(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429532
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】電源装置及び定着装置、定着装置を備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20181119BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20181119BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20181119BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
H02M1/08 301A
G03G15/20 555
G03G15/20 505
G03G21/00 398
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-166844(P2014-166844)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2016-46831(P2016-46831A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】磯野 青児
(72)【発明者】
【氏名】真野 宏
(72)【発明者】
【氏名】林崎 実
(72)【発明者】
【氏名】西沢 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 明
【審査官】
小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−081137(JP,A)
【文献】
特開2001−201968(JP,A)
【文献】
特開2000−223252(JP,A)
【文献】
特開平11−126678(JP,A)
【文献】
特開2008−278552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
G03G 15/20
G03G 21/00
H02M 3/155
H03K 17/22
H03K 17/691
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一と第二のトランスと、前記第一のトランスの一次側を駆動する第一の駆動素子と、前記第二のトランスの一次側を駆動する第二の駆動素子と、前記第一のトランスの二次側に接続された第一のスイッチング素子と、前記第二のトランスの二次側に接続されており前記第一のスイッチング素子の低電位側に、該第一のスイッチング素子と直列に接続された第二のスイッチング素子と、を備え、前記第一と前記第二のスイッチング素子を交互にオンして電圧を生成する電源装置において、
前記第一のトランスの二次側と前記第一のスイッチング素子の間に接続されており、前記第一のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第一回路と、
前記第二のトランスの二次側と前記第二のスイッチング素子の間に接続されており、前記第二のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第二回路と、を有し、
前記第一の駆動素子をオンすることにより、前記第一のスイッチング素子の駆動電圧信号として正電圧の信号が印加されて前記第一のスイッチング素子をオンし、前記正電圧の信号を印加した後に、前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、負電圧の信号が印加されてから基準電位の信号が印加され、前記負電圧の信号が印加されている所定期間において、前記第二の駆動素子をオンすることにより、前記第二のスイッチング素子に駆動電圧信号として正電圧の信号が印加されて前記第二のスイッチング素子をオンすることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第一の駆動素子と前記第二の駆動素子を駆動するための制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第一と前記第二のスイッチング素子は、MOSFET又はIGBTであることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第一回路における二つの抵抗素子の夫々の抵抗値に基づき、前記第一のスイッチング素子の駆動電圧信号として正電圧の信号が印加される期間と、前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、前記負電圧の信号が印加される期間が決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
