(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピーク時刻の検出は、相互相関により得た相関波形に対して閾値を設け、この閾値を前記相関波形が超えた時点をピーク時刻とする、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
前記ピーク時刻の検出は、相互相関により得た相関波形に対して所定の時間間隔ごとにピークを検出しその時点をピーク時刻とする、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
前記ピーク時刻の検出は、前回検出したピーク時刻から今回のピーク時刻を推定し、この推定したピーク時刻を含む前後の時間範囲からピークを検出しその時点をピーク時刻とする、ことを特徴とする請求項1に記載の列車制御装置。
前記復調処理手段で相関値のピーク時刻を検出した後、受信信号の受信開始との同期を取る処理は、前記検出したピーク時刻をそのまま同期時刻として出力する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の列車制御装置。
前記復調処理手段で相関値のピーク時刻を検出した後、受信信号の受信開始との同期を取る処理は、前回までに検出した複数のピーク時刻から今回のピーク時刻をそれぞれ推定し、その推定した複数のピーク時刻を平均化しその平均値を同期時刻として出力する、ことを特徴とする請求項4に記載の列車制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の列車制御装置においては、例えば駅に設置された地上装置からATC信号を軌道回路を介して列車の車上装置に送信しているが、ATC信号の送受信ケーブルの長さは約10kmである。ここで、ATC信号を伝送できる距離は、ノイズに対する信号のレベル(S/N比)によって決まる。ATC信号を車上装置で受信する際の信号レベルにより、ATC信号の伝送距離が制限される。駅間の距離が大きい(例えば、20kmを超える)場合には、両端のどちらの駅からもATC信号が届かないことがあり、そのため、駅間に地上装置を設置する必要がある。このように、駅間に地上装置を設置すると、その地上装置が故障した場合の修理、保守等が困難になることがあった。
【0005】
従来装置において、例えば、東海道新幹線で用いられているデジタルATC信号は、最小偏移(Minimum Shift Keying;以下“MSK”と略称する)変調方式を採用している。このMSK変調は、周波数変調の一種で、2種類の周波数にビットデータを対応させる。具体的には、中心周波数と、これに対する周波数偏移を定め、デジタル信号のうち、「中心周波数+周波数偏移」を情報「0」に対応させ、「中心周波数−周波数偏移」を情報「1」に対応させて、例えば速度情報を表したビット列を1フレームとして繰り返した波形を送信するようになっている。
【0006】
ここで、MSK変調方式で変調されたATC信号の復調方式としては、周波数検波が用いられている。この周波数検波においては、抽出帯域の異なる2個の帯域通過フィルタ(BPF)を用いることにより、前記「0」、「1」の情報を割り当てられた周波数成分を抽出し、BPFで抽出後のレベルによりビットデータを判別していた。このような復調方式に関連する先行技術として、特開2010−50546号公報に記載された、周波数偏移変調した信号を復調する復調手段がある。
【0007】
前記周波数検波では、中心周波数はノイズの少ないところを選んでいるが、適宜に選択した中心周波数によってはノイズが出る場合があり、前記2種類の周波数の波形を判別する際に、BPFを通過するノイズの影響により、他方の周波数の波形をノイズとして含んで出力することがある。その結果、「0」、「1」の情報を正確に判別できないことがあった。
【0008】
このように、前記周波数検波によるATC信号の復調方式では、BPFを通過するノイズの影響により、「0」、「1」の情報を正確に判別できないことがあり、車上装置のATC信号の受信距離が制限されていた。したがって、前述のように、駅間の距離が大きい場合には、駅間に地上装置を設置する必要があった。そして、駅間に地上装置を設置すると、その地上装置が故障した場合の修理、保守等が困難になることがあった。
【0009】
前記周波数検波によるATC信号の復調処理に対して、最近、ATC信号について周波数スペクトルを用いた復調処理により、S/N比が低下した場合でも車上装置でATC信号を正確に受信可能とする列車制御装置が検討されている。この場合、周波数スペクトルを用いた復調処理では、その復調処理を行う前に受信したATC信号のデータ受信開始との同期を取る必要がある。
