特許第6429512号(P6429512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429512
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】路面覆工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   E01C9/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-137902(P2014-137902)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-14297(P2016-14297A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596101598
【氏名又は名称】株式会社大盛工業
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】西山 剛
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−124650(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3131502(JP,U)
【文献】 実公昭46−008683(JP,Y1)
【文献】 特開平11−117210(JP,A)
【文献】 特開平11−117660(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01362980(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削溝の幅方向両側にそれぞれ、上下方向に延出した縦壁と、該縦壁の下端から垂直又は略垂直な方向へ延出する横壁と、該横壁が延出する向きと同じ向きに前記縦壁の上下方向中央部から張り出した張り出し部とを有する山留部材を、互いに対向するように配置する工程と、
前記掘削溝の幅方向において前記山留部材の間に矩形状の覆工板を、該覆工板の前記長手方向と前記掘削溝の幅方向とが互いに一致する向きにて配置する工程と、を有し、
前記山留部材を配置する工程では、前記山留部材を、前記縦壁が前記掘削溝の幅方向両端に位置する側壁に沿うように配置し、前記張り出し部が前記掘削溝の幅方向内側に向かって張り出すように前記掘削溝の幅方向両側にそれぞれ配置し、
前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の長手方向における長さが前記張り出し部の間隔よりも長くなった前記覆工板の一端部、前記掘削溝の幅方向一端側に配置された前記山留部材の前記張り出し部の上に載置し、前記覆工板の他端部を前記掘削溝の幅方向他端側に配置された前記山留部材の前記張り出し部の上に載置することを特徴とする路面覆工方法。
【請求項2】
前記山留部材を配置する工程では、前記山留部材の延出方向において一定間隔毎に設けられ、前記横壁の面と前記張り出し部の面と前記縦壁の面にそれぞれ当接した状態で設けられる補強プレートを有する山留部材を配置し、
前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の短手方向における両端部のうち少なくとも一方の端部が前記補強プレートと互いに上下で重なるようにして、前記覆工板をそれぞれ配置することを特徴とする請求項1に記載の路面覆工方法。
【請求項3】
前記山留部材を配置する工程では、
前記山留部材の延出方向の両端部に設けられ、前記横壁の面と前記張り出し部の面と前記縦壁の面にそれぞれ当接した状態で設けられる連結プレートを有する山留部材を、互いに隣り合う前記連結プレート同士が締結されるように、かつ、
前記掘削溝の始端部及び終端部にそれぞれ配置される一対の山留部材の連結プレートが、前記掘削溝の幅方向に延出する端部プレートによって締結されるように、それぞれ配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の路面覆工方法。
【請求項4】
前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の前記長手方向における一端が前記掘削溝の幅方向一端側に配置された前記山留部材の前記縦壁に当接し、かつ、前記覆工板の前記長手方向における他端が前記掘削溝の幅方向他端側に配置された前記山留部材の前記縦壁に当接するように前記覆工板を配置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の路面覆工方法。
【請求項5】
