(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続面は、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm以上、3mm以下である凹部および凸部を有しないか、または前記凹部および凸部の、前記接続面の単位面積当たりの存在個数が10個/cm2以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子実装用基板。
前記接続面の、前記凹部および凸部以外の領域での表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さRaは、0.1μm以上、0.5μm以下、最大高さ粗さRzは、1μm以上、5μm以下である請求項5に記載の半導体素子実装用基板。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザー等の半導体素子がそれ自体の発熱によって動作不良を生じるのを防止するために、当該半導体素子と接続される半導体素子実装用基板(ヒートシンク、放熱基板、ハウジング等)には、放熱性に優れることが必要とされる。
そのため従来は、半導体素子実装用基板を、例えばAlN、SiC等の、熱伝導率が高く、かつ良好な放熱性を有するセラミックによって形成するのが一般的であった。ところが近年の、半導体素子の高出力化に伴って、半導体素子実装用基板には、現状よりも高度な放熱性が要求されるようになってきている。
【0003】
そこでこの要求に対応するため、半導体素子実装用基板を、多数の微小なダイヤモンド粒子が、例えばCu、Ag等の金属や、SiC等のセラミックからなる結合材によって結合された、ダイヤモンド複合材料によって形成することが提案された。
ダイヤモンドは、理論熱伝導率が2000W/m・Kという、物質中で最高の熱伝導率を有することから、かかるダイヤモンドを含む上記のダイヤモンド複合材料を用いて半導体素子実装用基板を形成すれば、その熱伝導率を、従来のセラミック等からなるものに比べて飛躍的に向上できると考えられている。
【0004】
ダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板と、この半導体素子実装用基板に接続(実装)される半導体素子との間でできるだけスムースに熱伝導させるためには、半導体素子実装用基板と半導体素子とが、半田やロウ材の層を介して、できるだけ隙間なく密着した状態で接続されていることが必要である。
半導体素子実装用基板に熱的に接続されて、半導体素子からの放熱を補助するための他の放熱部材についても同様である。半導体素子実装用基板と他の放熱部材との間でできるだけスムースに熱伝導させるためには、半導体素子実装用基板と他の放熱部材とが、半田やロウ材の層を介して、できるだけ隙間なく密着した状態で接続されていることが必要である。
【0005】
そしてそのためには、ダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板の、半導体素子を接続するための素子実装面や、他の放熱部材(以下、半導体素子を含めて、これらを「他部材」と総称する場合がある。)を熱的に接続するための伝熱面等の、他部材との接続面ができるだけ平滑に仕上げられている必要がある。
そこで半導体素子実装用基板の接続面を平滑に仕上げるために、従来は、かかる接続面を、例えばダイヤモンド砥石等を用いて研磨加工するのが一般的である。また研磨加工した接続面を、金属膜で被覆する場合もある。
【0006】
例えば特許文献1には、半導体素子実装用基板としての半導体レーザー搭載用サブキャリヤをダイヤモンド複合材料によって形成するとともに、その接続面を、日本工業規格JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」において規定された、表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さR
aが0.5μm以下となるように研磨加工すること、研磨加工した接続面をNi、Cr、Ti、およびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる第一の金属膜と、Mo、Pt、Au、Ag、Sn、Pd、Ge、およびInからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる第二の金属膜とでこの順に被覆することが記載されている。
【0007】
また特許文献2、3には、それぞれ半導体素子実装用基板としてのヒートシンクをダイヤモンド複合材料によって形成するとともに、その接続面を、算術平均粗さR
aが、特許文献2では0.2μm以下、特許文献3では0.5μm以下となるように研磨加工することや、研磨加工した接続面を、先に説明したのと同様の第一および第二の金属膜で被覆することが記載されている。
【0008】
しかし、ダイヤモンド粒子と結合材の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率が60体積%以上の、一般的なダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板は加工性が低く、例えばダイヤモンド砥石等を使用した研磨加工には長時間を要するため、半導体素子実装用基板の生産性が低下して、製造コストが嵩むという問題がある。
例えば、かかるダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板の接続面を、#100〜#400のダイヤモンド砥石を用いた平面研磨によって、上記所定の表面粗さになるまで研磨加工しようとすると、1つの接続面を仕上げるのにおよそ20時間以上もの時間を要する。
【0009】
しかも、たとえ接続面を所定の表面粗さに研磨加工できたとしても、当該接続面には、研磨時に、ダイヤモンド粒子が脱落することで発生した凹部や、研磨されずに残ったダイヤモンド粒子に起因する凸部が多数、存在する。
