特許第6429076号(P6429076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6429076媒体支持ユニット、記録装置及び媒体支持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429076
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】媒体支持ユニット、記録装置及び媒体支持方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/06 20060101AFI20181119BHJP
   B41J 13/10 20060101ALI20181119BHJP
   B65H 1/26 20060101ALI20181119BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B41J11/06
   B41J13/10
   B65H1/26 310Z
   B41J2/01 305
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-12315(P2015-12315)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-137587(P2016-137587A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 展光
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−096017(JP,A)
【文献】 特開2003−312069(JP,A)
【文献】 特開2014−000778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00−11/70
B41J 13/00−13/32
B41J 2/01
B65H 1/00− 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持可能な支持部と、
前記支持部に支持される前記媒体を押さえることが可能な押さえ部と、を備え、
前記支持部前記押さえ部と組み合わせた場合前記押さえ部の下面と対向する領域を対向領域としたとき、前記対向領域において前記押さえ部の下面と対向する対向部が前記支持部に形成される一方、前記対向領域において前記押さえ部の下面と対向する部材が前記支持部に形成されない逃がし領域が設けられており、
前記逃がし領域では、前記支持部に支持され前記押さえ部で押さえられた前記媒体の一部が、前記媒体の支持方向の下側に移動可能であることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記対向部は、前記支持部の縁部分に形成されることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記逃がし領域は、前記対向部が前記縁部分の1周未満で形成されることにより、形成されることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記押さえ部は、各辺同士が繋がった枠状であることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記対向部の前記逃がし領域側の端部は、前記支持方向から見て鋭角となるように構成されていることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記対向領域において、前記対向部の形成領域の面積は、前記逃がし領域の面積よりも大きいことを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の媒体支持ユニットにおいて、
前記逃がし領域は、前記支持方向から見た前記支持部の一辺の少なくとも一部を含んで形成され、
前記媒体支持ユニットは、前記一辺と反対側の位置から前記媒体の支持動作が可能に構成されていることを特徴とする媒体支持ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の媒体支持ユニットと、
前記媒体支持ユニットに支持された前記媒体に記録を実行可能な記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置において、
前記媒体支持ユニットを前記記録部に対して移動可能な移動部を備え、
前記移動部によって第1方向に前記媒体支持ユニットを移動させながら、前記媒体支持ユニットに支持された前記媒体に対して前記記録部により記録を実行可能であり、
前記媒体支持ユニットにおいて、前記逃がし領域は、前記第1方向の後端側に形成されることを特徴とする記録装置。
