特許第6429198号(P6429198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429198
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】魚道構造体
(51)【国際特許分類】
   E02B 8/08 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   E02B8/08
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-105337(P2015-105337)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-217062(P2016-217062A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129300
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】柵瀬 信夫
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大橋 彩
(72)【発明者】
【氏名】大野 直
(72)【発明者】
【氏名】中村 華子
(72)【発明者】
【氏名】リン ブーンケン
(72)【発明者】
【氏名】望岡 典隆
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大越 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】高崎 正風
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 正昭
(72)【発明者】
【氏名】伏見 直基
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0133754(US,A1)
【文献】 特開平09−285229(JP,A)
【文献】 特開2000−120052(JP,A)
【文献】 特開2009−287208(JP,A)
【文献】 特開2003−268754(JP,A)
【文献】 特開平10−317351(JP,A)
【文献】 特開2004−019128(JP,A)
【文献】 特開平05−306508(JP,A)
【文献】 特開平05−339920(JP,A)
【文献】 特開平11−036263(JP,A)
【文献】 特開2002−206229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 8/08
E02B 5/00
E02B 8/00
E02B 3/04−3/14
E02D 17/20
A01K 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流中に形成された落差部分に設置される魚道構造体であって、
台座部と複数の滞水部とを有し、
前記台座部は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填された蛇籠様部材を階段状に積み上げることによって形成され、
前記滞水部は、網状部材で上部開放に形成された籠状体の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、
前記台座部を敷設することで形成された段段の各段の水平面上にそれぞれ前記滞水部を配設することで、前記落差部分の上側の水位高さから下側の水位高さまで滞水領域が階段状に連続して形成された魚道構造体。
【請求項2】
前記滞水部の側壁面の高さが、対象魚類の飛越可能な高さに設定された請求項1記載の魚道構造体。
【請求項3】
前記滞水部の上縁全周のうちの一部分を他の上縁部分よりも下方向に凹ませることで、前記滞水部からの水の越流方向が規定された請求項1又は請求項2記載の魚道構造体。
【請求項4】
前記積み上げられた各蛇籠様部材間の境目部分にそれぞれ挟着棒材を挟み込み、該各挟着棒材の各端部を前記台座部の側面側にそれぞれ突出させ、該各挟着棒材の各突出端部間にかけ渡された連結棒材に各端部を固定することにより補強された請求項1〜3のいずれか一項記載の魚道構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流中に形成された落差部分(例えば、ダム・堰・落差工などの河川横断構造物など)に設置される魚道構造体などに関する。より詳細には、落差部分の上側の水位高さから下側の水位高さまで、滞水領域が階段状に連続して形成された魚道構造体などに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、河川には、水力発電・灌漑・取水・上水道供給などの利水や、洪水調節・河川維持・水位調整などの治水などの目的で、ダム・堰・落差工などの河川横断構造物が数多く建造されている。しかし、これらの河川横断構造物は、利水・治水などの面で有効である一方、河川を途中で分断するため、特に、川の上下流間や川海間を行き来する回遊魚類の遡上を妨げ、生態系に悪影響を及ぼす。
