(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
図1〜
図5は、本発明の第1の実施の形態およびその変形例を説明するための図である。この
図1〜
図5を参照して、第1の実施の形態について説明する。
図1は、照明装置の設置状態を模式的に示す側面図であり、
図2〜
図4は、
図1の照明装置に適用され得るホログラフィック高分子分散型液晶素子を説明するための図である。
図1に示された照明装置10は、光源装置15と、光源装置15から射出した光の光路を調整して配光を制御する配光制御具20と、を有している。配光制御具20は、光源装置15から射出した光の光路を変化させ得る複数の光学素子を有している。
図1に示された例において、配光制御具20は、第1〜第3の光学素子21,22,23を有している。とりわけ配光制御具20は、複数の光学素子21,22,23の一以上として、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40、すなわちHPDLC40を含んでいる。
【0020】
まず、光源装置15として、種々の光源を用いることができる。ただし、複数の光学素子の一以上をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40との組み合わせにおいて、生成する光の偏光状態を容易に制御し得るレーザー光源を好適に用いることができる。また、光源装置15から射出される光の波長域は、照明光に要望される色味に応じて適宜調整することができる。とりわけ、光源装置15が、複数の帯域の光を射出し、複数帯域の光の加法混色により、所望の色を表現するようにしてもよい。
【0021】
次に、配光制御具20について説明する。複数の光学素子21,22,23の一以上をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、特定の直線偏光成分の光、例えばP波の光を回折する
図2に示された回折状態と、前記特定の直線偏光成分の光、例えばP波の光を透過する
図3に示された透過状態と、の間で状態変化する素子である。
図2及び
図3に示すように、回折状態と透過状態との切り替えは、電圧印加の有無によって制御することができる。なお、このホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、特定の直線偏光成分の振動方向と直交する方向に振動する他方の直線偏光成分の光、例えばS波の光については、電圧印加の有無によらず、常に回折させることなく透過させることができる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、回折現象を生じさせ得る素子層41と、素子層41の両外方に設けられた一対の電極層45と、電極層45の両外方に設けられた一対の基材46と、を有している。電極層45及び基材46は、光透過性を有しており、とりわけ図示された照明装置10では、可視光透過性を有している。基材46は、例えば、ガラスや樹脂性基材を用いて形成され、電極層45は、ITO等の透明導電体を用いて形成され得る。素子層41は、高分子層42及び液晶層43を含んでいる。
【0023】
高分子層42及び液晶層43が繰り返し配置されることにより、素子層41は、周期構造を有している。そして、高分子層42及び液晶層43が屈折率差を有する場合、素子層41は、ホログラムとして機能し、特定の入射角度から入射する特定波長帯域の光を高効率で回折することができる。図示された例では、液晶層43は、長手方向を有する液晶分子44を含んでいる。この液晶分子44は、複屈折性を有しており、その長手方向に沿った屈折率が、長手方向に直交する任意の方向への屈折率よりも高くなっている。加えて、液晶分子44の長手方向に直交する任意の方向への屈折率は、高分子層42との間で有効な屈折率差を生じさせない。
【0024】
図2に示すように、電圧が印加されていない状態において、液晶層43内の液晶分子44は、当該液晶層43に隣接する二つの高分子層42を結ぶ方向に配向される。この
図2に示された状態において、
図2の紙面に平行な方向に振動するP波は、透過型ホログラムとして機能する素子層41で、を回折する。一方、
図3に示すように、一対の電極層45の間に電圧が印加されると、液晶分子44は一対の電極45を結ぶ方向に配向される。この
図3に示された状態において、高分子層42及び液晶層43は、素子層41への入射光に対して有効な屈折率差を生じさせない。したがって、P波は、電圧を印加された素子層41で回折されることなく、当該素子層41を直進して透過する。
【0025】
なお、
図2及び
図3の奥行き方向に振動するS波に対し、高分子層42及び液晶層43は、電圧を印加されていない
図2の状態および電圧を印加された
図3の状態のいずれにおいても、屈折率差を生じさせない。したがって、S波は、一対の電極層45間への電圧印加の有無によらず、素子層41で回折されることなく、当該素子層41を直進して透過する。
【0026】
このようなホログラフィック高分子分散型液晶素子40の素子層41は、通常のフォトポリマーを用いた体積型ホログラムと同様の手法を用いて作製される。具体的には、まず、屈折率異方性の液晶分子44を含有した光硬化性樹脂組成物の膜を形成する。次に
図3に示すように、この膜に、干渉性を有した物体光Lo及び参照光Lrを露光する。物体光Lo及び参照光Lrの重ね合わせにより、明暗の干渉縞が樹脂組成物の膜内に生成される。この結果、明部分41aにおいてモノマー42aが反応してポリマー鎖42bが生成され、このポリマー鎖42bが高分子層42を形成する。一方、液晶分子44は、干渉縞の暗部分41bに集まり、液晶層43を形成する。また、光硬化性樹脂中のモノマーの重合収縮に伴い、液晶分子44の長手方向における両端が、高分子層42をなすポリマー鎖42bに引かれ、結果として、液晶層43内において液晶分子44が配向する。このようにして、素子層41が形成される。