【0010】
そこで、このような事情に対処し、本発明が解決しようとする課題は、受信信号について周波数スペクトルを用いた復調処理を行う際に、受信信号と同期検出用信号との相互相関処理を行うことでデータ受信開始との同期を取る列車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明による列車制御装置は、軌道回路に、最小偏移変調方式で得たATC信号を送信する地上装置と、列車に搭載され、前記軌道回路に流れるATC信号を受信する車上装置とを備えて成り、前記車上装置は、受信信号の波形から周波数スペクトルを求めて復調処理を行う復調処理手段を備え、前記復調処理手段は、受信信号と
、ATC信号に含まれる電文信号に加えられるスタートフラグを有する波形の同期検出用信号
とを相互相関し相関値のピーク時刻を検出し、受信開始との同期を取る構成とし、前記受信したATC信号に基づいて列車制御を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による列車制御装置によれば、車上装置に設けられた復調処理手段により、受信信号の波形から周波数スペクトルを求めて復調処理を行う際に、受信信号と
、ATC信号に含まれる電文信号に加えられるスタートフラグを有する波形の同期検出用信号
とを相互相関し相関値のピーク時刻を検出し、受信開始との同期を取ることができる。これにより、受信したATC信号について周波数スペクトルを用いた復調処理を行う際に、前記ATC信号のデータ受信開始との同期を取って、周波数スペクトルを用いた復調処理を正しく実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による列車制御装置の実施形態を示す全体概要図である。この列車制御装置は、地上装置から送信されるATC信号を車上装置で受信し、このATC信号に基づいて列車制御を行うもので、
図1に示すように、地上装置1と、車上装置2とを備えている。なお、この実施形態では、デジタルATC信号を使用して地上装置1と車上装置2間の多情報通信を行うデジタルATC装置の例について説明する。
【0015】
前記地上装置1は、軌道回路T(T
1,T
2;T
3,T
4)に、最小偏移(MSK)変調方式で変調されたATC信号を送信するもので、列車3が走行する軌道(レール)4に沿って適当な間隔で建設された駅5(A駅、B駅)にそれぞれ設置されている。なお、駅5,5間の距離が大きい(例えば、20kmを超える)場合には、駅5,5の間に地上装置1を1個又は複数個設置することがある。地上装置1の内部構成は、例えば特開2003−226240号公報に記載された、従来公知のものと同様である。
【0016】
前記列車3には、車上装置2が搭載されている。この車上装置2は、前記軌道回路Tに流れるATC信号を受信するもので、列車3の例えば先端下部に設けられた受信コイル6を介して、列車在線中の軌道回路Tに流れるATC信号(MSK変調)を受信する。そして、前記受信したATC信号に基づいて列車制御を行うようになっている。
【0017】
図2は、前記車上装置2の内部構成を示すブロック図である。この車上装置2は、前記受信コイル6で受信したATC信号(MSK変調)のうち或る周波数より高い部分を通過させる高域通過フィルタ(HPF)10と、そのHPF10を通過した信号について、中心周波数の前後に或る範囲を有する周波数帯域の信号成分を抽出してノイズを除去する帯域通過フィルタ(BPF)11と、そのBPF11で抽出された信号を直流に直す整流回路12と、その整流回路12の出力信号のうち或る周波数より低い部分を通過させる低域通過フィルタ(LPF)13と、前記BPF11で抽出された信号について復調処理を行う復調回路14と、所定の周期のクロック信号を発生するクロック発生器15と、前記復調回路14で復調処理された結果を前記クロック発生器15のクロック周期に同期させて出力する同期回路16とを有している。そして、前記LPF13の出力は、列車の在線の有無を判断するデジタルATC信号の受信レベルであり、前記同期回路16の出力は、デジタルATC信号に含まれる一連の情報である電文信号である。
【0018】
ここで、本発明においては、前記車上装置2の復調回路14が、前記受信したATC信号の波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別する復調処理手段とされ、該復調回路14の内部に、受信信号と同期検出用信号を相互相関し相関値のピーク時刻を検出し、受信開始との同期を取る構成を備えている。この復調回路14は、
