(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア部分にはFeおよびFeの酸化物が含まれ、前記Feの酸化物には酸化第一鉄(ferrous oxide,FeO)、酸化第二鉄(ferric oxide,Fe2O3)、四酸化第三鉄(ferroferric oxide,Fe3O4)、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項1に記載の磁性材料。
前記焼結体中の前記磁性材料が、粉末モノマー(powder monomer)、該粉末モノマーの残渣(debris)、該粉末モノマーの凝集体、またはこれらの組み合わせである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の磁性部品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示のそれぞれ異なる特徴に基づく多数の異なる実施形態を提示する。本開示では、簡潔にするために、特定の構成要素および構成について記載するが、本開示はこれら実施形態に限定はされない。例えば、記載における第2の構成要素上への第1の構成要素の形成には、第1の構成要素と第2の構成要素とが直接に接触して形成されている実施形態が含まれていてよく、また第1の構成要素と第2の構成要素とが直接には接触しないように第1の構成要素と第2の構成要素との間に追加の構成要素が形成され得る実施形態も含まれていてよい。加えて、簡潔かつ明瞭にする目的で、本開示では、各種実施形態において参照番号および/または文字を繰り返すことがある。しかし、このこと自体は、記載された各種実施形態および/または構成間の特定の関係を示すものではない。
【0012】
本開示の実施形態は、高い透磁率および高い飽和磁化を有する磁性材料、ならびに磁性材料と金属とを共焼結することにより得られる磁性部品を提供する。内部金属材料の酸化による磁気特性の低下の問題が、磁性材料の表面に配置される金属合金パッシベーション層で内部金属材料を保護することにより回避され得る。
【0013】
本開示の実施形態は、
図1に示されるように、コア部分10、コア部分10の表面に配置された合金層12、および合金層12の表面に配置されたハイブリッド層14を含む磁性材料1を提供する。磁性材料1の粒径は、例えば0.5〜50μm、または50〜110μmとすることができる。
【0014】
コア部分10は、コア部分10の全重量に対し、Feを99wt%以上含む。一実施形態において、コア部分10は金属元素Feのみを含む、つまりFeを100wt%含む。別の実施形態では、コア部分10はFeおよびFeの酸化物を含んでいてよく、Feの酸化物には、酸化第一鉄(ferrous oxide,FeO)、酸化第二鉄(ferric oxide,Fe
2O
3)、四酸化第三鉄(ferroferric oxide,Fe
3O
4)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。この実施形態において、コア部分10の全重量に対し、Feの量は99wt%以上、例えば99wt%、99.5wt%、または99.99wt%であってよく、Feの酸化物の量は1wt%以下、例えば0.01wt%、0.05wt%、または1wt%であってよい。
【0015】
合金層12はFeM合金を含んでいてよく、MはCr、Si、Al、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせである。合金層12中のMの量は、FeM合金の全重量に対し5〜80wt%であり得る。Mの量が少なすぎる、例えば5wt%より少ないと、コア部分が酸化物を形成し易くなり、結果、磁気特性の全てが低下してしまうことになる。Mの量が多すぎる、例えば80wt%より多いと、Mの磁気特性はFeより劣るため、磁気特性の全てが過度に低下してしまう。合金層12の厚さは0.05〜10μm、例えば0.1μm、0.3μm、1.5μm、3μm、または5μmとすることができる。
【0016】
ハイブリッド層14はMおよびMの酸化物を含んでいてよく、MはCr、Si、Al、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせである。ハイブリッド層14の厚さの範囲は0.05〜10μm、例えば0.1μm、0.3μm、1.5μm、3μm、または5μmである。ハイブリッド層14の厚さが薄すぎる、例えば0.05μmより小さいと、後続の450〜900℃での焼結の後にパッシベーション層が形成され得ず、故に銀との共焼結により有効な磁性部品が形成されなくなる。ハイブリッド層14の厚さが厚すぎる、例えば10μmより大きいと、ハイブリッド層14のMおよびMの酸化物の磁気特性はFeより劣るため、磁気特性の全てが過度に低下してしまう。微視的レベルで、ハイブリッド層14は複数の顆粒状突起構造を含み得る。
【0017】
本開示の別の実施形態は、
