特許第6429077号(P6429077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429077
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20181119BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B62D1/185
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-12671(P2015-12671)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-137772(P2016-137772A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】作田 雅芳
(72)【発明者】
【氏名】長谷 篤宗
(72)【発明者】
【氏名】明法寺 祐
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0210536(US,A1)
【文献】 特表2011−516323(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/156055(WO,A1)
【文献】 特開2015−009685(JP,A)
【文献】 特開2014−051130(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017853(WO,A1)
【文献】 特開2004−268841(JP,A)
【文献】 仏国特許発明第02781748(FR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材が連結され、軸方向に伸縮可能なステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを保持し、前記操舵部材側のアッパージャケットおよび前記操舵部材とは反対側のロアージャケットを有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケットと、
前記ロアージャケットを支持し、車体に固定可能なブラケットと、
前記アッパージャケットに固定され、前記軸方向に沿って並ぶ複数の被係合歯を有する被係合部材と、
前記ロアージャケットによって回転可能に支持され、操作部材の操作に応じて前記被係合歯に係合し、二次衝突時に前記ロアージャケットから離脱可能な係合部材と、
二次衝突時に前記係合部材と一体移動する可動部を含み、二次衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収部材と、を備え、
二次衝突時に前記係合部材が前記被係合部材の被係合歯に係合した状態で前記アッパージャケットとともに移動するように構成されているステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、二次衝突時に移動する前記係合部材を前記被係合歯に対する係合姿勢に保持する姿勢保持機構を備えるステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、前記姿勢保持機構は、前記被係合部材と平行に延びる案内部材を含み、
前記被係合部材と前記案内部材との間に、二次衝突時に前記係合部材の移動を案内する案内空間が区画されているステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記姿勢保持機構は、前記可動部または前記可動部と一体移動する部分に設けられて二次衝突時に前記係合部材を係合姿勢で嵌合保持する嵌合部を含むステアリング装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一項において、二次衝突前の状態で、前記姿勢保持機構と前記係合部材とは離間しているステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のステアリング装置では、車体に固定される支持アセンブリに支持された可動爪の歯と、剪断ピンによって筒状体に固定されたガイド片の凹部とが、互いに噛み合っている。車両衝突時において運転者等が操舵部材に衝突する二次衝突時には、剪断ピンが剪断される。そのため、ガイド片は、可動爪を介して支持アセンブリに固定され、筒状体とは同行移動しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0210536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のステアリング装置では、筒状体には、ターンスイッチやコンビスイッチやキーロック等の装備品が取り付けられることがある。
