(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429510
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】電磁誘導流量計および電磁誘導流量計を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/60 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
G01F1/60
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-135595(P2014-135595)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-11035(P2015-11035A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】10 2013 010 891.8
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009494
【氏名又は名称】クローネ メステヒニーク ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Krohne Messtechnik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ブロックハウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム フローリン
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−248022(JP,A)
【文献】
特開2003−097986(JP,A)
【文献】
特開平10−170317(JP,A)
【文献】
特表平09−502267(JP,A)
【文献】
特開2002−310750(JP,A)
【文献】
特開2004−219372(JP,A)
【文献】
特表2010−521690(JP,A)
【文献】
米国特許第06392416(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58−1/60
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導流量計であって、
導電性の媒体を貫流させるための少なくとも1つの測定管(1)と、
前記測定管(1)の長手軸に対し少なくとも垂直に延在する交番磁界を発生させるための少なくとも1つの磁界発生装置と、
前記媒体と接触する少なくとも2つの測定電極(4,5)と、
前記測定電極(4,5)と接続され、導電率測定信号を発生させるための信号電圧源または信号電流源(6)と、
前記磁界発生装置および前記信号電圧源または前記信号電流源(6)のための制御回路(7)と、
評価回路(8)と、
が設けられている電磁誘導流量計において、
前記制御回路(7)および/または前記評価回路(8)は、磁界発生周期の半周期よりも短い流量測定期間中のみ、前記測定電極(4,5)から取り出されたもしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価されるように構成されており、
前記制御回路(7)は、流量測定期間外にある導電率測定期間中のみ、前記測定電極(4,5)に前記導電率測定信号が加えられるように構成されており、
前記制御回路(7)は、前記導電率測定信号を磁界の整定時間中または磁界の減衰時間中に発生させて、当該導電率測定信号を前記測定電極(4,5)に供給するように構成されており、
前記制御回路(7)は、さらに、
前記導電率測定信号に対し時間的にずらした第1の補正信号であって、信号振幅と信号持続時間とを前記導電率測定信号に正確に一致させた第1の補正信号を前記信号電圧源または前記信号電流源(6)から発生させて、前記磁界の整定時間中または前記磁界の減衰時間中に、前記導電率測定信号に加えて前記第1の補正信号を前記測定電極(4,5)に供給し、
前記導電率測定信号により形成された測定電圧と、前記第1の補正信号により形成された測定電圧とから、平均値を形成する、
ように構成されている、
電磁誘導流量計。
【請求項2】
前記制御回路(7)は、流量測定期間中は前記測定電極(4,5)の前記信号電圧源または前記信号電流源(6)が遮断されるように構成されている、
請求項1に記載の電磁誘導流量計。
【請求項3】
前記信号電圧源または前記信号電流源(6)と各測定電極(4,5)との間に、それぞれ1つの分圧抵抗(9,10)が接続されている、
請求項1または2に記載の電磁誘導流量計。
【請求項4】
導電率の測定値として、前記測定電極(4,5)に発生する測定電圧が評価される、
請求項3に記載の電磁誘導流量計。
【請求項5】
前記信号電圧源または前記信号電流源(6)の1つの信号出力端(12)だけが、それぞれ1つの分圧抵抗(9,10)を介して2つの測定電極(4,5)と接続されている、
請求項4に記載の電磁誘導流量計。
【請求項6】
導電率の測定値として、それぞれ測定電極(4,5)と基準電位(11)との間に発生する測定電圧が評価される、
請求項5に記載の電磁誘導流量計。
