(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のエンジン制御部のそれぞれは、前記複数のエンジンごとに予め設定された再始動待ち時間を記憶しており、前記始動に失敗したエンジンの再始動を実行する場合には、前記スタート指令が再入力された時点から前記再始動待ち時間が経過した後に、それぞれのスタータを介してそれぞれのエンジンを再始動させる
請求項1に記載の船舶の始動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の船舶の始動制御装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る船舶の始動制御装置を船舶用内燃機関に適用した場合の全体構成図である。
図1に示すように、船舶11の船尾に、内燃機関(以下「エンジン」という)、プロペラなどが一体化された3つの船外機100、200および300が装着されている。
【0014】
船外機100、200および300は、始動機構であるスタータ135、235および335、並びに、ECU(Electronic Control Unit)130、230および330を備えている。以下、船外機100、200および300のECU130、230および330を、エンジンECUと称することがある。
【0015】
船外機100、200および300は、船舶11の右舷側から左舷側に向かう方向順に、P(ポート)、C(センター)およびS(スターボ−ト)と名付けて識別されている。
【0016】
船外機100、200および300にそれぞれ搭載されているエンジンには、識別のためのインスタンス値が設定されている。インスタンス値は、船舶11の右舷側から左舷側に向かう方向に、1〜3の順に設定されている。以下、船外機100、200および300にそれぞれ搭載されているエンジンを、インスタンス1のエンジン、インスタンス2のエンジンおよびインスタンス3のエンジンと称する。
【0017】
船舶11内には、操船リモコン110、210および310、及びECU10が設けられている。ECU10は、船舶11内部の装置および船外機100、200および300を統括して制御する統括制御部である。ECU10は、インスタンス1〜3のエンジンを始動させるためのスタート指令信号を、各エンジンECUに出力する機能を備えている。
【0018】
操船リモコン110、210および310には、スロットルレバー101、201および301が配置されている。そして、スロットルレバー101、201、301には、レバー位置を検出するLPセンサ102、202、302(Lever PoSition Sensor)が設けられている。
【0019】
操船リモコン110、210および310内部のLPセンサ102、202および302で検出されたレバー位置信号は、信号線a1、a2およびa3を経て、シフト制御判定を行うECU10に出力される。そして、ECU10は、受信したレバー位置信号に基づいて、スロットルバルブの要求量(以下、要求スロットル開度という)と、前進/中立/後進の要求量(以下、要求シフト位置という)を検出する。
【0020】
ECU10は、レバー位置および船外機100、200および300内のECU130、230、330から信号線b1、b2、b3を経て受信されたエンジン状態から、全閉〜全開までのスロットルバルブの開度量(以下、目標スロットル開度という)、およびシフト位置(以下、目標シフト位置という)を判断する。
【0021】
また、ECU10には、スタート・ストップスイッチ15が接続されている。
【0022】
また、ECU10は、目標スロットル開度(全閉〜全開)指令値および目標シフト位置(F/N/R)指令値、始動・停止指令値を、信号線b1、b2、b3を経て、船外機100、200、300内のECU130、230および330に送信する。
【0023】
ECU10からの指令値を受信したECU130、230および330は、図示しないスロットルリンク機構を介して、船外機100、200および300のスロットルバルブの開度量(吸入空気量)を制御する。また、ECU130、230および330は、図示しないシフトリンク機構およびシフト機構を介して、船外機100、200および300のシフト位置(前身/中立/後進)を制御する。
【0024】
また、ECU130、230および330は、スタータ135、235、335を介して、船外機100、200および300のエンジン始動を制御する。なお、ECU130、230および330は、停止指令受信時には、エンジンへの燃料噴射を停止する制御を行う。
【0025】
ECU130、230、330は、エンジン回転速度、スロットルバルブの開度量(実スロットル開度)、シフト位置(実シフト位置)を含む実際のエンジン状態をECU10へ送信する。
【0026】
次に、本発明に係る始動制御装置の処理の詳細を、
図2〜
図5に示すフローチャートおよび
図6に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1におけるECU130、230および330によって実行される始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すメイン処理は、例えば5mS毎に実行されるように設定する。