二次衝突時に筒状体の移動量に相当する衝撃吸収ストロークは、筒状体と一体移動する装備品が、ガイド片や可動爪と干渉しない範囲内で設定される。このため、衝撃吸収ストロークが短くなる虞がある。
【0005】
この発明は、二次衝突時に十分な衝撃吸収ストローク量を確保できるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、操舵部材(2)が連結され、軸方向(X)に伸縮可能なステアリングシャフト(3)と、前記ステアリングシャフトを保持し、前記操舵部材側のアッパージャケット(20)および前記操舵部材とは反対側のロアージャケット(21)を有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケット(4)と、前記ロアージャケットを支持し、車体(22)に固定可能なブラケット(6)と、前記アッパージャケットに固定され、前記軸方向に沿って並ぶ複数の被係合歯(49)を有する被係合部材(50)と、前記ロアージャケットによって回転可能に支持され、操作部材(40)の操作に応じて前記被係合歯に係合し、二次衝突時に前記ロアージャケットから離脱可能な係合部材(52)と、二次衝突時に前記係合部材と一体移動する可動部(71)を含み、二次衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収部材(68)と、を備え、二次衝突時に前記係合部材が前記被係合部材の被係合歯に係合した状態で前記アッパージャケットとともに移動するように構成されているステアリング装置(1,1P)である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、二次衝突時に移動する前記係合部材を前記被係合歯に対する係合姿勢に保持する姿勢保持機構(69)を備えるステアリング装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記姿勢保持機構は、前記被係合部材と平行に延びる案内部材(75)を含み、前記被係合部材と前記案内部材との間に、二次衝突時に前記係合部材の移動を案内する案内空間(80)が区画されているステアリング装置である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3において、前記姿勢保持機構は、前記可動部または前記可動部と一体移動する部分(76)に設けられて二次衝突時に前記係合部材を係合姿勢で嵌合保持する嵌合部(79)を含むステアリング装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項において、二次衝突前の状態で、前記姿勢保持機構と前記係合部材とは離間しているステアリング装置である。
【0009】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、係合部材は、二次衝突時にロアージャケットから離脱し、被係合部材の被係合歯と係合した状態で、被係合部材と、アッパージャケットと、衝撃吸収部材の可動部とともに軸方向に移動する。これにより、二次衝突時の衝撃が吸収される。二次衝突時に係合部材および被係合部材が、アッパージャケットの装備品等に干渉することがないので、二次衝突時に衝撃吸収ストローク量を十分に確保できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、係合部材は、姿勢保持機構によって、二次衝突時に被係合歯に対して係合した状態で確実に保持されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が安定する。
請求項3記載の発明によれば、係合部材は、被係合歯に対して係合した状態で案内空間によって移動を案内されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、係合部材は、嵌合部に嵌合することによって二次衝突時に係合姿勢で保持されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
請求項5記載の発明によれば、二次衝突前の係合部材の回転動作に関係なく姿勢保持機構および衝撃吸収部材を設計できるため、姿勢保持機構および衝撃吸収部材の構造を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態のステアリング装置の概略側面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図1のIII−III線に沿った断面図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図5】衝撃吸収部材周辺の上面図である。
図6】二次衝突において係合部材が嵌合部に嵌合保持された状態を示した図である。
