特許第6429231号(P6429231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6429231-電源装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429231
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
   H02M3/28 H
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-224263(P2014-224263)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92950(P2016-92950A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】北川 厚
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−051777(JP,A)
【文献】 特開2008−042957(JP,A)
【文献】 特開2009−232509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧トランスを挟んで1次側に、1次側コイルに断続した電流を流す発振用ICを設け、この発振用ICのフィードバック端子にフォトカプラの受光側を接続すると共に、変圧トランスの2次側コイルの端子間が短絡した場合に、上記フォトカプラと対をなす発光部を発光させ、フィードバック端子に発振禁止信号を入力させることによって、2次側への電力の発生を停止させる保護回路を備えた電源装置において、上記変圧トランスの2次側コイルは1種類の電圧しか出力しない構造であって、上記フォトカプラの発光部はコンパレータによって発光させるように構成すると共に、このコンパレータの作動電源を上記変圧トランスの2次側コイルに発生する電力で充電される充電部から供給させるように構成し、上記変圧トランスの2次側コイルの端子間が短絡した際に、コンパレータに供給される電力の電圧降下速度を、上記変圧トランスの2次側コイルの端子間の電圧降下速度より遅くなるように構成したことを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流である商用電源からの電力を所定の電圧の直流電力に変換して出力する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電源装置として、スイッチング電源装置と呼ばれるものがある。このような電源装置では、入力されてきた交流電源を1次側で整流して直流電力に変換し、その直流電力を変圧トランスの1次側コイルにパルス状に流すことによって2次側コイルに変圧された交流電力を発生させている。2次側コイルに発生した交流電力は直流電力に整流され出力される。
【0003】
上記1次側コイルには直流電力をパルス状に流すためのスイッチング素子と、そのスイッチング素子を所定の周波数でオンオフさせるための発振用ICが設けられている。スイッチング素子は発振用ICから出力される所定の周波数のパルス信号によってオンオフをするものである。
【0004】
発振用ICにはフィードバック端子が設けられており、このフィードバック端子にはフォトカプラの受光部側が接続され、この受光部側が受光するとフィードバック端子に発振停止信号が入力されることになり、スイッチング素子のオンオフが停止して2次側コイルからの電力の出力が停止する。
【0005】
上記フォトカプラの受光部と対をなす発光部は2次側に設けられており、2次側の出力電圧を監視している検出回路に接続されている。例えば2次側の出力端子間が短絡すると両端子間に大電流が流れ、その影響で1次側に損傷が出るため、上記検出回路はこのような短絡故障が発生すると、それを検知してフォトカプラの発光部を発光させ、対である受光部に受光させて上述のようにスイッチング素子のオンオフを停止させるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−235561号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の電源装置では、2次側コイルはワンタップと呼ばれる1種類の電圧しか出力しないものであり、そのため、検知回路の駆動電源も2次側コイルの出力電源から供給を受けている。
【0008】
このような構成で2次側の出力端子間が短絡すると、2次側の出力電圧が急激に低下して、フォトカプラの発光部の発光が停止する。すると、1次側でのスイッチング素子のオンオフが再開して2次側に電力が発生するが、短絡が解消していなければ再度フォトカプラの発光部が発光してスイッチング素子のオンオフを停止させるが、上述のようにすぐに発光部の発光が停止してスイッチング素子のオンオフが再開するということを短い周期で繰り返すことになる。そのため、1次側の作動時間の積算量が多くなり、1次側にオーバーヒートによる損傷が発生しやすくなる。
【0009】
このような不具合を解消するためには、2次側コイルの巻数を増やして別のタップを設けて異なる複数種類の電圧の電力を発生させて、出力用とは別の電圧の電力で検知回路を駆動させれば、検知回路がダウンするまでの時間を延ばすことができ、そのため上記の繰り返しの周期を長くして、1次側の作動時間の積算量を短くすることが考えられる。しかしながら、このように構成するためには、変圧トランスの2次側コイルを2タップ以上にしなければならず、変圧トランスが大型化し、かつコストが高くなる。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、変圧トランスの2次側コイルがワンタップであっても1次側の作動時間の積算量を短くすることによって、2次側の出力端子間が短絡しても1次側が損傷しにくい電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明による電源装置は、変圧トランスを挟んで1次側に、1次側コイルに断続した電流を流す発振用ICを設け、この発振用ICのフィードバック端子にフォトカプラの受光側を接続すると共に、変圧トランスの2次側コイルの端子間が短絡した場合に、上記フォトカプラと対をなす発光部を発光させ、フィードバック端子に発振禁止信号を入力させることによって、2次側への電力の発生を停止させる保護回路を備えた電源装置において、上記変圧トランスの2次側コイルは1種類の電圧しか出力しない構造であって、上記フォトカプラの発光部はコンパレータによって発光させるように構成すると共に、このコンパレータの作動電源を上記変圧トランスの2次側コイルに発生する電力で充電される充電部から供給させるように構成し、上記変圧トランスの2次側コイルの端子間が短絡した際に、コンパレータに供給される電力の電圧降下速度を、上記変圧トランスの2次側コイルの端子間の電圧降下速度より遅くなるように構成したことを特徴とする。
