特許第6429224号(P6429224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6429224
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】操舵装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20181119BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20181119BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20181119BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20181119BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20181119BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   H02P25/22
   H02P29/028
   B62D137:00
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-526726(P2018-526726)
(86)(22)【出願日】2018年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2018019492
【審査請求日】2018年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】石毛 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】安間 友輔
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111474(JP,A)
【文献】 特開2017−055488(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/115411(WO,A1)
【文献】 特開2013−059208(JP,A)
【文献】 特開2018−016234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10
H02P 25/22
H02P 29/028
B62D 101/00−137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪を転動させるように駆動する1又は複数の電動モータと、前記電動モータを駆動するための駆動力を前記電動モータに出力する3以上の駆動系統と、を有する操舵装置の設計方法であり、前記操舵装置に設けられる駆動系統の駆動力の最大値である最大駆動力の合計は、前記車輪の据えきり時の転動に必要な必要駆動力よりも大きく設定され、前記3以上の駆動系統の内の1つが故障した場合には、前記3以上の駆動系統の内の正常な駆動系統の前記最大駆動力の合計が、前記必要駆動力となるように設定する操舵装置の設計方法
【請求項2】
前記電動モータは1つであり、前記3以上の駆動系統は3つであり、
前記駆動系統は通電されることによって前記電動モータの駆動力を出力する巻線組をそれぞれ有し、
前記電動モータは前記巻線組を3つ有する
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【請求項3】
前記電動モータは1つであり、前記3以上の駆動系統は4つであり、
前記駆動系統は通電されることによって前記電動モータの駆動力を出力する巻線組をそれぞれ有し、
前記電動モータは前記巻線組を4つ有する
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【請求項4】
前記電動モータは2つであり、前記3以上の駆動系統は4つであり、
前記駆動系統は通電されることによって前記電動モータの駆動力を出力する巻線組をそれぞれ有し、
第1の電動モータは前記巻線組を2つ有し、第2の電動モータは前記巻線組を2つ有する
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【請求項5】
前記電動モータは2つであり、前記駆動系統は4つであり、
前記駆動系統は通電されることによって前記電動モータの駆動力を出力する巻線組をそれぞれ有し、
第1の電動モータは前記巻線組を3つ有し、第2の電動モータは前記巻線組を1つ有する
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【請求項6】
前記電動モータは2つであり、前記駆動系統は3つであり、
前記駆動系統は通電されることによって前記電動モータの駆動力を出力する巻線組をそれぞれ有し、
第1の電動モータは前記巻線組を2つ有し、第2の電動モータは前記巻線組を1つ有する
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【請求項7】
前記3以上の駆動系統は、前記3以上の駆動系統の数をnとした場合に、前記車輪の転動に必要な最大の必要駆動力のn/(n−1)倍の駆動力を出力可能である
請求項1に記載の操舵装置の設計方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステアリングホイールと車輪とが、機械的に連結せずに、機械的に分離したステア・バイ・ワイヤシステムによる操舵装置において、故障時にもステアリングホイール操作を継続できるようにフェールセーフ機能を設けた装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の操舵装置は、主操舵駆動系と副操舵駆動系との二重系の操舵駆動装置により、舵取り機構を駆動する。主操舵用アクチュエータと副操舵用アクチュエータとは、遊びを有するリンク機構を介して機械的にリンクされており、常時、駆動される。主操舵駆動系と副操舵駆動系との干渉の有無が、相互干渉検知機構によって検出される。主制御部,副制御部は、自身の操舵駆動系に異常が生じると、自身の操舵駆動系をシステムダウンさせる。また、制御部は、自身の操舵駆動系が正常のときに、相互干渉が検知されると、各他方の操舵駆動系を強制停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−37112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、ステア・バイ・ワイヤシステムによる操舵装置においては、ステアリングホイールと車輪とが機械的に連結されていないため、故障が生じたときにも車輪を転動させ、ステアリングホイール操作を継続できるようにする機能が必要となる。そのため、複数の駆動系統を設け、一の駆動系統に故障が生じた場合にも、他の駆動系統にて車輪を転動させるようにすることが考えられる。ただし、複数の駆動系統を設けると、装置全体の大きさが大きくなり易くなる。
本発明は、小型化を図りつつ、一の駆動系統に故障が生じた場合でも確度高く車輪を転動させることができる操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、車両の車輪を転動させるように駆動する1又は複数の電動モータと、前記電動モータを駆動するための駆動力を前記電動モータに出力する3以上の駆動系統と、を有する操舵装置の設計方法であり、前記操舵装置に設けられる駆動系統の駆動力の最大値である最大駆動力の合計は、前記車輪の据えきり時の転動に必要な必要駆動力よりも大きく設定され、前記3以上の駆動系統の内の1つが故障した場合には、前記3以上の駆動系統の内の正常な駆動系統の前記最大駆動力の合計が、前記必要駆動力となるように設定する操舵装置の設計方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小型化を図りつつ、一の駆動系統に故障が生じた場合でも確度高く車輪を転動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る操舵装置の概略構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る制御装置、電動モータの概略構成を示す図である。
図3】車速Vcが0である場合の、操舵角と要求アシスト力(合計必要駆動力)との相関関係を示す図である。
図4】第1の制御例に係る駆動系統の駆動力の切替制御を例示する図である。
図5】第2の制御例に係る駆動系統の駆動力の切替制御を例示する図である。
図6】第2の実施形態に係る操舵装置の概略構成を示す図である。
図7】第3の実施形態に係る操舵装置の概略構成を示す図である。
図8】第1の制御例に係る駆動系統の駆動力の切替制御を例示する図である。
図9】第2の制御例に係る駆動系統の駆動力の切替制御を例示する図である。
図10】第4の実施形態に係る操舵装置の概略構成を示す図である。
図11】第4の実施形態に係る操舵装置の制御装置、電動モータの概略構成を示す図である。
図12】第5の実施形態に係る操舵装置の制御装置、電動モータの概略構成を示す図である。
図13】第6の実施形態に係る操舵装置の概略構成を示す図である。
図14】第6の実施形態に係る操舵装置の制御ユニット、電動モータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る操舵装置1の概略構成を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係る制御装置90、電動モータ10の概略構成を示す図である。
操舵装置1は、車両の一例としての自動車の前輪100を転動させることにより進行方向を任意に変えるかじ取り装置である、ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置である。また、操舵装置1は、自動車の進行方向を変えるために運転者が操作する輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と前輪100とが機械的に連結していない、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムである。
【0009】
操舵装置1は、ステアリングホイール101の操舵角θsを検出する操舵角センサ102と、運転者に対し操舵反力を与える反力装置103とを備えている。
また、操舵装置1は、前輪100に固定されたナックルアームに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。
【0010】
また、操舵装置1は、2つの電動モータである第1電動モータ11及び第2電動モータ12と、第1電動モータ11及び第2電動モータ12それぞれの回転駆動力をラック軸105の軸方向の移動に変換する2つの変換ユニット(不図示)とを備えている。以下、第1電動モータ11と、第2電動モータ12とを区別する必要がない場合には、「電動モータ10」と称する場合がある。
各変換ユニットは、電動モータ10の出力軸に装着された駆動プーリ(不図示)と、多数のボール(不図示)と、ラック軸105に形成されたボールねじ(不図示)にボールを介して取り付けられたボールナット(不図示)とを有している。また、各変換ユニットは、ボールナットとともに回転する従動プーリ(不図示)と、駆動プーリと従動プーリとに掛け渡された無端状のベルト(不図示)とを有している。
【0011】
(電動モータ)
第1電動モータ11は、巻線が二重化された2組の3相巻線である、第1巻線組111及び第2巻線組112を有する二重三相モータである。第1巻線組111のみを通電したときの最大出力と第2巻線組112のみを通電したときの最大出力は同一である。
第2電動モータ12は、巻線が二重化された2組の3相巻線である、第3巻線組113及び第4巻線組114を有する二重三相モータである。第3巻線組113のみを通電したときの最大出力と第4巻線組114のみを通電したときの最大出力は同一である。また、第3巻線組113のみを通電したときの最大出力と、第1電動モータ11の第1巻線組111のみを通電したときの最大出力とは同一である。
第1巻線組111、第2巻線組112、第3巻線組113、第4巻線組114を区別する必要がない場合には、「巻線組110」と称する場合がある。
【0012】
(制御装置)
また、操舵装置1は、第1電動モータ11及び第2電動モータ12の作動を制御する制御装置90を備えている。
制御装置90は、2つの電動モータ10の作動を制御する制御量を算出するモータ駆動制御部91と、制御量に基づいて2つの電動モータ10を駆動させるモータ駆動部92とを有している。また、制御装置90は、電動モータ10に実際に流れる実電流Iaを検出する電流検出部94と、電流検出部94が検出した電流に基づいて、後述する駆動系統の故障を検出する故障検出部95とを有している。
