【文献】
ChemistryOpen,2014年 4月11日,Vol. 3,pp. 54-57
【文献】
ORGANIC LETTERS,2013年,Vol. 15, No. 23,pp. 6070-6073
【文献】
Organic LETTERS,2014年 3月 5日,Vol. 16, No. 6,pp. 1830-1832
【文献】
CHEMISTRY A EUROPEAN JOURNAL,2013年,Vol. 19,pp. 10334-10342
【文献】
Chemical Communications,2007年,pp. 2521-2523
【文献】
Journal of Organic Chemistry,2008年,Vol. 73,pp. 4602-4607
【文献】
Synlett,2008年,(4),pp. 592-596,pages 1-5
【文献】
Angewandte Chemie International Edition,2009年,Vol. 48,pp. 9052-9070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記求核性化合物Zが、1,3−ジカルボニル化合物、フェノール化合物、アニリン化合物、複素環化合物、アルコール化合物、オキシイミド化合物、芳香族硫黄化合物、および芳香族シアン化合物からなる群から選択される、請求項6に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SF
5基を対象化合物へ導入するためのより簡便な方法が望まれている。特に芳香環にSF
5基が結合したペンタフルオロスルファニル基含有アリール基(以下ArSF
5基ともいう)を対象化合物に導入できれば、医薬品等の分野において大きな利点となる。かかる事情を鑑み、本発明はArSF
5基を対象化合物へ容易に導入しうる化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは特定のジアリールヨードニウム塩が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
(1)後述する一般式(d)で表されるジアリールヨードニウム塩。
(2)式中、mが0であり、nが3である、(1)に記載のジアリールヨードニウム塩。
(3)式中、R
2がメチル基、エチル基、n−プロピル基、またはi−プロピル基である、(2)に記載のジアリールヨードニウム塩。
(4)式中、mが0であり、nが0である、(1)に記載のジアリールヨードニウム塩。
(5)後述する一般式(b)で表される化合物を準備する工程、ならびに
当該化合物の酸化反応と、後述する一般式(c)で表される化合物とのフリーデルクラフツ反応を同時に行い、後述する一般式(d)で表されるジアリールヨードニウム塩を生成する工程、
を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載のジアリールヨードニウム塩の製造方法。
(6)後述する一般式(d)で表される化合物と求核性化合物Zとを反応させて、前記求核性化合物にペンタフルオロスルファニル基含有アリール基を導入することを含む、後述する一般式(f)で表される化合物の製造方法。
(7)前記求核性化合物Zが、1,3−ジカルボニル化合物、フェノール化合物、アニリン化合物、複素環化合物、アルコール化合物、オキシイミド化合物、芳香族硫黄化合物、および芳香族シアン化合物からなる群から選択される、(6)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ArSF
5基を対象化合物へ容易に導入しうるジアリールヨードニウム塩を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」は両端の値すなわちXとYを含む。
【0008】
1.ジアリールヨードニウム塩
本発明のジアリールヨードニウム塩は一般式(d)で表される。
【0010】
式中、kはSF
5基の数を表し、1または2である。SF
5基はベンゼン環のメタ位またはパラ位に結合することが好ましい。kが2である場合、二つのSF
5基はベンゼン環のメタ位に結合することが好ましい。
【0011】
R
1はベンゼン環上の置換基であり炭素数が1または2のアルキル基である。mはR
1の数を示し0〜4の整数である。立体障害を低減させる観点からはR
1は存在しないこと、すなわちmは0であることが好ましい。しかしながら、R
1が存在する場合はメチル基が好ましく、かつmの値は1または2が好ましい。
【0012】
R
2は他方のベンゼン環上の置換基であり炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基である。合成が容易であること等から、R
2はメチル基、エチル基、n−プロピル基、またはi−プロピル基であることが好ましい。nはR
2の数を示し0〜5の整数である。同様の理由からnは3であることが好ましい。この場合、R