図7】第2実施形態の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のステアリング装置の概略側面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、アッパーブラケット(ブラケット)6と、ロック機構7とを主に含んでいる。
【0015】
ステアリングシャフト3では、軸方向Xの一端3aにステアリングホイール等の操舵部材2が連結されている。ステアリングシャフト3の他端3bは、自在継手9、インターミディエイトシャフト10および自在継手11を順に介して、転舵機構12のピニオン軸13に連結されている。
転舵機構12は、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪(図示せず)を転舵する例えばラックアンドピニオン機構である。操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3およびインターミディエイトシャフト10等を介して転舵機構12に伝達される。また、転舵機構12に伝達された回転は、図示しないラック軸の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪が転舵される。
【0016】
ステアリングシャフト3は、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合によって相対摺動可能に嵌合された筒状のアッパーシャフト15およびロアーシャフト16を有している。ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
コラムジャケット4には、ステアリングシャフト3が挿通されている。コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を保持しており、複数の軸受17,18を介してステアリングシャフト3を回転可能に支持している。
【0017】
コラムジャケット4は、例えばインナージャケットである筒状のアッパージャケット20と、例えばアウタージャケットであるロアージャケット21とを有している。アッパージャケット20は、ロアージャケット21よりも操舵部材2側に配置されている。ロアージャケット21は、アッパージャケット20に対して操舵部材2とは反対側に位置している。アッパージャケット20とロアージャケット21とは、ステアリングシャフト3の軸方向Xに相対摺動可能に嵌合されている。
【0018】
アッパージャケット20は、軸受17を介してアッパーシャフト15を回転可能に支持している。ロアージャケット21は、軸受18を介してロアーシャフト16を回転可能に支持している。アッパージャケット20がロアージャケット21に対してステアリングシャフト3の軸方向Xへ移動することによって、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに軸方向Xに伸縮可能である。
【0019】
ロアーブラケット5は、車体22に固定される固定ブラケット23と、固定ブラケット23によって支持されたチルト支軸24と、ロアージャケット21の外周に固定され、チルト支軸24によって回転可能に支持されたコラムブラケット25とを備える。コラムジャケット4およびステアリングシャフト3は、チルト支軸24の中心軸線であるチルト中心CCを支点にして、チルト方向Zに回動可能(チルト可能)となっている。
【0020】
チルト中心CC回りにステアリングシャフト3およびコラムジャケット4が、回動(チルト)されることで、操舵部材2の位置が、チルト方向Zに調整(いわゆるチルト調整)される。また、ステアリングシャフト3およびコラムジャケット4が、軸方向Xに伸縮されることで、操舵部材2の位置が、テレスコ方向(軸方向X)に調整(いわゆるテレスコ調整)される。
【0021】
アッパージャケット20の後端の外周面20aには、キーロック本体、ターンスイッチまたはコンビスイッチ等の装備品100が取り付けられている。装備品100は、外周面20aから突出した任意の形状に形成されている。装備品100は、例えば、外周面20aの周方向全域においてアッパージャケット20の後端を取り囲んでいる。装備品100は、テレスコ調整の際、アッパージャケット20と一体移動する。
【0022】
図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
図2を参照して、アッパーブラケット6は、ロアージャケット21を支持するためのものである。アッパーブラケット6は、図示しないボルト等によって車体22に固定された天板26と、天板26からチルト方向Zの下方に延びる一対の側板27とを備える。一対の側板27のそれぞれには、チルト方向Zに延びるチルト用の長溝28が形成されている。
