(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両に搭載され、車両内における車載電装品(ナビ、ETC、モニタ等)と外部機器(カメラ等)との間や、車載電装品間の有線の通信経路に配される通信用のシールドコネクタが知られている。このようなシールドコネクタは、複数のキャビティを備えたインナーハウジングを有しており、キャビティ内に、相手側端子と信号用の電線とを接続するための接続端子が収容されている。インナーハウジングは、シールドシェルにより一括にシールドされ、シールドシェルは、シールド電線のシールド導体と電気的に接続されるようになっている。
【0003】
また、シールドシェルの外側にさらにアウターハウジングを設け、このアウターハウジングと相手側のハウジングとを係止させることにより、接続端子と相手側端子とを確実に接続させる構成が提案されている。
【0004】
アウターハウジングとしては、例えば、シールドシェルを内部に収容可能な角筒状のシェル収容室を備えるとともに、シェル収容室の後方側(相手側コネクタとの嵌合方向における後方側)に、シールドシェルをシェル収容室内に挿入可能とする開口部を設け、この開口部をカバーで覆う構成がある。このカバーは、アウターハウジングに対してヒンジで一体化させることにより、シールドコネクタの組立作業性を向上させ、かつ、部品点数を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態について、
図1〜
図12を参照して説明する。シールドコネクタ10は、例えば自動車等の車両に搭載され、例えば車両内における車載電装品(ナビ、ETC、モニタ等)と外部機器(カメラ等)との間や、車載電装品間の有線の通信経路に配される。以下では、上下方向については
図1の上方を上、下方を下とし、左右方向については
図1の左下を左、右上を右とし、前後方向については、
図1の左上を前方、右下を後方として説明する。また、複数の同一部材については、一の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
【0014】
本実施形態のシールドコネクタ10は、複数(本実施形態では10本)の電線12を有するシールド電線11と、各電線12の端末部に接続される複数(本実施形態では10個)の端子15と、複数の端子15を収容するインナーハウジング16と、インナーハウジング16及び複数の電線12を覆うシールドシェル20と、シールドシェル20を内部に収容するアウターハウジング30と、を備えている(
図1参照)。
【0015】
(シールド電線11)
シールド電線11は、1GHz以上の高速通信が可能な電線であって、
図2に示すように、10本の電線12と、10本の電線12を一括して包囲し、金属細線を編み込んで構成された編組線からなるシールド層13と、シールド層13の外周を覆い、絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14と、を備えている。
【0016】
10本の電線12は、第1通信用電線として2組の高速線対(シールドとドレイン線付の差動ペア・ケーブル)と、第1通信用電線よりもデータの最大転送速度が低い第2通信用電線として1組の対(シールドなしのツイスト・ペア・ケーブル)と、電源に接続される1本の電源線と、グランドに接続される1本のグランド線である。本実施形態においては、電線12の第1通信用電線はUSB(Universal Serial Bus)3.0規格の電線である一方、第2通信用電線はUSB2.0規格の電線である。
【0017】
各電線12は、金属線からなる導体部を、絶縁性の合成樹脂からなる絶縁層で被覆したものである。シールド電線11のシールド層13及び絶縁被覆14の端末よりも前方に延びる10本の電線12の端末部は、絶縁層が剥ぎ取られ、端子15と接続される導体部が露出している。これら10本の電線12は、先端側に向けて5本ずつ上下に分けられ、上下に2段、5本ずつ横一列に並んで上下の電線列を構成している。
【0018】
(端子15)
