特許第6428857号(P6428857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6428857表面処理液及び該表面処理液を用いた表面処理アルミニウム板の製造方法並びに表面処理アルミニウム板
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  • 特許6428857-表面処理液及び該表面処理液を用いた表面処理アルミニウム板の製造方法並びに表面処理アルミニウム板 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6428857
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】表面処理液及び該表面処理液を用いた表面処理アルミニウム板の製造方法並びに表面処理アルミニウム板
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/34 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   C23C22/34
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-115988(P2017-115988)
(22)【出願日】2017年6月13日
(62)【分割の表示】特願2013-64173(P2013-64173)の分割
【原出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2017-150092(P2017-150092A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-82182(P2012-82182)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】宮井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】船城 裕二
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−060699(JP,A)
【文献】 特開2001−303267(JP,A)
【文献】 特開2009−132952(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/149787(WO,A1)
【文献】 特開2008−297595(JP,A)
【文献】 特開2009−079252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−22/86
C23F 11/00−11/18
C23F 14/00−17/00
C23C 24/00−30/00
B32B 1/00−43/00
B65D 6/00−13/02
B65D 23/00−25/56
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板を化成処理により表面処理するための表面処理液であって、水分散性のポリエステル樹脂とポリカルボン酸、フッ素イオン、及びジルコニウムイオン又はチタンイオンを含有し、前記ポリカルボン酸がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸―メタクリル酸コポリマーから選ばれる少なくても一種であって、前記ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、前記ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満の量で含有され、前記ポリカルボン酸の量が5乃至2000ppmであることを特徴とする表面処理液。
【請求項2】
pH1.5〜4.0、温度35〜70℃に調整された請求項1記載の表面処理液を用いて、2〜20秒間の浸漬処理又はスプレー処理によりアルミニウム板に化成処理皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム板の製造方法。
【請求項3】
前記化成処理皮膜における炭素量Cと、ジルコニウム又はチタン量Mの質量比C/Mが、1乃至40である請求項2に記載の表面処理アルミニウム板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液及び該表面処理液を用いた表面処理アルミニウム板の製造方法並びに表面処理アルミニウム板に関するものであり、より詳細には、有機樹脂被覆の密着性に優れ、製缶材料として優れた耐食性及び加工密着性を発現可能な表面処理アルミニウム板及びその製造方法並びに上記表面処理アルミニウム板を形成可能な表面処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム等の金属素材を有機樹脂で被覆した有機樹脂被覆金属板は、製缶材料として古くから知られており、この積層体を絞り加工或いは絞り・しごき加工に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とし、或いはこれをプレス成形してイージイオープンエンド等の缶蓋とすることもよく知られている。
