特許第6429589号(P6429589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429589
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】塗膜形成方法、定着部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/40 20060101AFI20181119BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20181119BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20181119BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20181119BHJP
   B05C 9/06 20060101ALN20181119BHJP
   F16C 13/00 20060101ALN20181119BHJP
【FI】
   B05D1/40 Z
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302Y
   G03G15/20 515
   !B05C9/06
   !F16C13/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-217449(P2014-217449)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-110216(P2015-110216A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-223459(P2013-223459)
(32)【優先日】2013年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勝也
(72)【発明者】
【氏名】宮原 康弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悠史
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−019657(JP,A)
【文献】 特開2003−241405(JP,A)
【文献】 特開2013−148716(JP,A)
【文献】 特開2013−120279(JP,A)
【文献】 特開2011−107553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B05C 7/00−21/00
G03G 13/20,15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状の基体、該基体上の硬化シリコーンゴム層を有する定着部材の製造方法であって、
(1)基体の周面にプライマー層を形成する工程、
(2)該プライマー層の表面に付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を形成する工程、
(3)該付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を硬化させて該硬化シリコーンゴム層を形成する工程を有し、
該工程(1)が、
(i)基体を、ノズルに対して相対的に回転させると共に、該ノズルと該基体とを該基体の回転軸に沿う方向に相対的に移動させつつ、該ノズルから第一の液体を供給し、該第一の液体の塗膜を形成する第一の液体の塗膜形成工程と、
(ii)該工程(i)における該ノズルからの該第一の液体の供給に先立って、第二の液体を含浸させてなる部材を該基体の周面に押し付けて、該第二の液体の液膜を該基体の周面に形成する第二の液体の液膜形成工程と、を含み、
該工程(i)において、
該第一の液体は、該基体の周面に形成された該第二の液体の液膜の乾燥前に、該第二の液体の液膜上に供給され、
該工程(i)は、さらに、
該ノズルと該第二の液体の液膜との間に該第一の液体のビードを形成する工程と、
該ビードを該基体の周方向に塗り広げる工程と、を含み、
該第二の液体は、該第一の液体と同一であるか、または、溶解性パラメータの差が、6.0以下の液体であり、かつ、
該第一の液体と該第二の液体のいずれか一方または両方が、該プライマーの原料を含むことを特徴とする定着部材の製造方法。
【請求項2】
前記第一の液体及び前記第二の液体のいずれか一方または両方が、プライマーの原料としての、シランカップリング剤及び活性水素基含有ポリシロキサンを含む請求項に記載の定着部材の製造方法。
【請求項3】
前記第一の液体及び前記第二の液体のうち、プライマーの原料を含まない液体が、ヘプタン、エタノール、トルエン及びエチレングリコールからなる群から選択されるいずれかの溶剤を含む請求項に記載の定着部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置における帯電、現像、転写、定着、加圧等に使用される円筒体/円柱体形状の基体の周面に塗布液の塗膜を形成する方法及び電子写真用の定着部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの電子写真装置においては、帯電、現像、転写、定着、加圧等様々なプロセスにおいて、円筒体/円柱体形状のベルトやローラといった部材が使用されている。これらの部材は、その用途に応じて、必要な機能を発現させるための機能性の膜が基体上に形成されている。なお、本明細書においては、円筒体形状の基体や円柱体形状の基体を、単に「基体」とも称することがある。