端子15は、前方側が相手側のオス端子に接続される角筒状の端子接続部15Aとされ、端子接続部15Aの後方側に、細長い板状をなして電線12の導体部に接続される電線接続部15Bが一体に形成されている。電線接続部15Bの上面側に電線12の導体部が載置され、半田付けされることにより、端子15と電線12とが電気的に接続されている。
【0019】
(インナーハウジング16)
インナーハウジング16は、絶縁性の合成樹脂製であって、各端子15の端子接続部15Aが収容されるハウジング本体17と、ハウジング本体17の後方に延びるハウジング延出部18とを備える。
【0020】
図2に示すように、ハウジング本体17は直方体状であって、端子15が収容されるキャビティ17Aが上下2段、左右に5個、間隔を空けて並んで配置されている。各キャビティ17Aは、端子接続部15Aの外周形状に応じた矩形状の断面を有し、端子接続部15Aの長さに応じて前後方向に延びている。ハウジング本体17の前端には、外側に向けて張り出すフランジ部17Bが形成されている。また、ハウジング本体17の左右の外側面には、前端縁から後方側に向けて溝状に切り欠かれて後述するシールドシェル20の係止片21Aを係止する係止部(図示せず)が設けられている。
【0021】
ハウジング延出部18は、ハウジング本体17の後端における上下方向の中央部(上段および下段のキャビティ17Aの列の間)から板状をなして後方に向けて延びている。ハウジング延出部18のうち前方側は、左右方向に並ぶ複数の溝状をなして複数の各端子15の電線接続部15Bを載置する端子載置部とされており、後方側は、ほぼ平面状の電線載置部とされている。
【0022】
(シールドシェル20)
シールドシェル20は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等の金属板材に打ち抜き加工及び曲げ加工を施して形成されており、
図2に示すように、インナーハウジング16のハウジング本体17を包囲する角筒状のハウジング包囲部21と、ハウジング包囲部21の左右の側壁から後方に向けて延びる一対のシールド延出部22と、シールド延出部22の後端から後方に向けて延びる加締め部23(接続部の一例)と、ハウジング包囲部21および加締め部23の間において上下方向に開放された開放部を上方および下方から覆う一対のシェルカバー24と、を備えている。
【0023】
ハウジング包囲部21の左右一対の側壁には、ハウジング本体17の図示しない係止部に係止するための係止片21Aが、内側に向けて切り起こし形成されている。ハウジング包囲部21の前方側からインナーハウジング16を挿入して嵌め入れると、係止片21Aがハウジング本体17の係止部に係止することにより、ハウジング本体17のハウジング包囲部21に対する抜け止めがなされる。
【0024】
また、加締め部23をシールド電線11に加締めることにより、シールド電線11はシールドシェル20に対して保持される。なお、加締め部23は、シールド電線11の端末部において絶縁被覆14の外側に折り返したシールド層13に接続されるシールド接続部としても機能している。
【0025】
(アウターハウジング30)
アウターハウジング30は絶縁性の合成樹脂製であって、
図1および
図3ないし
図5に示すように、略角筒状の本体部31と、本体部31の後端付近にヒンジ39を介して設けられる一対のカバー40と、を備える。
【0026】
本体部31は、インナーハウジング16とシールド電線11の端末部とを内部に収容したシールドシェル20が収容される、シェル収容室37を備えている。シールドシェル20は、本体部31の後方側の開口31Aからシェル収容室37内に挿入される。
【0027】
本体部31の上面のうち前方側には、前方から嵌合される相手側コネクタ(図示せず)のフード部に係止するためのロックアーム32が後方に向けて片持ち状に設けられている。このロックアーム32の先端側(
図1における後方側)には、上方に向けて立ち上がるロック解除部33が、ロックアーム32と一体に設けられている。また、本体部31の左右の側面には、相手側コネクタの嵌合姿勢を案内するための一対の案内リブ36が嵌合方向(前後方向)に延びて設けられている。
【0028】
