特許第6429500号(P6429500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許6429500光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法
<>
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000002
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000003
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000004
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000005
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000006
  • 特許6429500-光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429500
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20181119BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
   H04N5/232 480
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-109344(P2014-109344)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-18225(P2015-18225A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-125726(P2013-125726)
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】今田 信司
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−228644(JP,A)
【文献】 特開2012−208336(JP,A)
【文献】 特開2010−041127(JP,A)
【文献】 特開平10−073860(JP,A)
【文献】 特開2012−015641(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0157071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第1の像ぶれ補正ユニットと、
第2の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第2の像ぶれ補正ユニットを有する光学機器であって、
前記光学機器に加わるぶれを検出するぶれ検出部と、
前記光学機器によって撮影された複数の画像間の動きベクトルを算出する動きベクトル算出部と、
撮影動作の指示を行うレリーズスイッチとを有し、
前記第1の像ぶれ補正ユニットは、前記ぶれ検出部が検出したぶれ信号に基づいて像ぶれを補正し、
前記動きベクトル算出部は、前記第1の像ぶれ補正ユニットによって像ぶれが補正された複数の画像を用いて動きベクトルを算出し、
前記第2の像ぶれ補正ユニットは、前記動きベクトル算出部が算出した動きベクトルに基づいて像ぶれを補正し、
前記光学機器の起動中かつ前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示される前には、前記第1の像ぶれ補正ユニットと前記第2の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行い、
前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示されると、前記第2の像ぶれ補正ユニットは前記撮影動作の指示がされる前に算出された動きベクトルに基づいて定められた位置に前記第2の像ぶれ補正レンズを保持し、前記第1の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行うことを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記ぶれ検出部は、前記光学機器の角速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記ぶれ検出部は、前記光学機器の加速度を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記光学機器は、カメラと該カメラに着脱可能な交換レンズを有するカメラシステムであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項5】
カメラに着脱可能であり、前記カメラとの通信が可能な交換レンズであって、
第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第1の像ぶれ補正ユニットと、