記録媒体に転写されたトナー画像を該記録媒体に定着するための定着装置において、
発熱体と、
前記発熱体を発熱するための励磁コイルと共振コンデンサを含む共振回路と、
前記共振回路を駆動するための電源を有し、
前記電源は、
第一と第二のトランスと、前記第一のトランスの一次側を駆動する第一の駆動素子と、前記第二のトランスの一次側を駆動する第二の駆動素子と、前記第一のトランスの二次側に接続された第一のスイッチング素子と、前記第二のトランスの二次側に接続されており前記第一のスイッチング素子の低電位側に、該第一のスイッチング素子と直列に接続された第二のスイッチング素子と、を備え、前記第一と前記第二のスイッチング素子を交互にオンして電圧を生成する電源装置において、
前記第一のトランスの二次側と前記第一のスイッチング素子の間に接続されており、前記第一のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第一回路と、
前記第二のトランスの二次側と前記第二のスイッチング素子の間に接続されており、前記第二のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第二回路と、を有し、
前記第一の駆動素子をオンすることにより、前記第一のスイッチング素子の駆動電圧信号として正電圧の信号が印加されて前記第一のスイッチング素子をオンし、前記正電圧の信号を印加した後に、前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、負電圧の信号が印加されてから基準電位の信号が印加され、前記負電圧の信号が印加されている所定期間において、前記第二の駆動素子をオンすることにより、前記第二のスイッチング素子に駆動電圧信号として正電圧の信号が印加されて前記第二のスイッチング素子をオンすることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
前記第一の駆動素子と前記第二の駆動素子を駆動するための制御手段を有することを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記第一と前記第二のスイッチング素子は、MOSFET又はIGBTであることを特徴とする請求項5または6に記載の定着装置。
【請求項8】
更に、前記発熱体の温度を検出する温度検出手段と、
前記発熱体の温度を制御するために前記電源を制御する電源制御手段を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記共振回路は、電流共振回路又は電圧共振回路であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記共振回路は、前記励磁コイルが前記共振回路から取り外すことが可能であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第一回路における二つの抵抗素子の夫々の抵抗値に基づき、前記第一のスイッチング素子の駆動電圧信号として正電圧の信号が印加される期間と、前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、前記負電圧の信号が印加される期間が決定されることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項12】
記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段と、
請求項5乃至11のいずれか1項に記載の定着装置とを有し、
前記定着装置によって前記記録媒体に形成された前記トナー画像を、該記録媒体に定着することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つのスイッチング素子を交互に駆動する駆動部を備えた電源装置、その電源装置を備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電源装置におけるハーフブリッジ方式の駆動回路として、電圧駆動型の半導体スイッチ素子のゲート端子に正電圧と負電圧を印加する駆動回路が知られている。(特許文献1参照。)また、半導体スイッチング素子を上下に配置した駆動回路として複数の方式が知られている。その例を
図10に示す、
図10(a)はハーフブリッジ全波整流方式の駆動回路、
図10(b)に示したハーフブリッジ半波整流方式の駆動回路、