【請求項10】
媒体を支持可能な支持部と、前記支持部に支持される前記媒体を押さえることが可能な押さえ部と、を備える媒体支持ユニットにおける媒体支持方法であって、
前記支持部前記押さえ部と組み合わせた場合前記押さえ部の下面と対向する領域を対向領域としたとき、前記対向領域において前記押さえ部の下面と対向する対向部を前記支持部に形成する一方、前記対向領域において前記押さえ部の下面と対向する部材が前記支持部に形成されない逃がし領域が設け、
前記逃がし領域において、前記支持部に支持され前記押さえ部で押さえられた前記媒体の一部を、前記媒体の支持方向の下側に移動可能とすることを特徴とする媒体支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体支持ユニット、記録装置及び媒体支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、支持部に支持される媒体を押さえることが可能な押さえ部を備える媒体支持ユニットが使用されている。押さえ部で媒体を押さえることで媒体の浮きを抑制してセットすることが可能になる。
例えば、特許文献1には、支持部としてのセットトレイと、セットトレイの縁部分全周に亘って押さえることが可能な押さえ部としての枠と、を備える媒体支持ユニットが開示されている。ここで、該媒体支持ユニットの該セットトレイには、縁部分全周に亘って該枠を受けるための縁部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−227089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支持部の縁部分全周に亘って押さえ部を受けるための縁部が形成されていると、媒体の浮きを抑制して媒体を支持部にセットしても、例えば、媒体が空気中の水分を吸った場合や、媒体にインクを付着させることに伴って媒体が膨潤した場合などにおいて、膨潤した媒体の逃げ場が無く、媒体が浮いてしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、支持部に支持される媒体を押さえることが可能な押さえ部を備える媒体支持ユニットにおいて、媒体の浮きを抑制することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の媒体支持ユニットは、媒体を支持可能な支持部と、前記支持部に支持される前記媒体を押さえることが可能な押さえ部と、を備え、前記支持部は、前記押さえ部と組み合わせた場合に前記媒体の支持方向において前記押さえ部と対向する対向領域のうち、一部の領域である一部領域に対向部が形成され、前記対向領域において前記対向部が形成されず、前記支持部に支持され前記押さえ部で押さえられた前記媒体の一部が移動可能な非形成領域が設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様の媒体支持ユニットは、前記第1の態様において、前記対向部は、前記支持部の縁部分に形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様の媒体支持ユニットは、前記第2の態様において、前記非形成領域は、前記対向部が前記縁部分の1周未満で形成されることにより、形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様の媒体支持ユニットは、前記第2又は第3の態様において、前記押さえ部は、枠状であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の態様の媒体支持ユニットは、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記対向部の前記非形成領域側の端部は、前記支持方向から見て鋭角となるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第6の態様の媒体支持ユニットは、前記第1から第5のいずれか1つの態様において、前記対向領域の前記一部領域の面積は、前記非形成領域の面積よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明の第7の態様の媒体支持ユニットは、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記非形成領域は、前記支持方向から見た前記支持部の一辺の少なくとも一部を含んで形成され、前記媒体支持ユニットは、前記一辺と反対側の位置から前記媒体の支持動作が可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第8の態様の記録装置は、前記第1から第7のいずれか1つの態様の媒体支持ユニットと、前記媒体支持ユニットに支持された前記媒体に記録を実行可能な