【請求項7】
少なくとも1つの分圧抵抗(9,10)に対し直列に分離コンデンサが接続されており、または、2つの分圧抵抗(9,10)に対し直列にそれぞれ1つの分離コンデンサが接続されている、
請求項3から6のいずれか1項に記載の電磁誘導流量計。
【請求項8】
前記制御回路(7)によって、前記分圧抵抗(9,10)の抵抗値、および/または、前記1つの分離コンデンサまたは前記2つの分離コンデンサの容量値を調整可能である、
請求項7に記載の電磁誘導流量計。
【請求項9】
前記制御回路(7)は、前記第1の補正信号を、前記導電率測定信号に対し磁界発生周期の半周期分ずらして発生させるように構成されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁誘導流量計。
【請求項10】
導電率測定信号を発生させ、前記導電率測定信号を測定電極(4,5)に供給する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の電磁誘導流量計を動作させるための方法において、
前記導電率測定信号を磁界の整定時間中または磁界の減衰時間中に発生させて、当該導電率測定信号を前記測定電極(4,5)に供給し、
前記導電率測定信号に対し時間的にずらした第1の補正信号であって、信号振幅と信号持続時間とを前記導電率測定信号に正確に一致させた第1の補正信号を発生させて、前記磁界の整定時間中または前記磁界の減衰時間中に、前記導電率測定信号に加えて前記第1の補正信号を前記測定電極(4,5)に供給し、
前記導電率測定信号により形成された測定電圧と、前記第1の補正信号により形成された測定電圧とから、平均値を形成する、
方法。
【請求項11】
前記第1の補正信号を、前記導電率測定信号に対し磁界発生周期の半周期分ずらして発生させる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の磁界発生周期後にそれぞれ第2の磁界発生周期が続き、第2の磁界発生周期各々において第2の補正信号として、位相シフトされた導電率測定信号を発生させる、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記流量測定期間中つまり前記測定電極(4,5)に導電率測定信号が供給されていないときに、前記測定電極(4,5)から、それぞれ半周期中に2つの測定電圧を取り出し、
最初の半周期中の測定電圧と後続の半周期中の測定電圧とから平均値を形成し、
前記平均値の形成により得られた測定値を本来の測定値から減算する、
請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導流量計ならびに電磁誘導流量計を動作させるための方法に関する。この電磁誘導流量計には、電性媒体を貫流させるための少なくとも1つの測定管と、前記測定管の長手軸に対し少なくとも垂直にも延在する交番磁界を発生させるための、少なくとも1つの磁界発生装置と、たとえば媒体と接触する、少なくとも2つの測定電極と、前記測定電極と接続され、導電率測定信号を発生させるための信号電圧源または信号電流源と、前記磁界発生装置および前記信号電圧源または信号電流源のための制御回路と、評価回路とが設けられている。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導流量計は先行技術として数十年来、広く知られているものである。電磁誘導流量計に関する文献としてたとえば、Prof. Dr.-Ing. K.W. Bonfig著の"Technische Durchflussmessung" 第3版 Vulkan出版 Essen 2002年 第123頁〜167頁、ならびにDipl-Ing. Friedrich Hoffmann著の"Grundlagen Magnetisch-Induktive Durchflussmessung" 第3版 2003年、KROHNE Messtechnik GmbH & Co. KGの刊行物、などを参照されたい。
【0003】
流動媒体の流量を測定する電磁誘導流量計の基本原理は、既に1832年の時点で導電性媒体の流速測定に電磁誘導の原理の利用を提案したマイケル・ファラデーにまで遡る。
【0004】
ファラデーの電磁誘導の法則によれば、磁界が貫く導電性流動媒体において、媒体の流動方向および磁界に対し垂直に電界強度が発生する。ファラデーの電磁誘導の法則は電磁誘導流量計において、以下のようにして利用されている。すなわち、少なくとも1つの磁界コイル一般に2つの磁界コイルを含む磁界発生装置によって、測定プロセス中、時間の経過につれて変化する磁界が発生し、この磁界は少なくとも部分的に測定管中を流れる導電性媒体を貫いている。この場合、発生した磁界は少なくとも、測定管の長手軸ないしは媒体の流動方向に対し垂直な成分を有している。
【0005】
冒頭で述べたように、ここで論じている電磁誘導流量計には、「測定管の長手軸に対し少なくとも垂直にも延在する磁界も発生させるための」少なくとも1つの磁界発生装置が含まれているが、ここで敢えて言及しておくと、測定管の長手軸もしくは媒体の流動方向に対し垂直に磁界が延在しているとたしかに有利ではあるけれども、測定管の長手軸もしくは媒体の流動方向に対し垂直に磁界の1つの成分が延在していれば十分である。
【0006】