【0003】
このような機能性の膜は、基体上に該機能性の膜を形成するための塗料の塗膜を基体周面に形成し、該塗膜を乾燥させ、または、必要に応じて硬化させることによって形成することができる。そして、基体の周面に該塗膜を形成する方法として、スパイラル法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
スパイラル法は、塗布液供給手段に対して基体を相対的に回転させると共に、塗布液供給手段と該基体とを該基体の回転軸に沿う方向に相対的に移動させつつ、塗布液供給手段から塗布液を供給して基体の周面に塗膜を形成する方法である。
スパイラル法は、塗料の塗布に要する時間を短くすることができ、また、塗布液の使用効率が良い。そのため、生産コストの削減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−370065号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山本秀樹著「SP値(溶解度パラメータ)の基礎と応用」セミナーテキスト、P31−38、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、スパイラル法を用いて形成された塗膜には、基体の回転周期に起因する、スパイラル状の厚みムラが発生する場合があった。
【0008】
電子写真装置に用いられる部材の機能性膜は、その厚みにムラがあると、電子写真画像の品位に影響を与えることがある。そのため、基体上に形成される塗膜には、その厚みにおいて、高度な均一性が要求される。
【0009】
特に、電子写真装置の熱定着装置には、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させることによって形成されてなる層(以下、「硬化シリコーンゴム層」ともいう)を有する定着部材がよく用いられる。かかる定着部材においては、基体と硬化シリコーンゴム層とを強固に接着させるために、硬化シリコーンゴム層の形成に先だって、基体の周面に、プライマー層を形成することが行われる。
ここで、プライマー層中には、その上に形成される、硬化シリコーンゴム層中に含まれる不飽和脂肪族基(ビニル基)との反応成分が含まれていることがある。この場合、プライマー層から硬化シリコーンゴム層に該反応成分が移行し、硬化シリコーンゴム層中において、該反応成分と不飽和脂肪族基とが反応し、硬化シリコーンゴム層の硬度を上昇させることがある。このとき、プライマー層に部分的な厚みムラが存在すると、硬化シリコーンゴム層に移行する反応成分の量が部分的に異なる結果、硬化シリコーンゴム層の硬度に部分的なムラを生じさせることとなる。硬化シリコーンゴム層の部分的な硬度のムラは、電子写真画像の熱定着の際に、トナーの溶融ムラを生じさせ、ひいては、電子写真画像に光沢ムラを発生させ得る。
【0010】
そのため、プライマー層形成用の原料の塗膜を、コスト面において有利なスパイラル法を用いて基体上に形成する場合には、該塗膜にスパイラル状の厚みムラを生じさせないようにするために、新たな技術開発が必要であるとの認識を本発明者らは得た。
そこで、本発明の目的は、基体の周面への塗膜の形成にあたって、該塗膜への厚みムラの発生をより良く抑制することのできる塗膜形成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像の形成に資する電子写真用の定着部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明によれば、円筒状または円柱状の基体、該基体上の硬化シリコーンゴム層を有する定着部材の製造方法であって、
(1)基体の周面にプライマー層を形成する工程、
(2)該プライマー層の表面に付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を形成する工程、(3)該付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を硬化させて該硬化シリコーンゴム層を形成する工程を有し、
該工程(1)が、
(i)基体を、ノズルに対して相対的に回転させると共に、該ノズルと該基体とを該基体の回転軸に沿う方向に相対的に移動させつつ、該ノズルから第一の液体を供給し、該第一の液体の塗膜を形成する第一の液体の塗膜形成工程と、
(ii)該工程(i)における該ノズルからの該第一の液体の供給に先立って、第二の液体を含浸させてなる部材を該基体の周面に押し付けて、該第二の液体の液膜を該基体の周面に形成する第二の液体の液膜形成工程と、を含み、
該工程(i)において、
該第一の液体は、該基体の周面に形成された該第二の液体の液膜の乾燥前に、該第二の液体の液膜上に供給され、