記録部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第9の態様の記録装置は、前記第8の態様において、前記媒体支持ユニットを前記記録部に対して移動可能な移動部を備え、前記移動部によって第1方向に前記媒体支持ユニットを移動させながら、前記媒体支持ユニットに支持された前記媒体に対して前記記録部により記録を実行可能であり、前記媒体支持ユニットにおいて、前記非形成領域は、前記第1方向の後端側に形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第10の態様の媒体支持方法は、媒体を支持可能な支持部と、前記支持部に支持される前記媒体を押さえることが可能な押さえ部と、を備える媒体支持ユニットにおける媒体支持方法であって、前記支持部に、前記押さえ部と組み合わせた場合に前記媒体の支持方向において前記押さえ部と対向する対向領域のうち、一部の領域である一部領域に対向部を形成し、前記対向領域における前記対向部を形成せず、前記支持部に支持され前記押さえ部で押さえられた前記媒体の一部が移動可能な非形成領域を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持部に支持される媒体を押さえることが可能な押さえ部を備える媒体支持ユニットにおいて、媒体の浮きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る記録装置の概略斜視図。
図2】本発明の一実施例に係る記録装置の概略斜視図。
図3】本発明の一実施例に係る記録装置の概略正面図。
図4】本発明の実施例1に係る媒体支持ユニットを表す概略斜視図。
図5】本発明の実施例1に係る媒体支持ユニットを表す概略側面断面図。
図6】本発明の実施例1から実施例9に係る媒体支持ユニットを表す概略平面図。
図7】従来の媒体支持ユニットを表す概略側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施例1](図1図6
以下に、本発明の実施例1の媒体支持ユニット2、並びに、該媒体支持ユニット2を備えた一実施例に係る記録装置1について、添付図面を参照して詳細に説明する。
最初に、本実施例の記録装置1の概要について説明する。
図1及び図2は本発明の実施例1に係る記録装置1の概略斜視図であり、このうち図1は本実施例の記録装置1の媒体M(図4参照)の支持部としてのトレイ4が記録開始位置にある状態、図2はトレイ4が媒体Mのセット位置にある状態を表している。
また、図3は、本実施例の記録装置1の概略正面図である。
【0019】
本実施例の記録装置1は、媒体Mを支持面8で支持した状態で移動方向Aに移動する媒体支持ユニット2を備えている。媒体支持ユニット2は、媒体Mの支持部であるトレイ4を有している。記録装置1は、トレイ4に支持された媒体Mを移動方向Aに搬送する媒体搬送部3を備えている。また、トレイ4はステージ5に載置されている。トレイ4はステージ5と共に、回転レバー9を回転させることにより、媒体Mの支持方向C(高さ方向)に移動する。
【0020】
また、記録装置1の本体内部にはインクを吐出して媒体Mに記録することが可能な記録ヘッド7が備えられている。本実施例において、記録ヘッド7は、媒体Mに記録を実行可能な記録部に相当する。そして、本実施例の記録装置1は、記録ヘッド7が設けられたキャリッジ6を移動方向Aと交差する交差方向Bに往復移動させることで、記録ヘッド7を交差方向Bに往復移動させながら、記録ヘッド7からトレイ4に支持された媒体Mにインクを吐出させて所望の画像を形成する。
なお、本実施例の記録装置1は、図1及び図2中の手前側(左下方向)がトレイ4への媒体Mのセット位置(図2に対応)である。そして、図1及び図2中の奥側(右上方向)の記録開始位置(図1に対応)まで移動方向Aのうちの方向A1に媒体Mをセットしたトレイ4を移動した後、移動方向Aのうちの方向A2にトレイ4を移動しながら記録する。
【0021】
なお、本実施例の記録装置1は、交差方向Bに往復移動しながら記録する記録ヘッド7を備えているが、インクを吐出するノズルを移動方向Aと交差する交差方向Bに複数設けた所謂ラインヘッドを備える記録装置でもよい。
ここで、「ラインヘッド」とは、媒体Mの移動方向Aと交差する交差方向Bに形成されたノズルの領域が、媒体Mの交差方向B全体をカバー可能なように設けられ、記録ヘッド又は媒体Mを相対的に移動させて画像を形成する記録装置に用いられる記録ヘッドである。なお、ラインヘッドの交差方向Bのノズルの領域は、記録装置が対応している全ての媒体Mの交差方向B全体をカバー可能でなくてもよい。
また、本実施例の記録ヘッド7は、媒体Mにインクを吐出することで記録を実行可能な記録部であるが、このような記録部に限定されず、例えば、色材を媒体Mに転写して記録する転写式の記録部を使用してもよい。
【0022】
