特許第6429130号(P6429130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429130
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】螺旋状複合ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/88 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   A61F2/88
【請求項の数】39
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-562394(P2015-562394)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-509930(P2016-509930A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2014001121
(87)【国際公開番号】WO2014140892
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】13/829,153
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500031467
【氏名又は名称】メディノール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リヒター、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】ワイツマン、オレグ
(72)【発明者】
【氏名】ベロブロヴィ、イゴール
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0234433(US,A1)
【文献】 特表2012−524588(JP,A)
【文献】 特表平07−500272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の主要ステント部品と、ポリマー部材とを備えた螺旋状ステントであって、
前記主要ステント部品は、
a)第1端および第2端を有する第1サイドバンドと、前記第1サイドバンドに連結されて複数のセルを形成する第1端および第2端を有する第2サイドバンドとを備え、前記第1および第2サイドバンドはそれぞれ波形パターンを有し、前記第1サイドバンドの第1端は前記第2サイドバンドに向かって先細になり、前記第2サイドバンドの第1端は前記第1サイドバンドに向かって先細になり、
b)前記第1サイドバンドから連続して成る一連の支材を含む第1エンドバンドを備え、前記第1エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第1エンドバンドの第1端は前記第1サイドバンドの第2端に連結され、前記第2サイドバンドから連続して成る一連の支材を含む第2エンドバンドを備え、前記第2エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第2エンドバンドの第1端は前記第2サイドバンドの第2端に連結され、
c)前記第1エンドバンドの第2端は、前記第2サイドバンドから延びる第1フックに連結されている
螺旋状ステント。
【請求項2】
前記第1フックおよび前記第1エンドバンドは第1円筒を形成し、前記第1円筒は略直円筒である請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記第1フックは前記第1エンドバンドの第2端に溶接によって連結されている請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】
前記第1サイドバンドから延びる第2フックをさらに備え、前記第2エンドバンドの第2端は前記第2フックに連結され、
前記第2フックおよび前記第2エンドバンドは第2円筒を形成し、前記第2円筒は略直円筒である請求項1から3のいずれか1項に記載のステント。
【請求項5】
前記第2フックは前記第2エンドバンドの第2端に溶接によって連結されている請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記第1サイドバンドと第2サイドバンドは横断支材によって連結されている請求項1から5のいずれか1項に記載のステント。
【請求項7】
前記セルのうち少なくとも1つは、前記セルの他の少なくとも1つと異なる大きさを有する請求項1から6のいずれか1項に記載のステント。
【請求項8】
前記主要ステント部品のいずれか一端に近いほど、前記セルの大きさが小さくなる請求項1から7のいずれか1項に記載のステント。
【請求項9】
前記ポリマー部材は繊維メッシュである請求項1から8のいずれか1項に記載のステント。
【請求項10】
前記ポリマー部材は多孔質部材である請求項1から8のいずれか1項に記載のステント。
【請求項11】
前記ポリマー部材は耐久性部材である請求項1から8のいずれか1項に記載のステント。
【請求項12】
前記主要ステント部品の全長にわたって前記ポリマー部材が延設されている請求項1から11のいずれか1項に記載のステント。
【請求項13】
前記ポリマー部材が前記主要ステント部品の端を被覆する請求項1から11のいずれか1項に記載のステント。
【請求項14】
前記ポリマー部材が複数の穴を有する請求項1から13のいずれか1項に記載のステント。
【請求項15】
前記ポリマー部材はePTFEである請求項1から9のいずれか1項に記載のステント。
【請求項16】
前記ポリマー部材はステントに対して長手方向の剛性を付与する請求項1から15のいずれか1項に記載のステント。
【請求項17】
前記ポリマー部材はステントに構造的な支持をもたらす請求項1から16のいずれか1項に記載のステント。
【請求項18】
a)第1端および第2端を有する第1サイドバンドと、横断支材によって前記第1サイドバンドに連結された第1端および第2端を有する第2サイドバンドとを備え、前記第1および第2サイドバンドはそれぞれ波形パターンを有し、前記第1サイドバンドの第1端は前記第2サイドバンドに向かって先細になり、前記第2サイドバンドの第1端は前記第1サイドバンドに向かって先細になり、
b)前記第1サイドバンドから延長して成る一連の支材を含む第1エンドバンドを備え、前記第1エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第1エンドバンドの第1端は前記第1サイドバンドの第2端に連結され、前記第2サイドバンドから延長して成る一連の支材を含む第2エンドバンドを備え、前記第2エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第2エンドバンドの第1端は前記第2サイドバンドの第2端に連結され、
c)前記第2サイドバンドから延び、前記第1エンドバンドの第2端に対して位置を合わせるように設けられた第1フックと、前記第1サイドバンドから延び、前記第2エンドバンドの第2端に対して位置を合わせるように設けられた第2フックとを備える
主要ステント部品。
【請求項19】
請求項4に記載の螺旋状ステントを形成する方法であって、
a)前記第1エンドバンドの第2端と前記螺旋状主要ステント部品の前記第1フックとの位置を合わせ、
b)前記第1エンドバンドの第2端を前記第1フックに連結し、
c)前記第2エンドバンドの第2端を前記第2フックに位置を合わせ、
d)前記第2エンドバンドの第2端を前記第2フックに連結し、
e)前記ポリマー部材を付与する、
工程を備える方法。
【請求項20】
前記第1フックを前記第1エンドバンドの第2端に溶接する工程をさらに備えた請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2フックを前記第2エンドバンドの第2端に溶接する工程をさらに備えた請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー部材を付与する工程は電界紡糸を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
螺旋状主要ステント部品およびポリマー部材とを備えるステントであって、前記主要ステント部品は、
a)第1端および第2端を有する第1サイドバンドと、第1端および第2端を有する第2サイドバンドとを備え、前記第1および第2サイドバンドはそれぞれ波形パターンを有し、横断支材によって互いに連結され、前記第1サイドバンドの第1端は第1連結点において前記第2サイドバンドに向かって先細になり、前記第2サイドバンドの第1端は第2連結点において前記第1サイドバンドに向かって先細になり、前記第1サイドバンドの第2端は前記第2連結点から延出し、前記第2サイドバンドの第2端は前記第1連結点から延出し、
b)前記第2サイドバンドから延び、前記第1サイドバンドの第2端に連結された第1フックと、前記第1サイドバンドから延び、前記第2サイドバンドの第2端に連結された第2フックとを備える
ステント。
【請求項24】
前記第1サイドバンドから連続して成る一連の支材を含む第1エンドバンドをさらに備え、前記第1エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第1エンドバンドの第1端は前記第1サイドバンドの第2端に連結され、前記第1フックおよび前記第1エンドバンドは第1円筒を形成し、前記第1円筒は略直円筒である請求項23に記載のステント。
