特許第6429572号(P6429572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429572
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】信号伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/04 20060101AFI20181119BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   H01P1/04
   H05K1/11 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-204770(P2014-204770)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-76773(P2016-76773A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099461
【弁理士】
【氏名又は名称】溝井 章司
(72)【発明者】
【氏名】草野 善之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢玄
(72)【発明者】
【氏名】石坂 哲
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−074103(JP,U)
【文献】 特開昭63−013401(JP,A)
【文献】 特開2011−187575(JP,A)
【文献】 特開平03−261202(JP,A)
【文献】 特開平11−289204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
H05K 1/11
H01L 23/12,301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ第1伝送線路と、当該第1伝送線路よりも低い特性インピーダンスを持ち、当該第1伝送線路につながる第2伝送線路とを有する基板と、
少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有する他の基板と、
前記基板の第1伝送線路の特性インピーダンスよりも高く、かつ、前記他の基板の伝送線路の特性インピーダンスよりも高い特性インピーダンスを持つ第3伝送線路を有し、当該第3伝送線路を介して前記基板の第2伝送線路と前記他の基板の伝送線路とを接続する接続部品と
を備え、
前記接続部品は、接地用の伝送線路が設けられていないコネクタであり、前記第3伝送線路は、前記コネクタの内部の配線であり、
前記基板の第2伝送線路と前記基板に形成され当該第2伝送線路の両側に配置される接地パターンとの間の距離が、前記基板の第1伝送線路と前記基板に形成される接地パターンとの間の距離よりも小さい信号伝送装置。
【請求項2】
伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ第1伝送線路と、当該第1伝送線路よりも低い特性インピーダンスを持ち、当該第1伝送線路につながる第2伝送線路とを有する基板と、
少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有する他の基板と、
前記基板の第1伝送線路の特性インピーダンスよりも高く、かつ、前記他の基板の伝送線路の特性インピーダンスよりも高い特性インピーダンスを持つ第3伝送線路を有し、当該第3伝送線路を介して前記基板の第2伝送線路と前記他の基板の伝送線路とを接続する接続部品と
を備え、
前記接続部品は、接地用の伝送線路が設けられていないコネクタであり、前記第3伝送線路は、前記コネクタの内部の配線であり、
前記基板が多層基板であり、前記基板の第1伝送線路及び第2伝送線路がX層に形成され、
前記X層にて、前記基板の第2伝送線路から間隔を空けて接地パターンが形成され、
前記X層から当該間隔よりも長い距離離れたZ層にて、前記基板の第1伝送線路に対応する領域に他の接地パターンが形成される信号伝送装置。
【請求項3】
伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ第1伝送線路と、当該第1伝送線路よりも低い特性インピーダンスを持ち、当該第1伝送線路につながる第2伝送線路とを有する基板と、
少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有する他の基板と、
前記基板の第1伝送線路の特性インピーダンスよりも高く、かつ、前記他の基板の伝送線路の特性インピーダンスよりも高い特性インピーダンスを持つ第3伝送線路を有し、当該第3伝送線路を介して前記基板の第2伝送線路と前記他の基板の伝送線路とを接続する接続部品と
