(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて酸性条件で反応させる、縮合物の製造方法。
得られた縮合物が、重量平均分子量が2500以上であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける分子量8218に相当するピーク強度(P1)と分子量2685に相当するピーク強度(P2)の比(P1)/(P2)が0.1以上を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の縮合物の製造方法。
ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて酸性条件で反応させて得られた縮合物を含有する分散剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ヒドロキシアセトンは市販品を使用できる。
天然物由来のヒドロキシアセトンとして、油脂から得られるグリセリンを酸化することによって得られたヒドロキシアセトンを用いることができる。
【0013】
ホルムアルデヒドは市販品を使用できる。
ホルムアルデヒドは、例えば37質量%水溶液を用いることができる。
天然物由来のホルムアルデヒドとして、メタノールの空気酸化によって得られたホルムアルデヒドを用いることができる。またメタノールは、木材由来である木酢液を蒸留することで得られる。
【0014】
アンモニアは市販品を使用できる
アンモニアは、例えば28質量%水溶液を用いることができる。
天然物由来のアンモニアとして、窒素と水素から製造するハーバー・ボッシュ法によって得られたアンモニアを用いることができる。
【0015】
亜硫酸塩は市販品を使用できる。
亜硫酸塩は、亜硫酸アルカリ金属塩が挙げられる。例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
天然物由来の亜硫酸塩として、天然物である硫黄鉱物を酸化させて得られた亜硫酸塩を用いることができる。
【0016】
本発明の製造方法において、ホルムアルデヒドの仕込み比は、ヒドロキシアセトン1.0モルに対して、1.5モル以上、10.0モル以下であり、好ましくは2.0モル以上、より好ましくは4.5モル以上、そして好ましくは7.0モル以下、より好ましくは5.5モル以下である。
【0017】
本発明の製造方法において、アンモニアの仕込み比は、ヒドロキシアセトン1.0モルに対して、0.7モル以上、5.0モル以下であり、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは0.9モル以上、そして好ましくは3.0モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0018】
本発明の製造方法では、ホルムアルデヒド及びアンモニアを水系溶媒中で放出できる化合物を、ホルムアルデヒド及びアンモニアの供給源として用いることができる。具体的には、天然原料由来ではないが、ポリアミンを用いることができる。ポリアミンとしては、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられ、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。理論的には、ヘキサメチレンテトラミン1モルからは、6モルのホルムアルデヒドと4モルのアンモニアが発生する。ホルムアルデヒド及びアンモニアを水系溶媒中で放出できる化合物を用いる場合は、ホルムアルデヒド及びアンモニアの発生量を考慮してその仕込み量を調整する。
【0019】
本発明の製造方法において、亜硫酸塩の仕込み比は、ヒドロキシアセトン1.0モルに対して、0.25モル以上、0.75モル以下であり、好ましくは0.3モル以上、より好ましくは0.4モル以上、より好ましくは0.6モル以下である。
【0020】
本発明の製造方法では、反応を酸性条件で行う。酸性条件とは、pHが6以下であることをいう。反応pHは、好ましくはpH0以上、そして、好ましくはpH3以下、より好ましくはpH2以下である。このpHは、反応に関与する全成分を投入した水系溶媒のpHであり、反応開始時にこのpHの範囲に調整することが好ましい。また、アンモニアの滴下等により、反応前又は反応中にpHが上昇した場合は、適宜、後述するpH調整剤を添加して、前記pHの範囲内に維持することがより好ましい。