【請求項25】
前記第1フックは前記第1エンドバンドの第2端に溶接によって連結されている請求項24に記載のステント。
【請求項26】
前記第2サイドバンドから連続して成る一連の支材を含む第2エンドバンドを備え、前記第2エンドバンドは第1端および第2端を有し、前記第2エンドバンドの第1端は前記第2サイドバンドの第2端に連結され、前記第2フックおよび前記第2エンドバンドは第2円筒を形成し、前記第2円筒は略直円筒である請求項24に記載のステント。
【請求項27】
前記第2フックは前記第2エンドバンドの第2端に溶接によって連結されている請求項26に記載のステント。
【請求項28】
前記第1サイドバンドと第2サイドバンドは横断支材によって連結されて複数のセルを形成している請求項23に記載のステント。
【請求項29】
前記セルのうち少なくとも1つは、前記セルの他の少なくとも1つと異なる大きさを有する請求項28に記載のステント。
【請求項30】
前記主要ステント部品のいずれか一端に近いほど、前記セルの大きさが小さくなる請求項28または請求項29に記載のステント。
【請求項31】
前記ポリマー部材は繊維メッシュである請求項23から30のいずれか1項に記載のステント。
【請求項32】
前記ポリマー部材は多孔質部材である請求項23から30のいずれか1項に記載のステント。
【請求項33】
前記ポリマー部材は耐久性部材である請求項23から30のいずれか1項に記載のステント。
【請求項34】
前記主要ステント部品の全長にわたって前記ポリマー部材が延設されている請求項23から33のいずれか1項に記載のステント。
【請求項35】
前記ポリマー部材が前記主要ステント部品の端を被覆する請求項23から33のいずれか1項に記載のステント。
【請求項36】
前記ポリマー部材が複数の穴を有する請求項23から35のいずれか1項に記載のステント。
【請求項37】
前記ポリマー部材はePTFEである請求項23に記載のステント。
【請求項38】
前記ポリマー部材はステントに対して長手方向の剛性を付与する請求項23から37のいずれか1項に記載のステント。
【請求項39】
前記ポリマー部材はステントに構造的な支持をもたらす請求項23から38のいずれか1項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はおよそ、血管等の体内の管に留置されることで、当該管を広げて支持および保持し、または当該管内の他の体内プロテーゼを固定して支持する管腔内プロテーゼ装置であるステントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において様々なステントが知られている。通常、ステントはおよそ管状であり、比較的小さな拡張していない径から、大きな拡張径へと拡張可能である。留置する際、ステントは通常カテーテルの端に設けられ、ステントは比較的小さな拡張していない径でカテーテルに保持されている。カテーテルを用いて、拡張していないステントは意図した留置部位へと管腔内を通じて進入させられる。一旦、ステントが当該対象留置部位に到ると、典型的には、例えばステント内部でバルーンを膨張させることによる内力によってか、あるいは、例えば、自己拡張するステントの周りからスリーブを取り外すことでステントを外側に膨張可能とする等、ステントを自己拡張可能とすることによって、ステントは拡張される。自己拡張するステントの中には、バルーンによって最終的な径まで拡張するものもある。これら全ての場合において、当該拡張ステントは狭まろうとする管に抵抗し、それにより管の開通性を維持する。
【0003】
ステントはチューブや金属の平板シート、あるいはそれに代えて平面状の金属シートとここで称するものから構成されてよく、それを巻いて、溶接、機械的なロックやそれ以外で固定し、ステントの管状構造体を形成する。
【0004】
ステントの構造に関する特許には、例えばPalmazの米国特許第4733665号、Gianturcoの米国特許第4800882号および第5282824号、Hillsteadの米国特許第4856516号および第5116365号、Wiktorの米国特許第4886062号および第4969458号、Pinchukの米国特許第5019090号、PalmazとSchatzの米国特許第5102417号、Wolffの米国特許第5104404号、Towerの米国特許第5161547号、Cardonらの米国特許第5383892号、Pinchasikらの米国特許第5449373号、およびIsrael等の米国特許第5733303号がある。
【0005】
ステントの一種として、螺旋状またはコイル状ステントが知られている。そのようなステント構造は、例えば米国特許第6503270号および第6355059号に記載されており、それらはここに参照されることにより全て組み込まれる。当該ステント構造は螺旋状ステントとして構成されており、コイルは複数のセルを有する巻回されたストリップから成り、ストリップとなったセルは連続した屈曲を有する蛇行パターンを形成する。他の類似する螺旋コイル状ステント構造は当技術分野において公知である。
【0006】
従来のステント構造の一つの目的は、ステントが拡張したときに径方向に十分な強度を有することを確実なものとすることにより、管腔を十分に支持できるようにすることであった。しかしながら、径方向の強度が高いステントは、留置されている管よりも高い長手方向の剛性もまた有する傾向がある。ステントが、留置されている管よりも高い長手方向の剛性を有する場合、当該管のステントが留置されている個所とステントが留置されていない個所との間における伸展性の不一致により応力が集中してしまうため、ステントの両端において当該管の損傷が増加することがあり得、またそれ以外にも、剛性を有するステントが、当該管の自然な屈曲や伸縮の傾向を妨げることもあり得る。一方で、十分に可撓性があるステントは、管腔壁に対して十分な、および/または均一な径方向の支持が不足することが多い。このように、当技術分野においては、十分な径方向の強度と、高い長手方向の可撓性とをバランスよく有するステントが長らく望まれている。
【0007】
コストを削減し、なおかつ製造欠陥を防止するために、ステントの製造プロセスを簡易化しようと試みる一方で、均一で高い可撓性と十分な径方向の支持を有したステントを作製する際に、当技術分野では別の問題が生じている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、蛇行した管腔を容易に進むことができ、留置された後に管の伸展性を著しく変化させることのないような、長手方向に可撓性を有する螺旋状ステントを提供するものであり、ステントが比較的安定しているため、管腔を塞ぐことが起こり得るような態様で屈曲したり傾斜したりすることがなく、また管腔壁の大部分を非支持のままにしておくことがない。本発明のステントは、ポリマー繊維層や他の固定具によって維持される螺旋状構造体を備える。さらに、当該ステントは、金属ステントにより達成されるものよりかなり高い長手方向の可撓性、適合性、および長手方向に繰り返される屈曲、圧縮および捩じれに対する耐疲労性を組み合わせた、金属ステントの径方向の支持を有している。
【0009】
本発明の一実施形態は、例えば生体適合性材料等のポリマー繊維層と組み合わされた主要ステント部品を備え、ポリマー繊維層はステントの管形状を維持し、一方で当該主要部品が管とポリマー繊維層との両方に構造的な支持をもたらすことで、留置の際にポリマー層が管腔内に垂れることを防止する。
【0010】
主要ステント部品は、切れ目のない長尺部品としてのリボンあるいはストリップから形成でき、好ましくは周期的なループ部を形成する離間した波形部を有する。波形部は、およそ正弦波形状または千鳥形状のパターンを含むことが分かる。リボンは螺旋状に巻回されることにより、拡張する際に血管を広げて保持する機能を果たすことができる螺旋状、管状構造体を形成することができる。リボンは、螺旋状に巻くと自然と管状構造体を形成するように構成され、螺旋状コイルの個々の環状部―最終的な管状構造体の螺旋方向の全周に渡すのに必要とされるリボンの長さによって決まる―が、管状構造体の縦軸において互いに離間する。ステントはまた、同時に巻回された2つ以上のリボンを備えることが可能であり、異なるリボンの巻き線がステントに沿って交わったり、互い違いになったり、あるいは部分的にまたは完全に重なり合う。
【0011】
または、主要ステント部品あるいは螺旋状に配向されたリボンはチューブから形成されてよく、管状構造体にエッチングやレーザカットを施して本発明の螺旋コイル状構造体にすることができる。
【0012】
主要ステント部品は、螺旋状コイルの管状構造体を形成する。ステントの縦軸に沿った螺旋状コイルの環間の距離は、特定のステントのニーズによって長さが異なってよい。
【0013】
別の実施形態においては、主要ステント部品は、各波形コイルが螺旋状構造体の隣接する波形コイルに直接当接することで環状部間の間隔が最小化するように構成されてよい。つまり、波形パターンは、螺旋状コイルの隣接する別の環状部の略同一の波形パターンに近づいて入り込む。このようにして、ステントの螺旋状コイルによって、全体的なステントの可撓性を損なうことなく、管腔壁の被覆を向上させる。螺旋状コイルは直接接触することなく互いに近づいて入り込むので、螺旋状コイルの別の環状部同士が近接しても、形成されたステントの全体的な可撓性は影響を受けない。このように配置されることで、螺旋を連結するポリマー層が垂れる可能性も防止する。隣接するコイルの要素同士の近接は、上述したような波形構造体の近接か、あるいは波形構造体に連結された各種連結要素の近接によるものかの、いずれかであってよい。これらの要素は、棒のように真っ直ぐであってよく、ステントの長手方向に揃っているか、あるいはそれに対して傾斜または湾曲している。
