(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記識別信号として、前記正弦波が予め定められた所定サイクル連続すると、2進数の1と0の一方とし、前記正弦波が前記予め定められた所定サイクル連続していない場合に、2進数の1と0の他方とする値が、チャネル毎に、一意に割り当てられている、ことを特徴とする請求項3記載の音声混信検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の基本概念を説明する。
図14を参照すると、本発明の一形態の音声混信検出装置30は、音声信号に対して、音声帯域外の周波数領域の予め定められた識別信号を生成する識別信号生成手段(識別信号生成部)33と、前記音声信号に前記識別信号制御手段で生成された識別信号を挿入して送信する識別信号挿入手段(識別信号挿入部)32と、受信した音声信号から、音声帯域外の周波数領域の識別信号を抽出する識別信号抽出手段(識別信号抽出部)35と、抽出された前記識別信号が予め定められた識別信号の期待値と一致するか否か判定する識別信号判定手段(識別信号判定部)36と、を備える。
【0017】
本発明の一形態において、識別信号生成手段33と識別信号挿入手段32は送信装置31に含まれる。識別信号抽出手段35と識別信号判定手段36は、受信装置34に含まれる。送信装置31は、例えば加入者端末側からの音声信号に識別信号を付加した信号を、送信音声信号としてIP(Internet Protocol)網側に向けて転送する。受信装置34は、例えばIP網からの受信音声信号を加入者端末側に転送する。送信装置31と受信装置34は一体に構成してもよいし、それぞれ別のユニットとして配置してもよい。
【0018】
本発明において、前記識別信号は、音声帯域外の予め定められた周波数の正弦波を含む。前記識別信号として、予め定められた所定期間に含まれる前記正弦波の数が、チャネル毎に一意に割りてられる構成としてもよい。
【0019】
あるいは、前記識別信号として、予め定められた所定サイクル、前記正弦波が連続すると、2進数の1と0の一方とし、予め定められた所定サイクル正弦波が連続しない場合に、2進数の1と0の他方とする値が、チャネル毎に、一意に割りてられる構成としてもよい。
【0020】
本発明において、前記識別信号生成手段(識別信号生成部)33は、チャネルに対応した識別信号をチャネル毎に記憶管理し、前記識別信号挿入手段32に該当するチャネルに対応する識別信号を供給する識別信号制御手段(
図4の420)を備え、発呼側から受信した呼制御信号から識別信号情報を取得し、前記識別信号判定手段36に対して、該当するチャネルに対応する識別信号の期待値を供給する管理手段(管理部)(
図4の430)と、前記識別信号判定手段36で不一致を検出したとき、警報を出力する警報手段(警報発報部)(
図4の440)を備えた構成としてもよい。
【0021】
本発明において、前記識別信号抽出手段35は、前記受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の正弦波を抽出する。また、前記識別信号判定手段36は、前記識別信号抽出手段35で抽出された前記正弦波から、前記正弦波に対応したレベルを有し前記正弦波の数に対応する長さの直流信号に変換する手段(
図7(A)の321、322)と、前記直流信号を予め定められた所定の閾値と比較して2値の信号に変換し、前記2値の信号のパルス長さを計測することで前記正弦波の数を取得する手段(
図7(A)の324)と、取得した正弦波の数が前記期待値と一致するかチェックする手段(
図7(A)の325)を備えた構成としてもよい。
【0022】
本発明の実施形態を説明するにあたり、はじめに、本発明の適用対象のシステムの例(参考例)について説明し、当該システムの問題点を説明し、つづいて、当該システムに本発明を適用した実施形態を説明する。
【0023】
図1は、VoIP網とPSTN網による音声通話システムの構成の一例を例示する図である。
図1を参照すると、VoIP網10は、ユーザ電話端末100、LC(Line Circuit:加入者回路)200、VoIPアクセスゲートウェイ500、IPネットワーク600を備えている。PSTN網20は、ユーザ電話端末1000、LC(Line Circuit:加入者回路)900、TDM(Time Division Multiplexing:時分割多重)交換機800を備えている。PSTN網20とVoIP網10の間に音声信号を相互接続するMG(Media Gateway)700が位置し、VoIPによる音声通話を実現している。
【0024】
