(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0012】
(実施形態)
図1は、本発明によるミシンの圧縮空気供給装置の実施形態を示す図である。
図2は、圧縮空気供給装置の分解斜視図である。
なお、
図1及び
図2を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
また、理解を容易にするため、及び、説明の便宜上、
図1中に矢印により示した左、右、上、下の向きを適宜用いて説明を行う。ただし、これらの向きは、発明の構成を限定するものではない。
【0013】
本実施形態の圧縮空気供給装置は、ミシン本体(図示せず)又はユニット台1に組み込まれている。
エアポンプユニット(エアポンプ部)2は、エアポンプ3とピストン4から構成され、エアポンプ3の内周面3aと嵌合するピストン4の外周面4aには溝4bが設けてあり、Oリング5が嵌め込まれている。エアポンプユニット2は、エアポンプ3内のピストン4の往復運動により圧縮空気を発生させる。
Oリング5は、ピストン4の往復動において、エアポンプ3の内周面3aとピストン4の外周面との摺動面からの空気漏れを防止する。
また、エアポンプ3は、その上端に貫通穴3dを有しており、ブッシュ9を挿入してねじ10によりエアポンプ取付板11に揺動自在に保持されている。
【0014】
エアポンプ3は、排気口31と吸気口32とを有しており、排気口31には、小球6を収めた逆止弁7がねじ結合されている。吸気口32には、同じく小球6を収めた逆止弁8がねじ結合されている。
チューブ12は、一端12aが逆止弁7に結合し、他端12bが糸搬送機構(図示せず)の入口に結合している。よって、エアポンプユニット2が発生させた圧縮空気は、チューブ12を介して糸搬送機構に導入される。
逆止弁7と逆止弁8とは、エアポンプ3の吸気作用と排気作用を規制しており、エアポンプ3がピストン4の往復動に応じて吸気と排気を行うときに、排気は糸搬送機構側だけに向かい、吸気は糸搬送機構側からは行わない。
【0015】
図3は、吸気時における吸気口32の断面図である。
吸気時は、ピストン4の下降により、エアポンプ3の吸気口32にねじ固定された逆止弁8内に挿入された小球6は、吸気口32の奥方向に吸引されてリブ32aに当たって停止する。その際、外気は、隙間32bを抜けてエアポンプ3内に流入してくることになる。
【0016】
図4は、吸気時における排気口31の断面図である。
吸気時の排気口31では、排気口31にねじ固定された逆止弁7内に挿入された小球6は、同じくピストン4の下降により排気口31の奥方向に吸引されて排気口座面31aで停止させられ、外気の流入を防ぐ。逆止弁7は、他端にチューブ12を結合しておりチューブ12を介して糸搬送機構に通じているので、ピストン4の下降時に、糸搬送機構側から空気を吸引する作用は発生しないことになる。すなわち、糸搬送経路に挿入された糸を引き戻すような空気流は吸気時に発生しない。
【0017】
図5は、排気時における排気口31の断面図である。
次に、排気時は、ピストン4の上昇により、排気口31の小球6は、逆止弁7の方向に押し出され、逆止弁7のリブ7aに当たって停止する。その際、エアポンプ3内の空気は、隙間7bを抜けて外部へ排気されることになる。逆止弁7は、チューブ12により糸搬送機構に通じているので、エアポンプ3内の空気は、糸搬送機構に流入していく。
【0018】
図6は、排気時における吸気口32の断面図である。
排気時の吸気口32では、吸気口32の小球6は、同じくピストン4の上昇により逆止弁8の方向に押し出され、逆止弁8の吸気口座面8aで停止させられ、エアポンプ3内の空気の流出を防ぐ。
以上のように、ピストン4の下降時には、外気が吸気口32からのみ流入し、ピストン4の上昇時には、エアポンプ3内の空気は、排気口31からのみ排気されることになる。
【0019】
図1及び