【0023】
ロアージャケット21の一端におけるチルト方向Zの上方部分には、軸方向Xに延びてロアージャケット21の一端を切り欠くスリット30が形成されている。スリット30は、ロアージャケット21の外部へ向けて、軸方向Xの上方および下方と、チルト方向Zの上方とに露出されている。
ロアージャケット21の一端(軸方向Xにおける上方端)には、軸方向Xおよびチルト方向Zに対する直交方向Yからスリット30を区画しつつチルト方向Zへ延びる一対の支持部31が一体に設けられている。
【0024】
一対の支持部31は、ロアージャケット21の一端からチルト方向Zの上方へ延びている。一対の支持部31は、直交方向Yにスリット30を挟んで互いに対向している。一対の支持部31のそれぞれには、直交方向Yから見て同じ位置に、直交方向Yに支持部31を貫通する第1支持孔33が形成されている(図3参照)。
一対の支持部31のそれぞれには、直交方向Yから見て同じ位置に、直交方向Yに支持部31を貫通する第2支持孔34が形成されている。第2支持孔34と第1支持孔33とは、軸方向Xに互いに間隔を隔てている(図1参照)。
【0025】
ロック機構7は、運転者等が手動で回転操作する操作部材40と、一端に操作部材40が取り付けられた回転軸41と、操作部材40と一体回転する回転カム42と、回転カム42に対してカム係合する非回転カムである第1締付部材43とを備える。
回転軸41は、直交方向Yに延びる軸部41aと、軸部41aの一端に設けられた頭部41bと、軸部41aの他端に設けられたねじ部41cとを有するボルトである。回転軸41は、一対の長溝28と、一対の第2支持孔34とに挿通されている。これにより、回転軸41は、一対の支持部31を介してロアージャケット21によって回転可能に支持されている。
【0026】
回転軸41の頭部41bと一方の側板27との間に、操作部材40の長手方向一端の基端部40aと回転カム42と第1締付部材43とが介在している。回転カム42および第1締付部材43は、回転軸41の頭部41bの近傍において、軸部41aによって支持されている。回転カム42は、回転軸41に対する軸方向(直交方向Yに相当)の移動が規制されている。第1締付部材43は、回転軸41の軸方向に移動可能である。
【0027】
また、ロック機構7は、回転軸41のねじ部41cにねじ係合したナット44と、他方の側板27とナット44との間に介在する第2締付部材45と、第2締付部材45とナット44との間に介在した介在部材46とを含む。
第2締付部材45と介在部材46とは、ナット44の近傍において、回転軸41の軸部41aによって、回転軸41の軸方向(直交方向Yに相当)に移動可能に支持されている。介在部材46は、ナット44と第2締付部材45との間に介在するワッシャ47と、ワッシャ47と第2締付部材45との間に介在する針状ころ軸受48とを備える。
【0028】
操作部材40のロック方向への回転操作に伴って、回転カム42が非回転カム(第1締付部材43)に対して回転することにより、第1締付部材43が回転軸41の軸方向に移動されて、第1締付部材43と第2締付部材45との間で、アッパーブラケット6の両側板27が挟持される。一対の支持部31は、一対の側板27によって締め付けられる。
これにより、ロアージャケット21を縮径させるように一対の支持部31の間のスリット30が狭まり、ロアージャケット21がアッパージャケット20に圧接されて、チルトロックおよびテレスコロックが達成される。
【0029】
図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。図4では、説明の便宜上、ステアリングシャフト3(図3参照)の図示を省略し、後述する係合部材52およびブロック部材76の断面を、ハッチングを用いずに示している(後述する図6でも同様)。
図4を参照して、ステアリング装置1は、軸方向Xに並ぶ複数の被係合歯49を有する被係合部材50と、ロアージャケット21の支持部31によって支持された支持軸51と、操作部材40の操作に応じて被係合歯49に係合する係合部材52と、を備える。また、ステアリング装置1は、係合部材52に回転軸41の回転を伝達する伝達部材53を備える。
【0030】
被係合部材50は、アッパージャケット20に固定されている。具体的には、被係合部材50は、溶接等によりアッパージャケット20の外周面20aに接合されることによってアッパージャケット20に固定されている。被係合部材50は、被係合部材50とアッパージャケット20の周壁とに跨って圧入されたピン等によってアッパージャケット20に固定されていてもよい。また、被係合部材50は、アッパージャケット20の周壁にねじ締結されることによってアッパージャケット20に固定されていてもよい。
【0031】