VoIP網10の音声信号は、RTP(Real Time Protocol)パケット化され、IP網600を転送される。UDP(User Datagram Protocol)ペイロードにRTPヘッダ(12byte)+RTPペイロード(音声データ)が格納される。RTPペイロードに付加されるヘッダはIPヘッダ(20byte)、UDPヘッダ(8byte)、RTPヘッダ(12byte)となる。
【0025】
PSTN網20の音声信号は、時分割多重によるタイムスロットに音声信号が組み込まれ転送される。
図1は、VoIP網10側の加入者の音声信号が、VoIP網10側の加入者番号と同一の番号のPSTN網20側の加入者へ正常に転送されている例が模式的に示されている。
【0026】
VoIP網10においては、網内における音声信号の並び替え等の処理ポイントや処理頻度は、PSTN網20のみのネットワークと比較して多い、というのが実情である。このため、誤動作や故障による音声の混信の可能性が増大する。
【0027】
図2は、
図1において、VoIP網10からPSTN網20への音声信号がVoIP網10内において混信が発生した例を模式的に示す図である。VoIP網10のRTPパケット内の音声信号が加入者1と加入者3で入れ替わっている。すなわち、加入者1の音声信号Voice1が加入者3のRTPパケットのペイロードに格納されており、加入者3の音声信号Voice3が加入者1のRTPパケットのペイロードに格納された状態でPSTN網20に向けて転送される。PSTN網20では、加入者1に割り当てられたタイムスロット1に加入者3の音声信号Voice3が転送され、加入者3に割り当てられたタイムスロット3に加入者1の音声信号Voice1が転送される。
【0028】
図3は、
図1において、PSTN網20からVoIP網10への音声信号がVoIP網10内で混信が発生した例を模式的に示す図である。VoIP網10のRTPパケット内の音声信号が加入者1と加入者3で入れ替わっている。すなわち、加入者1の音声信号Voice1が加入者3のRTPパケットのペイロードに格納されており、加入者3の音声信号Voice3が加入者1のRTPパケットのペイロードに格納される。
【0029】
このような混信発生により、電話ユーザにおいて、通話不能や情報漏洩といった重大な障害が発生することになる。現状のところ、VoIP網10では混信を確認する手段は無く、混信が発生した場合にユーザ申告以外に混信の発生を検知することが出来ない。本発明によれば、
図2や
図3に示したような音声信号の入れ替わりによる混信を検出する混信検出装置が提供される。
【0030】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態の音声混信検出装置は、
図1のVoIP網10においては、LC200とVoIPアクセスゲートウェイ500の間に配置される。また、
図1のPSTN網20においては、LC900とTDM交換機800の間に配置される。
【0031】
図4は、VoIP網10において、LC200とVoIPアクセスゲートウェイ500との間に配置される音声混信検出装置を説明する図である。
図4を参照すると、音声混信検出装置は、識別信号送受信部300と共通制御部400を備えている。
【0032】
LC200は、
図1のユーザ電話端末100と2線式の加入者線で接続され、アナログ通話信号を、PCM(Pulse Code Modulation)信号に変換する。
【0033】
LC200において、ハイブリッド(hybrid)回路(2線4線変換回路)210は、ユーザ電話端末100からの2線式のアナログ通話信号を4線式のアナログ信号に変換する。また、4線式のアナログ信号を2線式のアナログ通話信号に変換する機能を有する。
【0034】
LC200において、 A/D220(Analog to digital converter(ADC)/Digital to analog converter(DAC):アナログデジタル変換器/デジタルアナログ変換器)はPCMコーデック(codec)であり、例えばμ-law圧伸則(北米、日本)(又はA-law)等により符号化と復号化を行う。すなわち、A/D220はハイブリッド回路210からのアナログの通話信号を符号化してPCM信号に変換する。またA/D220はPCM信号(デジタル通話信号)を復号化してアナログ信号を生成しハイブリッド回路210に出力する。フィルタ群230はLPF(Low Pass Filter:低域通過フィルタ)とHPF(High Pass Filter:高域通過フィルタ)を備えている。フィルタ群230はPCM信号に対して、音声帯域外の周波数を遮断する。なお、
図4において、フィルタ群230は、例えばデジタルフィルタで構成される。
【0035】
識別信号送受信部300は、LC200とVoIPアクセスゲートウェイ500の間に接続されている。識別信号送受信部300は、加算器330、LPF310、正弦波カウンタ320を備えている。