【0021】
本発明の製造方法では、反応を酸性条件で開始する。ヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、アンモニア、亜硫酸塩を、前記所定のモル比で水系溶媒中に仕込み、pHを酸性条件に調整した後、反応を開始することができる。
【0022】
本発明では、ヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、アンモニア及び亜硫酸塩を、所定のモル比で、水系溶媒中にて酸性条件で反応させることで、分散剤等として使用できる縮合物を製造することができる。
【0023】
水系溶媒は、水、メタノール等のアルコールが挙げられ、水が好ましい。また、水系溶媒の沸点は、反応温度を向上させ反応を進行させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0024】
必要に応じてpH調整剤を用いることができる。pH調整剤は、pHを下げる目的では好ましくは硫酸である。
【0025】
本発明の製造方法では、反応を、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下の温度で行う期間を有する。この期間の温度は、反応に関与する全成分を投入した水系溶媒の温度であってよい。
また、反応を開始する温度(以下、反応開始温度という)は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。この反応開始温度は、反応に関与する少なくとも一部の成分を投入した水系溶媒の温度であってよい。
【0026】
反応時間は、好ましくは3時間以上、より好ましくは11時間以上である。反応時間が長くなるほど高分子量体が増える傾向にある。前記温度でこの反応時間とすることがより好ましい。なお、本発明の製造方法が、反応を、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下の温度で行う期間を有する場合、この期間の長さは、好ましくは2時間以上、より好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。
【0027】
なお、本発明では、仕込み原料の実質的な反応が開始された時点を反応の始点とすることができ、例えば、仕込み原料が投入された水系溶媒の温度が40℃以上となって反応系の色が変わり始めた時点を反応の始点とすることができる。本発明では、反応に関与する全成分を投入した水系溶媒の温度が40℃以上となった時点を反応の始点とすることができる。反応温度、反応開始温度、反応時間などは、これに基づき定めることができる。
【0028】
本発明では、反応生成物が、後述する重量平均分子量の値となった時点で反応を終了することができる。また、反応生成物が、後述するピーク強度の比(P1)/(P2)の値となった時点で反応を終了することができる。また、反応生成物が、後述する重量平均分子量の値及び後述するピーク強度の比(P1)/(P2)の値の両方を満たすようになった時点で反応を終了することができる。
【0029】
本発明では、反応終了後、透析などの分離方法により、低分子量成分を除去して、反応生成物が、後述する重量平均分子量の値及び後述するピーク強度の比(P1)/(P2)の値の両方を満たすように調整することができる。低分子量成分を除去する方法としては、透析膜を用いる方法、クロマトグラフィーを用いる方法、再沈殿による方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法により得られる縮合物は、分散剤の他、接着剤等に用いることができる。分散剤の中でも、水硬性粉体用分散剤として好適である。本発明により、本発明の製造方法で得られた縮合物を含有する分散剤組成物が提供される。この分散剤組成物は、本発明の製造方法で得られた縮合物からなるものであってもよい。
【0031】
また、本発明により、ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて酸性条件で反応させて得られた縮合物を含有する分散剤組成物が提供される。
【0032】
本発明の分散剤組成物には、本発明の製造方法で述べた事項を適宜適用することができる。
【0033】
図1に、後述の実施例9及び比較例13で得られた縮合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)のチャートを示した。このチャートは、GPCの以下の測定条件で得られたものである。以下、特に断りの無い限り、本発明でのGPCは、この条件により行われたものである。