【0014】
主要ステント部品は複数のサイドバンドと複数のエンドバンドを備えていてよい。サイドバンドは主要ステント部品の長手に沿って平行に延出している。好ましくは、それぞれが1つまたは複数の隣接するサイドバンドに直接あるいは複数の横断支材を介して交差することのできる波形パターンを備えている。エンドバンドはストリップの一端から延出してよく、リボンの中心部を成すサイドバンドに対して斜めに位置してよい。これらのエンドバンドは、ステントを形成すると、両端あるいは一端において、管状構造体の周りに周方向バンドやリングを形成するように構成することができる。螺旋管状構造体の両端を固定するため、エンドバンドは先細になっていてよく、および/またはフック、ポリマー、溶接等の要素を追加して取り付けてもよい。また、単一の波形パターンが主要ステント部品の長手方向の一方に延びるようにサイドバンドを長くすることによってエンドバンドを形成してよい。主要ステント部品は、管状ステントを形成したときにエンドバンドと位置が揃うように傾斜して配向された、サイドバンドの一方または両方から延びる1つまたは複数のフックをさらに有していてよい。例えば主要ステント部品を螺旋状に巻回することによりステントを形成すると、ステントの周囲に閉じたバンドあるいはリングを形成するため、溶接や他の手段のいずれかによって、フックをエンドバンドに連結してよく、当該バンドやリングは、ステントの縦軸を有する直円筒のほぼ胴部に配向されてよい。
【0015】
主要ステント部品は、アモルファス金属合金、一般的な金属、あるいは他の生体適合性材料から形成することができる。本発明のアモルファス金属ステントは、螺旋状に巻回された金属の1つまたは複数の平板シートから形成されてよい。アモルファス金属合金は、好ましくない結晶構造に戻ろうとする金属が無いと容易に溶接することができないので、本発明は、生体適合性非金属材料等のポリマー繊維層に螺旋コイル状のアモルファス金属合金の主要ステント部品を被覆あるいは埋設することで複合ステントを形成することを検討するものであり、ここで複合とは、ステントの機械的特性が、金属に特徴的である強度を有した径方向の構造体と、非金属材料に特徴的である柔軟性、可撓性および耐久性を有した長手方向の構造体との複合であることを意味する。
【0016】
一実施形態において、主要ステント部品は、溶接を必要とせず、それ以外にも、螺旋状に巻回されたストリップを連結することもなく、ポリマー層によって螺旋コイル状形状に保持されてよい。第2ステント部品、即ち、固定具は、ステントの長手方向の可撓性に寄与する一方で、主要ステント部品の管形状に対して長手方向の剛性および構造上の支持をもたらすように用いられてよい。ステントが拡張あるいは屈曲すると、固定具はステントの全体的な可撓性に寄与する一方で、主要ステント部品を管形状に維持することにも寄与するように、固定具は主要ステント部品に対して配向しおよび取り付けられる。固定具は繊維、ワイヤ、糸、リボン、ストリップ、ポリマー、メッシュ等を備えてよい。別の実施形態においては、溶接、あるいは螺旋状コイルの部品同士を連結することによって、主要ステント部品を螺旋形状に保持し、構造体を適切な円筒状に保持する。同様に、ポリマーおよび他の固定手段を組み合わせて螺旋状構造体を維持するような実施形態が検討されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】多孔質ポリマー繊維構造体によって連結されたステント部材の顕微鏡写真を説明するものである。
図2】繊維ポリマー構造体によって連結された概略的な螺旋部品を有したステントを説明するものである。
図3】繊維ポリマー構造体によって連結された主要ステント部品の一実施形態を説明するものである。
図4】本発明の一実施形態により形成された平板あるいは平面リボン主要ステント部品を説明するものである。
図5】螺旋状コイル間において可変距離を有する、本発明による螺旋状主要ステント部品を説明するものである。
図6】ポリマーに埋設され、サイドバンドおよびエンドバンドを有する螺旋状主要ステント部品を備えた本発明の別の実施形態を説明するものであり、様々な横断支材を詳述するものである。
図7】螺旋状主要ステント部品のコイルが互いに入り込んで近づいている、本発明のさらに別の実施形態を説明するものである。
図8】1つまたは複数の例示的な穴を有した支材を備え、パターンを有するバンドを備えた平板リボンから構成される主要ステント部品の一実施形態を説明するものである。
図8A図8の主要ステント部品のエンドバンドを拡大して示したものである。
図9】1つまたは複数の例示的な穴を有した支材を備え、波形を有する主要ステント部品を、平板リボンの図で説明するものである。
図9A図9の第1エンドバンドを、拡大した平板リボンで示すものである。
図9B図9の第2エンドバンドを、拡大した平板リボンで示すものである。
図10】固定構造体および主要ステント部品の写真を説明するものである。
図11】数個のリボン固定具に埋設された螺旋状主要ステント部品の実施形態を説明するものである。
図12】離散した点において固定された複数の螺旋状固定具によって維持された螺旋状主要ステント部品を説明するものである。
図13】波形を有するサイドバンドと、サイドバンドのいずれか一方から延び、波形を有するエンドバンドと、各サイドバンドから延びるフックとを備える主要ステント部品を、平板または平面リボンの図で説明するものである。
図14図13の螺旋状主要ステント部品を管状にした図で説明するものである。
図14A図14のステントの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、螺旋状複合ステントとして定義される、新種の管腔内人工装具を提供するものである。特に、本発明のステントは、螺旋管状構造体の形状を有する主要ステント部品を備える。主要ステント部品は、第2部品によって巻回位置に保持されてよく、螺旋状コイルを管状構造体にして固定する。第2部品は、主要ステント部品を管形状に固定する多数の手段のうちの1つまたは複数であってよい。第2部品は、例えば溶接点や、連結手段および/またはポリマーであってよい。一実施形態においては、第2部品は、コイル状の主要ステント部品に巻装される、あるいは埋設されるポリマーまたはポリマー繊維を備える。ポリマー繊維層の弾性域は、弾性限界に達することなく、挿入中およびその後のステントの拡張や最大限の屈曲を可能とするだけ十分でなくてはならない。
【0019】
本発明のステントは、拡張可能または自己拡張バルーンであってよく、あるいは最初は自己拡張し、その後さらにバルーンによって拡張するものであってよい。バルーン拡張ステントシステムを用いてステントを移動させる場合、ステントはバルーン上に設けられ、カテーテル組立部品は留置部位に配置される。バルーンはその後膨張し、ステント内部に径方向の力を加え、ステントを拡張させて拡大直径となる。または、ステントは自己拡張させてもよく、その場合ステントの拡張および運搬を簡易化するため、バルーンはなくてもよい。
【0020】
本発明は、ステントを複数の別部品ではなく、単一の主要ステント部品で形成することにより、複数の部品を形成したり、その後それらを接合してステントを形成する必要がなく、ステント構造体全体の製造の簡易化をもたらすものである。本発明はまた、同時に巻回された2つ以上の主要ステント部品から成るステントの製造を可能とするものであり、それらは同一材料または構造であってもよいし、そうでなくてもよく、異なるリボンの巻き線が交差してもよいし、ステントの長手に亘って互い違いになってもよい。本発明はまた、個々のリングを固定する必要のないアモルファス金属等の、溶接が困難な材料からステントを形成することを可能とする。
【0021】
本発明は、例えば螺旋管形状のコイルとして螺旋状に設けられた、周期的に連続する波形を含むサイドバンドを有する連続的な主要ステント部品を備えるステントに関するものである。主要ステント部品は、1つまたは複数の平板な金属リボンから形成してよい。または、主要ステント部品は、螺旋コイル状のパターンがエッチングされたりレーザカットされた管として形成されてよい。いずれの場合でも、螺旋状ステントは単一あるいは複数のコイル状リボンのようなパターンを有することになり、各リボンは、波形パターンをそれぞれ有する2つ以上の平行するサイドバンドを備える。当該サイドバンドは直接および/または横断支材を介して結合される。
【0022】
主要ステント部品はさらに、波形バンドを有するエンドバンドを備えていてよく、波形バンドは、エンドバンドがサイドバンドの概略方向に延びた状態で主要ステント部品の各端から傾斜して延出してよい。この方向にあるエンドバンドはそれぞれ螺旋コイル状の管状構造体の周軸に沿っている。また、エンドバンドは、主要ステント部品のサイドバンドに略平行な方向に延出してよく、ステントの螺旋を形成すると、主要ステント部品から傾斜して延出するフックに対して位置を合わせるように配向される。任意的に、エンドバンドを追加して用いることなく、リボンのサイドバンドを先細にしてもよい。エンドバンドと、主要ステント部品の両端の先細化との両方によって、最終的なステントの両端が略直線状となることが可能であり、言い換えれば、円筒状ステントの両端がそれぞれステントの縦軸に直交する平面に位置して、ステントが直円筒を形成することを可能とする。
【0023】