【0036】
共通制御部400は、識別信号生成部410、識別信号制御部420、管理部430、警報発報部440を備えている。
【0037】
加算器330は、LC200から送られてくるPCM信号(デジタル通話信号:音声信号)に、共通制御部400の識別信号制御部420から供給される識別信号を、デジタル加算する。加算器330は、音声信号に識別信号を付加(重畳)する識別信号挿入部として機能する。
【0038】
LPF310は、VoIPゲートウェイ500から受信するPCM信号(デジタル音声通話信号)から、音声帯域外の低周波成分を抽出する。LPF310は例えばデジタルフィルタからなり、低周波成分の識別信号を選択的に通過させる。あるいは、LPF310では、受信するPCM信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)またはDFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)等で周波数領域に変換し、例えばカットオフ周波数よりも低域周波成分のみを残し、カットオフ周波数以上、ナイキスト(Nyquist)周波数成分までを0に設定した上でIFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)又はIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)等で時間領域の信号に戻すことで、識別信号(正弦波)を抽出するようにしてもよい。
【0039】
なお、
図4に示す例では、VoIP網10のVoIPアクセスゲートウェイ500とLC200との間に、識別信号送受信部300が配置されているが、
図1のPSTN網20のTDM交換機800とLC900の間に識別信号送受信部300を配置する構成としてもよいことは勿論である。この場合、加算器330は、共通制御部400の識別信号制御部420から供給される識別信号を、LC900から送られてくるアナログ音声通話信号にアナログ加算する。LPF310は、アナログ回路で構成され、TDM交換機800から受信するアナログ音声通話信号から音声帯域外の低周波成分を抽出する。
【0040】
正弦波カウンタ320は、LPF310を通過した識別信号の正弦波の数をカウントする。正弦波カウンタ320はカウント値を、期待値(対応するチャネルの識別信号の正弦波の数)と照合する。正弦波カウンタ320は、識別信号の正弦波の数が期待値と一致しない場合、共通制御部400の警報発報部440へアラームを通知する。
【0041】
共通制御部400において、識別信号生成部410は、音声帯域外の周波数の信号(50Hzの正弦波信号)を生成する。識別信号生成部410で生成する信号波形(送信波形は、
図8に示すような正弦波となる。
【0042】
識別信号制御部420は、識別信号管理テーブル421を備え、チャネル番号毎に、識別信号の正弦波の数(所定期間(例えば1秒)における正弦波の数(正弦波の1サイクル=20msec(milli second)))を一意に割り当てる。
【0043】
図11は、識別信号管理テーブル421の一例を示す図である。識別信号管理テーブル421には、チャネル(チャネル番号)(Voice1、Voice2、Voice3)に対応して、当該チャネルの識別信号である正弦波の数1、2、3が割り当てられている。
【0044】
また、識別信号制御部420は、1秒間隔で各チャネル番号に対応した数の正弦波を識別信号送受信部300へ送信する。
【0045】
警報発報部440は、保守者へ警報を発報し混信発生を通知する。管理部430は、呼制御ネットワーク1100とのインタフェースを備え、呼制御を行う。
【0046】
次に、
図5乃至
図11を参照して本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0047】
図5は、発呼から通話開始までの共通制御部400の識別信号制御部420と管理部430の動作を説明する図である。本実施形態においては、呼処理のプロトコルには、IP電話等の呼制御(シグナリング)を行うプロトコルであるSIP(Session Initiation Protocol)を用いる(IETF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request For Comments)3261にSIPの仕様が標準化されている)。なお、
図5において、発呼側の共通制御部400の識別信号制御部420、管理部430は、
図4の共通制御部400の識別信号制御部420、管理部430に対応するものとし、また着呼側の共通制御部400の識別信号制御部420、管理部430は、