そのため、かかる凹部や凸部によって接続面に生じる凹凸によって、当該接続面と他部材との間の、半田やロウ材の層を介した密着が妨げられて両者間に隙間を生じやすく、生じた隙間が、半導体素子実装用基板と他部材との間での熱伝導の効率を低下させる原因となる。
【0010】
また接続面と他部材との間をたとえ隙間なく密着させることができたとしても、接続面に存在する凹部が、両者間の界面に、熱伝導を妨げる空隙として残留して、やはり半導体素子実装用基板と他部材との間での熱伝導の効率を低下させる原因となる。
そのためこのいずれの場合にも、ダイヤモンド複合材料の良好な熱伝導性を十分に活かして、半導体素子実装用基板の熱伝導性を十分に向上することができないという問題もある。
【0011】
したがって特許文献1〜3に記載された従来の半導体素子実装用基板では、近年の、半導体レーザー等の半導体素子のさらなる高出力化に十分に対応できず、半導体素子が、それ自体の発熱によって動作不良を生じるのを防止する効果が不十分になりつつあるのが現状である。
また凹部や凸部の大きさは、ダイヤモンド粒子の粒径に依存して、深さまたは高さが5〜300μm程度と大きいのに対し、特許文献1〜3において接続面に形成している金属膜の厚みは、それに比べて著しく小さい。
【0012】
例えば特許文献1の実施例3では、第一の金属膜としてのNi膜の、厚みの最大値を2μm、第二の金属膜としてのAu膜の厚みを0.2μmに設定しており、合計の厚みは、最大でも2.2μmに過ぎない。
また特許文献3の実施例3では、第一の金属膜としてのNi膜の厚みを1μm、第二の金属膜としてのPt膜の厚みを0.2μmに設定しており、合計の厚みは1.2μmに過ぎない。
【0013】
そのため、たとえ接続面を2層の金属膜で被覆したとしても、それによって凹部や凸部を埋める、すなわち凹部を、空隙として残留しないように、金属膜を形成する金属によって満たしたり、凹部や凸部を金属膜中に埋没させたりして接続面を平滑化するのは困難である。
特許文献4には、半導体素子実装用基板としての放熱体をダイヤモンド複合材料によって形成するとともに、当該放熱体の接続面に、先に説明した金属膜よりも厚みの大きいCu材層を形成して凹部や凸部を埋めることで、Cu材層の表面を平滑面とすることが記載されている。
【0014】
かかる構成によれば、先に説明した接続面の凹凸によって他部材との密着が妨げられて両者間に隙間を生じたり、凹部が、両者間の界面に熱伝導を妨げる空隙として残留したりするのを防止して、接続面と他部材とを、Cu材層、および半田やロウ材の層を介して隙間なく密着させた状態で互いに接続することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《半導体素子実装用基板》
本発明は、多数のダイヤモンド粒子を結合材によって結合したダイヤモンド複合材料からなり、
他部材との接続面を有し、
前記結合材は、
(A) Cuと(B) Mo、(A) Cuと(B) W、(A) Agと(B) Mo、または(A) Agと(B) Wであり、
前記ダイヤモンド粒子と前記2種の金属の総量中に占める前記ダイヤモンド粒子の体積比率
をy、前記2種の金属の総量中に占める前記Wの体積比率をx=B/(A+B)×100としたとき、前記体積比率yは、40体積%以上、55体積%以下で、かつ
前記xおよびyは、組み合わせる2種の金属に応じて、前述した式(1)と式(2)、式(3)と式(4)、式(5)と式(6)、または式(7)と式(8)を満足し、
前記ダイヤモンド複合材料の、25℃から400℃までの熱膨張率は、5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6K以下である、
半導体素子実装用基板である。
【0025】
ダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板を構成する、例えばCu、Ag、Al、およびMg等の結合材は、金属材料の中でも比較的熱伝導率が高いため、ダイヤモンド粒子による高い熱伝導を補助する効果に優れている上、機械加工性が良いことが知られている。
そのため、ダイヤモンド粒子と結合材の総量中に占める結合材の体積比率を、ダイヤモンド粒子の体積比率が一般的な60体積%以上の範囲より小さくなるように、相対的に増加させると、ダイヤモンド複合材料からなる半導体素子実装用基板の良好な熱伝導性を維持しながら、その加工性を向上できる。
【0026】
すなわち、研磨加工時に発生するダイヤモンド粒子の脱粒や研磨残りによる凹凸を減らして、先に説明した従来の各種被覆層等を形成しなくても平滑性に優れ、他部材を隙間なく密着できる接続面を、できるだけ短時間の研磨加工で形成することが可能となる。
しかし結合材の体積比率が増加することでダイヤモンド複合材料の熱膨張率が増加して、特に半導体素子との熱膨張率の差が大きくなる。
【0027】
その結果、接続面に他部材を接続する際や半導体素子を動作させる際の熱履歴による膨張、収縮によって、当該半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりしやすくなるという新たな問題を生じる。
そこで発明者は、結合材についてさらに検討した。その結果、通常の結合材
のうちCu、
またはAg
(以下「第一の金属」と総称する場合がある)に加えて、当該第一の金属に対して全く、あるいは殆ど固溶しない上、第一の金属よりも熱膨張率が小さ
いMo
またはW
(以下「第二の金属」と総称する場合がある)を、結合材として併用すればよいことを見出した。
【0028】
すなわち、第二の金属は熱膨張率が小さいため、当該第二の金属を第一の金属と併用することで、ダイヤモンド複合材料の熱膨張率を調整して、特に半導体素子との熱膨張率の差をできるだけ小さくすることができる。
しかも第二の金属は、第一の金属とは全く、あるいは殆ど固溶しないため、第一の金属に固溶して格子のずれやそれに伴う電子伝導の低下等を生じることがなく、したがって第一の金属による良好な熱伝導を維持することができる。
【0029】
そのため第一および第二の2種の金属を結合材として併用することで、結合材の体積比率を増加させることによる、半導体素子実装用基板の良好な熱伝導性を維持しながら加工性を向上する効果を良好に保持しながら、ダイヤモンド複合材料の熱膨張率の増加を抑制して、特に半導体素子の熱膨張率に近づけることができる。
