特許第6429698号(P6429698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429698
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】溶媒回収方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20060101AFI20181119BHJP
   B01D 25/12 20060101ALI20181119BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20181119BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   C02F11/14 ZZAB
   B01D25/12 P
   C02F1/04 D
   C02F11/12 C
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-65391(P2015-65391)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-182581(P2016-182581A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】立道 隆幸
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−193442(JP,A)
【文献】 特開2014−193438(JP,A)
【文献】 特開平7−60050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02−18、11/00−20
B01D 1/00−8/00、23/00−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性溶媒が有機汚泥中の水分を吸収する吸収液として機能し、かつ水よりも低い沸点を有し、前記親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物から離脱する気液混合流体が前記有機汚泥から分離された水分と前記親水性溶媒を含み、前記気液混合流体を気液分離工程において非冷却条件で気液分離して一次処理液を回収し、気液分離工程で生じる一次処理気体を凝縮工程において凝縮させて二次処理液を回収し、凝縮工程で生じる二次処理気体を溶解工程において溶解用液の常温水と気液接触させて三次処理液を回収し、一次処理液、二次処理液、三次処理液を再生工程の蒸留塔において精製して親水性溶媒を回収することを特徴とする溶媒回収方法。
【請求項2】
再生工程では、一次処理液、二次処理液、三次処理液をそれぞれの溶媒濃度に応じて蒸留塔内の異なる温度域に供給し、溶媒濃度の低い処理液を蒸留塔の下位部の高温側に供給し、溶媒濃度の高い処理液を蒸留塔の上位部の低温側に供給することを特徴とする請求項1に記載した溶媒回収方法。
【請求項3】
凝縮工程では、前段の凝縮器で常温水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させ、後段の凝縮器で冷却水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させることを特徴とする請求項1または2に記載の溶媒回収方法。
【請求項4】
常温水は、下水処理施設で生じる下水処理水であり、有機汚泥は下水処理施設で生じる脱水ケーキであることを特徴とする請求項3に記載の溶媒回収方法。
【請求項5】
気液分離工程の前に脱水工程を行い、脱水工程では、親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物を加温フィルタープレスで脱水し、有機汚泥から脱水ろ液として脱離したろ液含有吸収液を気液混合流体として回収することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の溶媒回収方法。
【請求項6】
加温フィルタープレスで加圧に利用した温水を再生工程に利用することを特徴とする請求項5に記載の溶媒回収方法。
【請求項7】
親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物を加温フィルタープレスで脱水して気液混合流体からなる脱水ろ液を脱離させる脱水装置と、気液混合流体を非冷却条件で気液分離して一次処理液を回収する気液分離器装置と、気液分離器装置から排出する一次処理気体を凝縮させて二次処理液を回収する凝縮器装置と、凝縮器装置から排出する二次処理気体を溶解用液の常温水と気液接触させて三次処理液を回収する溶解回収装置と、一次処理液、二次処理液、三次処理液を異なる段に供給可能な蒸留塔装置を備え、