また、本実施例の記録装置1は、図3で表されるように、センサーSを備えており、トレイ4に支持される媒体Mと記録ヘッド7との間隔の異常(媒体Mと記録ヘッド7との間隔が狭すぎること)の有無を検出することができる構成になっている。
ここで、センサーSは、発光部Seと受光部Srとを有している。そして、センサーSは、発光部Seから受光部Srに向けて光を照射し、受光部Srで該光を受光したか否かに基づいて、該間隔の異常の有無を検出する構成である。ただし、このような構成に限定はない。
【0023】
次に、本発明の実施例1の媒体支持ユニット2について詳細に説明する。
ここで、図4は、本実施例の媒体支持ユニット2を表す概略斜視図である。また、図5は、本実施例の媒体支持ユニット2を表す概略側面断面図である。また、図6における図6(A)は、本実施例の媒体支持ユニット2を表す概略平面図である。
一方、図7は、従来の媒体支持ユニットを表す概略側面断面図であり、本実施例の媒体支持ユニット2を表す図5に対応する図である。
【0024】
本実施例の媒体支持ユニット2は、上記のように、媒体Mを支持可能な支持部としてのトレイ4を備えている。また、図4及び図5で表されるように、トレイ4に支持される媒体Mを押さえることが可能な押さえ部10を備えている。本実施例の媒体支持ユニット2は、図4で表されるように、トレイ4の支持面8に媒体Mを載置し、媒体Mを載置したトレイ4に対して押さえ部10を組み合わせることで媒体Mを保持する構成である。
図6に示すように、トレイ4において、移動方向Aにおける一方側を16a側、移動方向Aにおける他方側を16c側と定義する。また、トレイ4において、交差方向Bにおける一方側を16b側、交差方向Bにおける他方側を16d側と定義する。また、本実施形態のように、トレイ4が平面図において四角形(角にアール加工や面取りが施された略四角形を含む)のときは、16a側、16b側、16c側及び16d側を、第1の辺側、第2の辺側、第3の辺側及び第4の辺側、と定義してもよい。
ここで、図5(A)は、図4で表される状態(媒体Mをトレイ4にセットしようとしている状態)から媒体Mを載置したトレイ4に対して押さえ部10を組み合わせた状態を表している。図5(B)は、図5(A)の状態から記録装置1で記録を行う前に作業者が、トレイ4の16a側、16b側、16c側及び16d側のうちの16c側(媒体Mのセット位置側)から、媒体Mを方向F1に引っ張り、トレイ4に対して押さえ部10を組み合わせた際に生じていた媒体Mの浮き12(図7(C)参照)を無くした状態を表している。図5(C)は、図5(B)の状態から記録装置1で記録を行うことに伴って媒体Mが膨潤し、膨潤した媒体Mの一部が16a側から方向F4に逃げている状態を表している。
また、図4及び図5で表されるように、トレイ4は、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10の庇部11の下面11aと対向する対向領域Rのうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13が形成されている。詳細には、対向部13の上面13aの一部が、下面11aと対向する対向領域Rの一部領域R1に該当している。そして、図5(C)で表されるように、対向領域Rにおいて対向部13が形成されず、トレイ4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部が、方向F4に移動可能な非形成領域R2が設けられている。すなわち、該非形成領域R2は、例えば膨潤した媒体Mを逃がすための領域(逃がし領域)となっている。このため、本実施例の媒体支持ユニット2は、媒体Mが膨潤した際の媒体の浮き12を抑制することができる構成になっており、このことに伴い、本実施例の記録装置1は、媒体Mが膨潤しても媒体Mの浮き12を抑制して記録することができる構成になっている。
【0025】
別の表現をすると、本実施例の媒体支持ユニット2を用い、トレイ4に、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10と対向する対向領域Rうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13を形成し、対向領域Rにおける対向部13を形成せず、トレイ4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部が、方向F4に移動可能な非形成領域R2を設けている。こうして、該非形成領域R2を形成して膨潤した媒体Mを逃がすための逃がし領域を形成することで、媒体Mが膨潤した際の媒体Mの浮き12を抑制することができる。
【0026】