第2の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第2の像ぶれ補正ユニットと、
前記交換レンズに加わるぶれを検出するぶれ検出部と、を有し、
前記カメラは、撮影動作の指示を行うレリーズスイッチを有し、かつ、前記第1の像ぶれ補正ユニットによって像ぶれが補正された複数の画像間の動きベクトルを算出して、該動きベクトルに関する情報を前記交換レンズに送信し、
前記第1の像ぶれ補正ユニットは、前記ぶれ検出部が検出したぶれ信号に基づいて像ぶれを補正し、
前記第2の像ぶれ補正ユニットは、前記カメラから受信した動きベクトルに関する情報に基づいて像ぶれを補正し、
前記光学機器の起動中かつ前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示される前は、前記第1の像ぶれ補正ユニットと前記第2の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行い、
前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示されると、前記第2の像ぶれ補正ユニットは前記撮影動作の指示がされる前に算出された動きベクトルに基づいて定められた位置に前記第2の像ぶれ補正レンズを保持し、前記第1の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行うことを特徴とする交換レンズ。
【請求項6】
光学機器の起動中、かつレリーズスイッチを介して撮影動作の指示を受ける前に、像ぶれ補正を行う第1ステップと、
前記撮影動作の指示を受けた後に、像ぶれ補正を行う第2ステップとを有し、
前記第1ステップは、
前記光学機器に加わるぶれを検出したぶれ信号に基づいて第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正するステップと、
前記第1の像ぶれ補正レンズを移動させることにより像ぶれが補正された複数の画像を用いて動きベクトルを算出するステップと、
前記算出した動きベクトルに基づいて第2の像ぶれ補正レンズを移動させることにより像ぶれ補正を行うステップとを含み、
前記第2ステップは、
前記撮影動作の指示がされる前に算出された動きベクトルに基づいて定められた位置に前記第2の像ぶれ補正レンズを保持するステップと、
前記光学機器に加わるぶれを検出したぶれ信号に基づいて前記第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正するステップとを有することを特徴とする像ぶれ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ぶれを良好に補正することができる光学機器、交換レンズ及び像ぶれ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置には、撮像装置に加えられた振動(ぶれ)により発生する、撮影画像のぶれ(像ぶれ)を補正する機能が備えられている。像ぶれを補正する方法として、光学式ぶれ補正が知られている。
【0003】
光学式ぶれ補正は、撮像装置に加えられた振動を検出し、検出された振動に応じて、撮像素子に結像される像の位置を、撮影光学系に対して移動させるものである。これにより、撮像素子に結像される像の像ぶれを補正することができる。
【0004】
ぶれを検出する方法としては、角速度センサや加速度センサ等を用いて撮影装置のぶれを検出する方法や、撮影した画像から画像の動きを算出し、被写体の動きを差し引いた信号を撮像装置のぶれとして算出する方法等が存在する。
【0005】
特許文献1に記載の像ぶれ補正装置は、光学式ぶれ補正を実施する機能を有した光学機器が組み合わされたときに、各光学機器における光学式ぶれ補正処理を適切な割合で制御することにより、ぶれ補正が可能な範囲を拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−104338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の像ぶれ補正装置では、光学式ぶれ補正機構を備える複数の光学機器を組み合わせて、複数の光学式ぶれ補正機構を同時に制御しているため、像ぶれを補正する制御が複雑になる。そのため、像ぶれを過度に補正したり、像ぶれを十分に補正できない、という問題が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、複数の光学式ぶれ補正機構を組み合わせて像ぶれを補正する際にも、像ぶれを良好に補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学機器は、第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第1の像ぶれ補正ユニットと、第2の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第2の像ぶれ補正ユニットを有する光学機器であって、前記光学機器に加わるぶれを検出するぶれ検出部と、前記光学機器によって撮影された複数の画像間の動きベクトルを算出する動きベクトル算出部と、撮影動作の指示を行うレリーズスイッチとを有し、前記第1の像ぶれ補正ユニットは、前記ぶれ検出部が検出したぶれ信号に基づいて像ぶれを補正し、前記動きベクトル算出部は、前記第1の像ぶれ補正ユニットによって像ぶれが補正された複数の画像を用いて動きベクトルを算出し、前記第2の像ぶれ補正ユニットは、前記動きベクトル算出部が算出した動きベクトルに基づいて像ぶれを補正し、前記光学機器の起動中かつ前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示される前には、前記第1の像ぶれ補正ユニットと前記第2の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行い、前記レリーズスイッチによって撮影動作が指示されると、前記第2の像ぶれ補正ユニットは前記撮影動作の指示がされる前に算出された動きベクトルに基づいて定められた位置に前記第2の像ぶれ補正レンズを保持し、前記第1の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれ補正を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の交換レンズは、カメラに着脱可能であり、前記カメラとの通信が可能な交換レンズであって、第1の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第1の像ぶれ補正ユニットと、第2の像ぶれ補正レンズを移動させることによって像ぶれを補正する第2の像ぶれ補正ユニットと、前記交換レンズに加わるぶれを検出するぶれ検出部と、を有し、前記カメラは、前記第1の像ぶれ補正ユニットによって像ぶれが補正された複数の画像間の動きベクトルを算出して、該動きベクトルに関する情報を前記交換レンズに送信し、前記第1の像ぶれ補正ユニットは、前記ぶれ検出部が検出したぶれ信号に基づいて像ぶれを補正し、前記第2の像ぶれ補正ユニットは、前記カメラから受信した動きベクトルに関する情報に基づいて像ぶれを補正することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の像ぶれ補正方法は、光学機器に加えられるぶれを検出するステップと、検出されたぶれに基づいて、光学機器によって撮像された複数の画像の像ぶれを補正するステップと、像ぶれが補正された複数の画像間の動きベクトルを算出するステップと、算出された動きベクトルに基づいて像ぶれを補正するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の光学式ぶれ補正機構を組み合わせて像ぶれを補正する際にも、像ぶれを良好に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るカメラシステムのブロック図
図2】第1の実施形態に係る像ぶれ補正の動作を示すフローチャート
図3】第参考形態に係る像ぶれ補正の動作を示すフローチャート
図4】第参考形態に係る像ぶれ補正の動作を示すフローチャート
図5】第参考形態に係る像ぶれ補正の動作を示すフローチャート
図6】第の実施形態に係る像ぶれ補正の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るカメラシステムの構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係るカメラシステムは、カメラ本体101と交換レンズ102から構成される。被写体から出射された撮像光束は、交換レンズ102の撮影光学系を通過し、撮像素子103の受光面上で結像する。結像された被写体像は、撮像素子103によって光電変換され、電気信号として出力される。映像信号処理部104では、出力された電気信号に対して、信号増幅やA/D変換、フィルタ処理等の画像処理等を施す。また、映像信号処理部104では、主被写体の判別や動きベクトル量の算出が行われ、算出された動きベクトル量は、動きベクトル信号として、カメラ本体の制御を司るカメラMPU105に送信される。
【0016】
カメラMPU105は、通信ライン106を介して、交換レンズのレンズMPU107と通信を行う。このカメラと交換レンズの間の通信において、カメラ本体101から交換レンズ102へフォーカス駆動命令を送信し、カメラ本体101、交換レンズ102の動作状態や、絞り制御情報等の光学情報に関するデータの通信を行う。また、この通信において、映像信号処理部104で算出された動きベクトル信号が、カメラMPU105からレンズMPU107に送信される。
【0017】
交換レンズ102は、第1の像ぶれ補正レンズ108と第2の像ぶれ補正レンズ109を有する。第1の像ぶれ補正レンズ108は、ぶれ検出センサによって検出される、カメラシステムに加えられたぶれを補正するためのレンズである。第2の像ぶれ補正レンズ109は、動きベクトルに基づいて像ぶれを補正するためのレンズである。ここで、像ぶれの補正とは、像ぶれをすべて取り除くことだけでなく、像ぶれを低減することも含むものとする。