前記親水性溶媒が前記有機汚泥中の水分を吸収する吸収液として機能し、かつ水よりも低い沸点を有し、前記脱水ろ液が前記有機汚泥から分離された水分と前記親水性溶媒を含むことを特徴とする脱水システム。
【請求項8】
凝縮器装置は、常温水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させる前段の凝縮器と、冷却水を冷却媒体として前段の凝縮器を通った一次処理気体を凝縮させる後段の凝縮器を有することを特徴とする請求項7に記載の脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒回収方法および装置に関し、汚泥等の含水物を有機汚泥とし、有機汚泥中に含まれた水分を有機溶媒等の親水性溶媒からなる吸収剤を利用して脱水し、溶媒を回収する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場、浄水場、工場排水処理施設、土木建設現場等から発生する汚泥を脱水する装置としては、遠心脱水機、フィルタープレス等種々のものがある。しかし、汚泥の性状によっては汚泥から水分が脱離することが困難なものがある。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載された発明は、脱水された汚泥の乾燥速度を上げ、短時間で減容させることを目的とするものであり、凝集沈殿処理後に得られた濃縮泥水に揮発性を有する有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系有機溶剤を添加し、その有機溶剤混合泥水を脱水し、添加された有機溶剤の揮発により、脱水された汚泥中に残存する水分の気化を促進させ、脱水された汚泥の含水率を低減して減容させるものである。
【0004】
特許文献2に記載された発明は、常温常圧下において液体であり揮発性を有する有機溶媒と混合した有機汚泥を、加温手段を備えた脱水機で脱水するものであり、脱水機では、有機汚泥を有機溶媒の沸点以上の第1所定温度に加温し、有機汚泥に混合されている有機溶媒を気化させて有機溶媒を脱水部から排出して回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−200811
【特許文献2】特開2014−193438
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の構成においては、汚泥に有機溶剤を混練して脱水し、脱水された汚泥の含水率を低減して減容させるものであるために、汚泥から気化することで有機溶剤が揮散して消費される問題に加えて脱水ろ液に含まれた有機溶剤が気化して揮散することで有機溶剤が消費される問題がある。
【0007】
このため、溶媒の回収に際しては、溶媒の揮発ロスを極力低減することを目的に、溶媒回収機構の各所において脱水ろ液である気液混合流体を冷却して溶媒を凝縮回収する工程を行っており、脱水ろ液等の冷却に要する冷水製造装置の消費エネルギーが多大であった。また、脱水ろ液等を蒸留塔で精製する際に、一旦冷却された脱水ろ液を再び加温するために多量のエネルギーが必要であった。
【0008】
さらに、脱水ろ液は夾雑物が多く、夾雑物が蒸留塔内に付着し、あるいは堆積すると、伝熱効率の悪化により十分な分離効率を得ることができない場合があった。
本発明は、上記した課題を解決するものであり、溶媒の回収に要する消費エネルギーを低減することができる溶媒回収方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の溶媒回収方法は、親水性溶媒が有機汚泥中の水分を吸収する吸収液として機能し、かつ水よりも低い沸点を有し、前記親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物から離脱する気液混合流体が前記有機汚泥から分離された水分と前記親水性溶媒を含み、前記気液混合流体を気液分離工程において非冷却条件で気液分離して一次処理液を回収し、気液分離工程で生じる一次処理気体を凝縮工程において凝縮させて二次処理液を回収し、凝縮工程で生じる二次処理気体を溶解工程において溶解用液の常温水と気液接触させて三次処理液を回収し、一次処理液、二次処理液、三次処理液を再生工程の蒸留塔において精製して親水性溶媒を回収することを特徴とする。
【0010】
本発明の溶媒回収方法において、再生工程では、一次処理液、二次処理液、三次処理液をそれぞれの溶媒濃度に応じて蒸留塔内の異なる温度域に供給し、溶媒濃度の低い処理液を蒸留塔の下位部の高温側に供給し、溶媒濃度の高い処理液を蒸留塔の上位部の低温側に供給することを特徴とする。