2はオルト位とパラ位に結合することが好ましい。また、原料の入手容易性の観点からは、nは0であることが好ましい。
【0013】
A
−はカウンターアニオンである。A
−はジアリールヨードニウム塩の溶媒への溶解性に影響を与える。この観点からは、A
−はトリフルオロメタンスルホネートアニオン(以下OTf
−ともいう)が好ましい。
【0014】
2.ジアリールヨードニウム塩の製造方法
ジアリールヨードニウム塩は、以下のスキームで製造されることが好ましい。
【0016】
(1)化合物(b)の準備
まず化合物(b)を準備する。化合物(b)におけるR
1、m、およびkは前述のとおり定義される。化合物(b)は任意の方法で準備できるが、対応するBr体を、金属触媒の存在下で芳香族フィンケルシュタイン反応(J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 14844、Chem. Commun., 2012, 48, 3993.)することにより準備できる。具体的にはBr体(化合物(a))を、CuI存在下で、NaIと反応させてI体とする。CuIの使用量はBr体に対して5〜20mol%、NaIの使用量はBr体に対して過剰であればよいが、1.5〜3当量が好ましい。この際、Br体に対して5〜20mol%のtrans−N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン等のアミンを用いることが好ましい。溶媒は限定されないが、ジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましい。反応温度は適宜調整してよいが、80〜150℃が好ましい。当該反応の一例を以下に示す。
【0018】
また、化合物(b)においてSF
5基がメタ位に結合する場合、当該化合物は芳香族アミンから合成できる。具体的には以下のようにザンドマイヤー反応(Douglas Philp et al, Tetrahedron, 2000, 56, 3399)とハロゲン交換反応により当該化合物を準備できる。以下に当該反応の一例を示す。
【0020】
当該反応においてNaNO
2の使用量は化合物(a’)に対し1〜1.5当量、HClの使用量は化合物(a’)に対し2〜8当量、KIの使用量は化合物(a’)に対し1〜1.5当量が好ましい。溶媒は限定されないが水が好ましい。反応温度は適宜調整してよいが、0℃〜室温が好ましい。
【0021】
(2)ジアリールヨードニウム塩(d)の合成
このように準備した化合物(b)の酸化反応と、化合物(c)とのフリーデルクラフツ反応を同時に行う。酸化剤としては過酸化物が好ましく、中でもメタクロロ過安息香酸が好ましい。酸化剤の使用量は、化合物(b)に対して1.0〜1.5当量が好ましい。
【0022】
化合物(c)はベンゼン化合物である。化合物(c)におけるR
2およびnは前述のとおり定義される。化合物(c)の使用量は化合物(b)に対して1.0〜1.5当量が好ましい。フリーデルクラフツ反応はルイス酸存在下で行われるが、反応性および生成物の溶媒への溶解性等の観点から、ルイス酸としてはトリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。ルイス酸の使用量は、化合物(b)に対して1.0〜2.5当量が好ましい。
【0023】
反応温度は限定されず20〜60℃程度で行えるが、室温が好ましい。溶媒はハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタン等がより好ましい。これらの反応は、Chem. Commun., 2007, 2521.およびJ.Am.Chem.Soc., 2011, 133, 13778.に記載されている。目的化合物であるジアリールヨードニウム塩は、ジエチルエーテルを用いて再結晶することで精製できる。
【0024】
ジアリールヨードニウム塩はKoser型試薬(ArI(OH)OTs)を経由しても合成が可能である。Koser型試薬は、酸化剤としてOxone(登録商標)を用い、アリールヨウ素(III)ビス(トリフルオロアセテート)を調製した後に、p−トルエンスルホン酸を用いて合成できる(Viktor V. Zhdankin et al, J. Org. Chem., 2010, 75, 2119)。Koser試薬は一般的に固体であるため、合成中間体として保存する際の利便性が大きい。続いて、化合物(c)とトリフルオロエタノール中でフリーデルクラフツ反応させることによりジアリールヨードニウム塩を合成できる(Yasuyuki Kita et al, Chem. Commun., 2007, 4152.)。
【0025】
当該反応における酸化剤の使用量は化合物(b)に対して1.0〜2.0当量である。酸化反応の温度は適宜調整できるが、室温が好ましい。Oxone(登録商標)は、過硫酸のカリウム塩を含む酸化剤である。フリーデルクラフツ反応における条件等は前述のとおりである。以下に当該反応の一例を示す。