やはり冒頭で述べたように、ここで論じている電磁誘導流量計に、少なくとも2つの(殊に媒体と接触する)測定電極が含まれている。これらの測定電極は、流動媒体中に誘導される測定電圧を取り出すために用いられる。有利には、両方の測定電極を結ぶ仮想の接続線は、測定管をその長手軸に対し垂直に貫く磁界の方向に対し、少なくとも実質的に垂直に延在している。特にこれらの測定電極を、これらの測定電極を結ぶ仮想の接続線が、測定管を貫く磁界の方向に対し実際に(程度の差こそあれ)垂直に延在するように設けることができる。
【0007】
さらに冒頭で述べたように、測定電極をたとえば、媒体と接触するような測定電極とすることができる。当然ながら実際に、誘導により導電性流動媒体中に発生する電界をダイレクトにつまり直流電流により、媒体と接触状態にある測定電極を用いて、測定電圧として取り出すことができる。ただし、測定電圧がダイレクトにではなく、つまり直流電流によってではなく、媒体と接触状態にある測定電極を用いて取り出される電磁誘導流量計も存在し、この場合には測定電圧は容量として捕捉される。
【0008】
ここで述べている形式の電磁誘導流量計において最初に挙げられる用途は当然ながら、測定管を流れ少なくともある程度の導電性をもつ媒体の流量測定であって、つまり流量計であるにしても、ここで論じる電磁誘導流量計の用途はこれに限られるものではない。つまり電磁誘導流量計を、たとえば導電率測定に利用することもできる。
【0009】
どのような目的であれ、流量を測定すべき媒体の導電率を把握する必要があったり、あるいはそれが重要であるならば、電磁誘導流量計をいつでも導電率測定に利用することができる。ただし特に述べておくと、流量を測定すべき媒体の導電率は、そもそも流量測定自体にとって重要であり、つまりその理由は、測定電極において取り出し可能な測定電圧は、磁界発生装置が発生する磁界の磁界強度と測定すべき流量とに依存するだけでなく、流量測定すべき媒体の導電率にも依存するからである。
【0010】
冒頭で述べた形式の電磁誘導流量計は、流量測定だけでなく導電率測定のためのものでもあり、それに適したものでもあり、つまり導電率を測定するために、導電率発生信号を発生させる信号電圧源または信号電流源を備えている。
【0011】
導電率測定のためのものでもあり導電率測定にも適している、冒頭で述べた形式の電磁誘導流量計はたとえば、EP 0 704 682, DE 692 32 633 C2の翻訳から、ならびにDE 102 43 748 A1, DE 10 208 005 258 A1から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP 0 704 682
【特許文献2】DE 692 32 633 C2
【特許文献3】DE 102 43 748 A1
【特許文献4】DE 10 208 005 258 A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Prof. Dr.-Ing. K.W. Bonfig著の"Technische Durchflussmessung" 第3版 Vulkan出版 Essen 2002年 第123頁〜167頁
【非特許文献2】Dipl-Ing. Friedrich Hoffmann著の"Grundlagen Magnetisch-Induktive Durchflussmessung" 第3版 2003年、KROHNE Messtechnik GmbH & Co. KGの刊行物
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、本発明の前提となる公知の電磁誘導流量計を改善すること、ならびに導電率測定も実施可能な電磁誘導流量計を動作させるのに格別適した方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によればこの課題は、制御回路および/または評価回路は、磁界発生周期の半周期よりも短い流量測定期間中のみ、測定電極から取り出されたもしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価されるように構成されており、前記制御回路は、流量測定期間外にある導電率測定期間中のみ、前記測定電極に前記導電率測定信号が加えられるように構成されていることにより解決される。さらに上記の課題は、電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法によっても解決される。
【0016】
冒頭で述べたように、ここで説明する形式の電磁誘導流量計には、測定管の長手軸に対し少なくとも垂直にも延在する交番磁界を発生させるための磁界発生装置が含まれている。したがってこの磁界発生装置には機能的に必須の構成として、いずれにせよ磁化電流源と、少なくとも1つの磁界コイル通常は2つの磁界コイルとが設けられている。磁化電流源によって、既述のように交番磁界を発生させる。ここで扱われるのは正弦波形の磁界ではなく、極性が交番する直流が1つまたは複数の磁界コイルに流されることによって生じる磁界であり、つまり第1の半周期中は一方の方向に、第2の半周期中は他方の方向に直流が流されることによって生じる磁界である。
【0017】