なお、本実施例の媒体支持ユニット2は、媒体Mを載置したトレイ4に対して押さえ部10を組み合わせた状態(図5(A)の状態)から、16c側から媒体Mを方向F1に引っ張り媒体Mの浮き12を無くそうとすると、図5(B)の一部拡大図Xで表されるように、押さえ部10全体も方向F1に移動する。こうして、押さえ部10が媒体Mを介してトレイ4に突き当てられ、16a側において押さえ部10とトレイ4とで媒体Mが挟持され、媒体M全体が方向F1に移動してしまう(媒体Mがトレイ4から滑り落ちてしまう)ことが抑制される。
一方、従来の媒体支持ユニットでは、媒体Mを載置したトレイ4に対して押さえ部10を組み合わせた状態(図7(A)の状態)から、16c側から媒体Mを方向F1に引っ張り媒体Mの浮き12を無くそうとすると、図7(B)で表されるように、押さえ部10に方向F2の力が加わる。このような状態になると、16a側において押さえ部10とトレイ4とによる媒体Mの挟持力は弱くなり、媒体M全体が方向F1に移動してしまいやすくなる。さらには、押さえ部10がトレイ4から外れてしまう虞もある。
【0027】
また、本実施例の媒体支持ユニット2は、膨潤した媒体Mを逃がすための逃がし領域に対応する非形成領域R2が形成されているため、媒体Mが膨潤した際の媒体Mの浮き12を抑制することができる。例えば、図5(C)で表されるように、記録装置1で記録を行うことに伴って媒体Mが方向F3に向かって膨潤しても、膨潤した媒体Mの一部が16a側から方向F4に逃げることができるため、トレイ4に支持された媒体Mの浮き12を抑制できる。
一方、従来の媒体支持ユニットでは、16a側、16b側、16c側及び16d側の全ての縁部分に切れ間なく対向部13が形成されている。このため、例えば、図7(C)で表されるように、記録装置で記録を行うことに伴って媒体Mが方向F3に向かって膨潤すると、16a側において膨潤した媒体Mが逃げられず、トレイ4に支持された媒体Mに浮き12が発生してしまう場合がある。
【0028】
図4図5及び図6(A)で表されるように、本実施例の媒体支持ユニット2では、対向部13はトレイ4の縁部分に形成されている。このため、トレイ4の縁部分に沿って媒体Mを押さえ部10で押さえることができ、媒体Mの浮きを効果的に抑制して媒体Mをトレイ4にセットすることができる構成になっている。
【0029】
別の表現をすると、本実施例の押さえ部10は枠状であり、押さえ部10は、トレイ4と組み合わせた場合に、該押さえ部10と対向する対向領域Rの一部領域R1において、トレイ4の縁部分に形成される対向部13と対向する。このため、トレイ4の縁部分に沿って媒体Mを押さえることができ、媒体Mの浮きを効果的に抑制して媒体Mをトレイ4にセットすることができる構成になっている。
なお、「枠状」とは、切れ間なく1周、物の周囲を縁取ることが可能な構成に限定されず、物の周囲を概ね縁取ることが可能な構成であれば切れ間がある構成も含む意味である。
【0030】
また、図4で表されるように、非形成領域R2は、トレイ4の16a側、16b側、16c側及び16d側の縁部分のうちの16a側の縁部分にのみ、すなわち、トレイ4の縁部分の一部に構成されている。別の表現をすると、非形成領域R2は、対向部13がトレイ4の縁部分の1周未満となるように形成されていることにより、形成されている。このため、非形成領域R2を簡単に形成しているとともに、トレイ4の縁部分に沿って媒体Mを押さえることができることで、媒体Mの浮きを効果的に抑制して媒体Mをトレイ4にセットすることができる構成になっている。
【0031】
また、図4及び図6(A)で表されるように、対向部13の非形成領域R2側の端部13bは、支持方向Cから見て鋭角となるように構成されている。すなわち、対向部13は、支持方向Cから見て、非形成領域R2側の端部13bに向かうにつれて幅が狭くなるように構成されている。このため、媒体Mが引っ掛かり難い構成となっており、対向部13の非形成領域R2側の端部13bにおいて例えば膨潤した媒体Mを該非形成領域R2を通じて逃がす際に媒体Mが引っ掛かることを抑制することができる構成になっている。
なお、非形成領域R2側の端部13bが例えばR加工(角が取られた加工)されている構成でもよく、このような構成でも、例えば膨潤した媒体Mを該非形成領域R2を通じて逃がす際に媒体Mが引っ掛かることを抑制することができる。
【0032】
また、図6(A)で表されるように、対向領域Rの一部領域R1の面積は、非形成領域R2の面積よりも大きい。すなわち、対向領域Rにおいて、対向部13の形成領域の面積は対向部13の非形成領域の面積よりも大きい。このため、対向部13の形成領域の面積が小さくなることで押さえ部10の媒体Mを押さえる効果が不十分になるということを抑制している。また、対向部13の形成領域の面積が小さいとトレイ4に対して押さえ部10が不安定になり易いが、トレイ4に対して押さえ部10が不安定になることを抑制している。
【0033】