前記山留部材を配置する工程では、前記掘削溝の幅方向両端に位置する側壁に沿って前記山留部材を列状に複数並べ、互いに隣り合う前記山留部材同士を締結部材によって締結することを特徴とする請求項乃至4のいずれか一項に記載の路面覆工方法。
【請求項6】
前記山留部材を配置する工程では、所定方向に長く延びた前記山留部材の延出方向一端から他端に亘って前記張り出し部が設けられ、かつ、前記山留部材の延出方向における前記張り出し部の長さが前記覆工板の短手方向における長さの整数倍となるように成形された前記山留部材を配置することを特徴とする請求項乃至5のいずれか一項に記載の路面覆工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削溝の開口を塞ぐための覆工板を用いた路面覆工方法であり、特に、掘削溝の幅方向両側にそれぞれ置かれた山留部材の間に覆工板を配置する路面覆工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削溝の開口を塞ぐための覆工板を用いた路面覆工方法の中には、掘削溝の幅方向両側にそれぞれ山留部材を設置した後、山留部材の間に覆工板を配置する方法がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の路面覆工方法について図4の(A)及び(B)を参照しながら説明すると、先ず、路面に掘削溝を形成し、この掘削溝の幅方向両端側にL字型の山留部材101を配置する。かかる山留部材は、上下方向に延出した縦壁103と、縦壁から垂直又は略垂直方向に延出した横壁102と、を備え、縦壁の背面が掘削溝の側壁(幅方向の端位置にある壁)に対向するように配置される。その後、山留部材間に受桁104を掛け渡し、当該受桁104の上に覆工板105を載置する。これにより、工事を行わない夜間等には掘削溝の開口を覆工板105にて塞ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3131502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の路面覆工方法では覆工板105が図4の(A)に示すように同覆工板105の長手方向が掘削溝の幅方向と交差する姿勢にて配置される。また、掘削溝の全長(形成方向の長さ)は、一般的に覆工板105の長辺よりも長くなっている。このため、掘削溝の開口を塞ぐにあたっては、図4の(A)に示すように掘削溝の全長に沿って覆工板105を連ねて配置することになる。
【0005】
一方、掘削溝の全長に沿って覆工板105を連ねて配置するには、覆工板105の境界位置に受桁104を設置することになる。ここで、受桁104は、図4の(B)に示すように、その延出方向が掘削溝の幅方向に沿った姿勢にて、各山留部材101の横壁102上に載置される。すなわち、受桁104は、掘削溝を横断するように配置されることになる。このように受桁104が掘削溝を横断するように配置されていると、工事を再開するために覆工板105を外して掘削溝の開口を開けた際、受桁104が掘削溝内に残っており、これが工事作業の支障となる場合がある。つまり、掘削溝を横断する受桁104が存在すると、作業スペースを確保し難くなり、これを原因として、埋設管を埋設する等の目的のために掘削溝を更に掘削する際、スムーズに掘削することが難しくなる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、受桁を用いなくとも、掘削溝の幅方向両端側に設置された山留部材の間に覆工板を配置することが可能な路面覆工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の路面覆工方法によれば、掘削溝の幅方向両側にそれぞれ、上下方向に延出した縦壁と、該縦壁の下端から垂直又は略垂直な方向へ延出する横壁と、該横壁が延出する向きと同じ向きに前記縦壁の上下方向中央部から張り出した張り出し部とを有する山留部材を、互いに対向するように配置する工程と、前記掘削溝の幅方向において前記山留部材の間に矩形状の覆工板を、該覆工板の前記長手方向と前記掘削溝の幅方向とが互いに一致する向きにて配置する工程と、を有し、前記山留部材を配置する工程では、前記山留部材を、前記縦壁が前記掘削溝の幅方向両端に位置する側壁に沿うように配置し、前記張り出し部が前記掘削溝の幅方向内側に向かって張り出すように前記掘削溝の幅方向両側にそれぞれ配置し、前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の長手方向における長さが前記張り出し部の間隔よりも長くなった前記覆工板の一端部、前記掘削溝の幅方向一端側に配置された前記山留部材の前記張り出し部の上に載置し、前記覆工板の他端部を前記掘削溝の幅方向他端側に配置された前記山留部材の前記張り出し部の上に載置することにより解決される。
