特許第6429230号(P6429230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429230
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】走行装置の旋回速度制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 11/04 20060101AFI20181119BHJP
   B62D 1/24 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B62D11/04 Z
   B62D1/24
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-198808(P2014-198808)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-68696(P2016-68696A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌憲
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−096134(JP,A)
【文献】 特開2002−274422(JP,A)
【文献】 特開2010−202028(JP,A)
【文献】 特開2012−143178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 11/04
B62D 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ装置または装輪車両である走行装置の旋回速度制御装置であって、
走行装置は、車体と、車体の左右方向の両側にそれぞれ設けられる第1および第2の走行用回転体とを備え、走行装置がクローラ装置である場合には、走行用回転体は、無端状のクローラベルトであり、走行装置が装輪車両である場合には、走行用回転体は、車輪であり、
地上面に接する第1および第2の走行用回転体が回転駆動されることにより前記走行装置が地上を走行し、第1の走行用回転体の回転速度と第2の走行用回転体の回転速度との差により前記走行装置が旋回するようになっており、
前記旋回速度制御装置は、
人に操作され、この操作に応じた入力値を生成する操作部と、
前記操作部になされた操作に基づいて、第1の走行用回転体に対する第1の回転速度指令値を生成し、第2の走行用回転体に対する第2の回転速度指令値を生成する回転速度指令部と、
第1の回転速度指令値に従って第1の走行用回転体の回転速度を制御するとともに、第2の回転速度指令値に従って第2の走行用回転体の回転速度を制御する回転速度制御部と、を備え、
前記入力値と、その値が調整可能なパラメータを独立変数とし第1および第2の回転速度指令値を従属変数とした指令値算出用関数が予め設定されており、
前記パラメータの値を調整するパラメータ調整部を備え、
前記パラメータの値の調整により、指令値算出用関数により求まる第1および第2の回転速度指令値の差が調整され、その結果、走行装置の旋回速度が調整されるようになっており、
回転速度指令部は、前記入力値と、パラメータ調整部により値が調整されたパラメータとを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成して出力し、
前記走行装置の走行速度を取得する走行速度取得部を備え、
前記操作部には、前記走行装置の旋回に関する操作と、前記走行装置の前後進に関する操作とがなされ、前記操作部は、旋回に関する操作に応じて旋回に関する入力値を生成し、前後進に関する操作に応じて、前後進に関する入力値を生成し、
旋回に関する前記入力値が任意の値に固定されている状態で、取得された前記走行速度が大きくなるに従って、第1および第2の回転速度指令値の差が連続的にまたは段階的に減るように、パラメータ調整部はパラメータを調整する、走行装置の旋回速度制御装置。
【請求項2】
クローラ装置または装輪車両である走行装置の旋回速度制御装置であって、
走行装置は、車体と、車体の左右方向の両側にそれぞれ設けられる第1および第2の走行用回転体とを備え、走行装置がクローラ装置である場合には、走行用回転体は、無端状のクローラベルトであり、走行装置が装輪車両である場合には、走行用回転体は、車輪であり、
地上面に接する第1および第2の走行用回転体が回転駆動されることにより前記走行装置が地上を走行し、第1の走行用回転体の回転速度と第2の走行用回転体の回転速度との差により前記走行装置が旋回するようになっており、
前記旋回速度制御装置は、
人に操作され、この操作に応じた入力値を生成する操作部と、
前記操作部になされた操作に基づいて、第1の走行用回転体に対する第1の回転速度指令値を生成し、第2の走行用回転体に対する第2の回転速度指令値を生成する回転速度指令部と、
第1の回転速度指令値に従って第1の走行用回転体の回転速度を制御するとともに、第2の回転速度指令値に従って第2の走行用回転体の回転速度を制御する回転速度制御部と、を備え、
前記入力値と、その値が調整可能なパラメータを独立変数とし第1および第2の回転速度指令値を従属変数とした指令値算出用関数が予め設定されており、
前記パラメータの値を調整するパラメータ調整部を備え、
前記パラメータの値の調整により、指令値算出用関数により求まる第1および第2の回転速度指令値の差が調整され、その結果、走行装置の旋回速度が調整されるようになっており、
回転速度指令部は、前記入力値と、パラメータ調整部により値が調整されたパラメータとを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成して出力し、
前記走行装置の走行速度を取得する走行速度取得部と、
前記走行装置の旋回速度を検出する旋回速度検出部と、を備え、
各走行速度に対して、設定旋回速度が定められており、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、取得された前記走行速度に対する設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、取得された前記走行速度に対する設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う、走行装置の旋回速度制御装置。
【請求項3】
パラメータ調整部は、人による入力を受ける入力部と、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部とを備え、人が、入力部を操作することにより、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さが前記調整実行部に入力され、
前記調整実行部は、入力部により入力された荷物の重さが大きいほど、走行装置の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整し、
前記調整実行部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う、請求項2に記載の走行装置の旋回速度制御装置。
【請求項4】
第1および第2の走行用回転体の一方または両方を回転駆動するモータの負荷トルクを検出するトルク検出部と、
走行装置の加速度を検出する加速度センサと、を備え、
走行装置の走行速度と、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、トルク検出部により検出された負荷トルクと、加速度センサにより検出された走行装置の加速度との関係が、重量算出用データとして予め求められており、
パラメータ調整部は、加速度センサが検出した走行装置の加速度と、走行速度取得部が取得した走行装置の走行速度と、トルク検出部が検出した負荷トルクと、重量算出用データとに基づいて、荷物の重さを求め、
パラメータ調整部は、求めた荷物の重さが大きくなるにつれて、走行装置の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整し、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う、請求項2に記載の走行装置の旋回速度制御装置。
【請求項5】
パラメータ調整部は、人による入力を受ける入力部と、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部とを備え、人が入力部を操作することにより、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、該荷物の重心とが調整実行部に入力され、
