(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429131
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】膣症を予防および治療するために塩および糖を有効成分として含む皮膚外用組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 33/14 20060101AFI20181119BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20181119BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20181119BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
A61K33/14
A61K31/7004
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/107
A61P15/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-172680(P2016-172680)
(22)【出願日】2016年9月5日
(62)【分割の表示】特願2012-534113(P2012-534113)の分割
【原出願日】2010年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-25078(P2017-25078A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0099333
(32)【優先日】2009年10月19日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0097774
(32)【優先日】2010年10月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512093907
【氏名又は名称】チェ,ウォンソン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォンソン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ドンヨル
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06632796(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0105963(US,A1)
【文献】
特表2008−503576(JP,A)
【文献】
Arch. Gynecol.,1929年,Vol.136,pp.48-65
【文献】
Infect. Immun.,1999年,Vol.67 No.10,pp.5170-5175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/14
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/107
A61K 9/12
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 31/7004
A61P 15/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膣のアルカリ化を治療または予防するために、薬学的に許容される担体と共に、1:1〜3(w/w)の比率の塩化ナトリウムおよびブドウ糖の組み合わせを有効成分として有効量含む、膣投与のための組成物。
【請求項2】
該組成物は、洗浄液、ゲル、ゼリー、フォーム、クリーム、軟膏、ローション、バルム剤、パッチ、ペースト、スプレー液、エアロゾルから成るグループから選択される局所用製剤、または、膣錠剤、膣カプセル剤、膣フィルム、膣スポンジ、タンポン、もしくはパッドから成るグループから選択される挿入製剤である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
人間を除く哺乳動物における膣アルカリ化を治療するための膣投与用の薬剤の製造における、1:1〜3(w/w)の比率の塩化ナトリウムおよびブドウ糖の組み合わせの有効成分としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膣症を予防および治療するために塩および糖を有効成分として含む皮膚外用組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膣炎は、特に妊娠期間に膣において発生し、腟の分泌物、炎症、および刺激の他に、外陰部または膣の痒みの原因となる疾患である。また、よく見られる3つの膣の感染症および疾患も膣炎の主な原因である。3つの一般的な膣感染症としては、細菌性膣炎、膣カンジダ症、およびトリコモナス症が挙げられる。
【0003】
ヒトの膣には、例えば約10