横断支材は直線状の連結部であってよいし、サイドバンドおよび/またはエンドバンドに対する連結点間に1つまたは複数のループを有していてもよい。さらに、個々の横断支材は、エンドバンドを隣接するサイドバンドへと連結してよく、一方で他の横断支材は2つの隣接するエンドバンドを互いに連結したり、または2つの隣接するサイドバンドを互いに連結する。
【0024】
リボンの螺旋コイル形状において、隣接するサイドバンドおよび/またはエンドバンドは互いに略平行となることができるように、サイドバンドおよびエンドバンドの波形パターンがなっている。波形パターンは山および谷を有していることがわかる。谷は、横断支材への、または最も近接するサイドバンドあるいはエンドバンドの谷への連結点によって画定されてよい。エンドバンドが螺旋コイル状の主要ステント部品の周軸回りに延出するように、エンドバンドは傾斜して設けられる。
【0025】
サイドバンドを構成する同一のリボンから端部が形成されてよい。当該端部は螺旋コイル状構造体を支持する。また、主要ステント部品の螺旋状コイルは、ステントの縦方向に位置を合わせた、あるいはそれに対して傾斜した複数の別のエンドバンド部品によって連結されてもよい。
【0026】
リボンはセル状ステント構造を設けるように配置されてよい。螺旋状主要ステント部品は、径方向の拡張を可能とするための伸び代を提供するいかなる構造体であってもよい。そのような具体的な構造の例としては、米国特許第6723119号に記載されており、ここに参照することにより全て組み込まれるが、これに限定されるものではない。他の構造例には、米国特許第7141062号(“‘062”)に記載されているステントパターンがある。‘062のステントは三角形のセルを備え、それは、それぞれがループ部を有する3つの領域と、各セルを形成する3つの対応する接合点から成るセルを意味するものである。そのようなセルの1つまたは複数の列をリボンに組み立てることができ、リボンは2つ以上のサイドバンドによって螺旋状に巻回して主要ステント部品を形成してよい。同様に、Israelらの米国特許第5733303号(“‘303”)に記載されているステントのセルは主要ステント部品に使用してよいが、螺旋状に巻回している。特許‘303に記載されているステントは、それぞれがループ部分を有する4つの領域と、各セルを形成する4つの対応する接合点から成り、四角形セルとしても知られるセルを備えている。そのような四角形セルは、本発明の螺旋コイル状リボンのサイドバンドと横断支材とで形成されてよい。これらの構造はそれぞれここに参照されることにより全て明示的に組み込まれる。当技術分野において公知で、同様に適用可能な他のセル状ステント構造を、本発明の螺旋状ステントに容易に適用することができる。
【0027】
軽量で多孔質または繊維質のポリマー部材を本発明のステントに採用することで、いくつかの利点がもたらされる。例えば、繊維質の部材で長手方向の構造体を設けることができ、それによってステント装置の全体的な可撓性を向上する。検討されている当該構造体の特定のニーズに応じて、そのような材料を管状ステントに連続的あるいは非連続的に適用してよい。ポリマー部材は、耐久性ポリマーである多孔質繊維メッシュを形成可能である。長手方向ポリマー構造体は少なくとも2つの機能を有する。まず、長手方向ポリマー構造体は、従来の金属構造体に比べて、より長手方向に可撓性を有する。第2に、ポリマー部材は、小さい繊維間距離を有する連続的な構造体であり、より均一な溶出層を提供するであろう薬剤を溶出するための母材として用いることができる。これらの部材を利用する別の利点としては、ステントが管内に留置された後に当該部材によってもたらされる連続的な被覆により、塞栓のリスクを防止または軽減すると考えられていることである。また、別の利点としては、“ステントジェイル”現象や、ステントによって被覆された側枝への進入の煩雑さの防止がある。さらなる利点としては、高弾性域を有するポリマー構造体の高い耐疲労性がある。
【0028】
ポリマー層は隙間に設けたり、および/またはステントの至る所に埋設することが可能である。ポリマー層は、ステント構造体を部分的に固定してもよいし、またはステント全体を完全に被覆してもよい。ポリマー層は生体適合性材料である。生体適合性材料は耐久性ポリマーであってよく、例えば、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリエチレン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリエーテル、セルロースおよびこれらのいずれかを組み合わせて混合したものや、または共重合体としたものである。特定の使用においては、シリコーン骨格修飾ポリカーボネートウレタンおよび/または延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であってよい。
【0029】
図1は多孔質ポリマー層によって連結されたステント部材を示すステントの一例の顕微鏡写真を説明するものである。ステントの縦軸に沿った多孔性の長手方向構造体としてここに示されているポリマー層5によって図1のステントは連結されている。ここで示すように、ポリマー層5は多孔質の耐久性繊維メッシュである。ポリマー層5によって、小さな繊維間距離を有し、母体を形成する連続的な構造体が設けられる。従来の方法において、当該母体は薬剤を溶出するのに使用可能であり、また均一な溶出層を設けることが可能である。さらに、ポリマー層5は主要ステント部品を管形状に保持するように機能し、拡張および屈曲の際に巻き線がほどけることを防ぐように機能することができる。さらに、ポリマー層5はステント構造体に対して長手方向の可撓性を与える。
【0030】
生体適合性ポリマー層の長手方向構造体は多孔性であってよく、または、穴を有した管あるいは隙間を設けた一連の繊維として形成してもよく、ステントを被覆してその位置を固定するであろう新生内膜の増殖を促進する。穴はまたステントのさらなる安定化を促進することが可能である。穴の形態は、いずれの所望の大きさ、形状、または数に形成することができる。
【0031】
図2は、多孔質繊維メッシュ10等のポリマー層に設けられる螺旋コイル状のリボン12の一例を説明するものである。図2に示すように、ステントは両端13および複数のコイル11を有する螺旋状に巻回されたリボンとして形成される。本実施形態によると、リボン12の幅により、リボン12のコイル11は長手方向の変位または傾斜に対して比較的耐性を有している。メッシュ10は、ステントの長手方向の可撓性を可能としているが、ステントをさらに支持することによって、長手方向の変位または傾斜に抵抗するようにしている。リボン12は螺旋管形状を有するように構成されている。
【0032】
図3は本発明により構成された蛇行コイル状ラダーステント30を説明するものである。図3の蛇行コイル状ラダーステント30は、ステントの周りに設けられた多孔質繊維メッシュ15を有するように示されている。
【0033】
図3に示す実施形態の蛇行コイル状ラダーステント30は、セル37の螺旋状のストリップからコイルが形成された螺旋状ステントとして構成され、セル37の両側は蛇行状、または波形を有している。同図におけるステントは、螺旋状に巻回されて一連の螺旋状コイル31となるストリップを備え、主要ステント部品は、例えば一連の横断支材36によって互いに連結された2つのサイドバンド34、35から成る。サイドバンド34、35はそれぞれ一連の波形38からなる蛇行形状に形成される。ステントが拡張すると、サイドバンド34、35の波形38が広がることによって、個々のセル37がそれぞれ螺旋方向に長くなる。このように、ストリップが螺旋方向に長くなることによって、ストリップが著しく巻き戻ったり、縮小したりすることなく、ステント30を拡張することができる。非拡張状態では、サイドバンドが潰れることにより、蛇行連続体を形成する。
【0034】
図3に示す実施形態においては、サイドバンド34、35を互いに連結する横断支材36は直線状で、ストリップが巻回された螺旋方向におよそ直交する方向に延出している。また、横断支材は1つまたは複数の屈曲を有していてよいし、および/または異なる角度で2つのサイドバンドに渡っていてもよい。図示された実施形態においては、横断支材36は、サイドバンド34、35上の対向する波形38を連結し、1つおきの波形38においてサイドバンド34、35に取り付けられている。または、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、横断支材36は異なる個所において連結されてよいし、設ける頻度を増減してよい。サイドバンド34、35および横断支材36は各セルの外周を形成する。別の方法では、ステントは例えば隣接する点において周期的に互いに直接連結する2つの蛇行サイドバンド34、35を設けることによって、横断支材36を省いて形成されてよい。
【0035】
さらに、図3に示すように、蛇行主要ステント部品の両端33は先細になっていてよい。主要ステント部品の両端33を先細にすることによって、最終的なステントの両端が直線状となることが可能であり、言い換えれば、円筒状ステントの両端がそれぞれステントの縦軸に直交する平面に位置する直円筒形状をステントが有することが可能である。例えば、アモルファス金属から形成される場合、両端33を連結するために、多孔質繊維メッシュ15を用いて、隣接する巻き線31に主要ステント部品の両端33をそれぞれ連結してよい。
【0036】