磁化電流によって1つまたは複数の磁界コイルに形成される磁界について言えることは、この磁界の時間経過特性は磁化電流の時間経過特性に厳密には追従しない、ということである。つまり実際には当然ながら磁界には、最初に直流電流が流れ始めたときには整定フェーズが存在するし、直流電流が流れ終わったときには減衰フェーズが存在する。整定フェーズが終わり減衰フェーズが始まる前まで磁界は一定であり、したがって従来技術では、整定フェーズ終了後減衰フェーズ開始前までの期間にあたる流量測定期間中のみ、測定電極から取り出されたもしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価される。
【0018】
抵抗の逆数値である導電率は、オームの法則に従い、測定電極に加えられる導電率測定電圧と、この電圧により測定電極間に流れる導電率測定電流とから得られ、あるいは測定電極を介して流れ測定電極に生じる導電率測定電流と、この電流により測定電極に発生する導電率測定電圧とから得られる。導電率測定電圧を加える場合には、信号電圧源の内部抵抗をできるかぎり小さくしておくべきであるし、測定電極を介して流れ測定電極に生じる導電率測定電流に基づく場合には、信号電流源の内部抵抗をできるかぎり大きくしておくべきである。有利であるのは、測定電極に形成される導電率測定電流を用いることであり、この場合には、求めようとする導電率に対する尺度として、測定電極に発生する導電率測定電圧を測定する。
【0019】
本発明による電磁誘導流量計の場合には既述のように、流量測定が実施されていないときに導電率測定が行われ、もしくは導電率測定が実施されていないときに流量測定が行われる。流量測定を行っているとき、つまり流量測定期間中、信号電圧源もしくは信号電流源が測定結果に作用を及ぼさないようにするために、本発明による電磁誘導流量計の1つの有利な実施形態によれば制御回路は、流量測定期間中は信号電圧源もしくは信号電流源が遮断され、少なくとも高抵抗で接続されるように構成されている。
【0020】
既述のように本発明による電磁誘導流量計の場合、信号電圧源または信号電流源を用いて動作させることができる。有利であるのは、他方のケースの場合のように、交流信号である導電率測定信号によって動作させることである。この場合、信号電圧源によって動作させるのであれば、交流電圧源が用いられるし、信号電流源によって動作させるのであれば、交流電流源が用いられる。
【0021】
限定とみなしてはならないが、以下の説明では、本発明による電磁誘導流量計には信号電流源が常に含まれるものとする。
【0022】
本発明による電磁誘導流量計によれば、信号電流源を様々な手法で測定電極と接続することができる。この点については、あとで図面を参照しながら詳しく説明するので、ここではこれ以上立ち入らない。
【0023】
本発明の極めて重要なさらに別の着想によれば、本発明による電磁誘導流量計は以下のことを特徴としている。すなわち本来の導電率測定信号に加えて、この導電率測定信号に対し時間的にずらされて、信号電流源から補正信号が発生するように、制御回路が構成されている。この補正信号によって、様々な種類の測定エラーもしくは様々な原因の測定エラーを低減することができ、もしくは取り除くことができる。これについての詳細は、電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法とともに、図面を参照しながらあとで説明する。
【0024】
冒頭で述べたように本発明は、電磁誘導流量計を動作させるための方法にも関し、この場合、導電率測定信号を発生させ、この導電率発生信号を測定電極に加える。特に本発明は、すでに説明した本発明による電磁誘導流量計を動作させるための方法にも関する。
【0025】
電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法が、第一に重要な特徴としているのは、本来の導電率測定信号に加えて、この導電率測定信号に対し時間的にずらして、補正信号を形成し、測定電極にこの補正信号も供給することである。これについては説明が必要であるが、あとで説明することにする。
【0026】
すでに言及したように、電磁誘導流量計において1つまたは複数の磁界コイルを流れる磁化電流により形成される磁界に関して、以下のことがあてはまる。すなわち、
・磁界の時間経過特性は磁化電流の時間経過特性に厳密には追従しておらず、つまり磁界において最初に直流電流が流れ始めるときに整定フェーズが存在し、直流電流が流れ終わるときに減衰フェーズが存在する。
・整定フェーズの終了後から減衰フェーズの開始前まで磁界は一定であり、整定フェーズ終了後から減衰フェーズ開始前までの期間にあたる流量測定期間中のみ、測定電極から取り出される測定電圧もしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価される。
【0027】
本発明による電磁誘導流量計に関して重要なことは、
・磁界発生周期の半周期よりも短い流量測定期間中のみ、測定電極から取り出されたもしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価されること、
・流量測定期間外にある導電率測定期間中のみ、測定電極に導電率測定信号が加えられること、