4個/ml(膣液)を超える数のラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)およびラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)などの乳酸桿菌属(Lactobacillus spp)等、様々な微生物、酵母、および細菌が定着しており、それらはpHが4.5−5.1の範囲の弱酸性環境を提供しているため、ヒトの膣を微生物感染から保護することが可能である。またヒトの膣は、女性および彼女らの新生児の健康に多大な影響を与え得る非常に多目的な臓器である。淋菌(Neiserria gonorrhea)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma species)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、ストレプトコッカス(Streptococcus species)、大腸菌(Escherichia coli)、クラミジア‐トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、および腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)などの多数の重要な病原体が、膣微小環境に存在することが報告されている。
【0004】
特に、最もよく見られ、かつ有害な膣症である細菌性膣炎(BV)は、BVを有する女性において悪臭を放つ膣分泌物または局所刺激の原因となり、かつ早産、骨盤内炎症性疾患、およびHIV感染獲得を含む、いくつかのより重大な有害転帰に関連している。細菌性膣炎(BV)疾患を有する女性は、多数の乳酸桿菌属(L.inersを除く)を喪失し、様々な嫌気性細菌および通性嫌気性細菌を獲得している。BVを有する女性からの膣液のグラム染色により、グラム陽性桿菌が喪失し、グラム陰性およびグラム不定性の球菌および桿菌がそれらに取って代わることが示されている。BVを有する被験者からの膣液の培養により、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、ならびにペプトストレプトコッカス(Peptosterptococcus)属、モビルンカス(Mobiluncus)属、バクテロイデス(Bacterioides)属、プレボテラ(Prevotella)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、モビルンカス(Mobiluncus)属、およびマイコプラズマ(Mycoplasma)属を含むその他の細菌の混合物が通常得られる。(Sujatha srinivasan、およびDavid N.Fedricks、Review Article、The Human Vaginal Bacterial Biota and Bacterial Vaginosis,Interdisciplinary Perspectives on Infectious Diseases、Vol.,2008,Article ID 750479,p1−3)。
【0005】
これまでに、例えば、メトロニダゾールなどの広域抗生物質の経口投与など、膣炎の治療を目的とした効果的な治療法を開発するための研究が行われてきた。しかしながら、該治療によって抗生物質に対する不耐性、長期的な投与の場合における全身毒性、および膣における正常細菌叢の破壊の可能性などの多数の不利益が示され、それは乳酸桿菌属数の減少、膣のpHの上昇、および嫌気性細菌の増殖などの二次性合併症を引き起こし得る。
【0006】
したがって、膣症を治療するために安全な長期治療活性を示す新規の治療組成物を開発することが必要とされている。
【0007】
しかしながら、上記の引用文献のいずれにも塩および糖の化合物の膣症に対する治療効果は、報告または開示されていない。開示の文献は本明細書において参照により援用される。
【0008】
塩および糖の化合物の膣症に対する阻害効果を調査するために、本発明の発明者は、膣症の主因である特にガードネレラ・バジナリスに対する抗菌性試験を実施した。最終的に、化合物が試験において強力な抗菌活性を示すことを確認して本発明を完成させた。
【0009】
本発明のこれらおよびその他の目的は、以下に提供される本発明の詳細な開示から明らかとなろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sujatha srinivasan and David N.Fedricks、Review Article、The Human Vaginal Bacterial Biota and Bacterial Vaginosis,Interdisciplinary Perspectives on Infectious Diseases、Vol.,2008,Article ID 750479,p1−3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、膣症を治療または予防するために、薬学的に許容される担体と共に有効量の塩および糖の化合物を有効成分として含む皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、薬剤の製造における塩および糖の化合物の使用を提供することであり、該薬剤は哺乳動物における膣症を治療または予防するために使用される。