被係合歯49は、例えば、アッパージャケット20の径方向外方へ突出し、直交方向Yに延びる筋状の歯である。複数の被係合歯49のそれぞれは、軸方向Xに互いに等間隔を隔てており直交方向Yに延びる複数の穴と、各穴に対して軸方向Xの上方および下方から隣接して軸方向Xから各穴を区画する複数のリブとによって構成されていてもよい。また、被係合部材50は、アッパージャケット20と単一の材料で一体に形成されていてもよい。すなわち、被係合歯49がアッパージャケット20の周壁に形成されていてもよい。
【0032】
図3を参照して、支持軸51は、直交方向Yに延びている。支持軸51は、一対の第1支持孔33に挿通されるため、一対の支持部31によって支持されている。支持軸51は、直交方向Yに沿って延びる中心軸線C1を中心に第1支持孔33内で回転してもよいし、第1支持孔33に圧入されていて回転不能であってもよい。
図4を参照して、係合部材52は、支持軸51の外周の少なくとも一部(例えば半周ないし半周以上)と嵌合する嵌合孔54aを含み、支持軸51を取り囲む取り囲み部54と、取り囲み部54から軸方向Xの下方に突出する被嵌合部55とを含む。
【0033】
また、係合部材52は、取り囲み部54から軸方向Xの上方に延びる第1腕部56の先端に設けられ、伝達部材53によって回転軸41の回転が伝達される被伝達部57と、取り囲み部54から軸方向Xの上方に延びる第2腕部58の先端に設けられ、被係合歯49に係合する係合歯59とを含む。
取り囲み部54、被嵌合部55、第1腕部56、被伝達部57、第2腕部58および係合歯59は、単一の部材で一体に形成されている。
【0034】
被嵌合部55は、軸方向Xの下方に向かうに従って互いの間隔を狭めるテーパ面である一対の被嵌合面55aを含む。第1実施形態では、被嵌合面55aは、テーパ面であるが、被嵌合面55aは、軸方向Xに平行な平坦面であってもよい。
第1腕部56および第2腕部58は、互いの間に嵌合孔54aを軸方向Xの上方に向けて開放する開放溝60を区画している。係合部材52は、嵌合孔54aに支持軸51が挿通されることによって、ロアージャケット21の支持部31によって回転可能に支持されている。
【0035】
支持軸51が中心軸線C1を中心に回転する場合、係合部材52は、支持軸51と一体回転する。支持軸51が一対の第1支持孔33に圧入されていて回転不能である場合、係合部材52は、支持軸51に対して相対回転する。係合部材52は、ばねなどの付勢部材(図示せず)によって被係合部材50へ向けて付勢されていてもよい。二次衝突時には、係合部材52が、支持軸51を嵌合孔54aから開放溝60へ離脱させることによって、ロアージャケット21から軸方向Xの下方へ離脱可能である(後述する図6参照)。また、二次衝突時に支持軸51が剪断され、係合部材52は、支持軸51の剪断された部分とともにロアージャケット21から離脱する構成であってもよい。
【0036】
また、支持軸51と係合部材52との間には、支持軸51の外周によって支持され、係合部材52を支持し、二次衝突の衝撃によって破断される支持部材(図示せず)が介在していてもよい。当該支持部材は、二次衝突時に破断されることによって、支持軸51から係合部材52が離脱することを許容する。
伝達部材53は、挿通孔65aを有する筒部65と、筒部65から筒部65の径方向外方に突出する一対の伝達部66とを一体に含む。一対の伝達部66は、筒部65の周方向に互いに間隔を隔てている。挿通孔65aには、回転軸41においてスリット30内に露出された部分が挿通されている(図2参照)。これにより、伝達部材53は、回転軸41と一体回転するように回転軸41によって支持されている。伝達部材53は、一対の伝達部66の間に係合部材52の被伝達部57が位置するように回転軸41に固定されている。
【0037】
操作部材40(図2参照)のロック方向への回転操作に伴って、伝達部材53が回転軸41とともに回転すると、回転軸41の回転は、伝達部材53の一方の伝達部66から係合部材52の被伝達部57に伝達される。係合部材52は、支持軸51を中心に回転するので、一方の伝達部66から伝達された回転軸41の回転は、支持軸51の周方向Cに沿った回転に変換される。操作部材40のロック方向への回転操作によって、回転軸41は、係合部材52の係合歯59が被係合部材50のいずれかの被係合歯49に係合するまで最終的に回転される。
【0038】
逆に、操作部材40(図2参照)をロック解除方向(ロック方向とは反対側の方向)に回転操作することで、回転軸41の回転は、伝達部材53の他方の伝達部66から係合部材52の被伝達部57に伝達される。これにより、係合部材52は、周方向Cに沿って先程とは逆方向に回転する。操作部材40のロック解除方向への回転操作によって、回転軸41は、係合部材52の係合歯59と被係合部材50の被係合歯49との係合が解除されるまで最終的に回転される(図4の二点鎖線参照)。
【0039】
図5は、衝撃吸収部材68周辺の上面図である。図5では、説明の便宜上、アッパーブラケット6の図示を省略している。
