特許第6429274号(P6429274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429274
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】分析容器とその分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/11 20060101AFI20181119BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   G01N21/11
   G01N35/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-54100(P2015-54100)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-173329(P2016-173329A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】シャープライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】綱澤 啓
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤
(72)【発明者】
【氏名】足立 雄介
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−145359(JP,A)
【文献】 特開2004−325236(JP,A)
【文献】 特開2004−125777(JP,A)
【文献】 特開平3−35144(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0280653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とする第1の円周上に設けられた1以上の注入口と、前記第1の円周よりも外側にある第2の円周上に設けられた1以上の測定室と、前記注入口と前記測定室とを一対一で連通する流路とを備えた分析容器であって、
前記注入口がシール部材により封止され、前記シール部材は前記第2の円周上の少なくとも一部を覆うように形成されたシール部材判定位置を有することを特徴とする分析容器。
【請求項2】
前記シール部材が遮光性を有することを特徴とする請求項1に記載の分析容器。
【請求項3】
前記シール部材がフィルム材であることを特徴とする請求項1または2に記載の分析容器。
【請求項4】
前記シール部材の前記シール部材判定位置が前記測定室の少なくとも1つを覆うように配置されていることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の分析容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの分析容器を用いた分析装置であって、
前記分析容器を載置して回転させる回転機構と、
前記分析容器の前記第1の円周上に対応する位置に設けられ、前記注入口に前記検体液を供給する検体液供給機構と、
前記分析容器の前記第2の円周上に対応する位置に設けられ、前記分析容器に対して光を照射する発光部と、
前記発光部から照射された光が前記分析容器における前記測定室内の前記検体液中を透過した透過光量を測定する測光部と、
前記分析容器における前記測定室内の前記検体液中を透過した透過光量に基づいて前記検体液の成分分析を行う計測部を備え、
前記シール部材を備えた前記分析容器に対して、前記測光部が測定した前記シール部材判定位置の透過光量に基づいて前記シール部材の有無を判定し、前記検体液供給機構から前記注入口への検体液供給の行否を決定する検体液供給行否決定部を有することを特徴とする分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体液を1以上の試薬と反応させて分析するための分析容器とその分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境や医療、農業等の様々な分野において、予め試薬を収容した分析容器に検体液を入れ、検体液を試薬と反応させて分析を行う分析装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の分析容器(ロータリー・キューベット)200は、図14の平面図に示すように、下部材202と上部材203からなる円盤201を本体とし、中心側から半径線上に、検体液を収容する検体注入室210、第1試薬231を収容する第1反応室211、第2試薬232を収容する第2反応室212を備えている。また、検体注入室210の上部に検体注入口220、検体注入室210と第1反応室211を連通する第1通路221、第1反応室211と第2反応室212を連通する第2通路222が開設されている。
【0004】
