【実施例】
【0021】
本発明の実施例、比較例では、特に断りがない限り次のI.のように調製した酵素液を用いた。また、次のII.の評価基準に従い、製造した軟質化キノコを評価した。
【0022】
I.酵素液の調製
1)キチナーゼ溶液
Streptomyces属由来のキチナーゼを、その含有量が1wt%となるように0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶解して、キチナーゼ溶液を調製した。
2)プロテアーゼ溶液
Aspergillus属由来のプロテアーゼを、その含有量が1wt%となるように脱イオン水に溶解して、プロテアーゼ溶液を調製した。
3) パパイン溶液
パパインを、その含有量が1wt%となるように脱イオン水に溶解して、パパイン溶液を調製した。
4)グルカナーゼ溶液
Streptomyces属由来のグルカナーゼを、その含有量が1wt%となるように脱イオン水に溶解して、グルカナーゼ溶液を調製した。
5)セルラーゼ溶液
Trichoderma属由来のセルラーゼを、その含有量が1wt%となるように脱イオン水に溶解して、セルラーゼ溶液を調製した。
6)混合酵素液A
セルラーゼ・ヘミセルラーゼ・ペクチナーゼ・プロテアーゼの活性を有する混合製剤を、その含有量が2wt%となるように脱イオン水に溶解して、混合酵素液Aを調製した。
7)混合酵素液B
パパインの含有量が1wt%となるように、また、Penicillium属由来のリパーゼの含有量が0.5wt%となるようにそれぞれ脱イオン水に溶解して、混合酵素液Bを調製した。
8)混合酵素液C
パパインの含有量が1wt%となるように、また、Rhizopus属由来のペプチターゼの含有量が0.5wt%となるようにそれぞれ脱イオン水に溶解して、混合酵素液Cを調製した。
9)混合酵素液D
パパインの含有量が1wt%となるように、また、Aspergillus属由来のアミラーゼの含有量が0.5wt%となるようにそれぞれ脱イオン水に溶解して、混合酵素液Dを調製した。
10)混合酵素液E
パパインの含有量が1wt%となるように、また、Streptomyces属由来のキチナーゼの含有量が1wt%となるようにそれぞれ脱イオン水に溶解して、混合酵素液Eを調製した。
【0023】
II.評価基準
1. 官能評価
実施例、比較例で製造した軟質化キノコについて、官能試験により、舌で潰せるかたさかどうかという点を次の基準に従って評価した。
即ち、官能試験では、軟質化キノコを咀嚼する時に「舌のみで潰せるか」または「歯による咀嚼が必要か」という点と、「舌のみで潰せる」場合に「潰すことによって生じた軟質化キノコの破片も潰しきることができるか」という点に着目し、咀嚼した際に感じられたかたさを、次の5段階の基準に従って評価した。
<評価基準>
5:咀嚼時に、舌で非常に潰しやすく、潰しきれない破片が全く残らなかった
4:咀嚼時に、舌で潰しやすく、潰しきれない破片があまり残らなかった
3:咀嚼時に、舌で潰せて、歯は必要なかった
2:咀嚼時に、舌で少し潰せたが、咀嚼に歯が必要だった
1:咀嚼時に、舌で全く潰せず、咀嚼に歯が必要だった
【0024】
上記官能試験はパネラー10名により行った。上記の評価結果から10名の平均値を算出して次の評価基準に当てはめ、最終的な評価とした。最終的な評価がC以上のものを、本発明の「舌でつぶせる軟らかさを有する軟質化キノコ」とした。
<最終的な評価基準>
A:4.5以上5.0以下
B:3.5以上4.5未満
C:2.5以上3.5未満
D:1.5以上2.5未満
E:1.0以上1.5未満
【0025】
2. 形状保持性
実施例、比較例で製造した軟質化キノコの外観および形状崩壊度合について、軟質化前のキノコと比較観察して、形状保持性を次の5段階の基準に従って評価した。
<評価基準>
5:外観に変化が認められない
4:外観に僅かな変化が認められるものの、キノコの自然な形状を維持している
3:外観にやや変化が認められるものの、キノコの自然な形状の範囲内とみなすことができる
2:外観に変化が見られるとともに、キノコの形状が明らかに崩壊している
1:外観に顕著な変化が認められるとともに、キノコの形状がひどく崩壊している
【0026】
上記評価はパネラー10名により行った。上記の評価結果から10名の平均値を算出して次の評価基準に当てはめ、最終的な評価とした。最終的な評価がC以上のものを、本発明の「本来のキノコの形状を保ったまま」であるとした。
<最終的な評価>
A:4.5以上5.0以下
B:3.5以上4.5未満
C:2.5以上3.5未満
D:1.5以上2.5未満
E:1.0以上1.5未満
【0027】
3. 圧縮応力の測定
実施例、比較例で製造した軟質化キノコの圧縮応力は、「特別用途食品の表示許可等について(平成23年6月23日付け消食表第277号)」(消費者庁)の規定する「4.えん下困難者用食品の試験方法」における「(1)硬さ、付着性、凝集性の試験方法」に従い、次の方法で測定した。