本発明の溶媒回収方法において、凝縮工程では、前段の凝縮器で常温水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させ、後段の凝縮器で冷却水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させることを特徴とする。
【0011】
本発明の溶媒回収方法において、常温水は、下水処理施設で生じる下水処理水であり、有機汚泥は下水処理施設で生じる脱水ケーキであることを特徴とする。
本発明の溶媒回収方法において、気液分離工程の前に脱水工程を行い、脱水工程では、親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物を加温フィルタープレスで脱水し、有機汚泥から脱水ろ液として脱離したろ液含有吸収液を気液混合流体として回収することを特徴とする。
【0012】
本発明の溶媒回収方法において、加温フィルタープレスで加圧に利用した温水を再生工程に利用することを特徴とする。
【0013】
本発明の脱水システムは、親水性溶媒と有機汚泥との固液混合物を加温フィルタープレスで脱水して気液混合流体からなる脱水ろ液を脱離させる脱水装置と、気液混合流体を非冷却条件で気液分離して一次処理液を回収する気液分離器装置と、気液分離器装置から排出する一次処理気体を凝縮させて二次処理液を回収する凝縮器装置と、凝縮器装置から排出する二次処理気体を溶解用液の常温水と気液接触させて三次処理液を回収する溶解回収装置と、一次処理液、二次処理液、三次処理液を異なる段に供給可能な蒸留塔装置を備え、
前記親水性溶媒が前記有機汚泥中の水分を吸収する吸収液として機能し、かつ水よりも低い沸点を有し、前記脱水ろ液が前記有機汚泥から分離された水分と前記親水性溶媒を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の脱水システムにおいて、凝縮器装置は、常温水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させる前段の凝縮器と、冷却水を冷却媒体として前段の凝縮器を通った一次処理気体を凝縮させる後段の凝縮器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、気液分離工程では、ろ液含有吸収液を貯溜したタンク内に気液混合流体を供給し、非冷却の自然状態下で気相の溶媒を気液混合流体から分離させることで、冷却に要するエネルギー消費を伴うことなく、冷却を伴う従来に比して溶媒の揮発が促進されて溶媒濃度が低くなったろ液含有吸収液を一次処理液として取り出す。
【0016】
凝縮工程では、気液分離工程で分離した不純分の少ない一次処理気体を凝縮させるので、消費エネルギーを抑制しつつ溶媒濃度が高濃度の二次処理液を得る。溶解工程では、凝縮工程を経た二次処理気体を非冷却の自然状態下で気液接触により溶解液に溶解させるので、エネルギー消費を伴うことなく溶媒濃度が低濃度の三次処理液を得る。したがって、気液分離工程、凝縮工程、溶解工程に分けて溶媒を回収することで、溶媒の回収に要する消費エネルギーを低減することができ、蒸留塔に供給する処理液の供給温度を高めることで蒸留塔における加温用の消費エネルギーを低減できる。
【0017】
再生工程では、一次処理液、二次処理液、三次処理液をそれぞれの溶媒濃度に応じて蒸留塔内の異なる温度域に供給し、溶媒濃度の低い処理液を蒸留塔内の下位部の高温側に供給し、溶媒濃度の高い処理液を蒸留塔内の上位部の低温側に供給することで、蒸留塔における環流量を抑制して蒸留に要する必要加熱量を低減できる。
【0018】
凝縮工程では、前段の凝縮器で常温水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させ、後段の凝縮器で冷却水を冷却媒体として一次処理気体を凝縮させることで、後段の凝縮器で使用する冷却水の必要量を低減して、その製造に要する消費エネルギーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における吸収脱水装置を示す模式図
図2】同実施の形態における溶媒回収装置を示す模式図
図3】同実施の形態における蒸留塔を示す模式図
図4】メタノール−水混合物の気液平衡線と混合物沸点の関係を示すグラフ図
図5】本発明の他の実施の形態における溶媒回収装置を示す模式図
図6】同実施の形態における蒸留塔を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、有機汚泥101は、下水処理場、浄水場、工場排水処理施設等から発生するものであり、ここでは脱水ケーキである。
【0021】