【0003】
そこで、近年では、河川横断構造物によって河川が分断される場合には、それらの回遊魚類の遡上が可能になるように、河川横断構造物に魚道構造体を付設することが多い。ここで、魚道構造体とは、回遊魚類などの遡上・移動が可能な通路を備えた構造物をいう。
【0004】
例えば、特許文献1には、内部から外面に連通した中空部を有するコンクリートブロック体を複数個配置し、中空部によって上流側から下流側に向かって下り勾配の流路を形成した魚道構造体が、特許文献2には、プレキャストコンクリート製の魚道ブロックを使用した組み立て式魚道が、特許文献3には、ブロック本体の天端面に水溜め部を設け、ブロック本体天端面における水溜め部前方に自然石を接着固定して、非越流部を形成した魚道ブロックが、それぞれ記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、階段状に設けられた段差部を有する魚道と、起立壁とを備えた魚道構造体が、特許文献5には、複数のプールが水路に沿った方向に階段状に並ぶ階段式魚道を複数本、並列に高低差を設けて配置した並列階段型魚道が、特許文献6には、水路部と側壁部とを備え、流れの滞留部分を有し、側壁部付近に流れの速い部分を有する魚道が、それぞれ記載されている。
【特許文献1】特開平11-117272号公報
【特許文献2】特開平6-280239号公報
【特許文献3】登録実用新案第3030791号公報
【特許文献4】特開2008-184762号公報
【特許文献5】特開2005-113675号公報
【特許文献6】特開2002-206229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
河川横断構造物は、基本的性能として、水圧や越流水に対する長期耐久性を備えている必要があるため、コンクリートを主要材料として堅牢に構築するのが一般的である。魚道構造体も、河川横断構造物と同時に建造されるのが一般的であり、かつ長期間に亘って回遊魚類などの通路として使用することを想定して建造するため、河川横断構造物と同様、特に基礎部分についてはコンクリートを主要材料として堅牢に構築するのが一般的である。
【0007】
しかし、管理不良、設計上の問題、魚道内の土砂・流木などの堆積、水位・水量の変動、水流の道筋の移動・位置変化、魚道入口付近での土砂堆積・底沈下などによる新たな落差の形成などにより、過半の魚道構造体が、建造後比較的短期間で、魚道としての機能を消失しているのが実態である。
【0008】
そして、それらの魚道構造体の魚道としての機能を回復するためには、魚道構造体の新設・改修が必要となり、労力・コストの負担が大きい。そのため、多くの魚道構造体が機能を消失したまま放置されているのが実情である。
【0009】
そこで、本発明では、河川横断構造物のような水流中に形成された落差部分において、魚道としての機能を低労力かつ低コストに構築又は回復できる魚道構造体を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、水流中に形成された落差部分に設置される魚道構造体であって、
台座部と複数の滞水部とを有し、前記台座部は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填された蛇籠様部材を階段状に積み上げることによって形成され、前記滞水部は、網状部材で上部開放に形成された籠状体の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、前記台座部を敷設することで形成された段段の各段の水平面上にそれぞれ前記滞水部を配設することで、前記落差部分の上側の水位高さから下側の水位高さまで、滞水領域が階段状に連続して形成された魚道構造体などを提供する。
【0011】
本発明では、落差部分の上側の水位高さから下側の水位高さまで、滞水領域が階段状に連続して形成されている。そのため、例えば、最上段の滞水部を落差部分の上側に近接させ、その落下開始部分の水流が最上段の滞水部内に緩やかに流れ込むようにするとともに、最上段を含む各滞水部の上縁全周のうちの一部分をそれぞれ他の上縁部分よりも下方向に凹ませることで、滞水部からの水の越流方向を規定することにより、まず、落差部分の落下開始部分の水流又はその一部が最上段の滞水部に流れ込み、さらに、その水流が、滞水部の上縁のうちの凹んだ部位を越流して一つ下の段の滞水部に流れ込み、順々に最下段の滞水部まで流れ込んで、落差部分の下側の水位高さまで階段状に連続した水流が形成される。
【0012】
そして、各段に魚類の休息可能な滞水領域が形成されており、かつ階段状に水流を落下させることでその流速が低減されるため、例えば、滞水部間に形成された各段差を対象魚類の飛越可能な高さに設定することにより、その魚類は、各滞水部で休息しつつ飛翔して、各滞水部を一段ずつ登り、最終的に落差部分の上側まで到達することができる。これにより、水流中に形成された河川横断構造物などの落差部分を乗り越え、分断されることなく、さらに上流への遡上を継続することができる。
【0013】