【0013】
(モータ駆動制御部)
モータ駆動制御部91は、CPU、フラッシュROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路を有している。モータ駆動制御部91は、2つの電動モータ10に供給する目標電流Itを設定する目標電流設定部911を有している。また、モータ駆動制御部91は、目標電流設定部911にて設定された目標電流Itと、電流検出部94にて検出された電動モータ10へ供給される実電流Iaとの偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部912を有している。
【0014】
目標電流設定部911は、操舵角センサ102にて検出された操舵角等に基づいて目標電流Itを設定する。
F/B制御部912は、目標電流Itと電流検出部94にて検出された実電流Iaとの偏差を求め、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行う。
【0015】
(モータ駆動部)
モータ駆動部92は、自動車に備えられたバッテリ(不図示)からの電源電圧を、第1電動モータ11の第1巻線組111に供給する第1インバータ回路921と第2巻線組112に供給する第2インバータ回路922とを備えている。また、モータ駆動部92は、バッテリ(不図示)からの電源電圧を、第2電動モータ12の第3巻線組113に供給する第3インバータ回路923と第4巻線組114に供給する第4インバータ回路924とを備えている。
以下、第1インバータ回路921、第2インバータ回路922、第3インバータ回路923、第4インバータ回路924を区別する必要がない場合には、「インバータ回路920」と称する場合がある。
【0016】
また、モータ駆動部92は、モータ駆動制御部91からの駆動指令信号に基づいて、第1インバータ回路921の駆動を制御する第1駆動部931と、第2インバータ回路922の駆動を制御する第2駆動部932とを有している。また、モータ駆動部92は、モータ駆動制御部91からの駆動指令信号に基づいて、第3インバータ回路923の駆動を制御する第3駆動部933と、第4インバータ回路924の駆動を制御する第4駆動部934とを有している。
以下、第1駆動部931、第2駆動部932、第3駆動部933、第4駆動部934を区別する必要がない場合には、「駆動部930」と称する場合がある。
【0017】
インバータ回路920は、ブリッジ回路により構成され、複数組のスイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(不図示)を備えている。本実施の形態においては、インバータ回路920は、電動モータ10の巻線組110の各相(U相、V相、W相の3相)のそれぞれについて一対のトランジスタ(不図示)を有している。トランジスタは、バイポーラ型、電界効果型、MOS型等の種々の構造のパワートランジスタであることを例示することができる。
駆動部930は、モータ駆動制御部91からの駆動指令信号に基づいて、電動モータ10を、例えばPWM(パルス幅変調)駆動するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を出力する。
【0018】
(電流検出部)
電流検出部94は、第1電動モータ11の第1巻線組111に実際に流れる実電流Iaを検出する第1電流検出部941と、第1電動モータ11の第2巻線組112に実際に流れる実電流Iaを検出する第2電流検出部942とを有している。また、電流検出部94は、第2電動モータ12の第3巻線組113に実際に流れる実電流Iaを検出する第3電流検出部943と、第2電動モータ12の第4巻線組114に実際に流れる実電流Iaを検出する第4電流検出部944とを有している。第1電流検出部941、第2電流検出部942、第3電流検出部943、第4電流検出部944を区別する必要がない場合には、「電流検出部940」と称する場合がある。
【0019】
(故障検出部)
故障検出部95は、電流検出部94にて検出された実電流Iaの値が、予め定められた正常領域の値を超えたか、又は、正常領域を下回った場合に、その電流検出部94を有する駆動系統20に故障が生じたと判断する。
【0020】
(駆動系統)
以上のように構成された第1の実施形態に係る操舵装置1は、ラック軸105を移動させるため、ひいては前輪100を転動させるための駆動力を出力する4つの駆動系統である、第1駆動系統21、第2駆動系統22、第3駆動系統23、第4駆動系統24を有している。
【0021】
第1駆動系統21は、第1電動モータ11の第1巻線組111、モータ駆動部92の第1インバータ回路921及び第1駆動部931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統22は、第1電動モータ11の第2巻線組112、モータ駆動部92の第2インバータ回路922及び第2駆動部932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統23は、第2電動モータ12の第3巻線組113、モータ駆動部92の第3インバータ回路923及び第3駆動部933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第4駆動系統24は、第2電動モータ12の第4巻線組114、モータ駆動部92の第4インバータ回路924及び第4駆動部934、電流検出部94の第4電流検出部944を含んで構成される。
第1駆動系統21、第2駆動系統22、第3駆動系統23、第4駆動系統24を区別する必要がない場合には、「駆動系統20」と称する場合がある。
【0022】
以下では、モータ駆動部92の第1インバータ回路921を駆動させて第1電動モータ11の第1巻線組111に通電したときの第1電動モータ11の駆動力を、第1駆動系統21の駆動力と称する。
また、モータ駆動部92の第2インバータ回路922を駆動させて第1電動モータ11の第2巻線組112に通電したときの第1電動モータ11の駆動力を、第2駆動系統22の駆動力と称する。
また、モータ駆動部92の第3インバータ回路923を駆動させて第2電動モータ12の第3巻線組113に通電したときの第2電動モータ12の駆動力を、第3駆動系統23の駆動力と称する。
また、モータ駆動部92の第4インバータ回路924を駆動させて第2電動モータ12の第4巻線組114に通電したときの第2電動モータ12の駆動力を、第4駆動系統24の駆動力と称する。
【0023】
第1の実施形態に係る操舵装置1は、第1駆動系統21の最大駆動力と、第2駆動系統22の最大駆動力と、第3駆動系統23の最大駆動力と、第4駆動系統24の最大駆動力とを合計した合計最大駆動力が、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の4/3倍となるように設定されている。また、4つの駆動系統20の最大駆動力は全て同一である。
それゆえ、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20が故障した場合には、故障が生じていない正常な駆動系統20にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の3/3=1倍となる。
なお、最大必要駆動力は、自動車の移動速度である車速Vcが零であるときに、予め定められた摩擦係数の路面(例えばアスファルト路)で予め定められた最大転舵角まで据え切りされた場合に、前輪100を予め定められた最大転動角まで転動させる駆動力である。最大必要駆動力は、車両(例えば自動車)の種類によって異なる。
【0024】
(駆動系統の制御)
図3は、車速Vcが0である場合の、操舵角θsと要求アシスト力(合計必要駆動力)との相関関係を示す図である。
制御装置90は、車速Vc、操舵角センサ102が検出した操舵角θsに基づいて駆動系統20を制御する。
4つの駆動系統20の全てが正常である場合、制御装置90は、操舵角θsと、予めROMに記憶された、図3に示すような、車速Vc毎に設定された相関関係とに基づいて、操舵装置1に要求されるアシスト力(以下、「要求アシスト力」と称する場合がある。)を把握する。そして、制御装置90は、把握した要求アシスト力を、操舵装置1に必要な合計必要駆動力(以下、単に「必要駆動力」と称する場合もある。)として把握する。
【0025】
(第1の制御例)
図4は、第1の制御例に係る駆動系統20の駆動力の切替制御を例示する図である。
第1の制御例においては、制御装置90は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統20の内の3つの駆動系統20にて出力するように各駆動系統20の駆動力を制御する。また、制御装置90は、3つの駆動系統20の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統20の数から1を減算した値で除算した値となるように制御する(各駆動系統20の駆動力=合計必要駆動力/(4−1))。このように、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力の100/3%となるように制御する。
【0026】
目標電流設定部911は、第1駆動系統21、第2駆動系統22及び第3駆動系統23の3つの駆動系統20を駆動させる場合、それぞれの駆動力が合計必要駆動力/3となるように、各駆動系統20の巻線組110(第1巻線組111、第2巻線組112、第3巻線組113)に供給する目標電流Itを設定する。F/B制御部912は、目標電流設定部911にて設定された目標電流Itと、電流検出部94にて検出された実電流Iaとの偏差が零となるようにフィードバック制御を行う。
【0027】
3つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合、制御装置90は、故障が生じた一の駆動系統20の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統20を駆動させる。そして、制御装置90は、合計必要駆動力を、故障が生じていない正常な3つの駆動系統20全てにて出力するように3つの駆動系統20の駆動力を制御する。その際、制御装置90は、3つの駆動系統20の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統20の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統20の駆動力=合計必要駆動力/3)。このように、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力の100/3%となるように制御する。
【0028】
例えば、制御装置90は、第1駆動系統21、第2駆動系統22及び第3駆動系統23を駆動させているときに、第3駆動系統23に故障が生じた場合には、第3駆動系統23の駆動を停止するとともに、第4駆動系統24を駆動させる。
目標電流設定部911は、故障が生じた第3駆動系統23の第3巻線組113に供給する目標電流Itを0に設定するとともに、正常な第1駆動系統21、第2駆動系統22及び第4駆動系統24それぞれの駆動力が合計必要駆動力の1/3となるように、正常な3つの駆動系統20の巻線組110に供給する目標電流Itを設定する。
【0029】
上述したように、第1の制御例においては、制御装置90は、故障が生じていない4つの駆動系統20の内の3つの駆動系統20を駆動させているときに、3つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合には、以下のように制御する。すなわち、故障した駆動系統20の駆動を停止するとともに、故障時に駆動していた正常な駆動系統20の駆動力の合計必要駆動力に対する割合を変えずに、故障時に駆動していなかった駆動系統20を駆動させる。より具体的には、制御装置90は、故障時に駆動していた正常な駆動系統20それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合は100/3%のままとし、故障時に駆動していなかった駆動系統20の駆動力の合計必要駆動力に対する割合を100/3%とする。
【0030】
(第2の制御例)
図5は、第2の制御例に係る駆動系統20の駆動力の切替制御を例示する図である。
第2の制御例においては、制御装置90は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統20全てにて出力するように各駆動系統20の駆動力を制御する。また、制御装置90は、4つの駆動系統20の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統20の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統20の駆動力=合計必要駆動力/4)。言い換えれば、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力の25%となるように制御する。