即ち、レオメーター(山電(株)製、RE2−33005S)を用いて、直径20mmの円筒形プランジャーを圧縮速度10mm/秒で、軟質化キノコの上端から厚さの66.67%まで押し込み、下端の部分が33.33%残存するようにクリアランスを設定して、圧縮応力(N/m
2)を測定した。なお、ここでクリアランスとは、最大に試料を圧縮した時のプランジャーの先端からゼロ点(すなわち、試料の下端)までの距離をいう。また、測定温度は20±2℃とした。
【0028】
実施例1
<軟質化シイタケの製造>
前処理:市販の生鮮シイタケ(岩手県産)(生鮮重量で100g)を、柄はカットして除去し、傘の部分と柄の根本が5mm程度残った状態にしたものを軟質化するキノコとした。
工程A:前処理をしたシイタケを5%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、シイタケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たシイタケをキチナーゼ溶液500gに浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、キチナーゼ溶液を除き、50℃で3時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化シイタケを得た。
【0029】
[比較例]
次の1a〜1fにより、シイタケについて軟質化を試みた。1e以外は実施例1と同様に前処理したシイタケを用いた。
比較例1a
実施例1の工程Aにおいて、5%クエン酸溶液(pH1.5)を水に代えた以外は、実施例1と同様の工程を経て、軟質化シイタケを得た。
【0030】
比較例1b
特許文献1(国際公開第2009/044538号パンフレット)の実際例1を参考に、加熱した後冷凍したシイタケを酵素液に浸漬して解凍し、減圧した後、酵素反応・失活を行うことで軟質化を試みた。
即ち、シイタケを100℃で10分加熱した後凍結した。これをキチナーゼ溶液に浸漬して50℃で1時間加温して解凍し、さらに2,000Paの減圧下で15分間置くことで、酵素液を含浸させた。その後、50℃で2時間加温静置して、酵素反応を行った後、酵素液を除き、90℃10分の加熱で酵素失活を行うことで、軟質化シイタケを得た。
【0031】
比較例1c
特許文献2(特開2011−160763号公報)の実施の形態1を参考に、加熱乾燥したシイタケを酵素液に浸漬し、減圧した後、酵素反応・失活を行うことで軟質化を試みた。
即ち、シイタケを120℃で10分加熱して乾燥させ、室温まで冷ました。これをキチナーゼ溶液に浸漬して、2,000Paの減圧下で15分間置くことで酵素液を含浸させた。その後、50℃で3時間加温静置して、酵素反応を行った後、酵素液を除き、90℃10分の加熱で酵素失活を行うことで、軟質化シイタケを得た。
【0032】
比較例1d
特許文献3(特開2008−187908号公報)の実施例1を参考に、シイタケを誘電加熱した後酵素液に浸漬し、減圧した後、酵素反応・失活を行うことで軟質化を試みた。
即ち、シイタケを電子レンジで750W、60秒で加熱し、室温まで冷ました。これをキチナーゼ溶液に浸漬して、さらに2,000Paの減圧下で15分間置くことで、酵素液を含浸させた。その後、50℃で3時間加温静置して、酵素反応を行った後、酵素液を除き、90℃、10分の加熱で酵素失活を行うことで、軟質化シイタケを得た。
【0033】
比較例1e
特許文献4(特開平9−275927号公報)の実施例1を参考に、シイタケをミキサーに掛けながら酵素反応させ、その後失活を行うことで軟質化を試みた。
即ち、実施例1と同様に前処理したシイタケをさらに5mm角に刻んだ。
これにシイタケと同重量のキチナーゼ溶液を添加して、卓上型ミキサー(タイガー魔法瓶(株)製、SKP−B701)にて常温で4時間撹拌混合し、酵素反応を行った。その後90℃、10分の加熱で酵素失活を行うことで、粥状の軟質化シイタケを得た。
【0034】
比較例1f
特許文献5(特開2011−236183号公報)の実施例6を参考に、シイタケを酢酸溶液に添加した後、35℃で16時間保温し、水にて十分洗浄することで軟質化を試みた。
即ち、シイタケを酢の原液(穀物酢(ミツカン)、酸度4.2%)に浸漬し、35℃で16時間加温静置した。その後、水で3回洗浄して、軟質化シイタケを得た。
【0035】
実施例1、比較例1a〜1fにて得た軟質化シイタケの官能評価、形状保持性の評価の結果および圧縮応力を表1に示した。
表1に示されるように、実施例1の製造方法によって、シイタケの形状を保持したままであり、かつ、舌でつぶせる軟らかさを有する軟質化シイタケが得られることが確認できた。また、圧縮応力も4×10
4N/m
2以下であった。
一方、比較例1a、1c、1dおよび1fにて製造した軟質化シイタケは、シイタケの形状は保持しているものの、舌では全く潰せず、圧縮応力も4×10
4N/m
2以下を達成しなかった。比較例1bにおいて製造した軟質化シイタケは、シイタケの形状を保持しており、比較例1a等のシイタケよりはやや軟らかかったものの、舌で潰せる軟らかさを有するものではなく、圧縮応力も4×10