【0028】
まず、ECU130、230および330は、ステップS201において、多機掛け始動判定フラグを設定する処理を実行する。多機掛け始動判定フラグ処理の詳細については、
図3を用いて後述する。
【0029】
次に、ECU130、230および330は、ステップS202において、多機掛け始動判定タイマを設定する処理を実行する。多機掛け始動判定タイマ処理の詳細については、
図4を用いて後述する。
【0030】
次に、ECU130、230、330は、ステップS202において、スタート駆動フラグを設定し、スタータ135、235および335を駆動させて、船外機100、200および300のエンジン始動を行う処理を実行する。このスタート駆動フラグ処理の詳細については、
図5を用いて後述する。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態1における多機掛け始動判定フラグ処理に関するフローチャートである。まず、ステップS301において、船外機100、200および300のECU130、230および330は、ECU10から多機掛け始動スタートが指令されたか否かを判定する。具体的には、ECU130、230および330は、ECU10から出力されたスタート指令信号が、「0」→「1」に変化したか否かを検出する。
【0032】
スタート指令信号が「0」→「1」となったことを検出した場合(S301:Yes)には、ECU130、230および330は、ステップS302を実行し、スタート指令信号が「0」→「1」となっていない場合(S301:No)には、ステップS303を実行する。
【0033】
ステップS302において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが「0」(タイマ停止状態)となっているか否かを判定する。ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが「0」の場合(S302:Yes)には、ステップS308を実行し、多機掛け始動判定タイマが「0」ではない場合(S302:No)には、ステップS303を実行する。
【0034】
ステップS308において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマ停止状態においてECU10からのスタート指令信号を受け付けたと判断し、多機掛け始動判定フラグを「1」に設定して、多機掛け始動判定フラグ処理を終了する。
【0035】
ステップS303において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが連続始動判定時間以上となっているか否かを判定する。具体的には、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが連続始動判定時間以上となっている場合(S303:Yes)には、続いてステップS309を実行し、多機掛け始動判定タイマが連続始動判定時間より少ない場合(S303:No)には、ECU130、230および330は、ステップS304を実行する。
【0036】
ここで、連続始動判定時間とは、エンジンの始動開始から始動完了までの制限時間として、予め設定される時間である。連続始動判定時間の設定値は、ECU130、230および330内の図示しない記憶部に格納されている。なお、本実施の形態1では、連続始動判定時間を15秒として説明する。
【0037】
ステップS304において、ECU130、230および330は、エンジンの回転速度が始動完了回転速度の閾値以上となっているか否かを判定する。具体的には、エンジン回転速度が始動完了回転速度の閾値以上の場合(S303:Yes)には、エンジンの始動が完了したと判断し、ステップS309を実行する。一方、エンジン回転速度が始動完了回転速度の閾値未満の場合(S304:No)には、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定フラグ処理を終了する。エンジンの回転速度は、図示していない回転速度検出器により検出することができる。なお、本実施の形態1では、始動完了回転速度の閾値を800r/minとして説明する。
【0038】
ステップS309において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定フラグを「0」に設定して、多機掛け始動判定フラグ処理を終了する。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態1における多機掛け始動判定タイマ処理に関するフローチャートである。まず始めに、ステップS401において、ECU130、230および330は、
