特許第6429222号(P6429222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6429222マルチダイパワーモジュールを備えるシステム及びマルチダイパワーモジュールの動作を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429222
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】マルチダイパワーモジュールを備えるシステム及びマルチダイパワーモジュールの動作を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-542923(P2017-542923)
(86)(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公表番号】特表2018-506954(P2018-506954A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2016068448
(87)【国際公開番号】WO2016204305
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】15172320.2
(32)【優先日】2015年6月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】モロヴ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンチュク、ジェフリー
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−090151(JP,A)
【文献】 特開2013−094051(JP,A)
【文献】 米国特許第05663858(US,A)
【文献】 特表2007−500886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイで構成されるマルチダイパワーモジュールと、
前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイをアクティブ化する複数の連続した入力パターンを受信するコントローラーと、
を備えるシステムであって、
前記入力パターンは、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジで構成され、
前記ダイは、少なくとも1つのダイの第1のグループ、第2のグループ及び第3のグループにグループ化されることを特徴とし、
前記コントローラーは、
前記少なくとも1つのダイの第1のグループのゲート信号の前記立ち下がりエッジの時点を所定の値だけ進める手段と、
前記少なくとも1つのダイの第2のグループのゲート信号の前記立ち上がりエッジの時点を前記所定の値だけ遅らせる手段と、
前記少なくとも1つのダイの第3のグループのゲート信号の前記立ち上がりエッジの時点を前記所定の値だけ遅らせるとともに前記少なくとも1つのダイの第3のグループのゲート信号の前記立ち下がりエッジの時点を前記所定の値だけ進める手段と、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記システムは、前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイの電流要件及び最大電流駆動能力に従ってダイの数又はダイのグループの数を調整する手段を更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイをアクティブ化する各入力パターンにおいて、前記立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされる前記少なくとも1つのゲートツーソース信号を変更する手段を更に備える
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされる前記ゲートツーソース信号は、ラウンドロビンベースで変更される
ことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記時間シフトの生起は、最低でも、前記ダイの整流特性に依存し、前記ダイの総導通時間よりも少なくとも10倍小さい
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
ダイのグループで構成されるマルチダイパワーモジュールの動作を制御する方法であって、前記ダイは、少なくとも1つのダイの第1のグループ、第2のグループ及び第3のグループにグループ化されることを特徴とし、前記方法は、コントローラーによって実行されるステップであって、
前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイをアクティブ化する複数の連続した入力パターンを受信するステップであって、前記入力パターンは、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジで構成される、ステップと、
前記少なくとも1つのダイの第1のグループのゲート信号の前記立ち下がりエッジの時点を所定の値だけ進めるステップと、
前記少なくとも1つのダイの第2のグループのゲート信号の前記立ち上がりエッジの時点を前記所定の値だけ遅らせるステップと、