またそのため、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できる。
【0030】
かかる本発明の半導体素子実装用基板は、結合材として第1および第2の2種の金属を併用すること以外は、従来同様に製造できる。特に、先に説明した特許文献1〜3に記載の、超高圧発生装置を用いた製造方法によって好適に製造することができる。
すなわちダイヤモンド粒子と、結合材としての第1および第2の2種の金属とを所定の体積比率で混合して、モリブデン等からなるカプセル中に封入し、真空中、不活性ガス雰囲気中、または還元性雰囲気中で、加圧しながら加熱して焼結させたのちカプセルを除去し、次いで所定の形状に加工するとともに、その接続面を放電加工による切断、ダイヤモンド砥石等による研磨、またはブラスト加工等の1種または2種以上の加工によって仕上げることで、本発明の半導体素子実装用基板が製造される。
【0031】
焼結時の加圧圧力は1GPa以上、特に4GPa以上であるのが好ましく、6GPa以下であるのが好ましい。また加熱温度は1100℃以上であるのが好ましく、1500℃以下、特に1200℃以下であるのが好ましい。
焼結に際しては、カプセルを上記所定の圧力下、所定の温度に加熱することで、結合材としての2種の金属のうち少なくとも第一の金属を溶融させてダイヤモンド粒子間に浸透させ、次いで圧力を保持した状態で温度を900℃以下(常温も含む)に下げて一定時間、保持することで第一の金属を凝固させたのち常圧、常温に戻してカプセルを回収するのが好ましい。
【0032】
〈ダイヤモンド粒子〉
ダイヤモンド粒子としては、理論熱伝導率が2000W/m・Kという、物質中で最高の熱伝導率を有する、天然ないし合成のダイヤモンドの粒子が、いずれも使用可能である。
ダイヤモンド粒子の平均粒径は5μm以上、特に10μm以上であるのが好ましく、100μm以下、特に50μm以下であるのが好ましい。
【0033】
ダイヤモンド粒子の平均粒径がこの範囲未満では、ダイヤモンド粒子と、結合材としての2種の金属との界面面積が増大することでダイヤモンド複合材料の熱抵抗が大きくなり、半導体素子実装用基板の熱伝導性が低下するおそれがある。
一方、ダイヤモンド粒子の平均粒径が上記の範囲を超える場合には、研磨等の加工性が低下して、接続面に生じる凹部や凸部の大きさが大きくなり、接続面の平滑性が低下して半導体素子等の他部材を隙間なく密着できないおそれがある。
【0034】
なおダイヤモンド粒子の表面には、例えば特許文献3に記載されているように、結合材と同一材質のコーティング層が形成されていてもよい。
〈結合材〉
結合材としては、先に説明したようにCu
またはAg
である第一の金属と、Mo
またはW
である第二の金属とを併用する。
【0035】
この2種の金属は、それぞれダイヤモンド粒子と均一に混合するために、いずれも粒子状であるのが好ましい。
このうち第一の金属の粒子は、平均粒径が0.1μm以上、特に1μm以上であるのが好ましく、100μm以下、特に50μm以下であるのが好ましい。
平均粒径がこの範囲未満である微小な第一の金属の粒子は製造、および取り扱いが容易でないため、半導体素子実装用基板の生産性が低下し、製造コストが高くつくおそれがある。
【0036】
一方、第一の金属の粒子の平均粒径が上記の範囲を超える場合には、ダイヤモンド複合材料中で、第一の金属の偏析が生じやすくなるおそれがある。
また第二の金属の粒子は、同様の理由で、平均粒径が0.1μm以上、特に1μm以上であるのが好ましく、100μm以下、特に50μm以下であるのが好ましい。
すなわち、平均粒径がこの範囲未満である微小な第二の金属の粒子は製造、および取り扱いが容易でないため、半導体素子実装用基板の生産性が低下し、製造コストが高くつくおそれがある。
【0037】
一方、第二の金属の粒子の平均粒径が上記の範囲を超える場合には、ダイヤモンド複合材料中で、第二の金属の偏析が生じやすくなるおそれがある。
〈体積比率〉
本発明において、ダイヤモンド粒子と2種の金属の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率
yが40体積%以上、55体積%以下に限定されるのは、下記の理由による。
【0038】
すなわちダイヤモンド粒子の体積比率
yがこの範囲未満では、ダイヤモンド粒子による、半導体素子実装用基板の熱伝導率を、従来のセラミック等からなるものに比べて大幅に向上する効果が得られない。
また、結合材として2種の金属を併用しているにもかかわらずダイヤモンド複合材料の熱膨張率が増加して、特に半導体素子との熱膨張率の差が大きくなってしまう。そのため、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりしやすくなる。
【0039】
一方、ダイヤモンド粒子の体積比率
yが上記の範囲を超える場合には、相対的に結合材としての2種の金属の合計の体積比率が少なくなって、先に説明した、結合材の体積比率を増加させることによる、加工性を向上して、できるだけ短時間の研磨加工で、平滑性に優れ、他部材を隙間なく密着できる接続面を形成する効果が得られない。
これに対し、ダイヤモンド粒子の体積比率
yを上記の範囲とすることにより、ダイヤモンド複合材料の熱膨張率の増加を抑えて、特に半導体素子との熱膨張率の差をできるだけ小さくすることが可能となる。また熱伝導率をできるだけ高いレベルに維持しながらその加工性を向上して、できるだけ短時間の研磨加工で、平滑性に優れ、半導体素子等の他部材を隙間なく密着できる接続面を形成することが可能となる。
【0040】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、ダイヤモンド粒子の体積比率
yは、上記の範囲でも43体積%以上であるのが好ましく、53体積%以下であるのが好ましい。
〈熱特性〉
(熱膨張率)
また本発明において、ダイヤモンド複合材料の25℃から400℃までの熱膨張率が
5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下に限定されるのは、下記の理由による。