前記車体における各3次元位置に存在する車体の構成要素の重さを示す前記車体の重量分布データが、予め求められており、
入力された荷物の重さと荷物の重心、および、車体の重量分布データに基づいて、荷物積載場所の荷物および車体を含めた走行装置全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との一方または両方を求め、
前記調整実行部は、
求めた重心の高さが高いほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理と、
求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置における左右の走行用回転体の左右方向中心から離れるほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理との一方または両方を行うことにより、設定旋回速度を調整し、
前記調整実行部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う、請求項2に記載の走行装置の旋回速度制御装置。
【請求項6】
走行装置が、予め定めた一定の走行速度で走行しながら、予め定めた一定の旋回速度で旋回している時に、前記車体の前後軸回りに前記車体が傾いた角度である傾き角度を検出する傾きセンサを備え、
前記傾き角度と、走行装置における特定の荷物積載場所の荷物および前記車体を含めた走行装置全体の重心の高さおよび該重心の左右方向位置の一方または両方との関係を示す傾き特性モデルが、予め作成されており、傾き特性モデルは、予め定めた前記一定の走行速度で走行しながら、予め定めた前記一定の旋回速度で旋回している時の前記関係であり、
パラメータ調整部は、走行装置が前記一定の走行速度で走行しながら前記一定の旋回速度で旋回している時に傾きセンサが検出した傾き角度と、傾き特性モデルとに基づいて、荷物積載場所の荷物および前記車体を含めた走行装置全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との一方または両方を求め、
パラメータ調整部は、
求めた重心の高さが高いほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理と、
求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置における左右の走行用回転体の左右方向中心から離れるほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理との一方または両方を行うことにより、設定旋回速度を調整し、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う、請求項2に記載の走行装置の旋回速度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ装置または装輪車両である走行装置の旋回速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ装置は、地上面に接するクローラベルトの回転により地上を走行する。クローラ装置は、車体と、車体の前後方向に対する左右方向の両側にそれぞれ設けられた無端状の第1および第2のクローラベルトとを備える。
【0003】
地上面に接触する第1および第2のクローラベルトが回転駆動されることによりクローラ装置が地上を走行する。また、第1のクローラベルトの回転速度と第2のクローラベルトの回転速度との差によりクローラ装置の進行方向(向き)が変わる。すなわち、クローラ装置が旋回する。
【0004】
このようなクローラ装置は、例えば下記の特許文献1に記載されている。特許文献1では、クローラ装置の進行方向の操縦を行うステアリングホイールの操舵回動量に応じて、クローラ装置の車体の旋回半径が小さくなる側へ旋回モードを切り替えている。
【0005】
一方、装輪車両は、地上面に接する車輪の回転により地上を走行する。装輪車両は、車体と、車体の前後方向に対する左側において車体に設けられた複数の第1の車輪と、車体の前後方向に対する右側において車体に設けられた複数の第2の車輪とを備える。装輪車両において、車体の左側に設けられた全ての車輪は、同じ回転方向に同じ回転速度で回転駆動され、車体の右側に設けられた全ての車輪は、同じ回転方向に同じ回転速度で回転駆動される。
【0006】
地上面に接する車体の左側および右側の車輪が回転駆動されることにより装輪車両が地上を走行する。また、装輪車両では、車体の左側における車輪の回転速度と車体の右側における車輪の回転速度との差により車体の進行方向(向き)が変わる。すなわち、装輪車両が旋回する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−168611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クローラ装置または装輪車両である走行装置の旋回は、次のように制御される。走行装置を操縦するための操作部(例えばステアリングホイール)の操作に応じて、第1のクローラベルトまたは第1の車輪に対する回転速度指令値として第1の回転速度指令値が生成されるとともに、第2のクローラベルトまたは第2の車輪に対する回転速度指令値として第2の回転速度指令値が生成される。第1の回転速度指令値に従って第1のクローラベルトまたは第1の車輪の回転速度が制御されるとともに、第2の回転速度指令値に従って第2のクローラベルトまたは第2の車輪の回転速度が制御される。第1のクローラベルトまたは第1の車輪の回転速度と、第2のクローラベルトまたは第2の車輪の回転速度との差による旋回速度で、走行装置は旋回する。
【0009】
しかし、走行装置がその進行方向を変える実際の旋回速度(以下、単に旋回特性ともいう)は、走行装置が走行する地上面の状態(例えば摩擦係数)や、走行装置の積載物の重量に応じて変化する。
そのため、このような変化に応じて、走行装置の旋回特性を、好ましい旋回特性に調整することが望まれる。
【0010】
また、走行装置の走行速度に応じて、旋回特性を変えることが望ましい場合もある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、クローラ装置または装輪車両である走行装置が走行する地上面の状態や走行装置の積載物の重量、または、走行装置の走行速度に応じて、走行装置の旋回特性を調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明によると、クローラ装置または装輪車両である走行装置の旋回速度制御装置であって、
走行装置は、車体と、車体の左右方向の両側にそれぞれ設けられる第1および第2の走行用回転体とを備え、走行装置がクローラ装置である場合には、走行用回転体は、無端状のクローラベルトであり、走行装置が装輪車両である場合には、走行用回転体は、車輪であり、
地上面に接する第1および第2の走行用回転体が回転駆動されることにより前記走行装置が地上を走行し、第1の走行用回転体の回転速度と第2の走行用回転体の回転速度との差により前記走行装置が旋回するようになっており、
前記旋回速度制御装置は、
人に操作され、この操作に応じた入力値を生成する操作部と、
前記操作部になされた操作に基づいて、第1の走行用回転体に対する第1の回転速度指令値を生成し、第2の走行用回転体に対する第2の回転速度指令値を生成する回転速度指令部と、
第1の回転速度指令値に従って第1の走行用回転体の回転速度を制御するとともに、第2の回転速度指令値に従って第2の走行用回転体の回転速度を制御する回転速度制御部と、を備え、
前記入力値と、その値が調整可能なパラメータを独立変数とし第1および第2の回転速度指令値を従属変数とした指令値算出用関数が予め設定されており、
前記パラメータの値を調整するパラメータ調整部を備え、
前記パラメータの値の調整により、指令値算出用関数により求まる第1および第2の回転速度指令値の差が調整され、その結果、走行装置の旋回速度が調整されるようになっており、
回転速度指令部は、前記入力値と、パラメータ調整部により値が調整されたパラメータとを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成して出力する、ことを特徴とする走行装置の旋回速度制御装置が提供される。
【0013】
本発明の旋回速度制御装置は、例えば以下のように構成される。
【0014】
上述の旋回速度制御装置は、前記走行装置の走行速度を取得する走行速度取得部を備え、