前記少なくとも1つのダイの第3のグループのゲート信号の前記立ち上がりエッジの時点を前記所定の値だけ遅らせるとともに前記少なくとも1つのダイの第3のグループのゲート信号の前記立ち下がりエッジの時点を前記所定の値だけ進めるステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記方法は、前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイの電流要件及び最大電流駆動能力に従ってダイの数又は前記ダイのクラスターの数を調整するステップを更に含む
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記マルチダイパワーモジュールの前記ダイをアクティブ化する各入力パターンにおいて、前記立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされる前記少なくとも1つのゲートツーソース信号を変更するステップを更に含む
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされる前記ゲートツーソース信号は、ラウンドロビンベースで変更される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記時間シフトの生起は、最低でも、前記ダイの整流特性に依存し、前記ダイの総導通時間よりも少なくとも10倍小さい
ことを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には、マルチダイパワーモジュールの動作を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチダイパワーモジュールは従来、幾つかの並列に接続されたパワーダイから構成され、単一のパワーダイの電流性能を超えて電流性能を高めるために使用される。
【0003】
例えば、三相コンバーターは、スイッチあたり4つの並列パワーダイから構成することができ、全部で24個のパワーダイを与える。
【0004】
SiC(炭化ケイ素)トランジスタ及びGaN(窒化ガリウム)トランジスタのような、新生のデバイス技術は通常、ウェハー基板の歩留まり及びコストに関する制約に起因して、高電流密度、小電力のダイにおいて実現される。
【0005】
より高い電力のSiCベースモジュールを実現するには、多数の並列接続SiCダイが必要である。並列接続モジュールとは異なり、並列接続ダイは、理想的には同じ負荷電流を整流する単一のスイッチを構成する。
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、使用されるダイのタイプ、すなわち、ダイオードが使用されるか、又は電圧駆動スイッチ、例えば、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)が使用されるかにかかわらず、負荷電流の均衡の取れた分配を静的にも、動的にも制限する特性がダイ内に存在する。各並列ダイを徐々に加えていくと、結果としてダイが最大限に利用されなくなり、それゆえ、所与の定格電流を達成するために、より多くのダイが並列にされる必要があるので、パワーモジュールの全体的なコスト及び物理的な表面積が増加する。
【0007】
製造中のパワーデバイスの電気特性の変動に起因して、電流は、ダイの間で等しく分配されず、特にスイッチング過渡中にアンバランスになる可能性がある。このため、整流速度が、SiC及びGaN等のより新しい技術とともに向上するにつれて、この動的な分配の課題は、深刻さのみが増してきた。
【0008】
スイッチング過渡現象の1つの重要な電気特性は、本明細書では「ダイ」と呼ばれる所与の電圧制御されたパワーダイの閾値電圧である。ノーマリーオフ型ダイの場合、ダイのソースとゲートとのコネクターの両端の電圧がそのレベルを下回っているとき、ダイチャネルは導通していない。そのレベルを上回ると、ダイは導通を開始する。閾値電圧が、同じゲート電圧を用いて制御される一組の並列のダイの間で完全に一致していないとき、電流は、スイッチング過渡現象中にこれらのダイにわたって等しく分配されない。その結果、スイッチング損失が、並列のダイにわたって大きく異なる可能性があり、望ましくない温度不均衡がダイ間で生じ、最終的には、最も大きなストレスを受けたダイの早期の経年劣化が起こる。
【0009】
通常、マルチダイパワーモジュールにおける論理的に同等なスイッチごとの並列のダイの数は、所望の電流定格と、マルチダイパワーモジュールパッケージのピークワット損と、パッケージ内のダイの熱定格との関数である。ダイの数が設定されると、マルチダイパワーモジュールにおける実際の損失は、以下の式のように、並列のIGBT又はMOSFETのダイの数Nに関係する。
【数1】
【0010】
ここで、Pcond(N)は、N個のダイが導通しているときの電力であり、Pswitching(N)は、N個のダイがスイッチングしているときの電力である。
【0011】
その場合、総電力は、Ptotal(N)=Pcond(N)+Pswitching(N)である。
【0012】
このように、マルチダイパワーモジュールのための所与の電流定格は、ダイの数Nと、動作条件、すなわち、周波数及び阻止電圧とに依存する最小損失点を有する。
【0013】
導通損失は、より多くのダイを並列に追加することを介して、すなわち、静的電流要件を満たすように減少させることができるが、ダイのこの増加の結果、各節点における並列キャパシタンスがより大きくなり、スイッチング損失が増加する。
【0014】
したがって、静的電流性能(current capability)を満たす所与の一組のダイの場合、スイッチングエネルギーは固定され、電力損失は、より低いスイッチング周波数を介してしか低減することができない。