<測定条件>
装置 TOSOH EcoSEC HLC-8320GPC 東ソー(株)
カラム ガードカラムTSK guard colum
TSKgel G4000PWXL
TSKgel G2500PWXL
移動相 0.2mol/L リン酸バッファ/アセトニトリル=10/1
条件 カラム温度40℃ 流速1ml/分 サンプリングピッチ100msec 収集時間2 - 42分 検出器RI
検量線 ポリエチレングリコール 分子量12600, 6450, 1470(ジーエルサイエンス株式会社製)
(各溶出時間における分子量は検量線を用い、算出した。)
ソフトウエア EcoSEC Work Station Version1.12
【0034】
図1に示すように、実施例9の縮合物は、GPCチャートの保持時間16分(分子量8218)にピークが観察され縮合物が生成していることがわかる。本発明の製造方法で得られる縮合物は、例えば、ヒドロキシアセトン、ホルムアルデヒド、アンモニア及び亜硫酸塩が縮合し、下記一般式(1)のような新規な構造を有する縮合物を含む混合物であると推定される。
【0036】
本発明に係る縮合物は、重量平均分子量が、好ましくは2500以上、より好ましくは3400以上、更に好ましくは4000以上である。本発明に係る縮合物を、セメント分散剤として用いる場合は、重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、更に好ましくは18000以上とする。本発明に係る縮合物は、水への溶解性の観点から、重量平均分子量が、好ましくは10万以下である。この重量平均分子量は、前記測定条件でのGPCによるものである。
【0037】
また、本発明により得られた縮合物は、GPCにおける分子量8218に相当するピーク強度(P1)と分子量2685に相当するピーク強度(P2)の比(P1)/(P2)が0.1以上を満たすことが好ましい。比(P1)/(P2)は、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上である。更には、前記重量平均分子量と前記ピーク強度の比(P1)/(P2)との両方を満たすことがより好ましい。
分子量8218におけるピーク強度(P1)は、比較的高分子量の縮合物のピークであり、例えばセメント分散剤として有用な分子量の縮合物である。一方、分子量2685おけるピーク強度(P2)は比較的低分子量の縮合物及び副反応により生じる化合物のピークである。したがって、これらのピーク強度(P1)、(P2)の比(P1)/(P2)が、本発明において得られる縮合物の指標となる。
【0038】
ある条件のGPCにおいて、どの保持時間のピークが分子量8218のピーク(P1)であり、また分子量2685に相当するかは、分子量既知の単分散ポリエチレングリコールにより作成した検量線との対比により、容易に確認できる。分散ポリエチレングリコールによる検量線は、溶出時間と分子量の関係を指数近似により作成する。
なお、このピーク強度(P1)、(P2)は、相対強度であるため、GPC条件によりピーク強度(P1)、(P2)の値が変動しても、同じサンプル(分子量)であるならば、その比(P1)/(P2)の値は影響を受けない。つまり、あるサンプルについて、あるGPC条件で得られたピーク強度(P1)とピーク強度(P2)の値は、別のGPC条件で得られた(P1)、(P2)とは相違する場合があるが、比(P1)/(P2)は同じ値となる。
【0039】
ピーク強度の比(P1)/(P2)の一例を挙げると、後述の実施例9では、
図1の通り、GPCチャートの保持時間16分においてピーク強度(P1)の2.12が得られ、また、保持時間17.4分においてピーク強度(P2)の4.47が得られている。よって、比(P1)/(P2)は2.12/4.47=0.474となる。
【0040】
本発明では、前記重量平均分子量と前記ピーク強度の比(P1)/(P2)との両方を満たす縮合物が得られるまで反応を行うことが好ましい。
また、本発明では、前記重量平均分子量と前記ピーク強度の比(P1)/(P2)との両方を満たす縮合物が得られた時点を反応の終点とすることができる。
【0041】
重量平均分子量が10000以上の縮合物を得るための本発明の縮合物の製造方法として、
ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて酸性条件で反応させて、重量平均分子量が2500以上であり、そして、縮合反応時間を短縮する観点から好ましくは重量平均分子量が10000未満であり、GPCにおける分子量8218に相当するピーク強度(P1)と分子量2685に相当するピーク強度(P2)の比(P1)/(P2)が0.1以上を満たす反応生成物を得る工程(I)、及び、
工程(I)で得られた反応生成物から低分子量成分を除去して、前記反応生成物の重量平均分子量を10000以上とする工程(II)、
を有する、縮合物の製造方法が挙げられる。この製造方法には、前記の好ましい態様を適宜適用することができる。この製造方法は、セメント分散剤の製造方法として好ましい。
【0042】
本発明で得られた縮合物を、セメントを含むモルタルに配合すると、モルタルの流動性が向上する。モルタルの流動性を向上させる作用機構は、上記縮合物の疎水性及びスルホン酸基がセメント表面に吸着し、セメント表面に拡散電気二重層を形成し、粒子間斥力が大きくなるため、分散性が生じ流動性が向上すると考えられる。
【0043】
本発明の態様の一例を以下に示す。これらの製造方法には、前記の好ましい態様を適宜適用することができる。
(1) ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて、pH0以上、3以下の酸性条件で、80℃以上、100℃以下の温度で、3時間以上反応させる、縮合物の製造方法。
(2) ヒドロキシアセトン1モルに対し、ホルムアルデヒド1.5モル以上、10.0モル以下、アンモニア0.7モル以上、5.0モル以下、亜硫酸塩0.25モル以上、0.75モル以下を、水系溶媒中にて反応させる、縮合物の製造方法であって、
反応容器に、亜硫酸塩と水を含有する水系溶媒とを仕込み、ヒドロキシアセトンを滴下し、水系溶媒のpHを0以上、3以下、温度を0℃以上、40℃以下に調整し、ホルムアルデヒド及びアンモニアを投入し、水系溶媒のpHを0以上、3以下、温度を80℃以上、100℃以下に調整し、3時間以上反応させる、
縮合物の製造方法。
これら(1)、(2)の方法は、前記した工程(I)として実施できる。
【0044】
本発明で得られた縮合物は、縮合物が粒子表面に吸着し静電反発により、粒子の分散性を発現すると推定される。本発明で得られた縮合物の用途として、セメントや炭酸カルシウム等の無機粉体を含むスラリーの分散剤が挙げられる。
【実施例】
【0045】
<実施例>
実施例9
攪拌機付きガラス製反応容器に、亜硫酸水素ナトリウム18.21gをイオン交換水43.36gに溶解させ仕込み、ヒドロキシアセトン26.79gを滴下した。窒素ガスを3.3ml/(min・kg)で流し、硫酸でpHを2.0に調整した。pHは、pH試験紙で目視にて確認した。オイルバスを使用し35℃まで昇温させた後に、37質量%ホルムアルデヒド水溶液142.03gと28質量%アンモニア水溶液21.29gを、別々の滴下手段により、30分かけて滴下した。反応系の温度を35℃以下に保持しながら全量を滴下した後、再度硫酸でpH2.0(表1のpHの「昇温前」に相当)に調整後、85℃まで昇温し、11時間熟成させた。熟成終了後、室温(25℃)まで冷却し、pH1.0の実施例9の縮合物水溶液(固形分30質量%)を得た。各原料の仕込みモル比等を表1に示した。なお、表1中、pHの「反応後」は、熟成終了後、室温(25℃)まで冷却した縮合物水溶液のpHである。また、表2に、実施例9の経時的なピーク強度比(P1)/(P2)を示した。
【0046】
実施例1及び比較例1〜10
ホルムアルデヒド水溶液及びアンモニア水溶液をヘキサメチレンテトラミン代え、各原料の使用量、pH等を表1の通りとし、熟成を3時間行った以外は、実施例9と同様にして縮合物水溶液を得た。
【0047】
実施例2〜8、10〜11及び比較例11〜15
各原料の使用量、pH等を表1の通りとした以外は、実施例9と同様にして縮合物水溶液を得た。ただし、実施例2〜8及び比較例11〜15は85℃の熟成を3時間、実施例10及び11は85℃の熟成を8時間行った。
【0048】
比較例16〜18
ヒドロキシアセトンの代わりにジヒドロキシアセトン又はアセトンを用い、各原料の使用量、pH等を表1の通りとした以外は、実施例3と同様にして縮合物水溶液を得た。
【0049】
比較例19
ヒドロキシアセトンの代わりにアセトンを用いた以外は、実施例9と同様にして縮合物水溶液を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