である。これによって、流量測定期間と導電率測定期間の和が、磁界発生周期の半周期と正確に一致するようになる。ただし有用であるのは、流量測定期間と導電率測定期間全体として、それらの和が磁界発生周期の半周期よりも短くなるように選定し、流量測定期間と導電率測定期間との間にタイムインターバルが存在するようにすることである。
【0028】
すでに何度も言及したとおり、公知の電磁誘導流量計の場合、整定フェーズ終了後減衰フェーズ開始前までの期間にあたる流量測定期間中のみ、測定電極から取り出された測定電圧もしくは測定電極から取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価される。このことから実際の測定にあたり実現可能な手法として、導電率測定期間が磁界の整定フェーズ中または磁界の減衰フェーズ中に位置するように、導電率測定期間を時間設定することができる。
【0029】
既述のとおり、電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法が第一に重要な特徴としているのは、「本来の」導電率測定信号に加えて、磁界発生周期各々において、この導電率測定信号に対し時間的にずらして、補正信号を発生させ、測定電極にこの補正信号も加えることである。この場合、測定精度に影響を与える様々な要因に対処できるようにする目的で、種々の補正信号もしくは補正手法を適用することができる。
【0030】
電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の第1の有利な実施形態によれば、導電率測定信号に対応し、これに対し磁界発生周期の半周期分ずらされた「第1の」補正パルスを発生させる。
【0031】
本発明による方法において、導電率測定信号を磁界の整定時間中または磁界の減衰時間中に発生させる場合、本発明の具体化された手法によれば、第1の補正信号の信号振幅と信号持続時間を、導電率測定信号に正確に一致させ、磁界の減衰時間中または磁界の整定時間中に、第1の補正信号を測定電極に加え、導電率測定信号により形成された測定電圧と、第1の補正信号により形成された測定電圧とから、平均値を形成する。
【0032】
電磁誘導流量計の場合、磁界の減衰フェーズは磁界の整定フェーズとまったく同じというわけではない。このことに起因して生じる測定誤差は、上述の本発明の手法によって、部分的にまたは完全に相殺される。
【0033】
電磁誘導流量計は、冒頭で述べたように交番磁界によって動作する。
【0034】
すでに言及したが、ここでは交番磁界は正弦波形の磁界ではなく、極性が交番する直流が1つまたは複数の磁界コイルに流されることによって生じる磁界であり、つまり第1の半周期中は一方の方向に、第2の半周期中は他方の方向に直流が流されることによって生じる磁界である。つまり極性が交番する直流によって生じるこの種のサイクルによって、磁界発生周期が定まる。このため第1の磁界発生周期、第2に磁界発生周期等と称することができる。いずれにせよ、それぞれ第1の磁界発生周期の後にそれぞれ第2の磁界発生周期が続き、第2の磁界発生周期の後に再び第1の磁界発生周期が続く、という具合である。これに関連して、本発明のさらに別の極めて重要な手法によれば、第2の磁界発生周期各々において「第2の補正信号」として、「位相シフトされた」導電率測定信号を発生させる。ここで「位相シフトされた」導電率測定信号とは、極性が入れ替えられた導電率測定信号のことである。つまり導電率測定信号は、最初は正のパルスによって形成され、ついで負のパルスによって形成される。したがって「位相シフトされた」導電率測定信号についていえば、これは最初に負のパルスによって形成され、ついで負のパルスによって形成される。
【0035】
電磁誘導流量計の場合、磁界コイルと測定電極との間の容量は対称ではない。このことに起因して生じる測定誤差は、本発明の既述の別の手法によって、部分的にまたは完全に相殺される。
【0036】
さらに電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法において、極めて重要である格別な実施形態によれば、流量測定期間中つまり測定電極に導電率測定信号が供給されていないときに、測定電極から測定電圧を取り出し、それぞれ半周期中に2つの測定電圧を取り出し、最初の半周期中の測定電圧と後続の半周期中の測定電圧とから平均値を形成し、平均値形成により得られた測定値を「本来の」測定値から減算する。ここで「本来の」測定値とは、測定電極に導電率測定信号を加えたときに得られる測定値である。
【0037】
何度も言及しているように、本発明による電磁誘導流量計は交番磁界によって動作する。このような交番磁界によって、ハムノイズないしはリプルが引き起こされる可能性があり、つまり「本来の」測定値に、磁界に由来する「ハムノイズ電圧」ないしは「リプル」が重畳されてしまう。このようなエラー源は当然ながら望ましくないものであるが、これに対しては最後に挙げた手法をとることによって対抗措置がとられる。
【0038】
詳細には、本発明による電磁誘導流量計と、この電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法を実現させ、さらに発展させる様々な可能性がある。この点については、独立請求項である請求項1以下に記載された請求項2〜9、独立請求項である請求項10以下に記載された請求項11〜14、ならびに以下で図面を参照しながら記載した有利な実施形態の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】本発明による電磁誘導流量計に含まれる回路の第1の実施例を示す図