図2に示されるように、コア部分20、コア部分20の表面に配置された第1のパッシベーション層22、および第1のパッシベーション層22の表面に配置された第2のパッシベーション層24を含む磁性材料2を提供する。磁性材料2の粒径は、例えば0.5〜50μmまたは50〜110μmとすることができる。
【0018】
コア部分20は、コア部分20の全重量に対し、Feを99wt%以上含む。一実施形態において、コア部分20は金属元素Feのみを含む、つまりFeを100wt%含む。別の実施形態では、コア部分20はFeおよびFeの酸化物を含んでいてよく、Feの酸化物には、酸化第一鉄(ferrous oxide,FeO)、酸化第二鉄(ferric oxide,Fe
2O
3)、四酸化第三鉄(ferroferric oxide,Fe
3O
4)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。この実施形態において、コア部分20の全重量に対し、Feの量は99wt%以上、例えば99wt%、99.5wt%、または99.99wt%であってよく、Feの酸化物の量は1wt%以下、例えば0.01wt%、0.05wt%、または1wt%であってよい。
【0019】
第1のパッシベーション層22はFeM合金の酸化物を含んでいてよく、MはCr、Si、Al、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせである。第1のパッシベーション層22中のMの量は、FeM合金の酸化物の全重量に対し、5〜80wt%であり得る。Mの量が少なすぎる、例えば5wt%より少ないと、コア部分が酸化物を形成し易くなり、結果、磁気特性の全てが低下してしまうことになる。Mの量が多すぎる、例えば80wt%より多いと、Mの磁気特性はFeより劣るため、磁気特性の全てが過度に低下してしまう。第1のパッシベーション層22の厚さは0.05〜10μm、例えば0.1μm、0.3μm、1.5μm、3μm、または5μmとすることができる。
【0020】
第2のパッシベーション層24はMの酸化物を含んでいてよく、MはCr、Si、Al、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせである。第2のパッシベーション層24の厚さの範囲は0.05〜10μm、例えば0.1μm、0.3μm、1.5μm、3μm、または5μmである。第2のパッシベーション層24が薄すぎる、例えば0.05μmより小さいと、磁性材料を銀と共焼結するときに銀が拡散して閉回路が形成され易くなり、これにより磁性要素が作用効果を失ってしまう。第2のパッシベーション層24の厚さが厚すぎる、例えば10μmより大きいと、第2のパッシベーション層24中のMおよびMの酸化物の磁気特性はFeより劣るため、磁気特性の全てが過度に低下してしまう。微視的レベルで、第2のパッシベーション層24は複数の顆粒状突起構造を含み得る。
【0021】
図3A〜3Cは、本開示の実施形態による磁性材料3、4の製造の中間工程の概略図を示している。以下に、磁性材料3、4の製造工程について、本開示の実施形態に基づいて記載する。しかしながら、実施形態の記載は説明の目的でしたものにすぎず、本開示の磁性材料の製造方法はこの実施形態に限定されない。
【0022】
先ず、外層の材料として用いられる第2の粒子200を、例えば0.02〜10μmに粉砕する。次いで、粉砕した第2の粒子200とコア部分に用いられる第1の粒子100とを乾式ボールミルで混合して、
図3Aに示されるように、第2の粒子200が第1の粒子100の表面を均一に覆うようにする。第2の粒子200間に隙間ができることがあり、よって第1の粒子100の表面が完全に覆われないことがある。他の適した物理的方法、例えばせん断および撹拌混合、ならびに高速撹拌および混合などにより、第1の粒子100と第2の粒子200とを混合することができる。第2の粒子200が第1の粒子100の表面を覆うようにするために、化学的方法を用いることもできる。しかし、さらなる洗浄ステップが必要であり、これにより溶媒が残留し、材料が酸化され易くなるという問題が生じ得る。
【0023】
第1の粒子100は、Fe、Feの酸化物またはこれらの組み合わせであってよく、例えば酸化第一鉄(ferrous oxide,FeO)、酸化第二鉄(ferric oxide,Fe
2O
3)、四酸化第三鉄(ferroferric oxide,Fe
3O
4)、またはこれらの組み合わせであり得る。第1の粒子100がFeであるとき、その粒径は0.5〜100μmであり得る。第1の粒子100がFeの酸化物であるとき、その粒径は0.5〜100μmであり得る。第2の粒子200はMの酸化物またはMの水酸化物であってよく、MはCr、Si、CrSi、CrSiFe、Al、FeCr、FeSi、FeAl、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせである。第2の粒子200の粒径は0.02〜10μmであり得る。第1の粒子100と第2の粒子200とを混合する際、その重量比は200:1〜5:1とすることができる。