【0027】
3.ジアリールヨードニウム塩を用いた反応
ジアリールヨードニウム塩は、求核性化合物と反応して、当該求核性化合物にArSF
5基を導入できる。この反応は以下の式で表せる。
【0029】
求核性化合物とは求核性の部位を持った化合物であり、本反応により求核性部位にArSF
5基を導入できる。よって本発明では、求核性化合物を対象化合物ともいう。反応は、求核性化合物Zに対してジアリールヨードニウム塩が1.1〜2当量となるような過剰な条件で行うことが好ましい。反応温度は反応性によって適宜調整できるが、20〜160℃程度が好ましい。反応溶媒も、反応温度や溶解性を考慮して決定されるが、水、アルコール、NMP、DMF、ハロゲン化炭化水素等の極性溶媒が好ましい。求核性化合物に応じて、塩基、金属等の反応促進剤を適宜使用できる。
【0030】
求核性化合物としては、βケトエステルやマロン酸等の1,3−ジカルボニル化合物、フェノール化合物、アニリン化合物、複素環化合物、アルコール化合物、オキシイミド化合物、芳香族硫黄化合物、または芳香族シアン化合物が挙げられる。これらの化合物は置換基を有していてもよい。例えば、フェノール化合物としては、フェノール、アルキル置換フェノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。他の化合物についても同様である。1,3−ジカルボニル化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、およびオキシイミド化合物を用いる場合の反応促進剤は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、カリウム tert-ブトキシド等の強塩基が好ましい。アニリン化合物、複素環化合物、芳香族硫黄化合物、および芳香族シアン化合物を用いる場合の反応促進剤は、パラジウム炭素、トリフルオロメタンスルホン酸銅等の金属が好ましい。
【0031】
本反応の反応機構は以下のようにリガンドカップリングを経て進行すると推察される(Masahito Ochiai et al, ARKIVOC 2003, 43)。
【0033】
まず、カウンターアニオンAの脱離により求核性化合物Zが、中心のヨウ素Iに配位する。その後、イプソ置換様の反応中間を経て、より電子不足なSF
5アリールに対して選択的にリガンドカップリングが進行すると考えられる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
以下の反応を行い、ジアリールヨードニウム塩を合成した。
【0035】
【化8】
【0036】
ヨウ化銅(I)(95.2mg、0.500mmol、和光純薬工業株式会社製)とヨウ化ナトリウム(1.5g、10.0mmol、ナカライテスク株式会社製)をシュレンク管へ入れ、容器内をアルゴンで置換した。その後、臭化アリール(a1)(1.42g、5.00mmol、宇部興産株式会社製)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(108μL、1.00mmol、Sigma−Aldrich社製)、1,4−ジオキサン(5.0mL)を加え、110℃にて24時間撹拌した。反応終了後、混合物を室温に冷却し、アンモニア水溶液(28%)と水を加え、ジクロロメタンにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製してヨウ化アリール(b1)(1.48g、90%)を白色固体として得た。
【0037】
メタクロロ過安息香酸(545mg、2.18mmol、和光純薬工業株式会社製)をナス型フラスコに入れ、真空下室温にて1時間乾燥した後にヨウ化アリール(b1)(654mg、1.98mmol)のジクロロメタン(6.0mL)溶液を加えた。続いて、混合物を0℃に冷却した後にトリフルオロメタンスルホン酸(0.298mL、3.37mmol、セントラル硝子株式会社製)を滴下し、室温にて2時間撹拌した。そして、混合物を0℃に冷却した後に、メシチレン(0.303mL、2.18mmol、ナカライテスク株式会社製)を滴下し、さらに室温にて18時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去し、ジエチルエーテルを加えて生成物を再沈殿させ、桐山ロートを用いて固体をろ取し、ジエチルエーテルにて洗浄した。最後に固体を真空下にて乾燥させることにより、ジアリールヨードニウム塩(d1)(1.0902g、92%)を白色固体として得た。
【0038】
さらに、臭化アリールとして以下の化合物を用いて同様の合成を行った。以下に質量分析およびNMRによる分析結果とまとめて示す。本発明において、質量分析は型名DCMS−QP5050A、島津製作所製を用いて行い、
1H−NMRおよび