【0008】
上記の方法によれば、掘削溝の幅方向両側に置かれた山留部材の間に覆工板を配置するにあたり、水平方向に張り出した張り出し部を有する山留部材を、張り出し部が掘削溝の幅方向内側に向かって張り出すように配置する。その上で、長手方向長さが張り出し部の間隔よりも長くなった覆工板を、その長手方向と掘削溝の幅方向とが互いに一致する向きにて張り出し部に載置する。つまり、本発明の路面覆工方法では、覆工板を支持する上で受桁を用いず、山留部材の張り出し部を用いることとしている。これにより、在来工法において掘削溝内で受桁が占めていたスペースを有効活用しつつ、掘削溝の幅方向両端側に設置された山留部材の間に覆工板を適切に配置することが可能となる。
また、上記の方法によれば、覆工板の長手方向両端部をそれぞれ山留部材の張り出し部の上に載置して、覆工板を山留部材の間に配置する。このようにすれば覆工板の長手方向中央部の下方位置にスペースが確保されるようになる。
また、L字型をなす縦壁と横壁を有し、張り出し部が縦壁の上下方向中央部から張り出している構造の山留部材を掘削溝内に設置する。この結果、路面覆工作業が完了した時点で、山留部材が、縦壁の背面にて掘削溝の側壁を押さえることで山留効果を発揮する一方で、張り出し部の上面にて覆工板を支持するようになる。
【0009】
また、上記の路面覆工方法において、前記山留部材を配置する工程では、前記山留部材の延出方向において一定間隔毎に設けられ、前記横壁の面と前記張り出し部の面と前記縦壁の面にそれぞれ当接した状態で設けられる補強プレートを有する山留部材を配置し、前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の短手方向における両端部のうち少なくとも一方の端部が前記補強プレートと互いに上下で重なるようにして、前記覆工板をそれぞれ配置するとよい。
上記の方法によれば、受桁を用いなくとも、掘削溝の幅方向両端側に設置された山留部材の間に覆工板をより適切に配置することが可能となる。
【0010】
また、上記の路面覆工方法において、前記山留部材を配置する工程では、前記山留部材の延出方向の両端部に設けられ、前記横壁の面と前記張り出し部の面と前記縦壁の面にそれぞれ当接した状態で設けられる連結プレートを有する山留部材を、互いに隣り合う前記連結プレート同士が締結されるように、かつ、前記掘削溝の始端部及び終端部にそれぞれ配置される一対の山留部材の連結プレートが、前記掘削溝の幅方向に延出する端部プレートによって締結されるように、それぞれ配置すると尚よい。
上記の方法によれば、受桁を用いなくとも、掘削溝の幅方向両端側に設置された山留部材の間に覆工板をより一層適切に配置することが可能となる。
【0011】
また、上記の路面覆工方法において、前記覆工板を配置する工程では、前記覆工板の前記長手方向における一端が前記掘削溝の幅方向一端側に配置された前記山留部材の前記縦壁に当接し、かつ、前記覆工板の前記長手方向における他端が前記掘削溝の幅方向他端側に配置された前記山留部材の前記縦壁に当接するように前記覆工板を配置すると更によい。
上記の方法によれば、覆工板は、その長手方向における各端が山留部材の縦壁に当接するように山留部材の間に配置される。このようにすれば縦壁が掘削溝の幅方向において内側に倒伏するのを抑えることが可能となる。
【0012】
また、上記の路面覆工方法において、前記山留部材を配置する工程では、前記掘削溝の幅方向両端に位置する側壁に沿って前記山留部材を列状に複数並べ、互いに隣り合う前記山留部材同士を締結部材によって締結すると一段とよい。
上記の方法によれば、掘削溝の幅方向両端に位置する側壁に沿って山留部材を列状に複数並べ、互いに隣り合う山留部材同士を締結する。これにより、列状に並んだ複数の山留部材が梁を形成するようになり、山留部材間に配置される覆工板の沈下を抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記の路面覆工方法において、前記山留部材を配置する工程では、所定方向に長く延びた前記山留部材の延出方向一端から他端に亘って前記張り出し部が設けられ、かつ、前記山留部材の延出方向における前記張り出し部の長さが前記覆工板の短手方向における長さの整数倍となるように成形された前記山留部材を配置すると尚一層よい。