【0031】
目標電流設定部911は、各駆動系統20の駆動力が合計必要駆動力の1/4となるように、各駆動系統20の巻線組110に供給する目標電流Itを設定する。F/B制御部912は、目標電流設定部911にて設定された目標電流Itと、電流検出部94にて検出された実電流Iaとの偏差が零となるようにフィードバック制御を行う。
【0032】
そして、第2の制御例においては、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合、制御装置90は、合計必要駆動力を、故障が生じていない正常な残り3つの駆動系統20全てにて出力するように3つの駆動系統20の駆動力を制御する。その際、制御装置90は、3つの駆動系統20の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力を、正常な駆動系統20の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統20の駆動力=合計必要駆動力/3)。言い換えれば、制御装置90は、各駆動系統20の駆動力が、合計必要駆動力の100/3%となるように制御する。
目標電流設定部911は、故障が生じた一の駆動系統20の巻線組110に供給する目標電流Itを0に設定するとともに、故障が生じていない正常な3つの駆動系統20の駆動力が合計必要駆動力の1/3となるように、正常な3つの駆動系統20の巻線組110に供給する目標電流Itを設定する。
【0033】
上述したように、第2の制御例においては、制御装置90は、故障が生じていない4つの駆動系統20全てを駆動させているときに、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合には、故障が生じていない3つの駆動系統20それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を大きくする。より具体的には制御装置90は、正常な3つの駆動系統20それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を25%から100/3%に変更する。このように、制御装置90は、正常な3つの駆動系統20それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を均一に大きくする。
【0034】
上述したように構成された第1の実施形態に係る操舵装置1においては、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合に、操舵装置1に要求されるアシスト力(要求アシスト力)を残りの3つの駆動系統20にて出力する。そして、3つの駆動系統20にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力と同一となるように設定されている。つまり、第1の実施形態に係る操舵装置1は、車両の一例としての自動車の車輪の一例としての前輪100を転動させるように駆動する複数の電動モータ10と、電動モータ10を駆動するための駆動力を電動モータ10に出力する3以上の駆動系統20と、を有する操舵装置である。そして、操舵装置1は、操舵装置1に設けられる駆動系統20の駆動力の最大値である最大駆動力の合計は、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力よりも大きく設定され、3以上の駆動系統20の内の1つが故障した場合でも、3以上の駆動系統の内の正常な駆動系統20の最大駆動力の合計が、必要駆動力となる。第1の実施形態に係る操舵装置1においては、電動モータ10は2つであり、駆動系統20は4つであり、駆動系統20は通電されることによって電動モータ10の駆動力を出力する巻線組110をそれぞれ有する。第1の電動モータの一例としての第1電動モータ11は、巻線組110を2つ有して、2つの駆動系統20である第1駆動系統21及び第2駆動系統22で駆動する。第2の電動モータの一例としての第2電動モータ12は、巻線組110を2つ有して、2つの駆動系統20である第3駆動系統23及び第4駆動系統24で駆動する。それゆえ、一の駆動系統20に故障が生じた場合であっても、故障する前と同様に前輪100を転動させることができ、ステアリングホイール101の操作を継続させることができる。また、3つの駆動系統20にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、各駆動系統20の最大駆動力を小さくすることができるので、電動モータ10の出力容量を小さくすることができる。その結果、第1の実施形態に係る操舵装置1の電動モータ10の体格を、3つの駆動系統20にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、小さくすることができ、車両(例えば自動車)への搭載性が向上する。
【0035】
また、第1の実施形態に係る操舵装置1は、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合に、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力を、4つ駆動系統20の内の故障が生じていない正常な駆動系統20にて出力するように正常な駆動系統20の駆動力を制御する制御部の一例としての制御装置90、を更に備える。
そして、操舵装置1においては、4つの駆動系統20は、駆動系統20の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ10に駆動力を出力する3つの正常時出力駆動系統(例えば、第1駆動系統21、第2駆動系統22及び第3駆動系統23)と、駆動系統20の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ10に駆動力を出力しない1つのバックアップ駆動系統(例えば、第4駆動系統24)と、を有する。そして、第1の制御例においては、制御装置90は、正常時出力駆動系統に故障が生じていない場合には、全ての正常時出力駆動系統を最大駆動力となるように制御し、3つの正常時出力駆動系統の内の一の正常時出力駆動系統に故障が生じた場合には、正常な正常時出力駆動系統の駆動力について、必要駆動力に対する割合を変えずに制御し、更にバックアップ駆動系統を最大駆動力となるように制御する。
このように、第1の制御例においては、一の駆動系統20に故障が生じる前には、4つの駆動系統20全てを駆動させるのではなく、最大必要駆動力を出力するのに十分な3つの駆動系統20のみを駆動させる。
【0036】
また、制御装置90は、駆動系統20の全てに故障が生じていない場合に、駆動系統20の全てを最大駆動力よりも小さい駆動力となるように制御し、4つの駆動系統20の内の一の駆動系統20に故障が生じた場合に、正常な駆動系統20の駆動力を最大駆動力となるように制御する。このように、第2の制御例においては、4つの駆動系統20全てにて合計必要駆動力を出力するので、3以下の駆動系統20にて合計必要駆動力を出力する場合と比べて、電動モータ10の出力を小さくすることができ、静音化、低振動化を図ることができる。また、3以下の駆動系統20にて合計必要駆動力を出力する場合と比べて、故障前後における駆動力の切替を円滑にすることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態においては、制御装置90は、駆動させる駆動系統20の駆動力が均一になるように制御しているが、特にかかる態様に限定されない。
3つの駆動系統20のそれぞれの駆動力を合計必要駆動力の100/3%とする代わりに、3つの駆動系統20の駆動力を、それぞれ、例えば、40%、30%、30%としても良い。あるいは、3つの駆動系統20の駆動力の合計駆動力が合計必要駆動力の100%となるのであれば、それぞれの駆動力の割合を、その他の割合としても良い。
【0038】
また、4つの駆動系統20のそれぞれの駆動力を合計必要駆動力の25%とする代わりに、4つの駆動系統20の駆動力の合計駆動力が合計必要駆動力の100%となるのであれば、それぞれの駆動力の割合を、その他の割合としても良い。その際、制御装置90は、駆動系統20に故障が生じていない場合、一の電動モータ10(例えば第1電動モータ11)を駆動する2つの駆動系統20の駆動力の合計を、他の電動モータ10(例えば第2電動モータ12)を駆動する2つの駆動系統20の駆動力の合計よりも、大きくしても良い。また、1つの電動モータ10(例えば第1電動モータ11又は第2電動モータ12)に駆動力を与える2つの駆動系統20の駆動力の割合は、同一としても良い。例えば、第1駆動系統21、第2駆動系統22の駆動力を、それぞれ30%とし、第3駆動系統23、第4駆動系統24の駆動力を、それぞれ20%としても良い。1つの電動モータ10に駆動力を与える2つの駆動系統20の駆動力の割合を同一とすることで、振動を低減することができる。
【0039】
また、一の電動モータ10を駆動する2つの駆動系統20の駆動力の合計を、他の電動モータ10を駆動する2つの駆動系統20の駆動力の合計よりも大きくする場合には、一の電動モータ10を駆動する2つの駆動系統20の最大駆動力の合計を、他の電動モータ10を駆動する2つの駆動系統20の最大駆動力の合計よりも大きくしても良い。例えば、第1駆動系統21、第2駆動系統22の最大駆動力を、それぞれ最大必要駆動力の40%とし、第3駆動系統23、第4駆動系統24の駆動力を、それぞれ最大必要駆動力の30%としても良い。かかる場合においても、第2の制御例を用いて、各駆動系統20の必要駆動力に対する割合を調整すると良い。
【0040】
また、上述した実施形態においては、電動モータ10とは別体の制御装置90が、インバータ回路920を備えているが、特にかかる態様に限定されない。電動モータ10がインバータ回路920を備えていても良い。例えば、第1電動モータ11が、自身が有する第1巻線組111,第2巻線組112に電源電圧を供給する、第1インバータ回路921,第2インバータ回路922を備えると良い。また、第2電動モータ12が、自身が有する第3巻線組113,第4巻線組114に電源電圧を供給する、第3インバータ回路923,第4インバータ回路924を備えると良い。
さらに、第1電動モータ11が、自身が有する第1インバータ回路921,第2インバータ回路922の駆動を制御する、第1駆動部931,第2駆動部932を備えると良い。また、第2電動モータ12が、自身が有する第3インバータ回路923,第4インバータ回路924の駆動を制御する、第3駆動部933,第4駆動部934を備えると良い。
【0041】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態に係る操舵装置2の概略構成を示す図である。
第2の実施形態に係る操舵装置2においては、第1の実施形態に係る操舵装置1に対して、操舵装置1の駆動系統20に相当する駆動系統220を構成する要素が異なる。以下、第1の実施形態に係る操舵装置1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る操舵装置1と第2の実施形態に係る操舵装置2とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
操舵装置2は、2つの電動モータである第1電動モータ14及び第2電動モータ15と、第1電動モータ14及び第2電動モータ15それぞれの回転駆動力をラック軸105の軸方向の移動に変換する2つの変換ユニット(不図示)とを備えている。以下、第1電動モータ14と、第2電動モータ15とを区別する必要がない場合には、「電動モータ13」と称する場合がある。
【0043】
(電動モータ)
第1電動モータ14は、巻線が三重化された3組の3相巻線である、第1巻線組211、第2巻線組212及び第3巻線組213を有する三重三相モータである。第1巻線組211のみを通電したときの最大出力と、第2巻線組212のみを通電したときの最大出力と、第3巻線組213のみを通電したときの最大出力は同一である。
第2電動モータ15は、1組の3相巻線である第4巻線組214のみの巻線を有する三相モータである。第4巻線組214のみを通電したときの最大出力と、第1電動モータ14の第1巻線組211のみを通電したときの最大出力とは同一である。
第1巻線組211、第2巻線組212、第3巻線組213、第4巻線組214を区別する必要がない場合には、「巻線組210」と称する場合がある。
【0044】
(制御装置)
また、操舵装置2は、第1電動モータ14及び第2電動モータ15の作動を制御する制御装置290を備えている。