【0003】
このような有機樹脂被覆金属板において、アルミニウム板と有機樹脂被覆との密着性或いはアルミニウム板の耐食性が不十分であるため、アルミニウム板の表面を無機或いは有機の表面処理剤で処理を行うことが行われている。例えばリン酸クロメート系表面処理材があり、皮膜単独の耐食性に優れ、かつ、各種有機樹脂を塗装した際の密着性にも優れていることから広く使用されている。これらクロメート処理は、最終製品中に6価クロムが残存しないタイプであるものの、処理液中に有害物質である6価クロムを含んでいることや、また廃棄後においてクロムの土壌環境中への溶出の可能性が懸念されることなどから、クロムを含有しないノンクロム系の表面処理が望まれている。
【0004】
製缶材料におけるノンクロム系の表面処理も種々提案されており、アルミニウム合金系金属板のノンクロム表面処理として、例えば、ジルコニウム、チタン、またはこれらの化合物と、リン酸塩およびフッ化物を含有し、約pH1.0〜4.0の酸性処理液を用い、アルミニウム含有金属材料の表面上にジルコニウム及び/又はチタンの酸化物を主成分とする化成皮膜 (特許文献1)や、カーボンを主成分とする有機化合物とリン化合物とジルコニウムあるいはチタン化合物を含む有機−無機複合被膜を形成する方法(特許文献2)、或いは本出願人により、アルミニウム板にも鋼板にも適用でき、容器用としても利用できるノンクロム処理としてZr,O,Fを主成分とし、リン酸イオンを含有しないことを特徴とする表面処理金属材料が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−131937号公報
【特許文献2】特開平11−229156号公報
【特許文献3】特開2005−97712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した化成処理皮膜では、有機樹脂被覆を形成し、プレコート材料として缶体或いは缶蓋の製造に用いた場合には、有機樹脂被覆の密着性や耐食性を得ることができなかった。またカーボンを主成分とする有機化合物とリン化合物とジルコニウム化合物或いはチタン化合物を含む有機−無機複合被膜を形成する方法では、ある程度密着性は向上するが、耐食性や耐衝撃性(耐デント性)が十分でなかった。更にZr,O,Fを主成分とし、リン酸イオンを含有しない表面処理材料は有機樹脂被覆の密着性に優れ、優れた耐食性を発現し得るものであるが、電解処理によるものであるため、化成処理により、有機樹脂被覆の密着性、耐食性及び耐衝撃性に優れていると共に経済性及び生産性にも優れた表面処理金属材料を提供することが望まれている。
【0007】
従って本発明の目的は、有機樹脂被覆の密着性に優れ、製缶材料として優れた耐食性及び耐衝撃性(耐デント性)を発現可能な表面処理アルミニウム板及びその製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、上記表面処理アルミニウム板を形成可能な表面処理液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、アルミニウム板を化成処理により表面処理するための表面処理液であって、水分散性のポリエステル樹脂とポリカルボン酸、フッ素イオン、及びジルコニウムイオン又はチタンイオンを含有し、前記ポリカルボン酸がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸―メタクリル酸コポリマーから選ばれる少なくても一種であって、前記ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、前記ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満の量で含有され、前記ポリカルボン酸の量が5〜2000ppmであることを特徴とする表面処理液が提供される。
【0009】
本発明によればまた、pH1.5乃至4.0、温度35乃至70℃に調整された上記表面処理液を用いて、2乃至20秒間の浸漬処理又はスプレー処理によりアルミニウム板に化成処理皮膜を形成することを特徴とする表面処理アルミニウム板の製造方法が提供される。
本発明の表面処理アルミニウム板の製造方法においては、前記化成処理皮膜における炭素量Cと、ジルコニウム又はチタン量Mの質量比C/Mが、1乃至40であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面処理アルミニウム板は、優れた耐食性及び有機樹脂被覆の密着性を有し、この表面処理アルミニウム板に有機樹脂を被覆して成る有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板は、絞りしごき加工等の過酷な加工に賦された場合にも耐食性及び加工密着性に優れており、従来より製缶材料に使用されていたリン酸クロメート処理と比べても格段に優れた耐食性及び加工密着性を有しており、缶体或いは缶蓋用の製缶材料として好適に用いることができる。
また有機樹脂被覆としてポリエステルフィルムを用いたプレコート材料とする場合にも、表面処理膜とポリエステルフィルムとの間にプライマー等の塗装層を介在させる必要がなく、生産性及び経済性に優れている。