上記の方法によれば、山留部材の延出方向における張り出し部の長さが覆工板の短手方向における長さの整数倍となるように成形された山留部材を用いることとしている。これにより、覆工板を、その長手方向と掘削溝の幅方向とが互いに一致する向きにて張り出し部に載置すると、収まり良く覆工板を配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の路面覆工方法によれば、山留部材の張り出し部にて覆工板を支持することで、在来工法において掘削溝内で受桁が占めていたスペースを有効活用しつつ、掘削溝の幅方向両端側に設置された山留部材の間に覆工板を適切に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る路面覆工方法の説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る山留部材を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る路面覆工方法により構築される路面覆工構造を示す図であり、(A)が平面図を、(B)が(A)のX−X断面図を、(C)が(A)のY−Y断面図を、それぞれ示している。
図4】在来工法により構築される路面覆工構造を示す図であり、(A)が平面図を、(B)が(A)のX−X断面図をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0017】
<<路面覆工構造の概要>>
先ず、本実施形態に係る路面覆工方法により構築される路面覆工構造について図1を参照しながら概説する。図1は、本実施形態に係る路面覆工方法の説明図であり、具体的には、当該路面覆工方法を用いて構築された路面覆工構造を図示している。
【0018】
路面覆工構造を構築する作業、すなわち路面覆工作業は、路面に掘削溝Cを形成して行う工事、例えば、埋設管8を地中に設置する工事(埋設工事)の前作業として行われる。路面覆工作業に際して、先ず、地面を構成する舗装層A及び土層Bを掘削して掘削溝Cを形成する。掘削溝Cは、平面視で長方形状の溝であり、底壁と、底壁から立ち上がった4面の側壁とを有する。
【0019】
次に、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ山留部材10を、互いに対向するように配置する。本実施形態において、山留部材10は、互いに直交又は略直交する方向に延出してL字型をなす横壁12及び縦壁13を有する。そして、山留部材10は、縦壁13が掘削溝Cの幅方向の各端に位置する側壁と対向するように配置される。
【0020】
山留部材10の設置が完了した後には、互いに対向するように掘削溝C内に配置された山留部材10の間に覆工板5を配置する。本実施形態において、覆工板5は、平面視で矩形状のパネルであり、掘削溝Cの幅方向において山留部材10の間に敷き詰められる。これにより、掘削溝Cの開口が塞がれる。
【0021】
以上のまでの一連の工程が終了した時点で路面覆工構造が完成する。完成した路面覆工構造では、山留部材10の縦壁13が掘削溝Cの側壁に対して山留の役割を果たすようになる。なお、山留部材10は、掘削溝Cの側壁に沿って複数並べられ、列をなした状態で掘削溝C内に配置される。そして、互いに隣り合う山留部材10同士がボルト等の締結具によって締結される。これにより、山留部材10の列が梁を形成するようになる。
【0022】
また、完成した路面覆工構造では、覆工板5の上面がその周囲に位置する路面と連続している。すなわち、路面覆工構造において、覆工板5は、その上面と路面との間に段差がないように設置されている。この結果、埋設管8の埋設工事を中止している時間帯、すなわち、覆工板5によって掘削溝Cの開口が塞がれている期間中、歩行者等は、覆工板5の上面と路面との間で躓くことなく良好に歩行することが可能である。
【0023】
他方、工事が行われる時間帯には覆工板5が撤去されて、掘削溝Cの開口が露出するようになる。かかる状態で埋設管8の埋設工事が行われ、具体的には、先ず掘削溝Cの底壁を掘削して布掘り溝を形成する。続いて布掘り溝の両側壁に沿って矢板7を打ち込み、作業空間を確保する。対向する矢板7の間には不図示の切梁等を支保工として横架する。その後に布掘り溝の底に埋設管8設置用の基礎を打設し、当該基礎上に埋設管8を設置する。
【0024】
なお、工事中は、通行人等が掘削溝C内に転落しないように掘削溝Cの際位置(側壁の形成位置)に安全柵6が立設される。この安全柵6の下端部は、山留部材10に組み付けられる。
【0025】
<<山留部材の構成例>>
次に、本実施形態に係る路面覆工方法において用いられる山留部材10の構成例について図2を参照しながら説明する。図2は、山留部材10を示す斜視図である。なお、以降の説明中、山留部材10の各部の位置や向き等については、特に断る場合を除き、路面覆工構造において所定の設置場所に置かれた状態での内容となっている。また、図2では、矢印にて山留部材10の延出方向、及び、上下方向が示されている。
【0026】