【0027】
なお、図示された例において、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、回折状態において、散乱板の像を再生し得るように作製されてもよい。散乱板の像を再生し得るホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、実物の散乱板からの散乱光を物体光として用いることにより、作製され得る。この例においては、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40を作製する際に用いた平行光束からなる参照光とは逆向きに進む再生照明光を、光源装置15を用いて、当該液晶素子40に照射すると、当該液晶素子40を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板の配置位置に、散乱板の再生像が生成される。当該液晶素子40を作製する際に用いた物体光の元となる散乱板が均一的な面散乱をしていれば、当該液晶素子40により得られる散乱板の再生像も、均一な面照明となる。
【0028】
一つのホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光は、配光制御具20に含まれる他の光学素子から出射した光と少なくとも部分的に異なる領域を照明するようになっている。
図1に示された照明装置10において、配光制御具20は、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を有している。すなわち、第1〜第3光学素子21,22,23のそれぞれが、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40からなっている。複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光は、少なくとも部分的に互いに異なる領域を照明する。
【0029】
図1に示された例において、第1光学素子21をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光Ld1は第1被照明領域Z1を照明する。第2光学素子22をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光Ld2は第2被照明領域Z2を照明する。第3光学素子23をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光Ld3は第3被照明領域Z3を照明している。第1被照明領域Z1及び第2被照明領域Z2は一部分のみにおいて重なっており、第2被照明領域Z2及び第3被照明領域Z3は一部分のみにおいて重なっている。一方、第1被照明領域Z1及び第3被照明領域Z3は、互いから離間しており、一部分においても重なっていない。
【0030】
ここで、
図1に示された例では、照明装置10によって実際に照明光を照射される領域が、ニアフィールドの被照明領域として想定されている。一方、照明装置によって照明される領域が、ファーフィールドの被照明領域となることも想定され得る。ファーフィールドの被照明領域は、通常、所望の面積を有する領域としてではなく、実際に照明される領域よりも光学素子側に位置する角度空間における拡散角度分布として表現されることが多い。したがって、「被照明領域」という用語は、実際の照明光を照射される被照射面積に加え角度空間における拡散角度範囲も包含するものとする。したがって、ニアフィールドの被照明領域も、当該被照明領域を所望の面積で照明するための、拡散角度分布で定めることも可能である。例えば、
図1に示された例において、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40によって再生される散乱板の再生像が生成される領域は、実際に照明光が照射される第1〜第3の被照明領域Z1と比較して、よりニアフィールドな領域としてもよい。
【0031】
図1に示すように、各ホログラフィック高分子分散型液晶素子40には、印加手段51が別個に設けられている。この結果、各光学素子21,22,23をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40について、他のホログラフィック高分子分散型液晶素子40から独立して、回折状態及び透過状態を切り替えることができるようになっている。
【0032】
とりわけ
図1に示された照明装置10において、光源装置15から射出した光が、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を順に透過することができるよう、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40は直線上に並べて配置されている。すなわち、任意の一のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光が、次のホログラフィック高分子分散型液晶素子40に入射するよう、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40は順に並べられている。
【0033】
また、