【0018】
交換レンズ102には、第1の像ぶれ補正レンズ108の移動量を検出する位置検出部110と、第1の像ぶれ補正レンズ108を駆動するための第1の駆動回路111が備えられている。以降、第1の像ぶれ補正レンズ108と位置検出部110と第1の駆動回路111を含む構成を、第1の像ぶれ補正ユニットと記載する。
【0019】
さらに、交換レンズ102には、カメラシステムに加えられるぶれを検出する角速度センサ114が備えられている。ここで、カメラシステムに加えられるぶれを検出する手段として、加速度センサを用いてもよい。
【0020】
また、交換レンズ102には、第2の像ぶれ補正レンズ109の移動量を算出するための位置算出部112と、第2の像ぶれ補正レンズ109を駆動するための第2の駆動回路113が備えられている。以降、第2の像ぶれ補正レンズ109と位置算出部112と第2の駆動回路113を含む構成を、第2の像ぶれ補正ユニットと記載する。
【0021】
続いて、具体的な像ぶれ補正の方法を以下に説明する。まず、角速度センサ114によって検出されたぶれを表すぶれ信号が、レンズMPU107に入力される。レンズMPU107は、第1の像ぶれ補正レンズ108の駆動目標位置を算出し、位置検出部110で検出された第1の像ぶれ補正レンズ108の位置と駆動目標位置の差分に基づいて、第1の像ぶれ補正レンズ108の駆動を指示する駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、第1の駆動回路111に出力され、第1の駆動回路111により、第1の像ぶれ補正レンズ108が駆動される。
【0022】
第1の像ぶれ補正レンズ108を駆動することにより、像ぶれの補正が行われるが、角速度センサ114におけるぶれ検出の誤差や、位置検出部110における位置検出の誤差等により、像ぶれが残存する。ここで、角速度センサ114で検出されない低周波成分の像ぶれも補正が行われず、像ぶれとして残存する。こうした像ぶれが残存する被写体像は、撮像素子103において撮像され、撮像信号は映像信号処理部104で処理される。残存する像ぶれは、撮影された複数の画像間の、映像の動きを示す動きベクトル量として算出される。映像信号処理部104は、動きベクトル量を算出する動きベクトル算出部として機能する。
【0023】
ここで、動きベクトル量の算出方法としては、相関法やブロックマッチング法などがある。ブロックマッチング法では、入力映像信号のフィールド(又はフレーム、以下同じ)を複数の適当な大きさのブロック(例えば、8×8ライン)に分割し、現フィールドの特定ブロックとの相関値が最小となる前フィールド中のブロックを検索する。ここで、相関値とは、例えば特定ブロックと前フィールドの探索ブロックの画素値(輝度値)の差の絶対値の和で示される。そして、相関値が最小である前フィールドのブロックと現フィールドの特定ブロックとの相対的なずれ量および方向を、特定ブロックの動きベクトルとして表す。このようにして算出される動きベクトルは、画素単位での垂直方向および水平方向それぞれの移動量を示す。この動きベクトルは、連続した撮像画像(フィールド画像又はフレーム画像)の単位時間当たりの移動量を示すものであり、連続した撮像画像の移動量に比例した値が得られる。
【0024】
このようにして算出された動きベクトル量は、カメラMPU105からレンズMPU107へ送信される。レンズMPU107は、動きベクトル量をもとに、第2の像ぶれ補正レンズ109の駆動目標位置を算出する。さらにレンズMPU107は、位置算出部112で算出された第2の像ぶれ補正レンズ109の位置と駆動目標位置の差分に基づいて、第2の像ぶれ補正レンズ109の駆動を指示する駆動信号を生成する。生成された駆動信号は、第2の駆動回路113に出力され、第2の駆動回路113により、第2の像ぶれ補正レンズ109が駆動される。
【0025】
以上、本実施形態に係るカメラシステムを構成する各部の機能について説明した。
【0026】
次に、図2のフローチャートを用いて、交換レンズ102側で実行される像ぶれの補正動作について説明する。なお、像ぶれ補正は、レンズMPU107において実行される処理であり、一定周期毎に発生するタイマー割り込みにより行われるものとする。以下の各ステップにおける動作は、レンズMPU107によって実行される。
【0027】
まず、S201において、角速度センサ114から出力された角速度信号をA/D変換する。S202では、A/D変換された角速度信号に対して、ハイパスフィルタ演算を行い、オフセット成分を除去する。S203では、ハイパスフィルタ演算の結果に対して、積分演算を行い、角速度信号を角変位信号に変換する。さらに、S204では、角変位信号をもとに、第1の像ぶれ補正レンズ108を駆動するための第1のレンズ駆動目標信号(SFTDRV1)を算出する。S205では、第1の像ぶれ補正レンズ108の位置を示す、位置検出部110の出力信号をA/D変換する。A/D変換の結果をSFTPST1と表す。S206では、目標信号(SFTDRV1)と位置検出部110の出力結果(SFTPST1)に関して、フィードバック演算(SFTDRV1−SFTPST1)を行う。演算結果は、SFT_DT1と表す。S207では、フィードバック演算結果(SFT_DT1)に対して、フィルタ処理などを行い、レンズ駆動用の信号を生成する。そしてS208において、レンズ駆動用の信号を駆動回路111へ出力し、第1の像ぶれ補正レンズ108を駆動させる。以上のように、検出したぶれ信号に基づいて、第1の像ぶれ補正レンズ108が駆動され、像ぶれの補正が実行される。