山留部材10は、図2に示すように長尺なプレート体からなり、本実施形態では剛性を有する鉄板によって構成されている。ただし、山留部材10の材質については鉄材に限定されず、鋼等の他の金属材料、あるいは強化プラスチックやセラミックス等であってもよい。なお、山留部材10の長手方向は、山留部材10の延出方向に相当し、以下、単に延出方向と呼ぶこととする。
【0027】
山留部材10は、前述したように、互いに直交又は略直交する向きに延出した横壁12及び縦壁13を有する。縦壁13は、上下方向に延出した平板状の長尺体であり、その長手方向における長さは、延出方向における山留部材10の長さ(すなわち、山留部材10の全長)に相当する。
【0028】
そして、縦壁13は、山留部材10において実際に山留効果を発揮する部分である。具体的に説明すると、山留部材10を掘削溝C内に配置する際、縦壁13が掘削溝Cの幅方向両端に位置する側壁に沿うように配置される。これにより、縦壁13の背面(縦壁13の厚み方向において横壁12とは反対側に位置する面)が、上記の側壁に対向(厳密には、当接)するようになり、側壁の緩みや崩れを抑えるようになる。
【0029】
横壁12は、縦壁13の下端から垂直又は略垂直に延出した平板状の長尺体であり、その長手方向における長さは、山留部材10の全長に相当する。横壁12は、山留部材10を掘削溝C内に配置する際に台部として機能し、具体的には、掘削溝Cの底壁の上に載置される。なお、山留部材10を掘削溝C内に配置した状態では、横壁12が掘削溝Cの幅方向内側に向かって延出している。また、以下では、横壁12の延出方向を、横壁12の短手方向と呼ぶこととする。
【0030】
以上までに説明した横壁12及び縦壁13は、縦壁13の背面が横壁12の外面と面一となるように縦壁13の下面を横壁12の上面の側端部側に接合させた状態で、互いに溶接されている。なお、横壁12及び縦壁13を別部材とし両者を溶接にて接合するケースに限定されず、例えば一枚の金属板をL字状に折り曲げて横壁12及び縦壁13を一体に成形してもよい。かかる場合には、横壁12及び縦壁13を溶接等で接合させて製造した場合に生じるおそれのある接合部の破断が発生しないため好ましい。
【0031】
また、横壁12及び縦壁13の各々の一側端は、山留部材10の延出方向一端をなし、横壁12及び縦壁13の各々の他側端は、山留部材10の延出方向他端をなしている。ここで、横壁12及び縦壁13の各々の延出方向について説明すると、縦壁13の延出方向である上下方向及び横壁12の短手方向は、互いに直交又は略直交しており、さらに、いずれも延出方向(山留部材10の長手方向)に対して直交又は略直交している。
【0032】
また、山留部材10は、図2に示すように、張り出し部11、補強プレート14、連結プレート15及び柵固定筒部16を更に備えている。張り出し部11は、上下方向において横壁12よりも上方位置に設けられている。また、補強プレート14、連結プレート15及び柵固定筒部16は、それぞれ、上下方向において張り出し部11と横壁12との間に位置し、さらに延出方向において互いに重ならない位置に設けられている。
【0033】
張り出し部11は、上下方向において縦壁13の中央部から垂直又は略垂直な方向に張り出した平板状の長尺体である。この張り出し部11は、山留部材10が掘削溝C内に配置された状態において水平方向に張り出しており、より具体的には、横壁12が延出する向きと同じ向きに張り出している。したがって、山留部材10を掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ配置する際には、張り出し部11が掘削溝Cの幅方向内側に向かって張り出すように山留部材10を配置することになる。
【0034】
そして、本実施形態では、張り出し部11が覆工板5を支持する機能を有する。すなわち、掘削溝Cの幅方向両側に配置された山留部材10間に覆工板5を配置する際、覆工板5が張り出し部11の上面に載置されることになっている。
【0035】
なお、張り出し部11は、その側端面を縦壁13の内側面(縦壁13の厚み方向において横壁12が位置する側の面)の上下方向中央部に当接させた状態で、縦壁13に溶接等にて接合されている。
【0036】
また、本実施形態において、張り出し部11の長手方向における長さは、山留部材10の全長に相当する。換言すると、張り出し部11は、図2に示すように、山留部材10の延出方向一端から他端に亘って設けられており、張り出し部11の長手方向一端が山留部材10の延出方向一端に位置し、張り出し部11の長手方向他端が山留部材10の延出方向他端に位置する。
【0037】
