特許第6429233号(P6429233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429233
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】搬送容器の壁構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20181119BHJP
   B65D 25/54 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B65D1/00 120
   B65D25/54
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-3745(P2015-3745)
(22)【出願日】2015年1月12日
(65)【公開番号】特開2016-130131(P2016-130131A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(72)【発明者】
【氏名】守友 孝征
(72)【発明者】
【氏名】吉田 明男
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−047113(JP,A)
【文献】 実開平03−066712(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 − 1/48
B65D 25/54
B65D 43/02
B29C 45/16
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送容器の上面、側面又は下面の何れかの壁が、第1樹脂と第2樹脂とで二色成形されて、先に成形された前記第1樹脂製の第1樹脂壁部の一部と後に成形された前記第2樹脂製の第2樹脂壁部の一部とが重なって固着している帯状固着面を有する搬送容器の壁構造において、
前記第2樹脂壁部のうち前記第1樹脂壁部と重なっていない部分の表裏の少なくとも一方の面に、前記帯状固着面側の縁部に沿って複数の微細突部又は微細凹部を成形してなる帯状縁取部が備えられた搬送容器の壁構造。
【請求項2】
前記第2樹脂壁部のうち前記帯状固着面側の縁部以外の部分が前記縁部より厚くなっている請求項1に記載の搬送容器の壁構造。
【請求項3】
前記第2樹脂壁部の表裏の一方の面には、前記帯状固着面側の縁部を除く全体を段付き状に突出させて丘陵部が成形され、
前記第2樹脂壁部の表裏のうち前記丘陵部が成形された一方の面に前記帯状縁取部が成形されている請求項2に記載の搬送容器の壁構造。
【請求項4】
前記第1樹脂壁部の縁部に沿って段付き状に陥没した陥没部が形成され、その陥没部の底面に、前記第2樹脂壁部のうち前記丘陵部が成形された一方の面が固着されると共に、前記丘陵部と前記第1樹脂壁部との間に前記第2樹脂壁部の縁部の一部が前記帯状領域として残され、その帯状領域に前記帯状縁取部が成形されている請求項3に記載の搬送容器の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送容器の上面、側面又は下面の何れかの壁が、第1樹脂と第2樹脂とで二色成形された搬送容器の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送容器の壁構造として、例えば、搬送容器の上面壁としての上面蓋に窓部を設け、その窓部を囲む蓋枠部を第1樹脂で構成する一方、窓部に張った透明板を第2樹脂製で構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−219108号公報(図1図2、段落[0025],[0026])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の上面蓋の構造では、二色成形金型のうち第1樹脂壁部(蓋枠部)の成形中に、第2樹脂成形用の成形面同士が当接していて、それら成形面が第1樹脂壁部の成形後に離間して出現するキャビティに第2樹脂が充填されて第2樹脂壁部が成形される。ところが、上記した従来の搬送容器の壁構造では、二色成形金型の成形面同士の当接による傷や打痕が、第2樹脂壁部に反映されて成形品質が低下することがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より成形品質が高い搬送容器の壁構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、搬送容器の上面、側面又は下面の何れかの壁が、第1樹脂と第2樹脂とで二色成形されて、先に成形された前記第1樹脂製の第1樹脂壁部の一部と後に成形された前記第2樹脂製の第2樹脂壁部の一部とが重なって固着している帯状固着面を有する搬送容器の壁構造において、前記第2樹脂壁部のうち前記第1樹脂壁部と重なっていない部分の表裏の少なくとも一方の面に、前記帯状固着面側の縁部に沿って複数の微細突部又は微細凹部を成形してなる帯状縁取部が備えられた搬送容器の壁構造である。