一対のカバー40は、本体部31の左右の側壁のうち後端付近の上端および下端に外側に向けて設けられたそれぞれ一対(合計2対)のヒンジ39を介して、本体部31と一体に設けられている。以下、一対のカバー40をそれぞれ区別して記載する場合は、本体部31の左側の側壁に連結されたカバー40を第1カバー40A、右側の側壁に連結されたカバー40を第2カバー40Bとして説明する。
【0029】
カバー40は、カバー40が閉じられた状態(
図8参照)において、本体部31の後方側の開口31Aうちシールド電線11が通される部分を除く部分を覆う平板状の背面覆い部41と、背面覆い部41の板面から外側(後方側)に向けて延びてシールド電線11および加締め部23をそれらの外周に沿うように覆う電線覆い部42と、を備えている。各電線覆い部42は断面略半円の湾曲した壁状であって、一対の電線覆い部42の端縁同士が突き合わされることにより、前後方向に円筒状に延びて内部にシールド電線11を通す筒状部46を形成するようになっている。以下、一対の電線覆い部42をそれぞれ区別して記載する場合は、第1カバー40Aの電線覆い部42を第1電線覆い部42A、第2カバー40Bの電線覆い部42を第2電線覆い部42Bとして説明する。
【0030】
一対のカバー40が閉じられた状態において、筒状部46(一対の電線覆い部42)は、加締め部23のうち本体部31(シェル収容室37)から露出された部分を少なくとも覆う長さ寸法に設定されている。また、一対のカバー40が閉じられた状態における筒状部46の内径は、シールド電線11を加締めた状態の加締め部23の外径と同等あるいは僅かに大きい寸法に設定されている。
【0031】
一対のカバー40には、互いに相手側のカバー40と係止するための係止手段が設けられている。詳細に説明すると、第1電線覆い部42Aの外周面の上端および下端には、外側に向けて立ち上がるとともに、一対のカバー40が閉じられた状態において第2カバー40Bに向けてコ字形状に延びる一対の係止片43(第1係止手段の一例)が設けられている。
【0032】
一方、第2電線覆い部42Bの外周面の上端及び下端には、一対のカバー40が閉じられた状態において上述した一対の係止片43と係止可能な、一対の係止突部44(第1係止手段の一例)が設けられている。これら係止片43と係止突部44とが互いに係止することにより、第1カバー40Aおよび第2カバー40Bは互いに閉じられた状態に保持される(
図8ないし
図12参照)。なお、係止突部44のうち第1カバー40A側の角部は、斜めに切り欠かれた案内面44Aとされている。
【0033】
ところで、本実施形態において第2電線覆い部42Bは、第1電線覆い部42Aよりもやや大きく形成されている。より詳細に説明すると、
図9に示すように、第1電線覆い部42Aと第2電線覆い部42Bとは、筒状部46の左右方向(
図9の上下方向)における中心線Xで分割されているのではなく、中心線Xより左寄り(
図9における下寄り)の位置で分割されることにより形成されている。これにより、一対のカバー40が閉じられた状態において、第2電線覆い部42Bの第1電線覆い部42Aとの突き合わせ面は中心線Xよりも左側に張り出しており、この中心線X上に、上述した係止突部44が重なるように設定されている。換言すると、一対の係止突部44は、筒状部46の中心線X上に設けられている。なお、係止突部44が中心線X上に設けられるとは、係止突部44の中心が中心線Xと一致する場合および中心線Xから僅かにずれる場合の双方を含む。
【0034】
一対のカバー40には、カバー40が閉じられた状態において本体部31に係止するための係止爪45(第2係止手段の一例)が設けられている。係止爪45は、各電線覆い部42の下端のうち背面覆い部41側の端部から、カバー40が閉じられた状態において前方に向けて延びるとともに、左右方向の外側に向けて屈曲された、略L字形状をなしている(
図11参照)。なお係止爪45の屈曲方向における外側の角部は面取りされて、曲面状をなしている。
【0035】
一方本体部31には、底壁のうち後方側の端部に、幅方向(左右方向)にわたって下方に向けて膨出するとともに後方側に向けて開口する膨出部34が設けられており、この膨出部34の内側に、カバー40の係止爪45と係止する一対の係止突部35が設けられている。一対の係止突部35は、本体部31の幅方向(左右方向)における中心線に対して線対称となる位置に設けられている。