また、本実施形態において、張り出し部11の長手方向における長さ(つまり、延出方向における張り出し部11の長さ)は、覆工板5の短辺の長さ(すなわち、覆工板5の短手方向における長さ)の整数倍となっている。以下では、張り出し部11の長手方向長さが覆工板5の短辺の3倍の長さになっているケースを例に挙げて説明する。ただし、これに限定されるものではなく、張り出し部11の長手方向長さについては、覆工板5の短辺の長さの整数倍である限り、任意の長さに設定することが可能である。
【0038】
また、本実施形態では、図2に示すように、張り出し部11の張り出し量が横壁12の短手方向長さよりも短くなっている。さらに、延出方向において張り出し部11の両端よりも幾分中央寄りの部位には貫通穴11hが形成されている。この貫通穴11hが穿設されている部分の下方位置には、柵固定筒部16が設けられている。
【0039】
また、張り出し部11のうち、貫通穴11hよりも延出方法中央寄りの位置には、他の貫通穴である係合穴11kが穿設されている。この係合穴11kは、張り出し部11において2箇所設けられており、クレーン等を用いて山留部材10を吊り上げる際に不図示の吊り上げ用フックを引っ掛けるための穴である。
【0040】
補強プレート14は、鉄板等の剛性材料で形成された矩形板型の補強リブであり、延出方向において一定間隔毎に設けられている。各補強プレート14は、その下端面が横壁12の上面に、上端面が張り出し部11の下面に、後端面が縦壁13の内側面にそれぞれ当接した状態で、溶接等により固定されている。なお、補強プレート14の設置数や設置位置は、上述の実施態様に限定されず、山留部材10に掛かる土圧等を勘案して適宜変更してもよい。
【0041】
連結プレート15は、山留部材10同士を締結するための部材であり、延出方向端部に設けられている。具体的に説明すると、路面覆工作業において、山留部材10は、掘削溝Cの幅方向両側でそれぞれ、側壁に沿って複数並べられ、列をなした状態で設置される。そして、互いに隣り合う山留部材10同士が、その延出方向端部に設けられた連結プレート15をボルト・ナット等の締結部材によって締結されることで連結するようになる。
【0042】
連結プレート15の構成について説明すると、鉄板等の剛性材料で形成された矩形型の板部材である。各連結プレート15は、その下端面が横壁12の上面に、上端面が張り出し部11の下面に、後端面が縦壁13の内側面にそれぞれ当接した状態で、溶接等により固定されている。また、連結プレート15には、ボルトを挿通させるための穴(ボルト穴)が複数穿設されている。
【0043】
柵固定筒部16は、前述した安全柵6を設置するための部材であり、張り出し部11に穿設された貫通穴11hの下方位置に配置されている。より具体的に説明すると、山留部材10には柵固定筒部16が2つ設けられており、各柵固定筒部16は、その内側空間(孔内部)が貫通穴11hと連通する位置で縦壁13の内側面に接合されている。そして、安全柵6の縦支柱を、張り出し部11の貫通穴11hを通じて柵固定筒部16内に挿通することにより、安全柵6が山留部材10に対して組み付けられるようになる。
【0044】
<<路面覆工作業の流れ>>
次に、上述した山留部材10を用いた路面覆工作業の流れについて、図3を参照しながら説明する。図3は、上述した山留部材10を用いた路面覆工作業にて構築される路面覆工構造を示す図であり、(A)が平面図を、(B)が(A)のX−X断面図を、(C)が(A)のY−Y断面図を、それぞれ示している。なお、図3の(A)及び(C)には、矢印にて、掘削溝Cの幅方向が示されており、図3の(A)及び(B)には、矢印にて、掘削溝Cの形成方向が示されている。
【0045】
路面覆工作業を開始するに際して、路面の表層、すなわち、舗装層Aに不図示のカッターを入れて、掘削溝Cの開口と対応した矩形状のカット線を形成する。その後、カット線に沿って舗装層A及びその下の土層Bを掘削する。この結果、底壁と底壁から立ち上がった4つの側壁を有する長方形状の掘削溝Cが形成されるようになる。
【0046】
次に、掘削溝Cの形成方向一端部(以下、始端部)において、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ山留部材10を、互いに対向するように一対配置する。このとき、掘削溝Cの幅方向一端側に配置される山留部材10については、幅方向一端側に位置する側壁に縦壁13の背面を対向させるように配置される。同様に、掘削溝Cの幅方向他端側に配置される山留部材10については、幅方向他端側に位置する側壁に縦壁13の背面を対向させるように配置される。
【0047】
以上のような手順により、一対の山留部材10が、その間に一定のスペースを空け、かつ、互いに平行となった状態で掘削溝Cの始端部に配置されるようになる。そして、各山留部材10では、張り出し部11が掘削溝Cの幅方向内側に向かって延出している。ここで、掘削溝Cの幅方向一端側に配置された山留部材10の張り出し部11と、幅方向他端側に配置された山留部材10の張り出し部11と、の間隔をD1とする。また、掘削溝Cの幅方向一端側に配置された山留部材10の縦壁13と、幅方向他端側に配置された山留部材10の縦壁13と、の間隔をD2とする。