吸収脱水装置102において使用する吸収液103は親水性溶媒であり、ここでは、親水性溶媒としてメタノール、エタノール等の常温で液体のアルコール系溶媒を使用している。
【0022】
吸収脱水装置102は、吸収液貯溜槽104と撹拌槽105と脱水装置106と溶媒回収装置107と溶媒再生装置108とを巡る循環系を有しており、吸収液103が循環系内で循環する。
【0023】
吸収液貯溜槽104は、吸収液103を貯溜し、必要に応じて新しい溶媒や希釈水の追加により溶媒の濃度を調整する。
撹拌槽105は、吸収液貯溜槽104から供給する吸収液103と有機汚泥101とを回転する撹拌翼によって撹拌混合する撹拌部をなし、有機汚泥101を固液混相の混合物となす撹拌工程を担うものであり、有機汚泥101に含まれた水分と吸収液103の溶媒との接触を促進する。
【0024】
脱水装置106は、撹拌槽105の固液混合物を脱水する脱水工程を担うものであり、ここでは加温フィルタープレスを使用している。加温フィルタープレスは、ろ板を90℃程度の温水で加温し、ろ板間のろ室に配置した濾布内の固液混合物を65〜78℃以上に昇温させ、固液混合物の粘度を下げた状態で加圧脱水するものであり、この脱水処理により有機汚泥101から脱水ろ液としてろ液含有吸収液1が脱離する。ろ液含有吸収液1は有機汚泥101の水分、吸収液103の液相および気相の有機溶媒を含む気液混合流体である。
【0025】
溶媒再生装置108は、溶媒回収装置107のろ液含有吸収液から水分を分離して吸収液103を再生する再生工程を担うものであり、ここでは後述する蒸留塔7からなる。
本発明の脱水システムは少なくとも脱水装置106、溶媒回収装置107、溶媒再生装置108から構成され、吸収液貯溜槽104や撹拌槽105を含んだ吸収脱水装置102の全体を脱水システムとすることも可能である。
【0026】
図2図3に示すように、溶媒回収装置107では、ろ液含有吸収液を気液混合流体1として気液分離器装置2に供給する。気液分離器装置2は密閉されたろ液タンクからなり、吸収脱水装置で回収された所定温度を有する気液混合流体1を非冷却の自然状態下で気液分離し、気相の溶媒を気液混合流体から分離させて一次処理液21を回収するものである。このため、冷却に要するエネルギー消費を伴うことがなく、吸収脱水装置で与えられた所定温度の熱を利用して溶媒の揮発を促進するので、冷却を伴う従来に比して、溶媒濃度が低くなったろ液含有吸収液を一次処理液として取り出すことができ、しかも吸収脱水装置で与えられた熱を後工程の再生工程で利用することができる。
【0027】
次に、気液分離器装置2で揮発した一次処理気体22を凝縮器装置3に供給する。凝縮器装置3では、気液分離器装置2で分離した不純分の少ない一次処理気体22を凝縮させるので、消費エネルギーを抑制しつつ溶媒濃度が高濃度の二次処理液41を得ることができる。本実施の形態では凝縮器装置3が複数の凝縮器31、32からなる。前段の凝縮器31は、常温水、すなわち意図的にエネルギーを費やして冷却を行っていない自然状態の水を冷却媒体として一次処理気体22を凝縮させる。ここでは、常温水として下水処理施設で生成する所定温度(一般的に約15℃)の下水処理水を使用する。
【0028】
後段の凝縮器32は、冷却水、すなわち意図的にエネルギーを費やして上述の常温水よりも低い温度に冷却した冷却水を冷却媒体として一次処理気体22を凝縮させる。ここでは、冷却水として冷水製造装置(チラーユニット等)で強制的に所定低温(約5℃)にまで冷却した冷却水を使用する。
【0029】
よって、前段の凝縮器31において所定温度の常温水である下水処理水により極力冷却することで、後段の凝縮器32で使用する冷却エネルギー、つまり冷却水の必要量を低減し、あるいは冷却水の必要温度を上げることで、その製造に要する消費エネルギーを抑制できる。凝縮器装置3は、図5に示すように、一つの凝縮器で構成することも可能である。
【0030】
凝縮器装置3から排出する二次処理気体42は溶解回収装置5に供給する。溶解回収装置5では、凝縮器装置3から排出する二次処理気体42を溶解用液、ここでは常温水と気液接触させて三次処理液51を回収する。この常温水にも下水処理水を利用できる。下水処理水は、上水などと比較して季節による水温の変動が少なく、夏場においても上水よりも水温上昇が少なく、溶媒の回収率低下を抑えることができる。溶解回収装置5から排出する三次処理気体52はファン装置6で処理施設等の系外に排出する。
【0031】
したがって、気液分離器装置(気液分離工程)2、凝縮器装置(凝縮工程)3、溶解回収装置(溶解工程)5に分けて、かつ温度を下げ過ぎることなく、溶媒を回収することで、溶媒の回収に要する消費エネルギーを低減することができ、さらに蒸留塔7に供給する処理液の供給温度を高めることで蒸留塔7における加温用の消費エネルギーを低減できる。
【0032】