【0024】
次いで、第1の粒子100と第2の粒子200との上記混合物を約5%の水素雰囲気中に置いて、約600〜1200℃で2〜15時間反応させて磁性材料3を形成する。
【0025】
水素化プロセスにおいて、第2の粒子200の一部で還元反応が起き、Mの酸化物が金属元素Mに還元される。金属元素Mが第1の粒子100中に拡散し、第1の粒子100の成分と合金、例えばFeM合金を形成する。そして、合金層32が第1の粒子100の表面に形成される。合金層32の厚さは0.05〜10μmであってよく、これは水素化反応の時間によって決まる。水素化反応の時間は2〜15時間とすることができる。水素化反応の時間が短すぎると、得られる合金層32の厚さが薄くなりすぎてしまい、後続の焼結により酸化してパッシベーション層を形成できなくなる。コア部分30は酸化され易くなり、結果として磁気特性が低下してしまう。第1の粒子100中に拡散しない残留金属元素M、または還元していないMの酸化物が合金層32の表面に残り、これが後述においてハイブリッド層34と称するものである。合金層32の内部をコア部分30と称する。本実施形態における第1の粒子100がFeまたはFeの酸化物のいずれであるかにかかわらず、水素化反応の後、Feの酸化物のほぼ全てがFeに還元される。よって、コア部分30は主成分としてFeを有するため、純金属の良好な磁気特性を備える。
【0026】
よって、水素化および還元反応後に生成された磁性材料3は、
図3Bに示されるように、主成分としてFeを有する(99wt%以上)をコア部分30と、コア部分30の表面に配置された合金層32と、合金層32の表面上に配置されたハイブリッド層34とを含む。
【0027】
コア部分を外部環境から絶縁させるために合金をコア部分の全体とする磁性材料と比較して、本開示の磁性材料は、上記水素化および還元反応により得られるコア部分表面の薄い合金層を含むだけで、磁気特性を低下させ得る酸化に対する耐性をコア部分に備えさせる目的を達成することができるという点に留意すべきである。また本開示の磁性材料は、450〜900℃で銀と共焼結することもできる。加えて、内部のコア部分を保護するための上記薄い合金層の使用に際し、本開示では、Fe、またはFeおよび極めて少量のFeの酸化物(約1wt%以下)をコア部分として用いている。よって、合金をコア部分の全体とする磁性材料に比べ、本開示は、全体の飽和磁化などの磁気特性が大幅に高まる。
【0028】
次いで、磁性材料3を大気雰囲気中に置き、約450〜900℃で約1〜5時間焼結を行って磁性材料4を形成する。
【0029】
上記焼結プロセス後、合金層32中の合金がさらに酸化して合金の酸化物となり、 第1のパッシベーション層42が形成される。ハイブリッド層34中の金属元素Mがさらに酸化してMの酸化物となり、第2のパッシベーション層44が形成される。よって焼結後に生成された磁性材料4は、コア部分40、コア部分40の表面に配置された第1のパッシベーション層42、および第1のパッシベーション層42の表面に配置された第2のパッシベーション層44を含む。また、焼結後、
図3Cに示されるように、磁性材料4が第2のパッシベーション層44を介して互いに結合し、磁性材料4の凝集体が形成され得る。ただし、
図3Cには2つの磁性材料4の凝集体のみが描かれているが、いくつかの実施形態では、磁性材料4は、より多くの磁性材料4の凝集体の形式で存在し得るという点が理解されなければならない。あるいは、他の実施形態では、磁性材料4は、
図2に示されるように、互いに結合するのではなく、モノマーの形で存在する。
【0030】
本開示の別の実施形態は、磁性材料および金属の焼結体を含む磁性部品を提供する。磁性材料は、上述した磁性材料1または磁性材料2であってよい。用いられる金属には、銀、銅、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。焼結体中における磁性材料は、磁性材料1または磁性材料2の粉末モノマー(powder monomer)、粉末モノマーの残渣(debris)、粉末モノマーの凝集体、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0031】
一実施形態では、銀を磁性材料1または磁性材料2と共焼結することができる。焼結の温度は450〜900℃であってよい。かかる条件下では、パッシベーション層が自己形成されることになるため、絶縁材料としての有機物を加える必要はない。有機物が絶縁層中に用いられると、高温に置かれた後にその絶縁層は絶縁作用を失ってしまい(炭素または二酸化炭素ガスが形成される)、ひいては磁性材料の作用効果が失われてしまう。しかしながら、磁性材料と金属との間にパッシベーション層が形成されるのであれば、磁性材料と金属との共焼結の温度は、磁性材料の外層の酸化物の特性、または異なる金属材料の融点に応じて調整可能である。