前記操作部には、前記走行装置の旋回に関する操作と、前記走行装置の前後進に関する操作とがなされ、前記操作部は、旋回に関する操作に応じて旋回に関する入力値を生成し、前後進に関する操作に応じて、前後進に関する入力値を生成し、
旋回に関する前記入力値が任意の値に固定されている状態で、取得された前記走行速度が大きくなるに従って、第1および第2の回転速度指令値の差が連続的にまたは段階的に減るように、パラメータ調整部はパラメータを調整する。
【0015】
代わりに、上述の旋回速度制御装置は、前記走行装置の走行速度を取得する走行速度取得部と、
前記走行装置の旋回速度を検出する旋回速度検出部と、を備え、
各走行速度に対して、設定旋回速度が定められており、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、取得された前記走行速度に対する設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、取得された前記走行速度に対する設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行ってもよい。
【0016】
この場合、以下の構成例1〜4を採用してもよい。
【0017】
(構成例1)
パラメータ調整部は、人による入力を受ける入力部と、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部とを備え、人が、入力部を操作することにより、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さが前記調整実行部に入力され、
前記調整実行部は、入力部により入力された荷物の重さが大きいほど、走行装置の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整し、
前記調整実行部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う。
【0018】
(構成例2)
上述の旋回速度制御装置は、第1および第2の走行用回転体の一方または両方を回転駆動するモータの負荷トルクを検出するトルク検出部と、
走行装置の加速度を検出する加速度センサと、を備え、
走行装置の走行速度と、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、トルク検出部により検出された負荷トルクと、加速度センサにより検出された走行装置の加速度との関係が、重量算出用データとして予め求められており、
パラメータ調整部は、加速度センサが検出した走行装置の加速度と、走行速度取得部が取得した走行装置の走行速度と、トルク検出部が検出した負荷トルクと、重量算出用データとに基づいて、荷物の重さを求め、
パラメータ調整部は、求めた荷物の重さが大きくなるにつれて、走行装置10の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整し、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う。
【0019】
(構成例3)
パラメータ調整部は、人による入力を受ける入力部と、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部とを備え、人が入力部を操作することにより、走行装置における特定の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、該荷物の重心とが調整実行部に入力され、
前記車体における各3次元位置に存在する車体1の構成要素の重さを示す前記車体の重量分布データが、予め求められており、
入力された荷物の重さと荷物の重心、および、車体1の重量分布データに基づいて、荷物積載場所の荷物および車体を含めた走行装置全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との一方または両方を求め、
前記調整実行部は、
求めた重心の高さが高いほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理と、
求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置における左右の走行用回転体の左右方向中心から離れるほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理との一方または両方を行うことにより、設定旋回速度を調整し、
前記調整実行部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う。
【0020】
(構成例4)
上述の旋回速度制御装置は、走行装置が、予め定めた一定の走行速度で走行しながら、予め定めた一定の旋回速度で旋回している時に、前記車体の前後軸回りに前記車体が傾いた角度である傾き角度を検出する傾きセンサを備え、
前記傾き角度と、走行装置における特定の荷物積載場所の荷物および前記車体を含めた走行装置全体の重心の高さおよび該重心の左右方向位置の一方または両方との関係を示す傾き特性モデルが、予め作成されており、傾き特性モデルは、予め定めた前記一定の走行速度で走行しながら、予め定めた前記一定の旋回速度で旋回している時の前記関係であり、
パラメータ調整部は、走行装置が前記一定の走行速度で走行しながら前記一定の旋回速度で旋回している時に傾きセンサが検出した傾き角度と、傾き特性モデルとに基づいて、荷物積載場所の荷物および前記車体を含めた走行装置全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との一方または両方を求め、
パラメータ調整部は、
求めた重心の高さが高いほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理と、
求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置における左右の走行用回転体の左右方向中心から離れるほど、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように設定旋回速度を調整する処理との一方または両方を行うことにより、設定旋回速度を調整し、
パラメータ調整部は、
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも高い場合に、前記旋回速度が下がるように前記パラメータを調整する処理、および
検出された前記旋回速度が、調整された設定旋回速度よりも低い場合に、前記旋回速度が上がるように前記パラメータを調整する処理の一方または両方を行う。
【0021】
代わりに、上述のパラメータ調整部は、人による入力を受ける入力部と、前記入力に従って前記パラメータの値を変える変更部とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
上述した本発明によると、操作部に対する人の操作に応じて生成される入力値と、パラメータとを独立変数とし、第1および第2の走行用回転体に対する第1および第2の回転速度指令値を従属変数とした指令値算出用関数を設定し、パラメータ調整部によりパラメータを調整する。回転速度指令部は、前記入力値と、パラメータ調整部により値が調整されたパラメータとを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成して出力する。したがって、走行装置が走行する地上面の状態や走行装置の積載物の重量、または、走行装置の走行速度に応じて、パラメータを調整することにより、走行装置の旋回特性の調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の旋回速度制御装置が適用可能なクローラ装置の一例を示す。
図2】本発明の旋回速度制御装置が適用可能な装輪車両の一例を示す。
図3】本発明の第1実施形態による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図4】操作部の構成例を示す。
図5】クローラ装置の旋回特性の調整を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施形態による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図7】本発明の第3実施形態の構成例1による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図8】本発明の第3実施形態の構成例2による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図9】本発明の第3実施形態の構成例3による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図10】本発明の第3実施形態の構成例4による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