該工程(i)は、さらに、
該ノズルと該第二の液体の液膜との間に該第一の液体のビードを形成する工程と、
該ビードを該基体の周方向に塗り広げる工程と、を含み、
該第二の液体は、該第一の液体と同一であるか、または、溶解性パラメータの差が、6.0以下の液体であり、かつ、
該第一の液体と該第二の液体のいずれか一方または両方が、該プライマーの原料を含む定着部材の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更なる特徴事項は、以下の(添付の図面を参照した)実施形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】1A〜1Dは、本発明にかかる塗膜形成方法の一例を説明するための模式図である。
図2】本発明にかかる塗膜形成方法の一例を説明するための模式図である。
図3】3A〜3Gは、本発明にかかる塗膜形成方法の一例を説明するための模式図である。
図4】4Aおよび4Bは、本発明に係る塗膜形成方法の他の実施態様の説明図である。
図5】本発明に係る定着ベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(塗膜形成方法)
(1)概略
図1A〜1Dは本発明にかかる、円筒状の基体1(以下、単に「基体」ともいう)の周面への塗膜の形成方法の説明図である。この塗膜形成方法の一連の流れとしては以下に示すとおりである。本発明に係る塗膜形成方法は、ノズル(塗布液供給手段)3から基体1に対して塗布液を供給しつつ、ノズル3に対して、基体1を相対的に回転させると共に、ノズル3と該基体1とを、該基体の回転軸に沿う方向(図1A中の矢印V)に相対的に移動させて、基体の周面に第一の液体の塗膜を形成するものである。
そして、本発明においては、図1Dに示したように、ノズル3からの第一の液体の該基体1への供給に先立って、該第一の液体と同一の液体、または、該第一の液体と親和性の高い液体(以下、「第二の液体」)10を含有させた部材(以下、「含浸材」)2を該基体の表面に接触せしめて、該第二の液体の液膜10−1を該基体の周面に形成する。
次いで、基体1の周面に形成した該第二の液体の液膜10−1に対して、所定の距離dだけ離間して配置したノズル3から、該第二の液体の液膜10−1が乾燥する前に、該第二の液体の液膜上に、第一の液体を供給し、ノズル3と第二の液体の液膜10−1との間に第一の液体のビード(液溜まり)13を形成する。
そして、ノズル3と第二の液体の液膜10−1との間に形成された第一の液体のビードは、ノズル3に対する基体1の回転(図1Aにおいては、矢印Rの方向)と、ノズル3と基体1との、該基体1の回転軸に沿う方向(図1A中、矢印V)への相対的な移動とによって、基体1の周方向及び回転軸に沿う方向に塗り広げられ、基体1の周面に第一の液体の塗膜が形成される(図1B、1C参照)。
【0016】
図1A〜1Dに示した、本発明に係る塗膜形成方法において、基体1は、エンドレスベルト形状を有しており、中子の外周面に担持させられていると共に、該中子の中心軸を回転中心といて矢印Rの方向に回転可能に支持されている。
また、ノズル3と基体1とは、不図示の移動機構により、基体1の回転軸に沿う方向、すなわち、図1A中の矢印Vの方向に相対移動可能である。
そして、基体1を、矢印Rの方向に回転させるとともに、ノズル3に対して、矢印Vの方向に移動させつつ、不図示の塗布液供給手段により第二の液体10が供給され、常時塗布液で満たされた含浸材2を、基体1の表面に接触させることによって、含浸材2から基体1の表面に、スパイラル状に第二の液体の液膜が形成される。また、このとき、基体1の表面に存在する塵や埃も除去される。
【0017】
ここで、図1Aにおいて、11は、基体1の塗布上流側を表し、12は、塗布下流側を表している。
基体1の回転速度R[回転/分]、基体1の移動速度V[mm/分]、含浸材2の基体1の回転軸方向の幅L[mm]は、下記式(1)の関係を成立させることが好ましい。
式(1)
L−(V/R)≧0 式(1)
V/Rは、基体が一回転する間にU側へ移動する距離、L−(V/R)は、含浸材2に二重に塗布される幅を示している。L−(V/R)が0よりも小さいと、第二の液体の塗布工程(第二の液体塗布工程ともいう)において、所望の塗布領域に塗布液が塗布できない可能性がある。
また、L−(V/R)が大きすぎると、塗布液が二重に塗布される領域が増え、使用効率が悪くなるので、L−(V/R)は10(mm)以下であることが好ましい。
【0018】
第一の液体の塗膜を形成する工程(第一の液体の塗膜形成工程ともいう)では、基体1自身を回転・移動させつつ、第二の液体の液膜に対して、塗布液(第一の液体)をノズル3によりビード13を形成しながら供給する。この塗布工程で均一な塗膜を形成するには、ビード13を形成することが重要となる。ビードとは、ノズル3の吐出口と第二の液体の液膜の表面との間で形成する液だまりのことを指す。基体1の回転・移動により、形成されたビードにせん断力がかかり、ビードは基体1の周方向に塗り広げられ、液膜表面を均一にレベリングする作用が働く。これによって、均一な厚みの塗膜を形成することができる。
【0019】