図10(c)は同期整流方式の駆動回路。
図10(d)は電圧共振回路である。
図10の回路においてQ1はハイサイド側のスイッチング素子であり、Q2はローサイド側のスイッチング素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−265661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような半導体スイッチング素子を上下に配置した駆動回路において、夫々の半導体スイッチング素子を交互に、且つ重なって導通しないように調整する必要がある。例えば、導通した半導体スイッチ素子のゲート端子の電圧(ゲート電圧)の変動によって、被導通の半導体スイッチが誤ってオンする可能性がある等、二つの半導体スイッチを重複してオンしないように制御するための対策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の電源装置は、
第一と第二のトランスと、前記第一のトランスの一次側を駆動する第一の駆動素子と、前記第二のトランスの一次側を駆動する第二の駆動素子と、前記第一のトランスの二次側に接続された第一のスイッチング素子と、
前記第二のトランスの二次側に接続されており前記第一のスイッチング素子の低電位側に、該第一のスイッチング素子と直列に接続された第二のスイッチング素子と、
を備え、前記第一と前記第二のスイッチング素子を交互にオンして電圧を生成する電源装置において、
前記第一のトランスの二次側と前記第一のスイッチング素子の間に接続されており、前記第一のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第一回路と、
前記第二のトランスの二次側と前記第二のスイッチング素子の間に接続されており、前記第二のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第二回路と、を有し、前記第一の駆動素子をオンすることにより、前記第一のスイッチング素子の
駆動電圧信号として正電圧
の信号が印加
されて前記第一のスイッチング素子をオンし、前記正電圧
の信号を印加した後に、
前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、負電圧の信号が印加されてから基準電位の信号が印加され、前記負電圧
の信号が印加されている
所定期間において、
前記第二の駆動素子をオンすることにより、前記第二のスイッチング素子に
駆動電圧信号として正電圧
の信号が印加
されて前記第二のスイッチング素子をオンする
ことを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の定着装置は、記録媒体に転写されたトナー画像を該記録媒体に定着するための定着装置において、発熱体と、前記発熱体を発熱するための励磁コイルと共振コンデンサを含む共振回路と、前記共振回路を駆動するための電源を有し、前記電源は、
第一と第二のトランスと、前記第一のトランスの一次側を駆動する第一の駆動素子と、前記第二のトランスの一次側を駆動する第二の駆動素子と、前記第一のトランスの二次側に接続された第一のスイッチング素子と、
前記第二のトランスの二次側に接続されており前記第一のスイッチング素子の低電位側に、該第一のスイッチング素子と直列に接続された第二のスイッチング素子と、
を備え、前記第一と前記第二のスイッチング素子を交互にオンして電圧を生成する電源装置において、
前記第一のトランスの二次側と前記第一のスイッチング素子の間に接続されており、前記第一のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第一回路と、前記第二のトランスの二次側と前記第二のスイッチング素子の間に接続されており、前記第二のトランスの二次側に直列に接続された二つの抵抗素子と、該二つの抵抗素子のうちの高電位側に接続されている抵抗素子の両端に接続された二つの整流素子を有する第二回路と、を有し、前記第一の駆動素子をオンすることにより、前記第一のスイッチング素子の
駆動電圧信号として正電圧
の信号が印加
されて前記第一のスイッチング素子をオンし、前記正電圧
の信号を印加した後に、
前記第一のスイッチング素子のオフ期間において、負電圧の信号が印加されてから基準電位の信号が印加され、前記負電圧
の信号が印加されている
所定期間において、
前記第二の駆動素子をオンすることにより、前記第二のスイッチング素子に
駆動電圧信号として正電圧
の信号が印加
されて前記第二のスイッチング素子をオンする