図11】本発明の第4実施形態による旋回速度制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1図2は、本発明の旋回速度制御装置が適用可能な走行装置の構成例を示す。走行装置10は、クローラ装置または装輪車両である。図1は、本発明の旋回速度制御装置が適用可能なクローラ装置10の一例を示す。図1(A)は、水平方向から見た図であり、図1(B)は、図1(A)のB−B線矢視図である。図2は、本発明の旋回速度制御装置が適用可能な装輪車両10の一例を示す。図2(A)は、水平方向から見た図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線矢視図である。
【0026】
走行装置10は、車体1と、車体1の左右方向の両側にそれぞれ設けられる第1および第2の走行用回転体3,5とを備える。地上面に接する第1および第2の走行用回転体3,5が回転駆動されることにより走行装置10が地上を走行し、第1の走行用回転体3の回転速度と第2の走行用回転体5の回転速度との差により走行装置10が旋回するようになっている。
【0027】
図1のように走行装置10がクローラ装置である場合には、走行用回転体3,5は、無端状のクローラベルトである。第1および第2のクローラベルト3,5は、車体1の前後方向(図1(B)に示す矢印Daの方向)に対する左右方向(図1(B)に示す矢印Dbの方向)の両側にそれぞれ設けられる。第1および第2のクローラベルト3,5は、前後方向を向き、その下側部分が地上面に接触する。第1および第2のクローラベルト3,5が回転駆動されることにより、クローラ装置10が地上を走行する。例えば、第1および第2のクローラベルト3,5の各々は、駆動輪7と従動輪9に掛けられている。駆動輪7と従動輪9は、それぞれ、その中心軸C1,C2まわりに回転可能に車体1に取り付けられている。左側の駆動輪7は、この駆動輪7の回転方向に第1のクローラベルト3に係合し、右側の駆動輪7は、この駆動輪7の回転方向に第2のクローラベルト5に係合している。したがって、各駆動輪7が、図示しない駆動装置に回転駆動されることにより、第1および第2のクローラベルト3,5が回転し、従動輪9も回転する。第1のクローラベルト3と第2のクローラベルト5とは、互いに対して独立して回転駆動でき、第1のクローラベルト3の回転速度と第2のクローラベルト5の回転速度との差によりクローラ装置10が旋回するようになっている。
【0028】
図2のように走行装置10が装輪車両である場合には、走行用回転体3,5は、車輪である。装輪車両10において、複数の第1の車輪3が、車体1の前後方向(図2(B)に示す矢印Daの方向)に対する左側(図2(B)に示す矢印Dbの方向の一方の側)に設けられ、複数の第2の車輪5が、車体1の前後方向に対する右側に設けられる。また、装輪車両10において、車体1の左側に設けられた全ての第1の車輪3は、同じ回転方向に同じ回転速度で、その中心軸Cまわりに回転駆動され、車体1の右側に設けられた全ての第2の車輪5は、同じ回転方向に同じ回転速度で、その中心軸Cまわりに回転駆動される。第1および第2の車輪3,5の各々は、地上面に接触するタイヤを有していてよい。第1の車輪3と第2の車輪5とは、互いに対して独立して回転駆動でき、第1の車輪3の回転速度と第2の車輪5の回転速度との差により装輪車両10が旋回するようになっている。装輪車両10は、ステアリング機構を有していなくてよく、第1および第2の車輪3,5の向き(車体1が水平である場合に、車輪3,5の中心軸Cと直交する水平方向)は、車体1の前後方向に固定されていてよい。
【0029】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による旋回速度制御装置を説明する。
【0030】
図3は、本発明の第1実施形態による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。走行装置10の旋回速度制御装置20は、操作部11と、回転速度指令部13と、回転速度制御部15と、走行速度取得部17と、パラメータ調整部19と、記憶部21とを備える。
【0031】
操作部11は、人に操作され、この操作に応じた入力値を生成する。第1実施形態によると、操作部11には、走行装置10の旋回に関する操作と、走行装置10の前後進に関する操作とがなされる。操作部11は、旋回に関する操作に応じて旋回に関する入力値を生成し、前後進に関する操作に応じて、前後進に関する入力値を生成する。
【0032】
図4(A)は、操作部11の構成例を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)のB−B線断面図であり、図4(C)は、図4(A)のC−C線断面図である。
【0033】
図4(A)では、操作部11は、旋回レバー11aと前後進レバー11bを含む。図4(B)において、実線で描かれた旋回レバー11aは、中立位置にあり、この位置から、軸Caを中心に、図4(B)の左側に傾けられると、旋回に関する入力値は、正の値になり、傾ける量が大きいほど、この入力値の絶対値は大きくなる。一方、図4(B)において、旋回レバー11aが、中立位置から、軸Caを中心に、図4(B)の右側に傾けられると、旋回に関する入力値は、負の値になり、傾ける量が大きいほど、この入力値の絶対値は大きくなる。
【0034】
図4(C)において、実線で描かれた前後進レバー11bは、中立位置にあり、この位置から、軸Cbを中心に、図4(C)の左側に傾けられると、前後進に関する入力値は、正の値になり、傾ける量が大きいほど、この入力値の絶対値は大きくなる。一方、図4(C)において、前後進レバー11bが、中立位置から、軸Cbを中心に、図4(C)の右側に傾けられると、前後進に関する入力値は、負の値になり、傾ける量が大きいほど、この入力値の絶対値は大きくなる。
【0035】
回転速度指令部13は、操作部11になされた操作と、走行速度取得部17により取得された走行速度とに基づいて、第1の走行用回転体3に対する回転速度指令値を第1の回転速度指令値として生成し、第2の走行用回転体5に対する回転速度指令値を第2の回転速度指令値として生成する。生成された第1および第2の回転速度指令値は、回転速度制御部15に入力される。
【0036】
なお、好ましくは、第1の回転速度指令値が正の値である場合には、第2の回転速度指令値も正の値となり、第1の回転速度指令値が負の値である場合には、第2の回転速度指令値も負の値となるように、操作部11と回転速度指令部13が構成されている。
【0037】
回転速度制御部15は、第1の回転速度指令値に従って第1の走行用回転体3の回転速度を制御するとともに、第2の回転速度指令値に従って第2の走行用回転体5の回転速度を制御する。
【0038】
走行装置10がクローラ装置である場合には、例えば、第1の回転速度指令値は、第1のクローラベルト3が掛けられた駆動輪7の回転数(単位時間あたりの回転数)であり、第2の回転速度指令値は、第2のクローラベルト5が掛けられた駆動輪7の回転数(単位時間あたりの回転数)である。この場合、回転速度制御部15は、第1の回転速度指令値と、適宜の回転検出器(例えばエンコーダ)により検出した、第1のクローラベルト3が掛けられた駆動輪7の回転数とに基づいて、両者の差がゼロになるように、この駆動輪7の駆動装置(例えばモータ)を制御することにより第1のクローラベルト3の回転速度を制御する。同様に、回転速度制御部15は、第2の回転速度指令値と、適宜の回転検出器(例えばエンコーダ)により検出した、第2のクローラベルト5が掛けられた駆動輪7の回転数(単位時間あたりの回転数)とに基づいて、両者の差がゼロになるように、この駆動輪7の駆動装置(例えばモータ)を制御することにより第2のクローラベルト5の回転速度を制御する。なお、以下において、回転数とは、単位時間あたりの回転数を意味する。
【0039】
