(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、スチレン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリロニトリル、シクロヘキシルメタクリレート、アクリルアミド、n−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルトルエン、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸から選択される少なくとも1種と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートから選択される少なくとも1種との共重合化合物からなる、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
前記ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合化合物からなる、請求項2に記載のインクジェット印刷用インク。
前記低温解離ブロック形イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートから選択される少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、マロン酸ジメチエル、マロン酸ジエチル及びアセト酢酸エチルから選択される少なくとも1種のブロック剤との化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷用インク。
前記グリコールエーテル系溶剤は、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールジメチルエーテルを含む、請求項5に記載のインクジェット印刷用インク。
前記分散剤は、ブロック共重合体、脂肪酸アマイド、硫酸エステル系アニオン活性剤、ポリカルボン酸ポリエステルから選択される少なくとも1種の湿潤分散剤を含む、請求項1〜8の何れかに記載のインクジェット印刷用インク。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、インクジェットヘッドに形成された多数のノズルからそれぞれインクの微細な滴を被印刷媒体の表面に吹き付けることによって、所定の文字や画像を印刷するものである。このインクジェット印刷は、紙や布などの吸収性媒体の表面への印刷だけでなく、プラスチック、ガラス、金属部材などの非吸収性媒体の表面への印刷にも多く用いられている。
【0003】
インクジェット印刷による吸収性媒体の表面への印刷に際しては、インク中の顔料などの色材の定着は吸収性媒体中への浸透ないし吸収によって行われる。これに対し、インクジェット印刷による非吸収性媒体の表面への印刷に際しては、インクが非収性媒体中へ浸透することがないため、インク中の顔料などの色材の定着は非吸収性媒体の表面に吹き付けられたインクの乾燥ないし硬化によって行われる。そのため、非吸収性媒体の表面へのインクジェット印刷用インクは、紫外線や電子線などの高エネルギー線照射によって硬化させるためのエネルギー線硬化樹脂ないし加熱により硬化させるための熱硬化性樹脂を含むものが用いられているが、密着性の観点からはエネルギー線硬化樹脂を含むものよりも熱硬化性樹脂を含むものが優れている。
【0004】
熱硬化性樹脂を含むインクジェット印刷用インクとして、例えば特許文献1(特開2004-250659号公報)には、1〜50ナノメートル範囲の平均直径を有するポリマーナノ粒子を含むとともに熱硬化性組成物を含むものが開示されている。ここでは、ポリマーナノ粒子として、重合端として少なくとも1種類の多エチレン性不飽和モノマー及び少なくとも1種類のエチレン性不飽和水性モノマーを含む付加ポリマーからなるものが使用されている。
【0005】
このうち、熱硬化性組成物としては、
(a)メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル、アクリルアミドグリコール酸;
(b)少なくとも2つのカルボン酸基、無水物基、又はそれらの塩を含み、該カルボン酸基、無水物基、又はそれらの塩が固定塩基で約35%未満の程度まで中和されているポリ酸;
(c)ジイソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびジエタノールアミンからなる群より選択される、少なくとも2つのヒドロキシル基又はヒドロキシルアミンを含むポリオール;
(d)アセトアセテート、アセトアセトアミド、シアノアセテート、シアノアセトアミド、アルキルポリグリコシドおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群より選択されるペンダント基を有する、共重合したエチレン性不飽和モノマー;
(e)少なくとも1つの未反応イソシアネート官能基を有する、共有結合した化合物;
(f)2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、および2−ホスホエチル(メタ)アクリレートを含む、少なくとも1つの、5〜100の酸価を有するイオウ又はリン含有酸基からなる、共重合したエチレン性不飽和モノマー;