図5を参照して、ステアリング装置1は、二次衝突時の衝撃を吸収する一対の衝撃吸収部材68と、二次衝突時に移動する係合部材52の姿勢を被係合部材50の被係合歯49に対して係合するときの姿勢(係合姿勢)に保持する姿勢保持機構69と、を備える。
【0040】
衝撃吸収部材68のそれぞれは、例えば一枚の矩形状の金属板を加工することにより形成される。衝撃吸収部材68の一端に設けられ、二次衝突時に軸方向Xにおける位置が拘束される拘束部70と、衝撃吸収部材68の他端に設けられ、二次衝突時に係合部材52と軸方向Xに一体移動する可動部71とを含む。また、衝撃吸収部材68は、拘束部70と可動部71との間で折り曲げられた折曲部72を含む。拘束部70と可動部71と折曲部72とは、単一の部材で一体に形成されている。
【0041】
各拘束部70は、例えば金属製のピン74等によって対応する支持部31に固定されている。各拘束部70は、第1実施形態とは異なり、対応する支持部31に設けられた切り欠きに嵌め込まれることによって固定されていてもよい。
姿勢保持機構69は、二次衝突前の状態で、係合部材52から離間して配置されている。姿勢保持機構69は、被係合部材50と平行に延びる板状の案内部材75と、例えば樹脂製または金属製の略直方体のブロック部材76とを含む。図5では、説明の便宜上、案内部材75を二点鎖線で示している。案内部材75は、一対の支持部31の間に架設されている(図3参照)。第1実施形態とは異なり、案内部材75は、一対の支持部31のそれぞれに1つずつ設けられていてもよい。この場合、各案内部材75は、チルト方向Zにおいて係合部材52と対向する位置まで延びていればよい。
【0042】
ブロック部材76は、金属製のピン77等によって可動部71に固定されている。ブロック部材76は、二次衝突時に衝撃吸収部材68の可動部71と一体に移動する部分である。ブロック部材76は、二次衝突時に衝撃吸収部材68をガイドするガイド部78と、被嵌合部55に嵌合する嵌合部79とを含む。
図3を参照して、ブロック部材76には、チルト方向Zの下方に向かう途中でブロック部材76を直交方向Yに狭める段差が形成されている。ガイド部78は、この段差によって構成される。ガイド部78は、スリット30を狭めるように一対の支持部31から直交方向Yに突出するリブ31aに係合する。この状態で、ブロック部材76は、リブ31aに沿って軸方向Xに移動可能である。
【0043】
図4を参照して、嵌合部79は、姿勢保持機構69の軸方向Xの上方の表面が軸方向Xの下方へ向かって窪むことによって形成された凹みである。嵌合部79は、チルト方向Zに対向する一対の嵌合面79aと、軸方向Xの下方における一対の嵌合面79aの端部同士を連結する底面とを含む。一対の嵌合面79aは、軸方向Xの下方に向かうに従って互いの間隔を狭めるテーパ面である。第1実施形態では、嵌合面79aは、テーパ面であるが、嵌合面79aは、軸方向Xに平行な平坦面であってもよい。
【0044】
二次衝突時には、係合部材52の被嵌合部55の一対の被嵌合面55aが、対応する嵌合面79aと面接触する。これにより、係合部材52は、チルト方向Zの動きが規制されるため、被係合部材50の被係合歯49に係合した姿勢(係合姿勢)に保持される。
次に、二次衝突時のステアリング装置1の動作について説明する。以下では、二次衝突において係合部材52が嵌合部79に嵌合保持された状態を示した図6も参照して説明する。
【0045】
二次衝突時には、操舵部材2(図1参照)からの荷重がアッパージャケット20に伝達されるので、アッパージャケット20が軸方向Xに沿って操舵部材2とは反対側へ移動しようとする。アッパージャケット20に固定された被係合部材50は、アッパージャケット20とともに移動しようとする。車両の運転時には、通常、操舵部材2の位置はロックされているため、係合部材52は、被係合部材50と係合している。そのため、係合部材52は、二次衝突による衝撃が被係合部材50から係合部材52に伝達されることによって、支持軸51から離脱する。
【0046】
二次衝突時に被係合部材50が軸方向Xの下方に移動することによって、案内部材75と被係合部材50とがチルト方向Zに対向する。この状態で、被係合部材50と案内部材75との間には、二次衝突時に係合部材52の軸方向Xへの移動を案内する案内空間80が区画される。これにより、係合部材52は、案内空間80内でチルト方向Zの動きが規制されるため、被係合部材50の被係合歯49に係合した状態でアッパージャケット20とともに軸方向Xに移動する。
【0047】
一方、図6に示すように、係合部材52が軸方向Xの下方に移動することによって、係合部材52の被嵌合部55は、ブロック部材76の嵌合部79によって嵌合保持される。これにより、係合部材52は、係合姿勢を保持されるため、係合部材52は、被係合部材50の被係合歯49に係合した状態でアッパージャケット20とともに軸方向Xに移動する。