図1に示された照明装置10は、対象検出手段50をさらに有している。そして、各ホログラフィック高分子分散型液晶素子40に対応して設けられた印加手段51は、対象検出手段50の検出結果に基づいて、制御される。対象検出手段50は、例えば、照明装置10の設置目的に対応した対象99を検出する機能を有している。一例として、室内、廊下、通路等に設置される照明装置10の用途では、これらの場所に存在する人を検出対象99として検出するようにしてもよい。この場合、対象検出手段50は、種々の公知の人感センサ、例えば温度分布により人を検出するセンサや、動作により人を検出するセンサを用いることができる。
【0034】
次に、以上の構成からなる照明装置10の配光の具体的な制御方法について説明する。
【0035】
図1に示された照明装置10は、例えば、大型の居室や廊下に設置される。そして、照明装置10の配光を制御することにより、照明することが必要な領域のみを適宜照明することができるようになっている。とりわけ図示された例では、対象検出手段50が設けられており、対象検出手段50が人99の位置を検出する。そして、対象検出手段50によって検出された人99の周辺領域のみを、照明装置10が照明することができる。
【0036】
図1に示された例において、対象検出手段50は、第2被照明領域Z2上に対象99が存在すること、すなわち第2被照明領域Z2上に人99が存在することを検出する。この対象検出手段50の検出結果に基づき、照明装置10は、第2被照明領域Z2のみを照明するよう、照明光の配光を設定する。具体的には、第2被照明領域Z2に向けて光を回折する第2光学素子22をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40のみを回折状態とする。その一方で、第1及び第3被照明領域Z1、Z3に向けて光を回折する第1及び第3光学素子21、23をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過状態とする。より具体的には、第2光学素子22をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40に電圧を印加せず、第1及び第3光学素子21、23をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40のみに電圧を印加する。
【0037】
この状態で、光源装置15が光を投射すると、当該光は、第1光学素子21を透過して第2光学素子22に入射し、第2光学素子22をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折される。ここで、第2光学素子22をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折効率が100%でなかった場合、P波の一部が、第2光学素子22を透過して第3光学素子23に入射する。このとき、第3光学素子23をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40は透過状態に設定されている。したがって、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光によって、意図せず、第3被照明領域Z3が明るく照明されることはない。
【0038】
なお、光源装置15からの光の利用効率の観点からは、光源装置15が、配光制御具20で回折されるようになるP波に対応した特定の直線偏光成分の光のみを生成することが好ましい。その一方で、回折効率が100%でないことやS波が透過することに備え、
図1に二点鎖線で示すように、複数の光学素子と並べて、光吸収手段53が設けられていても良い。
【0039】
以上のような第1の実施の形態において、照明装置10は、光源装置15と、光源装置15から射出した光の光路を調整する複数の光学素子21,22,23を含んだ配光制御器20と、を有している。配光制御器20は、特定の直線偏光成分の光を回折する状態と当該光を透過する状態とを切り替え可能なホログラフィック高分子分散型液晶素子40を、複数の光学素子の一以上として、含んでいる。そして、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光は、他の光学素子から出射した光と少なくとも部分的に異なる領域を照明するようになっている。このような照明装置10によれば、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40の状態切り替えによって、照明装置10の配光を制御することが可能となる。この配光制御は、高速動作する機械や機構を含んでいないことから、光安全性へ十分に配慮しながら優れた信頼性で安定して実現され得る。
【0040】
また、第1の実施の形態においては、光源装置15から射出した光が、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を順に透過することができるよう、複数のホログラフィック高分子分散型液晶素子40は並べられている。このような配光制御具20によれば、光源装置15から投射された光を有効に利用して、照明装置10の配光を制御することができる。
【0041】
なお、第1の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形の一例について説明する。
【0042】
上述した第1の実施の形態では、配光制御具20が三つの光学素子を有する例を示したが、この例に限られず、配光制御具20は、二つの光学素子、或いは、四つ以上の光学素子を含むようにしてもよい。
【0043】