19F−NMRは、Mercury 300、 Varian 社製を用いて測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【化9】
【0041】
[実施例2]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0042】
【化10】
【0043】
発明者らによって合成されたβ−ケトエステル(t1)(19.0mg、0.100mmolと水素化ナトリウム(60%、4.8mg、0.120mmol、ナカライテスク株式会社製)をN,N’−ジメチルホルムアミド(1.00mL)中にて10分間撹拌した後に、実施例1で得たジアリールヨードニウム塩(d1)(65.8mg、0.110mmol)を加えてさらに2時間撹拌した。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製して生成物(f1)(27.8mg、71%)を白色固体として得た。
【0044】
以下の原料を用いて同様の反応を行い、生成物(f2)〜(f6)を製造した。以下に分析結果とまとめて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
[実施例3]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0049】
【化13】
【0050】
マロン酸エステル(t10)(51.3μL、0.300mmol、東京化成工業株式会社製)をN,N’−ジメチルホルムアミド(0.39mL)に溶解した。水素化ナトリウム(60%15.6mg0.390mmol、ナカライテスク株式会社製)とN,N’−ジメチルホルムアミド(0.39mL)の混合物を準備し、当該混合物に0℃にて前記マロン酸エステル溶液を加えた。その後0℃にて10分間撹拌した後に、実施例1で得たジアリールヨードニウム塩(d1)(233mg、0.390mmol)とN,N’−ジメチルホルムアミド(0.39mL)の混合物を加えて、さらに室温にて3時間撹拌した。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製して生成物(f10)(95.2mg、84%)を無色油状物として得た。
【0051】
ジアリールヨードニウム塩として(d2)を用いて同様の反応を行い、生成物(f11)を得た。以下に分析結果とまとめて示す。
【0052】
【表3】
【0053】
【化14】
【0054】
[実施例4]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0055】
【化15】
【0056】
インドール(t20)(11.7mg、0.100mmol、ナカライテスク株式会社製)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)(3.6mg、0.010mmmol、東京化成工業株式会社製)と実施例1で得たジアリールヨードニウム塩(d1)(65.8mg、0.110mmol)の1,2−ジクロロエタン(0.5mL)溶液に対して、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(24.7μL、0.110mmol、Sigma−Aldrich 社製)を加え、35℃にて26時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジクロロメタンにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/2)で精製して生成物(f20)(13.7mg、43%)を黄色固体として得た。
【0057】
[実施例5]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0058】
【化16】
【0059】
パラジウム炭素(5wt%、10.6mg、0.005mmmol、Sigma−Aldrich社製)、ジアリールヨードニウム塩(d1)(83.8mg、0.140mmol)とエタノール(0.5mL)の混合物に対して、3−メチルチオフェン(t30)(9.7μL、0.100mmol、Sigma−Aldrich社製)を加え、アルゴン雰囲気下60℃にて26時間撹拌した。反応終了後、シリカゲルろ過によって不溶物を取り除き、溶解物を酢酸エチルで洗い流した。本反応では、メチルチオフェンの4位の炭素に対する付加体と5位の炭素への付加体が生成し、その生成比(モル比)は4.7:1である。これらを含む反応混合物を、続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=98/2)で精製して4位への付加体(生成物(f30))(8.3mg、28%)を無色油状物として得た。以下に実施例4の結果と合わせて示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【化17】
【0062】