この魚道構造体では、台座部が、網状部材で全面が略閉塞された籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填された蛇籠様部材を積み上げることによって形成されている。これにより、水圧や越流水に対しても全体形状を一定期間保持することができる。
【0014】
また、例えば、積み上げられた各蛇籠様部材間の境目部分にそれぞれ挟着棒材を挟み込み、その各挟着棒材の各端部を台座部の側面側にそれぞれ突出させ、各挟着棒材の各突出端部間にかけ渡された連結棒材に各端部を固定することにで、魚道構造体を補強することにより、全体形状を簡易かつより強固に保持することができる。
【0015】
本発明では、台座部を網状部材と中詰材で、滞水部を網状部材と遮水性袋状体でそれぞれ形成しており、それらを積み上げることによって魚道構造体を形成しているため、今まで魚道構造体が建造されていなかった場所に新規に設置する場合を含め、短期間で設置することが可能であり、低労力かつ低コストで設置することができる。
【0016】
加えて、この魚道構造体は、台座部を積み上げその各段の水平面上に滞水部を配設することで形成できるため、従来のコンクリートを主要材料として構築された魚道構造体と比較して、設置場所・形状などの変更や調整が容易であり、自由度が高い。そのため、この魚道構造体の設置後も、建造後に露見した構造上の不具合や設計上の問題点、水位・水量の変動、水流の道筋の移動・位置変化などに対し、簡易かつ適切に改善・修正を行うことができる。また、この魚道構造体を構築した後の一部形状の変更や、修理・移動・撤収も容易であるため、管理不良による魚道としての機能の消失、魚道内の土砂・流木などの堆積、魚道入口付近での土砂堆積・底沈下などによる新たな落差の形成などが生じた場合であっても、簡易、低労力かつ低コストに魚道としての機能を再構築又は回復することができる。さらに、従来のコンクリートを主要材料として構築された魚道構造体で魚道としての機能が消失した場合に、大規模な新設・改修工事を行う代わりに、当該個所に本発明に係る魚道構造体を設置することで、低労力かつ低コストに魚道としての機能を回復させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により魚道としての機能を、簡易、低労力かつ低コストに構築又は回復することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、水流中に形成された落差部分に設置される魚道構造体であって、台座部と複数の滞水部とを有し、前記台座部は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填された蛇籠様部材を階段状に積み上げることによって形成され、前記滞水部は、網状部材で上部開放に形成された籠状体の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、前記台座部を敷設することで形成された段段の各段の水平面上にそれぞれ前記滞水部を配設することで、前記落差部分の上側の水位高さから下側の水位高さまで、滞水領域が階段状に連続して形成された魚道構造体をすべて包含する。
【0019】
以下、図1図5を用いて本発明の実施形態の例を説明する。なお、本発明は、以下に例示した実施形態のみに狭く限定されない。
【0020】
図1は、本発明に係る魚道構造体の例を示す外観斜視模式図、図2は同水流方向断面模式図である。
【0021】
図1及び図2の魚道構造体Aは、河川横断構造物BによってX1方向の水流W中に形成された落差部分B1に設置され、台座部1と五つの滞水部2(21、22、23、24、25)とを有し、台座部1は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体16内に石礫又は石礫様の中詰材17が充填された蛇籠様部材11、12、13、14を階段状に積み上げることによって形成され、各滞水部2は、網状部材で上部開放に形成された籠状体26の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体27を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面15上にそれぞれ滞水部2を配設することで、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、滞水領域が階段状に連続して形成されている。
【0022】
なお、本発明は、例えば、図1又は図2のように、ダム・堰・落差工などの河川横断構造物Bによって水流W中に落差部分B1が形成されている場所に設置する場合のみに狭く限定されず、原則的には、人工構築物であるか否かに関わらず、水流中に落差部分B1が形成されているいかなる場所に設置する場合をも広く包含する。
【0023】
台座部1は、本発明に係る階段状の魚道構造体Aの土台部分であり、蛇籠様部材11〜14を階段状に積み上げることによって形成される。
【0024】
蛇籠様部材11〜14は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体16内に石礫又は石礫様の中詰材17を充填した構成を備える。