【0041】
すなわち、ダイヤモンド複合材料の熱膨張率がこの範囲未満、または範囲を超える場合には、そのいずれにおいても、特に接続面に接続する半導体素子との熱膨張率の差が大きくなる。そのため、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、あるいは接続が外れたりしやすくなる。
これに対し、ダイヤモンド複合材料の熱膨張率を上記の範囲とすることにより、特に接続面に接続する半導体素子との熱膨張率の差をできるだけ小さくできる。したがって熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続が外れたりするのを防止できる。
【0042】
ダイヤモンド複合材料の熱膨張率を調整するためには、ダイヤモンド粒子の体積比率
yを、先に説明した範囲で変更したり、第一の金属と第二の金属の体積比率を変更したりすればよい。
かかるダイヤモンド粒子の体積比率
y、および2種の金属の体積比率と、熱膨張率との関係は、組み合わせる2種の金属の種類によって異なる。
【0043】
すなわち、第一の金属がCu、第二の金属がMoである組み合わせにおいては、
図1中に実線で囲んだ範囲、すなわちダイヤモンド粒子の体積比率yが40体積%以上、55体積%以下あるとともに、かかるダイヤモンド粒子の体積比率y、およびCuとMoの総量中に占めるMoの体積比率x=B/(A+B)×100〔体積%、AはCuの体積%、BはMoの体積%〕が、式(1)(2):
y≧−5.37x+100 (1)
y≦−0.72x+91 (2)
を満足する範囲とすることにより、ダイヤモンド複合材料の25℃から400℃までの熱膨張率を、
5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下の範囲とすることができる。
【0044】
同様に第一の金属がCu、第二の金属がWである組み合わせにおいては、
図2中に実線で囲んだ範囲、すなわちダイヤモンド粒子の体積比率yが40体積%以上、55体積%以下あるとともに、かかるダイヤモンド粒子の体積比率y、およびCuとWの総量中に占めるWの体積比率x=B/(A+B)×100〔体積%、AはCuの体積%、BはWの体積%〕が、式(3)(4):
y≧−5.37x+100 (3)
y≦−0.92x+101 (4)
を満足する範囲とすることにより、ダイヤモンド複合材料の25℃から400℃までの熱膨張率を、
5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下の範囲とすることができる。
【0045】
第一の金属がAg、第二の金属がMoである組み合わせにおいては、
図3中に実線で囲んだ範囲、すなわちダイヤモンド粒子の体積比率yが40体積%以上、55体積%以下あるとともに、かかるダイヤモンド粒子の体積比率y、およびAgとMoの総量中に占めるMoの体積比率x=B/(A+B)×100〔体積%、AはAgの体積%、BはMoの体積%〕が、式(5)(6):
y≧−0.74x+49 (5)
y≦−1.33x+127 (6)
を満足する範囲とすることにより、ダイヤモンド複合材料の25℃から400℃までの熱膨張率を、
5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下の範囲とすることができる。
【0046】
さらに第一の金属がAg、第二の金属がWである組み合わせにおいては、
図4中に実線で囲んだ範囲、すなわちダイヤモンド粒子の体積比率yが40体積%以上、55体積%以下あるとともに、かかるダイヤモンド粒子の体積比率y、およびAgとWの総量中に占めるWの体積比率x=B/(A+B)×100〔体積%、AはAgの体積%、BはWの体積%〕が、式(7)(8):
y≧−0.74x+49 (7)
y≦−0.83x+102 (8)
を満足する範囲とすることにより、ダイヤモンド複合材料の25℃から400℃までの熱膨張率を、
5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6/K以下の範囲とすることができる。
【0047】
なおダイヤモンド複合材料の熱膨張率を、本発明では、示差熱膨張計を用いて測定した値でもって表すこととする。
(熱伝導率)
本発明の構成により、半導体素子実装用基板の熱伝導率をどの程度としうるかは特に限定されないが、かかる熱伝導率は300W/mK以上、450W/mK以下であるのが好ましい。
【0048】
半導体素子実装用基板の熱伝導率がこの範囲未満では放熱性が不十分で、接続面に接続した半導体素子からの発熱を、半導体素子実装用基板を通して速やかに放熱させることができず、半導体素子がそれ自体の発熱によって動作不良を生じるのを防止できないおそれがある。
一方、熱伝導率が上記の範囲を超える高い放熱性を半導体素子実装用基板に付与することは、たとえ本発明の構成であっても困難である。
【0049】
これに対し、半導体素子実装用基板の熱伝導率を上記の範囲とすることで、当該半導体素子実装用基板により高度な放熱性を付与して、接続面に接続した半導体素子が、それ自体の発熱によって動作不良を生じるのをより一層防止できる。
熱伝導率を調整するためには、ダイヤモンド粒子の体積比率
y、および第一の金属と第二の金属の体積比率を、先に説明した範囲で変更すればよい。
【0050】
なお半導体素子実装用基板の熱伝導率を、本発明では、レーザーフラッシュ法によって測定した値でもって表すこととする。
〈接続面〉
本発明の半導体素子実装用基板は、先に説明したように従来のものに比べて結合材が多く、加工性の良いダイヤモンド複合材料からなるため、当該半導体素子実装用基板の、半導体素子を接続するための素子実装面や、他の放熱部材を熱的に接続するための伝熱面等の、他部材との接続面は、これまでに比べて短時間の研磨加工で、凹凸のない平滑性に優れた面とすることができる。
【0051】
例えば#100〜#400のダイヤモンド砥石を用いた平面研磨では、従来は20時間程度を要しても、もっと粗い面しか形成できなかったものを、1〜5時間程度の処理によって、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm以上、3mm以下である凹部および凸部を有しないか、または、かかる大きさの凹部および凸部の、接続面の単位面積当たりの存在個数が10個/cm