図2に戻って、ピストン4の下端には、ピストン連結板13がピストン4に対して揺動自在に取付けられている。具体的には、ピストン4の下端には、貫通穴4cが設けられており、この貫通穴4cにブッシュ9を挿入してねじ10を用いてピストン連結板13の一端にピストン4が揺動自在に取付けられている。ピストン連結板13の他端には受け部13aが形成され、ピストン駆動軸14の一端がねじ15により固定されている。このような構成により、ピストン連結板13は、ピストン駆動軸14と一体となって回動するように設けられており、ピストン4とピストン駆動軸14とを連結し、ピストン駆動軸14の回動をピストン4の往復動としてピストン4に伝達する。
【0020】
ピストン駆動軸14は、ミシン本体又はユニット台1に回転自在に保持されている。ピストン駆動軸14は、ピストン連結板13と、ピストン駆動腕16と、ピストン復帰腕18とを軸上に固定している。 ピストン駆動軸14と、ピストン連結板13と、ピストン駆動腕16と、ピストン復帰腕18とは、ピストン駆動軸部として一体となってピストン駆動軸14を中心に揺動可能である。
【0021】
ピストン駆動軸14の中間部には、ピストン駆動腕16が固定されている。ピストン駆動腕16の一端には、ばね掛け16aが設けられ、他端には、ストッパ受け面16bが形成されている。ばね掛け16aには、ピストン駆動ばね17の一端が係合しており、ピストン駆動ばね17の他端は、ミシン本体の適宜の位置に保持されている。この構成により、ピストン駆動軸14は、ミシン右側面から見て常時反時計方向に付勢されている。よって、ピストン駆動軸14及びピストン連結板13を介してピストン4は、常時上昇方向、すなわち、エアポンプユニット2が排気を行う方向に付勢されている。
【0022】
ピストン駆動ばね(ピストン付勢部)17は、ピストン駆動腕16のばね掛け16aに係合しており、ピストン4をエアポンプ3内に押し込む動力源となる。
【0023】
ピストン駆動腕16は、ピストン駆動軸14に固定されており、ピストン駆動軸14を中心に回動する。ピストン駆動腕16は、一端にばね掛け16aを有してピストン駆動ばね17を係合しており、その付勢力によりピストン駆動軸14を回動することでピストン4の押し込み動作を行う。
ピストン連結板13及びピストン駆動腕16は、ピストン駆動ばね(ピストン付勢部)17の付勢力をピストン4に伝える駆動腕部としての機能を有している。ピストン連結板13とピストン駆動腕16とは、本実施形態のように別部品により構成してもよいが、これらをまとめて1部品により構成してもよい。
【0024】
ピストン復帰腕(ピストン復帰腕部)18は、ピストン駆動軸14に固定されており、レバー20の動作をピストン駆動軸14に伝達する。ピストン復帰腕18は、レバー20の動作をピストン駆動軸14に伝達することにより、ピストン4の押し込み状態から吸気状態に復帰させる。ピストン復帰腕18は、後述の中間腕21のリードカム面(カム部)21bにより右側面から見て時計回りに押し上げられた後、リードカム面21bから外れて一気に反時計回り(右側面から見て)に回動することにより、ピストン4を押し込み、エアポンプ3を排気状態に変化させる。
【0025】
レバー軸19は、ミシン本体又はユニット台1に回動自在に保持されている。レバー軸19の右端にはレバー20が、その左側には中間腕21が回動自在に挿入されており、レバー軸19の左端には中間腕ばね22が中間腕21をレバー20方向に付勢するように嵌装されている。
【0026】
中間腕21は、レバー軸19に回転自在に保持されており、レバー20からピストン復帰腕18への動力を受け渡しする部材であり、リードカム面21bによってピストン復帰腕18を回動させる。
また、中間腕21は、レバー20とラチェット結合しており、ミシン右側面から見てレバー20を反時計回りに回動させた時、中間腕21は、第1の嵌合位相でレバー20と嵌合して共に右側から見て反時計回りに回動する。これによりピストン復帰腕18を復帰方向に回動させる。一方、レバー20を右側から見て時計回りに回動させたときには、中間腕ばね22に抗して中間腕21は、左側へ変位させられ、次にレバー20が第2の嵌合位相まで回動した時点で中間腕21は、中間腕ばね22に付勢されて右側へ復帰する。
【0027】
中間腕ばね22は、レバー20と中間腕21とのラチェット結合において、中間腕21を常時、レバー20側に付勢することにより中間腕21がレバー軸19上を左右に変位することを可能にしている。