特許文献1の分析容器200では、図15の断面図に示すように、予め、第1反応室211に第1試薬231、第2反応室212に第2試薬232を収容しておき、検体注入室210に検体液230を注入する。円盤201を回転させると、検体液230に遠心力が作用し、第1通路221を通って第1反応室211に流入し、回転を止めると底部に流れ落ち、第1試薬231と接して反応する。再び、円盤201を回転させると、第1試薬231と反応した検体液230は、第2通路222から第2反応室212に流入し、第2試薬232と接して反応する。
【0005】
試薬と反応した検体液230は、第2反応室212の天井面と底面に形成された光学窓240、241を通して、図示しない測光装置によって光が照射されて、検体液230の光学特性の変化が測定される。
【0006】
特許文献1の分析容器200によれば、稀釈された検体液230を検体注入室210に注入した後、検体液230と試薬とを希望するときまで隔離して、両者の反応を時間管理して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2731423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、分析容器は、検体液を注入するための検体注入口を有するが、分析容器内部への異物の混入や、試薬が空気と触れて酸化することを防止するため、通常、測定時以外は検体注入口を封止して内部を密閉しておき、測定直前に検体注入口の封止を解くようにすることが望ましい。
【0009】
しかしながら、分析容器をセットした後、自動的に液体を検体注入口に検体液を供給して自動分析を行う分析装置においては、通常は検体注入口の開閉状態を判断する手段を備えておらず、誤って検体注入口の封止を解かずに分析容器をセットしてしまった場合、注入口が封止状態であるにも関わらず検体液を供給してしまい、封止された検体注入口からこぼれた検体液で分析用容器や分析装置を汚損させる問題があった。また、これを防止するためには、たとえば検体注入口の開閉状態を判定するセンサを分析装置に別途設けることが考えられるが、この場合センサを追加した分だけ装置コストが嵩むという問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、分析装置に対して特別な追加手段を要せずに、分析容器の注入口の開閉状態を判断し、検体液の注入を適宜行うことができる、分析容器とその分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る分析容器は、回転軸を中心とする第1の円周上に設けられた1以上の注入口と、第1の円周よりも外側にある第2の円周上に設けられた1以上の測定室と、注入口と測定室とを一対一で連通する流路とを備えた分析容器であって、注入口がシール部材により封止され、シール部材は第2の円周上の少なくとも一部を覆うように形成されたシール部材判定位置を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分析容器は、シール部材が遮光性を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分析容器は、シール部材がフィルム材であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分析容器は、シール部材のシール部材判定位置が測定室の少なくとも1つを覆うように配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、分析容器を用いた分析装置であって、分析容器を載置して回転させる回転機構と、分析容器の第1の円周上に対応する位置に設けられ、注入口に前記検体液を供給する検体液供給機構と、分析容器の第2の円周上に対応する位置に設けられ、分析容器に対して光を照射する発光部と、発光部から照射された光が分析容器における測定室内の検体液中を透過した透過光量を測定する測光部と、分析容器における測定室内の検体液中を透過した透過光量に基づいて検体液の成分分析を行う計測部を備え、シール部材を備えた分析容器に対して、測光部が測定したシール部材判定位置の透過光量に基づいてシール部材の有無を判定し、検体液供給機構から注入口への検体液供給の行否を決定する検体液供給行否決定部を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、分析装置に対して特別な追加手段を要せずに、分析容器の注入口の開閉状態を判断し、検体液の注入を適宜行うことができる、分析容器とその分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1の分析容器の平面図である。
図2】シール部材を外した状態を示す分析容器の平面図である。
図3】シール部材を外した分析容器と分析装置の断面模式図である。
図4】シール部材を付けた分析容器と分析装置の断面模式図である。
図5】分析装置の他の形態を示した断面模式図である。
図6】シール部材の第2の形状を示す平面図である。
図7】シール部材の第3の形状を示す平面図である。
図8】リブ部を設けた分析容器の平面図である。
図9】リブ部を設けた分析容器の断面図である。
図10】シール部材を積層した分析容器の断面図である。
図11】シール部材の積層構造を拡大した断面図である。
図12】シール部材に文字を表示した分析容器の平面図である。
図13】本体側に接着層を設けた分析容器の平面図である。