また、本実施例の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16c側から媒体Mの支持動作(媒体Mをトレイ4にセットするセット動作)が可能に構成されている。具体的には、図2において、トレイ4の左下側がトレイ4の16c側に該当する。このため、図4及び図6(A)で表されるように、非形成領域R2は、支持方向Cから見たトレイ4の16a側の一辺の少なくとも一部を含んで形成され、媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側の一辺と反対側の位置から媒体Mの支持動作が可能であると言える。すなわち、該媒体支持ユニット2に対する作業者は、媒体Mの支持動作の作業位置(図2における記録装置1の左下側の位置)から非形成領域R2が最も遠い位置となる状態で媒体支持ユニット2への媒体Mの支持動作を実行できると言える。
媒体Mの支持動作において、その作業位置から遠い位置に媒体Mの浮き12が生じていた場合、一般的にそれを直す作業(浮き12を無くす作業)は手間がかかる。しかしながら、該作業位置から遠い位置に非形成領域R2を形成することで、該作業位置から遠い位置に媒体Mの浮き12が生じていても非形成領域R2により浮き12を簡単に逃がす(抑制する)ことができる。例えば、トレイ4の16a側(該作業位置から遠い位置)に浮き12が発生しても媒体Mの自重により非形成領域R2を通じて該浮き12を逃がすことが可能になる。このため、本実施例の媒体支持ユニット2は、媒体Mの浮き12を無くす作業の作業効率が高くなるように構成されていると言える。
【0034】
また、本実施例の記録装置1は、媒体支持ユニット2を記録ヘッド7に対して移動方向Aに移動可能な移動部としての媒体搬送部3を備えている。そして、媒体搬送部3によって移動方向Aのうちの第1方向としての方向A2に媒体支持ユニット2を移動させながら、媒体支持ユニット2に支持された媒体Mに対して記録ヘッド7により記録を実行可能である。
ここで、媒体支持ユニット2において、非形成領域R2は、方向A2の後端側に形成されている。このため、媒体Mにインクを吐出して記録する本実施例の記録装置1においては、記録に伴って媒体Mが媒体支持ユニット2の移動方向である方向A2に膨潤していく場合においても、方向A2の後端側に非形成領域R2が形成されることで、効率的に媒体Mの浮き12を逃がす(抑制する)ことができる。
【0035】
なお、図4で表されるように、本実施例のトレイ4には、ステージ5から取り外して床などに設置する際の設置部14と、ステージ5に対して位置決め可能な位置決め部15とを備えている。ただし、トレイ4の構成に特に限定はない。
【0036】
[実施例2から9](図6(B)から(I))
次に、本発明の実施例2から9に係る媒体支持ユニット2について説明する。
図6は、本発明の実施例1から9に係る媒体支持ユニット2の概略平面図であり、上記の通り図6(A)は実施例1の媒体支持ユニット2を表している。ここで、図6(B)から(I)は、実施例2から9の媒体支持ユニット2を表しており、上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示している。
【0037】
図6(B)で表される実施例2の媒体支持ユニット2は、対向部13が、支持方向Cから見て、非形成領域R2側の端部13bに向かうにつれて幅が狭くなるように構成されていないこと以外は、実施例1の媒体支持ユニット2同様の構成である。
また、図6(C)で表される実施例3の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側ではなく、トレイ4の16c側に非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(D)で表される実施例4の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側におけるトレイ4の16b及び16d側の一部にまで、非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(E)で表される実施例5の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側ではなく、トレイ4の16b側に非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(F)で表される実施例6の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側に加えて、トレイ4の16c側にも非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(G)で表される実施例7の媒体支持ユニット2は、トレイ4の16a側、16b側、16c側及び16d側の中央部に非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(H)で表される実施例8の媒体支持ユニット2は、トレイ4の4隅に非形成領域R2が設けられる構成である。