図3に示すように、信号入力部20と、周波数シフト部21と、デシメーション部22と、信号抽出部23と、フーリエ変換部24と、信号判別部25とを有し、更に、信号同期部26を備えて成っている。
【0019】
前記信号入力部20は、
図2に示すBPF11で抽出されたATC信号(MSK変調)を入力する入力部となるものである。周波数シフト部21は、前記入力したATC信号の波形の中心周波数がゼロになるようにシフトするものである。デシメーション部22は、前記シフトされた信号波形についてサンプリング周波数を低くする(整数分の1に下げる)間引きを行うもので、例えば間引きフィルタから成る。信号抽出部23は、前記シフトされ、間引きされた信号波形を所定区間で抽出するもので、例えば1ビットちょうどの区間の波形を抽出するようになっている。フーリエ変換部24は、前記抽出された信号波形をフーリエ変換して周波数スペクトルを求めるもので、例えば高速フーリエ変換(FFT)回路から成る。信号判別部25は、前記求められた周波数スペクトル上で信号レベルのピークを示す波形で信号出力を判別するものである。
【0020】
そして、信号同期部26は、前記信号入力部20に入力した受信信号(MSK変調されたATC信号)と同期検出用信号を相互相関し相関値のピーク時刻を検出し、受信開始との同期を取るもので、前記信号入力部20と信号抽出部23との間において周波数シフト部21及びデシメーション部22と並列に設けられ、検出した同期時刻の信号を信号抽出部23へ送るようになっている。すなわち、信号抽出部23に対して、どのタイミングで受信信号を抽出するかを決定して指示を出すものである。
【0021】
図4は、前記復調回路14の信号同期部26にて受信信号の受信開始との同期を取る処理を示す機能ブロック図である。この実施形態は、
図3に示す信号入力部20から入力する受信信号(B1)と同期検出用信号(B2)との相互相関を算出し(B3)、得られた相関値のピーク時刻を検出(B4)して、同期時刻を検出(B5)した後、同期時刻として出力(B6)するものである。この場合、前記受信信号と相互相関する同期検出用信号(B2)として、ATC信号に含まれる電文信号の先頭に加えられる「スタートフラグ」に相当する波形の信号を用いる。
【0022】
図4において、まず、受信信号を入力する(B1)。ここで、
図3に示す復調回路14の信号入力部20に入力する、MSK変調されたATC信号(受信信号)は、
図5に示すような波形を有し、この受信信号が信号同期部26に入力する。MSK変調は、周波数変調の一種で、2種類の周波数にビット情報を対応させる。具体的には、或る周波数からなる中心周波数(f
c)と、これに対する周波数偏移(Δf)を定め、デジタル信号のうち、「中心周波数+周波数偏移」(f
c+Δf)に情報「0」を割り当て、「中心周波数−周波数偏移」(f
c−Δf)に情報「1」を割り当てて、例えば速度情報を表したビット列を1フレームとして繰り返した波形を送信するようになっている。
図5では、横軸を時刻とし縦軸を振幅として、MSK変調方式で周波数変調されて入力した波形を示しており、その下部にMSK変調されたATC信号の中に含まれる電文信号のビット列を示している。
【0023】
図6は、前記ATC信号の中に含まれる電文信号の構成を示す説明図である。このATC信号に含まれる電文信号の先頭には、「スタートフラグ」が加えられている。スタートフラグは、電文信号の先頭位置を表すビット列で、復調処理ではそのスタートフラグを検知することで、該スタートフラグの後に続くデータ(電文信号の内容)を検知することができる。この場合、スタートフラグのビット列では、
図6に示すように、先頭と末尾がビット「0」であり、中間部においてビット「1」が複数回(例えば3回)連続している。一方、データ区間では、伝送する情報によってビットが異なるが、周期的にビット「0」が挿入されている。したがって、データ区間においてビット「1」が連続する回数は、スタートフラグにおけるビット「1」の連続する回数より少なくなる。これにより、データ区間とスタートフラグとを混同することなく両者を正しく認識して、スタートフラグを検知することで、該スタートフラグの後に続くデータを正しく検知することができるようになっている。
【0024】
その後、
図4において、同期検出用信号を生成し(B2)、前記受信信号と同期検出用信号とを相互相関し(B3)、得られた相関値のピーク時刻を検出する(B4)。
【0025】