図1A〜1Dにおいて、図1A図1B図1Cのように、基体1を回転速度Rで回転させながら、移動速度Vで移動させることで、基体の周面へ端部11側から、端部12側に向かって第二の液体の液膜及び第一の液体の塗膜が形成されていく。
【0020】
ノズル3と第二の液体の液膜10−1との間に、第一の液体のビード13を形成するためには、まず、第一の液体と第二の液体との親和性が高くなければならない。親和性については、後述する。
また、ビード13を安定して形成するために、図1Dにおける、ノズル3の吐出口と第二の液体の液膜10−1の表面との距離dを0〜10mm、特には、0mmを越え、10mm以下とすることが好ましい。また、基体を軸方向に移動させる際、距離dを常に一定に保持することが好ましい。
【0021】
本発明では、第一の液体を塗布する工程において、基体1の表面に形成された該第二の液体の液膜10−1の乾燥前に、第一の液体を第二の液体の液膜に対して供給する必要がある。
第二の液体の液膜10−1が乾燥してしまうと、ビード13を安定に形成することが困難となり、第一の液体の塗膜の厚みが不均一となる場合がある。ここで、第二の液体の液膜が乾燥した、とは、第二の液体の液膜10−1を手で触れた際に第二の液体が手に付着しない状態となったこと、すなわち、指触乾燥したことを意味する。
【0022】
また、図1Dに示される、含浸材2の上端とノズル3の吐出口との軸方向の相対距離pは、5〜20mm程度が好ましい。距離pが小さいと、ノズル3の吐出口から供給される第一の液体が基体1上の第二の液体の液膜上にビード13が安定して形成される前に含浸材2に吸収されてしまう場合がある。
また、距離pが大きいと、第二の液体の液膜が乾燥してしまい、第一の液体を均一に塗布することが困難になる。
【0023】
図1A〜1Dの場合、第一の液体が第二の液体の液膜に供給されたのち、基体1の周面から下側へ流下し、第二の液体を含む含浸材2に吸収される。そのため、第一の液体と第二の液体が同一の場合、塗膜形成時に含浸材2へ常時液体を含ませることができる。このとき、形成される塗膜を安定化させるためには、ノズル3から基体1に供給される第一の液体の量は、基体1の周面に塗膜を形成し、含浸材2へも安定して液体を含ませることのできる十分な量が必要である。
【0024】
第一の液体と第二の液体が異なる場合、図1A〜1Dの構成では、含浸材2が第一の液体を含んでしまうことを避けるために、ノズル3の位置に対して、基体1の周方向で異なる位置に配置することが好ましい。具体的には、例えば、図2に示したように、含浸材2の基体1への接触位置を、ノズル3の位置に対して、反対側、すなわち、ノズル3の位置に対して、基体1の周方向に180°ずれた位置に設けることが好ましい。
なお、第二の液体の液膜を安定して形成するために、含浸材2に対しては、不図示の液体供給手段、たとえば、チューブを用いて、常時供給することが好ましい。
【0025】
(2)基体
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置に使用される帯電、現像、転写、定着、加圧等に使用される円筒体/円柱体形状の基体の周面に塗布液の塗膜を形成する方法に適用可能である。
【0026】
ここで、円筒体の形状とは、図3Aや3Bで示すような両端の少なくとも一方に開口部を有し、内周面をもち、軸方向に垂直な断面の円の大きさが一定のストレート形状を有するベルト状やチューブ状のものが挙げられる。円柱体形状とは、図3Cで示すような両端に開口部を有しない、軸方向に垂直な断面の円の大きさが一定のストレート形状を有するローラ状のものが挙げられる。さらに、円筒体形状または円柱体形状は、軸方向に垂直な断面の円の大きさが異なる、図3D、3E、3Fのようなクラウン形状、逆クラウン形状、円錐台形状などを有するものも含まれる。図3Gのように円柱体形状で中空となっているものも含まれる。
【0027】
また、基体の材質は、その用途に応じて選ばれ、金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、樹脂の単一材料であっても、積層あっても、複合化されていてもよい。
【0028】
基体が円筒体形状で剛性を有しない場合は、外周面に塗膜を形成する際に基体の内径に対応する外径を有する中子へ基体を外嵌し、保持させることが好ましい。
基体が芯金のような円柱体形状である場合や円筒体形状で剛性を有する場合は、基体を中子に外嵌することなく、縦向き姿勢に保持されて回転駆動や上下移動される。
【0029】
また、円筒状の基体に対しては、本発明により、円筒の外周面に限らず、内周面に対しても、塗膜を形成することができる。
【0030】
(3)ノズル
ノズルは、膜厚の均一な塗膜を形成する上で、塗布液(第一の液体)を安定して定量供給できるものがよい。
ノズルとしては、チューブをチューブディスペンサー等の塗布液供給手段(不図示)に取付けて液体を供給する方法や、スリットから液体を定量供給する方法など、ビードを形成しながら塗布できる方法であればよい。
【0031】
例えば、図4Aのように、基体を略全周面にわたって取り囲むように形成されたリング状スリットを有するノズルから液体を定量的に供給する方法等が挙げられる。液体を安定して定量供給する上で、チューブの内径やスリットの幅は1〜3mm程度が好ましい。