上述した第1の実施の形態では、配光制御具20に含まれる複数の光学素子が、すべて、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40により形成されている例を示した。しかしながら、この例に限られず、配光制御具20に含まれる一以上の光学素子が、ホログラフィック高分子分散型液晶素子以外の光路を調整し得る素子であってもよい。一例として、配光制御具20に含まれる一以上の光学素子が、体積型ホログラムやレリーフ型ホログラム等のホログラム記録媒体、レンズアレイ等であってもよい。例えば、第2被照明領域Z2を照明する第2光学素子22が、体積型ホログラムやレリーフ型ホログラム等のホログラム記録媒体、レンズアレイ等からなる場合には、印加手段51からの電圧印加の有無によらず、第1被照明領域Z1及び第3被照明領域Z3の間に位置する第2被照明領域Z2を、常にいくらかの照度で照明することが可能となる。
【0044】
また、上述した第1の実施の形態において、対象検出手段50が、検出すべき対象99が存在している領域を検出し、当該対象99が存在している領域を照明する例を示した。しかしながら、
図5に示すように、対象検出手段50が、対象99の位置とともに対象99の移動方向を検出し、対象99が存在している領域と対象99の移動方向前方の領域とを照明するようにしてもよい。
図5に示す例において、検出対象である人99が第2被照明領域Z2に位置し且つ当該人99は第3被照明領域Z3に向かって移動している。この例において、第2光学素子22での回折光が第2被照明領域Z2を照明し、且つ、第3光学素子23での回折光が第3被照明領域Z3を照明している。
【0045】
なお、
図5に示された例において、照明装置10は、隣り合う二つのホログラフィック高分子分散型液晶素子40の間に配置され得る偏光変換素子52を、さらに有している。この偏光変換素子52は、
図5において実線で示された変換位置と、
図5において二点鎖線で示された無変換位置と、の間を移動可能となっている。偏光変換素子52は、変換位置において、光源装置15に近接する側となる一方のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光を受光する。変換位置に配置された偏光変換素子52は、光源装置15に近接する側となる一方のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光の偏光状態を、光源装置15から離間する側となる他方のホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折され得る偏光状態へ、変換することができる。これに対して、一方のホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光は、無変換位置に配置された偏光変換素子52には入射せず、偏光状態を維持したまま他方のホログラフィック高分子分散型液晶素子40に入射する。
【0046】
図5に示された例において、光源装置15は、無偏光の光を射出する。偏光変換素子52は、直線偏光成分の光に対して1/2波長板として機能する。
図5に示された状態において、光源装置15から射出したP波は、電圧を印加された第1光学素子21を透過し、電圧を印加されていない第2光学素子22で回折され、第2被照明領域Z2を照明している。一方、光源装置15から射出したS波は、第1及び第2光学素子21、22を透過した後に偏光変換素子52でP波に変換され、その後に、電圧を印加されていない第3光学素子23で回折され、第3被照明領域Z3を照明している。すなわち、偏光変換素子52を設けることにより、光源装置15で生成された光の利用効率を改善することができる。
【0047】
次に、
図6〜
図8を参照して、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に関する以下の説明および第2の実施の形態の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0048】
図6及び
図7は、照明装置11を模式的に示す側面図である。照明装置11からの照明光の配光は、
図6に示された状態と
図7に示された状態との間で相違している。一方、
図8は、照明装置11を上方から示す図であって、当該照明装置11から照明光を照射される被照明領域とともに照明装置11を示している。
【0049】
照明装置11は、光源装置16と、光源装置16から射出した光の光路を調整して配光を制御する配光制御具30と、を有している。配光制御具30は、光源装置16から射出した光の光路を変化させ得る複数の光学素子を有している。図に示された例において、配光制御具30は、第1〜第5の光学素子31〜35を有している。このうち、光源装置16は、第1の実施の形態で説明した光源装置15と同様に構成することができる。ただし、第2の実施の形態の光源装置16は、後述する配光制御具30の構成に対応して、ある程度の面積を持った光射出面16aを有している。すなわち、光源装置16は、面光源装置として構成され、面状の領域から光束を射出する。
【0050】
配光制御具30は、第1〜第4の光学素子31〜34として、四つのホログラフィック高分子分散型液晶素子40を有し、且つ、第5光学素子として、光拡散素子48を含んでいる。
図6〜
図8に示すように、配光制御具30に含まれた複数の光学素子31〜35は、それぞれ、光源装置16に対面する位置に配置されている。そして、各光学素子31〜35には、光源装置16から射出した光の一部が、入射するようになっている。とりわけ、図示された例において、第1〜第5の光学素子31〜35は、光源装置16に対面して位置する一仮想平面上に配置されている。第1〜第5の光学素子31〜35は、それぞれ、光源装置16の出射面16aと略同一面積を有する領域を隙間なく平面分割してなる一部分を占めている。この結果、光源装置16から射出した光は、第1〜第5の光学素子31〜35のいずれかに入射するようになる。
【0051】
図8に示された例において、第1〜第5の光学素子31〜35は、光源装置16の平面視形状と略同様の矩形領域に敷き詰められている。第1〜第4の光学素子31〜34は、矩形領域の各辺の一部分に沿って設けられており、第5光学素子35は、矩形領域内のその他の領域を占めている。