*1 ホルムアルデヒド及びアンモニアの供給原としてヘキサメチレンテトラミンを用いた。
*2 比較例14、15は、
1H−NMRで確認したところ2,3−ブタンジオンを主成分とする生成物が得られていると推察された。水溶液の固形分及び粘度は測定しなかった。
*3 比較例16、18、19は、水溶液の固形分及び粘度は測定せず、ピーク強度比及び面積比は算出しなかった。
*4 前記条件のGPCのチャートでは、保持時間16分が分子量8218におけるピーク強度(P1)であり、保持時間17.4分が分子量2685おけるピーク強度(P2)である。
*5 S
15.7−16.3/S
17.0−17.6ピーク面積比は、前記条件のGPCのチャートの保持時間15.7分(分子量10443)から16.3分(分子量6466)の間の面積と保持時間17.0分(分子量3696)から17.6分(分子量2288)の間の面積の比である。
【0052】
【表2】
【0053】
<試験例>
〔モルタル試験1〕
表3に示す配合条件で、モルタルミキサー(株式会社ダルトン製 万能混合撹拌機 型式:5DM-03-γ)を用いて、セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りをモルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて10秒行い、縮合物水溶液及び消泡剤を含む練り水(W)を加えた。そして、モルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて120秒間本混練りしてモルタルを調製した。縮合物の添加量(対セメント質量%、固形分換算)は表4の通りとした。また、市販のナフタレン系分散剤(マイテイ150、花王株式会社製)を用いて同様にモルタルを調製した。
【0054】
表3の配合成分、また、消泡剤は以下のものである。
・水(W):上水道水(水温22℃)
・セメント(C):普通ポルトランドセメント(二種混合:太平洋セメント/住友大阪セメント=1/1、質量比) 密度3.16g/cm
3
・細骨材(S):城陽産山砂 密度2.55g/cm
3
・消泡剤:フォームレックス797、日華化学株式会社製、表3の配合に1g添加
【0055】
JIS R 5201の試験方法に従って、調製したモルタルのフローを測定した。ただし、落下運動を与える操作は行っていない。結果を表4に示した。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
実施例3、4、6、8及び9の縮合物は、添加量を調整することで、ナフタレン系分散剤と同程度の流動性が得られることがわかる。比較例13の縮合物は、モルタルフローをより大きくしたい場合に要する添加量が実施例と比べて多くなるため、硬化時間への影響が懸念されるものとなる。
【0059】
〔モルタル試験2〕
実施例、比較例の一部について、得られた縮合物を、コットンセルロース透析膜Cellu-Sep T1 Tubular Membrane(Nominal MWCO 3,500、メンブレン フィルトレーション プロダクツ社製)で透析処理し、低分子量成分を除去した縮合物を得た。低分子量成分を除去した縮合物を用いた以外は、モルタル試験1と同様の操作を行い、調製したモルタルのフローを測定した。結果を表5に示した。なお、比較として、市販のリグニン系分散剤(ポゾリスNo.70、BASF社製)について同様に透析したものも試験した。
用いたコットンセルロース透析膜は、膜の分画分子量(Molecular Weight Cut Off:MWCO)が3500であり、透析処理によって縮合物水溶液中の分子量3500以下の成分が除去されたと考えられる。具体的には、例えば、実施例9の透析前の縮合物の重量平均分子量は4984であり、透析後の縮合物の重量平均分子量は20190であった。
図2に、実施例9で得られた縮合物の透析前後のGPCのチャートを示した。
【0060】
【表5】
【0061】
低分子量成分を除去した実施例9の縮合物は、同様に低分子量成分を除去したリグニン系分散剤よりも、同一添加量で流動性が優れることがわかる。また、低分子量成分を除去した実施例9の縮合物は、表3の低分子量成分を除去しない実施例9の縮合物と比べると、添加量が約0.4質量%の場合でモルタルフローが169mmから193mmに向上した。この結果から、高分子量成分である縮合物がモルタルフローに寄与していることがわかる。