【0007】
請求項2の発明は、前記第2樹脂壁部のうち前記帯状固着面側の縁部以外の部分が前記縁部より厚くなっている請求項1に記載の搬送容器の壁構造である。
【0008】
請求項3の発明は、前記第2樹脂壁部の表裏の一方の面には、前記帯状固着面側の縁部を除く全体を段付き状に突出させて丘陵部が成形され、前記第2樹脂壁部の表裏のうち前記丘陵部が成形された一方の面に前記帯状縁取部が成形されている請求項2に記載の搬送容器の壁構造である。
【0009】
請求項4の発明は、前記第1樹脂壁部の縁部に沿って段付き状に陥没した陥没部が形成され、その陥没部の底面に、前記第2樹脂壁部のうち前記丘陵部が成形された一方の面が固着されると共に、前記丘陵部と前記第1樹脂壁部との間に前記第2樹脂壁部の縁部の一部が前記帯状領域として残され、その帯状領域に前記帯状縁取部が成形されている請求項3に記載の搬送容器の壁構造である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の搬送容器の壁構造は、第1樹脂壁部の一部と後に成形された第2樹脂製の第2樹脂壁部の一部とが重なって固着している帯状固着面を有する。そして、第2樹脂壁部のうち第1樹脂壁部と重なっていない部分の表裏の少なくとも一方の面に、帯状固着面側の縁部に沿って複数の微細突部又は微細凹部を成形してなる帯状縁取部、が備えられているので、その帯状縁取部に傷や打痕が成形されても目立たない。これにより、二色成形金型で第1樹脂壁部を成形する際に、第2樹脂壁部用の成形面のうち第1樹脂壁部用の成形面寄りの縁部のみを当接させた状態にして第1樹脂壁部を成形してから、第2樹脂壁部用の成形面の縁部同士を離間させて第2樹脂壁部を成形することで、従来のように成形面同士の当接による傷や打痕が第2樹脂壁部用の成形面の縁部に付いても、縁部に備えた帯状縁取部成形用の微細凹部等により目立たなくすることができる。つまり、二色成形金型の成形面の傷や打痕が、搬送容器の壁に反映されても帯状縁取部によって目立たなくすることができ、搬送容器の壁構造の成形品質を従来より高くすることが可能になる。
【0011】
ここで、第1樹脂壁部を成形する際に、第2樹脂壁部用の成形面のうち第1樹脂壁部用の成形面寄りの縁部のみを当接させるためには、第2樹脂壁部の壁厚が均一である場合は、二色成形金型のうち第2樹脂壁部用の成形面における縁部とそれ以外の部分とを別個に動く構造にする必要がある。これに対し、請求項2の搬送容器の壁構造のように、第2樹脂壁部のうち帯状固着面側の縁部以外の部分が縁部より厚くなっていれば、第2樹脂壁部用の成形面を2つに分けて別個に動く構造にしなくても済み、第2樹脂壁部用の成形面の縁部のみを当接させることができ、二色成形金型の製作費を抑えることができる。
【0012】
請求項3の搬送容器の壁構造にすれば、帯状縁取部用の成形面が、二色成形金型のうち丘陵部成形用の凹部に隣接する突部の上面に配置されるので、その帯状縁取部用の成形面を容易に形成することができ、金型製作費が抑えられる。
【0013】
請求項4の搬送容器の壁構造にすれば、帯状縁取部用の成形面が二色成形金型のうち丘陵部成形用の凹部と第1樹脂壁部成形用の凹部とに挟まれた突部の上面に配置されるので、その帯状縁取部用の成形面の形成がより一層容易になり、金型製作費が抑えられる。
【0014】
なお、請求項3,4の発明においては、帯状縁取部は、第2樹脂壁部の表裏の両面に成形されていてもよいし、丘陵部が成形された一方の面のみに成形されていてもよい。そして、帯状縁取部が第2樹脂壁部の表裏のうち丘陵部が成形された一方の面のみに成形された壁構造とすれば、帯状縁取部が第2樹脂壁部の表裏の両面に成形された壁構造に比べて、二色成形金型における帯状縁取部用の成形面の形成が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る搬送容器の斜視図
図2】搬送容器の蓋体を下面側から見た斜視図
図3】蓋体の一部を拡大した斜視図
図4】蓋体の一部を拡大した断面図
図5】二色成形金型の断面図
図6】スライドコアが初期位置に配置された二色成形金型の断面図
図7】スライドコアがコアバック位置に配置された二色成形金型の断面図
図8】二色成形金型内の蓋体の断面図
図9】第2実施形態に係る搬送容器の斜視図
図10】スライドコアがコアバック位置に配置された二色成形金型の断面図
図11】第3実施形態に係る蓋体の一部を拡大した断面図
図12】スライドコアが初期位置に配置された二色成形金型の断面図
図13】スライドコアがコアバック位置に配置された二色成形金型の断面図
図14】第4実施形態に係る蓋体の一部を拡大した断面図
図15】スライドコアがコアバック位置に配置された二色成形金型の断面図