【0013】
さらに、本発明の他の目的は、哺乳動物における膣症を治療または予防する方法を提供することであり、該方法はその薬学的に許容される担体と共に有効量の塩および糖の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の一実施形態において、本発明は膣症を治療または予防するために、薬学的に許容される担体と共に有効量の塩および糖の化合物を有効成分として含む皮膚外用組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、薬剤の製造における塩および糖の化合物の使用を提供し、該薬剤は哺乳動物における膣症を治療または予防するために使用される。
【0016】
さらに、本発明は、哺乳動物における膣症を治療または予防する方法を提供し、該方法はその薬学的に許容される担体と共に有効量の塩および糖の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0017】
本明細書において定義される用語「塩」は、大韓民国またはその他の国原産の天然塩または処理塩、好ましくは純塩または融解塩、より好ましくは、200〜2000℃、好ましくは800〜1200℃の範囲の温度にて、2時間〜7日間、好ましくは12時間〜48時間の間、天然塩を融解させて調製される融解塩を含む。
【0018】
本明細書において定義される用語「糖」は糖化合物、好ましくは、ブドウ糖、フルクトース、マンノース、ガラクトースなどの単糖、またはラクトース、マルトース、ショ糖などの二糖、より好ましくはブドウ糖、より好ましくは結晶ブドウ糖を含む。
【0019】
本明細書において定義される用語「塩および糖の化合物」は、混合比率が1:1−30(w/w)、好ましくは1:1−10(w/w)、より好ましくは1:1−5(w/w)、最も好ましくは1:1−3(w/w)である塩と糖の化合物を含む。
【0020】
本明細書において定義される用語「膣症」は、細菌性膣炎、真菌性膣炎、およびトリコモナス腟炎、好ましくは細菌性膣炎、より好ましくはガードネレラ・バジナリスに起因する細菌性膣炎から選択される膣症を含む。
【0021】
本発明の組成物は、該組成物の全重量を基にして、前記組成物の約0.1〜20重量%の量のその他の抗生物質、色素、香味料などをさらに含んでいてもよい。
【0022】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0023】
塩および糖の化合物を含む発明組成物は、以下の手順に従って詳細に調製することが可能である。
【0024】
例えば、本発明における発明の洗浄化合物は以下のように調製することが可能である。第1段階として、大韓民国およびその他の国原産の天然塩または処理塩を、200〜2000℃、好ましくは800〜1200℃の範囲の温度にて、2時間〜7日間、好ましくは12時間〜48時間の間融解させて融解塩を得る。該融解塩を、糖化合物、好ましくは、ブドウ糖、フルクトース、マンノース、ガラクトースなどの単糖、またはラクトース、マルトース、ショ糖などの二糖、より好ましくはブドウ糖、より好ましくは結晶ブドウ糖と、1:1−30(w/w)、好ましくは1:1−10(w/w)、より好ましくは1:1−5(w/w)、最も好ましくは1:1−3(w/w)の混合比率にて混合して発明化合物を得る。該化合物を、必要に応じて、適当量のその他の抗生物質、色素、香味料などのその他の添加物と共に、適当量の蒸留水、緩衝剤、または等張液に融解させて発明の洗浄組成物を得る。
【0025】
したがって、本発明の他の実施形態では、本発明は、第1段階として、大韓民国およびその他の国原産の天然塩または処理塩を、200〜2000℃、好ましくは800〜1200℃の範囲の温度にて2時間〜7日間、好ましくは12時間〜48時間の間融解させて融解塩を得て、該融解塩を、糖化合物、好ましくは、ブドウ糖、フルクトース、マンノース、ガラクトースなどの単糖、またはラクトース、マルトース、ショ糖などの二糖、より好ましくはブドウ糖、より好ましくは結晶ブドウ糖と、1:1−30(w/w)、好ましくは1:1−10(w/w)、より好ましくは1:1−5(w/w)、最も好ましくは1:1−3(w/w)の混合比率にて混合して発明の化合物を得て、該化合物を、必要に応じて、適当量のその他の抗生物質、色素、香味料などのその他の添加物と共に、適当量の蒸留水、緩衝剤、または等張液に融解させて発明の洗浄組成物を得る段階を含む、発明の洗浄組成物を調製する方法を提供する。
【0026】
上記の方法によって調製された塩および糖の化合物を含む発明組成物は、アシドフィルス菌の増殖を促進することで膣の酸性度を維持する乳酸の再生産を促進することのみならず、膣症の主因である特にガードネレラ・バジナリスへの強力な抗菌活性を示すことが証明された。