【0025】
蛇籠様部材11〜14を形成する籠状体16は、石礫又は石礫様の中詰材17を充填する籠状の部材であり、網状部材で全面を略閉塞することで形成される。
【0026】
籠状体16の組み立て手順については、特に限定されないが、例えば、底面、各側面、上面を構成する複数のパネル状の網状部材をそのまま又は撓ませながら、公知の紐状部材などで締結していくことにより、形成することができる。
【0027】
籠状体16を形成する網状部材は、中詰材17を脱出させずに保持できるものであればよく、特に限定されない。例えば、網目が略菱形状のもの、略六角形状のものなど、公知のものを広く採用できる。
【0028】
網状部材の太さ・材質などについても、公知のものを広く採用でき、狭く限定されない。網状部材の材質として、例えば、鉄線・銅線・ステンレス鋼線・亜鉛めっき鉄線、若しくはそれらをビニルなどのプラスチックで被覆した線材、プラスチック線などを広く採用できる。
【0029】
本発明では、網状部材が高強度素材で形成された構成にしてもよい。高強度素材としては、例えば、プラスチック線、プラスチックで被覆した線材などが好適であり、例えば、プラスチック線の一つであるポリエステルモノフィラメントがより好適である。
【0030】
ポリエステルモノフィラメントは、ジカルボン酸とジオールを主原料として製造される熱可塑性エンジニアリングプラスチックである。ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらのジカルボン酸成分とジオール成分とを適宜組み合わせて合成されたポリエステルモノフィラメントを適宜使用することができる。この中で、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、ジオール成分の90モル%がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートのポリエステルモノフィラメントが最も好適である。
【0031】
ポリエステルモノフィラメントなどの高強度素材を採用することには、(1)中詰材17を充填したり、蛇籠様部材11〜14を階段状に積み上げたりすることで、その重量が負荷されてもせん断されない、(2)高い形状保持性及び耐摩耗性を備え、魚道構造体Aを撤去後再設置する場合にも再使用が可能である、(3)耐久性が高く、長期間設置や、撤去時の保管の際にも劣化しない、(4)網目状に形成されることで適度に撓むため、加工・形状調整が容易である、などの有利性がある。
【0032】
中詰材17は、籠状体16内に充填される部材である。中詰材17としては、石礫又は石礫様で、網状部材の目合いよりも大きく、比重2以上の沈水性で、籠状体16の籠内に充填できるものであればよく、特に限定されない。例えば、丸石・玉石・巨礫・大礫や、コンクリートがらなどの石材などを単独で又は混合して用いることができる。
【0033】
例えば、籠状体16内の中心付近の水の当たりにくい部分に長径30cm以上の大型の中詰材17を充填し、周辺部分の水の当たりやすい部分に長径30cm未満の小型の中詰材17を充填するようにしてもよい。小型の中詰材17を周辺部分に配置することで、籠状体16内の隙間への水の浸入を軽減できるため、中心付近の大型の中詰材17に対して浮力が加わることを低減でき、それによって、例えば、増水時などにおける魚道構造体Aの安定性を増加することができる。
【0034】
滞水部2は、上側から流入した水を滞留させる部位である。台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面15上にそれぞれ滞水部21、22、23、24、25を配設することで、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、滞水領域(水の滞留する場所)が階段状に連続して形成される。
【0035】
滞水部2は、網状部材で上部開放に形成された籠状体26の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体27を装着した構成を備える。
【0036】
滞水部2を形成する籠状体26は、内側に遮水性袋状体27を装着するための枠体部分であり、網状部材で上部開放に形成される。籠状体26の組み立て手順については、特に限定されないが、上記と同様、例えば、底面及び各側面を構成する複数のパネル状の網状部材をそのまま又は撓ませながら紐状部材などで締結していくことにより、形成することができる。籠状体26を形成する網状部材は、上記の籠状体16を形成する網状部材と同様の太さ・材質のものを広く用いることができる。
【0037】
遮水性袋状体27は、上流側から流れ込む水を内部に貯留する部位で、原則的には、袋の外側が籠状体26の底面及び全側面と略当接した状態で装着される。
【0038】
遮水性袋状体27は、袋状の形態を備え、破損しにくく、一定期間に亘って水を内部に貯留させることが可能な部材であればよく、公知のものを広く採用でき、特に限定されない。
【0039】