【0032】
また、チューブの材質としては、フッ素樹脂や金属等のように、塗布液に対して、腐食・浸食されないものがよい。リング状スリットの場合においても、金属などに浸食されずかつ変形しにくいものがよい。
【0033】
基体1とノズル3とのギャップは、先立って形成された第二の液体の液膜とノズル3から供給される第一の液体との間にビードが形成できる程度で、0〜10mm程度が望ましい。
【0034】
(4)含浸材
含浸材は、空孔をもち、塗布液(第二の液体)に浸食されることなく、塗布液を十分含むことのできるスポンジを用いることが好ましい。材質としては、ウレタンなどのスポンジが好ましく、更にロール状のスポンジとすることで、液膜形成のプロセスにおいて含浸材一回転ごとに新品面を送りだし、スポンジの摩耗による基体との当接面の経時変化の影響が抑制できる。含浸材としては、第二の液体を十分含み、押しつけて塗布できるものであれば、スポンジの代わりに、刷毛や不織布、ガーゼ等を用いてもよい。
図4Bのように、含浸材は、基体を周面にわたって取り囲むように形成された略リング状のスポンジで押しつけて塗布してもよい。
【0035】
第二の液体として揮発性の高い有機溶剤等を用いる場合、第二の液体の塗布工程から乾燥するまでの時間が短いため、乾燥する前に第一の液体を塗布できるように、含浸材の上端とノズルの吐出口との軸方向の相対距離は、20mm以内にすることが好ましい。
また、ノズル3と含浸材3とを、図1に示したように、基体1の周方向に対して同じ位置に配置する場合、前記した通り、第一の液体のビード13を安定して形成するために、ノズル3と含浸材2の上端との距離を5mm以上とすることが好ましい。
【0036】
(5)第一液体と第二液体の親和性
本発明においては、第二の液体の液膜に対して、第一の液体によりビードを形成して塗布し、第一の液体と第二の液体を相溶させた塗膜を形成することを考えると、第二の液体は第一の液体と親和性の高い液体である必要がある。ここで、液体の親和性の尺度として、溶解性パラメータを用いることができる(非特許文献1参照)。
【0037】
二つの液体の溶解性パラメータの差が溶解に必要なエネルギーを示している。第一の液体の溶解性パラメータと第二の液体の溶解性パラメータの差が小さいほど、相溶しやすく、親和性が高い。第一の液体の溶解性パラメータと第二の液体の溶解性パラメータとの差が6.0以下であれば、十分に相溶し、ビードをより安定に形成することができる。
【0038】
正則溶液論において、(ΔE/V)0.5は溶液中での分子間力、すなわち溶解力のパラメータとして、Hildebrandは式(1)のように溶解性パラメータを定義した。
δ=(ΔE/V)0.5 (1)
ここで、δは溶解性パラメータ、ΔEはモル蒸発エネルギー[kcal/mol]、Vはモル分子容[cm/mol]である。
【0039】
また、ΔEは、下記式(2)により求めることができる。
ΔE=23.7T+0.02T−2950 …(2)
ここで、Tは沸点である。
また、溶剤が混合物の場合には、下記式(3)により混合溶剤の溶解性パラメータ(δmix)を求めることができる。
δmix=(φδ+φδ+・・+φδ) …(3)
ここで、φは第n成分の体積分率、δは第n成分の溶解性パラメータである。
【0040】
(電子写真用定着部材の構成概略)
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置における定着プロセスに使用される定着部材に対して有効である。定着プロセスでは、加圧部材と定着ベルトとの間に加熱・加圧がなされる所定の定着ニップ部Nが形成される。この定着ニップ部Nに未定着トナーTによって画像が形成された被加熱体となる被記録材を挟持搬送させる。これにより、トナー像を加熱、加圧する。その結果、トナー像は溶融・混色、その後、冷却されることによって被記録材上にトナー像が定着される。このように、定着プロセスにおいて、加熱溶融されたトナーに対して、定着部材により均一に加圧されることで、光沢ムラのない画像が形成できる。
【0041】
定着部材は、基体、プライマー層、硬化シリコーンゴム層、フッ素樹脂層等で構成されるが、各層において、所望の膜厚、硬度で形成されることが望ましい。
【0042】
本発明の塗膜形成方法では、定着部材の製造方法におけるプライマー層の形成に対して、特に有効である。
すなわち、本発明に係る、円筒状または円柱状の基体、該基体上の硬化シリコーンゴム層を有する定着部材の製造方法は、
(1)基体の周面にプライマー層を形成する工程、
(2)該プライマー層の表面に付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を形成する工程、
(3)該付加硬化型シリコーンゴム組成物の層を硬化させて該硬化シリコーンゴム層を形成する工程、及び、オプションとしての
(4)該硬化シリコーンゴム層表面に離型層を形成する工程、を有する。
【0043】
そして、工程(1)は、
(i)基体を、ノズルに対して相対的に回転させると共に、該ノズルと該基体とを該基体の回転軸に沿う方向に相対的に移動させつつ、該ノズルから第一の液体を供給し、該第一の液体の塗膜を形成する第一の液体の塗膜形成工程と、