図2のステップS201で設定された多機掛け始動判定フラグが「1」にセットされているか否かを判定する。多機掛け始動判定フラグが「1」にセットされている場合(S401:Yes)には、ECU130、230および330は、ステップS402を実行する。一方、多機掛け始動判定フラグが「1」にセットされていない場合(S401:No)には、ECU130、230および330は、ステップS403を実行する。
【0040】
ステップS402において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマを更新させるために、メイン周期毎に、現在のタイマに1を加算して、多機掛け始動判定タイマ処理を終了する。なお、多機掛け始動判定タイマの上限値は、例えば、演算上の制限値を使用して、65535(327.675秒)とする。
【0041】
ステップS403において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマを「0」に初期化して、多機掛け始動判定タイマ処理を終了する。
【0042】
図5は、本発明の実施の形態1におけるスタート駆動処理に関するフローチャートである。まず、ステップS501において、ECU130、230および330は、ECU10から多機掛け始動スタートが指令されたか否かを判定する。具体的には、ECU130、230および330は、ECU10から出力されたスタート指令信号が「1」であるか否かを判定する。
【0043】
ECU10から出力されたスタート指令信号が「1」である場合(S501:Yes)には、ECU130、230および330は、ステップS502を実行し、スタート指令信号が「1」ではない場合には、ステップS504を実行する。
【0044】
次に、ステップS502において、ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが、予め設定した多機掛け始動ウェイト時間以上となっているか否かを判断する。
【0045】
ECU130、230および330は、多機掛け始動判定タイマが、予め設定した多機掛け始動ウェイト時間以上となっている場合(S502:Yes)には、ステップS508を実行し、多機掛け始動判定タイマが、予め設定した多機掛け始動ウェイト時間より少ない場合(S502:No)には、ステップS509を実行する。
【0046】
ステップS508において、ECU130、230および330は、スタート駆動フラグを「1」(スタータ駆動)にセットして、スタート駆動フラグ処理を終了する。
【0047】
ステップS509において、ECU130、230および330は、スタート駆動フラグを「0」(スタータ停止)にセットして、スタート駆動フラグ処理を終了する。
【0048】
ここで、多機掛け始動ウェイト時間とは、インスタンス1〜3のエンジンを1機ずつ順次始動する際に、ECU10からのスタート指令信号がECU130、230および33へ入力された時点から始動開始までの待ち時間として、インスタンス1〜3のエンジンごとに予め設定される時間である。多機掛け始動ウェイト時間の設定値は、ECU130、230および330内の図示しない記憶部に格納されている。なお、本実施の形態1においては、インスタンス1、2、3のエンジンの多機掛け始動ウェイト時間をそれぞれ0秒、3秒、6秒とし、インスタンス1、2、3の順にエンジンを始動する。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態1における多機掛け始動に関するタイミングチャートである。以下、
図6を用いて、本発明の多機掛け始動および多機掛け再始動処理について具体的に説明する。
【0050】
本発明の実施の形態1に係るエンジン始動装置は、多機掛け始動処理において、
図6に示すように、初期始動期間と再始動期間を設定するように構成されている。初期始動期間とは、インスタンス1〜3の3機のエンジンを順次始動開始してから始動完了するまでの期間である。再始動期間とは、初期始動時に始動に失敗したエンジンがあった場合に、該始動に失敗したエンジンの再始動を行う期間である。なお、初期始動期間と再始動期間の和が、多機掛け始動開始から始動完了までの制限時間(連続始動判定時間)に相当する。
【0051】
初期始動時には、予め各エンジンに設定した多機掛け始動ウェイト時間に基づいて、インスタンス1〜3のエンジンの始動開始時間に時間差を設けて、インスタンス1〜3のエンジンを順次始動する。
【0052】
これにより、インスタンス1〜3のエンジンを一斉に始動する場合に比べて、始動に必要な電力が増加する。この結果、バッテリ電圧低下による電力不足によって、エンジンが始動できない、またはエンジンECUがリセットされてしまう事態を回避することが可能となる。
【0053】
一方、再始動時には、インスタンス1〜3のエンジンのうち、初期始動に失敗した1〜3機のエンジンを、スタート指令信号がエンジンECUに入力された時点からウェイト時間なしで一斉に始動する。これにより、初期始動に失敗したエンジンが複数あった場合でも、該複数のエンジンをタイムラグ無しに再始動することが可能となる。
【0054】
図6において、多機掛け始動の開始指令および停止指令であるスタート指令信号は、船舶11内に備えられたECU10において生成され、船外機100、200および300のECU130、230および330に送信される。