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、半導体スイッチング素子のゲート端子に印加される電圧の変動を低減し、半導体スイッチング素子の誤動作や故障を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施例1に係わる電源装置の駆動方法を説明する図である。
【
図3】実施例1に係わる電源装置の駆動時の各素子の電圧の状態を示す図である。
【
図4】実施例2に係わる画像形成装置を説明する図である。
【
図5】実施例2に係わる定着装置を説明する図である。
【
図6】実施例2に係わる電源装置を説明する図である。
【
図7】実施例2に関わる動作波形を示す説明図である。
【
図9】変形例の電源装置を適用可能な加熱装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
実施例1について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は本実施例の電源装置の回路図である。
図2は
図1の回路図の駆動方法を説明する図であり、
図3は駆動に係わる回路素子の電圧の変化の状態を説明する図である。
【0010】
図1は二つの半導体スイッチング素子を上下に接続し、夫々を交互にオンするためのハーフブリッジ回路の一例である。本実施例の回路は、電力の供給対象(負荷)の一例として、モーターに供給する電力を生成する駆動回路である。
図1において、Q1、Q2は電圧駆動型の第一と第二の半導体スイッチング素子であり、半導体スイッチングQ1は、高電位側(ハイサイド)のスイッチング素子であり、Q2は低電位側(ローサイド)のスイッチング素子である。これらの半導体スイッチング素子Q1、Q2は交互にオン/オフされる。また、3、4、7、8、15、16は抵抗素子であり、5、6、11、13、14、19はダイオードである。更に、9、17は電磁トランスであり、10、18は第三と第四のスイッチング素子としてのFET(Field Effect Transistor/電界効果トランジスタ)である。また、12、20は直流電源であり、22は負荷である。ここで、電圧駆動型の半導体スイッチング素子Q1、Q2は、MOSFET又はIGBTを用いることができる。なお、Q1、Q2はこれらの素子以外の電圧駆動型の半導体スイッチング素子を適用可能である。また、制御回路40はスイッチング素子10、18のオンオフを制御する回路である。
【0011】
次に、
図1の回路の駆動方法を
図2を用いて説明する。
図2において、制御回路40からスイッチング素子10のゲート・ソース間にパルス制御信号(SigH信号)が入力される。同様に、制御回路40からスイッチング素子18のゲート・ソース間にパルス制御信号(SigL信号)が入力される。SigH信号がスイッチング素子10に入力されるとトランス9の出力側に誘導電圧が発生し、SigH信号のオン状態に応じた正電圧Vpのパルスが発生する。更に、SigL信号がオフ期間中にSigH信号がオンからオフに変化すると、SigH信号のオフ状態よりも短い所定期間、負電圧Vmのパルスが発生する。その後、残りのオフ期間は基準電位(0V)に戻るゲート駆動電圧信号(VgsH信号)がスイッチング素子Q1のゲート・ソース間に入力される。ここで、正電圧Vpと負電圧Vmの比率は抵抗素子7と抵抗素子8の抵抗値の比率により決定される。また、この抵抗素子7と8はトランス9の誘導電圧のダンピング抵抗の機能も有している。同様に、SigL信号に応じて、正電圧Vp、負電圧Vm、基準電圧(0V)に変化するゲート駆動信号VgsLがスイッチング素子Q2のゲート・ソース間に入力される。また、ゲート駆動信号VgsHとゲート駆動信号VgsLは、VgsHが負電圧の期間にVgsLが正電圧Vpに変化し、VgsLが負電圧の期間にVgsHが正電圧Vpに変化するタイミングの関係になる。
【0012】
更に、
図3を用いて本実施例の動作について詳細に説明する。
図3は
図1のハーフブリッジ回路を駆動した際の駆動に係わる回路素子の電圧の状態を説明する図である。ここで、
図3(a)は本実施例の回路素子の電圧の状態を示しており、
図3(b)は従来の駆動回路における回路素子の電圧の状態を示している。
【0013】
まず、従来の駆動回路の状態を
図3(b)に基づいて説明する。