(ii)該工程(i)における該ノズルからの該第一の液体の供給に先立って、第二の液体を含浸させてなる部材を該基体の周面に押し付けて、該第二の液体の液膜を該基体の周面に形成する第二の液体の液膜形成工程とを含む。
更に、該工程(i)は、
該ノズルからの該第一の液体を、該基体の周面に形成された該第二の液体の液膜の乾燥前に、該第二の液体の液膜上に供給し、該ノズルと該第二の液体の液膜との間に該第一の液体のビードを形成する工程と、
該ビードを該基体の周方向に塗り広げる工程と、を含み、
該第二の液体は、該第一の液体と同一であるか、または、溶解性パラメータの差が、6.0以下の液体であり、かつ、
該第一の液体と該第二の液体のいずれか一方または両方が、該プライマーの原料を含む。
【0044】
図5は本発明における定着ベルトの層構成を示す横断面模式図である。
円筒状の基体1上に、プライマー層6、硬化シリコーンゴム層4、離型層5が形成される。プライマー層6は、基体1と硬化シリコーンゴム層4を接着させている。
【0045】
(1)基体
定着部材に用いる基体の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルなどの金属や合金、ポリアミドイミドなどの耐熱性樹脂が用いられる。定着部材が円柱状である場合、基体1には、芯金が用いられる。芯金の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属や合金が挙げられる。
定着部材が円筒状である場合には、基体1としては、例えば電鋳ニッケルベルトやポリイミド等からなる耐熱樹脂ベルトなどが挙げられる。
また、定着部材においては紙搬送性や紙しわ発生を抑制するために、基体の外径形状をクラウン形状、逆クラウン形状にすることも可能である。
【0046】
(2)プライマー層
プライマー層は、本発明の塗膜形成方法により、基体と硬化シリコーンゴム層とを接着させるための層である。
【0047】
(2−1)プライマー層の基本構成
プライマー層の形成用の原料としては、(A)シランカップリング剤、(B)触媒、(C)溶剤、(D)添加剤とを含む混合物が挙げられる。また、プライマー層と硬化シリコーンゴム層との接着性をより一層向上させる目的で、更に、(E)活性水素基含有ポリシロキサンが添加されることがある。
【0048】
(A)シランカップリング剤
シランカップリング剤は、加水分解性官能基、反応性有機官能基のうち少なくとも一方をもつものが挙げられる。加水分解性官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、金属やゴムのフィラー等と反応し、結合する。反応性有機官能基としては、ビニル基やアリル基、エポキシ基等が挙げられ、シリコーンゴムと反応し、結合する。
具体的なシランカップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
(B)触媒
触媒としては、白金系化合物が挙げられ、シリコーンゴム層とプライマー層との間の付加反応を促進し、接着性を向上させる働きをする。白金系化合物は、具体的な例として、塩化白金酸やジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体化合物やカルボニルシクロビニルメチルシロキサンの錯体化合物が挙げられる。
【0050】
(C)溶剤
溶剤としては有機溶媒が挙げられ、揮発しやすく、基体に対して濡れ性のよいものがよい。具体的には、上述した基体の材質に対しては、n−ヘプタンやn−ヘキサン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0051】
(D)添加剤
添加剤は、プライマーの塗膜を可視化させ、塗膜の表面を目視観察する目的で添加される。具体的には、酸化鉄等の顔料が挙げられる。
【0052】
(E)活性水素基含有ポリシロキサン
活性水素基含有ポリシロキサンは、硬化シリコーンゴム層4に含まれるビニル基等の不飽和脂肪族基と反応し、接着性を向上させる目的で添加されることがある。具体的には、直鎖状、分岐状や環状等が挙げられる。メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチル−メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0053】
(2−2)プライマー層形成方法
本発明に係る塗膜形成方法を用いることにより、均一な厚さを有するプライマー層の塗膜を形成することができる。ここで、第一の液体と第二の液体の双方が、プライマー層の原料を含んでいてもよく、また、第一の液体及び第二の液体のいずれか一方が、プライマー層の原料を含んでいてもよい。
なお、第一の液体及び第二の液体が共にプライマー層の原料を含んでいる場合において、これらの液体は、その組成について同一であっても、異なっていてもよい。
但し、第一の液体と第二の液体とを異ならせる場合、それらは、互いに親和性の高いものである必要がある。
第一の液体及び第二の液体が、共にプライマー層の原料を含んでいる場合の具体的な組み合わせとして、以下の例が挙げられる。
第一の液体:
(A)シランカップリング剤、(B)触媒、(C)溶剤、(D)添加剤及び(E)活性水素基含有ポリシロキサンを含む混合物;