図1のTDM交換機800とLC900の間に配置される音声混信検出装置の共通制御部400の識別信号制御部420、管理部430であってもよい。発呼側の共通制御部400の管理部430と着呼側の共通制御部400の管理部430は呼制御ネットワーク1100を介して接続される。
【0048】
(1)<発呼側の動作>
発呼側の共通制御部400の管理部430は、ユーザ電話端末100からの発呼の後、識別信号制御部420に対して、通話先へ送信する識別信号の1秒当たりの正弦波数を問い合わせる(ステップA1)。
【0049】
共通制御部400の識別信号制御部420は、識別信号管理テーブル421(
図11)を参照し、該当チャネルに対応する識別信号の1秒当たりの正弦波数を、管理部430へ返す(ステップA2)。
【0050】
管理部430は、通信先に対して、SIP Invite(セッション確立要求)リクエストメッセージを送出する。管理部430は、Inviteリクエストメッセージのボディ部(メッセージボディ)に、発呼側が送信する識別信号の1秒当たりの正弦波数を設定し、通信先へ通知する(ステップA3)。なお、SIPメッセージ(リクエスト/レスポンス)は、1行目のリクエスト行/レスポンス行、ヘッダ部、ヘッダ部とボディ部を区別する空白行、ボディ部(SDP(Session Description Protocol)の書式)からなる。
【0051】
(2)<着呼側の動作>
着呼側の共通制御部400の管理部430は、発呼側の共通制御部400の管理部430から呼制御ネットワーク1100を介して送信されたInviteリクエストメッセージを受信すると(ステップA4)、Inviteリクエストメッセージのメッセージボディを検索し、メッセージボディに、発呼側の識別信号の1秒当たりの正弦波数が記述されているか否かを確認する(ステップA5)。
【0052】
共通制御部400の管理部430は、Inviteリクエストメッセージのメッセージボディに記述された正弦波数を、1秒当たりの正弦波数の受信側の期待値とみなす。また、管理部430は、識別信号制御部420に対して、通話先へ送信する識別信号の1秒当たりの正弦波数を問い合わせる(ステップA7)。
【0053】
識別信号制御部420は、識別信号管理テーブル421(
図11)を参照し、該当チャネルに対応する正弦波数を管理部430へ返す(ステップA8)。
【0054】
管理部430は、SIP 200okレスポンスメッセージのメッセージボディに1秒当たりの正弦波数を記述し、発呼側へ送信する(ステップA9)。
【0055】
ステップA5において、Inviteリクエストメッセージのメッセージボディに正弦波数の記述が存在しない場合には、管理部430は識別信号制御部420に対して、機能(送信正弦波数の検索、応答)の無効化を指示する(ステップA6)。
【0056】
(3)<発呼側の動作>
管理部430は、SIP 200okレスポンスメッセージを受信すると(ステップA10)、200okレスポンスメッセージのメッセージボディを検索し、着呼側の識別信号の1秒当たりの正弦波数の記述有無を確認する(ステップA11)。
【0057】
管理部430は、200okレスポンスメッセージのメッセージボディの記述された正弦波数を、1秒当たりの正弦波数の受信側の期待値とみなす。正弦波数の記述が存在しない場合は、通信先は、本発明の手段を具備していないとみなし、識別信号制御部420に対して、本発明の機能の無効化を指示する(ステップA12)。
【0058】
図6は、
図5のステップA11で正弦波数が記述されており、ステップA13で通話が開始される場合における、VoIPアクセスゲートウェイ500への音声送信側の動作について説明する。
【0059】
共通制御部400の識別信号制御部420は、管理部430より識別信号送信指示を受けると(ステップB1)、識別信号生成部410より受信する50Hzの正弦波(
図8)から、1秒間に当該呼のチャネル番号に対応した数の正弦波を抽出する。
【0060】
図9は、識別信号制御部420において、識別信号管理テーブル421が
図11の場合に、識別信号生成部410より受信する50Hzの正弦波から抽出される識別信号を示す。この動作を、通話中、連続して、実行する(ステップB2)。
【0061】
識別信号制御部420は、抽出した正弦波を識別信号として当該呼の識別信号送受信部300へ送信する(ステップB3)。
【0062】
図7(A)は、識別信号送受信部300の正弦波カウンタ320の構成を示す図である。
図7(B)は、
図7(A)の動作を説明する波形図である。
図7を参照して、VoIPアクセスゲートウェイ500からの音声受信側の動作について説明する。
【0063】