図3(b)において、半導体スイッチング素子Q1にSigH信号に応じた期間正電圧が印加されてオンする。その後、負電圧Vmが所定期間印加されて、半導体スイッチング素子Q1がオフされる。そして、電圧駆動型の半導体スイッチング素子Q1のゲート・ソース電圧VgsHが負電圧Vmから正電圧Vpへ急激に変化すると、ドレイン・ソース電圧VdsLが0VからVinに変化する。その結果、電圧駆動型の半導体スイッチング素子Q2のゲート・ドレイン間容量Cgdを通してゲート・ソース間容量Cgsが充電され、ゲート駆動信号VgsLの電位が増加する。これにより、ゲート駆動信号VgsLの電位が半導体スイッチング素子Q2のスレッショルド電圧Vthを超えてしまう。こうなると、本来、オフしている半導体スイッチング素子Q2がオンすることになり、誤動作もしくは、Q1とQ2の両方が重なって導通することで、回路が故障に至る可能性があった(もしくは故障に至るまでのマージンが少ない場合があった。)。
【0014】
これに対し、
図3(a)に示すような本実施例の駆動回路では、パルス制御信号(SigH信号)がオンするに応じてゲート駆動信号VgsHが基準電位(0V)から正電圧Vp変化する。従って、従来ではVmからVpまで変化するのに比べて電圧上昇分が小さくなる。すなわち、ゲート駆電圧VgsLの電位の増加分も小さくなり、スレッショルド電圧Vthを超えることを防止することができる。本実施例の特徴は、このように半導体スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧の上昇分を従来に比べて小さくすることが特徴である。
【0015】
以上説明したように、本実施例1によれば、ハーフブリッジ回路のスイッチング素子Q1のオン時に、スイッチング素子Q2のゲート・ソース間容量が急激に増加してQ2がオンしてしまうことを防止することができる。従って、スイッチング素子Q2の誤動作、又故障までのマージンを増やすことが可能となり、信頼性を向上することができる。
【0016】
(実施例2)
次に実施例2について、
図4、
図5、
図6、
図7を用いて説明する。本実施例は、実施例1のハーフブリッジ回路を画像形成装置に適用したものである。まず、本実施例の画像形成装置である電子写真方式のレーザービームプリンタについて、
図4に基づいて説明する。
【0017】
図4に示すように、本実施例の画像形成装置は、装置本体に像担持体としての感光ドラム101を有する。そして感光ドラム101の周囲に、帯電器102、現像装置104、転写ローラ108、クリーニング装置109などを備えている。感光ドラム101は図中矢印方向に所定の周速度、即ち、画像形成速度で回転駆動されて、その回転の過程で帯電器102により感光ドラム101の表面を所定極性の電位に一様に帯電処理する。
【0018】
レーザービームスキャナ103は、不図示のコンピュータ、画像読取装置等のホスト装置から入力される画像情報に基づき変調されたレーザービームLを出力し、一様に帯電処理された感光ドラム101の表面に画像情報に対応した静電潜像が形成される。静電潜像は、現像装置104によって現像剤を用いてトナー画像に現像される。
【0019】
一方、給紙トレイ105に積載された記録媒体としてのシートPが供給ローラ106によって一枚ずつ送り出される。そして、シートPはローラ107で感光ドラム101上に形成されたトナー画像と同期するように搬送が調整され、感光ドラム101と転写ローラ108で形成された転写ニップ部Tに導入される。転写ニップ部Tにおいて、転写ローラ108に高電圧(転写バイアスともいう)が印加されることによって感光ドラム101上に形成されたトナー画像がシートPに転写される。
【0020】
シートPにトナー画像が転写された後、感光ドラム101は、その上に残留したトナーがクリーニング装置109によって除去されてから、次のトナー画像の形成動作に移行する。また、トナー画像が転写されたシートPは定着装置110に搬送される。定着装置110ではトナー画像が転写されたシートPに熱と圧力を付与してトナー画像をシートP上に定着させて排紙トレイ111にシートPが排出される。なお、定着装置110は、電源装置120に接続され、定着動作に必要な電力が供給されている。
【0021】
次に、定着装置110について説明する。本実施例における定着装置110は磁気誘導発熱性フィルム(金属フィルム)を用いた誘導加熱方式の定着装置である。まず、定着装置110の全体構成について
図5に基づき説明する。
【0022】
図5において、定着装置110は発熱体110Aと、加熱体110Aに圧接して定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ110Bとを有する。発熱体110Aは、横断面上向き半円弧状(樋型)のフィルム内面ガイドステー119を有する。そしてガイドスター119の内側には線輪としての励磁コイル、即ち、加熱用コイル112と、励磁コアとしての芯材113とが配設されている。また、ガイドステー119の外側には円筒状(エンドレス状)の磁気誘導発熱性フィルム114が摺動可能に外嵌されている。更に、ガイドステー119の上面の開口部には蓋板115が被せられ、さらにその上に加圧用ステー116が設けられている。