制御装置290は、図6に示すように、2つの電動モータ13の作動を制御する制御量を算出するモータ駆動制御部291と、制御量に基づいて2つの電動モータ13を駆動させるモータ駆動部292とを有している。モータ駆動制御部291は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90のモータ駆動制御部91に相当する。
また、制御装置290は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90と同様に、電流検出部94と、故障検出部95とを有している。
【0045】
(モータ駆動部)
モータ駆動部292は、自動車に備えられたバッテリ(不図示)からの電源電圧を、第1電動モータ14の第1巻線組211に供給する第1インバータ回路2921と、第2巻線組212に供給する第2インバータ回路2922と、第1電動モータ14の第3巻線組213に供給する第3インバータ回路2923とを備えている。また、モータ駆動部292は、バッテリ(不図示)からの電源電圧を、第2電動モータ15の第4巻線組214に供給する第4インバータ回路2924を備えている。
以下、第1インバータ回路2921、第2インバータ回路2922、第3インバータ回路2923、第4インバータ回路2924を区別する必要がない場合には、「インバータ回路2920」と称する場合がある。
インバータ回路2920は、第1の実施形態に係るインバータ回路920と同じ構造、機能を有する。
【0046】
また、モータ駆動部292は、モータ駆動制御部291からの駆動指令信号に基づいて、第1インバータ回路2921の駆動を制御する第1駆動部2931と、第2インバータ回路2922の駆動を制御する第2駆動部2932とを有している。また、モータ駆動部292は、モータ駆動制御部291からの駆動指令信号に基づいて、第3インバータ回路2923の駆動を制御する第3駆動部2933と、第4インバータ回路2924の駆動を制御する第4駆動部2934とを有している。
以下、第1駆動部2931、第2駆動部2932、第3駆動部2933、第4駆動部2934を区別する必要がない場合には、「駆動部2930」と称する場合がある。
駆動部2930は、第1の実施形態に係る駆動部930と同じ構造、機能を有する。
【0047】
(駆動系統)
以上のように構成された第2の実施形態に係る操舵装置2は、ラック軸105を移動させるための駆動力を出力する4つの駆動系統である、第1駆動系統221、第2駆動系統222、第3駆動系統223、第4駆動系統224を有している。
【0048】
第1駆動系統221は、第1電動モータ14の第1巻線組211、モータ駆動部292の第1インバータ回路2921及び第1駆動部2931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統222は、第1電動モータ14の第2巻線組212、モータ駆動部292の第2インバータ回路2922及び第2駆動部2932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統223は、第1電動モータ14の第3巻線組213、モータ駆動部292の第3インバータ回路2923及び第3駆動部2933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第4駆動系統224は、第2電動モータ15の第4巻線組214、モータ駆動部292の第4インバータ回路2924及び第4駆動部2934、電流検出部94の第4電流検出部944を含んで構成される。
第1駆動系統221、第2駆動系統222、第3駆動系統223、第4駆動系統224を区別する必要がない場合には、「駆動系統220」と称する場合がある。
【0049】
第2の実施形態に係る操舵装置2は、第1の実施形態に係る操舵装置1と同様に、第1駆動系統221〜第4駆動系統224の最大駆動力を合計した合計最大駆動力が、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の4/3倍となるように設定されている。また、4つの駆動系統220の最大駆動力は全て同一である。
それゆえ、4つの駆動系統220の内の一の駆動系統220が故障した場合には、故障が生じていない正常な駆動系統220にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の3/3=1倍となる。
【0050】
(第1の制御例)
第2の実施形態に係る操舵装置2の第1の制御例においては、第1の実施形態に係る操舵装置1の第1の制御例と同様に、全ての駆動系統220が正常である場合には、制御装置290は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統220の内の3つの駆動系統220にて出力するように各駆動系統220の駆動力を制御する。また、制御装置290は、3つの駆動系統220の駆動力全てが同一となるように制御する。
そして、3つの駆動系統220の内の一の駆動系統220に故障が生じた場合、制御装置290は、故障が生じた一の駆動系統220の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統220を駆動させる。
【0051】
なお、全ての駆動系統220が正常である場合には、制御装置290は、第1電動モータ14を駆動させて、第2電動モータ15を駆動させないようにしても良い。つまり、制御装置290は、第1電動モータ14の第1巻線組211〜第3巻線組213に通電させ、第2電動モータ15の第4巻線組214には通電させないようにしても良い。
また、全ての駆動系統220が正常である場合には、制御装置290は、第1電動モータ14及び第2電動モータ15を駆動させても良い。つまり、制御装置290は、第1電動モータ14の第1巻線組211〜第3巻線組213の内の2つの巻線組210と、第2電動モータ15の第4巻線組214に通電させるようにしても良い。
【0052】
(第2の制御例)
第2の実施形態に係る操舵装置2の第2の制御例においては、第1の実施形態に係る操舵装置1の第2の制御例と同様に、全ての駆動系統220が正常である場合には、合計必要駆動力を、4つの駆動系統220全てにて出力するように各駆動系統220の駆動力を制御する。
【0053】
上述したように構成された第2の実施形態に係る操舵装置2においては、電動モータ13は2つであり、駆動系統220は4つであり、駆動系統220は通電されることによって電動モータ13の駆動力を出力する巻線組210をそれぞれ有する。第1の電動モータの一例としての第1電動モータ14は、巻線組210を3つ有して、3つの駆動系統220である第1駆動系統221、第2駆動系統222及び第3駆動系統223で駆動する。第2の電動モータの一例としての第2電動モータ15は、巻線組210を1つ有して、1つの駆動系統220である第4駆動系統24で駆動する。
また、第2の実施形態に係る操舵装置2は、4つの駆動系統220の内の一の駆動系統220に故障が生じた場合に、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力を、4つ駆動系統220の内の故障が生じていない正常な駆動系統220にて出力するように正常な駆動系統220の駆動力を制御する制御部の一例としての制御装置290、を更に備える。
【0054】
そして、操舵装置2においては、4つの駆動系統220は、駆動系統220の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ13に駆動力を出力する3つの正常時出力駆動系統(例えば、第1駆動系統221、第2駆動系統222及び第3駆動系統223)と、駆動系統220の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ13に駆動力を出力しない1つのバックアップ駆動系統(例えば、第4駆動系統224)と、を有する。そして、第1の制御例においては、制御装置290は、正常時出力駆動系統に故障が生じていない場合には、全ての正常時出力駆動系統を最大駆動力となるように制御し、3つの正常時出力駆動系統の内の一の正常時出力駆動系統に故障が生じた場合には、正常な正常時出力駆動系統の駆動力について、必要駆動力に対する割合を変えずに制御し、更にバックアップ駆動系統を最大駆動力となるように制御する。第1電動モータ14は、正常時出力駆動系統である、第1駆動系統221、第2駆動系統222及び第3駆動系統223で駆動し、第2電動モータ15は、バックアップ駆動系統である、第4駆動系統224で駆動することを例示することができる。また、第1電動モータ14を駆動する3つの駆動系統220の駆動力は均一である。
【0055】
また、第2の制御例においては、制御装置290は、駆動系統220の全てに故障が生じていない場合に、駆動系統220の全てを最大駆動力よりも小さい駆動力となるように制御し、4つの駆動系統220の内の一の駆動系統220に故障が生じた場合に、正常な駆動系統220の駆動力を最大駆動力となるように制御する。また、制御装置290は、駆動系統220に故障が生じていない場合に、駆動系統220の全ての駆動力を均一にする。
【0056】
上述したように構成された第2の実施形態に係る操舵装置2においても、4つの駆動系統220の内の一の駆動系統220に故障が生じた場合に、操舵装置2に要求されるアシスト力(要求アシスト力)を残りの3つの駆動系統220にて出力する。そして、3つの駆動系統220にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力と同一となるように設定されている。それゆえ、一の駆動系統220に故障が生じた場合であっても、故障する前と同様に前輪100を転動させることができ、ステアリングホイール101の操作を継続させることができる。また、3つの駆動系統220にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、各駆動系統220の最大駆動力を小さくすることができるので、電動モータ13の出力容量を小さくすることができる。その結果、第2の実施形態に係る操舵装置2の電動モータ13の体格を、3つの駆動系統220にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、小さくすることができ、車両(例えば自動車)への搭載性が向上する。
【0057】
なお、上述した実施形態の第2の制御例において、4つの駆動系統220のそれぞれの駆動力を合計必要駆動力の25%とする代わりに、4つの駆動系統220の駆動力の合計駆動力が合計必要駆動力の100%となるのであれば、それぞれの駆動力の割合を、その他の割合としても良い。その際、制御装置290は、駆動系統220に故障が生じていない場合、一の電動モータ13(例えば第1電動モータ14)を駆動する3つの駆動系統220の駆動力の合計を、他の電動モータ13(例えば第2電動モータ15)を駆動する1つの駆動系統220の駆動力よりも、大きくしても良い。また、第1電動モータ14に駆動力を与える3つの駆動系統220の駆動力の割合は、同一としても良い。例えば、第1駆動系統221、第2駆動系統222、第3駆動系統223の駆動力を、それぞれ30%とし、第4駆動系統224の駆動力を、10%としても良い。第1電動モータ14に駆動力を与える3つの駆動系統220の駆動力の割合を同一とすることで、振動を低減することができる。
【0058】
また、第1電動モータ14を駆動する3つの駆動系統220の駆動力の合計を、第2電動モータ15を駆動する第4駆動系統224の駆動力よりも大きくする場合には、第1電動モータ14を駆動する3つの駆動系統220の最大駆動力の合計を、第2電動モータ15を駆動する第4駆動系統224の最大駆動力の合計よりも大きくしても良い。例えば、第1駆動系統221、第2駆動系統222、第3駆動系統223の最大駆動力を、それぞれ最大必要駆動力の30%とし、第4駆動系統224の駆動力を、最大必要駆動力の10%としても良い。かかる場合においても、第2の制御例を用いて、各駆動系統220の必要駆動力に対する割合を調整すると良い。
【0059】
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態に係る操舵装置3の概略構成を示す図である。
第3の実施形態に係る操舵装置3においては、第1の実施形態に係る操舵装置1に対して、操舵装置1の駆動系統20に相当する駆動系統320を構成する要素及び数が異なる。以下、第1の実施形態に係る操舵装置1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る操舵装置1と第3の実施形態に係る操舵装置3とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