更に本発明の表面処理アルミニウム板の製造に用いられる表面処理液は、水分散性のポリエステル樹脂及びポリカルボン酸を用いることにより、ジルコニウム化合物又はチタン化合物と共にポリエステル樹脂を表面処理膜に一様に存在させることができると共に、ポリカルボン酸がジルコニウムイオン又はチタンイオンと金属キレート錯体を形成することによって、優れた耐食性及び加工密着性を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の断面構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表面処理アルミニウム板は、アルミニウム板の少なくとも一方の表面に、ポリエステル樹脂、ポリカルボン酸、及びジルコニウム化合物又はチタン化合物を含有する化成処理皮膜が形成されて成ることを特徴とするものである。
従来よりジルコニウム化合物又はチタン化合物を含有する無機表面処理膜は知られているが、本発明の表面処理アルミニウム板における化成処理皮膜は、これらの無機物質に加えてポリエステル樹脂及びポリカルボン酸が存在することにより、従来の無機表面処理膜に比して顕著に耐食性及び加工密着性が向上することがわかった。
すなわち、本発明の表面処理アルミニウム板における化成処理皮膜は、アルミニウム板側にジルコニウム化合物又はチタン化合物が位置し、このジルコニウム化合物又はチタン化合物によってポリエステル樹脂が基板に固定され、有機樹脂被覆が施される際等の熱処理によって、ポリエステル樹脂が化成処理皮膜表面を均一に覆うことによって耐食性を発現するとともに、次いで施される有機樹脂被覆との密着性が顕著に向上される。またアルミニウムイオン、ジルコニウムイオン又はチタンイオンと、ポリカルボン酸が金属キレート錯体となって存在し、この金属キレート錯体によっても金属と有機物の密着性が向上するため、上記ポリエステル樹脂による密着性の向上と相俟って、顕著に耐食性及び加工密着性を向上させることが可能になる。
【0013】
本発明のこのような優れた効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。すなわち、表面処理液に水分散型ポリエステル樹脂及びポリカルボン酸の両方が含有されていない場合(比較例2)は勿論、ポリカルボン酸のみが含有されていない場合(比較例1)においても満足する耐食性が得られていないのに対して、本発明の表面処理アルミニウム板では、耐食性及び加工密着性共に満足する結果が得られている(実施例1〜6)。
【0014】
本発明の表面処理アルミニウム板においては、化成処理膜中のポリエステル樹脂及びポリカルボン酸に由来する炭素量C(mg/m)と、ジルコニウム化合物又はチタン化合物に由来するジルコニウム又はチタン量M(mg/m)の比で表わされる有機/無機比(C/M)が1乃至40の範囲、好適には5乃至30の範囲にあることが特徴である。
C/Mが上記範囲にある表面処理アルミニウム板は、表面処理に際してジルコニウムイオン又はチタンイオンが適切に析出して、ポリエステル樹脂及びポリカルボン酸と共に良好な化成処理皮膜が形成されており、上述した優れた耐食性及び加工密着性を備えた表面処理アルミニウム板を確実に得ることが可能になるが、上記範囲よりもC/Mの値が小さいと耐食性が劣るようになる。一方、上記範囲よりもC/Mの値が大きいと、表面処理に要する時間が長くなり、生産性に劣る。
また、析出皮膜量としては特に制限されるものではないが、上記炭素量Cが5mg/m乃至1000mg/m、特に50mg/m乃至500mg/mの範囲にあることが好まく、またジルコニウム又はチタン量Mが、1mg/m乃至200mg/m、特に2mg/m乃至100mg/mの範囲にあることが好ましい。上述した範囲よりも少ない場合には、アルミニウム板の被覆が十分に行われず耐食性が劣るようになり、一方、上述した範囲よりも多い場合は、皮膜量の増加に応じた性能向上の効果が得られないため、生産性に劣る。
尚、化成処理皮膜中の炭素量(C)及びジルコニウム又はチタン量(M)は、市販の蛍光X線分析装置によって膜厚を定量することができる。この場合、予め炭素及びジルコニウム又はチタンについて重量膜厚が既知の複数のサンプルからこれらの重量膜厚とX線強度の関係を示す検量線を作成しておき、試料を用いて測定したX線強度を、検量線に基づき重量膜厚に換算する。
【0015】
また本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウムにおいては、上記表面処理アルミニウム板の化成処理皮膜上に有機樹脂被覆を形成してなるものであるが、本発明においては、表面処理アルミニウム板及び有機樹脂被覆の密着性に優れているため、化成処理皮膜に直接、すなわちプライマー等を施すことなく、有機樹脂被覆を形成することができる。
図1は、本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の一例の断面構造を示す図であり、アルミニウム板2の両面に化成処理皮膜3,3が形成されており、この化成処理皮膜3,3の上に直接有機樹脂被覆4,4が形成されている。
【0016】
(表面処理液)
本発明の表面処理アルミニウム板の表面処理に用いる表面処理液としては、水分散性のポリエステル樹脂と、ポリカルボン酸、フッ素イオン、ジルコニウムイオン又はチタンイオンを含有することを特徴とする水溶液から成るものである。