(g)脂肪族ポリカルボジイミド;
(h)フルフリル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンタジエニルを含む、ディールス・アルダー反応を生じることが可能なペンダント基を有する共重合したエチレン性不飽和モノマー;並びに
(i)それらの混合物
からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが使用されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2014-065826号公報)には、少なくとも2種類以上のインクを用いたインクジェット印刷用インクセットであって、
第1のインクは、色材、1分子中にアミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの反応性官能基を2個以上有し、数平均分子量1,000未満である反応性化合物(A)、水溶性溶媒及び/又は水を含み、
第2のインクは、1分子中に前記反応性化合物(A)と反応しうる反応性官能基を有する、分子量1,000未満の反応性化合物(B)、水溶性溶媒及び/又は水を含むことを特徴とするインクジェット記録用水性インクセットの発明が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各種実験例を用いて本発明のインクジェット印刷用インクについて説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するためのインクジェット印刷用インクを説明するために例示したものであり、本発明をこれらの実験例のいずれかに限定することを意図するものではない。本発明は、これらの実験例に示したものに対して、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく、種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0017】
まず、各種実験例で使用する熱硬化性樹脂について説明する。本発明では、熱硬化性樹脂として、ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂と、低温解離ブロック形イソシアネートとを含むものを用いている。ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、塗膜形成用として作用し、低温解離ブロック形イソシアネートはヒドロキシル基を有するアクリル樹脂の硬化剤として作用する。
【0018】
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂は、ヒドロキシル基を有するビニルモノマーから、必要とされる硬度、耐光性、耐薬品性、加工性など、塗膜品質の要求に応じて各種モノマーを組み合わせて共重合することにより得ることができる。たとえば、「硬さ」が必要な場合には、スチレン、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、n−ブチルメタクリレート(n−BMA)、ビニルアセテート(VAC)、アクリロニトリル(AN)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、アクリルアミド(AM)、n−メチロールアクリルアミド(n−MAM)、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート(GA)、ビニルトルエン(VT)などの硬質モノマーを用いることにより、「加工性(可撓性)」が必要な場合には2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、イソブチルアクリレート(i−BA)、n−ブチルアクリレート(n−BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)などの軟質ポリマーを用いることにより、また、「密着性」を向上させるには、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、イタコン酸及びマレイン酸などの酸モノマーを用いることにより、それぞれ得ることができる。
【0019】
さらに、硬化剤としてのイソシアネート化合物と反応させることができるヒドロキシル基含有アクリル樹脂を得るようにするには、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)などのヒドロキシル基含有官能基モノマーを用いることにより、得ることができる。この場合も必要な「硬さ」、「加工性(可撓性)」、「密着性」などを考慮の上で、上述した各種モノマーを共重合させることによって所定のヒドロキシル基を有するアクリル樹脂を得ることができる。
【0020】
例えば、メチルメタクリレート(MMA):ブチルアクリレート(BA):メタクリル酸(MAA):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)=41:35:1:23(質量比)の組成で共重合させると、硬さと加工性のバランスが取れ、密着性にも優れたヒドロキシル基含有アクリル樹脂(アクリルポリオール)が得られ、イソシアネート化合物と反応硬化させることによって、耐薬品性や加工性また耐候性も向上する。この硬化時の反応メカニズムは、分子量の大きなアクリルポリオール間を分子量の小さなイソシアネート化合物で架橋させてゆく反応メカニズムとなる。なお、これらのヒドロキシル基を有するアクリル樹脂としては、市販のものから適宜選択して使用してもよい。