遮水性袋状体27として、例えば、不織布マットを袋状に形成したものを好適に用いることができる。不織布マットは、公知のものを広く用いることができるが、例えば、厚さ0.5〜30.0mmのものが最も好適である。不織布マットを採用することには、以下の利点がある。(1)不織布マットは、非含水時には軽量である。そのため、運搬・設置を低労力で行うことができる。(2)一方、高吸湿・保水性を有し、含水時には重量が大幅に増加する。(3)柔軟性が高く、かつ吸水により重量が増すため、水が内部に貯留した際には、その重量で籠状体の壁側に圧せられ、籠状体26の底面及び前側面に良好に当接する。(4)不織布マットに水が飽和すると透水性が減少して遮水性となる。(5)不織布内に微細懸濁物が目詰まりすることで、遮水性が強化される。(6)裂け難く、高耐久性である。
【0040】
なお、滞水部2では、籠状体26内に小数の石礫又は石礫様の中詰材を充填し
てから遮水性袋状体27を装着してもよい。吸水による重量増加により遮水性袋状体27が籠状体26の壁側に圧せられた際に、籠状体26と遮水性袋状体27の間に中詰材を挟み込むことで、滞水部2内(遮水性袋状体27)に、自然に近い凹凸を有した形状を再現させることができる。これにより、回遊魚類が滞水部2内で休息したり、鳥などの天敵から身を隠したりしやすくなるため、回遊魚類の遡上を促進できる。
【0041】
図1及び図2に示す通り、この魚道構造体Aは、蛇籠様部材11、12、13、14を階段状に積み上げることによって台座部1を形成し、さらに台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面15上にそれぞれ滞水部2を配設することで形成されている。
【0042】
図1及び図2では、最下段は、蛇籠様部材14と滞水部25とで形成され、川底G上に設置されている。それぞれ、二段目は蛇籠様部材13と滞水部24とで、三段目は蛇籠様部材12と滞水部23とで、四段目は蛇籠様部材11と滞水部22とで形成され、最上段には、滞水部21が配置されている。
【0043】
即ち、滞水部及び蛇籠様部材で一つの段段を形成する単位とし(図1及び図2では、それぞれ符号25と14、24と13、23と12、22と11)、滞水部が階段状に連続して形成されるように配置しながら、各段の蛇籠様部材上に次の段の滞水部及び蛇籠様部材を積み上げていき、最上段には一つ下の段の蛇籠様部材上に滞水部を配設することで、本発明に係る魚道構造体Aが形成される。最上段の滞水部21は、落差部分B1の上側B12の水流W0が流れ込むように、落差部分B1に側壁面の一つが略接する状態で配置される。
【0044】
なお、蛇籠様部材11、12、13、14を、例えば、図1又は図2のように一つの部材で形成してもよく、各段を二以上の蛇籠様部材で形成してもよい。また、同じ段の蛇籠様部材と滞水部(例えば、14と25、13と24、12と23)を一体的に形成してもよい。その場合、例えば、蛇籠様部材11、12、13、14を形成する籠状体16と滞水部を形成する籠状体26とを同一の網状部材で一体形成した後、仕切り用の網状部材で二つの領域に仕切り、一方に中詰材17を充填して上面を略閉塞し、他方に遮水性袋状体27を装着することで、滞水部及び蛇籠様部材の一つの段段を形成できる。複数の網状部材でそれらの形状を形成する場合、例えば、各パネル状の網状部材を、公知の紐状部材などで締結していくことにより、行ってもよい。その他、蛇籠様部材11、12、13、14と滞水部2をそれぞれ形成し、蛇籠様部材14、13、12、11を順に積み重ねるとともに、各蛇籠様部材11、12、13、14に、各滞水部2を、公知の紐状部材などで締結して形成してもよい。その場合、蛇籠様部材11、12、13、14から滞水部2を簡易に分離させることができるので、例えば、洪水など、水量の増加が予想される場合に、予め滞水部2を取り外しておくことによって、過剰な水圧が魚道構造体Aに負荷されることを未然に防止でき、それにより、より安定的な魚道構造体Aの設置が可能になる。
【0045】
滞水部2の形状は、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで階段状に連続して配設できるものであればよく、特に限定されない。例えば、底面又は上面の形状が略四角、略三角、若しくは略扇形の柱体形状などを採用できる。蛇籠様部材11〜14の形状は、例えば、一つ上の段から最上段までの滞水部2の形状に基づいて、積み重ねた時に滞水部2を階段状に配設できるように適宜設定する。各段の蛇籠様部材11〜14の形状・大きさは同一である必要はなく、原則的には、最下段では底面又は上面の面積が最も大きく形成され、上の段にいくに従って、底面又は上面の面積が適宜小さくなっていくように形成される。
【0046】
図1及び図2の魚道構造体Aでは、前記滞水部2の上縁28全周のうちの一部分(符号29)を他の上縁部分よりも下方向に凹ませることで、前記滞水部2からの水の越流方向(符号W1〜W5)が規定された構成を備えていてもよい。各滞水部2にこの凹部29を形成することにより、原則的には、滞水部2から溢れ出す水は凹部29の部分から越流するようにできるため、越流させたい側の滞水部2の側壁面の一部を凹ませることにより、一つ下の滞水部2などの想定した場所に水流Wを確実に流れ込ませることができる。そのため、各滞水部21〜25のそれぞれに凹部29を形成することで、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、階段状に連続した水流を形成することができる。