走行装置10が装輪車両である場合には、例えば、第1の回転速度指令値は、第1の車輪3の回転数であり、第2の回転速度指令値は、第2の車輪5の回転数である。この場合、回転速度制御部15は、第1の回転速度指令値と、適宜の回転検出器(例えばエンコーダ)により検出した第1の車輪3の回転数とに基づいて、両者の差がゼロになるように、第1の車輪3の駆動装置(例えばモータ)を制御することにより第1の車輪3の回転速度を制御する。同様に、回転速度制御部15は、第2の回転速度指令値と、適宜の回転検出器(例えばエンコーダ)により検出した第2の車輪5の回転数とに基づいて、両者の差がゼロになるように、第2の車輪5の駆動装置(例えばモータ)を制御することにより第2の車輪5の回転速度を制御する。
【0040】
回転速度指令部13は、予め設定されている指令値算出用関数に従って、第1および第2の回転速度指令値を生成するように構成されている。指令値算出用関数の独立変数は、操作部11になされた操作に応じた入力値(以下、単に入力値ともいう)と、その値が調整可能なパラメータであり、指令値算出用関数の従属変数は、第1および第2の回転速度指令値である。回転速度指令部13は、入力値と、パラメータ調整部19により値が調整されたパラメータとを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成して出力する。この場合、旋回に関する入力値の差の大きさが大きいほど、第1および第2の回転速度指令値の差の大きさが大きくなる。
【0041】
記憶部21は、パラメータ調整部19により調整された、指令値算出用関数におけるパラメータ(以下、単にパラメータともいう)を記憶する。
【0042】
指令値算出用関数の好ましい一例は、次の式(1)〜(4)からなる。この例では、指令値算出用関数は、第1の回転速度指令値Ωを算出するための式(1)(3)と、第2の回転速度指令値Ωを算出するための式(2)(4)からなる。

≧0の場合、
Ω=R×ΩMAX ・・・(1)
Ω=(A/(1+B×|L)+(1−A))×R×ΩMAX ・・・(2)

<0の場合、
Ω=(A/(1+B×|L)+(1−A))×R×ΩMAX ・・・(3)
Ω=R×ΩMAX ・・・(4)
【0043】
式(1)〜(4)における各記号は、次の通りである。
は、操作部11により生成された旋回に関する入力値である。Lは、最小値−1から最大値+1までの値をとる。図4の操作部11を用いる場合には、旋回レバー11aが中立位置(図4(B)の実線で描かれた旋回レバー11aの位置)にある時には、Lの値はゼロになる。
は、操作部11により生成された前後進に関する入力値である。Rは、最小値−1から最大値+1までの値をとる。図4の操作部11を用いる場合には、前後進レバー11bが中立位置(図4(C)の実線で描かれた前後進レバー11bの位置)にある時には、Rの値はゼロになる。
ΩMAXは、予め設定された、回転速度指令値の最大値である。
【0044】
Ωは、第1の走行用回転体3の回転速度指令値である。Ωが正の値である場合には、回転速度制御部15は、車体1を前進させる方向(図1(A)または図2(A)における反時計回りの方向)に、第1の回転速度指令値Ωに従った回転数で、第1のクローラベルト3に係合する駆動輪7または第1の車輪3を回転させる制御を行う。Ωが負の値である場合には、回転速度制御部15は、車体1を後進させる方向(図1(A)または図2(A)における時計回りの方向)に、第1の回転速度指令値Ωに従った回転数で、第1のクローラベルト3に係合する駆動輪7または第1の車輪3を回転させる制御を行う。
Ωは、第2の走行用回転体5の回転速度指令値である。Ωが正の値である場合には、回転速度制御部15は、車体1を前進させる方向(図1(A)または図2(A)における反時計回りの方向)に、第2の回転速度指令値Ωに従った回転数で、第2のクローラベルト5に係合する駆動輪7または第2の車輪5を回転させる。Ωが負の値である場合には、回転速度制御部15は、車体1を後進させる方向(図1(A)または図2(A)における時計回りの方向)に、第2の回転速度指令値Ωに従った回転数で、第2のクローラベルト5に係合する駆動輪7または第2の車輪5を回転させる。
【0045】
A,B,Cは、パラメータである。Aは、0.8以上であり2以下の範囲内の値をとり、Bは、0.5以上であり1以下の範囲内の値をとり、Cは、1以上であり8以下の範囲内の値をとる。
【0046】
パラメータ調整部19は、走行速度取得部17により取得された走行速度に基づいて、指令値算出用関数におけるパラメータの値を調整する。指令値算出用関数が式(1)〜(4)の場合には、パラメータ調整部19は、パラメータA,B,Cの値を調整する。
【0047】
走行速度取得部17は、走行装置10の走行速度(すなわち、車体1が地上面を移動する速度)を取得する。取得された走行速度は、パラメータ調整部19に入力される。
【0048】
走行速度取得部17は、例えば、操作部11が生成した入力値L,Rに基づいて、走行装置10の走行速度Vを算出してよい。すなわち、走行速度取得部17は、次式(5)に従って走行速度Vを算出してよい。この場合、走行速度取得部17には、操作部11から入力値L,Rが入力される。

V=VMAX×R/(1+L) ・・・(5)

式(5)において、VMAXは、予め設定された走行装置10の最大走行速度であり、RとLは、上述の通りである。
【0049】
代わりに、走行速度取得部17は、次のように、走行装置10の走行速度Vを取得してもよい。
【0050】
走行装置10がクローラ装置である場合には、走行速度取得部17は、第1のクローラベルト3が掛けられた駆動輪7の回転数ωを検出する回転検出器(例えばエンコーダ)と、第2のクローラベルト5が掛けられた駆動輪7の回転数ωを検出する回転検出器(例えばエンコーダ)と、検出された回転数ωと回転数ωに基づいて走行装置10の走行速度Vを算出する計算部を有する。この計算部は、次式(6)に従ってクローラ装置10の走行速度Vを計算する。

V=(X×ω+X×ω)/2 ・・・(6)

式(6)において、Xは、第1のクローラベルト3が掛けられた駆動輪7の外径の1/2(厳密には、駆動輪7の外径の1/2と、第1のクローラベルト3の厚みとの和。ただし、第1のクローラベルト3の外表面に突起がある場合には、この突起を厚みに含めない)であり、Xは、第2のクローラベルト5が掛けられた駆動輪7の外径の1/2(厳密には、駆動輪7の外径の1/2と、第2のクローラベルト5の厚みとの和。ただし、第2のクローラベルト5の外表面に突起がある場合には、この突起を厚みに含めない)である。Xは、Xと同じであってよい。
【0051】
走行装置10が装輪車両である場合には、走行速度取得部17は、第1の車輪3の回転数ωを検出する回転検出器(例えばエンコーダ)と、第2の車輪5の回転数ωを検出する回転検出器(例えばエンコーダ)と、検出された回転数ωと回転数ωに基づいて装輪車両10の走行速度Vを算出する計算部を有する。この計算部は、上式(6)に従って装輪車両10の走行速度Vを計算する。
ただし、この場合、上式(6)において、Xは、第1の車輪3の外径の1/2であり、Xは、第2の車輪5の外径の1/2であり、Xは、Xと同じであってよい。
【0052】
代わりに、走行速度取得部17は、走行装置10の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサが検出した走行装置10の加速度を時間で積分することにより走行装置10の走行速度を算出する計算部とを有していてもよい。また、走行速度取得部17は、他の方法で走行装置10の走行速度を取得してもよい。
【0053】
第1実施形態によると、旋回に関する入力値が任意の値(絶対値がゼロより大きい値)に固定されている状態で、走行速度取得部17により取得された走行速度が大きくなるに従って、第1および第2の回転速度指令値の差(厳密には、第1の回転速度指令値の絶対値と第2の回転速度指令値の絶対値との差)が連続的にまたは段階的に減るように、パラメータ調整部19はパラメータを調整する。なお、第1および第2の回転速度指令値の差が減ると、第1の走行用回転体3が車体1に対して回転する速度の大きさと、第2の走行用回転体5が車体1に対して回転する速度の大きさとの差が減る。
【0054】
上述の式(1)〜(4)を用いる場合に、例えば、取得された走行速度が大きくなるに従って、パラメータ調整部19は、次の表1に従って、パラメータA,B,Cの値を段階的に調整する。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に従ってパラメータA,B,Cの値を段階的に調整する場合には、パラメータ調整部19は、取得された走行速度が時速3km未満であるときには、A,B,Cをそれぞれ2と1と1に調整し、取得された走行速度が時速3km以上時速5km未満であるときには、A,B,Cをそれぞれ1.5と0.8と2に調整し、取得された走行速度が時速5km以上時速7.5km未満である場合には、A,B,Cをそれぞれ1.1と0.6と4に調整し、取得された走行速度が時速7.5km以上である場合には、A,B,Cをそれぞれ0.8と0.5と8に調整する。