【0028】
レバー20は、レバー軸19の右端に回動自在に保持されており、利用者によって操作されることによりエアポンプユニット2に吸気動作を行わせる操作部材である。レバー20は、レバー軸19上で、中間腕21とラチェット結合しており右側から見て時計回りと反時計回りの1往復動作でピストン4を吸気から排気へと動作させる。
【0029】
レバーストッパ1aは、レバー20を操作して排気が完了したとき、右側から見て反時計回り操作の終了位置でレバー20を安定保持するためのピンである。レバーストッパ1aには、レバー20と一体的に形成された腕部フック20aが当接する。
【0030】
レバー20と、中間腕21と、中間腕ばね22とにより、レバー20の往復揺動により生じる回転のうちの一方向の回転のみを出力するラチェット機構が形成されている。そして、これらレバー20と、中間腕21と、中間腕ばね22と、ピストン復帰腕18と、ピストン駆動軸14と、ピストン駆動腕16と、ピストン連結板13とにより、操作力伝達機構が構成されている。この操作力伝達機構は、レバー(操作部)20による操作力によってピストン駆動ばね(ピストン付勢部)17の付勢力に抗してエアポンプユニット(エアポンプ部)2が空気を吸気する向きである吸気方向にのみピストン4を作動させるように操作力をピストン4へ伝える。
【0031】
ここで、レバー20と中間腕21とのラチェット結合部分の動作について説明する。
図7は、レバー20の動作範囲下死点にあたり、糸通し操作を終了したレバー20の停止状態を示す図である。
図8は、
図7の状態における歯部20bと歯部21aとの係合部を円周方向に沿って展開して示した断面図である。
この
図7,
図8の状態は、レバー20の動作範囲下死点にあたり、糸通し操作を終了したレバー20の腕部フック20aがユニット台1のレバーストッパ1aに当接して保持された状態を示す。この状態では、レバー20の歯部20bは、中間腕21の歯部21aと噛み合った状態にあり、中間腕ばね22により中間腕21は、レバー20側に付勢されている。
【0032】
図9は、糸通し操作を実施するためのレバー20の駆動準備状態を示す図である。
図10は、
図9の状態における歯部20bと歯部21aとの係合部を円周方向に沿って展開して示した断面図である。
図11は、
図10の状態からさらに駆動が進んだ状態を示す図である。
図9から
図11に示した状態では、レバー20が
図1中に示した矢印C方向に回動している状態である。
図10では、中間腕21の歯部21aの斜面をレバー20の歯部20bの斜面が登っている状態を示している。この状態において、中間腕21は、レバー20に押されるため中間腕ばね22に抗して左側に押し出される。レバー20をさらにC矢印方向に回動し続けると、
図11に示した状態となり、レバー20の歯部20bは中間腕21の歯部21aを登り切り、中間腕21の次の歯部に嵌合することになる。
【0033】
図12は、糸通し操作のためのレバー20の駆動が可能な状態を示す図である。
図13は、
図12の状態における歯部20bと歯部21aとの係合部を円周方向に沿って展開して示した断面図である。
図12,
図13の状態は、準備が終了し、糸通し操作のためのレバー20の駆動が可能な状態である。この状態では、レバー20の歯部20bが中間腕21の歯部21aの次のステップの歯との噛み合いが一致し、中間腕21が中間腕ばね22により再びレバー20側に移動して、
図1の矢印D方向にレバー20を回動が可能である。レバー20の歯部20bと中間腕21の歯部21aとが嵌合したので、レバー20を矢印D方向に回動すると、中間腕21は、ミシン右側から見て反時計方向に回動する。
【0034】
次に、糸通し操作のためのレバー20の駆動に伴うピストン4の挙動を説明する。
図14から
図19は、レバー20とピストン4との動作を説明する図である。これらの図は、
図14から
図19の状態まで、図番号の順に動作が進んで行くものとする。
【0035】
図12,
図13の状態から、レバー20を
図1の矢印D方向に回動を開始した時点では、