【0032】
磁性部品には、多層インダクタ、巻線型インダクタ、または電磁妨害(EMI)抑制部品が含まれ得る。しかし、本開示に記載された磁性部品はこれらの部品に限定されることはない。加えて、異なる磁性部品のタイプに応じて、製造方法もまた異なるものとなる。多層インダクタを例にすると、磁性材料1または磁性材料2をスラリーと均一に混合してから、塗布して薄膜を形成することができる。次いで、スクリーン印刷のような方法を用いて金属配線を薄膜上に印刷する。次に、薄膜を大気雰囲気中に置き、約450〜900℃で約0.5〜10時間共焼結して、多層インダクタを形成する。同様に、磁性材料1または磁性材料2は他のタイプの磁性部品にも適用可能である。磁性部品の各種製造法は当業者には周知であり、かつ当業者により修正および利用が可能であるため、不要な繰り返しを避けるべくそれらについてここでは記載しない。
【0033】
本開示が提供する磁性材料は、Fe、またはFeおよび極めて少量のFeの酸化物(約1wt%以下)をコア部分とする。コア部分の外側に薄い合金層および薄いパッシベーション層を用いることのみにより、コア部分を外部環境から絶縁する目的を達成することができる。コア部分の全体に合金を用いる磁性材料と比較して、本開示は、全体の飽和磁化のような磁気特性が大幅に高まる。故に、本開示が提供する磁性材料は、高い透磁率および高い飽和磁化を備え、かつ金属と共焼結して自己形成パッシベーション層を生成し、実用的な磁性部品を形成することができる。加えて、本開示が提供する磁性材料から形成された磁性部品もまた、高い透磁率および高い飽和磁化といった利点を備える。
【実施例】
【0034】
各種実施例および比較例を以下に挙げ、本開示により提供される磁性材料およびその特徴を説明する。
【0035】
〔比較例1/実施例1〕
比較例1および実施例1を、表1に示される量にしたがって作製した。比較例1−1を除き、第1の粒子および第2の粒子を乾式ボールミルで混合した。次いで、表1に示されるプロセスにしたがって、得られた混合物を用いて磁性材料を作った。
【0036】
比較例1−1〜1−5および実施例1−1〜1−8の各粒子の透磁率を測定した。その結果は表2に示されている。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
〔比較例2/実施例2〕
比較例2および実施例2を表3に示される内容にしたがって作製した。比較例2−1を除き、第1の粒子および第2の粒子を乾式ボールミルで混合した。次いで、表3に示されるプロセスにしたがって、得られた混合物を用いて磁性材料を作った。
【0040】
比較例2−1〜2−2および実施例2−1〜2−8の各粒子の透磁率を測定した。その結果は表4に示されている。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
表2および4を参照すると、比較例1−1および2−1の結果から、金属Feは初め良好な透磁率を有するが、焼結プロセス後、上記特性が明らかに悪化することが分かる。同様に、比較例1−2および2−2の結果から、第1の粒子Feおよび第2の粒子Cr
2O
3の混合物は初め良好な透磁率を有するが、焼結プロセス後、同じく上記特性が明らかに悪化することが分かる。比較例3から、酸化第二鉄(Fe
2O
3)を第1の粒子に用い、Cr
2O
3を第2の粒子に用いた混合物の透磁率は良好でなかったことがわかる。
【0044】
上記より、金属Feを第1の粒子として用いても(例えば、比較例1−1、1−2)、金属Feが元来有する良好な透磁率は、焼結プロセス後、顕著に影響を受けた(例えば比較例2−1、2−2)ということが理解される。さらに、酸化第二鉄(Fe
2O
3)を第1の粒子として用いても(例えば、比較例1−3)、透磁率は良好ではなかった。
【0045】
しかしながら、表2を参照し、実施例1−1〜1−8と比較例1−1とを比較すると、第1の粒子(Fe,Fe
2O
3)と、様々な第2の粒子(Cr
2O
3,Al(OH)
3,SiO
2,Fe
2O
3)とをボールミルを用いて混合することにより形成した混合物の透磁率(@10MHz)が、比較例1−1と比べて、水素化プロセス後に大幅に増加したことがわかる。加えて、実施例1−1〜1−8と比較例1−4および1−5の結果を比較することにより、実施例1−1〜1−5で得られた磁性粒子の透磁率(@1MHz,@10MHz)は、Fe合金(FeSi,FeNiMo)を第1の粒子として用いる比較例1−4および1−5に比べて、より優れていたということがさらにわかる。実施例1−5では第1の粒子としてFe
2O
3を用いているものの、比較例1−3と比較して水素化後に透磁率(@1MHz,@10MHz)が大幅に増加したということは、特筆すべきである。
【0046】
図4は、比較例1−1および実施例1−1、1−5の磁性材料の透磁率を示している。比較例1−1に比べて、実施例1−1および1−5の透磁率はいずれも高周波(例えば1MHz〜100MHz)で増加していることが観察できる。