【0048】
係合部材52がブロック部材76に嵌合保持されることで、ブロック部材76には、係合部材52から衝撃が伝達される。したがって、ブロック部材76が設けられた衝撃吸収部材68の可動部71は、軸方向Xの下方に係合部材52と一体移動する。これにより、図5に二点鎖線で示したように、衝撃吸収部材68は、折曲部72の位置を移動させるように変形することによって、二次衝突時の衝撃を吸収する。
【0049】
ここで、二次衝突時に係合部材がロアージャケットから離脱せず、被係合部材がアッパージャケットから離脱する構成のステアリング装置を比較例として想定する。また、比較例のステアリング装置では、被係合部材と衝撃吸収部材とが一体に設けられている。
比較例のステアリング装置の場合、二次衝突時には、被係合部材は、係合部材との係合によって軸方向の位置が固定されているため、アッパージャケットに固定された装備品(ターンスイッチやコンビスイッチやキーロック等)に衝突することがある。したがって、比較例のステアリング装置では、アッパージャケットの移動量が不十分となり二次衝突時に衝撃を十分に吸収できないことがある。
【0050】
また、被係合部材が、当該装備品に衝突した際に踏ん張ることによってアッパージャケットの移動が停止されたり、当該装備品との衝突によって被係合部材がうまく荷重を受けなかったりするため、被係合部材の挙動が予測不能となることがある。これにより、比較例のステアリング装置では、二次衝突時の衝撃の吸収が安定しないことがある。
さらに、比較例では、被係合部材と衝撃吸収部材とが一体に設けられているため、二次衝突時の衝撃の吸収量を調整するために材料、硬度および板厚等を変更すると被係合部材の被係合歯と係合部材との係合の強度に影響する。したがって、比較例のステアリング装置では、二次衝突時の衝撃の吸収荷重の調整の自由度が低い。
【0051】
しかし、図6を参照して、第1実施形態によれば、係合部材52は、二次衝突時にロアージャケット21から離脱し、被係合部材50の被係合歯49と係合した状態で、被係合部材50と、アッパージャケット20と、衝撃吸収部材68の可動部71とともに軸方向Xに移動する。これにより、二次衝突時の衝撃が吸収される。係合部材52および被係合部材50は、二次衝突時にアッパージャケット20とともに軸方向Xに移動するため、装備品100(図1参照)に干渉することがない。したがって、二次衝突時の衝撃吸収ストローク量を十分に確保することができる。
【0052】
また、二次衝突時に被係合部材50が装備品100(図1参照)に干渉しないため、二次衝突時の衝撃の吸収が安定する。
また、比較例とは異なり、衝撃吸収部材68と被係合部材50とを別部品として設けているため、係合部材52と被係合部材50との係合の強度に影響を与えることなく二次衝突時の衝撃の吸収荷重を調整することができる。
【0053】
また、係合部材52は、姿勢保持機構69によって、二次衝突時に被係合歯49に対して係合した状態で確実に保持されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が安定する。
また、係合部材52は、被係合歯49に対して係合した状態で案内空間80によって移動を案内されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
また、係合部材52の被嵌合部55は、嵌合部79に嵌合することによって二次衝突時に係合姿勢で保持されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
【0054】
また、二次衝突前の係合部材52の回転動作に関係なく姿勢保持機構69および衝撃吸収部材68を設計できるため、姿勢保持機構69および衝撃吸収部材68の構造を簡略化できる。
また、ブロック部材76は、ブロック部材76のガイド部78と支持部31のリブ31aとの係合によって二次衝突時に軸方向Xの下方への移動が案内されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
【0055】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の要部を示す断面図である。図7において、上記に説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
図7を参照して、第2実施形態のステアリング装置1Pは、第1実施形態のステアリング装置1とは異なり、姿勢保持機構69がブロック部材76を含んでおらず、一対の支持部31がリブ31aを含んでいない。
【0056】