【0021】
イソシアネート化合物にある種の活性水素化合物(ブロック剤)を反応させると、常温
では安定なブロック形イソシアネートを生成する。このブロック形イソシアネートを加熱すると、ブロック剤が解離して、もとの活性なイソシアネート基を再生する。ただし、ブロック剤の種類によってブロック剤の解離温度が相違する。
【0022】
これらのブロック形イソシアネートは、常温では不活性であるが、所定温度に加熱すると、下記反応式(1)に示したようにブロック剤部分が解離してイソシアネートを形成し、このイソシアネートとヒドロキシル基を有するアクリル樹脂(R−OH)とが反応式(2)に従って共重合反応して硬化する。これらの反応式(1)及び(2)を組み合わせると、下記反応式(3)に示したように、ブロック形イソシアネートがヒドロキシル基を有するアクリル樹脂(R−OH)と共重合反応することにより硬化するものと見なせる。
【0025】
本発明における低温解離ブロック形イソシアネートとは、常温では不活性であるが、100℃以下の加熱状態でブロック剤が解離してイソシアネートが遊離するものをいう。このような低温解離ブロック形イソシアネートは、例えば上記特許文献3〜5にも示されているように、既に周知のものである。ただし、上記特許文献3〜5には、これらの低温解離ブロック形イソシアネートをインクジェット印刷用インクの成分として使用することについては何も示唆されていない。
【0026】
本発明におけるインクジェット印刷用インクに使用する低温解離ブロック形イソシアネートを構成するイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、m−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが用いられる。
【0027】
これらのイソシアネートに結合させるブロック剤としては、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系やアルコール系が知られているが、低温硬化には活性メチレン系やオキシム系が好適である。さらに好ましくは、活性メチレン系である。活性メチレン系としては、マロン酸ジメチエル、マロン酸ジエチルやアセト酢酸エチルなどが挙げられ、これらのブロック剤を用いたブロック形イソシアネートは90〜100℃で解離する。なお、オキシム系はメチルエチルケトオキシム、アセトアルドオキシムやシクロヘキサノンオキシムなどが挙げられるが、これらのブロック剤を用いたブロック形イソシアネートは通常は120〜140℃で解離する。また、ラクタム系はε―カプロラクタムが実用化されているが、このブロック剤を用いたブロック形イソシアネートは、ブロック剤を解離させるためには160℃以上の加熱が必要となる。
【0028】
また、インクジェット印刷用インクは、少なくともCMYK(青赤黄黒)の色材がインク中に混入されている。この色材としては、通常は顔料や染料が用いられる。しかし、インクジェットヘッドのノズル径は非常に細く、孔径10〜50μm程度であるので、このノズルをスムーズに色材が通過するには少なくとも、色材が溶解しているインクないし粒子径が小さい色材を使用する必要がある。
【0029】
染料は溶剤に溶解するため、インクジェット印刷用に使用するとノズル詰まりを起こし難く、また、色の濃度も高くなるが、耐久性に劣る。顔料は、溶剤中に微粒子状に分散した状態で存在しているために凝集し易く、染料の場合と比するとノズル詰まりを起こし易い。また、顔料は、濃度を高くできないために色濃度が薄いが、耐久性に優れている。そのため、屋外使用される用途では、耐久性を考慮して顔料を用いている。
【0030】
なお、インクジェット印刷用ヘッドのノズル径は約10〜50μmである。インクジェット印刷用ヘッドのメーカーの推奨値では、顔料の粒径はノズル径の1/10以下でないとノズルに詰まりが生じ易くなるとされている。このようなインクジェット印刷用ヘッドのノズル径を考慮すると、インクジェット印刷用の顔料の粒子径としては2次粒子でも平均粒径1μm以下であることが好ましいが、このような微小径の顔料が長期間均一に安定した状態で分散したインクを得ることは困難であるので、本発明のインクジェット印刷用インクとしては、目開き3μm以下の篩を通過するものを使用して、溶剤の組成などを検討することによりノズル詰まりが生じないようにしている。
【0031】
インクジェット印刷用インク中に顔料を安定した状態で分散させるためには,分散剤が必須である。この分散剤としては、市販の周知のものから実験的に適宜に選択して使用することができるが、特に、ブロック共重合体、脂肪酸アマイド、硫酸エステル系アニオン活性剤、ポリカルボン酸ポリエステルから選択される少なくとも1種の湿潤分散剤を含むものが好ましい。
【0032】