【0047】
次いで、表4を参照し、実施例2−1〜2−8および比較例2−1の結果を比較すると、第1の粒子(Fe,Fe
2O
3)と、様々な第2の粒子(Cr
2O
3,Al(OH)
3,SiO
2,Fe
2O
3)とをボールミルを用いて混合することにより形成した混合物の透磁率(@1MHz,@10MHz)が、焼結プロセス前に水素化反応を行ったときに、比較例2−1と比べて大幅に増加していることがわかる。加えて、実施例2−1〜2−8および比較例2−2の結果を比較すると、第1の粒子(Fe,Fe
2O
3)と、様々な第2の粒子(Cr
2O
3,Al(OH)
3,SiO
2,Fe
2O
3)とをボールミルを用いて混合することにより形成した混合物の透磁率(@1MHz)が、焼結プロセス前に水素化反応を行ったときに、比較例2−2のそれと比べて大幅に増加していることがわかる。
【0048】
図5は、比較例2−1、2−2および実施例2−1、2−5の磁性材料の透磁率を示している。比較例2−1、2−2に比べて、実施例2−1、2−5の透磁率はいずれも高周波(例えば1MHz〜100MHz)で増加していることが観察できる。
【0049】
[走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果]
図6Aは、実施例2−1で形成された磁性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)断面概略図を示している。コア部分の周囲に合金領域が均一に分布しているのが観察できる。
図6Bは、
図6Aにおいて四角の囲いで示された領域の拡大図である。領域IはFeであり、領域IIはFeCrの酸化物を含むパッシベーション層であり、領域IIIはCr(Cr
2O
3)の酸化物を含むパッシベーション層である。
【0050】
[EDS−ラインスキャン結果]
図7Aは、実施例2−1で得られた磁性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)断面概略図を示している。
図7Bは、
図7Aにおいて四角の囲いで示された領域の拡大図である。
図7Bに示される領域にEDS−ラインスキャンを行った後、中心付近の領域IはF元素の量が最も高く、かつCrおよびO元素は少量のみ含むということがわかった。よって、本開示の磁性材料の中心が、ほぼ全てFeからなるということが証明された。加えて、Crの量が領域IIIから中心へと次第に減少することも観察され、このことは、磁性材料中のCr元素が実際に領域IIIから領域IIへと拡散していることを証明している。さらに、O元素の量から判断すると、領域IIがFeCrの酸化物を含み、かつ領域IIIがCrの酸化物を含むことが推測できる。また、
図7Bに示される領域III中のFeの量は、EDS−ラインスキャンの過程における検知位置の誤差によるものであると思われる。理論上、熱処理の過程において、少量のFeのみが中心付近の領域Iから領域IIおよび領域IIIへと拡散する。
【0051】
〔比較例3〕
比較例1−1で得られた磁性材料を600℃の焼結温度で銀と共焼結し、共焼結型インダクタを形成した(成形条件:ψ9mm×ψ5mmの型、600℃まで加熱してから、1時間焼結を続け、最後に自然冷却)。
図8Aは、比較例3のSEMイメージを示している。
図8Aから、自己形成パッシベーション層は形成されなかったことが観察できる。
【0052】
〔実施例3−1〕
実施例1−6で得られた磁性材料を600℃の焼結温度で銀と共焼結し、共焼結型インダクタを形成した(成形条件:ψ9mm×ψ5mmの型、600℃まで加熱してから、1時間焼結を続け、最後に自然冷却)。
図8Bは、実施例3−1のSEMイメージを示している。
図8Bから、自己形成パッシベーション層が形成されている(矢印で示される)ことが観察できる。
【0053】
〔実施例3−2〕
実施例1−8で得られた磁性材料を600℃の焼結温度で銀と共焼結し、共焼結型インダクタを形成した(成形条件:ψ9mm×ψ5mmの型、600℃まで加熱してから、1時間焼結を続け、最後に自然冷却)。
図8Cは、実施例3−2のSEMイメージを示している。
図8Cから、自己形成パッシベーション層が形成されている(矢印で示される)ことが観察できる。
【0054】
上記結果から、自己形成パッシベーション層が、本開示により提供された磁性粒子と金属(例えば銀)との間に形成されて、磁性粒子と金属とを絶縁することが証明されており、有効なインダクタの形成に成功している。
【0055】
いくつかの実施形態により本発明を上述のとおり開示したが、本発明はこれによって限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない範囲で、任意の変更および修正を加えることができる。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されたものを基準に判断するものとする。