図16】本発明の変形例に係る搬送容器の斜視図
図17】その搬送容器の一部を拡大した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1図8に基づいて説明する。図1に示した搬送容器99の上面壁は蓋体90になっていて、この蓋体90に本発明に係る「搬送容器の壁構造」が適用されている。蓋体90は、例えば、平面形状が四角形でかつ四角形の窓部94を備えている。また、蓋体90のうち窓部94を取り囲む蓋枠部91が、本発明の「第1樹脂壁部」に相当し、例えば不透明な第1樹脂(例えば、ブロックPP)で構成される一方、窓部94に張られた窓板部81が、本発明の「第2樹脂壁部」に相当し、例えば透明な第2樹脂(例えば、ランダムPP)で構成されている。そして、これら第1樹脂及び第2樹脂の二色成形により蓋体90が製造される。
【0017】
詳細には、蓋枠部91の外縁部全体には、外縁補強部91Aが形成されている。外縁補強部91Aは、上方に膨出する一方、図2に示すように下面側が溝状に窪み、その溝内に溝内補強リブ91Lを備えている。図3に示すように、蓋枠部91のうち外縁補強部91Aより内側の天井板部91Cには、外縁補強部91A寄り位置に環状傾斜部91Eが形成され、天井板部91Cのうち環状傾斜部91Eより内側部分が下方に陥没している。また、天井板部91Cのうち環状傾斜部91Eより外側部分の下面には、嵌合筒壁91Bが突出形成され、その嵌合筒壁91Bが容器本体98(図1参照)の上面開口の内側に嵌合するようになっている。
【0018】
図4に示すように、天井板部91Cは、窓部94の一回り外寄りの位置で下方にクランク状に屈曲し、天井板部91Cの上面に本発明に係る陥没部92が備えられると共に、天井板部91Cの下面に下側段差部72が備えられている。また、天井板部91Cの下面のうち下側段差部72より内側部分からは補強環状リブ73が垂下している。なお、補強環状リブ73の外側面73Aは、下側段差部72の段差面72Dと面一に配置される一方、補強環状リブ73の内側面73Bは、陥没部92の段差面92Dと面一に配置されている。
【0019】
窓板部81は、蓋枠部91の陥没部92内側に嵌合し、その陥没部92の段差面92Dと底面92Cとに固着して本発明の「帯状固着面」が形成されている。そして、窓板部81の外縁部が、底面92Cを上部に有する窓板支持部93により下方から支持されている。
【0020】
窓板部81の上面は平坦で、天井板部91Cの上面と面一になっている。また、窓板部81のうち蓋枠部91の段差面92Dに固着した壁厚面81Sの下縁部からは、側方に係合突起95が突出していて段差面92Dの下端部に食い込んでいる。
【0021】
窓板部81の下面のうち蓋枠部91の窓板支持部93と隣り合わせになった環状の帯状領域は、全体に複数の微細突部が成形されて本発明に係る帯状縁取部83になっている。これにより、窓板部81は、帯状縁取部83が形成された部分のみが半透明となり、帯状縁取部83以外の部分は透明になっている。また、窓板部81の下面のうち帯状縁取部83より内側部分は、全体的に下方に突出して丘陵部82になっている。なお、丘陵部82と帯状縁取部83との間の段差面82Dは、帯状縁取部83に対して概ね45度の角度で傾斜している。
【0022】
図5には、蓋体90を製造するための二色成形金型10の一部が拡大して示されている。同図において符号11は、固定型であって、符号31は可動型である。可動型31は、固定型11に接合した型閉じ位置(図5に示した位置)と固定型11から離間した型開き位置(図示せず)との間を直動する。また、可動型31には、蓋体90の窓板部81に対応した断面四角形のコア受容孔31Aが形成され、そのコア受容孔31A内に、スライドコア32が受容されている。そして、スライドコア32は、可動型31が型開き位置から型閉じ位置に移動したときに、図6に示した初期位置に配置されて固定型11と接合した状態になる。その後、可動型31が型閉じ位置に維持された状態で、スライドコア32が図7に示したコアバック位置へと移動する(即ち、コアバックする)。
【0023】
詳細には、図6に示すように、スライドコア32の先端は、窓板部81の上面を成形するための成形面33であり、全体が平坦になっている。一方、固定型11のうちスライドコア32の成形面33との対向部分は、外縁全体が蓋枠部91の窓板支持部93を成形するための環状凹部35Aになっていて、環状凹部35Aの内側が窓板部81の下面を成形するための成形面34になっている。その固定型11の窓板部81用の成形面34は、環状凹部35Aと隣り合わせの外縁部を除く全体が、環状凹部35Aより浅く陥没した中央凹部34Aになっていて、中央凹部34Aと環状凹部35Aとの間に段付き状に高くなった環状土手部34Bが備えられている。そして、中央凹部34Aにより窓板部81の丘陵部82が成形され、環状土手部34Bの端面(即ち、スライドコア32との対向面)により窓板部81の帯状縁取部83(図3参照)が成形される。