湿潤分散剤は、脱凝集タイプであり、一次粒子同士が凝集しないように作用する。そのため、インクジェット印刷用インク中に湿潤分散剤を添加すると、インクの粘度が低下して流動性が向上するので、インク中の顔料の添加量を高めることができ、高光沢で着色力が良好なインクジェット印刷用インクが得られるようになる。なお、インクジェット印刷用インク中の湿潤分散剤の含有量は、溶剤を含む全量に対して0.05〜0.2質量%である。湿潤分散剤の添加量が溶剤を含む全量に対して0.05質量%未満では湿潤分散剤の添加効果が見られず、湿潤分散剤の添加量が溶剤を含む全量に対して0.2質量%を越える場合には、湿潤分散剤の添加効果が飽和してしまうため、不経済となる。
【0033】
これらの湿潤分散剤としては、例えば、DISPERBYK(ビッグケミージャパン(株)の登録商標名)シリーズのうち、DISPERBYK−101、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−164、DISPERBYK−167、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2163などを使用し得る。
【0034】
このようなインクジェット印刷用インクに対して、印刷された表面が滑らかな状態となるようにするため、適宜にレベラー(表面調整剤)を添加することができる。このレベラーとしては市販の周知のものから実験的に最適なものを選択して使用することができる。例えば、シリコン系のレベラーとしては、ポリフローKL−400HF、ポリフローKL−700(共栄社化学(株)製)BYK301、BYK306(ビックケミージャパン(株)製)を用いることができる。アクリルポリマー系のレベラーとしては、ポリフローNo50EHF、ポリフローKL−600(共栄社化学(株)製)、BYK350、BYK354(ビックケミージャパン(株)製)を用いることができる。さらに、アセチレングリコール系の分レベラーとしては、サーフィノール104BC、サーフィノール465、オルフィンE1004(日信化学工業(株)製)を用いることができる。なお、インクジェット印刷用インク中にレベラーの添加が必要な場合は、溶剤を含む全量に対して0.1質量%程度添加すればよい。
【0035】
本発明のインクジェット印刷用インクで使用することができる顔料は、市販のものから粒径を考慮して適宜に選択して使用すればよいが、例えば、クロモファイン(商品名)赤黄(キナクリドン系、アンスラキノン系、ポリアゾ系、ベンズイミダゾロン系)、クロモファイン青(銅フタロシアニン系、異種金属フタロシアニン系)、セイカファスト(商品名)(溶性アゾ系、不溶性アゾ系)、微粒子複合酸化物系顔料などを使用し得る。
【0036】
ブロック形イソシアネートを含むインクは粘度が高くなるので、ピエゾ型インクジェットヘッドで使用するには溶剤により稀釈して粘度を下げる必要がある。なお、ピエゾ型インクジェットヘッド用インクの粘度及び表面張力に対するメーカーの推奨値は、粘度が7〜11mPa/s程度であり、表面張力は24〜32mN/m程度である。
【0037】
また、ピエゾ利用のインクジェットヘッドは、流路部分にナイロンなどの樹脂材を使用しており、エポキシ系などの接着剤を利用してヘッドが作成されている。そのためエステル系や芳香族系、ケトン系などの溶解力の強い溶剤を使うとヘッドが壊れてしまうため、溶解力の弱い、例えばアルコール系やグリコール系の溶剤を使用する必要がある。本発明のインクジェット印刷用インクでは、顔料の分散性、蒸発性等も考慮し、グリコールエーテル系溶剤を主成分とし、
酢酸エステル系溶剤との混合溶剤からなるものを用いている。
【0038】
本発明のインクジェット印刷用インクで使用し得るグリコールエーテル系溶剤としては、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、メチルポリグリコール、イソプロピルグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ペンチルグリコール、ペンチルジグリコール、2エチルヘキシルグリコール、2エチルヘキシルジグリコール、アリルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、フェニルプロピレングリコール,エチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルグリコール、ジエチルグリコール、ジブチルグリコール、ジメチルプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル
(EGMBE)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテル
(DPGMPA)が挙げられる。
【0039】
なお、本発明のインクジェット印刷用インクで使用し得るグリコールエーテル系溶剤中、特に好ましいものはエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールジメチルエーテルを同時に含むものである。
【0040】
また、本発明のインクジェット印刷用インクで
付加的に使用し得るアルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール及びフェノールが挙げられる。
【0041】