【0036】
一対の係止突部35は、
図1および
図5に示すように、膨出部34の内壁のうち左右の一対の側壁から対向する側壁に向けて突設されており、後方側から前方側に向けて互いに近づく方向に傾斜状をなす案内面35Aを有するとともに、前方側の角部が矩形に切り欠かれた段差部35Bとされており、この段差部35Bに、係止爪45が係止するようになっている(
図11参照)。
【0037】
次に、本実施形態のシールドコネクタ10の組立方法について説明する。シールドコネクタ10を組み立てる際には、まず、インナーハウジング16とシールド電線11の端末部とを内部に収容したシールドシェル20を、アウターハウジング30の後方側の開口31Aから前方に向けて挿入する(
図1参照)。シールドシェル20はシェル収容室37の所定位置まで挿入され、図示しない係止手段により所定位置に保持される。この状態において、シールドシェル20の加締め部23の一部は、本体部31(シェル収容室37)の後端から後方側に突出している(
図6および
図7参照)。
【0038】
次に、第1カバー40Aおよび第2カバー40Bをヒンジ39を中心に回動操作することにより閉じた状態とする。このカバー40の回動に伴って、第1カバー40Aの一対の係止片43は第2カバー40Bの一対の係止突部44に近づき、係止突部44の案内面44Aにより外側に向けて次第に弾性変形する。そして、一対のカバー40が完全に閉じられるのと同時に、係止片43は係止突部44を乗り越え、弾性復帰する。これにより、係止片43と係止突部44とが係止し、第1カバー40Aおよび第2カバー40Bが互いに閉じられた状態にロックされる(
図8ないし
図12参照)。
【0039】
一方、これと同時に、カバー40の回動に伴って、一対のカバー40の一対の係止爪45が本体部31の膨出部34内に進入し、係止突部35の案内面35Aにより互いに近づく方向に弾性変形する。そして、一対のカバー40が完全に閉じられるのと同時に、案内面35Aを乗り越え、弾性復帰する。これにより、係止爪45は係止突部35の段差部35Bに係止し、各カバー40が本体部31に対して保持される。
【0040】
また、このように一対のカバー40が完全に閉じられるとともに保持された状態において、本体部31の開口31Aは背面覆い部41により覆われるとともに、加締め部23は筒状部46により覆われており、もって、アウターハウジング30によりシールドシェル20全体が覆われた状態とされる。
【0041】
本実施形態によれば、一対のカバー40が閉じられた状態において、一対のカバー40は係止片43および係止突部44により互いに係止され、閉じた状態が保持されている。また一対のカバー40は、係止爪45が係止突部35に係止することにより、それぞれ本体部31に係止されている。従って、ヒンジ39が破損した場合でも、一対のカバー40が開いたり、本体部31から外れることが抑制される。
【0042】
また、係止片43および係止突部44は、一対のカバー40のうち加締め部23を覆う筒状部46に設けられているから、加締め部23を筒状部46により確実に保護することができる。また、加締め部23を筒状部46により電気的に絶縁することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態では、係止片43および係止突部44を一対設ける構成としたが、一箇所だけに設ける構成としてもよい。
【0045】
(2)また、係止爪45および係止突部35を一対設ける構成としてもよい。
【0046】
(3)上記実施形態では、係止片43および係止突部44を筒状部46を構成する電線覆い部42に設ける構成としたが、背面覆い部41に設ける構成としてもよい。
【0047】
(4)また、これらの係止手段の形態は、係止片や係止爪、係止突部に限るものではなく、適宜変更することができる。
【0048】
(5)上記実施形態では、第1電線覆い部42Aと第2電線覆い部42Bの大きさが異なる形態を示したが、同じ大きさとしてもよい。また、係止突部44や係止片43を設ける位置も、上記実施形態に限るものではない。