を備え、
前記接続部品は、接地用の伝送線路が設けられていないコネクタであり、前記第3伝送線路は、前記コネクタの内部の配線であり、
前記基板が多層基板であり、前記基板の第1伝送線路及び第2伝送線路がX層に形成され、
前記X層と異なるY層にて、前記基板の第2伝送線路に対応する領域に接地パターンが形成され、
前記X層から前記Y層よりも遠くに離れたZ層にて、前記基板の第1伝送線路に対応する領域に他の接地パターンが形成される信号伝送装置。
【請求項4】
前記基板の第2伝送線路の幅が、前記基板の第1伝送線路の幅よりも広い、請求項1から3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記基板の第2伝送線路が、空気よりも高い比誘電率を持つ部材で覆われている、請求項1から3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記他の基板が、伝送線路として、伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ第1伝送線路を有するとともに、前記他の基板の第1伝送線路よりも低い特性インピーダンスを持ち、前記他の基板の第1伝送線路につながる第2伝送線路とを有し、
前記接続部品が、前記接続部品の第3伝送線路を介して前記基板の第2伝送線路と前記他の基板の第2伝送線路とを接続する、請求項1から5のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置に関するものである。本発明は、例えば、高速信号を伝送するプリント基板の設計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速信号を伝送する信号伝送装置において、トランシーバである駆動回路とレシーバである負荷回路との間を接続する伝送線路の特性インピーダンスは、使用する伝送信号の規格によって規定されている。そのため、伝送線路は、特性インピーダンスが規格に準拠するように設計される。
【0003】
もし伝送線路の途中に特性インピーダンスのズレ、即ち、特性インピーダンスの不整合があると、その不整合がある部分で反射波が発生し、伝送信号が劣化する。この伝送信号の劣化は、伝送品質を示す指標の1つであるISI(Inter−Symbol Interference)ジッタ成分として現れる。伝送信号の規格では、このISIジッタを含むジッタの値も規定されている。
【0004】
従来、特性インピーダンスの不整合が発生しないように、プリント基板のパターンである伝送線路の形状を調整する技術がある。例えば、伝送線路に複数の負荷回路が接続される場合、負荷回路の容量性(コンダクタンス)によって、負荷回路に接続する伝送線路の特性インピーダンスが低くなる。駆動回路に接続する伝送線路の幅を、負荷回路に接続する伝送線路の幅よりも広げることで、駆動回路に接続する伝送線路の特性インピーダンスを低くし、負荷回路に接続する伝送線路の特性インピーダンスに合わせる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−214076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駆動回路と負荷回路とが異なるプリント基板上に実装される場合、これらのプリント基板は、コネクタ等の接続部品によって接続される。高価な高速信号用部品は、内部に、信号伝送用の伝送線路と、その信号のリファレンスとなるGND(接地)用の伝送線路とが設けられている。信号伝送用の伝送線路の特性インピーダンスは規格で定められた値に調整されている。したがって、接続部品に高速信号用部品を使用した場合、特性インピーダンスの不整合による伝送品質の劣化は発生しない。一方、安価な通常の接続部品では、特性インピーダンスが調整されていない。そのため、接続部品に通常の接続部品を使用した場合、特性インピーダンスの不整合により伝送品質が劣化する。また、通常の接続部品は、リファレンスとなるGND用の伝送線路が設けられていないため、特性インピーダンスが規格で定められたものより高い値となる。さらに、通常の接続部品は、既製部品であるため、特性インピーダンスを調整することができない。
【0007】
上記の通常の接続部品のように特性インピーダンスの高い部分が伝送線路の途中にある場合、従来技術では、伝送線路の形状を調整することで、特性インピーダンスの高い部分に合わせて他の部分の特性インピーダンスを高くして、不整合を解消しようとする。しかし、特性インピーダンスを高くすると、今度は特性インピーダンスが伝送信号の規格によって定められた値と合わなくなり、やはり伝送品質が劣化する。伝送線路の長さを短くする等の対策により伝送品質を改善することもできるが、そのような対策では設計の自由度が下がってしまうという課題がある。