4N/m
2以下を達成しなかった。比較例1eにおいて製造した軟質化シイタケは、舌でつぶす必要がないほど柔らかく、そのまま舌だけで食せるが、シイタケの形状は完全に失われていた。
従って、本発明の軟質化シイタケの製造にあたり、実施例1の製造方法のように、酸を含む溶液とキノコを接触させ、加熱する工程を経た後、酵素を処理する工程を経ることが重要であることが示された。
本発明の製造方法では、酸を含む溶液とキノコを接触させ、加熱する工程を経ることにより、酸加水分解反応等が起こり、キノコの菌糸等にダメージが与えられたことにより、酵素を処理する工程において、酵素がキノコに十分に作用し、本来のキノコの形状を保ったままであり、かつ、舌でつぶせる軟らかさを有する軟質化キノコが得られたものと考えられる。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2
<軟質化マッシュルームの製造>
市販の水煮スライスマッシュルーム((株)マルハニチロ食品)100gを軟質化するキノコとした(本実施例において、単にマッシュルームと示す場合がある)。
次の実施例2A〜2Hにて得た軟質化した各マッシュルームの官能評価および形状保持性の評価の結果を表2に示した。
【0038】
[実施例2A]
工程A:マッシュルームを1%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で1時間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、マッシュルームを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たマッシュルームをプロテアーゼ溶液500gに浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、プロテアーゼ溶液を除き、60℃で1時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化マッシュルームを得た。
【0039】
[実施例2B〜2F]
酸を含む溶液の検討
工程Aにおける酸を含む溶液を、それぞれ次の溶液に変更した以外は、前記実施例2Aと同様の工程を経て、軟質化マッシュルームを得た。
実施例2B:0.5%リン酸溶液(pH0.9)
実施例2C:2%リンゴ酸溶液(pH1.6)
実施例2D:2%乳酸溶液(pH1.7)
実施例2E:25%酢(酢の原液(穀物酢(ミツカン)、酸度4.2%)を、その含有量が25%となるように脱イオン水に溶解したもの)(pH2.8)
実施例2F:1Mクエン酸ナトリウム水溶液(pH4.5)
【0040】
[実施例2G、2H]
加熱条件の検討
工程Aにおける加熱する工程の加熱条件を、それぞれ次の条件に変更した以外は、前記実施例2Aと同様の工程を経て、軟質化マッシュルームを得た。
実施例2G:80℃、12時間
実施例2H:130℃、5分
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示されるように、実施例2A〜2Hの製造方法によって、マッシュルームの形状を保持したままであり、かつ、舌で潰せる軟らかさを有する軟質化マッシュルームが得られることが確認できた。
なお、実施例2Bの製造方法によって得られた軟質化マッシュルームの圧縮応力は9.4×10
3N/m
2であり、その他の製造方法によって得られた軟質化マッシュルームの圧縮応力も、いずれも4×10
4N/m
2以下であった。
【0043】
実施例3
<軟質化マッシュルームの製造>
市販の水煮スライスマッシュルーム((株)マルハニチロ食品)100gを軟質化するキノコとした(本実施例において、単にマッシュルームと示す場合がある)。
次の実施例3A〜3Gによって軟質化した各マッシュルームの官能評価および形状保持性の評価の結果を表3に示した。
【0044】
[実施例3A]
工程A:マッシュルームを1%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、マッシュルームを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たマッシュルームをパパイン溶液500gに浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、パパイン溶液を除き、50℃で1時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化マッシュルームを得た。
【0045】
[実施例3B〜3G]
酵素液の検討
工程Bにおける酵素液を、それぞれ次の溶液に変更した以外は、前記実施例3Aと同様の工程を経て、軟質化マッシュルームを得た。
実施例3B:グルカナーゼ溶液
実施例3C:セルラーゼ溶液
実施例3D:混合酵素液A(セルラーゼ・ヘミセルラーゼ・ペクチナーゼ・プロテアーゼ活性)
実施例3E:混合酵素液B(パパイン、リパーゼ)
実施例3F:混合酵素液C(パパイン、ペプチターゼ)