図7は、前記信号同期部26にて受信信号の受信開始との同期を取る処理時(
図4参照)の波形を示す説明図である。
図7(a)は、
図3に示す信号入力部20から信号同期部26に入力した受信信号(
図4のB1)の波形である。ビット列“01110”の並びの部分が、電文信号の先頭に加えられたスタートフラグである。
図7(b)は、
図4の受信信号(B1)と相互相関する(B3)する同期検出用信号(B2)の波形である。この同期検出用信号として、受信したATC信号に含まれる電文信号の先頭に加えられるスタートフラグ(ビット列“01110”)に相当する波形の信号を用いる。
【0026】
図7(c)は、受信信号(B1)に対して同期検出用信号(B2)を相対的に矢印C方向(
図7(b)参照)にずらしながら、1サンプルごとに受信信号(B1)に同期検出用信号(B2)を乗算して相互相関を算出した後の信号波形である。この場合、
図7(a)に示す受信信号に含まれる電文信号の先頭に付加されたスタートフラグの終端時刻Teにおいて、相関値がピークPとなる。
【0027】
図8は、前記信号同期部26にて受信信号と同期検出用信号との相互相関を算出する処理を示す説明図である。
図8において、時刻tにおける受信信号をI(t)とし、サンプリング時刻における同期検出用信号をA(1),A(2),…,A(N)とすると、前記サンプリング時刻における受信信号は、I(t+1),I(t+2),…,I(t+N)となる。この状態で、受信信号に対して同期検出用信号をずらしながら乗算して相互相関を算出すると、相互相関rは、
【数1】
と表される。これにより、相互相関による相関値が算出される。
【0028】
このようにして得られる相関値のピーク時刻の検出について説明する。
図7(c)に示す相互相関を算出した後の信号波形において、受信信号と同期検出用信号との相互相関は、前記同期検出用信号と同じ波形の信号を受信した場合に最大となり、ピークPが生じる。したがって、相互相関を算出した後の信号波形においてピークPが生じた時刻Tp(ピーク時刻)を検出することで、同期検出用信号と同じ波形の信号を受信した時刻を求めることができる。すなわち、受信信号に含まれる電文信号の先頭に加えられたスタートフラグ(
図7(a)参照)を、同期検出用信号(
図7(b)参照)として用意することで、電文信号に含まれるスタートフラグの終端時刻Teを検出することができる。
【0029】
ここで、相関値のピーク時刻Tpの検出には、例えば次の三つの手法がある。
(1)相互相関により得た相関波形に対して閾値を設け、この閾値を前記相関波形が超えた時点をピーク時刻とする(第1の実施例)。
(2)相互相関により得た相関波形に対して所定の時間間隔ごとにピークを検出しその時点をピーク時刻とする(第2の実施例)。
(3)前回検出したピーク時刻から今回のピーク時刻を推定し、この推定したピーク時刻を含む前後の時間範囲からピークを検出しその時点をピーク時刻とする(第3の実施例)。
【0030】
図9は、相関値のピーク時刻Tpを検出する第1の実施例を示すグラフである。この実施例は、相互相関により得られた相関波形に対して予め定めた大きさの閾値TLを設け、この閾値TLを前記相関波形の振幅が超えた(P)時点をピーク時刻Tpとするものである。この場合は、相関波形が閾値TLを超えた時点で直ちにピーク時刻Tpを検出することができる。一方、相関波形の振幅が変化して今までよりも大きくなったり、逆に小さくなった場合は、閾値TLを設定し直す必要がある。
【0031】
図10は、相関値のピーク時刻Tpを検出する第2の実施例を示すグラフである。この実施例は、相互相関により得られた相関波形に対して所定の時間間隔HごとにピークPを検出しその時点をピーク時刻Tpとするものである。この場合は、相関波形の振幅が変化しても時間間隔Hにおける相関値のピークPを求めて、ピーク時刻Tpを検出することができる。一方、所定の時間間隔Hだけ待たないと、ピーク時刻Tpを検出することができない。
【0032】
図11は、相関値のピーク時刻Tpを検出する第3の実施例を示すグラフである。この実施例は、前回検出したピーク時刻Tp
0から今回のピーク時刻Tp
1を推定し、この推定したピーク時刻Tp
1を含む前後の時間範囲hからピークPを検出しその時点をピーク時刻Tpとするものである。ピーク時刻Tp
1の推定は、前回のピーク時刻Tp
0に1電文時間を加えた時点として求められる。この場合は、第2の実施例のように所定の時間間隔Hだけ待つ必要はないが、前回検出したピーク時刻Tp
0を必要とし且つそれが正しいことが前提となる。
【0033】