図6では、スタート指令信号が「1」となる期間を9秒間としている。
【0055】
図6の時点t1において、スタート指令信号は「0」→「1」となり、時点t4において、スタート指令信号は「1」→「0」となる。インスタンス1〜3のエンジンの始動が全て成功した場合には、時点t4以降のスタート指令信号は「0」のまま維持され、再始動は、実行されない。
【0056】
一方、
図6に示すように、インスタンス1〜3のエンジンのうち、少なくとも1機の始動が失敗した場合には、ECU10は、時点t4から時点t6までの再始動期間中にスタート指令信号を「0」→「1」に設定する。これにより、始動に失敗したエンジンの再始動が実行される。
【0057】
図6においては、初期始動が失敗したインスタンス2のエンジンを再始動するために、再始動期間中の時点t5(t4<t5<t6)においてスタート指令信号を「0」→「1」とする場合を示している。
【0058】
図6における多機掛け始動判定フラグ、多機掛け始動判定タイマおよびスタート駆動フラグは、ECU130、230および330によって、
図2〜
図5で説明したフローチャートに従って制御される。
【0059】
多機掛け始動判定フラグは、時点t1において「0」→「1」となり、時点t6において「1」→「0」となる。多機掛け始動判定フラグは、多機掛けを行うインスタンス1〜3のエンジンECUであるECU130、230および330において共通である。
【0060】
多機掛け始動判定タイマは、時点t1では「0」であり、時点t1から時点t6に掛けて単調増加する。これは、
図4のS402に示すタイマのインクリメント処理による増加である。時点t6では、多機掛け始動判定タイマは、連続始動判定時間である15秒となる。多機掛け始動判定タイマは、多機掛けを行うインスタンス1〜3のエンジンECUであるECU130、230および330において共通である。
【0061】
スタート駆動フラグは、スタータ135、235および335に対してそれぞれ設定される。ECU130、230および330は、スタート駆動フラグを「0」→「1」とし、スタータ135、235および335を駆動することで、インスタンス1〜3のエンジンの始動を行う。そして、ECU130、230および330は、始動成功の判定を行った時点においてスタート駆動フラグを「1」→「0」とし、スタータ135、235および335を停止する。
【0062】
なお、
図6に示すスタート駆動フラグは、初期始動と再始動の両方が実施されるインスタンス2のスタータ235に対応するスタート駆動フラグを示している。
【0063】
次に、インスタンス1〜3の3機のエンジンを順次始動する多機掛け始動および再始動について、時系列に沿って説明する。
【0064】
図6においては、多機掛け始動ウェイト時間は、インスタンス1のエンジンでは0秒、インスタンス2のエンジンでは3秒、インスタンス3のエンジンでは6秒に設定している。また、スタータ135、235および335によるエンジンの始動判定時間を3秒としている。
【0065】
このように多機掛け始動ウェイト時間およびエンジンの始動判定時間を設定した状態で、時点t1において、ECU130、230および330がECU10からのスタート指令信号を受信した際の初期始動について、以下に説明する。
【0066】
ECU130は、インスタンス1のエンジンの多機掛け始動ウェイト時間が0秒であるため、スタート指令信号を受信した時点t1においてインスタンス1のスタータ135を駆動して、インスタンス1のエンジンの始動を開始する。
【0067】
ECU230は、インスタンス2のエンジン多機掛け始動ウェイト時間が3秒であるため、時点t1から3秒後の時点t2において、インスタンス2のスタータ235を駆動して、インスタンス2のエンジンの始動を開始する。
【0068】
ECU330は、インスタンス3のエンジン多機掛け始動ウェイト時間が6秒であるため、時点t1から6秒後の時点t3において、インスタンス3のスタータ335を駆動して、インスタンス3のエンジンの始動を開始する。
【0069】
これにより、インスタンス1〜3のエンジンは、スタート指令信号を受信した時点t1から3秒ごとに、インスタンス1、2、3の順に始動を開始することとなる。
【0070】
ECU130、230および330は、スタータ135、235および335によるエンジンの始動判定時間内に、インスタンス1〜3のエンジンの回転速度が始動完了回転速度の閾値以上となった場合を、「始動成功」と判定する。そして、ECU130、230および330は、「始動成功」と判定した時点で、スタート駆動フラグを「1」→「0」として、スタータ135、235および335を停止する。
【0071】
なお、始動完了回転速度の閾値は、
図6に示すように、例えば800r/minとすればよい。
【0072】
「始動成功」の判定結果情報は、ECU130、230および330からECU10に出力される。インスタンス1〜3の3機のエンジン全てが「始動成功」と判定された場合には、ECU10は、「初回多機掛け始動成功」と判定して、多機掛け始動処理を終了する。