これらのアルコールの種類及び添加量を適宜に設定することにより、インクの蒸発速度や含量の溶解性ないし凝集性を適宜にコントロールすることができるようになる。なお、本発明のインクジェット印刷用インクで使用し得るアルコール系溶剤中、特に好ましいものは、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールから選択された少なくとも1種である。
【0042】
また、本発明のインクジェット印刷用インクで使用し得る酢酸エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及び酢酸ペンチルから選択された少なくとも1種が挙げられる。これらの酢酸エステル系溶剤の種類及び添加量を適宜に設定することによっても、インクの蒸発速度や含量の溶解性ないし凝集性を適宜にコントロールすることができるようになる。
【0043】
また、本発明のインクジェット印刷用インクで
付加的に使用し得る芳香族系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンから選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの芳香族系溶剤は、溶解性が非常に良好であるので、溶剤中の芳香族系溶剤の混入量を適宜にコントロールすることにより、各成分が凝集ないし析出し難くなるようにすることができる。
【0044】
さらに、本発明のインクジェット印刷用インクには、平均粒径10〜50nmのナノシリカ分散安定剤を含ませてもよい。顔料などの微細粒子の分散液にナノメーターサイズの超微粒子を分散させると顔料などの微細粒子の分散安定性が向上することは、例えば上記特許文献1にもポリマーナノ粒子を用いた例が示されているように、周知である。しかし、本願発明では、耐候性を考慮してナノシリカを用いている。また、ナノシリカとしては、粒径範囲を考慮の上で市販のものから適宜に選択して使用することができる。
【0045】
インクジェット印刷用インクに平均粒径10〜50nmのナノシリカ分散安定剤を添加すると、顔料の分散性がさらに良好となるので、顔料の添加量をより高めることができ、より高光沢で着色力が良好なインクジェット印刷用インクが得られる。なお、平均粒径10nm未満のナノシリカは径が小さすぎて製造が困難であり、また、ナノシリカの平均粒径が50nmを越えると分散安定性が低下してナノシリカ添加の効果が消失する。さらに、ナノシリカ分散安定剤の添加量は、溶剤を含む全量に対して0.3〜6.0質量%が好ましい。なお、ナノシリカ分散安定剤の添加量が溶剤を含む全量に対して0.3質量%未満ではナノシリカ分散安定剤の添加効果が表れず、ナノシリカ分散安定剤の添加量が溶剤を含む全量に対して6.0質量%を越えると,その添加効果が飽和するとともに、却って分散安定性が低下するので好ましくない。
【0046】
[実験例1]
実験例1のインクジェット印刷用インクとしては、以下のようにして調製したものを用いた。
ヒドロキシル基を有するアクリル樹脂としては、アクリデックA−801−P(不揮発分50%、OH価50、DIC(株)製)、低温解離ブロック形イソシアネートとしてはデュラネートMF−K60X(不揮発分60%、NCO6.5%、旭化成ケミカルズ(株)製)を用いてA−801−P:MF−K60X=100:58となるように混合して熱硬化性樹脂混合物を得た。顔料としては、NSP−CZ655(D)Blue(溶剤:メチルイソブチルケトン(MIBK)。日弘ビックス(株)製。以下「N1−Cyan」と表す。)を用い、熱硬化性樹脂混合物に10質量%混合した。次に混合溶剤(n−ブタノール:エチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE):ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(DPGMPE)=45:50:5(質量比))で顔料濃度が0.6質量%となるように希釈し、さらに、分散剤としてBYK220S(ビックケミージャパン(株)製)を溶剤を含む全量に対して0.10質量%、ナノシリカ分散安定剤を溶剤を含む全量に対して3質量%となるように、それぞれ添加し、超音波分散を併用してよく混合することにより、実験例1のインクジェット印刷用インク「M1−R」を得た。なお、ここではレベラーは添加していない。
【0047】
[実験例2]
実験例2のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてNSP−CZ101(D)Red(溶剤:MIBK。日弘ビックス(株)製。以下「N1−Magenta」と表す。))を用い、顔料添加量が0.7質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例2のインクジェット印刷用インク「M1−M」を得た。
【0048】
[実験例3]
実験例3のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてNSP−CZ306(D)Yellow(溶剤:MIBK、日弘ビックス(株)製。以下「N1−Yellow」と表す。))を用い、顔料添加量が0.7質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例3のインクジェット印刷用インク「M1−Y」を得た。
【0049】
[実験例4]