すなわち、本発明においては、上述したとおり、表面処理液中にポリエステル樹脂が分散体の形態で存在し、このポリエステル樹脂分散体が、化成処理皮膜中のジルコニウム化合物又はチタン化合物と共に一様にアルミニウム板表面に存在し、またポリカルボン酸は、カルボキシル基の存在により密着性を向上できると共に、ジルコニウムイオン又はチタンイオンと金属キレート錯体を形成することにより、有機樹脂被覆との密着性及び耐食性に優れた化成処理皮膜を提供することが可能になる。
更にポリカルボン酸が含有されていることにより、表面処理に際して過剰なジルコニウム化合物又はチタン化合物の析出が抑制できる。
また本発明の表面処理液においては、ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、特に1000乃至5000ppm、ポリカルボン酸が5乃至2000ppm、特に100乃至1000ppm、ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満、特に5乃至4000ppm、特に50乃至1000ppmの量で含有されていることが好適である。後述する表面処理の条件等と共に、表面処理液中の各成分が上記範囲にあることにより、化成処理皮膜におけるC/Mの値が上述した範囲にあり、上述した優れた化成処理皮膜を形成できるが、上記範囲よりも各成分の含有量が少ない場合には、満足する耐食性及び密着性を得ることができず、その一方、上記範囲よりも各成分が多いと、処理液の安定性が劣るようになるおそれがあると共に、更なる耐食性等の向上も得られず、経済性も低下する。
【0017】
本発明の表面処理液に用いる水分散性ポリエステル樹脂としては、親水基を成分として含むポリエステル樹脂を挙げることができる。これらの親水基成分は、ポリエステル分散体表面に物理吸着していても良いし、好ましくはポリステル樹脂骨格中に化学的に共重合されていても良い。
親水基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらを分子内に含むことにより水に分散可能な状態で存在する。
親水性基を含むモノマーとしては、具体的にはポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン,ポリグリセリン等の水酸基含有ポリエーテルモノマー、5−スルホイソフタル酸,4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸,5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩又はアンモニウム塩等を挙げることができる。
また親水性基を有するビニル系モノマーをポリエステル樹脂にグラフト重合させたものでもよく、親水性基を有するビニル系モノマーとしては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基等を含むもの、親水性基に変化させることができる基としては酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を含むものを挙げることができる。
本発明においては、水分散性ポリエステル樹脂としては、親水基としてスルホン酸基を有するものを好適に用いることができる。
【0018】
また、前記親水性基を含むモノマーと組み合わせて、水分散性ポリエステル樹脂を形成するその他のモノマー成分としては、一般的なポリエステルに用いられるモノマーであれば特に限定されるものではないが、例えば多価カルボン酸として例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
また、これら水分散性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−40℃〜140℃が好ましく、20℃乃至120℃がより好ましい。また、水分散性ポリエステル樹脂の数平均分子量は1000乃至10万が好ましく、3000乃至8万がより好ましい。
【0019】
本発明の表面処理液に用いるポリカルボン酸としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー等のカルボキシル基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体、及びその部分中和物を挙げることができ、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸を好適に用いることができる。
【0020】
表面処理液に、ジルコニウムイオン又はチタンイオンを供給可能なジルコニウム化合物又はチタン化合物としては、これに限定されないが、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウムカリウム(KZrF)やヘキサフルオロジルコニウムアンモニウム((NHZrF)、炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液((NHZrO(CO)、オキシ硝酸ジルコニウムZrO(NO、オキシ酢酸ジルコニウム(ZrO(CHCOO))等、或いはチタンフッ化カリウム(KTiF)、チタンフッ化アンモニウム((NHTiF)、チタンフッ化ソーダ(NaTiF)、シュウ酸チタンカリウム2水和物(KTiO(C・2HO)、塩化チタン(III)溶液(TiCl)、塩化チタン(IV)溶液(TiCl)等を挙げることができる。