図4は、本発明の実施形態を説明するものであり、主要ステント部品が平板なリボン形状で示されている。主要ステント部品400は、コイルが巻回されていない状態、つまり平面あるいは平坦で示されている。図4に示すように、主要ステント部品400は長手方向に波形構造を有している。この波形構造は、波形形状を有する第1サイドバンド401と波形形状を有する第2サイドバンド402とを備える。第1サイドバンド401および第2サイドバンド402はおよそ平行な方向に沿って配置されるが、ただしサイドバンドのいずれかの端においては、第1サイドバンドが第2サイドバンドに向かって先細になり、第2サイドバンドが第1サイドバンドに向かって先細になる。したがって、図4に示すように主要ステント部品400を平置きした場合、第1サイドバンド401の波形は、第2サイドバンド402に向かう複数の谷(例えば、410、411)と第2サイドバンド402と逆を向く複数の山(例えば、414、415)とを備えている。同様に、第2サイドバンド402の波形は、第1サイドバンド401に向かう複数の谷(例えば、412、413)と、第1サイドバンド401と逆を向く複数の山(例えば、416、417)とを備えている。第1サイドバンド401と第2サイドバンド402は複数の第1横断支材403によって互いに連結されて、セル440を形成する。特に、例えば第1サイドバンド401の少なくとも1つの谷(例えば、410)が第1横断支材403を介して第2サイドバンド402の対応する谷(例えば、412)に連結される。このようにして、横断支材により隣接するサイドバンド同士を連結することで閉空間を形成することにより、各セルが個別に画定され、一連のセルが形成される。例えば図4では、谷410と411との間の第1サイドバンドの領域と、谷412と413との間の第2サイドバンドの領域と、谷410と412および内側の山411と413とをそれぞれ連結する第1横断支材403とで、セルが画定される。
【0037】
図4において、第1横断支材403は第1サイドバンド401と第2サイドバンド402を一定の間隔、特に隣接する谷において連結し、例えば430等のセルを形成する。別の実施形態においては、第1横断支材403の数は図4に示すものと異なってよい。例えば、第1横断支材403は第1バンド401と第2バンド402とを、例えば、1つおきの谷、2つおき、3つおき、等の一定の間隔で連結してよく、それによってより大きなセルを形成する。さらに別の実施形態においては、第1横断支材403は第1サイドバンド401と第2サイドバンド402を様々な間隔で連結してよく、例えば様々な間隔パターンとして、隣接する谷、3番目の谷、隣接する谷、4番目の谷、隣接する谷、3番目の谷等(図示せず)や、または別のパターンでもよく、特定の使用に適したものでよいのであって、それにより主要ステント部品に沿って異なる大きさの多様なセルを形成する。図4に示すように、第1横断支材403はそれぞれ互いに対して、およびサイドバンド401、402に対して同じ幅を有するものでよい。また、特定の使用に適したものとして、第1横断支材403は第1および第2サイドバンド401、402とは異なる幅を有してよいし、または互いに異なる幅を有してよい。さらに、第1横断支材403は直線部材を備えたり、1つまたは複数のループを有してもよく、それにより特許‘303に開示のものに類似する四角形セルや、特許‘062に開示の三角形セルを形成する。横断支材は、第1および第2サイドバンド401、402の隣接の、あるいはずれた谷を連結してよい。図4に示すように、ステントの特定の使用によって、単一のステント構造において異なる形状の横断支材や、あるいは横断支材を全く用いないように変えてもよく、それによって異なるセル形状を有するステントを形成することが可能である。
【0038】
図4に示す実施形態において、主要ステント部品400は各端が先細になっている。特に、横断支材403は主要ステント部品400の各端に向うにしたがって、長さが短くなり、それにより第1および第2バンド401、402は互いに近接し、最終的には連結点404および405において直接連結される。また、横断支材を有しない実施形態においては、主要ステント部品の平板リボン上で、波形をより浅くすることで先細りした端を形成してよい。
【0039】
図4において、サイドバンド401および402の端からエンドバンド406および407が延出している。このように、第1エンドバンド406が第1サイドバンド401の端から第1サイドバンド401の概略方向からずれた方向に延出している。第2エンドバンド407は、第2サイドバンド402の概略方向からずれた概略方向であり第1エンドバンドとは反対に、第2サイドバンド402の端から延出している。第1エンドバンド406および第2エンドバンド407はそれぞれが波形パターンを有している。第1エンドバンド406は、第1サイドバンド401に向かう谷(例えば418、419)と、第1サイドバンド401と逆に向かう山(例えば422、423)とを有している。同様に、第2エンドバンド407は第2サイドバンドに向かう谷(例えば420、421)と、第2サイドバンド402と逆に向かう山(例えば424、425)とを有している。第1エンドバンド406は、例えば谷418において第1サイドバンド401に直接連結しているが、第1エンドバンド406は第1サイドバンドから斜めに離れて延出しているため、第2横断支材426が第1エンドバンド406を第1サイドバンド401に連結している。同様に、第2エンドバンド407は例えば谷420において第2サイドバンド402に直接連結されているが、第2エンドバンド407が第2サイドバンドから斜めに離れて延出しているため、第2横断支材426が第2エンドバンド407を第2サイドバンド402に連結している。図4に示すように、第2横断支材426は隣接するエンドバンドおよび/またはサイドバンドとの連結点間に1つまたは複数のループを有してよい。第1エンドバンド406および第2エンドバンド407の山には、任意で図4に示すような山(例えば423、424)から延設される円弧状構造をさらに追加してよい。
【0040】
さらに、第3エンドバンド408は第1エンドバンド406に対しておよそ平行に設けられ、谷は互いに対向して、例えば427のように第1エンドバンドに直接連結している。第4エンドバンド409は第2エンドバンド407に対しておよそ平行に設けられ、谷は互いに対向して、例えば428のように第2エンドバンドに直接連結している。第3エンドバンド408および第4エンドバンド409はそれぞれ波形パターンを有している。
【0041】
図5は螺旋コイル状のステントを説明するものであり、主要ステント部品400が管状構造体を形成し、リボンのエンドバンドが管状構造体の両端を固定している。主要ステント部品400の波形構造によって螺旋状、管状構造体が形成され、螺旋のコイルが自己配列することで、図5に示すような例えば433、434、435の螺旋環状部の間に、例えば431、432のような、管状構造体の縦軸に沿った可変および/または同一な間隔が形成される。ステント400が螺旋を形成するため、リボンの第1サイドバンド401および第2サイドバンド402は異なる程度に離間していてよい。
【0042】
図5および/または図6にあるように、螺旋状主要ステント部品500は、ロック機構あるいは溶接だけではなく、長手方向ポリマー層に管状構造体を埋設することによって固定されてもよい。長手方向ポリマー層は生体適合性材料を備える。図6のステントは、図5のものと比べるとわずかに回転しているため、ループを有する第2横断支材426が視認できる。第1バンド401、第2バンド402、第1横断支材403、及びセル430もまた確認される。
【0043】
図7は本発明に係るステントを説明するものであり、螺旋状コイルの環状部の間における長手方向の間隔がほとんどない、あるいは実質全くないように螺旋状コイルが配置されている。つまり、図7に示すように、第1サイドバンド401の山(例えば414、415)が第2サイドバンドの山(例えば416、417)によって形成される周辺領域に入り込んで近づくことで、第1サイドバンド401の山414、415が第2サイドバンド402の谷412、413に接近するのだが、しかし、第1サイドバンド401は第2サイドバンド402に対して略平行のままである。同様に、第2サイドバンド402の山(例えば416、417)が山(例えば414、415)によって形成される周辺領域に入り込んで近づくことで、第2サイドバンド402の山416、417が第1サイドバンド401の谷410、411に対して接近する。第1サイドバンド401と第2サイドバンド402とが直接接触しないように、近接したサイドバンドを配置することが望ましい。第1サイドバンド401と第2サイドバンド402とは略同一の構造を有しているため、このような方法で第1サイドバンド401と第2サイドバンド402は形成されたステントの全長に亘って互いに接近することができる。このように、第1サイドバンド401と第2サイドバンド402は、互いに近接しているということができる。図7のステントによると、隣接する第1および第2サイドバンドの近接パターンによって管壁および/またはポリマー層の非支持領域を最小限にし、ステントの可撓性を損なうことなく、拡張の際に管腔内へポリマー層が垂れることを防止する、というさらなる利点がある。さらに、螺旋状コイルが近接することで、個々に管形状の構造体のメンテナンスを容易とする。
【0044】