2以下という平滑性に優れた接続面とすることができる。
【0052】
凹部および凸部の存在個数が上記の範囲を超える場合には、接続面に、半導体素子等の他部材を隙間なく密着できないおそれがある。
これに対し、凹部および凸部の存在個数を上記の範囲とすることにより、半導体素子等の他部材を接続面に隙間なく密着させた状態で接続して、熱伝導の効率を向上することが可能となる。
【0053】
なお、凹部および凸部の存在個数の下限値は、いうまでもなく0個/cm
2である。つまり凹部および凸部を全く有しないのが、他部材を隙間なく密着させて熱伝導の効率を向上する上で最も好ましいが、存在個数が10個/cm
2以下であれば、0個/cm
2の場合と同等の効果を奏することができる。
かかる凹部および凸部の存在個数を、本発明では、当該個数を規定する接続面内の任意の10個所で、倍率20倍の顕微鏡を用いて、そのφ11mmの視野中に確認された、先に説明した深さまたは高さと、面方向の最大径とを有する凹部および凸部の個数を計数し、それを1cm
2あたりの個数に換算した結果の平均値でもって表すこととする。
【0054】
また本発明の半導体素子実装用基板によれば、上述した短時間の平面研磨により、接続面の、凹部および凸部以外の領域を、JIS B0601:2001において規定された、粗さ曲線の算術平均粗さR
aが0.1μm以上、0.5μm以下、最大高さ粗さR
zが1μm以上、5μm以下という、平滑性に優れた面とすることもできる。
算術平均粗さR
a、および/または最大高さ粗さR
zがこの範囲を超える場合には、接続面に、半導体素子等の他部材を隙間なく密着できないおそれがある。
【0055】
一方、算術平均粗さR
a、および/または最大高さ粗さR
zを上記の範囲未満とすることは、たとえ本発明の構成であっても困難であり、研磨に長時間を要する上、製造の歩留まりが低下する等して半導体素子実装用基板の生産性が低下するとともに、製造コストが高くつくおそれがある。
これ対し、算術平均粗さR
a、および最大高さ粗さR
zを上述した範囲とすることにより、半導体素子実装用基板の生産性を向上し、製造コストを低減しながら、なおかつ半導体素子等の他部材をより一層隙間なく密着させて、熱伝導の効率をさらに向上できる。
【0056】
〈接合層〉
接続面は、Au−Sn系、In−Sn系、またはAu-Ge系で、かつ鉛フリーの半田またはロウ材からなる接合層によって被覆されているのが好ましい。
かかる半田またはロウ材からなる接合層は、接続面、すなわち素子実装面や伝熱面に半導体素子や他の放熱部材等の他部材を接続する際の加熱によって速やかに溶融し、しかも半導体素子を動作させる際の熱履歴によって接続の強度が大きく低下したり溶融したりしない上、熱伝導性や接続の耐久性を向上する点で優れている。
【0057】
接合層は、接続面のうち凹部および凸部以外の領域での厚みが1μm以上、特に3μm以上であるのが好ましく、10μm以下、特に7μm以下であるのが好ましい。
接合層の厚みがこの範囲未満では、接続面上に接続される半導体素子等の他部材の、接続の強度が不十分になるおそれがある。
一方、接合層の厚みが上記の範囲を超える場合には、接続した半導体素子実装用基板と他部材との間に多量の半田またはロウ材が介在することになるため、両者間の熱伝導性が低下するおそれがある。
【0058】
接合層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学めっき法、電気めっき法等の、従来公知の種々の成膜方法によって形成することができる。また接合層は、例えば半田またはロウ材からなる箔状のプリフォームを接続面に積層した状態で加熱、溶融させて形成してもよい。
〈密着層〉
接続面と接合層との間には、Ni、Au、Ti、およびCrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる密着層を設けるのが好ましい。
【0059】
かかる密着層の機能により、接合層の、接続面への密着性を向上して、接合層上に接続される他部材の、半導体素子実装用基板に対する接続の強度を高めることができる。
密着層は、接続面のうち凹部および凸部以外の領域での厚みが0.01μm以上であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましい。
密着層の厚みがこの範囲未満では、密着層を形成することによる効果が得られないおそれがある。
【0060】
一方、密着層の厚みが上記の範囲を超える場合には、接続面と他部材との間の熱伝導性が低下するおそれがある。
密着層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学めっき法、電気めっき法等の、従来公知の種々の成膜方法によって形成することができる。
〈拡散防止層〉
密着層と接合層との間には、Pt、Mo、およびPdからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる拡散防止層を設けるのが好ましい。
【0061】
上記両層の間に拡散防止層を介在させると、素子実装面に半導体素子を接続したり伝熱面に他の放熱部材を接続したりする際の加熱によって接合層を溶融させた際に、当該拡散防止層の機能によって、密着層から接合層へ金属が拡散するのを防いで、当該接合層を形成する半田またはロウ材の組成が変質するのを防止することができる。
拡散防止層は、接続面のうち凹部および凸部以外の領域での厚みが0.01μm以上であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましい。
【0062】
拡散防止層の厚みがこの範囲未満では、拡散防止層を形成することによる効果が得られないおそれがある。
一方、拡散防止層の厚みが上記の範囲を超える場合には、接続面と他部材との間の熱伝導性が低下するおそれがある。
拡散防止層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学めっき法、電気めっき法等の、従来公知の種々の成膜方法によって形成することができる。