【0057】
図5は、上式(2)(3)における(A/(1+B×|L)+(1−A))の値を示すグラフである。図5において、縦軸は、(A/(1+B×|L)+(1−A))の値を示し、横軸は、旋回に関する入力値Lを示す。また、図5における複数の曲線は、それぞれ、表1における複数の走行速度範囲1〜4の場合を示す
【0058】
図5に示すように、走行速度が高くなるにつれて、(A/(1+B×|L)+(1−A))の値が1に近づき、旋回に関する操作の感度が低くなる。
【0059】
上式(1)〜(4)を指令値算出用関数として用いる場合において、パラメータの調整方法は、表1の方法に限定されない。すなわち、取得された走行速度が大きくなるに従って、パラメータ調整部19が、Aの値とBの値を連続的にまたは段階的に小さくし、Cの値を連続的にまたは段階的に大きくすれば、他の調整方法でもよい。
【0060】
回転速度指令部13、回転速度制御部15、走行速度取得部17、パラメータ調整部19、および、記憶部21は、好ましくは、走行装置10の車体1に設けられるが、走行装置10以外の場所に設けられてもよい。また、走行装置10を無線により遠隔操作する場合には、操作部11は、走行装置10から離れた場所に設けられる。この場合、走行装置10の周囲(例えば前方または後方)の状況を表わす監視データ(例えば、画像データ、または障害物の位置を3次元的に示すデータ)を取得する監視装置(例えば、カメラまたはレーザ距離計)が走行装置10に設けられ、この監視装置から表示装置へ無線で監視データが送信され、人が、表示装置に表示された監視データを見ながら操作部11を操作してよい。走行装置10に人が乗る場合には、走行装置10に操作部11が設けられてよい。また、操作部11は、人が持ち運びできるように構成されていてもよい。旋回速度制御装置20の各部の間での信号の伝達は、有線により行われてもよいし、無線により行われてもよい。
【0061】
本発明の第1実施形態によると、操作部11の操作に応じて生成される旋回に関する入力値が任意の一定値である状態で、走行装置10の走行速度が高くなるにつれて、第1および第2の回転速度指令値の差が減って、走行装置10の旋回速度が低くなる(すなわち、旋回半径が大きくなる)。したがって、走行装置10の走行速度が高くなった時に、走行装置10がスピンしてしまうことを防止できる。
【0062】
また、本発明の第1実施形態によると、旋回に関する入力値が任意の一定値である状態で、走行装置10の走行速度が高くなるにつれて、第1および第2の回転速度指令値の差が減るので(操作部11の感度が鈍くなるので)、次のように、走行装置10が旋回し過ぎることを防止できる。走行装置10の高速走行時における操作部11の感度が、走行装置10の低速走行時における操作部11の感度と同じであると、高速走行時に、操作部11の操作により走行装置10が旋回し過ぎてしまう可能性がある。この場合、これを修正するために、逆方向の旋回をするための操作をし、これにより、さらに、逆方向に旋回し過ぎて修正を繰り返す状態に陥る可能性がある。これに対し、本発明の第1実施形態によると、走行装置10の走行速度が高くなるにつれて操作部11の感度が鈍くなるので、操作部11の操作者の意図に反して、走行装置10が旋回し過ぎることを防止でき、その結果、修正を繰り返すことを防止できる。
【0063】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による旋回速度制御装置20を説明する。第2実施形態において、以下で説明しない点は、第1実施形態と同じである。図6は、本発明の第2実施形態による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0064】
第2実施形態によると、旋回速度制御装置20は、旋回速度検出部23をさらに備える。旋回速度検出部23は、走行装置10の旋回速度を検出する。なお、本願において、旋回速度は、走行装置10の実際の旋回速度、すなわち、単位時間で、車体1の向きが実際に変わる角度を示す。旋回速度検出部23は、好ましくは、角速度センサ(ジャイロセンサ)である。
【0065】
第2実施形態によると、走行装置10の各走行速度に対して、設定旋回速度が定められている。これらの設定旋回速度は、それぞれ、走行装置10の走行速度と対応付けられた状態で、旋回速度制御装置20の記憶部21に設定データとして記憶される。好ましくは、走行装置10の走行速度が高くなるにつれて、この走行速度に対応付けられる設定旋回速度は、連続的にまたは段階的に低くなっている。なお、設定旋回速度は、例えば、走行装置10に荷物が積載されていない状態で、走行装置10が、濡れていない堅硬な路面上を旋回する場合を想定して定められてよい。
【0066】
第2実施形態では、パラメータ調整部19の構成は、第1実施形態の場合と異なる。すなわち、第2実施形態では、パラメータ調整部19は、第1実施形態でのパラメータの調整を行わない。第2実施形態によると、パラメータ調整部19は、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度とを比較し、この比較の結果に応じて、次の処理P,Pを行う。
【0067】
なお、走行装置10が地上面を走行している時に、走行装置10の旋回速度の検出と、走行装置10の走行速度の取得と、これらの検出に基づく上述の比較は、予め定めた時間の間隔をおいて行われてもよいし、時々刻々と行われてもよい。また、パラメータ調整部19は、記憶部21に記憶されている設定データを参照して上述の比較を行う。
【0068】
(処理P
旋回速度検出部23により検出された旋回速度が、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度よりも高い場合には、パラメータ調整部19は、旋回速度が下がるようにパラメータの値を調整する。すなわち、操作部11により任意の入力値が生成されるとして、この調整後のパラメータと、この入力値とを指令値算出用関数に適用することにより得られる第1および第2の回転速度指令値の差が、この調整前のパラメータと、同じ入力値とを指令値算出用関数に適用することにより得られる第1および第2の回転速度指令値の差よりも小さくなるように、パラメータ調整部19は、パラメータの値を調整する。
【0069】
(処理P
旋回速度検出部23により検出された旋回速度が、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度よりも低い場合には、パラメータ調整部19は、旋回速度が上がるようにパラメータの値を調整する。すなわち、操作部11により任意の入力値が生成されるとして、この調整後のパラメータと、この入力値とを指令値算出用関数に適用することにより得られる第1および第2の回転速度指令値の差が、この調整前のパラメータと、同じ入力値とを指令値算出用関数に適用することにより得られる第1および第2の回転速度指令値の差よりも大きくなるように、パラメータ調整部19は、パラメータの値を調整する。
【0070】
上述の処理P,Pの一方または両方によりパラメータが調整される度に、この調整後のパラメータが最新のパラメータとして記憶部21に記憶される。その後、回転速度指令部13は、最新のパラメータと入力値とを指令値算出用関数に適用することにより、第1および第2の回転速度指令値を生成する。パラメータ調整部19は、パラメータを調整した後においても、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度とを比較して、上述の処理P,Pを行う。なお、パラメータ調整部19は、処理P,Pの一方を行うようにしてもよい。
【0071】
処理P,Pでは、好ましくは、検出された旋回速度と、取得された走行速度に対する設定旋回速度との差が大きい程、この調整後のパラメータで得られる第1および第2の回転速度指令値の差と、この調整前のパラメータで得られる第1および第2の回転速度指令値の差との差が連続的にまたは段階的に大きくなるように、パラメータ調整部19は、パラメータの値の調整量を変えてパラメータを調整するように構成される。
【0072】
処理P,Pで用いる指令値算出用関数は、上式(1)〜(4)の関数であってもよいし、他の関数であってもよい。
【0073】
なお、処理Pで用いる上述の設定データは、処理Pで用いる上述の設定データと異なっているのがよい。すなわち、各走行速度について、処理Pで用いる上述の設定データにおいて、この走行速度に対応付けられる設定旋回速度は、処理Pで用いる上述の設定データにおいて、この走行速度に対応付けられる設定旋回速度よりも高いのがよい。ただし、各走行速度について、処理Pで用いる上述の設定データにおいて、この走行速度に対応付けられる設定旋回速度は、処理Pで用いる上述の設定データにおいて、この走行速度に対応付けられる設定旋回速度と同じであってもよい。