実験例4のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてNSP−CZ807(D)Black(溶剤:MIBK。日弘ビックス(株)製。以下「N1−Black」と表す。)を用い、顔料添加量が0.9質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例4のインクジェット印刷用インク「M1−K」を得た。
【0050】
[実験例5]
実験例5のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてインクジェット用顔料Cyan(溶剤:ブチセロアセテート。御国色素(株)製。以下「M1−Cyan」と表す。)を用い、顔料添加量が0.6質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例5のインクジェット印刷用インク「M2−C」を得た。
【0051】
[実験例6]
実験例6のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてインクジェット用顔料Magenta(溶剤:ブチセロアセテート。御国色素(株)製。以下「M1−Magenta」と表す。)を用い、顔料添加量が1.0質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例6のインクジェット印刷用インク「M2−M」を得た。
【0052】
[実験例7]
実験例7のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてインクジェット用顔料Yellow(溶剤:ブチセロアセテート。御国色素(株)製。以下「M1−Yellow」と表す。)を用い、顔料添加量が1.0質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例7のインクジェット印刷用インク「M2−Y」を得た。
【0053】
[実験例8]
実験例8のインクジェット印刷用インクとしては、顔料としてインクジェット用顔料Black(溶剤:ブチセロアセテート。御国色素(株)製。以下「M1−Black」と表す。)を用い、顔料添加量が0.6質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例8のインクジェット印刷用インク「M2−K」を得た。
【0054】
[実験例9]
実験例9のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例5と同じインクジェット用顔料Cyan(M1−Cyan)を用い、混合溶剤としてIPA:n−ブタノール:EGMBE=60:20:20(質量比)を用い、顔料添加量が3.0質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例9のインクジェット印刷用インク「M3−C」を得た。
【0055】
[実験例10]
実験例10のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例6と同じインクジェット用顔料Mazenta(M1−Magenta)を用いた以外は実験例9の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例10のインクジェット印刷用インク「M3−M」を得た。
【0056】
[実験例11]
実験例11のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例7とは別のインクジェット用顔料Yellow(御国色素(株)試作品。以下、「M2−Yellow」と表す。)を用いた以外は実験例9の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例11のインクジェット印刷用インク「M3−Y」を得た。
【0057】
[実験例12]
実験例12のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例8と同じインクジェット用顔料Black(M1−Black)を用いた以外は実験例9の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例12のインクジェット印刷用インク「M3−K」を得た。
【0058】
[実験例13]
実験例13のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例5と同じインクジェット用顔料Cyan(M1−Cyan)を用い、混合溶剤としてEGMBE:PGMME:酢酸ブチル:EGDME=20:30:10:40(質量比)を用い、顔料添加量が5.0質量%となるようにした以外は実験例1の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例13のインクジェット印刷用インク「M4−C」を得た。
【0059】
[実験例14]
実験例14のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例6と同じインクジェット用顔料Mazenta(M1−Magenta)を用いた以外は実験例13の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例14のインクジェット印刷用インク「M4−M」を得た。