溶解回収装置5において、溶解用液の水温は15℃以下が好ましく、冷却を行う場合には溶媒の回収率が多少向上する。しかしながら、溶解回収装置5において冷却により得られる溶媒の増加量と、冷却した溶媒を蒸留塔7で所定温度に加熱するのに必要なエネルギーとを比較勘案すると、全体としては冷却しないほうが効率は良い。
【0033】
また、溶解回収装置5では溶媒が水に溶解する時に凝縮して発熱する場合がある。しかし、本実施の形態では溶解回収装置5の前工程に冷却水で冷却する凝縮器装置3をもつので、気相の溶媒は冷却された状態で溶解回収装置5に導入される。そのため、溶解回収装置5での温度上昇を抑制することができる。
【0034】
蒸留塔7では蒸気8を間接加熱の熱源として蒸留し、溶媒を精製する。本実施の形態では、蒸留塔7が多段形式のものからなり、一次処理液21、二次処理液41、三次処理液51をそれぞれの溶媒濃度に応じて蒸留塔7の異なる温度域(異なる段)に供給するが、図6に示すように、一次処理液21、二次処理液41、三次処理液51をまとめ、その溶媒濃度に見合う温度の蒸留塔7の一か所に供給することも可能である。
【0035】
本実施の形態では、溶媒濃度の低い処理液を蒸留塔7の下位部の高温側に供給し、溶媒濃度の高い処理液を蒸留塔7の上位部の低温側に供給する。
すなわち、溶媒濃度が20−30%の三次処理液51は蒸留塔7の下位部にある80℃程度の第1供給位置71に供給し、溶媒濃度が35−45%の一次処理液41は第1供給位置71より上位の76℃程度の第2供給位置72に供給し、溶媒濃度が70−80%の第二次処理液41は第2供給位置72より上位の68℃程度の第3供給位置73に供給する。
【0036】
図4に示すように、本実施の形態における溶媒であるメタノールと水の混和物の沸点は、溶媒濃度が20−30%で80℃程度であり、溶媒濃度が35−45%で76℃程度であり、溶媒濃度が70−80%で68℃程度である。よって、本実施の形態では、一次処理液21、二次処理液41、三次処理液51をそれぞれの溶媒濃度に応じた沸点に相当する温度域に供給する。
【0037】
このため、蒸留塔7における処理液の環流量を抑制して蒸留に要する必要加熱量を低減できる。蒸留塔7の塔頂部から出る留出液9の溶媒濃度が上昇し、蒸留塔7の塔底部から出る缶出液10の溶媒濃度が低減されることで、蒸留塔7での分離効率が高まる。
【0038】
また、溶媒濃度35−45%となった夾雑物の多い一次処理液21は、気液分離器装置2のろ液タンクで冷却を行わないことで、あるいは冷却水と下水処理水を使用することで、その溶媒濃度が従来のように積極的に冷却した場合に比べて低くなる。そのため、蒸留塔7における供給位置が従来よりも低位部となり、蒸留塔7の内部で夾雑物が付着、堆積する範囲が少なくなり、溶媒の分離効率の悪化が抑制される。加温フィルタープレスで使用した温水を蒸留塔7の加熱や蒸気製造に利用したり、蒸留塔7の廃熱を吸収脱水装置に供給して温水の製造などに利用することでシステム全体としての熱利用効率が高まる。また、蒸留塔7の缶出液10は下水放流などにより系外へ排出される。
【0039】
本発明は、図5に示すように、気液分離器装置2は常温水で冷却することもでき、常温水に下水処理施設で生成する所定温度(一般的に約15℃)の下水処理水を使用することも可能である。
【0040】
下水処理水を利用することで、従来のように冷却水を作るエネルギーが削減できるとともに、ろ液タンク液の温度が下がり過ぎず、蒸留塔7で加熱に必要な熱量も削減することができる。さらに、凝縮器装置3の冷却に用いた冷却水を気液分離器装置2の冷却に再利用することもできる。このように冷却水を再利用することで下水処理水を利用する場合と同様に、従来のように冷却水を作るエネルギーが削減できる。
【0041】
本実施の形態では常温水として下水処理水の使用を説明したが、溶媒の回収に必要な温度の水であって、新たにエネルギーを費やして冷却しない水であれば良く、例えば井戸水や河川水、一度冷却に使用した後の冷却排水などが利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 気液混合流体
2 気液分離器装置
3 凝縮器装置
5 溶解回収装置
6 ファン装置
7 蒸留塔
8 蒸気
9 留出液
10 缶出液
21 一次処理液
22 一次処理気体
31、32 凝縮器
41 二次処理液
42 二次処理気体
51 三次処理液
52 三次処理気体
71 第1供給位置
72 第2供給位置
73 第3供給位置
101 有機汚泥
102 吸収脱水装置
103 吸収液
104 吸収液貯溜槽
105 撹拌槽
106 脱水装置
107 溶媒回収装置
108 溶媒再生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6