【0048】
次に、掘削溝Cの始端部に配置した一対の山留部材10のそれぞれの延出方向一端、具体的には、掘削溝Cの始端と同じ側に位置する端に端部プレート20を取り付ける。この端部プレート20は、平板状の部材であり、その背面にて掘削溝Cの始端に位置する側壁と対向し、同側壁に対して山留効果を発揮する。そして、端部プレート20は、掘削溝Cの始端部に配置した一対の山留部材10の各々の延出方向一端部に設けられた連結プレート15に当接し、当該連結プレート15に対してボルト止めされることで組み付けられる。
【0049】
次に、掘削溝Cの始端部に配置した一対の山留部材10の間に覆工板5を配置する。より詳しく説明すると、本実施形態では、前述したように矩形状の覆工板5を用いる。ここで、覆工板5の長辺の長さ(長手方向の長さ)をtとしたとき、本実施形態では下記の関係式(1)が成立している。
D1<t≦D2 (1)
【0050】
本実施形態では、特に、t=D2となるように成形された覆工板5が用いられる。そして、上記の如く成形された覆工板5を、その長手方向と掘削溝Cの幅方向とが互いに一致する向きにて各山留部材10の張り出し部11に載置する。すなわち、本実施形態では、図3の(A)に示すように、掘削溝Cの形成方向に対して覆工板5を横向きに配置する。
【0051】
より具体的に説明すると、図3の(C)に示すように、覆工板5の長手方向一端部を、掘削溝Cの幅方向一端側に配置された山留部材10の張り出し部11の上に載置する。同様に、覆工板5の長手方向他端部を、掘削溝Cの幅方向他端側に配置された山留部材10の張り出し部11の上に載置する。このように本実施形態では、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ配置された山留部材10の張り出し部11に覆工板5の長手方向端部を載置することで、覆工板5が山留部材10の間に配置されるようになる。つまり、覆工板5を配置するにあたり、覆工板5の長手方向端部を山留部材10の張り出し部11の上に載置するだけでよく、特にボルト止め等の接合作業を要しない。その分、覆工板5の配置作業を含む路面覆工作業が省力化されることになり好適なものとなる。
【0052】
また、本実施形態では、t=D2となるように成形された覆工板5が用いられるため、覆工板5を山留部材10間に配置すると、図3の(C)に示すように、覆工板5の長手方向一端が、掘削溝Cの幅方向一端側に配置された山留部材10の縦壁13の内側面に当接するようになる。同様に、覆工板5の長手方向他端が、掘削溝Cの幅方向他端側に配置された山留部材10の縦壁13の内側面に当接するようになる。これにより、縦壁13が掘削溝Cの幅方向内側に倒れるのを覆工板5の長手方向端面によって効果的に抑えることが可能となる。つまり、覆工板5は、山留部材10間に配置されることで、縦壁13に掛かる土圧や載荷重を支える支保工として機能し、掘削溝Cの側壁の緩みや崩れを抑制するようになる。
【0053】
また、本実施形態では、張り出し部11の長手方向長さが覆工板5の短辺の整数倍(具体的には3倍)となっている。したがって、一対の山留部材10の間において、延出方向一端側から覆工板5を横置きにて順次配置していくと、図3の(B)に示すように丁度3つの覆工板5を敷設することが可能となる。つまり、本実施形態では、山留部材10間に覆工板5が収まり良く配置されることになる。
【0054】
次に、掘削溝Cの始端部に配置した山留部材10と隣り合う位置に、それぞれ、新たな山留部材10を配置する。このとき、新たな山留部材10は、掘削溝Cの始端部に山留部材10を配置したときと同様の手順にて、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ、互いに対向するように配置される。
【0055】
そして、新たに配置された山留部材10と、これに隣り合う山留部材10とは、それぞれの延出方向端部に設けられた連結プレート15同士を当接させてプレート間をボルト・ナットで締結することで連結するようになる。その後、新たに配置された一対の山留部材10間に覆工板5を横置きにて配置する。
【0056】
なお、覆工板5の配置作業については、前述した手順と同様の手順にて行われる。すなわち、新たに配置された一対の山留部材10の各々の張り出し部11に覆工板5の長手方向端部を載置する。そして、覆工板5を山留部材10間に配置すると、その長手方向両端のそれぞれが、掘削溝Cの幅方向の両側に配置された山留部材10のうち、対応する山留部材10の縦壁13の内側面に当接するようになる。このようにして一対の山留部材10の間において延出方向一端側から覆工板5を横置きにて順次配置していくと、丁度3つの覆工板5が敷設されるようになる。