【0074】
本発明の第2実施形態によると、走行装置10の各走行速度に対して、設定旋回速度が定められており、旋回速度が、走行速度に対する設定旋回速度よりも高い場合に、パラメータ調整部19は、旋回速度が下がるように指令値算出用関数のパラメータを調整する。また、検出された旋回速度が、走行装置10の走行速度に対する設定旋回速度よりも低い場合に、旋回速度が上がるようにパラメータを調整する。したがって、走行装置10が走行する地上面の状態や走行装置10の積載物(例えば、荷物)の重量により、走行装置10の旋回速度が変わった場合に、旋回特性が適切に調整される。
【0075】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による旋回速度制御装置20を説明する。第3実施形態において、以下で説明しない点は、第2実施形態と同じである。
【0076】
第3実施形態においても、走行装置10の各走行速度に対して定められた設定旋回速度は、それぞれ、走行装置10の走行速度と対応付けられた状態で、旋回速度制御装置20の記憶部21に設定データとして記憶される。
【0077】
第3実施形態において、走行装置10には特定の荷物積載場所が設けられ、この荷物積載場所に荷物を積載できる。
【0078】
第3実施形態では、上述の荷物積載場所に積載された荷物の重量、または、該荷物を含めた走行装置10全体の重心位置(該重心の高さと該重心の左右方向位置)に応じて、パラメータ調整部19は、各走行速度に対する設定旋回速度を調整する。
【0079】
このような第3実施形態の構成例1〜4を以下において説明する。
【0080】
(構成例1)
図7は、本発明の第3実施形態の構成例1による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0081】
構成例1では、パラメータ調整部19は、人による入力を受ける入力部19aと、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部19bとを備える。人が、入力部19aを操作することにより、上述の荷物積載場所に積載した荷物の重さを調整実行部19bに入力する。
【0082】
調整実行部19bは、入力部19aにより入力された荷物の重さが大きいほど、走行装置10の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整する。この低下の量は、入力された荷物の重さが大きいほど大きい。
【0083】
このように設定データを調整した後は、第2実施形態と同様に、走行装置10が走行している時に、パラメータ調整部19は、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度(すなわち、調整された設定旋回速度)とを比較し、この比較の結果に応じて、上述の処理P,Pを行う。
【0084】
(構成例2)
図8は、本発明の第3実施形態の構成例2による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0085】
構成例2によると、旋回速度制御装置20は、第1および第2の走行用回転体3,5の一方または両方を回転駆動する駆動装置であるモータの負荷トルクを検出するトルク検出部25を備える。ここで、負荷トルクは、第1および第2の走行用回転体3,5をそれぞれ回転駆動する複数の(例えば2つの)モータの負荷トルクの平均値、もしくは、第1および第2の走行用回転体3,5の一方を回転駆動するモータの負荷トルクであってよい(以下、同様)。
【0086】
また、構成例2によると、旋回速度制御装置20は、走行装置10の加速度を検出する加速度センサ26を備える。ここで、走行装置10の加速度は、走行装置10の加速度(すなわち、走行装置10の走行速度の、時間に対する変化率)であってもよいし、第1および第2の走行用回転体3,5の一方の回転加速度であってもよいし、第1および第2の走行用回転体3,5の両方の回転加速度を示す角加速度の平均値であってもよいし、他の値であってもよい。
【0087】
構成例2によると、走行装置10の走行速度と、上述の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、トルク検出部25により検出された負荷トルクと、加速度センサ26により検出された走行装置10の加速度との関係を重量算出用データとして予め求めておく。すなわち、上述の荷物積載場所に積載した荷物の重さ毎に、走行装置10を様々な加速度で加速させ、走行装置10の各加速度を加速度センサ26により検出し、加速度センサ26が各加速度を検出した各時点で、走行装置10の走行速度を走行速度取得部17が取得するとともに、モータの負荷トルクをトルク検出部25により検出する。これにより、上述の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、走行装置10の加速度と、走行装置10の走行速度と、上述の負荷トルクとの組を多数求めて、これらの組を、上述の重量算出用データとして予め求める。重量算出用データの各組において、荷物の重さと、走行装置10の加速度と、走行装置10の走行速度と、負荷トルクとは、互いに対応づけられている。なお、求めた多数の組以外の荷物の重さと、走行装置10の加速度と、走行装置10の走行速度と、負荷トルクとの組は、求めた多数の組に基づいて近似的に算出され、重量算出用データに組み込まれてよい。重量算出用データは、記憶部21に記憶されている。
【0088】
このような構成で、加速度センサ26が走行装置10の加速度を検出し、走行速度取得部17が走行装置10の走行速度を取得し、トルク検出部25が負荷トルクを検出する。その後、パラメータ調整部19は、検出した走行装置10の加速度と取得した走行装置10の走行速度と検出した負荷トルクと重量算出用データとに基づいて、荷物の重さを求める。すなわち、パラメータ調整部19は、重量算出用データにおいて、検出した走行装置10の加速度と取得した走行装置10の走行速度と検出した負荷トルクに対応する荷物の重さを抽出する。
【0089】
次いで、パラメータ調整部19は、求めた荷物の重さが大きくなるにつれて、走行装置10の各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、この設定旋回速度を調整する。
【0090】
このように設定データを調整した後は、第2実施形態と同様に、走行装置10が走行している時に、パラメータ調整部19は、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度(すなわち、調整された設定旋回速度)とを比較し、この比較の結果に応じて、上述の処理P,Pを行う。
【0091】
(構成例3)
図9は、本発明の第3実施形態の構成例3による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0092】
構成例3では、パラメータ調整部19は、人による入力を受ける入力部19aと、この入力に従って、設定旋回速度を調整する調整実行部19bとを備える。
【0093】
構成例3では、次の処理(A)〜(C)が行われる。
【0094】
(A)人が、入力部19aを操作することにより、上述の荷物積載場所に積載した荷物の重さと、この荷物の重心(荷物における重心)とを調整実行部19bに入力する。
【0095】
(B)調整実行部19bは、入力された荷物の重さと荷物の重心、および、車体1の重量分布データに基づいて、上述の荷物積載場所の荷物および車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さと該重心の左右方向位置を求める。ここで、左右方向とは、車体1が前進する方向(すなわち、車体1の前後方向)に直交する水平方向である(以下、同様)。また、車体1の重量分布データは、車体1における各3次元位置に存在する車体1の構成要素の重さを示し、予め求められて記憶部21に記憶されている。
【0096】