【0027】
したがって、発明の皮膚外用剤は、膣症を治療または予防するために、薬学的に許容される担体と共に上記の方法によって調製された塩および糖の化合物を含むものである。
【0028】
さらに、本発明は、薬剤の製造における上記の方法によって調製された塩および糖の化合物の使用を提供し、該薬剤は哺乳動物における膣症の治療または予防のために使用される。
【0029】
さらに、本発明は、哺乳動物における膣症を治療または予防する方法を提供し、該方法はその薬学的に許容される担体と共に上記の方法によって調製された有効量の塩および糖の化合物を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0030】
本明細書において定義される用語「予防」は、これらの疾患にかかりやすい哺乳動物におけるこのような疾患の阻害を意味し、本明細書において使用される用語「治療」は、(a)疾患または疾病の進行の阻止、(b)疾患または疾病の軽減、または(c)疾患または疾病の除去、を意味する。
【0031】
発明組成物は、使用する方法に応じて、従来の担体、補助剤、または希釈剤をさらに含み得る。前記担体は、限定されるものではないが、使用および応用する方法に応じて適した物質として使用されることが好ましい。適した希釈剤はRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing co、ペンシルベニア州イーストン所在)の本文中に記載されている。
【0032】
以下、次の製剤方法および賦形剤を単に例示し、それは本発明を決して限定するものではない。
【0033】
本発明による組成物は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム(acacia rubber)、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油などの薬学的に許容される担体、補助剤、または希釈剤を含む発明の皮膚外用組成物として提供され得る。製剤は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、浸潤剤、着香料、乳化剤、防腐剤等をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、当技術分野で周知のあらゆる手法を用いて患者に投与した後に、有効成分が即時に、持続的に、あるいは遅延して放出するよう製剤化してもよい。
【0034】
例えば、本発明の組成物は、蒸留水、pH緩衝剤、油、プロピレングリコール、または当技術分野において通常使用されるその他の溶媒に融解させることが可能である。担体の適した例としては、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。局所投与については、本発明の組成物を軟膏およびクリームの形態で製剤化することが可能である。
【0035】
本発明における発明の皮膚外用組成物は、例えば、洗浄液、ゲル、ゼリー、フォーム、クリーム、軟膏、ローション、バルム剤、パッチ、ペースト、スプレー液、エアロゾル等の局所用製剤、または、膣錠剤、膣カプセル剤、膣フィルム、膣スポンジ、タンポン、パッド等の挿入製剤など、好ましくは、膣錠剤組成物、または洗浄液組成物である、あらゆる形態で調製可能である。
【0036】
したがって、本発明は、膣症を治療または予防するために、薬学的に許容される担体と共に塩および糖の化合物を含む洗浄溶液組成物または膣錠剤組成物を提供するものである。
【0037】
本発明の組成物は、医薬剤形において、その薬学的に許容される塩の形態で使用してもよく、単独で、または適当な結合体の形態で、および当技術分野において周知の抗菌化合物、または植物、動物、もしくは鉱物由来の抽出物などの他の薬学的な有効成分と組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本発明の発明組成物の望ましい投与量は、被検体の状態および体重、重症度、薬物形態、投与の経路および期間により変化し、当業者が選択してよい。しかしながら、望ましい効果を得るために、本発明の組成物を体重/日で、0.001−1000mg/kg、好ましくは0.01−100mg/kgの範囲の量で投与することが一般的に推奨される。投与量を1日当たり1回または数回に分けて投与してもよい。組成物に関して、発明化合物は、組成物の全重量を基にして、0.01〜99.99重量%、好ましくは0.1〜99重量%、より好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは5〜10重量%の間で存在すべきである。
【0039】
本発明の組成物は、様々な経路を介して哺乳動物(ラット、マウス、家畜、またはヒト)などの対象動物に投与可能である。全ての投与方法が考慮されており、例えば、投与は、外部的、局所的、経口的、経直腸的、または静脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射、髄腔内注射、硬膜外注射、もしくは脳室内注射によって、好ましくは外部的または局所的に実施可能である。