操舵装置3は、2つの電動モータである第1電動モータ17及び第2電動モータ18と、第1電動モータ17及び第2電動モータ18それぞれの回転駆動力をラック軸105の軸方向の移動に変換する2つの変換ユニット(不図示)とを備えている。以下、第1電動モータ17と、第2電動モータ18とを区別する必要がない場合には、「電動モータ16」と称する場合がある。
【0061】
(電動モータ)
第1電動モータ17は、第1の実施形態に係る第1電動モータ11と同様に、巻線が二重化された2組の3相巻線である、第1巻線組311及び第2巻線組312を有する二重三相モータである。第1巻線組311のみを通電したときの最大出力と、第2巻線組312のみを通電したときの最大出力とは同一である。
第2電動モータ18は、1組の3相巻線である第3巻線組313のみの巻線を有する三相モータである。第3巻線組313のみを通電したときの最大出力と、第1電動モータ17の第1巻線組311のみを通電したときの最大出力とは同一である。
第1巻線組311、第2巻線組312、第3巻線組313を区別する必要がない場合には、「巻線組310」と称する場合がある。
【0062】
(制御装置)
また、操舵装置3は、第1電動モータ17及び第2電動モータ18の作動を制御する制御装置390を備えている。
制御装置390は、図7に示すように、2つの電動モータ16の作動を制御する制御量を算出するモータ駆動制御部391と、制御量に基づいて2つの電動モータ16を駆動させるモータ駆動部392とを有している。モータ駆動制御部391は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90のモータ駆動制御部91に相当する。
また、制御装置390は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90と同様に、電流検出部94と、故障検出部95とを有している。
【0063】
(モータ駆動部)
モータ駆動部392は、自動車に備えられたバッテリ(不図示)からの電源電圧を、第1電動モータ17の第1巻線組311に供給する第1インバータ回路3921と第2巻線組312に供給する第2インバータ回路3922とを備えている。また、モータ駆動部392は、バッテリ(不図示)からの電源電圧を、第2電動モータ18の第3巻線組313に供給する第3インバータ回路3923を備えている。
以下、第1インバータ回路3921、第2インバータ回路3922、第3インバータ回路3923を区別する必要がない場合には、「インバータ回路3920」と称する場合がある。
インバータ回路3920は、第1の実施形態に係るインバータ回路920と同じ構造、機能を有する。
【0064】
また、モータ駆動部392は、モータ駆動制御部391からの駆動指令信号に基づいて、第1インバータ回路3921の駆動を制御する第1駆動部3931と、第2インバータ回路3922の駆動を制御する第2駆動部3932とを有している。また、モータ駆動部392は、モータ駆動制御部391からの駆動指令信号に基づいて、第3インバータ回路3923の駆動を制御する第3駆動部3933を有している。
以下、第1駆動部3931、第2駆動部3932、第3駆動部3933を区別する必要がない場合には、「駆動部3930」と称する場合がある。
駆動部3930は、第1の実施形態に係る駆動部930と同じ構造、機能を有する。
【0065】
(駆動系統)
以上のように構成された第3の実施形態に係る操舵装置3は、ラック軸105を移動させるための駆動力を出力する3つの駆動系統である、第1駆動系統321、第2駆動系統322、第3駆動系統323を有している。
【0066】
第1駆動系統321は、第1電動モータ17の第1巻線組311、モータ駆動部392の第1インバータ回路3921及び第1駆動部3931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統322は、第1電動モータ17の第2巻線組312、モータ駆動部392の第2インバータ回路3922及び第2駆動部3932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統323は、第2電動モータ18の第3巻線組313、モータ駆動部392の第3インバータ回路3923及び第3駆動部3933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第1駆動系統321、第2駆動系統322、第3駆動系統323を区別する必要がない場合には、「駆動系統320」と称する場合がある。
【0067】
第3の実施形態に係る操舵装置3は、第1駆動系統321の最大駆動力と、第2駆動系統322の最大駆動力と、第3駆動系統323の最大駆動力とを合計した合計最大駆動力が、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の3/2倍となるように設定されている。また、3つの駆動系統320の最大駆動力は全て同一である。
それゆえ、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320が故障した場合には、故障が生じていない正常な駆動系統320にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の2/2=1倍となる。
【0068】
(駆動系統の制御)
3つの駆動系統320の全てが正常である場合、制御装置390は、操舵角θsと、予めROMに記憶された、図3に示すような、車速Vc毎に設定された相関関係とに基づいて、操舵装置3に要求されるアシスト力(以下、「要求アシスト力」と称する場合がある。)を把握する。そして、制御装置390は、把握した要求アシスト力を、操舵装置3に必要な合計必要駆動力として把握する。
【0069】
(第1の制御例)
図8は、第1の制御例に係る駆動系統320の駆動力の切替制御を例示する図である。
第1の制御例においては、制御装置390は、合計必要駆動力を、3つの駆動系統320の内の2つの駆動系統320にて出力するように各駆動系統320の駆動力を制御する。また、制御装置390は、2つの駆動系統320の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統320の数から1を減算した値で除算した値となるように制御する(各駆動系統320の駆動力=合計必要駆動力/(3−1))。このように、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力の100/2=50%となるように制御する。
【0070】
第3の実施形態に係るモータ駆動制御部391の目標電流設定部911は、例えば、第1駆動系統321及び第2駆動系統322の2つの駆動系統320を駆動させる場合、それぞれの駆動力が合計必要駆動力/2となるように、各駆動系統320の巻線組310(第1巻線組311、第2巻線組312)に供給する目標電流Itを設定する。第3の実施形態に係るモータ駆動制御部391のF/B制御部912は、目標電流設定部911にて設定された目標電流Itと、電流検出部94にて検出された実電流Iaとの偏差が零となるようにフィードバック制御を行う。
【0071】
2つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合、制御装置390は、故障が生じた一の駆動系統320の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統320を駆動させる。そして、制御装置390は、合計必要駆動力を、故障が生じていない正常な2つの駆動系統320全てにて出力するように2つの駆動系統320の駆動力を制御する。その際、制御装置390は、2つの駆動系統320の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統320の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統320の駆動力=合計必要駆動力/2)。このように、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力の100/2=50%となるように制御する。
【0072】
例えば、制御装置390は、第1駆動系統321及び第2駆動系統322を駆動させているときに、第2駆動系統322に故障が生じた場合には、第2駆動系統322の駆動を停止するとともに、第3駆動系統323を駆動させる。
目標電流設定部911は、故障が生じた第2駆動系統322の第2巻線組312に供給する目標電流Itを0に設定するとともに、正常な第1駆動系統321及び第3駆動系統323それぞれの駆動力が合計必要駆動力の1/2=50%となるように、正常な2つの駆動系統320の巻線組310に供給する目標電流Itを設定する。
【0073】
上述したように、第1の制御例においては、制御装置390は、故障が生じていない3つの駆動系統320の内の2つの駆動系統320を駆動させているときに、2つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合には、以下のように制御する。すなわち、故障した駆動系統320の駆動を停止するとともに、故障時に駆動していた正常な駆動系統320の駆動力の合計必要駆動力に対する割合を変えずに、故障時に駆動していなかった駆動系統320を駆動させる。より具体的には、制御装置390は、故障時に駆動していた正常な駆動系統320の駆動力の合計必要駆動力に対する割合は100/2=50%のままとし、故障時に駆動していなかった駆動系統320の駆動力の合計必要駆動力に対する割合を100/2=50%とする。
【0074】
なお、全ての駆動系統320が正常である場合には、制御装置390は、第1電動モータ17を駆動させて、第2電動モータ18を駆動させないようにしても良い。つまり、制御装置390は、第1電動モータ17の第1巻線組311及び第2巻線組312に通電させ、第2電動モータ18の第3巻線組313には通電させないようにしても良い。
また、全ての駆動系統320が正常である場合には、制御装置390は、第1電動モータ17及び第2電動モータ18を駆動させても良い。つまり、制御装置390は、第1電動モータ17の第1巻線組311と第2巻線組312の内の1つの巻線組310と、第2電動モータ18の第3巻線組313に通電させるようにしても良い。
【0075】
(第2の制御例)
図9は、第2の制御例に係る駆動系統320の駆動力の切替制御を例示する図である。
第2の制御例においては、制御装置390は、合計必要駆動力を、3つの駆動系統320全てにて出力するように各駆動系統320の駆動力を制御する。また、制御装置390は、3つの駆動系統320の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力を、駆動可能な駆動系統320の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統320の駆動力=合計必要駆動力/3)。言い換えれば、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力の100/3%となるように制御する。
【0076】
第3の実施形態に係るモータ駆動制御部391の目標電流設定部911は、各駆動系統320の駆動力が合計必要駆動力の1/3となるように、各駆動系統320の巻線組310に供給する目標電流Itを設定する。第3の実施形態に係るモータ駆動制御部391のF/B制御部912は、目標電流設定部911にて設定された目標電流Itと、電流検出部94にて検出された実電流Iaとの偏差が零となるようにフィードバック制御を行う。
【0077】
そして、第2の制御例においては、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合、制御装置390は、合計必要駆動力を、故障が生じていない正常な残り2つの駆動系統320全てにて出力するように2つの駆動系統320の駆動力を制御する。その際、制御装置390は、2つの駆動系統320の駆動力全てが同一となるように制御する。つまり、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力を、正常な駆動系統320の数で除算した値となるように制御する(各駆動系統320の駆動力=合計必要駆動力/2)。言い換えれば、制御装置390は、各駆動系統320の駆動力が、合計必要駆動力の100/2%となるように制御する。
モータ駆動制御部391の目標電流設定部911は、故障が生じた一の駆動系統320の巻線組310に供給する目標電流Itを0に設定するとともに、故障が生じていない正常な2つの駆動系統320の駆動力が合計必要駆動力の1/2となるように、正常な2つの駆動系統320の巻線組310に供給する目標電流Itを設定する。
【0078】