【0047】
凹部29は、例えば、最下段以外の滞水部21〜24では、一つ下の滞水部の方向にある側壁面の上縁を凹ませて形成し、最下段の滞水部25では、最終的に水を放出する方向(原則的には川下方向)にある側壁面の上縁を凹ませて形成する。
【0048】
凹部29の形成手段については、公知のものを広く採用でき、特に限定されないが、本発明では、滞水部2の側壁面を網状部材で形成しているため、例えば、その側壁面を紐状部材などで引下げ、その状態で紐状部材を固定することにより、簡易に、側壁面の高さの約60%程度までの凹み部分を容易に形成することができる。その際、凹部29の部分が確実に遮水性袋状体27で被覆されているようにし、遮水性袋状体27の凹み具合によって、水位の微調整ができるように形成してもよい。
【0049】
その他、滞水部2は、上面が略水平になるように配設される場合に狭く限定されず、例えば、傾斜して配設されていてもよい。その場合、例えば、滞水部2の直下の蛇籠様部材(符号11、12、13又は14)内に中詰材17の敷き詰め方を変更することにより、目的・用途に沿って、適宜、滞水部2を傾斜して配設させることができる。その場合、例えば、一つ下の滞水部の方向又は最終的に水を放出する方向に滞水部2を傾斜させることにより、一つ下の滞水部2などの想定した場所に水流Wを流れ込ませることができ、設置する河川横断構造物Bの方向に滞水部2を傾斜させることにより、自重が河川横断構造物Bの方向に負荷されるため、魚道構造体Aをより安定化できる。
【0050】
本発明に係る魚道構造体Aでは、前記滞水部2の側壁面の高さが、対象魚類の飛越可能な高さに設定された構成にしてもよい。滞水部2の側壁面の高さ、即ち、滞水部間に形成された各段差を、対象魚類の飛越可能な高さに設定することにより、その対象魚類は、各滞水部21〜25で休息しつつ飛翔して、各滞水部21〜2を一段ずつ登り、最終的に落差部分B1の上側B11まで到達することができる。
【0051】
遡上する対象魚類の飛越可能な高さは、魚種によって異なるが、例えば、滞水部2の側壁面の高さ、即ち滞水部間の段差を20〜40cm程度に設定することにより、サケ、アユ、サクラマスなどの回遊魚類などが遡上できるようになる。
【0052】
図1の魚道構造体Aでは、前記積み上げられた各蛇籠様部材11、12、13、14間の境目部分にそれぞれ挟着棒材3、3、3を挟み込み、該各挟着棒材3、3、3の各端部を前記台座部1の側面側にそれぞれ突出させ、該各挟着棒材3、3、3の各突出端部間にかけ渡された連結棒材4に各端部を固定することにより補強された構成を備えている。
【0053】
蛇籠様部材11の重量で各挟着棒材3、3、3を固定し、さらに各挟着棒材3、3、3間を連結棒材4で固定することにより、魚道構造体Aを簡易、低労力かつ低コストに補強できる。これにより、洪水など、過剰な水圧が魚道構造体Aに負荷された場合であっても、全体形状をより強固に保持することができ、想定外に魚道構造体Aが崩壊・流失することを防止できる。
【0054】
挟着棒材3の材質などについては、蛇籠様部材11、12、13、14間の境目部分に挟み込むことが可能な棒材であればよく、特に限定されない。例えば、丸太などの木材などを用いてもよい。
【0055】
連結棒材4の材質は、各挟着棒材3、3、3の各突出端部間にかけ渡して各端部を固定することが可能な棒材であればよく、特に限定されない。例えば、丸太などの木材などを用いてもよい。挟着棒材3の連結棒材4への締結手段についても、紐状部材など、公知のものを広く採用可能である。
【0056】
魚類誘導手段5は、魚類を魚道構造体Aに進入させるための誘導部材である。一般的に、回遊魚類は、遡上の際に、水の流れてくる方向に向かって泳ごうとする。その性質を利用して、最下段の滞水部25から落下した水流W5を魚類誘導手段5で誘導し、その水流の勢いの分散・減衰を抑制し、水流を維持することで、遡上魚類が魚道構造体Aに向かって泳ぐように促すとともに、魚道の発見と魚道構造体Aへの進入を促進させることができる。
【0057】
魚類誘導手段5は、最下段の滞水部25からの水流を誘導できるものであればよく、公知のものを広く採用でき、狭く限定されない。
【0058】
例えば、網状部材で全面が略閉塞された略柱状の籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填された蛇籠様部材を、遮水性シート部材で被覆したものを用いてもよい。網状部材及び中詰材は、上記と同様のものを用いることができる。遮水性シート部材には、不織布マットなど、上記の遮水性袋状体27と同様の素材を用いることができる。例えば、遮水性シート部材に不織布マットを用いることには、上記と同様の以下の利点がある。(1)不織布マットは、非含水時には軽量である。そのため、運搬・設置を低労力で行うことができる。(2)一方、高吸湿・保水性を有し、含水時には重量が大幅に増加するため、設置後、水流などで流されにくく、安定的に設置できる。(3)柔軟性が高く、かつ吸水により重量が増すため、蛇籠様部材に密着しやすく、良好に被覆できる。(4)不織布マットに水が飽和すると透水性が減少して遮水性となるため、蛇籠用部材内の中詰材に対する浮力を生じにくくできる。(5)不織布内に微細懸濁物が目詰まりすることで、遮水性を強化できる。(6)裂け難く、高耐久性である。