【0028】
続いて、動きベクトルを用いた像ぶれの補正動作について説明する。まず、S209において、カメラMPU105から受信した動きベクトルに関する情報を読み出す。S210では、動きベクトルをもとに、第2の像ぶれ補正レンズ109を駆動する、第2のレンズ駆動目標信号(SFTDRV2)を算出する。S211では、第2の像ぶれ補正レンズ109の位置を示す、位置算出部112の出力信号をA/D変換する。A/D変換の結果をSFTPST2と表す。S212では、目標信号(SFTDRV2)と位置算出部112の出力結果(SFTPST2)に関して、フィードバック演算(SFTDRV2−SFTPST2)を行う。演算結果は、SFT_DT2と表す。S213では、フィードバック演算結果(SFT_DT2)に対して、フィルタ処理などを行い、レンズ駆動用の信号を生成する。そしてS214において、レンズ駆動用の信号を駆動回路113へ出力し、第2の像ぶれ補正レンズ109を駆動させる。以上のように、カメラで算出した動きベクトルに基づいて、第2の像ぶれ補正レンズ109が駆動され、像ぶれの補正が実行される。
【0029】
以上説明したように、交換レンズ102が、第1の像ぶれ補正レンズ108と第2の像ぶれ補正レンズ109を有する場合、まず、交換レンズ102に備えられた角速度センサ114の出力に応じて、第1の像ぶれ補正レンズ108が駆動される。そして、カメラ本体101において、残存する像ぶれを動きベクトルとして算出し、動きベクトルに関する情報を交換レンズ102へ送信する。交換レンズ102は、受信した動きベクトルに応じて、第2の像ぶれ補正レンズ109を駆動する。このようにして、本実施形態において像ぶれを良好に補正している。
【0030】
本実施形態では、複数の像ぶれ補正ユニットをそれぞれ独立に制御して像ぶれの補正を行うことができるため、像ぶれ補正に関する制御が複雑になることを防止できる。また、像ぶれ補正に関する制御系を簡略化することにより、電力の消費を抑制し、制御系を構成するコストを減らすことができる。
【0031】
また、第1の像ぶれ補正ユニットにより像ぶれを十分に補正をすることができない場合には、第2の像ぶれ補正ユニットを用いて、さらなる像ぶれ補正を行うことができる。これにより大きな像ぶれも良好に補正することができる。
【0032】
(第参考形態)
次に、カメラの撮影モードに応じて像ぶれの補正方法を変更する、第2の実施形態について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
カメラシステムの構成は、第1の実施形態と同一である。本参考形態では、撮影モードにより、像ぶれ補正に関する制御を変更する。カメラ本体101に、撮影モードを設定する、不図示の撮影モード設定部が存在し、動画撮影を行う動画モードと、静止画撮影を行う静止画モードを切り替えることができる。ここで、撮影モード設定部は、ユーザが操作可能なスイッチ等の部材であってもよいし、カメラ本体101に内蔵され、音声等の指示により撮影モードを設定するものであってもよい。
【0034】
撮影モード設定部により、動画撮影モードに設定されたときは、像ぶれの影響が大きくなるため、第1の像ぶれ補正ユニットと、第2の像ぶれ補正ユニットの両方を用いて、像ぶれの補正を行う。一方、静止画撮影モードに設定されたときは、第1の像ぶれ補正ユニットのみにより、像ぶれの補正を行う。第1の像ぶれ補正ユニットと、第2の像ぶれ補正ユニットの両方を用いて像ぶれの補正を行うと光学収差が増大する。そこで、静止画を撮影する際は、撮影される画像の画質を優先するため、第1の像ぶれ補正ユニットのみにより像ぶれの補正を行う。
【0035】
図3のS301からS308までに示すレンズMPU107による動作は、図2のS201からS208までの動作と同一である。S309で、レンズMPU107により、カメラの撮影モードが動画撮影モードであるか静止画撮影モードであるかが判定される。レンズMPU107は、カメラMPU105から、設定された撮影モードに関する情報を受信することで、現在のカメラにおける撮影モードを認識することができる。
【0036】
撮影モードが動画モードに設定されていれば、S310以降のフローに移行する。S310からS315のレンズMPU107における動作は、図2のS209からS214までの動作と同一である。S309で、静止画撮影モードに設定されていると判断されると、第2の像ぶれ補正ユニットによる像ぶれの補正は行われず、像ぶれ補正制御を終了する。
【0037】
このように、静止画撮影モードに設定されているときは、第1の像ぶれ補正ユニットのみにより像ぶれの補正を行うことで、大きな光学収差が発生することを防止している。一方、動画撮影モードに設定されているときは、第1の像ぶれ補正ユニットと第2の像ぶれ補正ユニットの両方を用いて像ぶれの補正を行うことで、大きな像ぶれを良好に補正できるようにしている。