上述したように、第2の制御例においては、制御装置390は、故障が生じていない3つの駆動系統320全てを駆動させているときに、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合には、故障が生じていない2つの駆動系統320それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を大きくする。より具体的には制御装置390は、正常な2つの駆動系統320それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を100/3%から100/2=50%に変更する。このように、制御装置390は、正常な2つの駆動系統320それぞれの駆動力の合計必要駆動力に対する割合を均一に大きくする。
【0079】
上述したように構成された第3の実施形態に係る操舵装置3においては、電動モータ16は2つであり、駆動系統320は3つであり、駆動系統320は通電されることによって電動モータ16の駆動力を出力する巻線組310をそれぞれ有する。第1の電動モータの一例としての第1電動モータ17は、巻線組310を2つ有して、2つの駆動系統320である第1駆動系統321及び第2駆動系統322で駆動する。第2の電動モータの一例としての第2電動モータ18は、巻線組310を1つ有して、1つの駆動系統320である第3駆動系統323で駆動する。
また、第3の実施形態に係る操舵装置3は、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合に、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力を、3つ駆動系統320の内の故障が生じていない正常な駆動系統320にて出力するように正常な駆動系統320の駆動力を制御する制御部の一例としての制御装置390、を更に備える。
【0080】
そして、操舵装置3においては、3つの駆動系統320は、駆動系統320の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ16に駆動力を出力する2つの正常時出力駆動系統(例えば、第1駆動系統321及び第2駆動系統322)と、駆動系統320の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ16に駆動力を出力しない1つのバックアップ駆動系統(例えば、第3駆動系統323)と、を有する。そして、第1の制御例においては、制御装置390は、正常時出力駆動系統に故障が生じていない場合には、全ての正常時出力駆動系統を最大駆動力となるように制御し、2つの正常時出力駆動系統の内の一の正常時出力駆動系統に故障が生じた場合には、正常な正常時出力駆動系統の駆動力について、必要駆動力に対する割合を変えずに制御し、更にバックアップ駆動系統を最大駆動力となるように制御する。第1電動モータ17は、正常時出力駆動系統である、第1駆動系統321及び第2駆動系統322で駆動し、第2電動モータ18は、バックアップ駆動系統である、第3駆動系統323で駆動することを例示することができる。また、第1電動モータ17を駆動する2つの駆動系統320の駆動力は均一である。
【0081】
また、第2の制御例においては、制御装置390は、駆動系統320の全てに故障が生じていない場合に、駆動系統320の全てを最大駆動力よりも小さい駆動力となるように制御し、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合に、正常な駆動系統320の駆動力を最大駆動力となるように制御する。また、制御装置390は、駆動系統320に故障が生じていない場合に、駆動系統320の全ての駆動力を均一にする。
【0082】
上述したように構成された第3の実施形態に係る操舵装置3においても、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合に、操舵装置3に要求されるアシスト力(要求アシスト力)を残りの2つの駆動系統320にて出力する。そして、2つの駆動系統320にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力と同一となるように設定されている。それゆえ、一の駆動系統320に故障が生じた場合であっても、故障する前と同様に前輪100を転動させることができ、ステアリングホイール101の操作を継続させることができる。また、2つの駆動系統320にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、各駆動系統320の最大駆動力を小さくすることができるので、電動モータ16の出力容量を小さくすることができる。その結果、第3の実施形態に係る操舵装置3の電動モータ16の体格を、2つの駆動系統320にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、小さくすることができ、車両(例えば自動車)への搭載性が向上する。
【0083】
なお、上述した実施形態の第2の制御例において、3つの駆動系統320のそれぞれの駆動力を合計必要駆動力の100/3%とする代わりに、3つの駆動系統320の駆動力の合計駆動力が合計必要駆動力の100%となるのであれば、それぞれの駆動力の割合を、その他の割合としても良い。その際、制御装置390は、駆動系統320に故障が生じていない場合、一の電動モータ16(例えば第1電動モータ17)を駆動する2つの駆動系統320の駆動力の合計を、他の電動モータ16(例えば第2電動モータ18)を駆動する1つの駆動系統320の駆動力よりも、大きくしても良い。また、第1電動モータ17に駆動力を与える2つの駆動系統320の駆動力の割合は、同一としても良い。例えば、第1駆動系統321、第2駆動系統222の駆動力を、それぞれ40%とし、第3駆動系統223の駆動力を、20%としても良い。第1電動モータ17に駆動力を与える2つの駆動系統320の駆動力の割合を同一とすることで、振動を低減することができる。
【0084】
また、第1電動モータ17を駆動する2つの駆動系統320の駆動力の合計を、第2電動モータ18を駆動する第3駆動系統323の駆動力よりも大きくする場合には、第1電動モータ17を駆動する2つの駆動系統320の最大駆動力の合計を、第2電動モータ18を駆動する第3駆動系統323の最大駆動力の合計よりも大きくしても良い。例えば、第1駆動系統321、第2駆動系統322の最大駆動力を、それぞれ最大必要駆動力の40%とし、第3駆動系統323の駆動力を、最大必要駆動力の20%としても良い。かかる場合においても、第2の制御例を用いて、各駆動系統320の必要駆動力に対する割合を調整すると良い。
【0085】
<第4の実施形態>
図10は、第4の実施形態に係る操舵装置4の概略構成を示す図である。
図11は、第4の実施形態に係る操舵装置4の制御装置490、電動モータ31の概略構成を示す図である。
第4の実施形態に係る操舵装置4においては、第1の実施形態に係る操舵装置1に対して、四重化された4組の3相巻線を有する四重三相モータである電動モータ31の1つのみを備えている点が異なる。以下、第1の実施形態に係る操舵装置1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る操舵装置1と第4の実施形態に係る操舵装置4とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0086】
第4の実施形態に係る操舵装置4は、電動モータ31と、電動モータ31の回転駆動力をラック軸105の軸方向の移動に変換する1つの変換ユニット(不図示)とを備えている。
【0087】
(電動モータ)
電動モータ31は、巻線が四重化された4組の3相巻線である、第1巻線組411、第2巻線組412、第3巻線組413及び第4巻線組414を有する四重三相モータである。第1巻線組411のみを通電したときの最大出力と、第2巻線組412のみを通電したときの最大出力と、第3巻線組413のみを通電したときの最大出力と、第4巻線組414のみを通電したときの最大出力は同一である。
第1巻線組411、第2巻線組412、第3巻線組413、第4巻線組414を区別する必要がない場合には、「巻線組410」と称する場合がある。
【0088】
(制御装置)
また、操舵装置4は、電動モータ31の作動を制御する制御装置490を備えている。
制御装置490は、図11に示すように、電動モータ31の作動を制御する制御量を算出するモータ駆動制御部491と、制御量に基づいて電動モータ31を駆動させるモータ駆動部492とを有している。モータ駆動制御部491は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90のモータ駆動制御部91に相当する。
また、制御装置490は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90と同様に、電流検出部94と、故障検出部95とを有している。
【0089】
(モータ駆動部)
モータ駆動部492は、自動車に備えられたバッテリ(不図示)からの電源電圧を、電動モータ31の第1巻線組411に供給する第1インバータ回路4921と、第2巻線組412に供給する第2インバータ回路4922と、第3巻線組413に供給する第3インバータ回路4923と、第4巻線組414に供給する第4インバータ回路4924とを備えている。
以下、第1インバータ回路4921、第2インバータ回路4922、第3インバータ回路4923、第4インバータ回路4924を区別する必要がない場合には、「インバータ回路4920」と称する場合がある。
インバータ回路4920は、第1の実施形態に係るインバータ回路920と同じ構造、機能を有する。
【0090】
また、モータ駆動部492は、モータ駆動制御部491からの駆動指令信号に基づいて、第1インバータ回路4921の駆動を制御する第1駆動部4931と、第2インバータ回路4922の駆動を制御する第2駆動部4932とを有している。また、モータ駆動部492は、モータ駆動制御部491からの駆動指令信号に基づいて、第3インバータ回路4923の駆動を制御する第3駆動部4933と、第4インバータ回路4924の駆動を制御する第4駆動部4934とを有している。
以下、第1駆動部4931、第2駆動部4932、第3駆動部4933、第4駆動部4934を区別する必要がない場合には、「駆動部4930」と称する場合がある。
駆動部4930は、第1の実施形態に係る駆動部930と同じ構造、機能を有する。
【0091】
(駆動系統)
以上のように構成された第4の実施形態に係る操舵装置4は、ラック軸105を移動させるための駆動力を出力する4つの駆動系統である、第1駆動系統421、第2駆動系統422、第3駆動系統423、第4駆動系統424を有している。
【0092】
第1駆動系統421は、電動モータ31の第1巻線組411、モータ駆動部492の第1インバータ回路4921及び第1駆動部4931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統422は、電動モータ31の第2巻線組412、モータ駆動部492の第2インバータ回路4922及び第2駆動部4932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統423は、電動モータ31の第3巻線組413、モータ駆動部492の第3インバータ回路4923及び第3駆動部4933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第4駆動系統424は、電動モータ31の第4巻線組414、モータ駆動部492の第4インバータ回路4924及び第4駆動部4934、電流検出部94の第4電流検出部944を含んで構成される。
第1駆動系統421、第2駆動系統422、第3駆動系統423、第4駆動系統424を区別する必要がない場合には、「駆動系統420」と称する場合がある。
【0093】
第4の実施形態に係る操舵装置4は、第1の実施形態に係る操舵装置1と同様に、第1駆動系統421〜第4駆動系統424の最大駆動力を合計した合計最大駆動力が、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の4/3倍となるように設定されている。また、4つの駆動系統420の最大駆動力は全て同一である。
それゆえ、4つの駆動系統420の内の一の駆動系統420が故障した場合には、故障が生じていない正常な駆動系統420にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の3/3=1倍となる。
【0094】
(第1の制御例)
第4の実施形態に係る操舵装置4の第1の制御例においては、第1の実施形態に係る操舵装置1の第1の制御例と同様に、全ての駆動系統420が正常である場合には、制御装置490は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統420の内の3つの駆動系統420にて出力するように各駆動系統420の駆動力を制御する。また、制御装置490は、3つの駆動系統420の駆動力全てが同一となるように制御する。