正弦波カウンタ320は、全波整流部321、LPF322、コンパレータ323、パルス長カウンタ324、正弦波数チェック部325を備えている。正弦波カウンタ320をデジタル信号処理回路で実現する場合、プロセッサ又はデジタル信号プロセッサ等によりプログラムを実行することで、正弦波カウンタ320の各部の処理を実行するようにしてもよい。全波整流部321は、入力した信号波形1(=Vin1)が正極性のとき、Vin1、負極性のとき、−Vin1を出力する。LPF322は、デジタルフィルタで構成される。コンパレータ323は、LPF322の出力と所定の閾値(デジタル値)との大小を比較するデジタル回路(大小比較回路)で構成される。
【0064】
一方、識別信号送受信部300が、PSTN網20のTDM交換機800とLC900の間に配置され、正弦波カウンタ320がLPF310からのアナログ信号を処理する場合、正弦波カウンタ320において、全波整流部321、LPF322、コンパレータ(電圧比較器)323はいずれもアナログ回路で構成され、いずれも公知の回路構成が用いられる。コンパレータ323の出力信号(電圧比較結果信号)が2値の信号(デジタル信号)とされ、パルス長カウンタ324、正弦波数チェック部325はデジタル回路又はデジタル回路とソフトウェア制御により実現される。
【0065】
VoIPアクセスゲートウェイ500からのPCM信号よりLPF310により抜き出した正弦波2周期分の識別信号(
図7(B)の波形1)を、正弦波カウンタ320の全波整流部321に入力すると、正弦波は全波整流される(
図7(B)の波形2)。整流された信号をLPF322へ入力すると、波形が積分され、正弦波2周期分のパルス波形となる(
図7(B)の波形3)。
【0066】
次に、ハイレベルとローレベルの閾値(レベル閾値)を設定したコンパレータ323へ入力すると、デジタルのパルス波形となる(
図7(B)の波形4)。コンパレータ323は、レベル閾値よりも高いレベルをハイレベル、レベル閾値よりも低いレベルをローレベルとする。
【0067】
パルス長カウンタ324は、入力されたパルス波形(波形4)を、高速(例えば1kHz)でチェックし、正弦波の周期(20msec)の期間ハイレベルを検出すると1カウントとし、1周期の正弦波が入力されたことを認識する。例えば波形4がローレベルからハイレベルとなるとカウント値を1とし1kHz毎に波形4のレベルをチェックし、ハイレベルであれば、カウント値をインクリメント(+1)し、はローレベルであればカウントを停止し、波形4(ハイパルス)のパルス長(パルス幅)を計数する。
図7の例では、パルス長カウンタ324のカウント値は2となる。このようにして1秒周期で正弦波数をカウントし、カウント結果を正弦波数チェック部325に通知する。
【0068】
正弦波数チェック部325では、共通制御部400の管理部430より、1秒間の期待正弦波数と正弦波数チェック指示を受信すると、パルス長カウンタ324からの正弦波数カウント結果と期待正弦波数とを比較する。一致すれば、正弦波数チェック部325は異常無しとみなす。正弦波数チェック部325は、期待値と不一致を検出した場合、不一致判定結果を、共通制御部400の警報発報部440へアラームとして通知する。
【0069】
警報発報部440は、正弦波数チェック部325から、アラームを受信すると、混信発生とみなし、保守者(あるいは保守端末等)へ通知する。
【0070】
図10は、Voice1のチャネルに、Voice2が挿入した場合の受信識別信号を示す。Voice1の受信識別信号には、混信により、Voice2の正弦波数(1秒間に2個の正弦波数)が含まれる。Voice1の受信識別信号に含まれる正弦波数(1秒間に1個)と相違している。正弦波数チェック部325は、期待値と不一致を検出した場合、共通制御部400の警報発報部440へアラームを通知する。
【0071】
<実施形態1の作用効果>
上記した実施形態の作用効果について説明する。
【0072】
(A)実施形態によれば、電話網において通話中に混信が発生した場合、混信発生の影響範囲を最小限に留めることを可能としている。発明が解決しようとする課題で説明したように、混信の発生を検出できない場合、電話ユーザの申告以外に混信発生を検知する手段はなかった。また、電話ユーザによっては、必ず申告するとは限らない。このため、申告があるまで混信事象を複数件引き起こし、影響範囲を広げることにつながる。本実施形態により、ユーザ申告よりも先に混信の発生を検出し、保守端末、保守サーバあるいは保守者等に早期に通知することで、故障被疑箇所の停止や系切り替えといった処置を早期に行うことを可能としている。このため、混信事象の拡大を未然に防ぐことが出来る。
【0073】