【0012】
コンパレータの作動電源を2次側コイルの端子間に発生する電力では無く充電部から供給されるようにしたので、2次側コイルの端子間の電圧が短絡により急速に低下してもコンパレータに電力が供給されている時間を延長できるので、1次側の発振を停止させた後再開し、再度停止させるまでの周期を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、上述のように、2次側の短絡時における1次側の発振の停止および再開のサイクルの周期を延ばすことができるので、短絡が解消されるまでの1次側の作動時間の累積量を短くすることができ、1次側の損傷のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の構成を示す回路図
図2】2次側が短絡した際の1次側の動作サイクルを比較するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明による電源装置の回路構成を示す図である。中央に位置する変圧トランス13を挟んで、左側が1次側11で有り、右側が2次側12である。
【0016】
1次側11では外部の商用電源から供給される交流電力を全波整流して直流電力に変換し、変圧トランス13の1次側コイルに供給する。また、1次側11には発振用IC2が設けられており、この発振用IC2によってスイッチング素子がオンオフして1次側コイルに通電される電流が所定の周波数で断続することによって、変圧トランス13の2次側コイルに交流電力が誘導される。
【0017】
上記発振用IC2にはフィードバック端子21が設けられており、このフィードバック端子21にはフォトカプラの受光部3aが接続されている。そして、このフォトカプラの受光部3aが受光するとフィードバック端子21に発振停止信号が入力され、スイッチング素子のオンオフが停止する。すると、変圧トランス13の1次側コイルにはパルス状の電流が供給されなくなるので、2次側コイルへの電力の誘導が停止する。なお、受光部3aの受光が停止すると再びスイッチング素子のオンオフが再開するので、変圧トランス13の1次側コイルにパルス状の通電が再開され、その結果、2次側コイルへの電力の誘導が再開される。
【0018】
2次側コイルに誘導された交流電力は整流された後、コンデンサ6で平滑され、出力端子に供給される。本実施の形態では、その出力される直流電力の電圧を16ボルトに設定し、V16電源61とした。
【0019】
この出力端子に接続される負荷などや配線途中に一時的な短絡故障が生じると、抵抗51に大電流が流れて、この抵抗51の両端の電位差が大きく変化する。すると、2個の分圧点52,53の電圧の上下関係が反転してコンパレータ4の出力が反転し、トランジスタ54をオンにする。すると、V16電源61によってフォトカプラの発光部3bが発光する。上述のように、この発光部3bが発光すると、その光は受光部3aに受光されるので、発振用IC2はスイッチング素子のオンオフを停止させる。その結果、電源装置1は動作を停止して、2次側12から電力が出力されなくなる。
【0020】
ところが、短絡故障が生じるとコンデンサ6が蓄電していた電荷は直ちに開放されるので、V16電源61の電圧は急速に低下し、V16電源61によって発光していた発光部3bは消灯する。さらに、上記コンパレータ4の電源をV16電源61から供給させていると、出力の反転状態がリセットされるので、トランジスタ54はオフになっており、発光部3bは発光しない状態になっているので、1次側11の動作が直ちに再開する。
【0021】
ところが、短絡故障が解消していなければ、上述のように1次側の動作停止と動作再開とが短い周期で繰り返され、図2(a)に示す状態になる。
【0022】
そこで、本実施の形態では、コンパレータ4の作動電源を上記V16電源61では無く、V16A電源71から供給するようにした。図1に戻り、2次側12の下部にコンパレータ4aを示したが、これはコンパレータ4の電源供給回路の理解を容易にするために記載したもので、その上部に記載したコンパレータ4と同じものである。
【0023】
このコンパレータ4aの右側に示すコンデンサ7を充電部として設け、正常に作動している状態でV16電源61によってコンデンサ7を充電するように構成した。ただし、V16電源61とコンデンサ7との間にダイオード8を順方向に介在させたので、2次側12の出力端子間が短絡してV16電源61の電圧が低下しても、V16A電源71の電圧はそれより高電圧に保たれる。そして、その高電圧が保持されているV16A電源71によってコンパレータ4の出力の反転状態を保持すると共に、トランジスタ54のオン状態もV16A電源71で保持するようにした。このため、発光部3bが消灯して1次側11が動作を開始してもすぐに発光部3bが発光するので、1次側11は動作を再開することができない。
【0024】
この状態はコンデンサ7の電荷が開放されるまで継続する。コンデンサ7の電荷が開放されると、1次側11は操作を再開するが、同時にコンデンサ7に再度充電されるので、短絡故障が解消されるまでの1次側11の動作の繰り返しは図2(b)に示すように、従来のものより長い周期で繰り返すことになる。これにより、短絡故障が解消されるまでの1次側11の動作時間の累積量が短くなり、1次側11での発熱などが低減される。
【0025】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0026】
1 電源装置
11 1次側
12 2次側
13 変圧トランス
2 発振用IC
3a 受光部
3b 発光部
4(4a) コンパレータ
7 コンデンサ(充電部)
8 ダイオード
図1
図2