そして、3つの駆動系統420の内の一の駆動系統420に故障が生じた場合、制御装置490は、故障が生じた一の駆動系統420の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統420を駆動させる。
このように、制御部の一例としての制御装置490は、巻線の一例としての巻線組410を3以上有する電動モータ31の2つの巻線組410それぞれを有する2つの駆動系統420を駆動させているときに、故障が生じた場合には、駆動させていなかった、電動モータ31の他の巻線組410を有する駆動系統420を駆動させる。
【0095】
(第2の制御例)
第4の実施形態に係る操舵装置4の第2の制御例においては、第1の実施形態に係る操舵装置1の第2の制御例と同様に、全ての駆動系統420が正常である場合には、合計必要駆動力を、4つの駆動系統420全てにて出力するように各駆動系統420の駆動力を制御する。
【0096】
上述したように構成された第4の実施形態に係る操舵装置4においては、電動モータ31は1つであり、駆動系統420は4つであり、駆動系統420は通電されることによって電動モータ31の駆動力を出力する巻線組410をそれぞれ有し、電動モータ31は巻線組410を4つ有する。
また、第4の実施形態に係る操舵装置4は、4つの駆動系統420の内の一の駆動系統420に故障が生じた場合に、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力を、4つ駆動系統420の内の故障が生じていない正常な駆動系統420にて出力するように正常な駆動系統420の駆動力を制御する制御部の一例としての制御装置490、を更に備える。
【0097】
そして、操舵装置4においては、4つの駆動系統420は、駆動系統420の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ31に駆動力を出力する3つの正常時出力駆動系統(例えば、第1駆動系統421、第2駆動系統422及び第3駆動系統423)と、駆動系統420の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ31に駆動力を出力しない1つのバックアップ駆動系統(例えば、第4駆動系統424)と、を有する。そして、第1の制御例においては、制御装置490は、正常時出力駆動系統に故障が生じていない場合には、全ての正常時出力駆動系統を最大駆動力となるように制御し、3つの正常時出力駆動系統の内の一の正常時出力駆動系統に故障が生じた場合には、正常な正常時出力駆動系統の駆動力について、必要駆動力に対する割合を変えずに制御し、更にバックアップ駆動系統を最大駆動力となるように制御する。また、電動モータ31を駆動する3つの駆動系統220の駆動力は均一である。
【0098】
また、第2の制御例においては、制御装置490は、駆動系統420の全てに故障が生じていない場合に、駆動系統420の全てを最大駆動力よりも小さい駆動力となるように制御し、4つの駆動系統420の内の一の駆動系統220に故障が生じた場合に、正常な駆動系統420の駆動力を最大駆動力となるように制御する。また、制御装置490は、駆動系統420に故障が生じていない場合に、駆動系統420の全ての駆動力を均一にする。
【0099】
上述したように構成された第4の実施形態に係る操舵装置4においては、4つの駆動系統420の内の一の駆動系統420に故障が生じた場合に、操舵装置4に要求されるアシスト力(要求アシスト力)を残りの3つの駆動系統420にて出力する。そして、3つの駆動系統420にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力と同一となるように設定されている。それゆえ、一の駆動系統420に故障が生じた場合であっても、故障する前と同様に前輪100を転動させることができ、ステアリングホイール101の操作を継続させることができる。また、3つの駆動系統420にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、各駆動系統420の最大駆動力を小さくすることができるので、電動モータ31の出力容量を小さくすることができる。その結果、第4の実施形態に係る操舵装置4の電動モータ31の体格を、3つの駆動系統420にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、小さくすることができ、車両(例えば自動車)への搭載性が向上する。
【0100】
また、第4の実施形態に係る操舵装置4においては、四重化された4組の3相巻線を有する電動モータ31の1つのみを備えることで、4つの駆動系統420を実現している。これにより、2つの電動モータを備えることで、4つの駆動系統420を実現する構成と比べると、少なくとも1つの電動モータの体格の分、小型化を図ることができる。
【0101】
また、上述した実施形態においては、電動モータ31とは別体の制御装置490が、インバータ回路4920を備えているが、特にかかる態様に限定されない。電動モータ31がインバータ回路4920を備えていても良い。つまり、電動モータ31が、第1巻線組411,第2巻線組412,第3巻線組413,第4巻線組414に電源電圧を供給する、第1インバータ回路4921,第2インバータ回路4922,第3インバータ回路4923,第4インバータ回路4924を備えると良い。
さらに、電動モータ31が、自身が有する第1インバータ回路4921,第2インバータ回路4922,第3インバータ回路4923,第4インバータ回路4924の駆動を制御する、第1駆動部4931,第2駆動部4932,第3駆動部4933,第4駆動部4934を備えると良い。
【0102】
<第5の実施形態>
図12は、第5の実施形態に係る操舵装置5の制御装置590、電動モータ32の概略構成を示す図である。
第5の実施形態に係る操舵装置5においては、第3の実施形態に係る操舵装置3に対して、三重化された3組の3相巻線を有する三重三相モータである電動モータ32の1つのみを備えている点が異なる。以下、第3の実施形態に係る操舵装置3と異なる点について説明する。第3の実施形態に係る操舵装置3と第5の実施形態に係る操舵装置5とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0103】
第5の実施形態に係る操舵装置5は、電動モータ32と、電動モータ32の回転駆動力をラック軸105の軸方向の移動に変換する1つの変換ユニット(不図示)とを備えている。
【0104】
(電動モータ)
電動モータ32は、巻線が三重化された3組の3相巻線である、第1巻線組511、第2巻線組512及び第3巻線組513を有する三重三相モータである。第1巻線組511のみを通電したときの最大出力と、第2巻線組512のみを通電したときの最大出力と、第3巻線組513のみを通電したときの最大出力は同一である。
第1巻線組511、第2巻線組512、第3巻線組513を区別する必要がない場合には、「巻線組510」と称する場合がある。
【0105】
(制御装置)
また、操舵装置5は、電動モータ32の作動を制御する制御装置590を備えている。
制御装置590は、図12に示すように、電動モータ32の作動を制御する制御量を算出するモータ駆動制御部591と、制御量に基づいて電動モータ32を駆動させるモータ駆動部592とを有している。モータ駆動制御部591は、第3の実施形態に係る操舵装置3の制御装置390のモータ駆動制御部391に相当する。
また、制御装置590は、第3の実施形態に係る操舵装置3の制御装置390と同様に、電流検出部94と、故障検出部95とを有している。
【0106】
(モータ駆動部)
モータ駆動部592は、自動車に備えられたバッテリ(不図示)からの電源電圧を、電動モータ32の第1巻線組511に供給する第1インバータ回路5921と、第2巻線組512に供給する第2インバータ回路5922と、第3巻線組513に供給する第3インバータ回路5923とを備えている。
以下、第1インバータ回路5921、第2インバータ回路5922、第3インバータ回路5923を区別する必要がない場合には、「インバータ回路5920」と称する場合がある。
インバータ回路5920は、第1の実施形態に係るインバータ回路920と同じ構造、機能を有する。
【0107】
また、モータ駆動部592は、モータ駆動制御部591からの駆動指令信号に基づいて、第1インバータ回路5921の駆動を制御する第1駆動部5931と、第2インバータ回路5922の駆動を制御する第2駆動部5932と、第3インバータ回路5923の駆動を制御する第3駆動部5933とを有している。
以下、第1駆動部5931、第2駆動部5932、第3駆動部5933を区別する必要がない場合には、「駆動部5930」と称する場合がある。
駆動部5930は、第1の実施形態に係る駆動部930と同じ構造、機能を有する。
【0108】
(駆動系統)
以上のように構成された第5の実施形態に係る操舵装置5は、ラック軸105を移動させるための駆動力を出力する3つの駆動系統である、第1駆動系統521、第2駆動系統522、第3駆動系統523を有している。
【0109】
第1駆動系統521は、電動モータ32の第1巻線組511、モータ駆動部592の第1インバータ回路5921及び第1駆動部5931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統522は、電動モータ32の第2巻線組512、モータ駆動部592の第2インバータ回路5922及び第2駆動部5932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統523は、電動モータ32の第3巻線組513、モータ駆動部592の第3インバータ回路5923及び第3駆動部5933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第1駆動系統521、第2駆動系統522、第3駆動系統523を区別する必要がない場合には、「駆動系統520」と称する場合がある。
【0110】
第5の実施形態に係る操舵装置5は、第1駆動系統521〜第3駆動系統523の最大駆動力を合計した合計最大駆動力が、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の3/2倍となるように設定されている。また、3つの駆動系統520の最大駆動力は全て同一である。
それゆえ、3つの駆動系統520の内の一の駆動系統520が故障した場合には、故障が生じていない正常な駆動系統520にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の2/2=1倍となる。
【0111】
(第1の制御例)
第5の実施形態に係る操舵装置5の第1の制御例においては、第3の実施形態に係る操舵装置3の第1の制御例と同様に、全ての駆動系統520が正常である場合には、制御装置590は、合計必要駆動力を、3つの駆動系統520の内の2つの駆動系統520にて出力するように各駆動系統520の駆動力を制御する。また、制御装置590は、2つの駆動系統520の駆動力全てが同一となるように制御する。
そして、2つの駆動系統520の内の一の駆動系統520に故障が生じた場合、制御装置590は、故障が生じた一の駆動系統520の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統520を駆動させる。
このように、制御部の一例としての制御装置590は、巻線の一例としての巻線組510を3以上有する電動モータ32の2つの巻線組510それぞれを有する2つの駆動系統520を駆動させているときに、故障が生じた場合には、駆動させていなかった、電動モータ32の他の巻線組510を有する駆動系統520を駆動させる。
【0112】
(第2の制御例)
第5の実施形態に係る操舵装置5の第2の制御例においては、第3の実施形態に係る操舵装置3の第2の制御例と同様に、全ての駆動系統520が正常である場合には、合計必要駆動力を、3つの駆動系統520全てにて出力するように各駆動系統520の駆動力を制御する。
【0113】
上述したように構成された第5の実施形態に係る操舵装置5においては、電動モータ32は1つであり、駆動系統520は3つであり、駆動系統520は通電されることによって電動モータ32の駆動力を出力する巻線組510をそれぞれ有し、電動モータ32は巻線組510を3つ有する。
また、第5の実施形態に係る操舵装置5は、3つの駆動系統320の内の一の駆動系統320に故障が生じた場合に、前輪100の据えきり時の転動に必要な必要駆動力を、3つ駆動系統520の内の故障が生じていない正常な駆動系統520にて出力するように正常な駆動系統520の駆動力を制御する制御部の一例としての制御装置590、を更に備える。
【0114】