【0015】
現行技術水準のマルチダイパワーモジュールは、ゲート駆動電圧又はゲート抵抗の変更のみを可能にして、整流時間を変化させることができ、並列のダイの数は、マルチダイパワーモジュールの動的性能を大きく制限する。
【0016】
相補型スイッチ対におけるダイオードの逆回復と、全導通電流に対するその影響とを無視すると、電圧制御されたダイのターンオフ時間及びターンオン時間は、以下のように、本質的に、キャパシタ充電事象としてターンオン事象中の電流立ち上がり時間を用いてモデル化することができる。
【数2】
【0017】
ここで、「Rg」はゲート抵抗であり、「Ciss」は入力キャパシタンスであり、Vgsonは、印加されたゲート電圧であり、「Vth」は閾値電圧であり、「gfs」はダイの相互コンダクタンスであり、Iはドレイン電流である。
【0018】
したがって、プラトー電圧(gfs−1Id)が、印加されたゲート電圧よりもはるかに小さい場合、電流の増加は、電流の立ち上がり時間のほぼ線形の増加をもたらし、電流立ち下がり時間及び電圧立ち上がり/立ち下がり時間についても同様の関係がある。
【0019】
この例は、図2a及び図2bを参照して与えられる。
【0020】
図2aは、2つのダイS1及びS2が並列に接続されているマルチダイパワーモジュールの一例である。これらのダイがともに導通しているとき、ダイS1は、Id(1−α)に等しい電流を有し、ダイS2は、Id(1−α)に等しい電流を有する。ここで、「α」は、整流された電流の振幅の間の単位当たりの差である。
【0021】
プラトー電圧が、印加された電圧よりもはるかに小さい場合において、一方のダイが2Iの電流を有し、他方のダイが電流を有しないとき、2つのダイの間の全体のスイッチング損失は、双方のダイが同じドレイン電流を運んでいる場合とほぼ等しい。しかしながら、入力キャパシタンスがこれらの2つの場合の間で変化することになる場合、すなわち、一方のダイが完全に負荷を受ける場合に入力キャパシタンスが低減されることになる場合、スイッチング損失は、実際には、アクティブなデバイスにおける電流立ち上がり時間の低減に起因して、2つの等しく負荷を受けるダイと比較して全体的に減少することができる。
【0022】
図2bは、ダイが異なるタイミングでスイッチングするときにダイに通電する電流を示している。
【0023】
20で示す期間中に、ダイS2はONにされ、21で示す期間中に、ダイS1及びS2はONにされる。
【0024】
通常、図2に示すように、2つの並列のMOSFETダイの場合に、ゲートドライバーから見た入力キャパシタンスは、ダイの双方の入力キャパシタンスを合計したものであり、したがって、スイッチング損失は、制限されたゲート供給電圧を所与とするこれらのパラメーターの関数である。
【0025】
この場合、2つの整流ダイは、異なる閾値電圧に起因して、異なる時点で電流の導通を開始し、これによって、時点「t」における電流の不整合が生じ、また、電流が2つのダイの間でバランスを保とうとするので、振動動作が生じる。これらの振動は、更には、電磁干渉の増加をもたらす。
【0026】
本発明は、マルチダイパワーモジュールのスイッチング速度を向上させることと、高度に動的な制御の実施を必要とせずに、並列接続されたデバイスのためのスイッチング過渡現象を制御することによってマルチダイパワーモジュールの最大能力を高めることとを目的とする。
【0027】
したがって、本発明は、ダイで構成されるマルチダイパワーモジュールと、マルチダイパワーモジュールのダイをアクティブ化する複数の連続した入力パターンを受信するコントローラーとを備えるシステムであって、ダイは、少なくとも1つのダイの複数のグループにグループ化されることを特徴とし、コントローラーは、少なくとも1つのダイのグループごとに1つのゲートツーソース信号を出力する手段を備え、少なくとも1つのゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジは、ダイの他のグループの他のゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジから反復的に時間シフトされることを特徴とする、システムに関する。
【0028】
したがって、振動を低減するとともに整流時間を削減するために、整流電流をダイの選択グループ又は単一のダイに効果的に集中させることができる。
【0029】
本発明はまた、ダイのグループで構成されるマルチダイパワーモジュールの動作を制御する方法であって、コントローラーによって実行されるステップであって、
マルチダイパワーモジュールのダイをアクティブ化する複数の連続した入力パターンを受信するステップと、
少なくとも1つのダイのグループごとに1つのゲートツーソース信号を出力するステップであって、少なくとも1つのゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジは、ダイの他のグループの他のゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジから反復的に時間シフトされる、ステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0030】
特定の特徴によれば、システムは、マルチダイパワーモジュールのダイの電流要件及び最大電流駆動能力に従ってダイの数又はダイのグループの数を調整する手段を更に備える。
【0031】
したがって、パワーモジュールの安全な動作エリアが常に確保される。
【0032】