図14】従来の分析容器の平面図である。
図15】従来の分析容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の分析容器とその分析装置について図面を参照して説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る分析容器101の概略を示す平面図であり、図2は、分析容器101から後述するシール部材110を外した状態を示す平面図である。
【0020】
図1図2に示すように、分析容器101は円盤形状を有しており、回転軸107を中心とする第1の円周(C1)上に設けられた1以上の注入口103と、第1の円周(C1)より外側の第2の円周(C2)上に設けられた1以上の測定室104と、注入口103と測定室104を一対一で連通する流路105を備える。注入口103、流路105、測定室104は、分析セル102を構成し、本発明の分析容器101では、図2に示すように、放射状に6つの分析セル102が設けられている。
【0021】
測定室104は、分析セル102毎の測定目的に対応する試薬が予め内部に封入されている。土壌分析の試薬として、例えば、Mg成分の濃度を調べる場合、キシリジルブルー+Triton X-100+トリエタノールアミン+硫酸ナトリウム+GEDTA+テトラエチレンペンタミン+リン酸水素2ナトリウム+水酸化ナトリウム溶液の混合溶液などを挙げることができる。他の成分についても、それらに対応する市販、または開発された試薬を用いて調べることができる。試薬の形態としては、混合溶液に限定されるものではなく、保存性の観点では、固体等の経時変化が少ないものが好適である。
【0022】
分析容器101は、安価に構成するため、透明性の高い合成樹脂で全体を作製することがより好ましく、本実施形態においては、耐薬品性も兼ね備えたポリカーボネートで作製している。
【0023】
本発明の分析容器101は、各注入口103が同一平面上に形成され、各注入口103にはシール部材110が付設され封止されている。シール部材110は、第2の円周上の少なくとも一部を覆うように形成されたシール部材判定位置を有している。また、シール部材110は、後述する注入口103の開閉状態を検出するため、光の透過量を多少変化させる程度の遮光性を有することが望ましい。
【0024】
図3図4は、図1に示した分析容器101のA1−A2部の断面図である。図3は、分析容器101からシール部材110を外して本発明の分析装置150に載置した状態を示す。図4は、分析容器101にシール部材110を付設したまま分析装置150に載置した状態を示す。
【0025】
本発明の分析装置150は、分析容器101を載置して回転させる回転機構160と、第1の円周上に対応する位置に設けられた検体液供給機構170と、第2の円周上に対応する位置に設けられた発光部181及び測光部182を有する計測部180とを備えている。
【0026】
回転機構160は、回転軸107を中心に分析容器101を回転させて、各注入口103が検体液供給機構170に対面する位置、または、各測定室104が発光部181及び測光部182に対面する位置で、分析容器101を停止させることが可能となっている。
【0027】
検体液供給機構170は、第1の円周上に設けることで、1つの検体液供給機構170で各注入口103へ検体液を注入することができる。また、発光部181及び測光部182も第2の円周上に設けることで、1つの計測部180で各測定室104を測定することができる。
【0028】
図3に示すように、検体液供給機構170は、分析容器101の注入口103に検体液を注入するためのノズルを備えている。検体液は、注入口103に注入され、流路105を通って測定室104へと導かれる。
【0029】
流路105は、図3に示すように、内側から外側へ向かって高さが低くなる傾斜が設けられている。これにより、注入された検体液が注入口103の直下付近に溜まることなく、スムーズに測定室104へ導入される。また、分析容器101の回転時には、測定室104から注入口103への検体液の逆流を防ぎ、注入した検体液がチップ外部へ飛散することを防止する。
【0030】
分析容器101は、分析装置150にセットされた後、注入口103から検体液が注入され、回転機構160により回転駆動されることにより、測定室104の内部で検体液と試薬106が混合される。
【0031】
計測部180は、発光部181と測光部182を備え、それぞれ分析容器101の測定室104の上方と下方に対向するように配置されている。
【0032】
一方、分析容器101の測定室104には、発光部181と測光部182に対応する図示しない測定窓が設けられている。測定窓は、例えば、シリコーン、ガラス、プラスチック等の透光部材で作製されている。
【0033】
計測部180は、測定室104内で試薬106と混合され、呈色反応した検体液の吸光度を分析するため、発光部181から出射された光が測定室104の検体液中を透過して測光部182に導かれた透過光量を測定する。また、分析容器101を回転させて各測定室104を計測部180の位置に順次移動させて、試薬毎に複数の成分分析が行われる。
【0034】
