1閾値よりも小さい値としたことにより、車両の運転支援装置1は、先行車42に対する自車の追従性をより厳しく判定することができる。
【0138】
この際、乗員によって選択された運転支援モードが先行車追従モードの場合、運転支援による走行は、自車前方の障害物への衝突を、先行車42の走行軌跡に沿って回避する走行となる。
そこで、先行車追従モードの場合、第2目標走行経路L2に対する予測走行経路L3の追従性をより厳しく判定することで、車両の運転支援装置1は、障害物への衝突を安全に回避できる走行経路から逸脱する可能性があるか否かをより厳しく判定することができる。
【0139】
これにより、車両の運転支援装置1は、警告音による報知を開始する機会をより適切に判断することができるため、必要な警告音による報知の開始を誤って抑制することを防止できる。
従って、車両の運転支援装置1は、必要な警告音による報知を誤って抑制することの防止と、不要な警告音による報知の抑制とを両立することができる。
【0140】
また、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検出した場合、閾値をより大きな値にしたことにより、車両の運転支援装置1は、警告音による報知を開始するタイミングをさらに遅らせることができる。
このため、乗員が自車前方の障害物を視認して、障害物への衝突を回避する回避動作を開始した際、車両の運転支援装置1は、乗員が回避動作を開始しているにも関わらず、警告音による報知が開始されることを抑制できる。
【0141】
これにより、車両の運転支援装置1は、障害物への衝突を回避する乗員の運転操作に対して、警告音による報知が開始されることを抑制でき、乗員に違和感や不快感を与えることを防止できる。
従って、車両の運転支援装置1は、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検出した場合、閾値を大きくすることで、不要な警告音による報知をさらに抑制することができる。
【0142】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の自車は、実施形態の車両41に対応し、
以下同様に、
障害物は、駐車車両43に対応し、
衝突回避支援は、警告音による報知に対応し、
所定タイミングは、報知開始時間に対応し、
衝突回避支援手段は、スピーカー5、及びECU18に対応し、
先行車検出手段、及び障害物検知手段は、車載カメラ6、ミリ波レーダ7、及びECU18に対応し、
走行路は、左車線34に対応し、
第1目標走行経路算出手段、第2目標走行経路算出手段、予測走行経路算出手段、及び基準走行経路決定手段は、ECU18に対応し、
所定条件は、運転支援モード、道路区画線35の検出可否、及び先行車42の検出可否に対応し、
所定値は、閾値に対応し、
運転支援モードは、先行車追従モード、自動速度制御モード、速度制限モード、及び基本制御モードに対応し、
支援モード選択手段は、運転支援モード選択部16に対応し、
走行路検出手段は、車載カメラ6、及びECU18に対応し、
先行車の走行軌跡を追従するように乗員の運転操作を支援する運転支援モードは、先行車追従モードに対応し、
第1目標走行経路を基準走行経路とした場合の所定値は、第1閾値に対応し、
第2目標走行経路を基準走行経路とした場合の所定値は、第2閾値に対応し、
回避動作検出手段は、操舵角センサ11、アクセルセンサ12、ブレーキセンサ13、及びECU18に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0143】
例えば、上述した実施形態において、左車線34の幅員略中央を通る第1目標走行経路L1としたが、これに限定せず、左車線34内の走行を維持するような第1目標走行経路としてもよい。
また、警告音による報知を、所定タイミングで開始される衝突回避支援として説明したが、これに限定せず、ブレーキ装置3による制動、あるいはステアリング装置4による操舵を、所定タイミングで開始する衝突回避支援としてもよい。
また、先行車追従モード、自動速度制御モード、速度制限モード、及び基本制御モードを運転支援モードとしたが、これに限定せず、乗員による運転操作を支援するものであれば、適宜の運転支援モードであってもよい。
【0144】
また、
図6のステップS103における道路状況識別処理において、障害物情報を取得する際、車両41の前方200m程度の範囲に存在する駐車車両や歩行者を障害物として識別したが、これに限定せず、障害物を検出する範囲を適宜の距離の範囲としてもよい。さらに、障害物を検出する範囲を、車速に応じて変動させるようにしてもよい。
【0145】
また、基準走行経路Lと予測走行経路L3との差Dに対する閾値を例えば±0.8m、あるいは±0.5mとして説明したが、これに限定せず、車速、幅員W、車両の車幅CWに応じて適宜の数値としてもよい。例えば、幅員Wが3.0m以内までであれば閾値を±0.8mとし、幅員Wが3.0mを超える場合には閾値を±1.0mとしてもよい。
【0146】
また、
図8のステップS207において、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知したか否かを判定したが、これに限定せず、現在の運転操作の状態が、直前の数秒内に行われた運転操作であることを検出できればよく、車速などに応じた適宜の時間内に行われた運転操作を検出する構成としてもよい。
【0147】
また、直前の1秒以内に検知した乗員による運転操作を、アクセルペダルが戻される、ブレーキペダルが踏込まれる、あるいはステアリングが操舵されることとしたが、これに限定せず、障害物への衝突を回避するための操作であれば、車両41の走行挙動を変えるための乗員による予備操作であってもよい。例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、あるいはステアリングが操作される前に操作されたウインカーレバーの操作を、直前の1秒以内に検知した乗員による運転操作としてもよい。
【0148】
また、
図8のステップS207において、直前の1秒以内に乗員による運転操作を検知した場合、ステップS208において、例えば閾値を±0.8mから±1.0mに補正したが、これに限定せず、閾値の値の増加代を適宜の増加代としてもよい。
また、
図8のステップS205における報知開始時間取得処理で取得した報知開始時間を例えば4.0秒とし、
図8のステップS210における報知開始時間補正処理において、例えば報知開始時間を1秒だけ遅らせるとし、
図8のステップS212における衝突回避制御信号出力処理において、制動を開始するTTCを例えば2.3秒としたが、これに限定せず、報知開始時間、報知開始時間を遅らせる時間、及び制動を開始するTTCは、車速などに応じて適宜の時間としてもよい。