第2実施形態の衝撃吸収部材68の可動部71は、係合部材52の被嵌合部55に取り付けられている。詳しくは、被嵌合部55には、支持軸51の周方向Cに沿って延びる長孔85が設けられており、可動部71には、ピン77とほぼ同じ直径の丸孔86が設けられている。ピン77は、丸孔86および長孔85の両方に挿通されている。そのため、操作部材40の操作に応じて係合部材52が周方向Cに沿って回転すると、ピン77は、長孔85内で周方向Cに沿って相対移動する。
【0057】
二次衝突時には、被係合部材50が軸方向Xの下方に移動することによって、被係合部材50と案内部材75との間には、二次衝突時に係合部材52の軸方向Xへの移動を案内する案内空間80がチルト方向Zに区画される。これにより、係合部材52は、案内空間80内でチルト方向Zの動きが規制される。また、係合部材52の被嵌合部55には、衝撃吸収部材68の可動部71が固定されている。そのため、係合部材52は、二次衝突時には、被係合部材50の被係合歯49に係合した状態で可動部71とともに軸方向Xの下方へ移動する。これにより、衝撃吸収部材68は、折曲部72の位置を移動させるように変形することによって、二次衝突時の衝撃を吸収する。
【0058】
第2実施形態によれば、係合部材52は、二次衝突時にロアージャケット21から離脱し、被係合部材50の被係合歯49と係合した状態で、被係合部材50と、アッパージャケット20と、衝撃吸収部材68の可動部71とともに軸方向Xに移動する。これにより、二次衝突時の衝撃が吸収される。係合部材52および被係合部材50は、二次衝突時にアッパージャケット20とともに軸方向Xに移動するため、装備品100に干渉することがない。したがって、二次衝突時の衝撃吸収ストローク量を十分に確保することができる。
【0059】
また、二次衝突時に被係合部材50が装備品100に干渉しないため、二次衝突時の衝撃の吸収が安定する。
また、衝撃吸収部材68と被係合部材50とを別部品として設けているため、係合部材52と被係合部材50との係合の強度に影響を与えることなく二次衝突時の衝撃の吸収荷重を調整することができる。
【0060】
また、係合部材52は、姿勢保持機構69によって、二次衝突時に被係合歯49に対して係合した状態で確実に保持されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が安定する。
また、係合部材52は、被係合歯49に対して係合した状態で案内空間80によって移動を案内されるため、二次衝突時の衝撃の吸収が一層安定する。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、第1実施形態とは異なり、嵌合部79は、衝撃吸収部材68の可動部71に設けられていてもよい。この場合、第1実施形態とは異なり、ブロック部材76が設けられていなくてもよい。
また、第2実施形態とは異なり、長孔85が可動部71に設けられていて丸孔86が被嵌合部55に設けられていてもよい。
【0062】
また、第2実施形態とは異なり、可動部71が被嵌合部55に固定されていてもよい。この場合、拘束部70と支持部31との間に周方向Cの遊びを持たせておくことによって、操作部材40を操作に応じた係合部材52の回転を許容できる。
また、衝撃吸収部材68は、必ずしも折曲部72および拘束部70を含んでいなくてもよい。要は、衝撃吸収部材68は、二次衝突時に可動部71が軸方向Xに移動することによって、曲げられ、引き裂かれ、圧縮され、剪断されまたは扱かれること等によって、二次衝突時の衝撃が吸収されればよい。
【0063】
また、ステアリング装置1,1Pは、操作部材40の基端部40aがアッパージャケット20よりもチルト方向Zの上方に配置された、いわゆるレバー上置きタイプのステアリング装置であるが、操作部材40の基端部40aがアッパージャケット20よりもチルト方向Zの下方に配置された、いわゆるレバー下置きタイプのステアリング装置にも本発明を適用することができる。
【0064】
また、ステアリング装置1は、操舵部材2の操舵が補助されないマニュアルタイプのステアリング装置に限らず、電動モータによって操舵部材2の操舵が補助されるコラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置(C−EPS)でもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ステアリング装置、1P…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、4…コラムジャケット、6…アッパーブラケット(ブラケット)、20…アッパージャケット、21…ロアージャケット、22…車体、40…操作部材、49…被係合歯、50…被係合部材、52…係合部材、68…衝撃吸収部材、69…姿勢保持機構、71…可動部、75…案内部材、76…ブロック部材(可動部と一体移動する部分)、79…嵌合部、80…案内空間、X…軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7