【0024】
その帯状縁取部83の複数の微細突部を成形するために、環状土手部34Bの端面は、シボ加工されたシボ成形面34Cになっている。具体的には、シボ成形面34Cは、例えば図示しないシボ加工用のローラーを環状土手部34Bの端面に押し付けた状態で転動させて複数の微細凹部を刻印してなる。また、次述するように環状土手部34Bとスライドコア32とが当接した状態になったときに、それらの当接面間に蓋枠部91成形用の溶融樹脂が入り込まないようにするために、シボ成形面34Cの微細凹部の深さは極めて小さくなっているか、又は、微細凹部同士が互いに分離している。
【0025】
この二色成形金型10により、蓋体90は以下のように製造される。即ち、二色成形金型10を起動すると、図6に示すように、可動型31が型閉じ位置に配置されかつスライドコア32が初期位置に配置されて、可動型31と固定型11との間に環状の第1キャビティ38が形成される。このとき、第1キャビティ38に包囲された内側部分で窓板部81を成形するための固定型11及びスライドコア32の成形面33,34同士が当接して、第1キャビティ38の内縁部が閉塞される。そして、固定型11の第1樹脂射出口12A(図5参照)から第1キャビティ38に溶融状態の第1樹脂が充填されて暫くして固化し、蓋枠部91が形成される。
【0026】
次いで、図7に示すように、スライドコア32がコアバック位置へと移動し、スライドコア32と固定型11との間に第2キャビティ39が形成される。そして、固定型11の第2樹脂射出口12B(図5参照)から第2キャビティ39に溶融状態の第2樹脂が充填されて暫くして固化し、図8に示すように窓板部81が形成される。
【0027】
なお、本実施形態では、蓋枠部91のうち樹脂が最も多く集まっている陥没部92の内角部の固化が最も遅く、その陥没部92の内角部が完全に固化していない状態でスライドコア32がコアバックし、溶融状態の第2樹脂が第2キャビティ39に充填される。これにより、第2樹脂の一部が陥没部92の内角部に入り込んだ状態になって前記した係合突起95が形成される。
【0028】
ところで、第1キャビティ38にて蓋枠部91を成形する際には、前述の如く固定型11及びスライドコア32の窓板部81用の成形面33,34同士が当接していたが(図6参照)、それら成形面33,34は全体が当接するのでなく、外縁部に位置する環状土手部34Bとその対向部分のみとが当接する。従って、二色成形金型10を使用し続けても、窓板部81用の成形面33,34においては、外縁部以外の部分に成形面33,34同士の当接による傷や打痕は付かない。これにより、窓板部81の外縁部以外の部分を傷や打痕が無い又は少ない高品質な面に成形することができる。
【0029】
一方、窓板部81用の成形面33,34のうち外縁部に位置する環状土手部34Bとその対向部分には、成形面33,34同士の当接による傷や打痕が付き得る。しかしながら、環状土手部34Bの端面全体が複数の微細凹部を有するシボ成形面34Cになっているので、そこに傷や打痕が付いても目立たない。つまり、成形面33,34同士の当接による傷や打痕が窓板部81の下面に成形されても、シボ成形面34Cにて成形される帯状縁取部83の複数の微細突部に埋もれさせて目立たなくすることができる。また、窓板部81の上面のうち帯状縁取部83の裏側に傷や打痕が成形されても、窓板部81を透過して視認される帯状縁取部83の複数の微細突部に埋もれさせて目立たなくすることができる。
【0030】
このように本実施形態の搬送容器99の壁構造によれば、第1樹脂と第2樹脂とで二色成形される蓋体90のうち後に成形される第2樹脂壁部(窓板部81)において従来は目立っていた成形による傷等を帯状縁取部83によって目立たなくして、成形品質を従来より高くすることができる。また、この搬送容器99の壁構造によれば、二色成形金型10のうち帯状縁取部83を成形するためのシボ成形面34Cを有した環状土手部34Bの端面が、中央凹部34Aと環状凹部35Aとに挟まれて突出しているので、その環状土手部34Bの端面のみにシボ成形面34Cを容易に形成することができ、二色成形金型10の製作費を抑えることが可能になる。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態の蓋体90Vは、図9に示すように窓板部81の上面の外縁部に、下面の帯状縁取部83(図2参照)と同様の帯状縁取部83Vが成形されている点のみが前記第1実施形態と異なる。また、図10に示すように、この蓋体90Vを成形するための二色成形金型10Vには、スライドコア32のうち固定型11におけるシボ成形面34Cと当接する部分に、シボ成形面34Cと同様のシボ成形面34Eが形成されている。この本実施形態の構成によれば、窓板部81の上面の成形による傷等を帯状縁取部83Vによって目立たなくすることができる。
