特許第6429666号(P6429666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6429666-エンボス化粧板の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429666
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】エンボス化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20181119BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20181119BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20181119BHJP
   B27D 5/00 20060101ALI20181119BHJP
   B27N 7/00 20060101ALI20181119BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20181119BHJP
   B29C 65/50 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B32B5/28 Z
   B32B33/00
   B27D5/00
   B27N7/00 B
   B29C65/18
   B29C65/50
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-31173(P2015-31173)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153167(P2016-153167A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2017年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆志
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−057576(JP,U)
【文献】 特開昭52−042572(JP,A)
【文献】 特開平09−076418(JP,A)
【文献】 特開2001−018346(JP,A)
【文献】 特開平09−193244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00−59/18
B29C 43/00−43/58
B32B 27/00−27/42
B32B 29/00−29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マージン部に位置合わせ用の印(7)が印刷された印刷紙(4)を樹脂含浸紙(5)に挟み込み、表側にエンボス板(3)を前記の印(7)に位置を合わせて載置し、裏側にはコア材(9)を積層し、熱圧成形するエンボス化粧板の製造方法であって、
エンボス板の材質がステンレス鋼板であり、その平均熱膨張係数が15×10−6/℃(0〜100℃)以下であることを特徴とするエンボス化粧板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンボス化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる樹脂液を化粧板用の化粧紙に含浸した樹脂含浸化粧紙と、フェノール樹脂含浸紙、合板、パーティクルボードなどのコア材と、金属製の型板やプラスチック製の型板とを用いて熱圧成形することにより得られる化粧板があり、表面が平坦な化粧板と表面に凹凸を賦与したエンボス化粧板が知られている。
【0003】
エンボス化粧板は表面が平坦な化粧板に比べ立体感に富み印刷紙の模様と型板の形状を適宜選択して組み合わせることでデザインも豊富で、このエンボス化粧板の製法についてはインク中にハイドロキノンの如き重合禁止剤を添加して印刷を施した化粧紙に熱硬化性樹脂よりなる樹脂液を含浸し、コア材とともに熱圧成形して硬化速度の差により凹凸を形成するいわゆる化学的エンボス法と、金属製、プラスチック製の型板や賦型シートを用いて熱硬化性樹脂含浸化粧紙、コア材ともに熱圧成形して凹凸を賦与する物理的エンボス法に大別される。
【0004】
一般に物理的手段により凹凸を賦与したエンボス化粧板は化学的エンボス法に基づいたものに比べ凹凸を深くすることが可能で、この凹凸の深さゆえに仕上がり外観がより立体的で付加価値が追及される昨今では需要も多く、特に木目模様の熱硬化性樹脂化粧板は天然に近い風合いから人気がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−534672号公報
【特許文献2】特開昭52−42572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、物理的手段による賦型は印刷模様とエンボスパターンとは必ずしも一致しなかった。例えば、木目柄が印刷された印刷紙の導管部とエンボス板の凸部を一致させて導管部を凹ますことは、印刷紙を含浸、乾燥での樹脂含浸パターン紙の裁断位置が一定していない、エンボス板の凸部を導管部に合わせて積層するのが難しい、パターン紙は一般に樹脂含浸すると伸びる、という点から極めて困難な課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、マージン部に位置合わせ用の印が印刷された印刷紙を樹脂含浸紙に挟み込み、表側にエンボス板を前記の印に位置を合わせて載置し、裏側にはコア材を積層し、熱圧成形するエンボス化粧板の製造方法であって、エンボス板の材質がステンレス鋼板であり、その平均熱膨張係数が15×10−6/℃(0〜100℃)以下であることを特徴とするエンボス化粧板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、印刷紙の模様とエンボス板の凹凸模様が合致してより立体感のあるエンボス化粧板が得られる。エンボス板に熱膨張率の小さいステンレス鋼板を用いれば熱膨張率が小さいため圧力40〜70kgf/cmといった高圧熱圧成形でもエンボス板が伸縮することなく所望の位置に賦型することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の製造方法を示す透視分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる印刷紙に通常の模様が印刷されている他に、マージン部には+印が印刷されており後述のエンボス板を載置する時の目印になっている。エンボス化粧板を製造する際には熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を含浸しない状態で使用し、含浸すると印刷紙が伸びてエンボス板の柄サイズと一致しなくなる欠点を解消する。また、印刷紙の柄のピッチのサイズとエンボス板のエンボス柄のピッチは合うようにグラビア印刷もしくはインクジェットによる印刷方法で印刷される。