また、図6(I)で表される実施例9の媒体支持ユニット2は、実施例1から8の媒体支持ユニット2がいずれかの方向から見ると対称な構成であるのとは異なり、いずれの方向から見ても非対称な構成である。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
以上、本発明について具体的な実施例に基づいて詳述した。ここで、本発明について、もう一度まとめて説明する。
【0039】
本発明の第1の態様の媒体支持ユニット2は、媒体Mを支持可能な支持部4と、支持部4に支持される媒体Mを押さえることが可能な押さえ部10と、を備え、支持部4は、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10と対向する対向領域Rのうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13が形成され、対向領域Rにおいて対向部13が形成されず、支持部4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部が移動可能な非形成領域が設けられることを特徴とする。
【0040】
本態様によれば、支持部4は、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10と対向する対向領域Rのうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13が形成されている。そして、対向領域Rにおいて対向部13が形成されず、支持部4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部が移動可能な非形成領域R2が設けられている。すなわち、該非形成領域R2が例えば膨潤した媒体Mを逃がすための領域(逃がし領域)となる。このため、媒体Mの浮き12を抑制することができる。
【0041】
本発明の第2の態様の媒体支持ユニット2は、第1の態様において、対向部13は、支持部4の縁部分に形成されることを特徴とする。
【0042】
本態様によれば、対向部13は支持部4の縁部分に形成される。このため、支持部4の縁部分に沿って媒体Mを押さえることができ、媒体Mの浮き12を効果的に抑制して媒体Mを支持部4にセットすることができる。
【0043】
本発明の第3の態様の媒体支持ユニット2は、第2の態様において、非形成領域R2は、対向部13が縁部分の1周未満で形成されることにより、形成されることを特徴とする。
【0044】
本態様によれば、非形成領域R2は、対向部13が支持部4の縁部分の1周未満で形成されることにより、形成される。すなわち、非形成領域R2は支持部4の縁部分の一部に形成される。このため、非形成領域R2を簡単に形成できるとともに、支持部4の縁部分に沿って媒体Mを押さえることができることで、媒体Mの浮き12を効果的に抑制して媒体Mを支持部4にセットすることができる。
【0045】
本発明の第4の態様の媒体支持ユニット2は、第2又は第3の態様において、押さえ部10は、枠状であることを特徴とする。
【0046】
本態様によれば、押さえ部10は枠状である。すなわち、押さえ部10は、支持部4と組み合わせた場合に、支持部4の縁部分に形成される対向部13と対向する。このため、支持部4の縁部分に沿って媒体Mを押さえることができ、媒体Mの浮きを効果的に抑制して媒体Mを支持部4にセットすることができる。
なお、「枠状」とは、切れ間なく1周、物の周囲を縁取ることが可能な構成に限定されず、物の周囲を概ね縁取ることが可能な構成であれば切れ間がある構成も含む意味である。
【0047】
本発明の第5の態様の媒体支持ユニット2は、第1から第4のいずれか1つの態様において、対向部13の非形成領域R2側の端部13bは、支持方向Cから見て鋭角となるように構成されていることを特徴とする。
【0048】
本態様によれば、対向部13の非形成領域R2側の端部13bは、支持方向Cから見て鋭角となるように構成されている。すなわち、対向部13は、支持方向Cから見て、非形成領域R2側の端部13bに向かうにつれて幅が狭くなるように構成されている。このため、媒体Mが引っ掛かり易い構成を避けることが可能になり、対向部13の非形成領域R2側の端部13bにおいて例えば膨潤した媒体Mを該非形成領域R2を通じて逃がす際に媒体Mが引っ掛かることを抑制することが可能になる。
【0049】
本発明の第6の態様の媒体支持ユニット2は、第1から第5のいずれか1つの態様において、対向領域Rの一部領域R1の面積は、非形成領域R2の面積よりも大きいことを特徴とする。
【0050】