(B)また本実施形態によれば、電話網において通話中に混信が発生した場合に、発生後、短時間に混信の発生を検出することを可能としている。例えば混信した場合に、短時間に混信の発生が検出できなければ、話者の発する言葉は、意味ある文章として成立せず、聞き手からは判別できない為である。このため、電話ユーザの情報漏洩の可能性を最小限に留めることができる。
【0074】
(C)さらに、本実施形態によれば、通話チャネルを識別する識別信号を音声帯域外に挿入させ、LC200のフィルタ群230により識別信号は減衰され、また50Hz程度の低周波は、人間の聴覚では殆ど聞くことができない。このため、電話網において通話中に混信が発生した場合に、通常の音声通話に影響を与えることなく、混信発生の検出を行うことができる。
【0075】
また、識別信号として、音声帯域外(低域側)の所定の周波数の正弦波を用いたことにより、複数周波数間のIM(Inter Modulation)歪(相互変調歪)や、矩形波等を用いた場合に発生する高調波成分等の発生が抑制され、識別信号の周波数スペクトルが音声帯域に影響を与えることを回避している。
【0076】
(D)さらにまた、本実施形態によれば、電話ユーザ端末と括りついたLC200の後段に、混信検出装置を付加することで、エンド・ツー・エンドの混信発生の監視を可能としている。このため、電話網において通話中に混信が発生した場合、ネットワークの中継装置等に機能の追加は不要であり、中継装置等に影響を与えることなく、漏れなく確実に混信の発生を検出することができる。
【0077】
(E)さらにまた、本実施形態によれば、識別信号の正弦波数をカウントした結果より、挿入した呼のチャネル番号を特定することができる。この結果、挿入呼のネットワークのトレースを可能としている。その結果、電話網において通話中に混信が発生した場合、被疑故障箇所の特定作業を容易化することができる。
【0078】
(F)さらにまた、本実施形態によれば、通話中に受信側の識別信号を、例えば1秒以上未検出であった場合、送信側の通話データが受信側に到達していないと判断することができ、無音の発生とみなすことが可能となる。このため、電話網において通話中にネットワークの要因等で通話データの欠落が発生した場合、ユーザからの「通話先からの音声が聞こえない」という申告よりも先に無音の事象を検出することを可能としている。
【0079】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態においては、
図4の構成において、音声帯域外の周波数領域に音声チャネル番号を識別する識別信号を挿入させ、音声受信側において、識別信号をチェックし、混信の発生を検出する点で、前記第1の実施形態と同様である。第2の実施形態は、識別信号の識別方式が、前記第1の実施形態と相違している。第2の実施形態においては、2周期の正弦波を1ビットとみなし、識別信号を、1秒間の正弦波のビットパタンによって識別する。
【0080】
図12は、
図4の識別信号制御部420が識別信号送受信部300へ送信する識別信号の例を模式的に示す図である。識別信号制御部420は、識別信号生成部410から供給される50Hzの正弦波から、1秒間の正弦波のビットパタンを生成する。1秒周期の先頭位置は、正弦波有り/無しの2回連続パタンによって識別する。すなわち、先頭の正弦波有り/無しの2回連続パタンは正弦波のビットパタンのスタートを示している。残りの正弦波46周期分は、「2回連続の正弦波有り」を‘1’、「2回連続の正弦波無し」を‘0’とし、2進数(バイナリ)でパタンを表現する。これにより、識別信号の周波数は50Hzと低いにもかかわらず、2の23乗(10進数:8388608)通りのパタンを識別可能となる。例えば
図12に示すように、Voice1、2、3の識別信号の先頭は正弦波有、無、有、無のパタンであり、Voice1の識別信号の正弦波ビットパタン領域は2進数の‘1’、Voice2の識別信号の正弦波ビットパタン領域は2進数の‘10’(=10進数の2)、Voice3の識別信号の正弦波ビットパタン領域は2進数の‘11’(=10進数の3)である。
【0081】
図13は、第2の実施形態における識別信号管理テーブル421の一例を示す図である。識別信号管理テーブル421はチャネル番号(ID)に対応する正弦波ビットパタン領域の値を備えている。
【0082】
本実施形態による、発呼から通話開始までの共通制御部400の識別信号制御部420と管理部430の動作と、通話が開始される場合のVoIPアクセスゲートウェイ500への音声送信側の動作、及びVoIPアクセスゲートウェイ500からの音声受信側の動作は、
図5および
図6を参照して説明した前記第1の実施形態の動作の説明における「正弦波数」を「正弦波ビットパタン」に置き換えればよい。
【0083】
また、
図4の正弦波カウンタ320の構成は、
図7(A)に示した構成とされる。正弦波ビットパタン領域の「2回連続の正弦波有り」を2進数の‘1’としてカウントする処理は、