特定の特徴によれば、システムは、マルチダイパワーモジュールのダイをアクティブ化する各入力パターンにおいて、立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされる少なくとも1つのゲートツーソース信号を変更する手段を更に備える。
【0033】
したがって、ダイにおける整流電流の立ち上がり時間及び立ち下がり時間に影響を与える種々のパラメーターに従って、時間シフトを適応させることができる。
【0034】
特定の特徴によれば、立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジが時間シフトされるゲートツーソース信号は、ラウンドロビンベースで変更される。
【0035】
したがって、個々のダイは、パワーモジュールの寿命を上回る過度のストレスを受けない。
【0036】
特定の特徴によれば、時間シフトの生起は、最低でも、ダイの整流特性に依存し、ダイの総導通時間よりも少なくとも10倍小さい。
【0037】
したがって、適切な時間シフトを予め求めて、フィードバックの必要なく適切な動作を確保する単純な方法が存在する。
【0038】
本発明の特性は、例示の実施形態の以下の説明を読むことから更に明らかになり、その説明は添付の図面を参照しながら行われる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるマルチダイパワーモジュールの動作を制御するためのシステムの一例を表す図である。
図2a】2つのダイが並列に接続されているマルチダイパワーモジュールの一例を示す図である。
図2b】ダイが異なるタイミングでスイッチングするときにダイに通電する電流を示す図である。
図3】本発明によるマルチダイパワーモジュールの動作を制御するためのシステムのコントローラーのアーキテクチャの一例を表す図である。
図4】マルチダイパワーモジュールのスイッチングタイミングの制御の一例を表す図である。
図5a】本発明による、2つのダイが並列に接続されて制御されるマルチダイパワーモジュールの一例を示す図である。
図5b】本発明による、ダイが異なるタイミングでスイッチングするときにダイに通電する電流を示す図である。
図5c】本発明による、2つのダイが並列に接続されて制御されるマルチダイパワーモジュールの一例を示す図である。
図5d】本発明による、ダイが異なるタイミングでスイッチングするときにダイに通電する電流を示す図である。
図6】本発明によるマルチパワーダイモジュールのダイのスイッチング時点を制御するアルゴリズムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明によるマルチダイパワーモジュールの動作を制御するためのシステムの一例を表している。
【0041】
マルチダイパワーモジュール150の動作を制御するためのシステムは、開ループ機構を用い、マルチダイパワーモジュール150内のダイのスイッチング時点を制御する。
【0042】
マルチダイパワーモジュール150の動作を制御するためのシステムは、マルチダイパワーモジュール150の少なくとも1つのダイ又は複数のダイ105に駆動信号を提供する複数のゲートドライバー102を備える。
【0043】
図1の例では、マルチダイパワーモジュール150の動作を制御するためのシステムは、少なくとも1つのパワーダイの3つのグループの動作を制御する3つのゲートドライバー102a〜102cを備える。
【0044】
図1の例では、少なくとも1つのパワーダイの各グループは、それぞれ105a〜105cで示す1つのダイを含む。
【0045】
ゲートドライバー102a〜102は、図3を参照して開示されるコントローラー104からコマンド信号を受信する。
【0046】
図3は、本発明によるマルチダイパワーモジュールの動作を制御するためのシステムのコントローラーのアーキテクチャの一例を表す。
【0047】
コントローラー104は、例えば、バス301と、図6において開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ300とによって互いに接続されるコンポーネントに基づくアーキテクチャを有する。
【0048】
バス301はプロセッサ200をリードオンリーメモリROM302、ランダムアクセスメモリRAM303及び入出力インターフェースI/O305にリンクする。
【0049】
メモリ303は、図6において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受信するように意図されたレジスタを含む。
【0050】
プロセッサ300は、入出力インターフェース305を通じてホストコントローラーからコマンドパターンを受信し、ゲートドライバー102によってダイ105に印加される信号の立ち上がり/立ち下がりエッジ時点を変更し、入出力インターフェース305を通じてゲートドライバー102にそれらの立ち上がり/立ち下がりエッジ時点を転送する。
【0051】
入出力インターフェースI/O205は2つのインターフェースに分割することができ、一方はホストコントローラーとのインターフェースであり、もう一方はパワーダイの動作を制御するためのデバイス102とのインターフェースである。
【0052】
入出力インターフェース205を通して、コントローラー104はホストコントローラーから起動コマンド又はロードコマンドを受信する。コントローラー104はこの起動コマンドを解釈し、複数のダイにわたる同期制御を与える。
【0053】
リードオンリーメモリ302は、図6において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含み、それらの命令は、コントローラー104が起動されるときに、ランダムアクセスメモリ303に転送される。