【0059】
本発明に係る魚道構造体Aの設置工程は、公知の方法に基づいて行うことができ、特に限定されない。この魚道構造体Aは比較的軽量な部材を組み立てることで簡易かつ短期間に設置することが可能であるため、設置場所の水流Wを完全に遮断して施工する必要はなく、設置場所の水流Wを減少させた状態での施工が可能である。なお、この魚道構造体Aを撤去する際も同様である。
【0060】
例えば、水流中に形成された落差部分B1に面した設置場所に、最下段の蛇籠様部材14を形成する籠状体16を設置し、中詰材17を詰めて上面を略閉塞し、挟着棒材3を配置してから、次の段の蛇籠様部材13を形成する籠状体16を最下段の蛇籠様部材14の上に設置し、中詰材17を詰めて上面を略閉塞し、その作業を繰り返して、台座部1を形成する。そして、滞水部2が落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで階段状に配置されるように、各蛇籠様部材14、13、12、11の側方及び最上段の蛇籠様部材11の上面に滞水部2を配置して締結・固定することで、魚道構造体Aを形成する。魚道構造体Aの両側で、それぞれ、挟着棒材3、3、3の各突出端部間に連結部材4をかけ渡して各端部を固定し、補強する。魚道構造体Aの撤去の際には、逆の順で作業を行う。これらの作業は人力・機械のいずれでも可能である。
【0061】
このように、本発明に係る魚道構造体Aは、比較的簡易、低労力かつ低コストに撤去・再構築することも可能である。従って、例えば、対象魚類が遡上しない時期には撤去して各部材を保管しておき、遡上時期前後のみに再構築したり、台風・洪水など、大幅に水量が増加することが予測された場合に、魚道構造体Aを一端撤去し、水量の増加が緩和されてから、魚道構造体Aを再構築したりしてもよい。また、例えば、大幅に水量が増加することが予測された場合に、蛇籠様部材14から滞水部2を取り外すようにしてもよい。これにより、撤去作業を低減しつつ、魚道構造体Aの崩壊のリスクを軽減し、安全性を高めることができる。
【0062】
図3は、本発明に係る折り返し形態の魚道構造体の例を示す外観斜視模式図である。
【0063】
図3の魚道構造体A’は、図1などと同様、河川横断構造物BによってX1方向の水流W中に形成された落差部分B1に設置され、台座部1と三つの滞水部2(21、22、23)とを有し、台座部1は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体16内に石礫又は石礫様の中詰材17が充填された蛇籠様部材11、12を階段状に積み上げることによって形成され、各滞水部2は、網状部材で上部開放に形成された籠状体26の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体27を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面上にそれぞれ滞水部2を配設することで、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、滞水部2が階段状に連続して形成されている。
【0064】
図3では、滞水部2は、図1などと同様、底面又は上面の形状が略四角の柱体形状に形成されており、蛇籠様部材12の形状は、一つ上の段から最上段までの滞水部22、21の形状に基づいて、蛇籠様部材11の形状は、最上段の滞水部21の形状に基づいて、積み重ねた時に滞水部2を階段状に配設できるように設定されている。
【0065】
図3の魚道構造体A’では、各滞水部21、22、23が折り返し形態の上方視略S字状に配置されている。最上段の滞水部21は、落差部分B1の上側B12の水流W0が流れ込むように、落差部分B1に側壁面の一つが略接する状態で配置されている。そして、凹部29は、最下段以外の滞水部21、22では、一つ下の滞水部の方向にある側壁面の上縁を凹ませて形成し、最下段の滞水部23では、最終的に水を放出する方向にある側壁面の上縁を凹ませて形成されている。これによって、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、折り返し形態の階段状に連続した水流(W0〜W3)が形成されている。
【0066】
この構成の場合も、対象魚類は、魚類誘導手段5、5間を進入し、各滞水部21〜23で休息しつつ飛翔し、滞水部23、22、21の順で一段ずつ登り、最終的に落差部分B1の上側B11まで到達することができる。
【0067】
図4は、本発明に係る三角形態の魚道構造体の例を示す外観斜視模式図である。
【0068】