図7(A)、
図7(B)を参照して説明した処理と同様にして行われる。例えば、正弦波ビットパタン領域に関して、正弦波カウンタ320において、
図4のパルス長カウンタ324では、入力されたパルス波形(波形4)のハイ/ローを例えば周波数1kHz(1msec周期)でチェックし、
図7(B)のように、「2回連続の正弦波有り」に対応するパルス長の場合、+1カウントし、波形4のハイレベルが、「2回連続の正弦波有り」がnセット分連続する場合、カウント値は10進数でnとなる。波形4がローレベルとなると、パルス長カウンタ324はカウントを停止し、カウント結果を正弦波数チェック部325に通知する。正弦波数チェック部325では、共通制御部400の管理部430より、1秒間の期待正弦波ビットパタンと、正弦波ビットパタンチェック指示を受信すると、パルス長カウンタ324からのカウント結果(「2回連続の正弦波有り」のカウント結果)と期待正弦波ビットパタンとを比較する。一致すれば、正弦波数チェック部325は異常無しとみなす。正弦波数チェック部325は、期待値と不一致を検出した場合、共通制御部400の警報発報部440へアラームを通知する。
【0084】
<実施形態2の作用効果>
第2の実施形態においても、前記第1の実施形態と同様の作用効果(A)乃至(G)を奏するほか、割り当て可能な識別信号の値を飛躍的に増大させる。
【0085】
なお、上記の特許文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0086】
上記した実施形態は以下のように付記される(ただし、以下に限定されない)。
(付記1)
音声信号に対して、音声帯域外の周波数領域の予め定められた識別信号を生成する識別信号生成手段と、
前記音声信号に、前記識別信号生成手段で生成された識別信号を挿入して送信する識別信号挿入手段と、
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の識別信号を抽出する識別信号抽出手段と、
前記識別信号抽出手段で抽出された識別信号が予め定められた識別信号の期待値と一致するか否か判定する識別信号判定手段と、
を備えた音声混信検出装置。
【0087】
(付記2)
前記識別信号が、音声帯域外の予め定められた周波数の正弦波を含む、付記1記載の音声混信検出装置。
【0088】
(付記3)
前記識別信号として、予め定められた所定期間に含まれる前記正弦波の数がチャネル毎に一意に割りてられる、付記2記載の音声混信検出装置。
【0089】
(付記4)
前記識別信号として、予め定められた所定サイクル、前記正弦波が連続すると、2進数の1と0の一方とし、予め定められた所定サイクル正弦波が連続しない場合に、2進数の1と0の他方とする値が、チャネル毎に、一意に割りてられる、付記2記載の音声混信検出装置。
【0090】
(付記5)
前記正弦波の予め定められた組み合わせパタンが前記識別信号の先頭を示す付記4記載の音声混信検出装置。
【0091】
(付記6)
前記識別信号生成手段が、チャネルに対応した識別信号をチャネル毎に記憶管理し、前記識別信号挿入手段に対して、該当するチャネルに対応する前記識別信号を供給する識別信号生成手段を備え、
受信した呼制御信号から識別信号情報を取得し、前記識別信号判定手段に対して、該当するチャネルに対応する識別信号の期待値を供給する管理手段と、
前記識別信号判定手段で不一致を検出したとき、警報を出力する警報手段と、
をさらに備えた付記1記載の音声混信検出装置。
【0092】
(付記7)
前記識別信号抽出手段が、前記受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の正弦波を抽出し、
前記識別信号判定手段が、
前記識別信号抽出手段で抽出された前記正弦波から、前記正弦波に対応したレベルを有し前記正弦波の数に対応する長さの直流信号に変換する手段と、
前記直流信号を予め定められた所定の閾値と比較して2値の信号に変換し、前記2値の信号のパルス長を計測することで前記正弦波の数を取得する手段と、
前記取得した正弦波の数が、前記識別信号の期待値と一致するかチェックする手段と、
を備えた付記1乃至6のいずれか一に記載の音声混信検出装置。
【0093】
(付記8)
音声信号に対して、音声帯域外の周波数領域の予め定められた識別信号を生成する識別信号生成手段と、
前記音声信号に、前記識別信号生成手段で生成された識別信号を挿入して送信する識別信号挿入手段と、を備えた送信装置。
【0094】
(付記9)
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の識別信号を抽出する識別信号抽出手段と、
抽出された前記識別信号が、予め定められた識別信号の期待値と一致するか否か判定する識別信号判定手段と、