【0008】
本発明は、例えば、伝送線路の特性インピーダンスの不整合により発生するジッタを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様に係る信号伝送装置は、
伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ第1伝送線路と、当該第1伝送線路よりも低い特性インピーダンスを持ち、当該第1伝送線路につながる第2伝送線路とを有する基板と、
少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有する他の基板と、
前記基板の第1伝送線路の特性インピーダンスよりも高く、かつ、前記他の基板の伝送線路の特性インピーダンスよりも高い特性インピーダンスを持つ第3伝送線路を有し、当該第3伝送線路を介して前記基板の第2伝送線路と前記他の基板の伝送線路とを接続する接続部品とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、接続部品を用いて基板の伝送線路を接続する際に、伝送線路の特性インピーダンスの整合をとらず、伝送線路の接続部品に接続する部分の特性インピーダンスを低くする。これにより、伝送線路の特性インピーダンスの不整合により発生するジッタを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る信号伝送装置の構成を示す図。
図2】実施の形態1に係る信号伝送装置の部分拡大図。
図3】比較例に係る信号伝送装置の特性インピーダンスプロファイルの例を示すグラフ。
図4】実施の形態1に係る信号伝送装置の特性インピーダンスプロファイルの例を示すグラフ。
図5】実施の形態1に係る信号伝送装置のバンド阻止フィルタを集中定数モデルで示した図。
図6】(a)伝送信号の周波数特性の例、及び、(b)ISIジッタの周波数特性の例を示すグラフ。
図7】(a)比較例に係る信号伝送装置の伝送線路の通過特性の例、及び、(b)実施の形態1に係る信号伝送装置の伝送線路の通過特性の例を示すグラフ。
図8】実施の形態2に係る信号伝送装置の部分拡大図。
図9】実施の形態3に係る信号伝送装置の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一又は相当する部分については、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、実施の形態の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「表」、「裏」といった配置や向き等は、説明の便宜上、そのように記しているだけであって、装置、器具、部品等の配置や向き等を限定するものではない。装置、器具、部品等の構成について、その材質、形状、大きさ等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0013】
実施の形態1.
以下では、本実施の形態に係る装置の構成、本実施の形態に係る装置の動作、本実施の形態の奏する効果等について順番に説明する。
【0014】
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る信号伝送装置10の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、信号伝送装置10は、基板11a,11bと、接続部品12とを備える。
【0016】
基板11aは、第1伝送線路21aと、第2伝送線路22aとを有する。例えば、基板11aは、プリント基板であり、第1伝送線路21a及び第2伝送線路22aは、そのプリント基板に形成されたパターンである。
【0017】
第1伝送線路21aは、伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスZ1aを持つ。第2伝送線路22aは、第1伝送線路21aよりも低い特性インピーダンスZ2aを持つ。第2伝送線路22aは、第1伝送線路21aにつながる。ここで、特性インピーダンスとは、個別の伝送線路に特有のインピーダンスのことをいう。また、「信号の規格に準じた特性インピーダンス」とは、ある伝送方式により信号を伝送する場合について標準団体等が規定した伝送線路の特性インピーダンスの許容範囲に収まる特性インピーダンスのことをいう。
【0018】
基板11bは、基板11aと同様に構成される。即ち、基板11bは、第1伝送線路21bと、第2伝送線路22bとを有する。例えば、基板11bは、プリント基板であり、第1伝送線路21b及び第2伝送線路22bは、そのプリント基板に形成されたパターンである。
【0019】
第1伝送線路21bは、伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスZ1bを持つ。第2伝送線路22bは、第1伝送線路21bよりも低い特性インピーダンスZ2bを持つ。第2伝送線路22bは、第1伝送線路21bにつながる。
【0020】
接続部品12は、第3伝送線路23を有する。接続部品12は、第3伝送線路23を介して基板11aの第2伝送線路22aと基板11bの第2伝送線路22bとを接続する。例えば、接続部品12は、コネクタであり、第3伝送線路23は、そのコネクタの内部の配線である。
【0021】
第3伝送線路23は、基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンスZ1aよりも高く、かつ、基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1bよりも高い特性インピーダンスZ3を持つ。
【0022】
ここで、信号伝送装置10の伝送線路の接続順序をまとめると、第1伝送線路21a、第2伝送線路22a、第3伝送線路23、第2伝送線路22b、第1伝送線路21bの順となる。信号伝送装置10の伝送線路の特性インピーダンスの大小関係をまとめると、(基板11aの第2伝送線路22aの特性インピーダンスZ2a)<(基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンスZ1a)<(第3伝送線路23の特性インピーダンスZ3)、かつ、(基板11bの第2伝送線路22bの特性インピーダンスZ2b)<(基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1b)<(第3伝送線路23の特性インピーダンスZ3)となる。このような構成を採用することで、本実施の形態では、バンド阻止フィルタ(BEF)が形成される。このため、伝送線路の特性インピーダンスの不整合により発生するジッタを抑制することができる。バンド阻止フィルタの詳細については、後述する。
【0023】
図1に示すように、信号伝送装置10は、さらに、駆動回路13と、負荷回路14とを備える。
【0024】
駆動回路13は、基板11aに実装される。駆動回路13は、基板11aの第1伝送線路21aに接続される。
【0025】
負荷回路14は、基板11bに実装される。負荷回路14は、基板11bの第1伝送線路21bに接続される。
【0026】
駆動回路13が負荷回路14を駆動するために送信する信号である駆動信号の伝送経路は、駆動回路13、第1伝送線路21a、第2伝送線路22a、第3伝送線路23、第2伝送線路22b、第1伝送線路21b、負荷回路14の順となる。
【0027】
仮に、第2伝送線路22a,22bがなく、高い特性インピーダンスZ3を持つ第3伝送線路23の前後に、伝送信号の規格に準じた特性インピーダンスZ1a,Z1bを持つ第1伝送線路21a,21bが物理的に接続されているとする。その場合、駆動信号の伝送経路は、駆動回路13、第1伝送線路21a、第3伝送線路23、第1伝送線路21b、負荷回路14の順となり、特性インピーダンスの不整合により伝送品質が劣化するため、負荷回路14が駆動信号を正常に受信できないおそれがある。一方、本実施の形態では、高い特性インピーダンスZ3を持つ第3伝送線路23の前後に、第1伝送線路21a,21bよりも低い特性インピーダンスZ2a,Z2bを持つ第2伝送線路22a,22bが接続される。これにより、バンド阻止フィルタが形成されるため、特性インピーダンスの高い伝送線路を持つ部品を接続部品12に使用しても、良好な伝送品質を確保することができる。したがって、配線の設計自由度を下げることなく、高速信号の伝送を実現することが可能となる。
【0028】
本実施の形態では、特性インピーダンスを下げることができない安価な部品を接続部品12に使用した場合であっても、むしろ接続部品12の特性インピーダンスが変わらないという特性を活かし、接続部品12の前後の特性インピーダンスを調整してバンド阻止フィルタを形成する。これにより、安価に高速信号の伝送を実現することができる。
【0029】
なお、本実施の形態において、基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンスZ1aと基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1bは、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、基板11aの第2伝送線路22aの特性インピーダンスZ2aと基板11bの第2伝送線路22bの特性インピーダンスZ2bは、同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、基板11bに負荷回路14が複数実装され、これら複数の負荷回路14が第1伝送線路21bに接続されるとする。