【0060】
[実験例15]
実験例15のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例11と同じインクジェット用顔料Yellow(M2−Yellow)を用いた以外は実験例13の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例15のインクジェット印刷用インク「M4−Y」を得た。
【0061】
[実験例16]
実験例15のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例8と同じインクジェット用顔料Black(M1−Black)を用いた以外は実験例13の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例16のインクジェット印刷用インク「M4−K」を得た。
【0062】
[実験例17]
実験例17のインクジェット印刷用インクとしては、顔料として実験例7及び11とそれぞれ異なるインクジェット用顔料Yellow(溶剤:ブチセロアセテート。御国色素(株)試作品。以下「M3−Yellow」と表す。)を用いた以外は実験例13の場合と同様にして調製したものを用いることにより、実験例17のインクジェット印刷用インク「M4−Y2」を得た。
【0063】
[循環試験及び静置試験]
最初に循環試験装置10を用い、上述の実験例1〜17のそれぞれのインクジェット印刷用インクを用いてインクジェットヘッドに形成された多数のノズル内を連続的に流通させ、ノズル内で詰まりが生じるか否かを確認した。この循環試験装置10は、
図1に示したように、インクタンク11、ポンプ12、フィルター13、圧力調整溜池14及びインクジェットヘッド15を有している。インクタンク11とポンプ12との間、ポンプ12とフィルター13との間、フィルター13と圧力調整溜池14との間、圧力調整溜池14とインクジェットヘッド15との間、及び、インクジェットヘッド15とインクタンク11との間は、それぞれチューブ16a〜16eによって連結されている。
【0064】
インクタンク11内に貯留した実験例1〜17のそれぞれのインクジェット印刷用インク17は、ポンプ12によって目開き3μmのフィルター13を通過されて濾過される。これにより凝集して粒径3μm以上となった顔料は濾過及び除去されて圧力調整溜池14に貯留される。圧力調整溜池14からは、一定圧力とされたインクジェット印刷用インク17がインクジェットヘッド15に供給される。インクジェットヘッド15のノズル先端(図示省略)から放出されたインクジェット印刷用インク17は、集められてインクタンク11内に戻され、ポンプ12によって再循環される。
【0065】
目開き3μmのフィルター13を通過した直後のインクジェット印刷用インク17内には粒径3μm以上の顔料は含まれていないはずであるが、インクジェット印刷用インク17の循環を継続したり、循環を停止してそのまま放置したりすると、インクジェットヘッド15のノズルが詰まることがある。このことは、インクジェットヘッド15の孔径は10〜50μm程度であるので、目開き3μmのフィルター13を通過した後にインクジェット印刷用インク17内の顔料が凝集し、その粒径が大きくなることがあることを示している。なお、インクジェットヘッドのノズル内の詰まりが生じたものについては、それぞれのノズルを洗浄剤で洗浄することによって流出した凝集物の状態を目視により確認した。
【0066】
実験例1〜17の各インクジェット印刷用インクを用いた場合の循環試験結果を、それぞれの組成とともに
図2にまとめて示した。結果は、インクジェット印刷用インクを1月以上循環させ続けてもノズルが詰まらないものを「○」で、2週間位循環させると詰まり始めるものを「△」で、数日以内で詰まるものを「×」で表した。また、実験例1〜17のインクジェット印刷用インクについて、それぞれ密閉容器に入れた状態のまま保持する静置試験を行った。この静置試験の結果は、1月以上静置しても沈降が生じなかったものを「○」で、2週間くらいで沈降し始めるものを「△」、数日で沈降し始めるものを「×」で表した。
【0067】
[粒径分布測定]
静置試験を終えたそれぞれのインクジェット印刷用インクを所定量採取し、レーザ光を用いた動的光散乱法により粒径分布を測定し、その生データのヒストグラム解析を行って重量換算の平均粒径値を求めた。結果を纏めて
図2に示した。
【0068】
[印字試験]
また、実験例1〜17のそれぞれのインクジェット印刷用インク(以下、単に「インク」ということがある。)を用い、アクリル塗料上に文字を印刷した場合の滲みの程度及び色の濃さを拡大鏡により拡大して目視により判断した。なお、文字の滲み及び濃さは、印刷後60秒間放置した後の状態を観察することにより行った。結果は、ほとんどにじまない場合を「○」、滲みが少ない場合を「△」、にじむ場合を「×」で表し、色の濃さは、最も良好なものを「◎」、一応良好と認められるものを「○」、下地が見えるが一応色の判別が可能なものを「△」、さらに、下地の色が目立ちインクの色の認識ができなかったものを「×」で表した。結果を
図2にまとめて示した。
【0069】