尚、本発明の表面処理液においては、フッ素イオンを含有することにより、アルミニウムが溶解し、ジルコニウム化合物又はチタン化合物を適切に析出させることができる。従って上記のうちフッ素イオンを供給可能な化合物以外を用いる場合は、フッ素化合物としてフッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NHF)等を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明の表面処理液においては、ポリエステル樹脂を分散させるための界面活性剤や、或いは酸化剤等を配合する必要は特になく、水、或いは水と少量の有機溶媒から成る水性媒体に、水分散型ポリエステル樹脂、ジルコニウム化合物又はチタン化合物を、上述した濃度でポリエステル樹脂、及びジルコニウムイオン又はチタンイオンが存在するように、配合することにより調製することができる。
尚、表面処理液中にフッ素イオンを存在させる場合には、フッ素イオンが5乃至4000ppmの範囲にあることが望ましい。上記範囲よりもフッ素イオン濃度が低いと、フッ素イオンのエッチング効果を得ることができず、一方上記範囲よりもフッ素イオン濃度が高いと析出効率をかえって阻害するおそれがある。
【0022】
(表面処理方法)
本発明の表面処理液を用いたアルミニウム板の表面処理方法は、上述した水分散性ポリエステル樹脂、ポリカルボン酸、及びジルコニウム化合物又はチタン化合物を水性媒体に配合し、ポリエステル樹脂が500ppm以上10000ppm未満、ポリカルボン酸が5乃至2000ppm、ジルコニウムイオン又はチタンイオンが5ppm以上5000ppm未満の量となるように調製された表面処理液を用い、浸漬処理或いはスプレー処理、ロールコーターによる処理によって行うことができる。
表面処理液のpHは、1.5乃至4.0の範囲にあることが好ましく、必要に応じて硝酸又はアンモニアを添加して調整する。上記範囲よりもpHが低いと十分な皮膜を得ることができず、一方上記範囲よりもpHが大きいと、処理液の安定性に劣るようになる。
また表面処理液の温度は、特に限定されないが、35乃至70℃の範囲にあることが、安定して被膜を形成する上で望ましい。
表面処理液への浸漬に先立って、アルミニウム板は、常法により、脱脂、水洗、必要に応じて、エッチング処理、水洗、更に酸洗、水洗の前処理を行う。次いで、上記pH及び温度範囲に調整された表面処理液に2乃至20秒間浸漬、或いはスプレー処理した後、水洗し、乾燥することによって、化成処理被膜が形成された表面処理アルミニウム板を得ることができる。
尚、アルミニウム板は、従来製缶材料に用いられていたアルミニウム板を全て使用することができ、アルミニウム合金板の他、純アルミニウム板であってもよく、またその厚みはこれに限定されないが、100乃至500μmの範囲にあるものを好適に使用することができる。
また、表面処理の方法によっては、基板のアルミニウムが溶解することもあり、化成皮膜にアルミニウム化合物が含有する場合がある。
【0023】
(有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板)
本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板は、上記表面処理アルミニウム板の化成処理皮膜上に有機樹脂から成る層を被覆して成るものであり、上述した表面処理アルミニウム板を用いることから、有機樹脂被覆の密着性、特に加工密着性に優れており、このため優れた耐食性、耐デント性を有している。
本発明の有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板において、化成処理皮膜上に設ける有機樹脂としては、特に限定はなく、熱可塑性樹脂から成るフィルム、或いは熱硬化性乃至熱可塑性樹脂から成る塗膜を挙げることができる。
【0024】
フィルム形成可能な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリルエステル共重合体、アイオノマー等のオレフィン系樹脂フィルム、またはポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、もしくはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等を挙げることができ、かかる熱可塑性樹脂フィルムの未延伸または二軸延伸したものであってもよい。
更に塗膜形成可能な塗料としては、フェノールエポキシ、アミノ−エポキシ等の変性エポキシ塗料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体けん化物、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エポキシ変性−、エポキシアミノ変性−、エポキシフェノール変性−ビニル塗料または変性ビニル塗料、アクリル塗料、ポリエステル系塗料、スチレン−ブタジェン系共重合体等の合成ゴム系塗料等を挙げることができ、これらの2種以上の組合わせであってもよい。