を備えた受信装置。
【0095】
(付記10)
音声信号に対して音声帯域外の周波数領域に予め定められた識別信号を生成し、
前記音声信号に前記生成した識別信号を挿入して送信し、
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の識別信号を抽出し、
抽出した前記識別信号が、予め定められた識別信号の期待値と一致するか否か判定する、音声混信検出方法。
【0096】
(付記11)
前記識別信号が、音声帯域外の予め定められた周波数の正弦波を含む、付記10記載の音声混信検出方法。
【0097】
(付記12)
前記識別信号として、予め定められた所定期間に含まれる前記正弦波の数がチャネル毎に一意に割りてられる、付記11記載の音声混信検出方法。
【0098】
(付記13)
前記識別信号として、予め定められた所定サイクル、前記正弦波が連続すると、2進数の1と0の一方とし、予め定められた所定サイクル正弦波が連続しない場合に、2進数の1と0の他方とする値が、チャネル毎に、一意に割りてられる、付記11記載の音声混信検出方法。
【0099】
(付記14)
前記正弦波の予め定められた組み合わせパタンが前記識別信号の先頭を示す付記13記載の音声混信検出方法。
【0100】
(付記15)
チャネル毎の識別信号を記憶管理し、
受信した呼制御信号から識別信号情報を取得し、受信した呼制御信号から識別信号情報を取得し、該当するチャネルに対応する識別信号の期待値を設定し、
前記識別信号が、該当チャネルに対応する識別信号の期待値と一致しない場合、警報を出力する、付記10乃至14のいずれか一に記載の音声混信検出方法。
【0101】
(付記16)
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の正弦波を抽出し、
抽出された前記正弦波から、前記正弦波に対応したレベルを有し前記正弦波の数に対応する長さの直流信号に変換し、
前記直流信号を予め定められた所定の閾値と比較して2値の信号に変換し、前記2値の信号のパルス長を計測することで前記正弦波の数を取得し、
前記取得した正弦波の数が、前記識別信号の期待値と一致するかチェックする、付記10乃至15のいずれか一に記載の音声混信検出方法。
【0102】
(付記17)
音声信号に対して音声帯域外の周波数領域の予め定められた識別信号を生成する識別信号生成処理と、
前記音声信号に、生成された前記識別信号を挿入して送信する識別信号挿入処理と、
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の識別信号を抽出する識別信号抽出処理と、
抽出された前記識別信号が、予め定められた識別信号の期待値と一致するか否か判定する判定処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【0103】
(付記18)
前記識別信号が、音声帯域外の予め定められた周波数の正弦波を含む、付記17記載のプログラム。
【0104】
(付記19)
前記識別信号として、予め定められた所定期間に含まれる前記正弦波の数がチャネル毎に一意に割りてられる、付記18記載のプログラム。
【0105】
(付記20)
前記識別信号として、予め定められた所定サイクル、前記正弦波が連続すると、2進数の1と0の一方とし、予め定められた所定サイクル正弦波が連続しない場合に、2進数の1と0の他方とする値が、チャネル毎に、一意に割りてられる、付記18記載のプログラム。
【0106】
(付記21)
前記正弦波の予め定められた組み合わせパタンが前記識別信号の先頭を示す付記20記載のプログラム。
【0107】
(付記22)
チャネルに対応した識別信号をチャネル毎に記憶管理し、前記識別信号挿入手段に該当するチャネルに対応する識別信号を供給する識別信号制御処理と、
受信した呼制御信号から識別信号情報を取得し、前記判定処理に対して、該当するチャネルに対応する識別信号の期待値を供給する管理処理と、
前記判定処理で不一致を検出したとき、警報を出力する警報処理と、を前記コンピュータに実行させる、付記17乃至21のいずれか一に記載のプログラム。
【0108】
(付記23)
受信した音声信号から音声帯域外の周波数領域の正弦波を抽出する処理と、
前記抽出された前記正弦波から、前記正弦波に対応したレベルを有し前記正弦波の数に対応する長さの直流信号に変換する処理と、
前記直流信号を予め定められた所定の閾値と比較して2値の信号に変換し、前記2値の信号のパルス長を計測することで前記正弦波の数を取得する処理と、
前記取得した正弦波の数が、前記識別信号の期待値と一致するかチェックする処理と、を、前記コンピュータに実行させる、付記17乃至22のいずれか一に記載のプログラム。