図2に示した結果から、以下のことが分かる。実験例1のインクは、顔料粒子の平均粒径が5108nmと大きく、短時間でノズル詰まりが発生し、また、静置試験では沈降する傾向が見られた。これに対し、実験例2〜4のインクは、平均粒径が1357nm(実験例2)、1477nm(実験例3)及び282nm(実験例4)と、実験例1の顔料の場合よりも小さく、凝集試験結果は良好であった。さらに、実験例1〜4のいずれのインクにおいても、印刷された文字の色の濃さは薄く、それに起因して滲みは見られたが目立たなかった。
【0070】
実験例5〜8は、溶剤の組成は実験例1〜4の場合と同様であるが、顔料をメーカーが異なる別種類のものに変えた場合の結果を示している。実験例7の特定の色のインク(Yellow)では、平均粒径3979nmと大きかったため、短時間でノズル詰まりが発生し、また、静置試験では沈降が見られた。それに対し、実験例5、6及び8のインクでは、平均粒径が185nm(実験例5)、424nm(実験例6)及び251nm(実験例8)と、実験例7のものよりも小さく、凝集試験結果は良好であり、印刷された文字の色の濃さも実験例1〜4の場合に比すると濃かったが、かなり大きな滲みが見られた。このような実験例1〜8のインクを用いた場合の滲みは、インク中の溶媒の蒸発速度が遅いことに起因するものと思われる。
【0071】
実験例9〜12は、実験例1〜8で印刷された文字の色の濃さが薄かったため、顔料の含有量を増加させるとともに、滲み対策として蒸発速度の速いアルコール系溶媒(IPA)を使用したものである。なお、実験例11(Yellow)では、実験例7の結果に鑑みて、凝集性の改善のためにメーカーに顔料の改良を依頼した同色の顔料を用いている。ただし、実験例11における顔料の平均粒径は29069nmと大きくなってしまった。これは、実験例11で用いたインクにおける顔料濃度が濃いこと及びこの顔料と溶剤の物性とが適合しなかったためと考えられる。
【0072】
実験例9〜12に示した結果によれば、顔料の含有量を3質量%まで増加させると、実験例11のインクでは直ちにノズル詰まりが発生し、また、静置試験では直ちに沈降が見られたが、印刷された文字の滲みは少なく、また色の濃さも一応良好であった。実験例9、10及び12のインクでは、平均粒径が1575nm(実験例9)、773nm(実験例10)及び147nm(実験例12)と、実験例11の場合よりも大幅に小さいため、凝集試験結果は良好な結果が得られ、印刷された文字の色の濃さも、実験例1〜4の場合に比すると濃かった。特に、実験例12のインクの場合は下地の遮蔽力も十分であった。
【0073】
実験例13〜16は、実験例1〜12の結果からしてアルコールは凝集に悪影響を及ぼしているものと予想し、グリコールエーテル系溶剤でできるだけ蒸発速度の速いものを採用し、顔料の含有量を5質量%と多くしたものである。ここでは、EGBME:PGMME:EGDME:酢酸ブチル=20:30:40:10(質量比)とした溶媒を用いている。なお、EGBME、PGMME及びEGDMEともにグリコールエーテル系溶媒であるため、実験例13〜16におけるグリコールエーテル系溶媒の含有割合は90%(質量比)となっている。
【0074】
実験例15の特定の色(Yellow)のインクは、実験例11の場合と同じものを用いたが、平均粒径が1605nmと実験例11の場合よりも大幅に小さくなっており、静置試験で沈降する傾向が見られたが、循環試験結果は良好であった。また、実験例13、14及び16のインクでは、平均粒径が168nm(実験例13)、422nm(実験例14)及び162nm(実験例16)と、実験例15の場合よりも小さく、凝集試験結果はすべて良好な結果が得られた。さらに実験例13〜16の全てのインクにおいても、印字試験結果は非常に良好な結果が得られ、印刷された文字の滲みが少なく、色の濃さも十分であり、下地の隠蔽力も十分であった。
【0075】
実験例17では、実験例15の特定の色(Yellow)のインクではまだ沈降する傾向が見られたので、さらなる凝集性の改善のためにメーカーに改良を依頼し、この顔料を実験例13〜16のインクと同じ溶剤を用いて調製したものである。実験例17における顔料の平均粒径は98nmとなっており、実験例15の平均粒径1605nmの場合と比すると約1/16の平均粒径となっている。このような実験例17のインクによれば、凝集試験結果及び印字試験結果ともに非常に良好な結果が得られ、印刷された文字の滲みが少なく、色の濃さも十分であり、下地の隠蔽力も十分な結果が得られた。
【0076】
以上のことから、本発明のインクジェット印刷用インクとしては、少なくともグリコールエーテル系溶剤を主成分と
し、酢酸エステル系溶剤との混合溶剤からなるものを用いていれば、他に適宜にアルコール系
溶剤、芳香族系溶剤などを含んでいても、良好な効果が奏されるものと考えられる。また、上記各実験例では、循環試験を目開き3μmのフィルター用いて濾過することによって行ったが、インクジェット印刷ヘッドのメーカーの推奨値を満たすようにするには本来目開き1μm以下の篩通過分を用いることが好ましい。しかしながら、本発明のインクジェット印刷用インクによれば、全ての色についてこのような条件を満たすインクを得ることが困難であるので、上記の循環試験結果を参照すれば、少なくとも目開き3μm以下の篩通過分を用いれば所定の作用効果が奏されるものと考えられる。実用的には目開き1μm以上3μm以下の篩通過分を用いれば十分であろう。