このように、第1〜第3の実施例による相関値のピーク時刻Tpの検出には、それぞれ利害得失がある。そこで、
図3に示す信号同期部26としては、相関値のピーク時刻を検出する手段として、上述の第1、第2、第3の実施例にそれぞれ対応する処理部を備えておき、状況に応じて最良と思われる手段を選択して実行するようにしてもよい。或いは、予め第1〜第3の実施例のうちの何れかの処理部を備えて、実行するようにしてもよい。
【0034】
その後、
図4において、前記検出されたピーク時刻Tpから同期時刻Tsを検出し(B5)、それを同期時刻として出力する(B6)。
【0035】
ここで、同期時刻Tsの検出には、例えば次の二つの手法がある。
(a)検出したピーク時刻Tpをそのまま同期時刻とする(第1の処理)。
(b)前回までに検出した複数のピーク時刻Tpから今回のピーク時刻をそれぞれ推定し、その推定した複数のピーク時刻を平均化しその平均値を同期時刻として算出する(第2の処理)。
【0036】
第1の処理は、
図9〜
図11の何れかの実施例で検出したピーク時刻Tpをそのまま同期時刻として用いるものである。この場合は、同期時刻を速やかに検出することができる。
【0037】
第2の処理は、
図9〜
図11の何れかの実施例で検出した前回までの複数のピーク時刻Tpから今回のピーク時刻を推定し、推定した複数のピーク時刻の平均値を同期時刻として算出するものである。以下に、その算出方法を説明する。
【0038】
図12は、前回までの複数のピーク時刻から今回のピーク時刻を推定し、その推定した複数のピーク時刻を平均化して同期時刻を算出する例を説明する表1であり、
図13は、
図12に示す複数のピーク時刻を平均化して同期時刻を算出する例を、模式化して示す説明図である。表1は、例として前回までの4つの電文のピーク時刻から今回の電文のピーク時刻を推定し、この5つの推定値から今回のピーク時刻を算出する場合を示している。
【0039】
表1において、今回の電文のピーク時刻(同期時刻)をt(0)とし、1〜4つ前の電文のピーク時刻(同期時刻)をそれぞれt(1),t(2),t(3),t(4)としている。そして、今回の電文のピーク時刻の推定値をs(0)とすると、s(0)=t(0)となる。ここで、1電文の時間の長さをRとすると、
図13の模式図(4つ前の電文1から今回の電文5までを模式化して図示)を参照して、1つ前の電文のピーク時刻の推定値は、s(1)=t(1)+Rとなる。以下同様にして、2〜4つ前の電文のピーク時刻の推定値はそれぞれ、s(2)=t(2)+2R,s(3)=t(3)+3R,s(4)=t(4)+4Rとなる。
図13において、1〜4つ前の電文のピーク時刻の推定値s(1)〜s(4)が幅Qの範囲でばらつくのは、ノイズによりピーク時刻がずれることがあるからである。
【0040】
これらの5つの推定値s(0)〜s(4)から今回のピーク時刻を算出するには、5つの推定値を平均化しその平均値を求めればよい。すなわち、
平均値={s(0)+s(1)+s(2)+s(3)+s(4)}/5
これが今回求める同期時刻Tsとなる。この場合は、ノイズ等の影響による同期時刻の誤差を小さくすることができる。
【0041】
なお、
図12及び
図13に示す複数の推定値の平均化処理においては、複数の電文のピーク時刻(同期時刻)から求めた各推定値s(0),s(1),s(2),s(3),s(4)に対し、同じ重みづけで加算した場合に相当する。しかし、これに限られず、各推定値に適宜の割合で重みづけに傾斜をつけてもよい。例えば、より現在に近いタイミングの推定値の重みを大きくしてもよい。
【0042】
このような、第1の処理又は第2の処理により、
図4において、前記検出されたピーク時刻Tpから同期時刻Tsが検出される(B5)。その後、その同期時刻Tsをデータ区間との同期時刻として出力する(B6)。そして、
図3に示す信号同期部26から信号抽出部23に対して同期時刻Tsの信号が送られ、前記信号抽出部23に対して、どのタイミングで受信信号を抽出するかを決定して指示を出す。これにより、受信したATC信号について周波数スペクトルを用いた復調処理を行う際に、前記ATC信号のデータ受信開始との同期を取ることができる。
【0043】
なお、以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係等については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、以上に説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り、様々な形態に変更することができる。