【0023】
加圧ローラ110Bは芯金117aと、その周囲に被覆されたシリコーンゴム、又は、フッ素ゴムなどの弾性層117bとから構成され、フィルム114を挟んでガイドステー119の下面と所定の押圧力で圧接されている。加圧ローラ110Bは駆動手段としてのモータMによって図中の矢印方向に回転される。この回転駆動による加圧ローラ110Bとフィルム114の外面の摩擦力でフィルム114においてガイドステー119の下面に密着して摺動し、ガイドステー119の外回りを回転する。
【0024】
また、フィルム115の内面のガイドステー119の下面における定着ニップ部Nに対応する部分に、温度検知部材としてのサーミスタ118が配置されている。更に、励磁コイル112に高周波電流を印加するための電源装置120が接続されている。電源装置120にて励磁コイル112に高周波電流が印加されると、フィルム114の定着ニップ部Nの領域で磁気誘導加熱により発熱する。定着ニップ部Nの温度は、サーミスタ118で検出して、その検出した温度情報を電源装置120の制御回路に入力して、定着ニップ部Nの温度が所定の定着温度になるように電源装置120から励磁コイル112に印加する高周波電流を制御する。
【0025】
次に、本発明の特徴部分である電源装置120について説明する。電源装置120は、
図6に示すように電圧共振方式のコンバータである。ラインフィルタ32、ブリッジダイオード33、フィルタコンデンサ21、スイッチング素子1、主スイッチング素子2、第一の共振コンデンサ24、第二の共振コンデンサ25、ゲート駆動回路26を有する。また、定着装置110は、励磁コイル23(加熱用コイル112と同じであり、共振回路の構成要素であるため励磁コイル23としている)、磁気誘導発熱性フィルム114、サーミスタ118等で構成)を有する。そして、定着装置110を取り外す為のコネクタ29、30、31、定着装置110内のサーミスタ118に接続された温度検出回路37、スイッチング制御回路34で構成されている。第一の共振コンデンサ24、第二の共振コンデンサ25、定着装置110内の励磁コイル23とで電圧共振回路を構成している。
【0026】
次に、
図6と
図7により各部の動作を説明する。
図7は
図6の回路構成における動作波形を示す説明図である。S1はスイッチング素子Q1のゲート電圧波形、S2は主スイッチング素子Q2のゲート電圧波形である。また、S3は主スイッチング素子Q2の電流波形、S4は主スイッチング素子Q2の電圧波形である。また、S5は第一の共振コンデンサ24の電流波形、S6は第二の共振コンデンサ25の電流波形、S7はスイッチング素子1の電流波形、S8はスイッチング素子1のボディダイオードの電流波形、S9は励磁コイル23の励磁電流波形である。なお、商用交流電源(ACライン)から入力された交流電圧は、ラインフィルタ32を介してブリッジダイオード33により全波整流され、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2に印加される。
【0027】
先ず、スイッチング素子Q2のスイッチングオンにより、ダイオードブリッジ33より励磁コイル23に誘導電流が流れる。スイッチングのオフ(A点)と同時に励磁コイル23は電流を維持する方向のフライバック電圧を発生する。第1の共振コンデンサ24と第2の共振コンデンサ25の残留電荷の差が生じるため、スイッチング素子Q2のオフ直後は第2の共振コンデンサ25と励磁コイル23で決まる共振周期ω=√(L×C)で定まる弧を描く。ここで、第1の共振コンデンサ24に対して、第2の共振コンデンサ25は、1/10程度の容量に設定してあるものとする。従って、オフ直後の電圧は高周期でフライバック電圧を発生する(A‐Bの期間)。
【0028】
このフライバック電圧の振動は、第1の共振コンデンサ24の初期チャージ電圧まで上昇した時点(B点)でスイッチング素子Q1のボディダイオードをオンする。そして、第一の共振コンデンサ24及び第2の共振コンデンサ25の合成容量によって緩やかなサイン波に切り替わり電圧が上昇する。この時の第一の共振コンデンサ24の電流波形をS5、スイッチング素子Q1のボディダイオードの電流波形をS8に示してある。また、第二の共振コンデンサ25の電流波形をS6に示してある。
【0029】