[実施例6]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0063】
【化18】
【0064】
水酸化ナトリウム(16.0mg、0.400mmol)の水(1.0mL)溶液に対して、ベンジルアルコール(t40)(20.6μL、0.200mmol、ナカライテスク株式会社製)を加えて室温にて5分間撹拌した。続いて、ジアリールヨードニウム塩(d1)(144mg、0.390mmol)を混合物に対して加えて、さらに50℃にて3時間撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=95/5)で精製して生成物(f40)(43.6mg、70%)を白色固体として得た。
【0065】
同様に以下の化合物を用いて同様の反応を行い、生成物を得た。以下に分析結果とまとめて示す。
【0066】
【表5】
【0067】
【化19】
【0068】
[実施例7]
実施例6において、ベンジルアルコールの代わりにフェノール(t50)(東京化成工業株式会社製)を使用して同様の反応を行った。以下に結果をまとめる。
【0069】
【表6】
【0070】
【化20】
【0071】
[実施例8]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0072】
【化21】
【0073】
N−ヒドロキシフタルイミド(t60)(32.6mg、0.200mmol、ナカライテスク株式会社製)とtert−ブトキシカリウム(24.7mg、0.220mmol、東京化成工業株式会社製)のN,N−ジメチルホルムアミド(0.8mL)溶液を室温にて10分間撹拌した。続いて、ジアリールヨードニウム塩(d1)(132mg、0.220mmol)を混合物に対して加えて、さらに60℃にて2時間撹拌した。反応終了後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/2)で精製して生成物(f60)(48.5mg、66%)を淡黄色固体として得た。
【0074】
同様の反応を、ジアリールヨードニウム塩(d2)を使用して行った。以下に、分析結果とまとめて示す。
【0075】
【表7】
【0076】
【化22】
【0077】
[実施例9]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0078】
【化23】
【0079】
アニリン(t70)(18.3μL、0.200mmol、キシダ化学株式会社製)と銅粉(25.4mg、0.400mmol、林純薬工業株式会社製)のN−メチル−2−ピロリドン(0.4mL)懸濁液を室温にて15分間撹拌した。続いて、ジアリールヨードニウム塩(d1)(132mg、0.220mmol)を混合物に対して加えて、さらに80℃にて4時間撹拌した。反応終了後、シリカゲルろ過によって不溶物を取り除き、溶解物をジエチルエーテルで洗い流した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で精製して生成物(f70)(32.3mg、55%)を黄色固体として得た。
【0080】
同様の反応を、ジアリールヨードニウム塩(d2)を使用して行った。以下に、分析結果とまとめて示す。
【0081】
【表8】
【0082】
【化24】
【0083】
[実施例10]
以下の反応を行い、対象化合物にArSF
5基を導入した。
【0084】
【化25】
【0085】
まず、ジアリールヨードニウム塩(d4)を準備した。当該化合物は、実施例1においてメシチレンの代わりにベンゼンを使用し、反応温度を室温から80℃に変更して、同様の反応を行い合成した。次いで、チオアニソール(t80)(11.7μL、0.100mmol、東京化成工業株式会社製)と当該ジアリールヨードニウム塩(d4)(55.6mg、0.100mmol)、1,4−ジオキサン(0.32mL)の混合物に対してトリフルオロ酢酸(61.2μL、0.800mmol)を加えて、110℃にて60時間撹拌した。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルにて抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。続いて減圧下で溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して生成物(f80)(5.7mg、18%)を無色油状物として得た。以下に結果をまとめる。
【0086】
【表9】
【0087】
【化26】
【0088】
本発明により、種々の対象化合物に対してペンタフルオロスルファニルフェニル基を導入できることが明らかである。本発明では、対象化合物のsp3炭素にペンタフルオロスルファニルフェニル基を導入できるが、このような化合医薬品などの生理物質に有用である。また、本発明では、対象化合物の酸素原子や窒素原子へもペンタフルオロスルファニルフェニル基をも導入できる。