【0025】
これらの中でも、製缶材料としてポリエステル樹脂フィルムから成る被覆が最も好適に用いられる。
ポリエステル樹脂としては、ホモポリエチレンテレフタレートも勿論使用可能であるが、フィルムの到達し得る最高結晶化度を下げることが耐衝撃性や加工性の点で望ましく、この目的のためにポリエステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エステル単位を導入するのがよい。エチレンテレフタレート単位を主体とし、他のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
一般に共重合ポリエステル中の二塩基酸成分の70モル%以上、特に75モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の70モル%以上、特に75モル%以上がエチレングリコールから成り、二塩基酸成分の1乃至30モル%、特に5乃至25モル%がテレフタル酸以外の二塩基酸成分から成ることが好ましい。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸:シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸:コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸:の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコールまたはブチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
また、このポリエステル樹脂は、成形時の溶融流動特性を改善するために、三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールから成る群より選択された少なくとも1種の分岐乃至架橋成分を含有することができる。これらの分岐乃至架橋成分は、3.0モル%以下、好適には0.05乃至3.0モル%の範囲にあるのがよい。
三官能以上の多塩基酸及び多価アルコールとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等の多塩基酸や、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールが挙げられる。
【0027】
ホモポリエステル樹脂或いは共重合ポリエステル樹脂は、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのがよい。
本発明の有機樹脂被覆に用いるポリエステル樹脂層は、単層の樹脂層であってもよく、また同時押出などによる多層の樹脂層であってもよい。多層のポリエステル樹脂層を用いると、下地層、すなわち表面処理アルミニウム板側に接着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択し、表層に耐内容物性、すなわち耐抽出性やフレーバー成分の非吸着性に優れた組成のポリエステル樹脂を選択できるので有利である。
上記ポリエステル樹脂層には、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、無機フィラー、各種帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
本発明において、有機樹脂被覆がポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂から成る被覆である場合の厚みは、一般に3乃至50μmの範囲にあることが望ましく、有機樹脂被覆が塗膜である場合には、0.5乃至20g/mの塗工量であることが望ましい。有機樹脂被覆の厚みが、上記範囲よりも小さいと耐食性が不十分となり、一方上記範囲よりも大きいと加工性の点で問題を生じやすい。
【0028】
(有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の製造)
本発明において、表面処理アルミニウム板への有機樹被覆の形成は任意の手段で行うことができ、例えば、ポリエステル樹脂被覆の場合では、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、二軸延伸フィルム熱接着法等により行うことができ、熱硬化性塗料による被覆等の場合には、ロールコート法、スプレー法等、従来公知の方法で塗工できる。
また前述した通り、本発明においては、表面処理アルミニウム板の有機樹脂被覆の密着性に優れていることから、化成処理膜と有機樹脂被覆、特にポリエステル樹脂から成る被覆との間に、接着用プライマー等の塗膜を設ける必要はないが、勿論設けることを除外するものではなく、密着性と耐食性とに優れた従来公知のフェノールエポキシ系塗料等のプライマー塗料を用いることもでき、表面処理アルミニウム板或いはポリエステルフィルムの何れに予め設けてもよい。
【0029】
(缶体)