図4の魚道構造体A”も、図1などと同様、河川横断構造物BによってX1方向の水流W中に形成された落差部分B1に設置され、台座部1と四つの滞水部2(21、22、23、24)とを有し、台座部1は、網状部材で全面が略閉塞された籠状体16内に石礫又は石礫様の中詰材17が充填された蛇籠様部材11、12、13を階段状に積み上げることによって形成され、各滞水部2は、網状部材で上部開放に形成された籠状体26の内側に、上部開放に形成された遮水性袋状体27を装着することで、上側から流入した水を滞留できるように形成され、台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面上にそれぞれ滞水部2を配設することで、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、滞水部2が階段状に連続して形成されている。
【0069】
図4では、滞水部2は、底面又は上面の形状が略三角の柱体形状に形成されており、蛇籠様部材12、13の形状は、一つ上の段から最上段までの滞水部23、22、21の形状に基づいて、蛇籠様部材11の形状は、最上段の滞水部21の形状に基づいて、積み重ねた時に滞水部2を階段状に配設できるように設定されている。
【0070】
図4の魚道構造体A”では、各滞水部21、22、23、24が三角形態の上方視略S字状に配置されている。最上段の滞水部21は、落差部分B1の上側B12の水流W0が流れ込むように、落差部分B1に側壁面の一つが略接する状態で配置されている。そして、凹部29は、最下段以外の滞水部21、22、23では、一つ下の滞水部の方向にある側壁面の上縁を凹ませて形成し、最下段の滞水部23では、最終的に水を放出する方向にある側壁面の上縁を凹ませて形成されている。これによって、落差部分B1の上側B11の水位高さから下側B12の水位高さまで、折り返し形態の階段状に連続した水流(W0〜W4)が形成されている。なお、滞水部2の底面又は上面の形状が略扇形の柱体形状に形成された場合も図4の魚道構造体A”とほぼ同様の形態とすることができる。
【0071】
この構成の場合も、対象魚類は、魚類誘導手段5、5間を進入し、各滞水部21〜24で休息しつつ飛翔し、滞水部24、23、22、21の順で一段ずつ登り、最終的に落差部分B1の上側B11まで到達することができる。
【0072】
図5は、本発明に係る魚類遡上促進手段の例を示す外観斜視模式図である。
【0073】
例えば、図5に示す、コンクリート三面張り水路Cのように、コンクリートなどで側面C1及び水底Gを固定することで水流方向X1が固定された水路において、魚類誘導手段5と同様の部材、例えば、網状部材で全面が略閉塞された略柱状の籠状体内に石礫又は石礫様の中詰材が充填され、該籠状体が遮水性シート部材で被覆された蛇籠様部材11’が、所定間隔で、前記水路に河川横断状態に配置された魚類遡上促進手段A’’’も、回遊魚類や這行生物などの遡上・移動を有効に促進する。
【0074】
水路C内に蛇籠様部材11’を複数配置することにより、水流(W1〜W3)を蛇籠様部材11’に衝突させて減速させることができるため、流れを緩やかにすることができる。また、各蛇籠様部材11’の上流側に滞水部2を形成することができる。そして、蛇籠様部材1’は回遊魚類の飛越可能な高さである。従って、水路内に、蛇籠様部材1’を複数配置することにより、回遊魚類が上流へ遡上しやすい環境を創出することができる。また、ウナギ・ハゼ・カニ・エビなどの這行する水棲生物も、この蛇籠様部材1’を乗り越えて遡上・移動することが可能である。
【0075】
従って、例えば、河川などの各箇所において、河川横断構造物が建造されている箇所などに上述の魚道構造体A、A’、A”などを、コンクリート三面張り水路や流れの急な箇所などに魚類遡上促進手段A’’’を設置することにより、回遊魚類の遡上しやすい環境に河川全体を改良させることができ、また、他の水棲生物にとって住みやすい環境を創出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明に係る魚道構造体の例を示す外観斜視模式図。
図2】本発明に係る魚道構造体の例を示す水流方向断面模式図。
図3】本発明に係る折り返し形態の魚道構造体の例を示す外観斜視模式図。
図4】本発明に係る三角形態の魚道構造体の例を示す外観斜視模式図。
図5】本発明に係る魚類遡上促進手段の例を示す外観斜視模式図。
【符号の説明】
【0077】
1 台座部
11、12、13、14 蛇籠様部材
15 台座部1を敷設することで形成された段段の各段の水平面
16 蛇籠様部材11、12、13、14を形成する籠状体
17 中詰材
2(21、22、23、24、25) 滞水部
26 滞水部を形成する籠状体
27 遮水性袋状体
28 滞水部2の上縁
29 滞水部2上縁の凹部
3 挟着棒材
4 連結棒材
5 魚類誘導手段
A、A’、A” 魚道構造体
A’’’ 魚類遡上促進手段
B 河川横断構造物
B1 落差部分
B11 落差部分の上側
B12 落差部分の下側
C 三面張水路
G 川底
X1 水流方向
W 水流
W0 最上部の滞水部21に流れ込む水流
W1〜W5 滞水部から越流する水流
図1
図2
図3
図4
図5