そして、操舵装置5においては、3つの駆動系統520は、駆動系統520の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ32に駆動力を出力する2つの正常時出力駆動系統(例えば、第1駆動系統521及び第2駆動系統522)と、駆動系統520の全てに故障が生じていない場合に、電動モータ32に駆動力を出力しない1つのバックアップ駆動系統(例えば、第3駆動系統523)と、を有する。そして、第1の制御例においては、制御装置590は、正常時出力駆動系統に故障が生じていない場合には、全ての正常時出力駆動系統を最大駆動力となるように制御し、2つの正常時出力駆動系統の内の一の正常時出力駆動系統に故障が生じた場合には、正常な正常時出力駆動系統の駆動力について、必要駆動力に対する割合を変えずに制御し、更にバックアップ駆動系統を最大駆動力となるように制御する。また、電動モータ32を駆動する2つの駆動系統520の駆動力は均一である。
【0115】
また、第2の制御例においては、制御装置590は、駆動系統520の全てに故障が生じていない場合に、駆動系統520の全てを最大駆動力よりも小さい駆動力となるように制御し、3つの駆動系統520の内の一の駆動系統520に故障が生じた場合に、正常な駆動系統520の駆動力を最大駆動力となるように制御する。また、制御装置590は、駆動系統520に故障が生じていない場合に、駆動系統520の全ての駆動力を均一にする。
【0116】
上述したように構成された第5の実施形態に係る操舵装置5においても、3つの駆動系統520の内の一の駆動系統520に故障が生じた場合に、操舵装置5に要求されるアシスト力(要求アシスト力)を残りの2つの駆動系統520にて出力する。そして、2つの駆動系統520にて出力される合計最大駆動力は、前輪100を転動させるために必要とされる最大必要駆動力と同一となるように設定されている。それゆえ、一の駆動系統520に故障が生じた場合であっても、故障する前と同様に前輪100を転動させることができ、ステアリングホイール101の操作を継続させることができる。また、2つの駆動系統520にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、各駆動系統520の最大駆動力を小さくすることができるので、電動モータ32の出力容量を小さくすることができる。その結果、第5の実施形態に係る操舵装置5の電動モータ32の体格を、2つの駆動系統520にて出力される合計最大駆動力が最大必要駆動力よりも大きい構成と比べて、小さくすることができ、車両(例えば自動車)への搭載性が向上する。
【0117】
<第6の実施形態>
図13は、第6の実施形態に係る操舵装置6の概略構成を示す図である。図13は、自動車を上方から見た図である。
図14は、第6の実施形態に係る操舵装置6の制御装置691、電動モータ610の概略構成を示す図である。
第6の実施形態に係る操舵装置6は、第1の実施形態に係る操舵装置1に対して、操舵機構が異なり、左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪をそれぞれ独立して操舵するための操舵機構600を4つ備える点が異なる。また、第6の実施形態に係る操舵装置6は、4つの操舵機構600の駆動を制御する制御ユニット690を備える点が異なる。以下、第1の実施形態に係る操舵装置1と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る操舵装置1と第6の実施形態に係る操舵装置6とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0118】
操舵機構600は、自動車の車輪601(左前輪、右前輪、左後輪又は右後輪)に固定されたナックルアーム602に連結されたロッド603を備えている。また、操舵機構600は、2つの電動モータである第1電動モータ611及び第2電動モータ612と、第1電動モータ611及び第2電動モータ612それぞれの回転駆動力をロッド603の軸方向の移動に変換する2つの変換ユニット(不図示)とを備えている。以下、第1電動モータ611と、第2電動モータ612とを区別する必要がない場合には、「電動モータ610」と称する場合がある。
各変換ユニットは、電動モータ610の出力軸に装着された駆動プーリ(不図示)と、多数のボール(不図示)と、ロッド603に形成されたボールねじ(不図示)にボールを介して取り付けられたボールナット(不図示)とを有している。また、各変換ユニットは、ボールナットとともに回転する従動プーリ(不図示)と、駆動プーリと従動プーリとに掛け渡された無端状のベルト(不図示)とを有している。
【0119】
第1電動モータ611は、第1の実施形態に係る操舵装置1の第1電動モータ11と同様に、第1巻線組111及び第2巻線組112を有する二重三相モータである。
第2電動モータ612は、第1の実施形態に係る操舵装置1の第2電動モータ12と同様に、第3巻線組113及び第4巻線組114を有する二重三相モータである。
【0120】
(駆動系統)
第6の実施形態に係る操舵装置6は、ロッド603を移動させるため、ひいては車輪601を転動させるための駆動力を出力する4つの駆動系統である、第1駆動系統621、第2駆動系統622、第3駆動系統623、第4駆動系統624を有している。
【0121】
第1駆動系統621は、第1電動モータ611の第1巻線組111、モータ駆動部92の第1インバータ回路921及び第1駆動部931、電流検出部94の第1電流検出部941を含んで構成される。
第2駆動系統622は、第1電動モータ611の第2巻線組112、モータ駆動部92の第2インバータ回路922及び第2駆動部932、電流検出部94の第2電流検出部942を含んで構成される。
第3駆動系統623は、第2電動モータ612の第3巻線組113、モータ駆動部92の第3インバータ回路923及び第3駆動部933、電流検出部94の第3電流検出部943を含んで構成される。
第4駆動系統624は、第2電動モータ612の第4巻線組114、モータ駆動部92の第4インバータ回路924及び第4駆動部934、電流検出部94の第4電流検出部944を含んで構成される。
第1駆動系統621、第2駆動系統622、第3駆動系統623、第4駆動系統624を区別する必要がない場合には、「駆動系統620」と称する場合がある。
【0122】
第6の実施形態に係る操舵装置6は、第1の実施形態に係る操舵装置1と同様に、第1駆動系統621の最大駆動力と、第2駆動系統622の最大駆動力と、第3駆動系統623の最大駆動力と、第4駆動系統624の最大駆動力とを合計した合計最大駆動力が、車輪601を転動させるために必要とされる最大必要駆動力の4/3倍となるように設定されている。また、4つの駆動系統620の最大駆動力は全て同一である。最大必要駆動力は、自動車の移動速度である車速Vcが零であるときに、予め定められた摩擦係数の路面(例えばアスファルト路)で予め定められた最大転舵角まで据え切りされた場合に、車輪601を予め定められた最大転動角まで転動させる駆動力である。最大必要駆動力は、車両(例えば自動車)の種類によって異なる。
【0123】
制御ユニット690は、第1の実施形態に係る操舵装置1の制御装置90に相当する制御装置691を、操舵機構600の数の分、つまり、4つ有する。そして、各制御装置691が、対応する操舵機構600の4つの駆動系統620を制御する。
第1の制御例では、4つの駆動系統620が全て正常である場合には、制御装置691は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統620の内の3つの駆動系統620にて出力するように各駆動系統620の駆動力を制御する。そして、制御装置691は、3つの駆動系統620の内の一の駆動系統620に故障が生じた場合、制御装置691は、故障が生じた一の駆動系統620の代わりに、故障が生じた時点で駆動させていなかった駆動系統620を駆動させると良い。
【0124】
第2の制御例では、4つの駆動系統620が全て正常である場合には、制御装置691は、合計必要駆動力を、4つの駆動系統620全てにて出力するように各駆動系統620の駆動力を制御する。そして、制御装置691は、4つの駆動系統620の内の一の駆動系統620に故障が生じた場合、制御装置691は、合計必要駆動力を、故障が生じていない正常な残り3つの駆動系統620全てにて出力するように3つの駆動系統620の駆動力を制御すると良い。
【0125】
なお、第6の実施形態に係る操舵装置6は、言い換えれば、各車輪601を独立して操舵する各操舵機構600に対して、第1の実施形態に係る操舵装置1の駆動系統20に相当する駆動系統620を適用し、制御装置90に相当する制御装置691を適用した構成である。
そして、各操舵機構600に対して適用するのは、第1の実施形態に係る操舵装置1の駆動系統20及び制御装置90に限定されない。例えば、各操舵機構600に対して、第2の実施形態に係る操舵装置2の駆動系統220及び制御装置290を適用しても良い。また、各操舵機構600に対して、第3の実施形態に係る操舵装置3の駆動系統320及び制御装置390を適用しても良い。また、各操舵機構600に対して、第4の実施形態に係る操舵装置4の駆動系統420及び制御装置490を適用しても良い。また、各操舵機構600に対して、第5の実施形態に係る操舵装置5の駆動系統520及び制御装置590を適用しても良い。
【0126】
上述した第1の実施形態に係る操舵装置1〜第6の実施形態に係る操舵装置6においては、二重〜四重化された2〜4組の3相巻線を有する電動モータ(例えば電動モータ10)を用いて、3〜4つの駆動系統(例えば駆動系統20)を構成する操舵装置を例示しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、駆動系統は、5つ以上備えていても良いし、5つ以上の駆動系統を備えるにあたって、5組以上の3相巻線を有する電動モータを用いても良い。
【0127】
また、上述した第1の実施形態に係る操舵装置1〜第6の実施形態に係る操舵装置6においては、電動モータ(例えば電動モータ10)の駆動力を、ベルト等を有する変換ユニットを介してラック軸105又はロッド603の直線移動に変換する、ラックアシスト型の装置であるが、特にかかる態様に限定されない。例えば、ラック軸105又はロッド603に形成されたラック歯とともにラック・ピニオン機構を構成するピニオンが形成されたピニオンシャフトを備え、電動モータ(例えば電動モータ10)の駆動力にてピニオンシャフトを回転させることで、ラック軸105又はロッド603を移動させるピニオンアシスト型としても良い。
【0128】
また、第1の実施形態に係る操舵装置1〜第3の実施形態に係る操舵装置3、及び、第6の実施形態に係る操舵装置6においては、2つの電動モータ(例えば電動モータ10)の駆動力を共にラック軸105又はロッド603の移動に変換するラックアシスト型としているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、2つの電動モータの内の一の電動モータの駆動力を、ベルト等を有する変換ユニットを介してラック軸105又はロッド603の移動に変換するラックアシスト型と、2つの電動モータの内の他の電動モータの駆動力を、ピニオンシャフトを介してラック軸105又はロッド603の移動に変換するピニオンアシスト型と、を備える操舵装置であっても良い。
【0129】
また、第1の実施形態に係る操舵装置1〜第3の実施形態に係る操舵装置3、及び、第6の実施形態に係る操舵装置6においては、2つの電動モータ(例えば電動モータ10)それぞれの駆動力をラック軸105又はロッド603の移動に変換する、ベルト等を有する変換ユニットを2つ備えているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、2つの電動モータの駆動力を1つのベルトにてラック軸105又はロッド603の移動に変換する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0130】
1,2,3,4,5,6…操舵装置、10,13,16,31,32…電動モータ、20,220,320,420,520,620…駆動系統、90,290,390,490,590,691…制御装置、110,210,310,410,510,610…巻線組
【要約】
操舵装置は、車両の車輪を転動させるように駆動する複数の電動モータ10と、電動モータ10を駆動するための駆動力を電動モータ10に出力する3以上の駆動系統20と、を有する操舵装置であり、操舵装置に設けられる駆動系統20の駆動力の最大値である最大駆動力の合計は、車輪の据えきり時の転動に必要な必要駆動力よりも大きく設定され、3以上の駆動系統20の内の1つが故障した場合でも、3以上の駆動系統20の内の正常な駆動系統20の最大駆動力の合計が、必要駆動力となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14