【0073】
一方、スタータ135、235および335によるエンジンの始動判定時間の期間中に、該当エンジンの回転速度が始動完了回転速度の閾値以上とならなかった場合には、ECU130、230および330は、「始動失敗」と判定する。そして、ECU130、230および330は、初期始動期間の終了時点である時点t4において、スタート駆動フラグを「1」→「0」として、スタータ135、235および335を停止する。
【0074】
「始動失敗」の判定結果情報は、ECU130、230および330からECU10に出力される。
【0075】
以下、インスタンス2のエンジンを再始動する場合について説明する。
図6に示すように、インスタンス2のエンジンのスタート駆動フラグが「0」→「1」となった時点t2から初期始動期間の終点であるt4までの間に、回転速度が始動完了回転速度の閾値(800r/min)以上とならなかった場合、ECU230は、「インスタンス2 始動失敗」と判定する。ECU230は、時点t4において、インスタンス2のエンジンのスタート駆動フラグを「1」→「0」として、スタータ235を停止する。ECU230は、「インスタンス2 始動失敗」の判定結果情報をECU10に送信する。
【0076】
ECU10は、インスタンス1〜3の3機のエンジンのうち、
図6に示すインスタンス2のエンジンのように、少なくとも何れか1つのエンジンが「始動失敗」と判定された場合、「初回多機掛け始動失敗」と判定して、多機掛け再始動処理を実行する。
【0077】
多機掛け再始動処理においては、まず、ECU10は、予め設定した再始動期間内にスタート指令信号を「0」→「1」とすることで、再始動用のスタート指令信号を出力する。
図6においては、予め設定した再始動期間は、時点t4〜時点t6の期間である。また、再始動用のスタート指令信号は、時点t4〜時点t6の期間内の時点t5において出力される。
【0078】
時点t5において再始動用のスタート指令信号を受信したECU230は、インスタンス2のエンジンのスタート駆動フラグを「0」→「1」として、インスタンス2のスタータ235を再び駆動させ、インスタンス2のエンジンを再始動する。そして、ECU230は、インスタンス2のエンジンの回転速度を検出し、回転速度が始動完了回転速度の閾値(800r/min)以上となった場合を「インスタンス2 再始動成功」と判定する。
【0079】
再始動成功と判定した時点で、ECU230は、インスタンス2のエンジンのスタート駆動フラグを「1」→「0」として、スタータ235を停止する。「再始動成功」の判定結果情報は、ECU230からECU10に出力される。ECU10は「多機掛け再始動成功」と判定して、多機掛け再始動処理を終了する。
【0080】
上記の説明では、予め設定した再始動期間を時点t4〜時点t6の期間とした。また、再始動用のスタート指令信号は、時点t4〜時点t6の期間内の時点t5において、ECU230が受信するとした。このように再始動期間および再始動用のスタート指令信号を設定する目的および効果について説明する。
【0081】
このように再始動期間を設定する目的は、初期始動において複数のエンジンが始動失敗した場合において、初期始動に始動失敗した複数のエンジンの再始動を、エンジン毎では無く、一斉に実行するためである。そのために、順次始動されるエンジンのうち、最後に始動されるインスタンス3のエンジンの始動判定時間終了時点である時点t4を、再始動期間の開始時点として設定している。これにより、初期始動に始動失敗した複数のエンジンを、タイムラグを生じること無く再始動することが可能となる。
【0082】
より具体的には、ECU10が、予め設定されているエンジンの機数、インスタンス情報に基づいて、
図6に示す「インスタンス1〜3始動失敗用の待ち時間」を予め設定することで、再始動期間を設定することができる。例えば、
図6に示すように、インスタンス1のエンジンの始動失敗用の待ち時間を、時点t1から時点t4までの15秒とする。インスタンス2のエンジンの始動失敗用の待ち時間を、時点t2から時点t4までの12秒とする。
【0083】
インスタンス3のエンジンの始動失敗用の待ち時間を、時点t3から時点t4までの9秒とする。これにより、時点t4以降の待ち時間は、インスタンス1〜3の全てのエンジンにおいて6秒となる。この6秒の間に、ECU10から出力された再始動用のスタート指令信号をインスタンス1〜3のECU130、230および330が受信することによって、全てのエンジンを一斉始動するようにすればよい。
【0084】
なお、再始動用のスタート指令信号は、ECU10から始動に失敗したインスタンス2のECU230のみに送信するように設定してもよく、初期始動時と同様に、全てのインスタンス1〜3のECU130、230および330に送信するようにしてもよい。再始動用のスタート指令信号をECU10からECU130、230および330に送信する場合には、既に始動に成功しているインスタンス1および3のECU130および330は、受信した再始動用のスタート指令信号を無視するような設定とすればよい。