【0054】
図6に関して以下に説明されるアルゴリズムのありとあらゆるステップは、PC(パーソナルコンピューター)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)若しくはマイクロコントローラーのようなプログラム可能なコンピューティングマシンによって1組の命令若しくはプログラムを実行することによってソフトウェアにおいて実施することができるか、又はソフトウェアでなければ、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)のような、マシン若しくは専用コンポーネントによってハードウェアにおいて実施することができる。
【0055】
換言すれば、コントローラー104は、図6に関して以下で説明するアルゴリズムのステップをコントローラー104に実行させる回路部、又は回路部を備えるデバイスを備える。
【0056】
コントローラー104は、例えば、プリプログラムされたCPLD(複合プログラム可能論理デバイス)によって実現することができる。
【0057】
本発明によれば、ダイは、少なくとも1つのダイの複数のグループにグループ化され、コントローラーは、少なくとも1つのダイのグループごとに1つのゲートツーソース信号を出力する手段を備え、少なくとも1つのゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジは、ダイの他のグループの他のゲートツーソース信号の立ち上がりエッジ及び/又は立ち下がりエッジから反復的に時間シフトされる。
【0058】
図4は、マルチダイパワーモジュールのスイッチングタイミングの制御の一例を表している。
【0059】
コントローラー104は、ホストコントローラーからコマンドパターンを受信する。これらのコマンドパターンは、400で示される。
【0060】
例えば、制御パターンのアクティブ時間、すなわち、高レベル状態は、2マイクロ秒〜10マイクロ秒で構成される。
【0061】
410で示す信号は、ゲートドライバー102aに提供される信号であり、420で示す信号は、ゲートドライバー102bに提供される信号であり、430で示す信号は、ゲートドライバー102cに提供される信号である。
【0062】
本発明によれば、コントローラー104は、往復ベースで立ち上がりエッジ時点を遅らせ、立ち下がりエッジ時点を進める。
【0063】
例えば、制御パターンの第1の高レベル状態において、コントローラー104は、立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって、信号410のための高レベル411を生成し、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによって信号420のための高レベル421を生成し、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって信号430のための高レベル431を生成する。
【0064】
制御パターンの第2の高レベル状態において、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによって信号410のための高レベル412を生成し、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって信号420のための高レベル422を生成し、コントローラー104は、立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって信号430のための高レベル432を生成する。
【0065】
制御パターンの第3の高レベル状態において、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって信号410のための高レベル413を生成し、コントローラー104は、立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによって信号420のための高レベル423を生成し、コントローラー104は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによって信号430のための高レベル433を生成する。
【0066】
このラウンドロビンサイクルは、411、421及び431で示すものと同様のものである高レベル414、424及び434によって示されるように繰り返される。
【0067】
上記所定の値は、例えば、ダイ105のスイッチングに対応する10ナノ秒〜50ナノ秒である。ここで、この値は、マルチダイパワーモジュールにおいて用いられる特定のダイにおける電流の伝送遅延及び立ち上がり/立ち下がり時間に基づいていることに留意しなければならない。この所定の値は、各ダイの総導通時間よりも少なくとも10倍小さい。
【0068】
図5a及び図5cは、本発明による、2つのダイが並列に接続されて制御されるマルチダイパワーモジュールの一例である。
【0069】
図5aでは、ダイS1は導通しており、ダイS2は導通していない。図5bでは、ダイS2は導通しており、ダイS1は導通していない。
【0070】
本発明によれば、立ち上がりエッジ時点又は立ち下がりエッジ時点を遅らせるか又は進めることによって、ゲートドライバーによって見られるような駆動キャパシタンスを低減することが可能である。アクティブなダイが定格電流の2倍を有するように、一方のダイは、整流事象の間、非アクティブのままにされるので、全体の損失は、電流の立ち上がり/立ち下がり時間の減少に起因して低下することができる。プラトー電圧がゲート電圧と比較して小さい場合、電流の増加は、2つの導通しているダイと比較して損失を増加させず、このため、入力キャパシタンスを減少させることによって、損失は、短縮された等価な整流時間に起因して低下することができる。