【0063】
《半導体装置》
本発明は、以上で説明した本発明の半導体素子実装用基板を、必要に応じて、レーザー加工等によって所定の平面形状に切り出した後、接続面としての素子実装面に半導体素子が接続された半導体装置である。
かかる本発明の半導体装置においては、半導体素子を、先に説明したように素子実装面に、例えば接合層を介して隙間なく密着させた状態で接続できる。そのため半導体素子からの発熱を、半導体素子実装用基板を通して速やかに放熱することができ、半導体素子が、それ自体の発熱によって動作不良を生じるのを防止して、これまでよりも長期間に亘って駆動させ続けることが可能となる。
【0064】
また半導体素子実装用基板が、例えば素子実装面とともに伝熱面を有する場合には、かかる伝熱面に、例えば金属基板等の他の放熱部材を、やはり接合層を介して隙間なく密着させた状態で接続できるため、半導体素子からの発熱を、半導体素子実装用基板と他の放熱部材とを通してより一層、速やかに放熱することができる。そのため半導体素子を、さらに長期間に亘って駆動させ続けることが可能となる。
【実施例】
【0065】
〈実施例1−1〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、平均粒径3μmのCu粉(純度99%以上、第一の金属)、および平均粒径3μmのMo粉(純度99%以上、第二の金属)を、この3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率が40.0体積%、Cu粉の体積比率が52.8体積%、Mo粉の体積比率が7.2体積%となるように配合した混合物を、プレス圧:196MPaの条件で予備成形後、真空中でモリブデンからなるカプセル中に封入した。
【0066】
3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率yは40体積%、CuとMoの総量中に占めるMoの体積比率xは12体積%であった。
次いでこのカプセルを加圧圧力:5GPa、加熱温度:1100℃の条件で5分間、加圧しながら加熱し、引き続いて圧力を保持した状態で温度を常温に下げて30分間保持した後、常圧に戻してカプセルを回収した。
【0067】
回収したカプセルの表面を研削することでモリブデンを除去して焼結体を取り出し、取り出した焼結体を放電加工して板状に切り出した後、板の一面を#140のダイヤモンド砥石を用いて2時間、平面研磨して素子搭載面として、厚み0.3mmの半導体素子実装用基板を作製した。
〈実施例1−2〜1−21〉
ダイヤモンド粒子、Cu粉、およびMo粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびCuとMoの総量中に占めるMoの体積比率x(体積%)を表1〜表3に示す値としたこと以外は実施例1−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0068】
〈比較例1−1〜1−3〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、および平均粒径3μmのCu粉(純度99%以上)を表4に示す値で配合し、Mo粉を配合しなかったこと以外は実施例1−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
〈比較例1−4〜1−22〉
ダイヤモンド粒子、Cu粉、およびMo粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびCuとMoの総量中に占めるMoの体積比率x(体積%)を表4〜表7に示す値としたこと以外は実施例1−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0069】
実施例、比較例で作製した半導体素子実装用基板の熱膨張率、熱伝導率、素子搭載面における、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm〜3mmである凹部および凸部の、単位面積あたりの個数、ならびに凹部および凸部外の領域での表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さR
a、最大高さ粗さR
zを表1〜表7にまとめた。
また実施例、比較例におけるダイヤモンドの体積比率と、CuとMoの体積比率との関係を
図1に示した。図中の○は実施例、●は比較例を示している。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
比較例1−3の結果より、従来の、結合材としてCuのみを用いた系では、ダイヤモンド粒子の体積比率が大きいと加工性が悪く、2時間程度の短時間の研磨では平滑性に優れた接続面を形成できないことが判った。
また比較例1−1、1−2の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を小さくすると加工性が向上して、短時間の研磨によって平滑性に優れた接触面を形成できるものの、25℃から400℃までの熱膨張率が5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6K以下の範囲を外れて大きくなってしまうため、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりしやすくなることが判った。
【0078】
これに対し実施例1−1〜1−21、比較例1−4〜1−22の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を40体積%以上、55体積%以下とし、なおかつ結合材として、第一の金属であるCuと第二の金属であるMoとを、熱膨張率が上記の範囲となるように、つまり
図1中に実線で囲んだ範囲に入るように併用することで、良好な加工性を維持しながら、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できることが判った。
【0079】