【0040】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の組成物、使用、および調製において様々な修正および変更が可能であることは当業者に明らかであろう。
【発明の効果】
【0041】
塩および糖の化合物を含む発明組成物は、アシドフィルス菌の増殖を促進することで膣の酸性度を維持する乳酸の再生産活性を促進することのみならず、膣症の主因である特にガードネレラ・バジナリスへの強力な抗菌活性を示した。したがって、発明化合物は膣症の治療または予防のために有用であり、かつ膣アルカリ化を患う患者の膣のpHを減少させるために有用であろう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の実施例および実験例は、本発明の範囲を限定することなく本発明をさらに例示することを目的とする。
【実施例1】
【0043】
発明の形態
1−1.融解塩の調製
900mgの天然塩(シナン、大韓民国、
www.nhshinansalt.com)を、加熱器(MS−E104、TOPS Co. Ltd.)を用いて850−1000℃にて24時間融解させて、400mgの融解塩を得た。
【0044】
1−2.純粋塩の調製
400mgの純粋塩(NaCl、F.W.58.44)を、商社(SPPO−91701、Duksan company、
www.duksan.co.kr)から購入した。
【0045】
1−3.ブドウ糖の調製
800mgのブドウ糖(結晶ブドウ糖)を、商社(Samyang genex Corp.,
www.genex.co.kr)から購入した。
【0046】
1−4.化合物の調製(1)
上記の段階によって調製した400mgの融解塩および800mgのブドウ糖を完全に混合して、1200mgの発明化合物(以下「SG1」と表す)を得た。
【0047】
1−5.化合物の調製(2)
上記の段階によって調製した400mgの純塩および800mgのブドウ糖を完全に混合して、1200mgの発明化合物(以下「SG4」と表す)を得た。
【0048】
化合物を−75℃の冷凍機に保存して、使用前に蒸留水に融解して以下の実験に使用した。
【実施例2】
【0049】
発明の膣錠剤組成物の調製
400mgの融解塩および800mgのブドウ糖から成る実施例1で調製した化合物を2mgのステアリン酸マグネシウムと混合し、錠剤化装置(KT2000、Kumsungkigong Co. Ltd)を用いて発明の膣錠剤組成物(以下「SG2」と表す)に製剤化した。
【実施例3】
【0050】
発明の膣洗浄溶液組成物の調製
400mgの純塩および800mgのブドウ糖から成る実施例1で調製した化合物を含む膣洗浄溶液組成物を、表1に示す以下の成分と混合し、48時間撹拌して調製した(以下「SG3」と表す)。
SG3溶液(100ml)
【0051】
【表1】
【0052】
参考例1.調製および試薬
1−1.
実験株
以下の試験では、(1)アシドフィルス菌株(KRIBB寄託番号:KCTC 1120)および(2)ガードネレラ・バジナリス株(KRIBB寄託番号:KCTC 5096)の2株を、KCTC(KRIBB(大韓民国生命工学研究院)の遺伝子銀行)から調達し、嫌気パウチ法(GasPak(登録商標)、EZ Pouch System)に従って、液体培地(チオグリコレート培地、DIFCO(登録商標))において37℃で、または固体培地(血液寒天培地)において37℃で培養した。
【0053】
1−2.
材料
実施例1において調製した発明化合物(SG1)を試験試料として使用し、乳酸(Fluka Co.,ACS試薬、85−90%、L−乳酸/水)を実験に使用した。
【0054】
実験例1.アシドフィルス菌の成長に対する効果
実施例1において調製した発明化合物(SG1)のラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の成長に対する効果を試験するために、文献(Choi,J.G.ら、Antibacterial activity of Ecklonia cava against methicillin−resitant Staphylococcus aureus and Salmonella spp.,Foodborne Pathog.Dis.,2010(Apr.):
7(4),pp435−441)に開示の手順に従って以下の試験を実施した。
【0055】
新しい血液寒天培地に接種したアシドフィルス菌株(KRIBB寄託番号:KCTC 1120)を10
5/mlの濃度で液体培地(チオグリコレート培地、DIFCO(登録商標))に添加して37℃で培養し、様々な濃度の試験試料、すなわち0mg/ml(陰性対照)、0.001mg/ml、0.1mg/ml、および10mg/mlの試験試料を液体培地中で処理した。光学濃度(OD)値を光度計(Densimat、50015−PONTE A EMA(F1);Biomerieux Italia S.P.A)を用いて決定し、処理から4、8、12、および24時間後に株の成長を確認した。