【0052】
第1〜第4光学素子31〜34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、第1の実施の形態で説明した構成および機能を有する。第1〜第4光学素子31〜34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、一例として、第1の実施の形態で説明した製造方法により作製され得る。図示を省略するが、各ホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、第1の実施の形態で説明した印加手段51に接続されている。この印加手段51は、第1の実施の形態と同様に、対象検出手段50での検出結果に基づいて、制御される。
【0053】
図8に示すように、第1光学素子31をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光Ld1は、第1被照明領域Z1に照射され当該領域Z1を照明する。第2光学素子32をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光は、第2被照明領域Z2に照射され当該領域Z2を照明する。第3光学素子33をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光は、第3被照明領域Z3に照射され当該領域Z3を照明する。第4光学素子34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光は、第4被照明領域Z4に照射され当該領域Z4を照明する。
【0054】
一方、第5光学素子35をなす光拡散素子48は、例えば、体積型ホログラムやレリーフ型ホログラム等のホログラム記録媒体、レンズアレイ等から構成される。第5光学素子35をなす光拡散素子48での拡散光Ld5は、第5被照明領域Z5に照射されて当該領域Z5を照明する。
図6〜
図8に示された例において、第5被照明領域Z5は、配光制御具30の下方に位置している。第5被照明領域Z5は、矩形形状の領域となっている。第5被照明領域Z5は、光源装置16が第5光学素子35へ光照射している場合、常に照明される領域、すなわち電圧印加の有無等の条件に依存せずに照明される領域となる。
【0055】
第5被照明領域Z5を均一な照度で照明するには、第5光学素子35の各位置または各小領域に照射された光が、第5被照明領域Z5の全域に拡散されることが好ましい。このような第5光学素子35の拡散機能は、一例として散乱板の像を再生し得るホログラム記録媒体、より具体的には散乱板からの散乱光を物体光として記録した体積型ホログラムや均一な拡散光Ld5を生成し得るように計算された計算機合成ホログラムにより、確保され得る。
【0056】
図8に示すように、第1〜第4被照明領域Z1〜Z4のそれぞれは、矩形領域である第5被照明領域Z5の各辺に沿って延びる細長い領域となっている。第5被照明領域Z5は、その周縁部において、第1〜第4被照明領域Z1〜Z4と部分的に重なっている。第1被照明領域Z1は、その長手方向における両端部において、第2被照明領域Z2及び第4被照明領域Z4と部分的に重なっている。第2被照明領域Z2は、その長手方向における両端部において、第1被照明領域Z1及び第3被照明領域Z3と部分的に重なっている。第3被照明領域Z3は、その長手方向における両端部において、第2被照明領域Z2及び第4被照明領域Z4と部分的に重なっている。第4被照明領域Z4は、その長手方向における両端部において、第3被照明領域Z3及び第1被照明領域Z1と部分的に重なっている。
【0057】
次に、以上の構成からなる照明装置11の配光の具体的な制御方法について説明する。
図6〜
図8に示された照明装置11は、例えば、大型の居室等の空間に設置される。この照明装置11は、設置された空間の中央領域上方、例えば居室中央領域の天井に設置される。
【0058】
光源装置16から射出した光は、光源装置16の射出面16aに対面する配光制御具30に向かう。すなわち、第1〜第5光学素子35のそれぞれに、光源装置16から射出した光の一部が入射する。第5光学素子35をなす光拡散素子48に入射した光は、拡散されて、配光制御具30の下方に位置する第5被照明領域Z5に進む。すなわち、第5光学素子35での拡散光Ld5が、第5被照明領域Z5に照射され当該領域Z5を照明する。
【0059】
図6に示された状態において、対象検出手段50は、人99が第5被照明領域Z5内に存在していることを検出する。このとき、第1〜第4光学素子31〜34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、電圧を印加されて、透過状態に維持される。したがって、第1〜第4光学素子31〜34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40に入射した光は、液晶素子40で回折することなく、液晶素子40を直進透過する。
図6に示すように、各ホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光は、第5被照明領域Z5内の一部分にそれぞれ照射される。この結果、照明装置11の下方となる領域、一般的には照明装置11が設置された領域の中央が、明るく照明されることになる。
【0060】
一方、
図7及び