第二の液体:前記した(A)シランカップリング剤、(B)触媒、(C)溶剤、及び(D)添加剤を含む混合物。
また、第一の液体及び第二の液体のいずれか一方のみがプライマー層の原料を含んでいる場合、プライマーの原料を含んでいない液体としては、プライマーの原料を含んでいる液体に含まれる溶剤と同一の溶剤を用いることができる。例えば、第一の液体が、プライマー層の原料を含む液体であって、かつ、溶媒として、n−ヘプタンを含んでいる場合、第二の液体として、n−ヘプタンを用いることができる。逆に、第二の液体が、プライマー層の原料を含む液体であって、かつ、溶媒として、n−ヘプタンを含んでいる場合、第一の液体として、n−ヘプタンを用いることができる。
これによって、基体周面に、均一な厚みのプライマー層を形成することができる。
また、第一の液体及び第二の液体のいずれか一方、または両方に、シランカップリング剤や白金系化合物を有機溶剤に溶かした溶液としてもよい。
また、第一の液体を第二の液体の液膜上に塗布した後、基体とプライマー中のシランカップリング剤とを反応させるために、加熱することで、基体表面にプライマー層を強固に接着することができる。
【0054】
(3)硬化シリコーンゴム層、その形成方法
硬化シリコーンゴム層4は、定着時にトナーを押しつぶさない程度の弾性を定着部材に担持させる層として機能する。かかる機能を発現させる上で、硬化シリコーンゴム層4は、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させたものとすることが好ましい。フィラーの種類や添加量に応じて、付加硬化型シリコーンゴム組成物の架橋度を調整することで、硬化シリコーンゴム層4の弾性を調整することができるからである。
付加硬化型シリコーンゴム組成物は、付加硬化型シリコーンゴム原液にフィラー等の添加剤を配合・分散させてなる。基体表面に形成されたプライマー層の上に付加硬化型シリコーンゴムを塗工し、加熱することで、シリコーンゴム自身の硬化と同時に、シリコーンゴムとプライマーの間でヒドロシリル化に伴う架橋反応を進行させ、基体と硬化シリコーンゴム層を接着させることができる。
【0055】
(4)離型層、その形成方法
離型層5としては、主にフッ素樹脂、例えば、以下に例示列挙する樹脂が用いられる。テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等。
上記例示列挙した材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
形成手段としては、特に限定されないが、付加硬化型シリコーンゴム接着剤でチューブ状に成形したものを硬化シリコーンゴム層に被覆・接着させて形成する方法や、フッ素樹脂の微粒子を直接または溶媒中に分散塗料化されたものを硬化シリコーンゴム層表面にコーティング後、乾燥・溶融し成膜する方法などが知られている。
【0056】
本発明によれば、ノズルに対して相対的に回転している基体に対して、ノズルと該基体とを軸方向に相対的に移動させつつ、基体の周面への塗膜を形成する方法において、塗膜ムラを低減し従来よりも均一な塗膜を形成することができる。
【実施例】
【0057】
以下、定着部材を例に本発明の塗膜形成方法を説明する。
表1において、図1A〜1Dの塗膜形成方法の装置をα、図4Aの塗膜形成方法の装置をβ、図4Bの塗膜形成方法の装置をγとする。
【0058】
[実施例1]
<1.プライマー層の形成、評価>
前述した図1A〜1Dの塗膜形成方法において、基体としては、ニッケルからなる内径30mm、厚み40μm、長さ400mmの円筒体を用いた。該円筒体は、それだけでは剛性を有しないため、中子へ挿入し、保持させた。
第一の液体及び第二の液体として、シリコーンディスパージョン(商品名:DY39−051 A、B;東レ・ダウコーニング株式会社製)の希釈液を用意した。
すなわち、「DY39−051 A」及び「DY39−051 B」を質量比1:1で混合した。そこに、質量が5倍となるようにヘプタンを加えて希釈して、第一の液体及び第二の液体を調製した。
こうして調製した第一の液体および第二の液体は、
前記(A)成分に該当する、テトラエトキシシラン、
前記(B)成分に該当する白金触媒、
前記(C)成分に該当する、ヘプタン、酢酸エチル、トルエン及びイソプロピルアルコール、
前記(D)成分に該当する酸化鉄、及び
前記(E)成分に該当する活性水素基含有ポリシロキサンを含む。
上記各組成の第一の液体及び第二の液体の溶解度パラメータδは、何れも8.0であった。
また、塗膜装置の条件としては、ノズル3としては、チューブディスペンサー(商品名:MT−410、武蔵エンジニアリング(株)製)に取り付けられた外径3mm、内径2mmのフッ素樹脂チューブを用いた。また、このノズルを、その吐出口と、基体の第二の液体の液膜の表面との距離dが、1mmとなるように配置した。
含浸材2としては、幅L=14mmのスポンジ(商品名:SFフェルト、ブリヂストン化成品株式会社製)を用いた。
また、ノズルと含浸材とは、基体の周方向において、同一の位置に配置し、ノズルと含浸材の上端との距離pを、8mmとした。