分析容器101は、図4に示すように、通常、注入口103から内部に異物が混入することや、内部の試薬の漏出や試薬の酸化等を防止するため、注入口103にシール部材110が付設されて封止された状態となっている。従来では、この状態のまま誤って分析装置に載置して自動分析を開始してしまうと、シール部材110上に検体液が注がれて、分析容器や分析装置が汚損される問題がある。
【0035】
本実施例に係る分析装置150は、分析容器101をセットして自動分析を開始すると、注入口103への検体液の注入前に、まず、分析容器101を回転させて測定室104の透過光量を計測する。
【0036】
本実施例に示す分析容器101では、遮光性を有する材料でシール部材110を構成し、シール部材110で各注入口103を封止するとともに、測定室104が配置された第2の円周上の少なくとも一部を覆うようにシール部材判定位置が形成されている。
【0037】
このため、シール部材110が付設された封止状態の分析容器101を分析装置150にセットし、分析装置150で一回転させると、計測部180にシール部材判定位置による透過光量の著しく低い箇所が検出される。
【0038】
計測部180は検体液供給行否決定部190と接続されており、検体液供給行否決定部190は検出信号からシール部材110の有無を判定し、検体液供給の行否を決定し、検体液供給機構170を制御する。
【0039】
上記構成により、シール部材110が検出されると、分析装置150は、注入口103への検体液の注入動作を停止するとともに、図示しない表示部やスピーカから使用者にシール部材110を剥離するよう警告を発し、検体液の漏液を未然に防ぐことができる。
【0040】
従って、本発明の分析容器101によれば、検出素子等の追加部材を要することなくシール部材110の有無を検出することができ、封止状態の分析容器101に対して検体液の誤注入を防止することができる。
【0041】
なお、分析容器101は、使用者がシール部材110を容易に剥離できるように、シール部材判定位置の端部を延長してつば部を設けてもよい。使用者は、分析容器101に接着されていないつば部を起点にして容易に剥離を行うことできる。
【0042】
また、分析容器101のつば部が分析装置150に機械的に干渉して、封止状態の分析容器101が誤って分析装置150にセットされないようにすることもできる。
【0043】
また、分析装置150において、発光部181と測光部182は、必ずしも上下に対向して配置される必要はなく、図5に示すように、分析容器101の上方または下方に並置して分析容器101内部から反射された透過光量を測定するものであってもよい。この場合、測定室104内の検体液中を透過する光路長を長く(2倍に)することができ、より精度の高い計測を行うことや、広範囲の成分濃度を計測することができる。
【0044】
(実施形態2)
本発明の実施形態2として、図6図7を用いて、形状の異なるシール部材111、シール部材112を用いる分析容器101について説明する。図6は、シール部材111を示す平面図であり、図7は、シール部材112を示す平面図である。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、シール部材111では、分析容器101の各注入口103を封止するとともに、シール部材判定位置が各測定室104も全て覆うように形成されたものとなっている。このような構成では、各測定室104に収容された試薬への外部からの光の入射が低減され、試薬の光劣化を防止することができる。
【0046】
また、図7に示すように、シール部材112では、各注入口103を封止するとともに、シール部材判定位置が隣り合う測定室104の間を覆うように形成されたものとなっている。このような構成では、シール部材112の接着部材等が測定室104の測定窓に付着し、測定窓が汚れて透過率が低下することが防止されるため、検体液の光学特性の変化を精度よく測定することができる。
【0047】
(実施形態3)
本発明の実施形態3として、分析容器101に、シール部材110を付設する際のガイドとなるリブ109を設けた構成について説明する。図8は、実施形態3の分析容器101の平面図であり、図9は、図8のA3−A4部の断面図である。なお、説明の便宜上、上記の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0048】
分析容器101にシール部材110を付設する際、各注入口103をシール部材110からはみ出さないように付設する必要がある。このため、分析容器101の各注入口103が設けられた平面上に、シール部材110を付設する際のガイドとなるリブ109を設けている。
【0049】
リブ109は、シール部材110の外形端部と一部が接するよう凸状に設けられており、シール部材110の端部をリブ109に沿わせて付設することにより、シール部材110を各注入口103がはみ出さないように容易に付設することができる。
【0050】
なお、シール部材110は、検体液の分析後に使用済みの試薬等を外部に漏液させないよう、分析容器101を再封止するためにも使用されるが、分析容器101にリブ109を設けることにより、シール部材110の再封止の作業性を向上させることができる。
【0051】
(実施形態4)