本態様によれば、対向領域Rの一部領域R1の面積は非形成領域R2の面積よりも大きい。すなわち、対向領域Rにおいて、対向部13の形成領域の面積は対向部の非形成領域の面積よりも大きい。このため、対向部13の形成領域の面積が小さくなることで押さえ部10の媒体Mを押さえる効果が不十分になるということを抑制できる。また、対向部13の形成領域の面積が小さいと支持部4に対して押さえ部10が不安定になり易いが、支持部4に対して押さえ部10が不安定になることを抑制できる。
【0051】
本発明の第7の態様の媒体支持ユニット2は、第1から第6のいずれか1つの態様において、非形成領域R2は、支持方向Cから見た支持部4の一辺の少なくとも一部を含んで形成され、媒体支持ユニット2は、一辺と反対側の位置から媒体Mの支持動作が可能に構成されていることを特徴とする。
【0052】
本態様によれば、非形成領域R2は支持方向Cから見た支持部4の一辺の少なくとも一部を含んで形成され、媒体支持ユニット2は一辺と反対側の位置から媒体Mの支持動作(媒体Mを支持部4にセットするセット動作)が可能である。すなわち、該媒体支持ユニット2に対する作業者は、媒体Mの支持動作の作業位置から非形成領域R2が最も遠い位置となる状態で媒体支持ユニット2への媒体Mの支持動作を実行できる。媒体Mの支持動作において、その作業位置から遠い位置に媒体Mの浮き12が生じていた場合、一般的にそれを直す作業(浮き12を無くす作業)は手間がかかる。しかしながら、該作業位置から遠い位置に非形成領域R2を形成することで、該作業位置から遠い位置に媒体Mの浮き12が生じていても非形成領域R2により浮き12を簡単に逃がす(抑制する)ことができる(浮き12を無くす作業が簡単にできる)。
【0053】
本発明の第8の態様の記録装置1は、第1から第7のいずれか1つの態様の媒体支持ユニット2と、媒体支持ユニット2に支持された媒体Mに記録を実行可能な記録部7と、を備えることを特徴とする。
【0054】
本態様によれば、媒体Mの浮き12を抑制して記録することができる。
【0055】
本発明の第9の態様の記録装置1は、第8の態様において、媒体支持ユニット2を記録部7に対して移動可能な移動部3を備え、移動部3によって第1方向A2に媒体支持ユニット2を移動させながら、媒体支持ユニット2に支持された媒体Mに対して記録部7により記録を実行可能であり、媒体支持ユニット2において、非形成領域R2は、第1方向A2の後端側に形成されることを特徴とする。
【0056】
本態様によれば、媒体支持ユニット2において、非形成領域R2は第1方向A2の後端側に形成される。このため、例えば、媒体Mにインクなどの液体を吐出するなどして記録する記録装置1において、記録に伴って媒体Mが媒体支持ユニット2の移動方向である第1方向A2に膨潤していく場合においても、第1方向A2の後端側に非形成領域R2が形成されることで、効率的に媒体Mの浮きを逃がす(抑制する)ことができる。
【0057】
本発明の第10の態様の媒体支持方法は、媒体Mを支持可能な支持部4と、支持部4に支持される媒体Mを押さえることが可能な押さえ部10と、を備える媒体支持ユニット2における媒体支持方法であって、支持部4に、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10と対向する対向領域Rのうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13を形成し、対向領域Rにおける対向部13を形成せず、支持部4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部が移動可能な非形成領域R2を設けることを特徴とする。
【0058】
本態様によれば、支持部4に、押さえ部10と組み合わせた場合に媒体Mの支持方向Cにおいて押さえ部10と対向する対向領域Rのうち、一部の領域である一部領域R1に対向部13を形成する。そして、対向領域Rにおける対向部13を形成しない非形成領域R1から、支持部4に支持され押さえ部10で押さえられた媒体Mの一部を、移動可能にする。すなわち、該非形成領域R2を形成することで、例えば膨潤した媒体Mを逃がすための領域(逃がし領域)を形成する。このため、媒体Mの浮きを抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 記録装置、2 媒体支持ユニット、3 媒体搬送部(移動部)、
4 トレイ(支持部)、5 ステージ、6 キャリッジ、7 記録ヘッド(記録部)、
8 支持面、9 回転レバー、10 押さえ部、11 庇部、11a 庇部の下面、
12 媒体Mの浮き、13 対向部、13a 対向部13の上面、
13b 対向部13の非形成領域R2側の端部、14 設置部、15 位置決め部、
M 媒体、R 対向領域、R1 押さえ部10と対向する対向領域Rの一部領域、
R2 対向部13の非形成領域、S センサー、 Se 発光部、Sr 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7