実施例3G:混合酵素液D(パパイン、アミラーゼ)
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示されるように、実施例3A〜3Gの製造方法によって、マッシュルームの形状を保持したままであり、かつ、舌で潰せる軟らかさを有する軟質化マッシュルームが得られることが確認できた。
この結果より、実施例3A〜3Cのように、1種類の酵素を含む酵素液を使用した製造方法においても、十分に軟質化されたマッシュルームが得られるが、2種類以上の酵素を混合するとさらに軟質化の効果が得られることが確認できた。
なお、実施例3Fの製造方法によって得られた軟質化マッシュルームの圧縮応力は7.7×10
3N/m
2であり、その他の製造方法によって得られた軟質化マッシュルームの圧縮応力も、いずれも4×10
4N/m
2以下であった。
【0048】
実施例4
キノコの種類の検討
様々な種類のキノコを軟質化するキノコとし、次の実施例4A〜4Kによって、軟質化を試みた。軟質化した各キノコの官能評価および形状保持性の評価の結果を表4に示した。
【0049】
1.混合酵素液Eを使用した軟質化キノコの製造
[実施例4A]
市販の生鮮マツタケ(岩手県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。マツタケの石突きを除去し、縦半分にカットしたものを軟質化した。
工程A:マツタケを10%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、130℃で1時間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、マツタケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たマツタケを混合酵素液E(500g)に浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、混合酵素液Eを除き、50℃で1時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化マツタケを得た。
【0050】
[実施例4B]
市販の生鮮エリンギ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。エリンギの石突きを除去し、縦半分にカットしたものを軟質化した。
工程A:エリンギを10%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、130℃で4時間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、エリンギを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たエリンギを混合酵素液E(500g)に浸漬し、以下、実施例4Aの工程Bと同様の工程を経て、軟質化エリンギを得た。
【0051】
2.プロテアーゼ溶液を使用した軟質化キノコの製造
[実施例4C]
市販の生鮮ブナシメジ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。ブナシメジの石突きを除去したものを軟質化した。
工程A:ブナシメジを2%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、ブナシメジを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たブナシメジをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、プロテアーゼ溶液を除き、60℃で1時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化ブナシメジを得た。
【0052】
[実施例4D]
市販の生鮮エノキダケ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。エノキダケの石突きを除去したものを軟質化した。
工程A:エノキダケを1%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、エノキダケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たエノキダケをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、以下、実施例4Cの工程Bと同様の工程を経て、軟質化エノキダケを得た。
【0053】
[実施例4E]
市販の生鮮マイタケ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。マイタケの石突きを除去したものを軟質化した。