【0057】
そして、山留部材10の配置工程、及び覆工板5の配置工程は、掘削溝Cの全長(形成方向における長さ)に応じた回数だけ、上記と同様の手順にて繰り返し行われる。これにより、掘削溝Cの開口が覆工板5によって徐々に塞がれるようになる。
【0058】
そして、山留部材10を掘削溝Cの形成方向他端部(以下、終端部)において、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ山留部材10を、互いに対向するように一対配置する。かかる工程が終了すると、最後の山留部材10の配置作業が完了することになる。なお、掘削溝Cの終端部においても、掘削溝Cの始端部に山留部材10を配置したときと同様の手順にて山留部材10を配置することになる。
【0059】
また、掘削溝Cの終端部に配置された山留部材10については、これと隣り合う山留部材10と連結プレート15を介して締結される。以上のように本実施形態では、掘削溝Cの幅方向両端に位置する側壁に沿って山留部材10を列状に複数並べ、互いに隣り合う山留部材10同士を締結することとしている。この結果、掘削溝Cの側壁に沿って列状に並んだ山留部材10が梁を構成するようになる。これにより、山留部材10の張り出し部11に載置される覆工板5の沈下を、効果的に抑制することが可能となる。
【0060】
なお、図3に示す路面覆工構造では、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ3個ずつ山留部材10を並べることとしたが、山留部材10の使用個数については掘削溝Cの全長に応じて適宜設定されるとよい。また、山留部材10については、その長手方向長さを変えて複数のバリエーションを用意し、掘削溝Cの全長に応じて組み合わせた複数種の山留部材10を用いてもよい。
【0061】
次に、掘削溝Cの終端部に配置した一対の山留部材10のそれぞれの延出方向一端、具体的には、掘削溝Cの終端と同じ側に位置する端に端部プレート20を取り付ける。この端部プレート20は、その背面にて掘削溝Cの終端に位置する側壁と対向し、同側壁に対して山留効果を発揮する板状部材である。そして、端部プレート20は、掘削溝Cの終端部に配置した一対の山留部材10の各々の延出方向一端部に設けられた連結プレート15に当接し、当該連結プレート15に対してボルト止めされることで組み付けられる。
【0062】
その後、掘削溝Cの終端部に配置した一対の山留部材10の間に、覆工板5を横置きにて配置する。なお、覆工板5の配置作業については、前述した手順と同様の手順にて行われる。すなわち、掘削溝Cの終端部に配置した一対の山留部材10の各々の張り出し部11に、覆工板5の長手方向端部を載置する。そして、覆工板5を山留部材10間に配置すると、その長手方向両端のそれぞれが、掘削溝Cの幅方向の両側に配置された山留部材10のうち、対応する山留部材10の縦壁13の内側面に当接するようになる。このようにして一対の山留部材10の間において延出方向一端側から覆工板5を横置きにて順次配置していくと、丁度3つの覆工板5が敷設されるようになる。
【0063】
以上までに説明した一連の工程が終了すると、路面覆工構造が完成し、掘削溝Cの開口が覆工板5によって塞がれるようになる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る路面覆工方法によれば、在来工法において覆工板5を支持するために用いていた受桁を要さず、山留部材10を用いて覆工板5を支持する。より具体的に説明すると、掘削溝Cの幅方向両側にそれぞれ配置した山留部材10の各々の張り出し部11に覆工板5の長手方向端部を載置することで、覆工板5を山留部材10の間に配置する。このようにすれば各覆工板5の長手方向中央部の下方位置にスペースが確保されるようになる。すなわち、在来工法において掘削溝C内で受桁が占めていたスペースを有効活用することが可能となる。このため、工事を再開するために覆工板5を撤去して掘削溝C内で作業を開始する際に、路面覆工用の部材と干渉するのを回避し、作業をスムーズに進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
5 覆工板
6 安全柵
7 矢板
8 埋設管
10 山留部材
11 張り出し部
11h 貫通穴
11k 係合穴
12 横壁
13 縦壁
14 補強プレート
15 連結プレート
16 柵固定筒部
20 端部プレート
A 舗装層
B 土層
C 掘削溝
101 山留部材
102 横壁
103 縦壁
104 受桁
105 覆工板
図1
図2
図3
図4