本発明の缶体は、前述した有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板から形成されている限り、従来公知の任意の製缶法により成形することができ、側面継ぎ目を有するスリーピース缶であることもできるが、一般にシームレス缶(ツーピース缶)であることが好ましい。このシームレス缶は、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板の有機樹脂被覆面が少なくとも缶内面側となるように、絞り・再しぼり加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造される。
【0030】
(缶蓋)
本発明の缶蓋は、前述した有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板から形成されている限り、従来公知の任意の製蓋法により成形することができ、一般には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋に適用することができる。
【実施例】
【0031】
本発明を次の実施例により更に説明するが、本発明は次の例により何らかの制限を受けるものではない。実施例および比較例で使用した供試板の試験方法について述べる。
【0032】
(炭素量)
化成処理皮膜中のポリエステル樹脂及びポリカルボン酸に由来する炭素原子の量は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。測定に用いた検量線は、濃度が既知の水分散型ポリエステル及びポリカルボン酸含有水溶液を、清浄なアルミニウム合金上に塗装焼き付けして炭素量が既知の標準板を作製し、これらの蛍光X線強度と測定炭素量との相関から測定した。
【0033】
(ジルコニウムまたはチタン量)
化成処理皮膜中のジルコニウム化合物又はチタン化合物に由来するジルコニウム又はチタン量は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。検量線は、皮膜量が既知のジルコニウム又はチタン析出標準板を用意し、これらの蛍光X線強度と皮膜量の相関から測定した。
【0034】
(有機/無機比の算出方法)
化成処理皮膜中の、ポリエステル樹脂及びポリカルボン酸に由来する炭素量と、ジルコニウム化合物又はチタン化合物に由来するジルコニウム又はチタン量の比で表わされる有機/無機比の算出については、蛍光X線分析により得られた皮膜量を、以下の式を用いて計算することで得た。
有機/無機比=C/M (−)
C:化成処理皮膜中の炭素量(mg/m
M:化成処理皮膜中のジルコニウム又はチタン量(mg/m
【0035】
(蛍光X線分析装置の測定条件)
使用機器: 理学電機製 ZSX100e
測定条件: 測定対象 Zr−Kα線、C−Kα線
測定径 20mm
X線出力 50kV−70mA
測定時間 20秒(Zr)、100秒(C)
【0036】
(金属キレート錯体の確認方法)
表面処理アルミニウム板の化成皮膜中の金属キレート錯体の確認は、フーリエ変換赤外分光光度計で測定した。金属イオンと複合化することにより、カルボン酸はカルボン酸塩へと転換する。一般に、カルボン酸の特性吸収帯は、920〜970cm−1付近、1700〜1710cm−1付近、2500〜3200cm−1付近の波長にあることが知られている。また、カルボン酸塩の特性吸収帯は、1480〜1630cm−1付近の波長にあることが知られており、これらピークのシフトを確認することで金属キレート錯体を確認した。
【0037】
(フーリエ変換赤外分光光度計の測定条件)
使用機器:Digilab社製 FTS7000series
測定方法:ゲルマニウムプリズムを用いた一回反射法
測定波長領域:4000〜700cm−1
【0038】
(耐食試験)
作製した表面処理アルミニウム板の耐食性能は、塩化物イオンを含有する酸性水溶液に浸漬し、性状の変化を経時で観察することで行った。アルミ供試板の耐食性が不足している場合、露出部の金属基板が溶解し、腐食により金属化合物が発生するので、これらに由来する白錆を確認することで評価した。
試験に用いたモデル水溶液は、食塩を1000ppmとし、これにクエン酸を加えてpHが3.0となるよう調整したものを用いた。また、試験時の保管温度は37℃で行った。
耐食性 可 :経時2週間の時点で、白錆の発生なし
耐食性 不可 :経時2週間の時点で、白錆の発生あり
【0039】
(加工密着性評価)
作製した缶体の缶側壁部の缶底から高さ45mm〜95mmの部分を幅15mmで短冊状に切り出し、短冊状の先端から35mm位置(缶底からの高さ80mmの位置に相当)に缶外面側素地に達する傷を入れた。予め入れた傷を起点として折り曲げを繰り返すことにより金属片のみを切断し、樹脂フィルムだけで繋がっている部分を作った後、この部分を内面側になるようにし、ピール試験機を用いて180度剥離試験を23℃下、引張速度5mm/minで行って密着強度を測定した。
評価結果は
加工後密着力 ○:密着強度が、1.0N/15mm以上
加工後密着力 ×:密着強度が、1.0N/15mm以下
で示した。
【0040】
(実施例1)
アルミニウム合金板(3004材)を準備し、日本ペイント社製の脱脂剤「サーフクリーナーEC371」(商品名)の2%水溶液中(50℃)に、6秒間浸漬して脱脂処理を行った。脱脂処理後、水洗してから、日本ペイント社製のエッチング剤「サーフクリーナー420N−2」(商品名)の2%水溶液中(50℃)に、6秒間浸漬してアルカリエッチング処理を行った。エッチング処理後、水洗してから、2%硫酸水溶液中(50℃)に6秒間浸漬して酸洗浄を行った。