【0032】
[第3実施形態]
本実施形態の蓋体90Wの窓板部81Wは、図11に示すように前記第1実施形態の蓋体90の窓板部81から、丘陵部82(図4参照)を排除して上下の両面を平坦にした構造をなしている。また、窓板部81Wの下面の外縁部には、第1実施形態の窓板部81と同様に帯状縁取部83が成形されている。
【0033】
図12には、本実施形態の蓋体90Wを製造するための二色成形金型10Wが示されている。この二色成形金型10Wの固定型11Wには、前記第1実施形態の二色成形金型10の中央凹部34Aに相当する部位がなく、窓板部81W用の成形面34が平坦になっている。また、その固定型11Wのうち窓板部81W用の成形面34における外縁部には、前記第1実施形態の二色成形金型10と同様にシボ成形面34Cが形成されている。
【0034】
一方、可動型31Wには、窓板部81Wの外縁部に対応した部分に環状のコア受容孔31Bが形成され、そこに筒状のスライドコア40が直動可能に受容されている。そして、可動型31Wを型閉じ位置に移動したときに、スライドコア40の端面のうち外縁部が環状凹部35Aに対向し、外縁部以外は固定型11Wのシボ成形面34Cに当接する。このとき、可動型31Wのうちスライドコア40の内側部分の成形面33Aは、固定型11Wにおける窓板部81W用の成形面34から離間した状態に保持され、それら成形面33A,34の間に第2キャビティ39が形成される。即ち、可動型31Wを型閉じ位置に移動したときには、第1キャビティ38と第2キャビティ39とがスライドコア40によって仕切られた状態になる。この状態で第1キャビティ38に第1樹脂が充填されて蓋枠部91が成形され、その後、図13に示すように、スライドコア40がコアバック位置に移動し、可動型31Wのうちスライドコア40の内側部分の成形面33Aと、スライドコア40の成形面33Bとが面一になる。そして、第2キャビティ39に第2樹脂が充填されて窓板部81Wが成形される。
【0035】
本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。但し、第1実施形態の蓋体90の構造とした方が金型構造が簡素になり、金型製作費を抑えることができる。
【0036】
[第4実施形態]
本実施形態の蓋体90Xは、図14に示すように前記第1実施形態の蓋体90から補強環状リブ73及び窓板支持部93を排除した構造をなし、窓板部81の下面のうち丘陵部82の周囲全体が帯状縁取部83になっている。また、この蓋体90Xを製造するための二色成形金型10Xは、図15に示すように、前記第1実施形態の二色成形金型10の固定型11Xから補強環状リブ73及び窓板支持部93(図6参照)を成形する部位を排除し、固定型11Xにおける窓板部81用の成形面34の外縁部にシボ成形面34Cを備えた構造になっている。本実施形態によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0037】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0038】
(1)前記第1〜第4の実施形態では、搬送容器99の上面壁である蓋体90に本発明を適用した例を示したが、搬送容器99の側面壁や下面壁に本発明を適用してもよい。具体的には、例えば図16及び図17に示した折畳可能な搬送容器97のように、上面と4つの側面とのそれぞれが不透明な第1樹脂製の第1樹脂壁部96Aと透明な第2樹脂製の第2樹脂壁部96Bとで構成されたものにおいて、本発明を適用して各第2樹脂壁部96Bの表裏の少なくとも一方の面を複数の微細突部又は微細凹部を有する帯状縁取部96Cにて縁取りしてもよい。
【0039】
(2)前記第1〜第4の実施形態では、第1樹脂壁部(蓋枠部91)が不透明である一方、第2樹脂壁部(窓板部81,81W)が透明であったが、第1樹脂壁部及び第2樹脂壁部は、無色透明と有色透明とのどちらでもよく、また、半透明でもよく、さらには不透明であってもよく、それらをどのように組み合わせてもよい。
【0040】
(3)前記第1〜第4の実施形態では、第1樹脂壁部(蓋枠部91)が枠構造で、その内側に第2樹脂壁部(窓板部81,81W)が配置されていたが、例えば、搬送容器の上面、下面又は側面の壁が縦方向又は横方向で第1樹脂壁部と第2樹脂壁部とに2分割されたものに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
81,81W 窓板部(第2樹脂壁部)
82 丘陵部
83,83V,96C 帯状縁取部
90,90V,90W,90X 蓋体
91 蓋枠部(第1樹脂壁部)
92C 段差底面
92D 段差面
92 陥没部
94 窓部
96A 第1樹脂壁部
96B 第2樹脂壁部
97,99 搬送容器
図1
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