図8に示された状態において、対象検出手段50による検出対象99は、第5被照明領域Z5内から第1被照明領域Z1内に移動している。このとき、第5被照明領域Z5だけでなく第1被照明領域Z1をも照明することが好ましい。そこで、対象検出手段50での検出結果に基づき、第1光学素子31をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40への印加手段51からの電圧印加が停止する。このとき、第2〜第4光学素子32〜34をなすホログラフィック高分子分散型液晶素子40には印加手段51から電圧が印加されたままとなっている。この結果、
図7及び
図8に示すように、第1光学素子31に入射したP波が、第1光学素子31で回折して、第1被照明領域Z1を照明するようになる。なお、光源装置16が、S波も放出する場合、S波は、第1光学素子31で回折されることなく、第1被照明領域Z1内の一部分を照明する。
【0061】
なお、
図7及び
図8に示された例では、対象検出手段50による検出対象である人999が、第1被照明領域Z1内に既に位置している。しかしながら、第1被照明領域Z1の照明を開始するタイミングは、第5被照明領域Z5内に居る人99が第1被照明領域Z1に向けて移動を開始した際としてもよい。
【0062】
以上のような第2の実施の形態においても、照明装置11は、光源装置16と、光源装置16から射出した光の光路を調整する複数の光学素子31,32,33,34を含んだ配光制御器30と、を有している。配光制御器30は、特定の直線偏光成分の光を回折する状態と当該光を透過する状態とを切り替え可能なホログラフィック高分子分散型液晶素子40を、複数の光学素子の一以上として、含んでいる。そして、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40で回折された光は、他の光学素子から出射した光と少なくとも部分的に異なる領域を照明するようになっている。このような照明装置11によれば、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40の状態切り替えによって、照明装置11の配光を制御することが可能となる。このような配光制御は、高速動作する機械や機構を含んでいないことから、光安全性へ十分に配慮しながら優れた信頼性で安定して実現され得る。
【0063】
また、第2の実施の形態において、複数の光学素子31,32,33,34は、それぞれ、光源装置16から射出した互いに異なる一部の光の光路上に位置するよう、配置されている。したがって、より直接的且つより高い自由度で配光制御を行うことができるため、配光制御をより安定して実現することが可能となる。
【0064】
さらに、第2の実施の形態において、複数の光学素子31,32,33,34は、光源装置16からの光が照射される一平面上に配列されている。したがって、配光制御具30に含まれる光学素子31,32,33,34の配置スペースを小型化することができる。
【0065】
さらに、第2の実施の形態において、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40を透過した光は、他のいずれかの光学素子から出射した光が照明する領域内の領域を照明する。したがって、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40で光路を積極的に調整されることなく当該液晶素子40を透過した光が、配光制御に悪影響を与えることを防止することができる。
【0066】
なお、第2の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0067】
上述した第2の実施の形態では、配光制御具30が四つの光学素子を有する例を示したが、この例に限られず、配光制御具30が、二つ、三つ、または五つ以上の光学素子を含むようにしてもよい。
【0068】
また、上述した第2の実施の形態において、配光制御が、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40への印加手段51からの電圧印加の有無によって実現されていた。しかしながら、この例に限られず、光源装置16が、互いに異なる光学素子31〜35へ光を投射するようになる複数の光源、例えば複数のレーザー光源を有するようにし、且つ、各光源の発光タイミングを独立して調整し得るようにしてもよい。この例においては、印加手段51での電圧印加の有無に加え、各光源の発光タイミングを調整することにより、複雑な配光制御を安定して実現することができる。
【0069】
さらに、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態の両方に共通する変形例として、次のことを例示することができる。
【0070】
上述した第1及び第2の実施の形態において、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40は、電圧印加の有無によって、回折状態と透過状態とを切り替えられるようになっていた。この例に限られず、印加される電圧の大小をさらに調節することにより、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40の回折効率を制御するようにしてもよい。このような例によれば、照明装置10の配光をより高い自由度で制御することができる。
【0071】
さらに、上述した第1及び第2の実施の形態において、ホログラフィック高分子分散型液晶素子40での回折光が散乱板の像を再生する例を示したが、この例に限られない。ホログラフィック高分子分散型液晶素子40が、意匠性を有する像や情報を表示する像等を地面、床、壁等に再生するようにしてもよい。
【0072】
なお、以上において上述した第1及び第2の実施の形態とその変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて第1又は第2の実施の形態に適用することも可能である。