酸洗浄後、水洗してから、水分散型ポリエステル樹脂(東洋紡績社製ポリエステル「バイロナ−ルMD2000」)、ポリカルボン酸(東亜合成社製ポリアクリル酸「ジュリマー10LHP」)、及びジルコニウム化合物(アルドリッチ社製ヘキサフルオロジルコニウム酸)を、それぞれポリエステルが5000ppm、ポリアクリル酸が100ppm、ジルコニウムイオンが200ppmとなるように配合し、必要に応じて硝酸或いはアンモニアを添加してpHを1.8に調整し、その後6秒間の浸漬処理することで化成処理皮膜を形成した。更に水洗した後、210℃×180秒の条件で乾燥させ、表面処理アルミニウム板を得た。
【0041】
作製した表面処理アルミニウム板を、予め板温度250℃に加熱しておき、アルミニウム板の両面にイソフタル酸15mol%共重合のポリエチレンテレフタレートフィルム(フィルム厚み:16μm)を、ラミネートロールを介して熱圧着した後、直ちに水冷することにより、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板を得た。
得られた有機樹脂被覆アルミニウム板の両面に、パラフィンワックスを静電塗油した後、直径156mmの円形に打ち抜き、浅絞りカップを作成した。次いで、この浅絞りカップを、再絞り−しごき加工及びドーミング成形を行い、続いて開口端縁部のトリミング加工を行うことにより、缶体を得た。缶体の諸特性は以下の通りであった。
缶体径:66mm
缶体高さ:168mm
元板厚に対する缶側壁部の平均板厚減少率:60%
【0042】
(実施例2)
実施例1において、処理液のジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0043】
(実施例3)
実施例1において、処理液のポリエステル量を処理液のジルコニウムイオン量を1000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0044】
(実施例4)
実施例1において、処理液のポリエステル量を2500ppm、ポリアクリル酸量を200ppm、ジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0045】
(実施例5)
実施例1において、処理液のポリアクリル酸量を800ppm、ジルコニウムイオン量を1000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0046】
(実施例6)
実施例1において、ポリアクリル酸量を800ppm、ジルコニウムイオン量を4000ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0047】
(比較例1)
実施例1において、処理液のポリアクリル酸を除き、ジルコニウムイオン量を500ppmとする以外は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0048】
(比較例2)
実施例2において、処理液のポリエステルとポリアクリル酸を除く以外は実施例2と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
【0049】
(比較例3)
市販のリン酸クロメート処理膜を用いる他は実施例1と同様の方法で、表面処理アルミニウム板、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、及び缶体を得た。
実施例および比較例の試験評価結果を、表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、本発明の表面処理アルミニウム板の耐食性は、実施例1〜6に示した領域、すなわち有機/無機比が1.0以上において、特に耐食性が優れている。また、得られた皮膜の加工後密着性は、缶材として使用されるリン酸クロメート処理と比べて大きく、有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板として加工性に優れている。以上の理由から、厳しい加工と金属基板保護が要求される缶体および缶蓋として、実用上極めて有用であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の表面処理アルミニウム板は、優れた耐食性及び有機樹脂被覆の密着性を有し、この表面処理アルミニウム板に有機樹脂を被覆して成る有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板は、過酷な加工に賦された場合にも加工密着性に優れており、絞りしごき缶等の過酷な加工により成形される缶体、或いはリベット加工やスコア加工等が施されるイージーオープン蓋等の缶蓋に有効に利用できる。
また耐食性にも優れていることから、腐食性の強い内容物に使用される缶体或いは缶蓋用の製缶材料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:有機樹脂被覆表面処理アルミニウム板、2:アルミニウム合金材料、3:化成処理皮膜、4:有機樹脂被覆材料
図1