その場合、負荷回路14の容量性によって、第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1bが低くなるが、前述した伝送線路の特性インピーダンスの大小関係が満たされていれば、バンド阻止フィルタが形成されるため、良好な伝送品質を確保することができる。即ち、本実施の形態では、(基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンスZ1a)≠(基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1b)、或いは、(基板11aの第2伝送線路22aの特性インピーダンスZ2a)≠(基板11bの第2伝送線路22bの特性インピーダンスZ2b)となっていても、(基板11aの第2伝送線路22aの特性インピーダンスZ2a)<(基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンスZ1a)<(第3伝送線路23の特性インピーダンスZ3)、かつ、(基板11bの第2伝送線路22bの特性インピーダンスZ2b)<(基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスZ1b)<(第3伝送線路23の特性インピーダンスZ3)という関係が満たされていればよい。
【0030】
また、本実施の形態では、基板11aの第2伝送線路22aと基板11bの第2伝送線路22bとのうちいずれか一方がなくてもよい。即ち、基板11aが第1伝送線路21aと第2伝送線路22aとを有しているのであれば、他の基板11bは、少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有していればよい。例えば、基板11aが第1伝送線路21aと第2伝送線路22aとを有し、基板11bが第1伝送線路21bを有しているが第2伝送線路22bを有していないとする。この場合、接続部品12は、第3伝送線路23を介して基板11aの第2伝送線路22aと他の基板11bの伝送線路である第1伝送線路21bとを接続する。逆に、基板11bが第1伝送線路21bと第2伝送線路22bとを有しているのであれば、他の基板11aは、少なくとも一部が伝送する信号の規格に準じた特性インピーダンスを持つ伝送線路を有していればよい。例えば、基板11bが第1伝送線路21bと第2伝送線路22bとを有し、基板11aが第1伝送線路21aを有しているが第2伝送線路22aを有していないとする。この場合、接続部品12は、第3伝送線路23を介して基板11bの第2伝送線路22bと他の基板11aの伝送線路である第1伝送線路21aとを接続する。いずれの場合にも、バンド阻止フィルタが形成されるため、良好な伝送品質を確保することができる。
【0031】
図2は、信号伝送装置10の部分拡大図である。図2は、駆動回路13が実装された基板11aにおける、第1伝送線路21aの途中から第2伝送線路22aが接続部品12の第3伝送線路23に接続する箇所までを平面視で示している。また、図2は、接続部品12における、第3伝送線路23が第2伝送線路22aに接続する部分と当該部分から屈曲して上方に延びる部分とを断面視で示している。
【0032】
図2に示すように、基板11aの第2伝送線路22aの幅W2は、基板11aの第1伝送線路21aの幅W1よりも広い。このように、第2伝送線路22aの配線幅を広げることで、第2伝送線路22aの容量性が上がり、第2伝送線路22aの特性インピーダンスが低く調整される。
【0033】
図1に示したように、基板11bは、基板11aと同様に構成される。即ち、基板11bの第2伝送線路22bの幅は、基板11bの第1伝送線路21bの幅よりも広い。よって、第2伝送線路22bの容量性が上がり、第2伝送線路22bの特性インピーダンスが低く調整される。
【0034】
なお、基板11aにおいて、第2伝送線路22aの配線幅を広げる方法とは別の方法を用いて、或いは、第2伝送線路22aの配線幅を広げる方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22aの特性インピーダンスを低く調整してもよい。「別の方法」の例については、他の実施の形態として後述する。
【0035】
同様に、基板11bにおいて、第2伝送線路22bの配線幅を広げる方法とは別の方法を用いて、或いは、第2伝送線路22bの配線幅を広げる方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。また、基板11aと基板11bとで互いに異なる方法又は異なる方法の組み合わせを用いて、第2伝送線路22a,22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。
【0036】