【0011】
印刷紙に樹脂液を含浸しない代わりに、樹脂含浸表面紙に挟み込んで使用する。樹脂含浸表面紙は化粧板用の表面紙に、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、或いはこれらの混合樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を含浸し、乾燥したもので、数1で示される含浸率が200〜350%となるように含浸し、乾燥する。樹脂の中でも、とりわけ好ましいのは、メラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合によって得ることができアミノ−ホルムアルデヒド樹脂であり、特に好ましいのは、耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性に優れるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である。樹脂含浸裏面紙は上記表面紙と同じか紙はチタン紙でもよい。チタン紙の場合、含浸率は100〜200%が望ましい。
【0012】
【数1】
【0013】
本発明に用いるエンボス板は、鉄にクロムやニッケルなどの物質を添加して錆びにくくしたステンレス鋼板に所望の凹凸を形成したものを用いる。ステンレス鋼板としては、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼板、Ni(8〜10.5%)、Cr(18〜20%))、SUS430(フェライト系ステンレス鋼板、Ni0.06%以下、Cr(16〜18%))、SUS410(マルテンサイト系ステンレス鋼板、Ni0.06%以下、Cr(11.5〜13%))、SUS431(マルテンサイト系ステンレス鋼板、Ni(1.25〜2.50%)、Cr(15〜17%))、SUS630(析出硬化系ステンレス鋼板、Ni(3〜5%)、Cr(15〜17.5%)、Cu(3〜5%)、Nb(0.15〜0.45%))などが挙げられ、適宜硬質クロムメッキ処理したものを使用する。中でもマルテンサイト系のSUS410、SUS431、フェライト系のSUS430、443などのステンレス鋼板が熱膨張率が小さく、熱圧成形後の印刷紙の模様とエンボス板の凹凸位置のズレがなく好ましい。特に平均熱膨張係数が15×10−6 /℃(0〜100℃)以下のステンレス鋼板が好ましい。ステンレス鋼板へのエンボスの賦型は印刷紙の柄と同調して凹凸を賦型させたい柄部分をエッチングによる手法を用いて製作することができる。
【0014】
コア材には、化粧板用の未晒しクラフト紙、晒しクラフト紙、不織布などのコア紙にフェノール−アルデヒド樹脂、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、或いはこれらの混合物などの熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を含浸した樹脂含浸コア紙、不織布、織布などの基材に熱硬化性樹脂をバインダーとし無機充填材を含むスラリーを含浸し、乾燥したプリプレグを用いることができる。
【0015】
樹脂含浸コア紙やプリプレグの他に、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、合板、集成材などの木質基材、石膏ボード、セメント板、ケイ酸カルシウム板などの無機質基材も用いる事が可能である。
【0016】
中でも、樹脂含浸コア紙が耐水性、耐湿性、曲げ強度、寸法変化に優れることから好ましい。樹脂含浸コア紙の場合、含浸率は数1で示される算出方法で50〜100%であればよく、平板プレス機で温度130〜160℃、圧力40〜70kgf/cm、時間30〜90分の条件で熱圧成形すると樹脂含浸コア紙の樹脂の流れが良く、樹脂含浸紙、印刷紙との接着も良好なものになる。
【実施例1】
【0017】
印刷紙
グラビア印刷法に基づいて、マージン部に+印を印刷した80g/mの木目柄印刷紙を用意した。
メラミン樹脂含浸表面紙
坪量が23g/mの表面紙に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂主成分とする樹脂液を、数1に示す含浸率が280%となるように含浸し、乾燥してメラミン樹脂含浸表面紙を得た。
フェノール樹脂含浸コア紙
坪量190g/mの未晒しクラフト紙にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、数1に示す含浸率が50%となるように含浸してフェノール樹脂含浸コア紙を得た。
エンボス板
厚み3mmのステンレス鋼(SUS410、平均熱膨張係数11.0×10−6 /℃(0〜100℃))に木目柄印刷紙の導管部に合致するように凸部を形成したエンボス板を用意した。
下から順に、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚、メラミン樹脂含浸表面紙を1枚、印刷紙を1枚、メラミン樹脂含浸表面紙を1枚積層した後、エンボス板の端部が木目柄印刷紙の+印に合うように積層し、熱盤間に挿入して、加熱温度140℃、圧力70kgf/mの成形条件下で熱圧して、実施例1のエンボス化粧板を得た。
実施例1の木目の導管部はエンボス凸部に合致して凹んでおり、天然木に近い外観が得られた。
【0018】
比較例
実施例1において、平均熱膨張係数が17.3×10−6 /℃(0〜100℃)のSUS304鋼板を用いた以外は同様に実施したが木目の導管部はエンボス凸部に合致せず1〜2mm程度ズレていた。
【符号の説明】
【0019】
3 エンボス板
4 印刷紙
5 樹脂含浸紙
7 位置合わせ用の印
9 樹脂含浸コア紙

図1