図8は別の実施形態を説明するものであり、主要ステント部品1300が平面状、すなわち巻回されずに広げられている。図示するように、主要ステント部品1300は長手方向にパターンを有するバンドを備える。図4の実施形態と同様に、図8の主要ステント部品1300の構造は、第1サイドバンド1301、第2サイドバンド1302、第1エンドバンド1306、第2エンドバンド1307、第3エンドバンド1308、および第4エンドバンド1309を備える。管形状において、サイドバンド1301および1302はステント本体の中心部に対して、連続する螺旋状巻き線を形成し、一方で第1および第2エンドバンド1306および1307はステントの両端リングに対して、ステントの縦軸に直円筒を形成する。第1エンドバンドにおいては、第1縁1350を第2縁1351に重ね合わせ、一方で第2エンドバンドにおいては、第1縁1352を第2縁1353に重ね合わせる。主要ステント部品1300は、治療剤を注入する1つまたは複数の穴を有する複数の支材を備える。
【0045】
例えば図8に示すように、各バンドは1つまたは複数の穴を有するのに十分な幅の複数の支材を有して形成される。主要ステント部品1300の穴あき支材は、円形、楕円形または矩形を含むいずれの幾何学的形状でもよく、これに限定されるものではない。さらに、穴は支材の全層を通じて延設されてよいし(完全穴)、または支材の片側にだけ開口して(管形状における管腔側または反管腔側)、部分的にだけ延設されてもよい(部分穴)。また、ステントは一つの支材において、あるいは異なる支材において、様々な大きさ、数、および形状を有する穴を含む支材を備えてよい。本発明は、サイドおよび/またはエンドバンドの一方または両方において完全な、および/または部分的な穴を有する支材を検討するものである。サイドバンドの山および谷を画定する支材は主要ステント部品の長手に沿って長さが可変であってよく、最終的な螺旋コイル状ステント構造体と多数の穴に対して所望の形状をもたらす。例えば図8Aにおいて、エンドバンド支材1356および1357と同様に、サイドバンド支材1358および1359は長さが異なる。穴あき支材はループまたは折り返し1370によって連結され、当該部材が穴あき支材よりも幅が狭いため、さらなる可撓性を付与する。
【0046】
図9は本発明のさらに別の実施形態を説明するものであり、主要ステント部品1200が平面形状、すなわち、巻回されずに広げられている。図示するように、主要ステント部品1200は平面に置かれた場合、長手方向における単一のサイドバンド1201である。サイドバンド1201は横断支材1240および1241によってそれぞれ第1エンドバンド1202および第2エンドバンド1203に取り付けられている。サイドバンド1201は、同一または可変の長さを有する支材によって画定される山(例えば、1210、1212)および谷(例えば、1211、1213)が互い違いになっているパターンを備える。各サイドおよびエンドバンドは、図8について上述したように1つまたは複数の完全な、あるいは部分的な穴を含むのに十分な幅を有した支材を有して形成され、図9にも適用可能である。穴あき支材は、穴あき支材よりも幅の狭いループまたは折り返し1270によって連結されることで、さらなる可撓性を付与する。図9Aに示すように、当該支材は長さが可変であり、各支材における穴の数も異なる。例えば支材1217は支材1215とは長さや穴の数が異なる。支材1216は支材1215と長さは異なるが、穴の数は同一である。また、支材1214と1215は長さと穴の数が同一である。図9Aのステントは、第1サイドバンド1201の両端に近い支材(例えば、1217)が支材1214および1215とは異なる長さを有してよく、螺旋巻きに寄与するように構成されていることを検討するものである。
【0047】
エンドバンド1202および1203は、管形状の周端リングを形成する。第1エンドバンド1202および第2エンドバンド1203は、サイドバンド1201の概略方向から斜めにずれた方向にサイドバンド1201の両端から延出する。エンドバンド1202および1203は、ステントの両端において直円筒の両端を形成するように構成されており、構造体を巻回してステントにすると、ステント本体中心の螺旋巻きの側面に位置する。第1エンドバンド1202は第1縁1250および第2縁1251を有する。管形状において、第1縁1250は第2縁1251に重ね合わせられて、ステントの縦軸に対する直円筒を形成する。第2エンドバンド1203は第1縁1252および第2縁1253を有する。管形状において、第1縁1252は第2縁1253と重ね合わせられて、ステントの縦軸に対する直円筒を形成する。さらに以下で説明するように、縁(1250および1251、1252および1253)は恒久的に取り付けられてよく、またその代わりに、両縁を近接させることが可能な固定具によって位置決めされることで、ステントの縦軸に対する直円筒を維持してもよい。
【0048】
図9Aにおいて、第1エンドバンド1202は一連の波形を備える。第1エンドバンド1202の向きは、サイドバンド1201の向きに対して斜めにずれている。図9Aにおいて、ステントを平板状にした場合、第1エンドバンドはステントの本体中心に対して45度未満の角度でサイドバンドから延出している。第1エンドバンド1202の波形パターンには、互い違いになった山(例えば、1219、1221)および谷(例えば、1220、1222)が含まれている。第1エンドバンドの谷(1220、1222)はサイドバンドの方向に延出しているが、一方で山(1219、1221)はサイドバンドと逆を向いている。第1エンドバンド1202もまた穴を有する支材を備えていてよい。図9Aにおいて、横断リンク1240および1242は、例えばサイドバンドと第1エンドバンドを連結する。横断リンク1240および1242は、第1エンドバンドの谷からサイドバンドの山へと延びる。サイドバンドと第1エンドバンドとの間に延びる複数の横断リンクは、1つまたは複数の湾曲部を有する可撓性連結部である。本発明はまた、横断リンクが1つまたは複数のループを有することが可能な実施形態を検討するものである。
【0049】
図9Bにおいて、第2エンドバンド1203もまた一連の波形を備える。第2エンドバンド1203の方向はサイドバンド1201の方向に対して斜めにずれている。好ましくは、ステントを平置きした場合、第2エンドバンドはステントの本体中心に対して45度未満の角度でサイドバンドから延出している。第2エンドバンド1203の波形パターンは、互い違いになっている山(例えば、1223、1225)と谷(例えば、1224、1226)とを含む。第2エンドバンドの谷(1224、1226)はサイドバンドの方向に延出しているが、一方で山(1223、1225)はサイドバンドと逆を向いている。第2エンドバンド1203は穴を有する支材を備えていてよい。図9Bにおいて、横断リンク1241はサイドバンドと第2エンドバンドを連結する。横断リンク1241は、第2エンドバンドの谷からサイドバンドの谷へと延出する。サイドバンドと第2エンドバンドとの間を延出する複数の横断リンクは、1つまたは複数の湾曲部を有する可撓性連結部である。サイドバンドと第2エンドバンドを連結する横断リンクは少なくとも1つのループを備えていてよい。
【0050】
さらに、本発明は、第1および第2エンドバンドに構成が類似していて、第1および第2エンドバンドのいずれかに連結されることで、螺旋巻きや均一な被覆を容易にする他のエンドバンドを検討するものである。図9Bにおいて、穴あき支材を有する第3エンドバンド1204は横断リンク1243によって第2エンドバンドに連結される。図5A、8Aおよび58Bに示すように、本発明は波形あるいはパターンを有するサイドバンドに同一に連結されず、互いに同一でない第1および第2エンドバンドを検討するものである。サイドバンドと同様に、エンドバンドのいずれか1つあるいは全ては、穴あき支材より狭い寸法を有するループで連結される1つまたは複数の完全穴あるいは部分穴を設けるのに十分な幅を有する支材を備えていてよい。
【0051】
主要ステント部品は第2部品によって、螺旋巻回位置に保持されていてよく、螺旋巻きを管状構造体に固定する。以下で固定具という第2部品は、主要ステント部品を管形状に固定する様々な手段のうちの1つまたは複数であってよい。第2部品は、例えば溶接点、連結手段および/またはポリマーであってよい。固定具によって、ステント本体中心の螺旋巻きおよび/またはエンドバンドによる直円筒の形成を維持する。一実施形態において、固定具は、コイル状主要ステント部品の周りに巻回された、あるいはその中にそれ自身が埋設された、繊維、シート、糸、あるいはリボン状の構造体を備える。別の実施形態においては、金属あるいは非金属材料から成るワイヤやリボンによって主要ステント部品を管形状に維持する。固定具は、固定具が損傷したり剥離したりすることなく、螺旋状主要ステント部品が伸縮および拡張することを可能とし、ステント本体のコイル状巻き線が互いに移動することを可能とする材料を備える。そのような材料は、検討されている構造体に対する特定のニーズによって、連続的あるいは非連続的な態様で管状ステントに適用されてよい。
【0052】
好ましくは、固定具は弾性限界に達しないで、挿入中およびその後のステントの拡張および最大限の屈曲を可能とする。弾性域は、特定のポリマーのように、使用される材料が本来備えている弾性か、主要ステント部品に対する連結点間における非弾性部材の伸び代の含有との、いずれかによってもたらされるものであってよい。また、固定具のさらなる利点としては、“ステントジェイル”現象や、ステントによって被覆された側枝への進入の煩雑さの防止がある。さらなる利点としては、高弾性域を有する特定の固定構造体の高い耐疲労性がある。
【0053】