【0056】
その結果、表2において見られるように、発明化合物SG1で処理した試験試料グループは、膣環境におけるpHを維持する乳酸の再生産、およびアシドフィルス菌株の成長に対して増大した効果を示した。
【0057】
アシドフィルス菌の成長に対する効果
【0058】
【表2】
【0059】
実験例2.ガードネレラ・バジナリス株の成長に対する効果
実施例1において調製した発明化合物(SG1)の、膣症の主因であるガードネレラ・バジナリス株の成長に対する効果を試験するために、文献(Choi,J.G.ら、Antibacterial activity of Hylomecon hylomeconoides against methicillin−resitant Staphylococcus aureus,Appl.Biochem.Biotechnol.,2010(Apr.):
160(8),pp2467−2474)に開示の手順に従って以下のディスク拡散試験を実施した。
【0060】
新しい血液寒天培地に接種したガードネレラ・バジナリス株(KRIBB寄託番号:KCTK 5096)に、20マイクロリットルの様々な濃度の乳酸、すなわち、0.1mg/ml、1mg/ml、10mg/ml、100mg/ml、および1,000mg/mlの乳酸で処理した6mmのディスクを添加して24時間培養した。各ディクスの阻害直径(mm)を決定した。
【0061】
膣症は、乳酸桿菌属の成長の減少によって引き起こされる嫌気性細菌の過剰成長により発症する。したがって、ガードネレラ・バジナリス株を乳酸処理するとディスクにおいて有効阻害領域が形成され、それは乳酸の再生産が膣症の主因であるガードネレラ・バジナリス株の成長を阻害しているためと考えられる。
【0062】
結果としては、表3に見られるように、発明化合物のSG1で処理した試験試料グループは量に依存してガードネレラ・バジナリス株の成長を強く阻害した。したがって、発明化合物であるSG1はガードネレラ・バジナリスの成長に対して強い阻害効果を示すため、膣症を治療または予防するために有用であろう。
ガードネレラ・バジナリス株の成長に対する効果
【0063】
【表3】
【0064】
実験例3.簡易臨床試験(1)
大韓民国に在住の20歳〜50歳の範囲における、膣症を患う35人の患者および65人の正常な女性から成る100人のボランティアに、実施例2で調製した1200mgの膣錠剤組成物(SG2)を1日に1回5日間膣内に投与し、発明組成物の効果において直接的な調査を実施した。
【0065】
(A)不快臭に対する阻害効果、(B)爽快感、(C)皮膚掻痒に対する軽減効果、に対する調査結果を4つのカテゴリー、すなわち、各内容の強度に応じて(1)非常に満足、(2)満足、(3)普通、および(4)不満に分類し、結果を表4に示した。
【0066】
【表4】
【0067】
その結果は、表4に見られるように、発明化合物のSG2を用いて治療した試験グループ間における94%を超える被験者が(A)不快臭に対する阻害効果において満足し、発明化合物のSG2を用いて治療した試験グループ間における86%を超える被験者が(B)爽快感において満足した。
【0068】
さらに、発明化合物のSG2を用いて治療した試験グループ間における85%を超える被験者が(C)皮膚掻痒に対する軽減効果において満足した。したがって、発明化合物であるSG2は膣症を治療または予防するために有用であろう。
【0069】
実験例4.簡易臨床試験(2)
大韓民国に在住の20歳〜50歳の範囲における、膣症を患う42人の患者および58人の正常な女性から成る100人のボランティアに、実施例3で調製した200mlの膣洗浄組成物(SG3)を膣の洗浄のために1日に1回5日間外部から投与し、発明組成物を用いた治療の(A)前と(B)後の間における膣のpHの相違をpHメーター(MP−103、www.yuyuinst.co.kr)を用いて決定した。
pHの相違
【0070】
【表5】
【0071】
その結果、表5に見られるように、発明組成物を用いて治療する前の82%の試験グループの膣のpHは5.5を超える値に達していたが、発明組成物を用いて治療した後の89%の試験グループでは正常のpH範囲に達した。
【0072】
したがって、発明の洗浄組成物であるSG3は膣のアルカリ化を患う患者の膣のpHを減少させるために有用である可能性が証明された。
【0073】
本発明は上記のように記載されているが、様々な方法で変更し得ることは明らかであろう。このような変更は本発明の精神および範囲から逸脱したものとは見なされず、当業者に明らかであろう全てのこのような修正は以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
塩および糖の化合物を含む発明組成物は、アシドフィルス菌の増殖を促進することで膣の酸性度を維持する乳酸の再生産活性を促進することのみならず、膣症の主因である特にガードネレラ・バジナリスへの強力な抗菌活性を示した。したがって、発明化合物は膣症の治療または予防のために有用であり、かつ膣のアルカリ化を患う患者の膣のpHを減少させるために有用であろう。