まず、基体1を静止させた状態で、不図示の第二の液体供給ノズルから、第二の液体を42ml/分で含浸材に供給し、第二の液体を含浸材に含浸させた。次いで、基体を移動速度V=960mm/分にて移動させると共に、回転速度R=215回転/分で回転させた。また、第一の液体を、供給速度=42ml/分にて第二の液体の液膜上に供給した。そして、ノズルと第二の液体の液膜上にビードを形成しつつ、該ビードを、第二の液体の液膜上に塗り広げ、基体上に第二の液体及び第一の液体の塗膜を形成した。
かかる塗膜が形成された基体を、温度165℃に加熱したオーブン中に入れ、4分間加熱して、該塗膜をベークして、プライマー層を形成した。
なお、第一の液体の溶解度パラメータをδ1、第二の液体の溶解度パラメータをδ2、二つの溶解度パラメータの差を|δ1−δ2|とする。
得られたプライマー層を目視で観察し、下記の基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0059】
<評価基準>
ランクA:ムラが殆ど認められなかった。
ランクB:スパイラル状の塗布ムラが認められた。
【0060】
<2.定着部材の作製>
続いて、プライマー層上に硬化シリコーンゴム層を形成するために、リングコート法で付加硬化型シリコーンゴム(商品名:SE4430;東レ・ダウコーニング株式会社製)をプライマー層上に塗工した。その後、基体を200℃に設定した電気炉中で4時間加熱して、付加硬化型シリコーンゴムを硬化させ硬化シリコーンゴム層を得た。
【0061】
室温まで冷却後、硬化シリコーンゴム層の表面に、付加硬化型シリコーンゴム接着剤(商品名:SE1819CV;東レ・ダウコーニング株式会社製)を厚さが、およそ20μm程度になるように塗布した。
次いで、内径29mm、厚み30μmのフッ素樹脂チューブ(商品名:KURANFLON−LT;倉敷紡績株式会社製)を硬化シリコーンゴム層上に積層した。
そして、得られた積層体を200℃に設定した電気炉にて1時間加熱して接着剤を硬化させて当該フッ素樹脂チューブを硬化シリコーンゴム層上に固定したのち、両端部を切断し、幅が343mmの定着ベルトを得た。
【0062】
この定着ベルトを、カラー複写機(商品名:IR−ADVANCE C5051、キヤノン株式会社製)に装着し、電子写真画像を形成した。得られた電子写真画像の光沢ムラの評価を行った。電子写真画像の光沢ムラは、プライマーの塗膜ムラを起因とする定着ベルトの硬度ムラにより発生する。つまり、プライマーの塗膜ムラは、電子写真画像の品質に与える影響の大小を示す指標となり得る。
【0063】
評価用の電子写真画像は、A4サイズの表面が平滑なコート紙(商品名:イメージコートグロス128;キヤノン株式会社製)上に、シアントナーとマゼンタトナーをほぼ全面に100%濃度で形成した。この評価用画像の光沢ムラを、目視で観察し、下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
【0064】
<評価基準>
ランクA:光沢ムラが殆ど無く、極めて高品位な電子写真画像であった。
ランクB:光沢ムラが非常に目立つ電子写真画像であった。
【0065】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
第一の液体及び第二の液体として表1に示した液体を用いて、実施例1と同様にしてプライマー層の形成及び定着ベルトの作製を行った。プライマー層の評価結果および定着ベルトの評価結果を表1に併せて示す。
【0066】
[実施例5]
図4(b)に示す塗膜形成装置を用いた。すなわち、含浸材2として、基体を周面にわたって取り囲むようなドーナツ形状を有する、L=14mmのスポンジ(SFフェルト;ブリヂストン化成品株式会社製)を用いた。
第一の液体として、ヘプタンを用い、第二の液体としては、実施例1の「プライマー原料を含む塗料1」を用いた。それら以外は、実施例1と同様して、プライマー層の形成及び定着ベルトの作製を行った。プライマー層の評価結果、及び得られた定着ベルトの評価結果を表1に併せて示す。
【0067】
[比較例3]
第一の液体として、実施例1の「プライマー原料を含む塗料1」を用いた。一方、第二の液体は、用いなかった。それら以外は、実施例5と同様にしてプライマー層の形成及び定着ベルトの作製を行った。プライマー層の評価結果、及び得られた定着ベルトの評価結果を表1に併せて示す。
【0068】
[実施例6]
図4(a)に示した塗膜形成装置を用いた。すなわち、ノズルとして、基体を周面にわたって取り囲むようなドーナツ形状を有し、内周面に幅が3mmのスリットを有するリングヘッドを用いた。
第一の液体として、エタノールを用い、第二の液体としては、実施例1の「プライマー原料を含む塗料1」を用いた。それら以外は実施例1と同様にして、プライマー層の形成及び定着ベルトの作製を行った。プライマー層の評価結果、及び得られた定着ベルトの評価結果を表1に併せて示す。
【0069】
[比較例4]
第一の液体を用いない以外は、実施例6と同様にしてプライマー層の形成及び定着ベルトの作製を行った。プライマー層の評価結果、及び得られた定着ベルトの評価結果を表1に併せて示す。
【0070】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5