【0071】
さらに、スイッチング損失低減は、制御されたマルチダイパワーモジュール内での電流立ち上がり時間及び電流立ち下がり時間を増加させることによって整流の間の安定性を改善するために通常加えられるより大きな電流分配抵抗器の必要性をなくすことによっても達成される。
【0072】
整流中にダイを順序付けることが分配をどのように改善することができるのかの一例が図5b及び図5dに示されている。
【0073】
図5b及び図5dは、本発明による、ダイが異なるタイミングでスイッチングするときにダイに通電する電流を示している。
【0074】
図5bはダイS1の整流を示し、図5dはダイS2の整流を示している。本発明によれば、ダイS1及びS2を順序付けることによって、電流が導通を開始する異なる点を有するにもかかわらず、電流は、ターンオンの間振動しない。したがって、電流が導通を開始するこれらの異なる点は、電流平衡抵抗器の必要性、及び振動に起因したEMI問題を取り除き、各デバイスの消耗を等しくすることができる。
【0075】
図6は、本発明によるマルチパワーダイモジュールのダイのスイッチング時点を制御するためのアルゴリズムの一例である。
【0076】
本アルゴリズムは、整流事象の間にアクティブなダイの数を減らすことによって多数の並列接続されたダイを制御し、高レベルコマンドごとにアクティブなダイを循環させる。本アルゴリズムは、一例としてダイの3つのグループについて実行される。本発明は、ダイのこれよりも少ない数のグループ又はこれよりも多くの数のグループについても適用可能である。
【0077】
基本的に、各スイッチング事象のための並列ダイの最適な数を表す数値は、コントローラー104内に事前にロードされている。
【0078】
コントローラー104は、ホストコントローラーからパルス幅変調コマンドを受信し、アクティブなダイの数を設定し、その後、適切なダイの立ち上がり事象若しくはターンオン事象を遅らせるか又はそれらのダイの立ち下がり事象若しくはターンオフ事象を進めて、それらの適切なダイに電流を強制的に通電する。所与のスイッチング期間において用いられるダイの数は記憶されており、その後、次のスイッチングサイクルに備えて、アクティブなダイの新たな数が選択される。非アクティブなダイは、その後、各サイクルにおいて次のダイに順次移動される。このように、アクティブなダイは循環され、整流中に見られる電流増加によって引き起こされる特定のダイに対する負荷が低減される。
【0079】
ステップS60において、プロセッサ300は、ダイの各グループのダイの最小数を求める。この最小数は、マルチダイパワーモジュールのダイの電流要件及び最大電流駆動能力に従って求められる。
【0080】
次のステップS61において、プロセッサ300は、インターフェース305を通じて制御パターンの高レベル状態を検出する。
【0081】
次のステップS62において、プロセッサ300は、立ち下がりエッジの時点を所定の値だけ進めることによってダイ105aを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによってダイ105bを含むダイの第2のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによってダイ105cを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成する。
【0082】
次のステップS63において、プロセッサ300は、インターフェース305を通じて制御パターンの高レベル状態を検出する。
【0083】
次のステップS64において、プロセッサ300は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによってダイ105aを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによってダイ105bを含むダイの第2のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによってダイ105cを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成する。
【0084】
次のステップS65において、プロセッサ300は、インターフェース305を通じて制御パターンの高レベル状態を検出する。
【0085】
次のステップS66において、プロセッサ300は、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせるとともに立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによってダイ105aを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち下がりエッジ時点を所定の値だけ進めることによってダイ105bを含むダイの第2のグループを対象とした信号のための高レベルを生成し、立ち上がりエッジ時点を所定の値だけ遅らせることによってダイ105cを含むダイの第1のグループを対象とした信号のための高レベルを生成する。
【0086】
その後、プロセッサ300はステップS61に戻る。
【0087】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6