一実施形態において、固定具は生体適合性材料であるポリマーである。生体適合性材料は耐久性を有していてよく、例えば、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリエチレン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリエーテル、セルロースおよびこれらのいずれかを組み合わせて混合したものや、または共重合体としたものである。特定の使用においては、シリコーン骨格修飾ポリカーボネートウレタンおよび/または延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であってよい。高い弾性比(弾性域内での高い伸長因子)を有するいかなるポリマーでも固定具に特に適している。ポリマーはまた多孔質であってよい。ポリマーが繊維間距離の小さい連続的な構造体である実施形態においては、薬剤を溶出して均一な溶出層を設けるための母体としても使用されてよい。この種の多孔性固定具は、他のいずれのステント構造にも適用可能である。
【0054】
図10は、上述のような図8のコイル状主要ステント部品600を説明するものであり、多孔性および耐久性ポリマー固定具601が主要ステント部品600上に付与されている。第1サイドバンドにおける2つの隣接する支材が、“くぼみ”を有する折り返し602によって互いに連結されている。当該折り返しがくぼみを有することは、最終的なステントの所望の特性に応じた任意の特徴である。図10はまた、くぼみを有さず、本実施形態においては横断支材が第1サイドバンドと第2サイドバンドとを連結する箇所において用いられる折り返し603を説明するものである。
【0055】
上述のポリマー固定具は糸、ワイヤ、あるいはリボンの形状で用いられてもよく、それにより例えば主要ステント部品に対する一連の連結点を通じて主要ステント部品を固定する。1つまたは複数の固定糸、ワイヤ、あるいはリボンは、主要ステント部品とは異なる螺旋方向にステント周りに巻回されてよい。特に、糸、ワイヤ、あるいはリボンは、螺旋状に巻回されたストリップの方向とは反対の螺旋方向にステント周りに巻回されてよい。また、固定具はステントの縦軸に沿って配置されてよい。糸、ワイヤ、あるいはリボンはそれぞれ、主要ステント部品に対していずれか非平行方向に配置されると、ステントの長手に亘って規則的なパターンで主要ステント部品と重なってよく、また螺旋ステント本体構造を固定する機能を効率的に果たすことが可能である。固定糸、ワイヤ、あるいはリボンは、1つまたは複数の重なり個所において様々な手段によって主要ステント部品に固定されてよく、例えば、溶接、接着、埋設、編み上げ、織り込み、圧着、結束、圧入等であり、また例えば、糊付け、浸漬塗装、吹付け塗装等の、接着手段による接合も含む。ポリマー固定具はまた、ステントを含む、あるいは含まない金型に注入されて、それによりステントと一体化してもよい。糸、ワイヤ、あるいはリボンはステントの管形状を維持し、一方で上述のようにポリマー部材が長手方向に可撓特性を有することで、ステントの全体的な可撓性が向上する。
【0056】
図11は螺旋状に巻回されたステントを説明するものであり、主要ステント部品800は2つのリボン801によって位置決めされた、螺旋方向に配向された管状構造体を形成するものである。リボン801はステントの長手に沿って延出するポリマー部材である。リボンはステントの外側あるいは内側面に取り付けられてよいし、または螺旋状に巻回された主要ステント部品に埋設されてもよい。図11では、主要ステント部品800と各第2部品リボン801が交差する個所において、主要ステント部品800が各リボン801に埋設されている。
【0057】
図12は螺旋状に巻回されたステントを説明するものであり、主要ステント部品1000は図5に類似する管状構造体を形成し、1つまたは複数の固定ワイヤ1001がステントのコイル状本体中心部とは異なる螺旋方向に巻回されている。固定ワイヤ1001はステントに沿って様々な連結点1002において主要ステント部品1000に取り付けられることで、螺旋状、管状構造体を維持する。
【0058】
ポリマー固定具に加えて、主要ステント部品を固定するための糸、ワイヤ、あるいはリボン形状の固定具として、金属および/または非金属を含むその他の好適な部材を用いてよい。金属または非金属製の固定ワイヤ、糸、またはリボンを主要ステント部品に取り付けてよく、上記で特定したような様々な手段のうちの1つまたは複数を介して重なる。もし第2部品を作製するのに用いられる部材の長手方向の可撓性が所望するものより低い場合、連結点間における糸、ワイヤ、またはリボンを長くすることによって、ステントの拡張あるいは屈曲の際に延伸可能な第2部品の伸び代を付与することで、可撓性の増加を達成してよい。
【0059】
図13は本発明の実施形態を説明するものであり、説明のみを目的として、主要ステント部品が平面リボン形状で示されている。主要ステント部品1400はセル状構造を有し、波形形状を有する第1サイドバンド1401と波形形状を有する第2サイドバンド1402とを備えている。第1サイドバンド1401と第2サイドバンド1402は、サイドバンドのいずれか一端を除いては、およそ平行な方向に配置され、一端では第1サイドバンドが第2サイドバンドに向かって先細になり、他端では第2サイドバンドが第1サイドバンドに向かって先細になる。第1サイドバンド1401および第2サイドバンド1402は支材1403によって連結されて、セル1430を形成する。エンドバンド1406および1409が図13のサイドバンド1401および1402のいずれかの端から延出している。これにより、第1波形パターンを形成する一連の支材を備える第1エンドバンド1406が、第1サイドバンド1401におよそ平行な方向に第1サイドバンド1401の端から延出している。第1エンドバンド1406は、第2サイドバンド1402が先細になり第1サイドバンド1401と連結する箇所に位置する第1端1407と、それとの間に複数の波形を有する第2端1408とを有する。第2波形パターンを形成する一連の支材を備える第2エンドバンド1409は、第2サイドバンド1402におよそ平行な方向に第2サイドバンド1402の端から延出する。第2エンドバンド1409は、第1サイドバンド1401が先細になり第2サイドバンド1402と連結する箇所に位置する第1端1410と、それとの間に複数の波形を有する第2端1411とを有する。第1エンドバンド1406および第2エンドバンド1409は波形パターンによってそれぞれ形成される。
【0060】
第1フック1412および第2フック1415が主要ステント部品から延びている。第1フック1412は第2サイドバンド1402から直接延び、主要ステント部品1400の一端に近いセル1430aに直接連結する第1端1413を有する。第1フック1412はさらに第2端1414を有している。第2フック1415は第1サイドバンド1401から直接延びていて、主要ステント部品1400のセル1430aとは反対の端に近いセル1430bに直接連結する第1端1416を有している。第2フックは第2端1417をさらに有している。第1フック1412および第2フック1415は、主要ステント部品1400に対して互いに反対の方向に延びている。ステントの管形状において、第1フック1412の第2端1414が第1エンドバンド1406の第2端1408に位置が揃うように、第1フック1412が配置、配向される。ステントの管形状において、第2フック1415の第2端1417が第2エンドバンド1409の第2端1411に位置が揃うように、第2フック1415が配置、配向される。
【0061】
主要ステント部品1400のセル1430は、様々な大きさおよび形状に形成されてよい。図13は本発明の実施形態を説明するものであり、一端において第1サイドバンド1401が第2サイドバンド1402に向かって先細になり、他端において第2サイドバンド1402が第1サイドバンド1401に向かって先細になるのに対応して、いずれか一端において徐々に小さくなるセル1430を主要ステント部品1400は有している。
【0062】
図14は管形状、例えば螺旋状に巻回された主要ステント部品1400を説明するものである。図14のステントの一部を拡大して示す図14Aに示されるように、第1エンドバンド1406は例えば溶接によって、連結点1418において第1フック1412に連結される。このようにして、ステントの一端において、第1エンドバンド1406および第1フック1412は略直円筒である第1円筒1420を形成する。同様に、ステントの他端において、第2エンドバンド1409および第2フック1415は同じく略直円筒である第2円筒1425を形成する。
【0063】
エンドバンドは別の方法においてはサイドバンドの延長として理解されてよく、例えば、第2サイドバンド1402が先細になって第1サイドバンド1401に連結される連結点1407から延びる波形パターンによって形成されることにより、第1エンドバンド1406は第1サイドバンド1401の延長となる。同様に、第1サイドバンド1401が先細になって第2サイドバンド1402に連結される連結点1410から延びる波形パターンによって形成されることで、第2サイドバンド1409は第2サイドバンド1402の延長として理解されてよい。
【0064】