工程A:マイタケを3%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で1時間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、マイタケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たマイタケをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、以下、実施例4Cの工程Bと同様の工程を経て、軟質化マイタケを得た。
【0054】
[実施例4F]
市販の生鮮ヒラタケ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。ヒラタケの石突きを除去したものを軟質化した。
工程A:ヒラタケを1%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、ヒラタケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たヒラタケをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、以下、実施例4Cの工程Bと同様の工程を経て、軟質化ヒラタケを得た。
【0055】
[実施例4G]
市販の生鮮ナメコ(長野県産)100g(生鮮重量)を軟質化するキノコとした。
工程A:ナメコを1%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、ナメコを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たナメコをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、以下、実施例4Cの工程Bと同様の工程を経て、軟質化ナメコを得た。
【0056】
[実施例4H]
市販の乾燥キクラゲ(中国産)を乾燥重量で10gを軟質化するキノコとした。
工程A:乾燥キクラゲを水戻しも兼ねて1%クエン酸溶液(pH1.5)中に2時間浸漬した後、酸溶液を除き、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、キクラゲを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たキクラゲをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、以下、実施例4Cの工程Bと同様の工程を経て、軟質化キクラゲを得た。
【0057】
3.軟質化シイタケの製造
[実施例4I]
市販の乾燥シイタケ(大分県産)10g(乾燥重量)を軟質化するキノコとした。これを2時間浸漬して水戻しした後、石突きを除去したものを軟質化した。
工程A:水戻ししたシイタケを10%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で1時間の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、シイタケを室温まで冷ました。
工程B:上記A.の工程を経たシイタケをプロテアーゼ溶液(500g)に浸漬し、16時間冷蔵して酵素を浸透させた。その後、プロテアーゼ溶液を除き、60℃で1時間加温することにより、酵素反応を行った。次いで、90℃で10分加熱して酵素失活を行い、軟質化シイタケを得た。
【0058】
[実施例4J]
実施例1と同様に前処理したシイタケを沸騰水中で10分茹で、水を切った後、冷凍した冷凍シイタケを軟質化するキノコとした。
工程A:冷凍シイタケを5%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、シイタケを室温まで冷ました。
工程B:実施例4Iの工程Bと同様の工程を経て、軟質化シイタケを得た。
【0059】
[実施例4K]
市販の調味済みシイタケ(「椎茸の含め煮」、イチビキ(株))を軟質化するキノコとした。
工程A:調味済みシイタケを5%クエン酸溶液(pH1.5)中に浸漬し、そのままの状態で、120℃で30分の加熱条件で加熱した。その後、クエン酸溶液を除き、シイタケを室温まで冷ました。
工程B:実施例4Iの工程Bと同様の工程を経て、軟質化シイタケを得た。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示されるように、実施例4A〜4Kの製造方法によって、様々なキノコにおいて、そのキノコの形状を保持したままであり、かつ、舌で潰せる軟らかさを有する軟質化キノコが得られることが確認できた。
また、各製造方法によって得られた軟質化キノコの圧縮応力は、軟質化ブナシメジが1.2×10
4N/m
2(実施例4C)、軟質化エノキダケが3.8×10
3N/m
2(実施例4D)、軟質化マイタケが2.0×10
4N/m
2(実施例4E)、軟質化ヒラタケが1.8×10
4N/m
2(実施例4F)、軟質化シイタケが3.1×10
4N/m
2(実施例4I)であり、その他の製造方法によって得られた軟質化キノコの圧縮応力も、いずれも4×10
4N/m
2以下であった。