(C)調整実行部19bは、上述の(B)で求めた重心の高さと該重心の左右方向位置に基づいて、次のように、上述の設定データを調整する。上述の(B)で求めた重心の高さが高いほど、調整実行部19bは、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、設定旋回速度を調整する。すなわち、この低下の量は、重心の高さが高いほど大きい。同様に、上述の(B)で求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置10における左右の走行用回転体3、5の左右方向中心から離れるほど、調整実行部19bは、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、設定旋回速度を調整する。すなわち、この低下の量は、上述の(B)で求めた重心の左右方向位置が走行用回転体3、5の左右方向中心から離れるほど大きい。
【0097】
このように設定データを調整した後は、第2実施形態と同様に、走行装置10が走行している時に、パラメータ調整部19(調整実行部19b)は、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度(すなわち、上述の(A)〜(C)により調整された設定旋回速度)とを比較し、この比較の結果に応じて、上述の処理P,Pを行う。
【0098】
なお、上述の(B)では、上述の荷物積載場所の荷物および車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との一方を求めてもよい。この場合、求めた一方に関して、上述の(C)において、上述と同様に、調整実行部19bは、設定旋回速度を調整する。
【0099】
(構成例4)
図10は、本発明の第3実施形態の構成例4による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0100】
構成例4では、旋回速度制御装置20は、走行装置10が旋回している時において車体1の前後軸回りに車体1が傾いた角度(以下、単に傾き角度という)を検出する傾きセンサ28を備える。傾き角度は、水平面に対する車体1の傾き角度であり、車体1が水平姿勢から傾いた角度である。なお、車体1の前後軸は、車体1の前後方向を向き、車体1を貫通する仮想軸である。
【0101】
このような車体1の傾きは、次の構成により生じる。車体1は、車体1の前方側部分と後方側部分の各々において、車体1の左側と右側にそれぞれ設けられたダンパーおよびバネを介して走行用回転体3,5に支持されている。走行装置10の加速度と、上述の荷物積載場所の荷物の重さに応じて、これらのダンパーおよびバネが伸縮することにより、水平面に対する車体1の傾き角度が変化するようになっている。
【0102】
構成例4では、次の処理(a)〜(c)が行われる。
【0103】
(a)走行装置10が、予め定めた一定の走行速度で走行しながら、予め定めた一定の旋回速度で旋回している時に、傾きセンサ28が、上述したように水平面に対する車体1の傾き角度を検出する。この傾き角度の大きさは、例えば、車体1に載せた荷物により変化する。
【0104】
(b)パラメータ調整部19は、上述の(a)で検出された傾き角度と、車体1の傾き特性モデルとに基づいて、上述の荷物積載場所の荷物および車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さと該重心の左右方向位置を求める。傾き特性モデルは、上述の傾き角度と、上述の荷物積載場所の荷物および車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さと、該重心の左右方向位置との関係を示す。ただし、この関係は、予め定めた上述の一定の走行速度で走行しながら、予め定めた上述の一定の旋回速度で旋回している時のものである。傾き特性モデルは、既知である車体1の構造や上述のダンパーおよびバネの特性などに基づいて予め作成される。傾き特性モデルは、記憶部21に記憶されている。
【0105】
(c)パラメータ調整部19は、上述の(b)で求めた重心の高さと該重心の左右方向位置に基づいて、次のように、上述の設定データを調整する。上述の(b)で求めた重心の高さが高いほど、パラメータ調整部19は、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、設定旋回速度を調整する。すなわち、この低下の量は、重心の高さが高いほど大きい。同様に、上述の(b)で求めた重心の左右方向位置が、左右方向に関して走行装置10における左右の走行用回転体3、5の左右方向中心から離れるほど、パラメータ調整部19は、各走行速度に対応する設定旋回速度を連続的にまたは段階的に低下させるように、設定旋回速度を調整する。すなわち、この低下の量は、上述の(b)で求めた重心の左右方向位置が走行用回転体3、5の左右方向中心から離れるほど大きい。
【0106】
このように設定データを調整した後は、第2実施形態と同様に、走行装置10が走行している時に、パラメータ調整部19は、旋回速度検出部23により検出された旋回速度と、走行速度取得部17により取得された走行速度に対する設定旋回速度(すなわち、上述の(a)〜(c)により調整された設定旋回速度)とを比較し、この比較の結果に応じて、上述の処理P,Pを行う。
【0107】
なお、傾き特性モデルは、上述の傾き角度と、上述の荷物積載場所の荷物および前記車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さおよび該重心の左右方向位置の一方との関係を示してもよい。この場合、上述の(b)では、パラメータ調整部19は、上述の(a)で検出された傾き角度と、車体1の傾き特性モデルとに基づいて、上述の荷物積載場所の荷物および車体1を含めた走行装置10全体の重心の高さと該重心の左右方向位置との一方を求める。次いで、求めた一方に関して、上述の(c)において、上述と同様に、パラメータ調整部19は、設定旋回速度を調整する。
【0108】
なお、第3実施形態(上述の構成例1〜4)において、泥濘地や積雪地では、走行装置10に荷物を積載しなくても、上述の負荷トルクが増える。そのため、泥濘地や積雪地などを走行する場合に、人に操作されることにより、負荷トルクに応じた設定旋回速度の調整を行わないモードに変更可能なモード変更部が旋回速度制御装置20に設けられてもよい。
【0109】
第3実施形態によると、パラメータ調整部19は、荷物の重さ、または、走行装置10全体の重心の高さおよび該重心の左右方向位置の一方または両方に応じて、走行装置10の各走行速度に対する設定旋回速度を調整する。したがって、走行装置10の旋回時に、荷物により走行装置10が転倒することを防止できる。
【0110】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態による旋回速度制御装置20を説明する。第4実施形態において、以下で説明しない点は、第1実施形態と同じである。図11は、本発明の第4
実施形態による旋回速度制御装置20を示すブロック図である。
【0111】
第4実施形態では、パラメータ調整部19の構成が第1実施形態の場合と異なる。第4実施形態によると、パラメータ調整部19は、人による入力を受ける入力部19aと、この入力に従って、上述した指令値算出用関数におけるパラメータの値を変える変更部19cとを備える。入力部19aは、タッチパネルやボタンやレバーなどであってよい。好ましくは、入力部19aは、操作部11の近傍に設けられ、または、操作部11と一体化されている。例えば、入力部19aは、操作部11の本体11c(図4(A)を参照)に設けられてよい。これにより、人は、操作部11を操作しながら、入力部19aの操作をしたり、操作部11の操作と入力部19aの操作との間の切り換えを速やかに行うことができる。
【0112】
なお、第4実施形態で用いる指令値算出用関数は、上式(1)〜(4)の関数であってもよいし、他の関数であってもよい。
【0113】
本発明の第4実施形態によると、人は入力部19aを操作することにより、各パラメータを任意の値に調整できる。したがって、例えば、走行装置10が走行する地上面の状態や走行装置10の積載物の重量により、走行装置10の旋回速度が変わる場合に、旋回特性を適切に調整できる。
【0114】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0115】
1 車体、3 第1の走行用回転体、5 第2の走行用回転体、7 駆動輪、9 従動輪、10 走行装置、11 操作部、11a 旋回レバー、11b 前後進レバー、11c 本体、13 回転速度指令部、15 回転速度制御部、17 走行速度取得部、19 パラメータ調整部、19a 入力部、19b 調整実行部、19c 変更部、20 旋回速度制御装置、21 記憶部、23 旋回速度検出部、25 トルク検出部、26 加速度センサ、28 傾きセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11