本発明の実施形態4として、分析容器101の再封止に対して好適なシール部材120の構成について説明する。図10は、シール部材120を付設した分析容器101の断面図であり、図11は、シール部材120の断面構造を説明するため拡大した断面図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0052】
シール部材120は、図10図11に示すように、厚み方向に、第1の接着層121、剥離層122、第2の接着層123、基材124が積層されたフィルム状となっている。
【0053】
検体液の注入前、シール部材120は、第1の接着層121により分析容器101に接着されている。また、注入口103に検体液を注入する際、シール部材120は、分析容器101と第1の接着層121との界面から剥離される。
【0054】
分析終了後にシール部材120で注入口103を再封止する際、第1の接着層121は一度剥がされたことにより接着力が低下しているため、シール部材120の剥離層122から第1の接着層121を一緒に剥離し、新たに第2の接着層123を露出させて分析容器101に接着させることができる構成となっている。
【0055】
このような構成では、シール部材120で分析容器101を再封止する場合においても、シール部材120と分析容器101の接着力を強固に保つことができ、以降の回収運搬時に廃液となる混合液が漏液する危険性をより低減させることが可能となる。
【0056】
なお、上記効果をさらに向上させるために、第2の接着層123の接着強度を第1の接着層121の接着強度よりも大きくする構成としても良い。このようにすることで、使用者が成分分析時にシール部材120を剥離する際は、比較的容易に剥離作業を行えるとともに、使用後の回収時の封止力をより一層高めることを両立させることができる。
【0057】
(実施形態5)
本発明の実施形態5として、シール部材120に分析容器101が使用済みであることを示す文字を表示させる構成について説明する。図12は、シール部材120に文字を表示させた状態の一例を示す平面図である。なお、説明の便宜上、上記の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。また、基本構成は実施形態4と同じであるため、断面図等については、図10図11を代用して説明する。
【0058】
分析容器101は、シール部材120で封止された状態のとき、分析前の状態であるのか、使用済み後に再封止された状態であるのか、区別し難い場合がある。このため、使用済み後に再封止されたものについては、図12に示すように、シール部材120に文字を表示させることで、分析容器101の利便性をさらを向上させることができる。
【0059】
シール部材120への文字の表示方法としては、例えば、透明部材の基材124に「済」等の文字を印刷しておき、剥離層122を印刷された文字と同じ色の部材で構成すれば、剥離層122が剥離されたときに基材124に文字が浮かび上がり、文字を表示させた状態で第2の接着層123により分析容器101に再封止させることができる。
【0060】
なお、剥離層122に文字を印刷し、分析前の状態では文字を表示し、再封止後は剥離層122が剥離され、文字が消えるような構成としてもよい。
【0061】
(実施形態6)
本発明の実施形態6として、分析容器101側にシール部材110を付設させるための接着層108を設けた構成について説明する。図13は、接着層108を設けた分析容器101の平面図である。なお、説明の便宜上、上記の各実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0062】
シール部材110に接着層を設ける場合、シール部材110の全面に接着層が設けられるため、注入口103の上面にはシール部材110の接着層が露出した状態になる。このため、分析容器101を運搬中に傾くなどして内部の試薬が接着層に触れて劣化する虞がある。
【0063】
実施形態6の分析容器101では、シール部材110を付設する部分に接着層108を設けることにより、シール部材110に接着層を設けなくても分析容器101に付設することができる。このため、分析容器101に収容した試薬がシール部材110の接着層に接触して劣化することを防止できる。
【0064】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、土壌成分の分析等、検体液を複数の試薬と反応させて自動分析を行うための分析容器とその分析装置の全般に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
101 分析容器
102 分析セル
103 注入口
104 測定室
105 流路
106 試薬
107 回転軸
108 接着層
109 リブ
110 シール部材
111 シール部材
112 シール部材
120 シール部材
121 第1の接着層
122 剥離層
123 第2の接着層
124 基材
150 分析装置
160 回転機構
170 検体液供給機構
180 計測部
181 発光部
182 測光部
190 検体液供給行否決定部
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