【
図3】本発明による電磁誘導流量計に含まれる回路の第2の実施例を示す図
【
図4】電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例の説明に用いられるダイアグラム
【
図5】電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例を説明するためのダイアグラム
【
図6】電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例を説明するためのダイアグラム
【
図7】電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例を説明するためのダイアグラム
【
図8】電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例を説明するためのダイアグラム
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、概略的ではあるが、電磁誘導流量計の基本構造が示されており、この電磁誘導流量計は以下の要素から成る。すなわち、
・導電性媒体を貫流させるための測定管1と、
・図示の実施例では2つの磁界コイル2,3を備え、測定管1の長手軸に対し少なくとも垂直にも延在する交番磁界を発生させる磁界発生装置と、
・有利には媒体と接触する2つの測定電極4,5と、
・
図1には示されておらず
図2および
図3に示されているコンポーネント、すなわち測定電極4,5と接続されていて導電率測定信号を発生させる信号電流源6と、信号電流源6のための制御回路7と、
・評価回路8と、
から成る。
【0041】
ここで述べる電磁誘導流量計について述べておくと、
図1にも
図2および
図3にも詳しく示されていなけれども、制御回路7および/または評価回路8は、磁界発生周期の半周期よりも短い流量測定期間中のみ、測定電極4,5から取り出された測定電圧もしくは取り出し可能な測定電圧が、流量測定のために評価されるように構成されており、さらに制御回路7は、流量測定期間外にある導電率測定期間中のみ、測定電極4,5に導電率測定信号が加えられるように構成されている。さらにここには示されていないこととして、制御回路7は、流量測定期間中は信号電流源6が遮断され、ただし少なくとも高抵抗で接続されているようにする。
【0042】
さらに本発明による電磁誘導流量計の特別な実施形態として、
図2および
図3に示されているように、信号電流源6と各測定電極4,5との間に、それぞれ1つの分圧抵抗9,10が接続されている。この場合、導電率の測定値として、測定電極4,5のところに発生する測定電圧が評価される。
【0043】
図2に示されている回路によれば、信号電流源6の第1の信号出力端12が測定電極4と接続されており、信号電流源6の第2の信号出力端13が測定電極5と接続されている一方、
図3に示されている回路によれば、信号電流源6の1つの信号出力端12だけが、それぞれ分圧抵抗9,10を介して両方の測定電極4,5と接続されている。この回路の場合には導電率の測定値として、測定電極4ないしは5と基準電位11との間に発生する測定電圧が評価される。
【0044】
本発明による電磁誘導流量計のための特別な回路を示す
図2および
図3には描かれていないが、少なくとも1つの分圧抵抗9,10に直列に分離コンデンサを接続することができ、有利には両方の分圧抵抗9,10に直列にそれぞれ1つの分離コンデンサを接続することができる。また、制御回路7によって、分圧抵抗9,10の抵抗値および/または1つまたは複数の分離コンデンサの容量値を調整可能である。さらに制御回路7は、本来の導電率測定信号に加えて、導電率測定信号に対し時間的にずらして、信号電流源6から補正信号を発生させるようにする。
【0045】
図4〜
図8には、電磁誘導流量計を動作させるための本発明による方法の種々の実施例を説明するためのダイアグラムが示されている。
【0046】
これらの図において、ダイアグラムa)は磁界経過特性を示し、ダイアグラムb)は流量測定経過特性を、ダイアグラムc)は導電率測定に用いられる導電率測定信号の経過特性を、さらにダイアグラムd)は導電率測定値をそれぞれ示す。
【0047】
ダイアグラムa)およびb)については説明は不要であり、これらは広く知られた従来技術を成すものである。
【0048】
さらに
図4のダイアグラムc)およびd)も、従来技術で知られている手法を表しており、つまりダイアグラムc)によれば、流量測定期間外にある導電率測定期間中のみ、導電率測定信号が発生する。
【0049】
図5〜
図8のダイアグラムc)について説明すると、本来の導電率測定信号に加えて、本来の導電率測定信号に対し時間的にずらされて、補正信号が存在している。この場合、測定電極には、本来の導電率測定信号も補正信号も供給される。この補正信号の形式がどのようなものであるのか、ならびにこの補正信号によって何が達成されるのかは、既述の説明ならびに請求項11〜14に示されている。