時間の経過に伴って電圧が上昇しω/4(共振周期の1/4の期間)が経過した時点で最大値(C点)に到達する。一方、第1の共振コンデンサ24の電流波形は電圧波形の微分波形に相当するコサイン波の電流が流れるため、電圧の最大値(C点)では電流の最小値(ゼロクロス波形)となる。ゼロクロス点以降はスイッチング素子Q1のボディダイオードがオフするため、スイッチング素子Q1のゲートをオンして電流を回生する(C‐D期間)。スイッチング素子Q1をオフした時点(D点)で第1の共振コンデンサ24が切り離され、少容量の第2の共振コンデンサ25の共振となり、高周期な弧(D‐E期間)を描く。なお、第1、第2のスイッチ素子Q1とQ2をオンオフするための、ゲート駆動回路26につては実施例1で説明した回路構成と同一である。
【0030】
また、温度検出回路37は、サーミスタ118及びスイッチング制御回路34に接続され、スイッチング制御回路34は、温度検出回路37からの信号に基づいてスイッチング素子10、18の動作を制御する。具体的には、スイッチング制御回路34内に設けられた周波数変調回路35によって周波数を制御する。もしくは、デューティ制御回路36によってオフ時間(デューティ幅ともいう)を制御する。この周波数の制御やオフ時間の制御は、いずれか一方を選択してもよいし、組み合わせて制御することも可能であり、加熱用コイル23に誘起する電圧を適切に制御するための制御に使用される。
【0031】
また、本実施例のゲート駆動方法は、実施例1と同様である。しかし、本実施例では、電圧共振回路を構成する励磁コイル23は、レーザービームプリンタ本体に対して定着装置110と共に取り外すことが可能な構成になっている。コネクタ29と30が高抵抗で接続している場合や取り外した状態で電源動作した場合、スイッチング素子Q1、Q2で構成しているハーフブリッジ回路の負荷が容量性になる。これにより、ゲート駆動電圧信号VgsH尊号に起因するゲート駆動電圧信号VgsLの電圧変動が大きくなる。その為、本実施例のゲート駆動方法を実施すれば、実施例1と同様、ゲート駆動波形の電圧変化に起因する下側(低電位側)の電圧駆動型半導体スイッチング素子の誤動作及び故障までのマージンを増やすことが可能となり信頼性が確保できる。
【0032】
本実施例では、電磁誘導加熱方式の定着装置の電源としての適用した例を示している。しかし、本発明は温度検出回路37を出力電圧を検出するよう構成すれば一般的なスイッチング電源に適用可能である。
【0033】
<電源装置の変形例>
次に、実施例2で説明した電源装置120の変形例について
図8を用いて説明する。
図8の構成は実施例2の電源装置120内の共振回路の構成が異なる。変形例の特徴部分について以下に説明する。
【0034】
図8の電源装置120は、電流共振方式のコンバータで、電流共振回路が
図8に示すように、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、共振コンデンサ24、ゲート駆動回路26、励磁コイル23、磁気誘導発熱性フィルム114で構成されている。
【0035】
スイッチング素子Q1をオンすることにより、励磁コイル23と共振コンデンサ24で構成された直列共振回路に電流が流れはじめ、Q1がオン状態を続けると直列共振回路と、不図示の回路の抵抗により定まるピーク電流となった後、電流が減少する。次に、のスイッチング素子Q1をオフした後、スイッチング素子Q2をオンすると、コイル電流と共振コンデンサ24に貯えられていた電荷による電流が第2のスイッチング素子2を通してニュートラル側へ流れる。この電流も時間とともに増加し、回路定数によって定まるピーク値を迎えた後、電流は減少する。この際、励磁コイル23と共振コンデンサ24で構成された直列共振回路に流れる電流は正弦波となる。
【0036】
なお、変形例のゲート駆動方法は、実施例2と同様であり、同様な効果を得ることができる。また、変形例の駆動回路は、例えば、加熱装置として
図9に示す構成に適用することができる。
図9の構成は、励磁コイル112、閉磁コア121、導電性フィルム122、加圧ローラ117を備えた構成である。電源装置120にて励磁コイル112に高周波電流が印加されると、導電性フィルム122の周回方向に起電力が発生し、導電性フィルム122の抵抗値に応じたジュール熱が発生することで、導電性フィルム122全体の加熱を行う。加圧ローラ117は導電性フィルム122を挟んで不図示のガイドステーの下面と所定の押圧力で圧接されている。加圧ローラ117は駆動手段としてのモータMにより回転される。この回転駆動による加圧ローラ117と導電性フィルム122の外面との摩擦力でフィルム122において不図示のガイドステーの下面に密着して摺動しながら回転する。なお、
図8では閉磁コアを用いた構成であるが閉磁コアを用いた加熱装置でも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
Q1、Q2 スイッチング素子
3、4、7、8、15、16 抵抗素子
5、6、11、13、14、19 ダイオード
10、18 FET
12、20 直流電源
22 負荷