***動作の説明***
本実施の形態に係る信号伝送装置10では、駆動回路13が、基板11aの第1伝送線路21a、基板11aの第2伝送線路22a、接続部品12の第3伝送線路23、基板11bの第2伝送線路22b、基板11bの第1伝送線路21bを順番に介して、負荷回路14へ駆動信号を送信する。負荷回路14は、駆動信号の値に応じた動作を行う。
【0037】
以下では、比較例として、第2伝送線路22a,22bがない信号伝送装置を考える。比較例に係る信号伝送装置では、駆動回路13が、基板11aの第1伝送線路21a、接続部品12の第3伝送線路23、基板11bの第1伝送線路21bを順番に介して、負荷回路14へ駆動信号を送信するものとする。
【0038】
図3は、比較例に係る信号伝送装置の特性インピーダンスプロファイルの例を示すグラフである。図4は、本実施の形態に係る信号伝送装置10の特性インピーダンスプロファイルの例を示すグラフである。
【0039】
図3の例では、基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンス、及び、基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンスを50Ω(オーム)、接続部品12の第3伝送線路23の特性インピーダンスを80Ωとしている。
【0040】
図4の例では、基板11aの第1伝送線路21aの特性インピーダンス、基板11bの第1伝送線路21bの特性インピーダンス、及び、接続部品12の第3伝送線路23の特性インピーダンスについては、図3の例と同じとし、基板11aの第2伝送線路22aの特性インピーダンス、及び、基板11bの第2伝送線路22bの特性インピーダンスを40Ωとしている。
【0041】
なお、図3及び図4に示した特性インピーダンスの値は例であり、本実施の形態における特性インピーダンスの値を限定するものではない。
【0042】
図3の例では、第1伝送線路21a,22bと第伝送線路2との間の特性インピーダンスの差が30Ωあるため、第伝送線路2で駆動信号の反射波が発生し、駆動信号が劣化する。この駆動信号の劣化は、前述したISIジッタ成分として現れる。一方、図4の例では、第3伝送線路23の前後の特性インピーダンスが第1伝送線路21a,22bの特性インピーダンスよりも10Ω低く調整されているため、ISIジッタ成分を抑制するバンド阻止フィルタが形成される。
【0043】
以下では、信号伝送装置10においてバンド阻止フィルタが形成される原理を説明する。
【0044】
図5は、信号伝送装置10のバンド阻止フィルタを集中定数モデルで示した図である。
【0045】
図5に示すように、信号伝送装置10では、駆動回路13であるNode1に、第1伝送線路21aである、コンデンサC1及びインダクタL1の並列回路、第3伝送線路23である、コンデンサC3及びインダクタL3の並列回路、第1伝送線路21bである、コンデンサC5及びインダクタL5の並列回路、負荷回路14であるNode2が順番に直列接続されていると考えることができる。また、コンデンサC1及びインダクタL1の並列回路とコンデンサC3及びインダクタL3の並列回路との接続点に、第2伝送線路22aである、インダクタL2及びコンデンサC2の直列回路が接続され、コンデンサC3及びインダクタL3の並列回路とコンデンサC5及びインダクタL5の並列回路との接続点に、第2伝送線路22bである、インダクタL4及びコンデンサC4の直列回路が接続されていると考えることができる。
【0046】
コンデンサC3及びインダクタL3の並列回路は、接続部品12の第3伝送線路2に該当するため、L(インダクタンス)成分が大きく、特性インピーダンスが高い。インダクタL2及びコンデンサC2の直列回路と、インダクタL4及びコンデンサC4の直列回路は、それぞれ第2伝送線路22a,22bに該当するため、容量性が大きく、特性インピーダンスが低い。インダクタL2及びコンデンサC2の直列回路と、インダクタL4及びコンデンサC4の直列回路は、例えばプリント基板のパターンのような伝送線路であり、分布定数回路となる。そのため、インダクタL2及びコンデンサC2の直列回路と、インダクタL4及びコンデンサC4の直列回路は、複数の周波数帯域を抑制するバンド阻止フィルタとなる。
【0047】
図6の(a)は、伝送信号の周波数特性の例を示すグラフである。図6の(b)は、ISIジッタの周波数特性の例を示すグラフである。図6において、縦軸は電圧を示し、横軸は周波数を示している。電圧の単位はV(ボルト)、周波数の単位はGHz(ギガヘルツ)である。
【0048】
図6の例では、伝送信号の伝送レートを8Gbps(ギガビット毎秒)としている。そのため、基本波の周波数である基本周波数は4GHzとなる。基本波の2倍波の周波数は8GHzとなる。
【0049】