【0038】
(第参考形態)
次に、カメラとレンズの間の通信形式に応じて像ぶれ補正の制御を変更する、第3の実施形態について、図4のフローチャートを用いて説明する。通信形式の設定をする通信形式設定部がカメラに設けられ、カメラとレンズの間の通信を、同期通信もしくは非同期通信に設定することができる。
【0039】
参考形態における像ぶれ補正に関するフローは、S409を除いて第2の実施形態におけるフローと同一である。本実施形態では、S409において、レンズMPU107が、カメラとレンズの間の通信形式を判断し、通信が同期通信により行われているか、非同期通信により行われているか、に応じてぶれ補正制御を異ならせている。
【0040】
(第参考形態)
次に、算出された動きベクトルの大きさに応じて像ぶれ補正の制御を変更する、第4の実施形態について、図5のフローチャートを用いて説明する。本実施形態における像ぶれ補正についてのフローに関して、レンズMPU107によるS501からS509の動作は、第1の実施形態におけるS201からS209の動作と同一である。
【0041】
参考形態では、S510において、動きベクトルの大きさが所定の値以上であるか否かを判断する。動きベクトルの大きさが所定の値以上のときは、S511以降のステップに移行し、第1の実施形態において説明したように、動きベクトルを用いた像ぶれの補正が行われる。一方、動きベクトルが所定の値よりも小さいときは、そのまま像ぶれ補正の処理を終了する。
【0042】
参考形態では、残存する像ぶれ量に対応する動きベクトルの大きさを判断基準として、動きベクトルを用いた像ぶれの補正を行うか否かを決定している。残存する像ぶれ量が少ない場合は、さらなる像ぶれの補正を行う必要がないと判断し、像ぶれ補正の処理を終了し、不必要な像ぶれ補正処理が実行されないようにしている。
【0043】
(第の実施形態)
次に、カメラが撮影動作に入るタイミングで像ぶれ補正に関する制御を変更する、第の実施形態について、図6のフローチャートを用いて説明する。本実施形態における像ぶれ補正制御のフローに関して、レンズMPU107によるS601からS608の制御は、第1の実施形態におけるS201からS208の制御と同一である。
【0044】
本実施形態では、カメラ本体101に設けられた不図示のレリーズスイッチが全押し状態になった否かにより、その後の像ぶれ補正に関する制御を変更する。
【0045】
レリーズスイッチは、2段階のスイッチ構成を有し、第一段階目の押下を半押し状態、第二段階目の押下を全押し状態とする。レリーズスイッチが半押し状態になると、オートフォーカス制御や露出の調整に関する制御が開始される。また、レリーズスイッチが全押し状態になると、撮影処理や撮影画像の記録動作が開始される。つまり、レリーズスイッチは撮影動作への移行を指示する機能を有する。図6のフローチャートでは、レリーズスイッチが全押し状態であることを、SW2がONであると表記している。
【0046】
S609において、レリーズスイッチが全押し状態であると判断された場合には、直前に算出された第2のレンズ駆動目標信号(SFTDRV2)を更新せず、S613以降の制御に移行する。ここで、S613以降の制御は、第1の実施形態におけるS211以降の制御と同一である。
【0047】
一方、S609において、レリーズスイッチが全押し状態でないと判断された場合には、S611以降の制御に移行する。ここで、S611以降の制御は、第1の実施形態におけるS209以降の制御と同一である。
【0048】
本実施形態の像ぶれ補正制御により、例えば被写体が動体である場合に、撮影準備中(レリーズスイッチが全押し状態になる前)は、動きベクトル信号に基づいて、第2の像ぶれ補正ユニットによる動体追尾を実行することができる。一方、レリーズスイッチが全押し状態になった後は、レリーズスイッチが全押し状態となる前に算出された動きベクトル信号に基づいて定められる位置に、第2の像ぶれ補正レンズ109が保持される。このような制御を行うことにより、撮影準備中は動体追尾を実施しながら、第1の像ぶれ補正ユニットによる像ぶれ補正を行うことができる。
【0049】
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0050】
例えば、上記の各実施形態では、光学機器として、交換レンズが着脱可能なカメラと交換レンズからなるカメラシステムについて説明したが、本発明は、レンズ一体型カメラについても適用することができる。
【0051】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0052】
101 カメラ本体
102 交換レンズ
103 撮像素子
104 映像信号処理部
105 カメラMPU
106 通信ライン
107 レンズMPU
108 第1の像ぶれ補正レンズ
109 第2の像ぶれ補正レンズ
110 位置検出部
111 第1の駆動回路
112 位置算出部
113 第2の駆動回路
114 角速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6