【0085】
また、ECU10から再始動用のスタート指令信号が出力される時点t5は、順次に始動されるエンジンのうち、最後に始動されるエンジンであるインスタンス3のエンジンの始動判定時間終了時点である時点t4に、例えば1秒程度の余裕時間を加算した時点としてする。余裕時間は、ネットワーク間の通信時間およびECU10の演算処理時間等を考慮して予め設定すればよい。
【0086】
なお、以上説明した多機掛け再始動処理を実行した場合において、更に「再始動失敗」となる場合が想定される。そのため、少なくとも1機のエンジンにおいて「再始動失敗」と判定された場合には、多機掛け再始動処理を複数回繰り返して実行するように設定してもよい。その場合には、ECU10は再始動期間(
図6の時点t4〜t6)終了後に、スタート指令信号を更に出力するように設定する。
【0087】
また、例えば、全てのエンジンが「再始動成功」と判定されるまで、多機掛け再始動処理を複数回繰り返して実行する場合には、エンジン保護およびバッテリ保護の観点から、連続して行う再始動回数に、例えば3回まで等の上限を設け、上限回数以上の連続した再始動を禁止するように設定すると、好適である。
【0088】
また、エンジン保護およびバッテリ保護を優先する場合には、一斉再始動を行う多機掛け再始動処理は、1回のみに制限するように設定してもよい。
【0089】
また、初期始動および一斉再始動を行う多機掛け再始動に続く、通算で3回目となる始動処理を実行する場合には、「再始動失敗」となったエンジンを一斉に再始動せず、1回目と同様に順次再始動するようにしてもよい。
【0090】
その場合には、例えば、一斉再始動を行う多機掛け再始動期間(
図6では、時点t4〜時点t6の期間)を一斉始動許可期間として設定し、一斉再始動許可期間が経過した後にECU10からスタート指令信号が出力された場合には、エンジンECUは、初期始動時と同様にエンジン毎に異なる始動ウェイト時間を設定して、時間差を付けて複数のエンジンを順次再始動するように設定すればよい。
【0091】
また、エンジン保護およびバッテリ保護を優先する場合には、「再始動失敗」した場合においても、一斉再始動を行わず、初期始動時と同様に、エンジン毎に異なる始動ウェイト時間を設定して、時間差を付けて複数のエンジンを順次再始動するように設定してもよい。
【0092】
また、インスタンス1〜3のエンジンが再始動期間(
図6の時点t4〜時点t6の期間)中にあることを、ユーザーに報知するように設定してもよい。ユーザーへの報知は、再始動の対象となっているインスタンスのエンジンECUが、ブザーまたはランプを使用して行うようにすればよい。
【0093】
また、エンジンの始動時間は、船外機100、200および300の使用環境によって変化することが想定される。具体的には、例えば、気象状況によって外気温度が低い場合には、エンジンの始動時間が長くなる傾向がある。そのため、始動ウェイト時間、始動判定時間、始動失敗用の待ち時間および連続始動判定時間を、エンジン壁温に基づいて自動的に変更可能な構成とすると、好適である。
【0094】
以上説明したように、本発明の始動制御装置は、初期始動においては、予め設定した時間差を設けて複数のエンジンを順次始動する構成を備えている。この結果、バッテリ電圧降下に起因する始動失敗を回避するとともに、船舶に複数搭載されるエンジンを、従来よりも簡単な構成で確実に始動することができる。
【0095】
また、初期始動に失敗したエンジンの再始動は、予め設定した再始動期間内に一斉に実行する構成を備えている。この結果、スタート指令を行うノードは、各エンジン回転速度に基づいてスタート指令を行う必要が無いため、高速演算能力を有するECUを使用する必要は無い。すなわち、上記の実施の形態1では、ECU10がスタート指令を行うとして説明したが、本発明の実施の形態は、これに限られるものではない。ECU10の代わりに、より演算能力が低く簡単な構成を持つノード、例えばメーターまたは他のコントロールユニットを使用することが可能である。
【0096】
また、再始動期間を、最後に始動したエンジンの始動判定時間終了後に開始するように設定している。これにより、始動に失敗した複数のエンジンを一斉に再始動することが可能となる。
【0097】
また、エンジンの始動時間に時間差を設けずに一斉に再始動を行うことにより、ユーザーに違和感を与えること無く、迅速に再始動を行うことができる。
【解決手段】複数のエンジンにスタート指令を出力する統括制御部と、複数のエンジンそれぞれを始動させるスタータと、スタート指令の入力に基づいて、スタータを介して複数のエンジンそれぞれを始動させる複数のエンジン制御部と、複数のエンジンのそれぞれの回転速度を検出する回転速度検出部とを備え、統括制御部は、複数のエンジンを初期始動する際に、スタート指令を複数のエンジン制御部に出力し、複数のエンジン制御部のそれぞれは、複数のエンジンごとに異なる値として予め設定された個別の始動待ち時間を記憶しており、スタート指令が入力された時点から個別の始動待ち時間が経過した後に、それぞれのスタータを介してそれぞれのエンジンを始動させる。