図6の(a)から、伝送したい高速信号の周波数成分が、基本周波数の奇数倍の高調波を持ったプロファイルであることが確認できる。また、基本波の2倍波の周波数の整数倍が、伝送信号に不要な周波数成分であることも確認できる。一方、図6の(b)から、特性インピーダンスの不整合によって発生するISIジッタの周波数成分が、基本周波数の整数倍の全てで高調波を持ったプロファイルとなることが確認できる。
【0050】
図6の(a)に示した伝送信号の周波数特性と、図6の(b)に示したISIジッタの周波数特性とから、ISIジッタの周波数成分であり、かつ、伝送信号に不要な周波数成分である「基本波の2倍波の周波数の整数倍」を抑制することで、伝送信号へ影響を与えることなく、ISIジッタの影響を抑制できることがわかる。
【0051】
なお、ここで示した伝送レート及び基本周波数等の値は例であり、本実施の形態における伝送レート及び基本周波数等の値を限定するものではない。
【0052】
図7の(a)は、比較例に係る信号伝送装置の伝送線路の通過特性の例である。図7の(b)は、信号伝送装置10の伝送線路の通過特性の例を示すグラフである。図7において、縦軸はゲインを示し、横軸は周波数を示している。ゲインの単位はdB、周波数の単位はGHzである。
【0053】
図7の(b)に示すように、本実施の形態では、特定の周波数にノッチがかかった特性が得られる。即ち、本実施の形態では、第2伝送線路22a,22bがあることで、特定の周波数成分が抑制される。この例では、8GHz、24GHz及び40GHzの成分の通過が抑制されている。したがって、伝送レートが8Gbpsの信号について、ISIジッタを抑制した伝送が可能となる。
【0054】
***効果の説明***
本実施の形態では、接続部品12を用いて基板11a,11bの伝送線路を接続する際に、伝送線路の特性インピーダンスの整合をとらず、伝送線路の接続部品12に接続する部分である第2伝送線路22a,22bの特性インピーダンスZ2a,Z2bを低くする。これにより、バンド阻止フィルタが形成されるため、伝送線路の特性インピーダンスの不整合により発生するジッタを抑制することができる。したがって、伝送品質を劣化させることなく所望の高速信号伝送を実現することが可能となる。
【0055】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0056】
図8は、本実施の形態に信号伝送装置10の部分拡大図である。図8は、図2と同様に、駆動回路13が実装された基板11aにおける、第1伝送線路21aの途中から第2伝送線路22aが接続部品12の第3伝送線路23に接続する箇所までを平面視で示している。また、図8は、接続部品12における、第3伝送線路23が第2伝送線路22aに接続する部分と当該部分から屈曲して上方に延びる部分とを断面視で示している。
【0057】
図8に示すように、基板11aには、GNDパターン31(接地パターン)が形成される。基板11aの第2伝送線路22aとGNDパターン31との間の間隔D2は、基板11aの第1伝送線路21aとGNDパターン31との間の間隔D1よりも狭い。このように、GNDパターン31を第2伝送線路22aの近くに配置することでも、実施の形態1と同様に、第2伝送線路22aの容量性が上がり、第2伝送線路22aの特性インピーダンスが低く調整される。なお、図8に示したように、GNDパターン31を第2伝送線路22aの両側に配置することは必須ではなく、例えば、GNDパターン31を第2伝送線路22aの片側のみに配置してもよいし、基板11aが多層基板であれば、GNDパターン31を第2伝送線路22aの下層に配置してもよい。
【0058】
図示していないが、通常、基板11aには、GNDパターン31以外のGNDパターン(以下、「他のGNDパターン」という)も形成される。基板11aの第2伝送線路22aとGNDパターン31との間の間隔D2は、基板11aの第1伝送線路21aと他のGNDパターンとの間の間隔よりも狭いものとする。基板11aが多層基板であれば、例えば、X層に第1伝送線路21a及び第2伝送線路22aを形成し、同じX層にて、第2伝送線路22aから間隔D2を空けてGNDパターン31を形成し、X層から間隔D2よりも長い距離離れたZ層にて、第1伝送線路21aに対応する領域に他のGNDパターンを形成することが考えられる。或いは、例えば、X層に第1伝送線路21a及び第2伝送線路22aを形成し、X層と異なるY層にて、第2伝送線路22aに対応する領域にGNDパターン31を形成し、X層からY層よりも遠くに離れたZ層にて、第1伝送線路21aに対応する領域に他のGNDパターンを形成することが考えられる。ここで、「対応する領域」とは、基板11aの積層方向を上下方向としたとき、真上又は真下に位置する領域のことである。例えば、Z層の第1伝送線路21aに対応する領域は、X層の第1伝送線路21aの真上又は真下に位置する領域である。