図14に示すように、ピストン復帰腕18先端が中間腕21のリードカム面21bの最小径部に当接している。また、ピストン駆動腕16は、ピストン駆動ばね17により図中の反時計回りに付勢されてピストン駆動腕ストッパ23に当たって停止している。このピストン駆動腕ストッパ23により、ピストン4の排気動作ストロークを規制している。
【0036】
図14の状態から
図15の状態に進むと、レバー20が回動して、ピストン駆動ばね17に抗してピストン復帰腕18の先端を中間腕21のリードカム面21bの中間径部まで押し上げる。これにより、ピストン4が降下してエアポンプ3は吸気動作を進めている。
【0037】
図15の状態から
図16の状態に進むと、レバー20がさらに回動して、ピストン復帰腕18の先端は、中間腕21のリードカム面21bの最大径部に達している。これにより、ピストン4は、最下点に達してエアポンプ3も最大吸気状態に達する。
【0038】
図16の状態から
図17の状態に進むと、レバー20が
図16の状態から僅かに回動した瞬間にピストン復帰腕18の先端は、中間腕21のリードカム面21bから脱落して、ピストン駆動ばね17の付勢力により一気に次のリードカム面の最小径部に落下する。これにより、ピストン4も一気に上昇し、エアポンプ3は、一気にエアポンプ3内空気を排出する。すなわち、糸搬送機構に圧縮空気が一気に流入して糸を搬送する。
【0039】
図18の状態は、次の糸通し操作のためにレバー20を
図1の矢印C方向に回動してレバー20の歯部20bが中間腕21の次の歯部21aに噛み合った状態である。ピストン復帰腕18の先端が中間腕21の背面21dに当たり中間腕21の回動を妨げることにより、レバー20と中間腕21とのクラッチ結合を円滑に実施させている。すなわち、
図12,
図13の状態に相当する。
【0040】
図19の状態は、
図18の状態からレバー20の回動を反転して
図1の矢印D方向に僅かに回動し、中間腕21の先端21cにレバー20の先端20cが当接している状態を示している。また、ピストン復帰腕18の先端も中間腕21のリードカム面21bの最小径部に当接している。すなわち、
図14の状態に戻ったことになり、次の糸通し操作が可能になる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、圧縮空気供給装置は、コンプレッサやモータ等を用いることなく手動レバーの操作により安価で、かつ、一定の駆動力でエアポンプユニットを駆動することができる。よって、本実施形態の圧縮空気供給装置は、利用者の操作の仕方によらずに、安定して圧縮空気を供給することができる。
また、本実施形態の圧縮空気供給装置は、電動機等の使用による駆動音の発生もなく、快適に利用可能である。
【0042】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0043】
本実施形態において、ラチェット機構を利用して、レバー20の一方向の操作のみをピストン4に伝える例を挙げて説明した。これに限らず、操作部材の一方向の操作のみをピストンに伝えることができれば、どのような機構を利用してもよい。例えば、既知のワンウェイクラッチの機構を応用してもよい。
【0044】
また、本実施形態において、揺動操作されるレバー20を操作部材とした圧縮空気供給装置の例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、回転操作される操作部材を圧縮空気供給装置に用いてもよい。
【0045】
また、本実施形態において、手動により操作されるレバー20を操作部材とした圧縮空気供給装置の例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、モータやソレノイド等を用いて電動により操作される操作部材を本発明に適用してもよい。電動の場合にも、圧縮空気供給装置は、ばね力を利用してピストン4を排気方向に付勢することにより、簡単な構成であっても安定した圧縮空気を供給することができる。
【0046】
なお、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。