〈実施例2−1〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、平均粒径3μmのCu粉(純度99%以上、第一の金属)、および平均粒径3μmのW粉(純度99%以上、第二の金属)を、この3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率が40.0体積%、Cu粉の体積比率が52.8体積%、W粉の体積比率が7.2体積%となるように配合した混合物を、プレス圧:196MPaの条件で予備成形後、真空中でモリブデンからなるカプセル中に封入した。
【0080】
3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率yは40体積%、CuとWの総量中に占めるWの体積比率xは12体積%であった。
次いでこのカプセルを加圧圧力:5GPa、加熱温度:1100℃の条件で5分間、加圧しながら加熱し、引き続いて圧力を保持した状態で温度を常温に下げて30分間保持した後、常圧に戻してカプセルを回収した。
【0081】
回収したカプセルの表面を研削することでモリブデンを除去して焼結体を取り出し、取り出した焼結体を放電加工して板状に切り出した後、板の一面を#140のダイヤモンド砥石を用いて2時間、平面研磨して素子搭載面として、厚み0.3mmの半導体素子実装用基板を作製した。
〈実施例2−2〜2−21〉
ダイヤモンド粒子、Cu粉、およびW粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびCuとWの総量中に占めるWの体積比率x(体積%)を表8〜表10に示す値としたこと以外は実施例2−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0082】
〈比較例2−1〜2−19〉
ダイヤモンド粒子、Cu粉、およびW粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびCuとWの総量中に占めるWの体積比率x(体積%)を表11〜表13に示す値としたこと以外は実施例2−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0083】
実施例、比較例で作製した半導体素子実装用基板の熱膨張率、熱伝導率、素子搭載面における、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm〜3mmである凹部および凸部の、単位面積あたりの個数、ならびに凹部および凸部外の領域での表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さR
a、最大高さ粗さR
zを表8〜表13にまとめた。
また実施例、比較例におけるダイヤモンドの体積比率と、CuとWの体積比率との関係を
図2に示した。図中の○は実施例、●は比較例を示している。
【0084】
【表8】
【0085】
【表9】
【0086】
【表10】
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
【表13】
【0090】
実施例2−1〜2−21、比較例2−1〜2−19の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を40体積%以上、55体積%以下とし、なおかつ結合材として、第一の金属であるCuと第二の金属であるWとを、熱膨張率が5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6K以下の範囲となるように、つまり
図2中に実線で囲んだ範囲に入るように併用することで、良好な加工性を維持しながら、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できることが判った。
【0091】
〈実施例3−1〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、平均粒径3μmのAg粉(純度99%以上、第一の金属)、および平均粒径3μmのMo粉(純度99%以上、第二の金属)を、この3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率が40.0体積%、Ag粉の体積比率が47.5体積%、Mo粉の体積比率が12.5体積%となるように配合した混合物を、プレス圧:196MPaの条件で予備成形後、真空中でモリブデンからなるカプセル中に封入した。
【0092】
3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率yは40体積%、AgとMoの総量中に占めるMoの体積比率xは21体積%であった。
次いでこのカプセルを加圧圧力:5GPa、加熱温度:1100℃の条件で5分間、加圧しながら加熱し、引き続いて圧力を保持した状態で温度を常温に下げて30分間保持した後、常圧に戻してカプセルを回収した。
【0093】
回収したカプセルの表面を研削することでモリブデンを除去して焼結体を取り出し、取り出した焼結体を放電加工して板状に切り出した後、板の一面を#140のダイヤモンド砥石を用いて2時間、平面研磨して素子搭載面として、厚み0.3mmの半導体素子実装用基板を作製した。
〈実施例3−2〜
3−21〉
ダイヤモンド粒子、Ag粉、およびMo粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびAgとMoの総量中に占めるMoの体積比率x(体積%)を表14〜表17に示す値としたこと以外は実施例3−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0094】
〈比較例3−1〜3−3〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、および平均粒径3μmのAg粉(純度99%以上)を表18に示す値で配合し、Mo粉を配合しなかったこと以外は実施例3−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
〈比較例3−4〜3−22〉