【0059】
図示していないが、基板11bは、基板11aと同様に構成される。即ち、基板11bには、GNDパターンが形成される。基板11bの第2伝送線路22bと基板11bに形成されるGNDパターンとの間の間隔は、基板11bの第1伝送線路21bと基板11bに形成されるGNDパターンとの間の間隔よりも狭い。よって、第2伝送線路22bの容量性が上がり、第2伝送線路22bの特性インピーダンスが低く調整される。
【0060】
なお、基板11aにおいて、GNDパターン31を第2伝送線路22aの近くに配置する方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22aの特性インピーダンスを低く調整してもよい。例えば、「別の方法」として、実施の形態1と同様に第2伝送線路22aの配線幅を広げる方法を用いることができる。
【0061】
同様に、基板11bにおいて、GNDパターンを第2伝送線路22bの近くに配置する方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。また、基板11aと基板11bとで互いに異なる方法又は異なる方法の組み合わせを用いて、第2伝送線路22a,22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。
【0062】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0063】
実施の形態3.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0064】
図9は、本実施の形態に信号伝送装置10の部分拡大図である。図9は、図2と同様に、駆動回路13が実装された基板11aにおける、第1伝送線路21aの途中から第2伝送線路22aが接続部品12の第3伝送線路23に接続する箇所までを平面視で示している。また、図9は、接続部品12における、第3伝送線路23が第2伝送線路22aに接続する部分と当該部分から屈曲して上方に延びる部分とを断面視で示している。
【0065】
図9に示すように、基板11aの第2伝送線路22aは、空気よりも高い比誘電率を持つ部材であるレジスト41で覆われている。このように、第2伝送線路22aの周囲に比誘電率の高い材料を使用することでも、実施の形態1と同様に、第2伝送線路22aの容量性が上がり、第2伝送線路22aの特性インピーダンスが低く調整される。
【0066】
図示していないが、基板11bは、基板11aと同様に構成される。即ち、基板11bの第2伝送線路22bは、空気よりも高い比誘電率を持つ部材であるレジストで覆われている。よって、第2伝送線路22bの容量性が上がり、第2伝送線路22bの特性インピーダンスが低く調整される。
【0067】
なお、基板11aにおいて、第2伝送線路22aの周囲に比誘電率の高い材料を使用する方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22aの特性インピーダンスを低く調整してもよい。例えば、「別の方法」として、実施の形態1と同様に第2伝送線路22aの配線幅を広げる方法と、実施の形態2と同様にGNDパターンを第2伝送線路22aの近くに配置する方法とのうち少なくとも一方を用いることができる。
【0068】
同様に、基板11bにおいて、第2伝送線路22bの周囲に比誘電率の高い材料を使用する方法と別の方法とを併用して、第2伝送線路22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。また、基板11aと基板11bとで互いに異なる方法又は異なる方法の組み合わせを用いて、第2伝送線路22a,22bの特性インピーダンスを低く調整してもよい。
【0069】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらの実施の形態のうち、いくつかを組み合わせて実施しても構わない。或いは、これらの実施の形態のうち、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施しても構わない。例えば、これらの実施の形態の説明において「部」として説明するもののうち、いずれか1つのみを採用してもよいし、いくつかの任意の組み合わせを採用してもよい。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 信号伝送装置、11a 基板、11b 基板、12 接続部品、13 駆動回路、14 負荷回路、21a 第1伝送線路、21b 第1伝送線路、22a 第2伝送線路、22b 第2伝送線路、23 第3伝送線路、31 GNDパターン、41 レジスト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9