本発明のステントがアモルファス金属合金を備える場合、耐腐食性や望ましくない永久変形に対する耐性の向上や、所定の金属の厚みに対するより高い強度という、さらなる利点がもたらされる。アモルファス金属合金を備える本発明のステントは、結晶または多結晶の物と比べて著しく低い伝導性を示すか、あるいは非導電性である。ステントに対する多くの医療上の使用において、そのように向上された物理的および化学的性質は有益となり得る。本発明の一実施形態は、生体適合性材料を必要とする、他の材料から成る部品と組み合わされた少なくとも1つのアモルファス金属合金を備える管腔内人工装置を検討するものである。本発明の本実施形態は、1つまたは複数のアモルファス金属合金を有していてよい。そのような合金によって、引張強さの向上、弾性変形性質、及び腐食の可能性の低下が当該装置にもたらされる。
【0065】
金属ガラスとしても知られるアモルファス金属合金は、長距離結晶構造を有しない無秩序金属合金である。他の多くのアモルファス金属合金組成物が知られており、2元系、3元系、4元系、及び5元系合金でさえも含んでいる。アモルファス金属合金とその特性は、数多くの考察の対象となってきた(例えば、アモルファス金属合金、F.E.Luborsky編集、Butterworth&Co、1983年、及び引用文献を参照)。ある実施形態においては、アモルファス金属合金は半金属を含有していてよく、例えばシリコン、ホウ素およびリンであり、それらに限定されるものではない。アモルファス金属合金の一つとして考えられるのは、Fe−Cr−B−P合金である。他の多くの類似する合金が好適であり、当業者に公知である。
【0066】
本発明のステントはここに記載するように、連続的な熱間押し出し法によって形成されたアモルファス金属合金を含んでよく、それが有する物理的および化学的特性により、医療機器における好ましい使用候補となる。例えば、アモルファス金属合金は、従来の結晶あるいは多結晶金属の対応物と比べると、10倍もの高い引張強さを有することが可能である。また、アモルファス金属合金は10倍広い弾性域、即ち、永久変形が生じる前の局所的なひずみの領域を有することが可能である。これらは、医療装置において重要な特性であり、体内で繰り返し変形させられる装置の耐疲労性寿命の延長をもたらす。さらに、これらの特性によって、従来の大型の対応物と同等の強度を有していながら、より小型あるいは薄型である装置を作製することが可能となる。
【0067】
別の実施形態においては、当該装置は1つまたは複数の非アモルファス金属を含んでいてよい。例えば、当該装置はステンレス鋼、コバルトクロム(“CoCr”)、NiTi、あるいはその他の公知の材料によって構成される部品を有していてよい。NiTiに関しては、NiTiの平板シートを所望のパターンにエッチングすることにより、検討されている当該部品を形成してよい。その平板シートの形成は、エッチングされたシートを管形状に丸めて、任意でシートの両縁をともに溶接することで、管状ステントを形成する。特定の利点を有するこの方法の詳細については、米国特許第5836964号および第5997973号に記載されており、参照することによりここに明示的に組み込まれる。チューブをレーザカットしたりエッチングしたりするような、当業者に公知の他の方法もまた、本発明のステントを構成するのに用いられてよい。形状記憶特性および/または超弾性を利用するため、NiTiのステントは当業者に公知であるように例えば熱処理されてよい。
【0068】
本発明のアモルファス金属合金あるいは他の非アモルファス金属部品は、管腔内ステントを形成するために、アモルファス金属あるいはそれ以外の、その他の部品と組み合わされたり、組み立てられてもよい。例えば、アモルファス金属合金あるいは他の非アモルファス金属部品は、生体適合性ポリマー等のポリマー層や、治療薬(例えば、ここに記載されるような治療促進剤)、または別の金属あるいは金属合金品(結晶あるいはアモルファス微細構造のいずれかを有する)と組み合わされてよい。
【0069】
アモルファス金属合金または他の非アモルファス金属部品を他の部品と混合、あるいは接合する方法は、当業者に公知である方法によって実現可能である。特に、非アモルファス金属の場合、螺旋コイル状の主要ステント部品は隣接する螺旋状コイルに対してその両端において固定、あるいは別の方法では係合や接合されてよい。例えば、主要ステント部品の一部あるいは全てを被覆する生体適合性ポリマー層が、管腔での位置決めおよび拡張のため管形状に螺旋状コイルを固定するのに用いられてよい。他の固定方法の例には、物理的な接合(例えば、編み上げ、織り込み、圧着、結束、及び圧入)や接着方法(例えば、糊付け、浸漬塗装、及び吹付け塗装)による接合が含まれ、これらに限定されるものではない。これら方法を組み合わせることも、本発明によって検討されている。
【0070】
本発明のさらなる利点として、生体適合性構造体は細胞の増殖を防止あるいは軽減させ、または再狭窄を低減させる薬とともに埋設されてよい。そのような薬の例としては、例えばシロリムス、ラパマイシン、エベロリムス、パクリタキセル、及びこれらの類似体を含み、これらに限定されるものではない。さらに、管腔壁にステントが留置された後より長期にわたって有益な、薬剤などの活性あるいは不活性表面成分を含むようにステントが処理されてよい。
【0071】
アモルファス金属合金を作製する様々な方法が当技術分野では公知であり、その例を以下にさらに記載する。好適な実施形態を図示および記載することが可能であるが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更や代替が可能である。したがって、本発明はここに例として記載されるものであって、限定させるものではないことは明らかである。
【0072】
アモルファス金属合金の作製方法
アモルファス金属合金を形成するのに、多くの異なる方法を用いてよい。本発明による医療機器を作製する好適な方法では、熱間押し出しとして一般的に知られているプロセスを用い、ワイヤやストリップ等の連続的な部品が一般的に作製される。当該プロセスでは、アモルファス金属合金に生体非適合性や毒性をも付与し得るバルク処理に通常用いられる添加物が含まれない。このようにして、当該プロセスは生体適合性の高い材料を作製することができる。好適な実施形態においては、当技術分野では冷却ブロック溶融紡糸として知られる熱間押し出しの一種によって、連続的なアモルファス金属合金品が製作される。本発明の医療機器に適したアモルファス金属合金品を作製する2つの一般的な冷却ブロック溶融紡糸方法には、自由噴流溶融紡糸と平面流鋳造とがある。自由噴流プロセスにおいては、溶融合金がガス圧力下でノズルから噴射されて自由溶液噴流が形成され、基板表面に衝突する。平面流方法では、溶液噴射坩堝が移動する基板表面の近くで保持されることによって、溶液がノズルと移動する基板とに同時に接触する。この同伴溶液流が溶液流の摂動を抑制し、それによりリボンの均一性を向上させる(例えば、Liebermann,H等、“アモルファス合金技術”、Chemtech、1987年6月、を参照)。これらの技術に対して適当な基板表面としては、当技術分野で公知のように、対のローラ間およびベルト上での、ドラムやホイールの内側やホイールの外側が挙げられる。
【0073】
本発明の医療機器のアモルファス金属合金部品を作製するための好適な平面流鋳造および自由噴流溶融紡糸方法は、米国特許第4142571号、第4281706号、第4489773号、及び第5381856号に記載されており、これら全ては参照することにより完全にここに組み込まれる。例えば、平面流鋳造プロセスは、融解温度より高い50〜100度の温度まで合金を容器内で加熱して溶融合金を形成し、約0.5〜2.0psigの圧力まで当該容器を加圧することで、開口部を介して溶融合金を押し出し、冷却基板に溶融合金を衝突させる、という手順を備えていてよく、冷却基板の表面は開口部を300〜1600メートル/分の間の速さで通過し、開口部から0.03〜1ミリメートルの間に位置する。自由噴流溶融紡糸を含む実施形態においては、当該プロセスは、合金の融解点よりも高い温度まで合金を容器内で加熱し、容器の開口部を通じて溶融合金を噴射して1〜10メートル/秒の間の速さの溶解流を形成し、冷却基板に溶融流を衝突させる、という手順を備えていてよく、冷却基板の表面は12〜50メートル/秒の間の速さで開口部を通過する。
【0074】
溶融金属を冷却する(例えば、冷却ブロック溶融紡糸)以外に、アモルファス金属合金は、基板への金属のスパッタリング・蒸着、イオン注入、及び固相反応によって形成することが可能である。これらの方法にはそれぞれ利点と不利点がある。特定の作製方法の選択は、例えばプロセスの適合性や、アモルファス金属合金品の望ましい最終的な用途等の、多くの可変要素によって決まる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、ステント用のアモルファス金属合金部品が使用されてよい。これらの部品は様々な方法で提供されてよい。例えば、当該部品はアモルファス金属合金材料(例えば、ワイヤ、リボン、棒、管、円盤等)を機械加工あるいは処理することで作製してよい。冷却ブロック溶融紡糸によって作製されたアモルファス金属合金材料はそのような目的に用いることができる。
【0076】
上述したものは、実施形態の説明例を代表するものに過ぎないことは明らかである。読者の便宜上、上述したものは、可能である実施形態の代表的な例、本発明の原理を教示する例に焦点を合わせたものである。異なる実施形態を部分的に様々に組み合わせた結果、その他の実施形態がなされてよい。この記述は、可能である変更の全てを余すところなく列挙することを目的としたものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図9
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図14A