ダイヤモンド粒子、Ag粉、およびMo粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびAgとMoの総量中に占めるMoの体積比率x(体積%)を表18〜表21に示す値としたこと以外は実施例3−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0095】
実施例、比較例で作製した半導体素子実装用基板の熱膨張率、熱伝導率、素子搭載面における、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm〜3mmである凹部および凸部の、単位面積あたりの個数、ならびに凹部および凸部外の領域での表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さR
a、最大高さ粗さR
zを表14〜表21にまとめた。
また実施例、比較例におけるダイヤモンドの体積比率と、AgとMoの体積比率との関係を
図3に示した。図中の○は実施例、●は比較例を示している。
【0096】
【表14】
【0097】
【表15】
【0098】
【表16】
【0099】
【表17】
【0100】
【表18】
【0101】
【表19】
【0102】
【表20】
【0103】
【表21】
【0104】
比較例3−3の結果より、従来の、結合材としてAgのみを用いた系では、ダイヤモンド粒子の体積比率が大きいと加工性が悪く、2時間程度の短時間の研磨では平滑性に優れた接続面を形成できないことが判った。
また比較例3−1、3−2の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を小さくすると加工性が向上して、短時間の研磨によって平滑性に優れた接触面を形成できるものの、25℃から400℃までの熱膨張率が5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6K以下の範囲を外れて大きくなってしまうため、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できないことが判った。
【0105】
これに対し実施例3−1〜
3−21、比較例3−4〜3−22の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を40体積%以上、55体積%以下とし、なおかつ結合材として、第一の金属であるAgと第二の金属であるMoとを、熱膨張率が上記の範囲となるように、つまり
図3中に実線で囲んだ範囲に入るように併用することで、良好な加工性を維持しながら、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できることが判った。
【0106】
〈実施例4−1〉
平均粒径40μmのダイヤモンド粒子、平均粒径3μmのAg粉(純度99%以上、第一の金属)、および平均粒径3μmのW粉(純度99%以上、第二の金属)を、この3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率が40.0体積%、Ag粉の体積比率が47.5体積%、W粉の体積比率が12.5体積%となるように配合した混合物を、プレス圧:196MPaの条件で予備成形後、真空中でモリブデンからなるカプセル中に封入した。
【0107】
3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率yは40体積%、AgとWの総量中に占めるWの体積比率xは21体積%であった。
次いでこのカプセルを加圧圧力:5GPa、加熱温度:1100℃の条件で5分間、加圧しながら加熱し、引き続いて圧力を保持した状態で温度を常温に下げて30分間保持した後、常圧に戻してカプセルを回収した。
【0108】
回収したカプセルの表面を研削することでモリブデンを除去して焼結体を取り出し、取り出した焼結体を放電加工して板状に切り出した後、板の一面を#140のダイヤモンド砥石を用いて2時間、平面研磨して素子搭載面として、厚み0.3mmの半導体素子実装用基板を作製した。
〈実施例4−2〜4−23〉
ダイヤモンド粒子、Ag粉、およびW粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびAgとWの総量中に占めるWの体積比率x(体積%)を表22〜表25に示す値としたこと以外は実施例4−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0109】
〈比較例4−1〜4−19〉
ダイヤモンド粒子、Ag粉、およびW粉の体積比率を調整して、3成分の総量中に占めるダイヤモンド粒子の体積比率y(体積%)、およびAgとWの総量中に占めるWの体積比率x(体積%)を表26〜表28に示す値としたこと以外は実施例4−1と同様にして、同形状、同寸法の半導体素子実装用基板を作製した。
【0110】
実施例、比較例で作製した半導体素子実装用基板の熱膨張率、熱伝導率、素子搭載面における、深さまたは高さが10〜40μm、面方向の最大径が10μm〜3mmである凹部および凸部の、単位面積あたりの個数、ならびに凹部および凸部外の領域での表面粗さを示す粗さ曲線の算術平均粗さR
a、最大高さ粗さR
zを表22〜表28にまとめた。
また実施例、比較例におけるダイヤモンドの体積比率と、AgとWの体積比率との関係を
図4に示した。図中の○は実施例、●は比較例を示している。
【0111】
【表22】
【0112】
【表23】
【0113】
【表24】
【0114】
【表25】
【0115】
【表26】
【0116】
【表27】
【0117】
【表28】
【0118】
実施例4−1〜4−23、比較例4−1〜4−19の結果より、ダイヤモンド粒子の体積比率を40体積%以上、55体積%以下とし、なおかつ結合材として、第一の金属であるAgと第二の金属であるWとを、熱膨張率が5.0×10
−6/K以上、8.5×10
−6K以下の範囲となるように、つまり
図4中に実線で囲んだ範囲に入るように併用することで、良好な加工性を維持しながら、熱履歴が加えられた際の膨張、収縮によって半導体素子等の他部材が破損したり、接続面との接続が外れたりするのを防止できることが判った。