(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の回転電機100について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る回転電機100を構成した場合について、
図1〜
図12を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態1に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図2は
図1のA−A線に沿った断面図である。
図3は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の回転子2の斜視図である。
図4は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の導体棒2b及び短絡環2cの斜視図である。
図1において、C1は固定子1の磁気中心、C2は回転子2の磁気中心を示している。
【0012】
図1に示されるように、回転電機100は、円環状の固定子1と、固定子1の内側に配置され、固定子1に対して回転可能な回転子2と、固定子1及び回転子2を支持するフレーム3と、回転軸4と、移動制限部材5と、ゴム6aと、ゴム6bと、スリーブ7と、羽根10と、を備える。
【0013】
固定子1は、回転子2と同軸に配置されている、スキューされた磁界発生部位を有する部材である。また、固定子1は、回転子2の外周を囲む円環状の固定子鉄心1aと、固定子鉄心1aにそれぞれ設けられ、固定子鉄心1aの周方向へ並べられた複数の電機子巻線1bと、を有している。固定子1は、固定子巻線がフレーム筒部内に嵌められた状態でフレーム3に支持されている。
【0014】
固定子鉄心1aは、回転軸4の軸線方向に積層された複数枚の電磁鋼板(磁性体)により構成されている。また、固定子鉄心1aは、フレーム筒部の内周面に沿った円環状のバックヨーク部(図示省略)と、バックヨーク部から径方向内側へそれぞれ突出し、固定子鉄心1aの周方向について互いに間隔を置いて配置された複数の磁極ティース部(図示省略)と、を有している。各磁極ティース部は、固定子鉄心1aの周方向について等間隔に配置されている。
【0015】
回転子2は、円筒形の回転子鉄心2aと、回転子鉄心2aの円周面に等間隔に並べられた複数の導体棒2bと、複数の導体棒2bを回転子鉄心2aの軸方向両端で短絡させる短絡環2cと、を備える。回転子2は、磁界発生部位を有する部材である。
【0016】
回転子鉄心2aは、回転軸4の軸線方向に積層された複数枚の電磁鋼板(磁性体)により構成されている。また、回転子鉄心2aは、回転軸4の外周面に沿った円環状のバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向外側へそれぞれ突出し、回転子鉄心2aの周方向について互いに間隔を置いて配置された複数の回転子ティース部と、を有している。各回転子ティース部は、回転子鉄心2aの周方向について等間隔に配置されている。
【0017】
導体棒2bは、例えば、アルミニウム、銅などの導体で構成されている部材である。導体棒2bは、回転子鉄心2aの隣り合う回転子ティースの間に挿入されている。また、導体棒2bの方向は、回転軸4と並行ではなく、一定の角度が付いたスキューがかかっている。短絡環2cは、アルミニウム、銅などの導体からなり、各導体棒2bを回転子2の軸方向両端で短絡させている。
【0018】
なお、導体棒2b及び短絡環2cは、回転子鉄心2aに溶融した金属を流し込むダイカストによって製作されても良いし、金属棒を隣り合う回転子ティースの間に挿入し、金属製の円環に半田付け、またはろう付けによって作成してもよい。また、導体棒2bの抵抗を低減するために、銅でできた棒などの抵抗率の低い金属棒を隣り合う回転子ティースの間に挿入し、その後、ダイカストで導体棒2bと短絡環2cを作成してもよい。
【0019】
フレーム3は、固定子1を囲む円筒状のフレーム筒部を有する部材である。また、フレーム3には、
図1及び
図2に示すように、フレーム筒部の中心軸線上に配置された回転軸4が固定されている。回転子2は、スリーブ7を介してフレーム3に回転自在に取り付けられている。また、回転子2は、スリーブ7を介してフレーム3に支持されている。
【0020】
移動制限部材5は、回転子2の軸方向両端の回転軸4にそれぞれ取り付けられ、回転子2及び回転軸4の軸方向の可動範囲を制限する。羽根10は、回転軸4と同一回転軸を持つように回転軸4に取り付けられ、
図1では羽根10が左側に風を送る場合の構成が示されている。羽根10が左側に風を送ると、羽根10は反作用を受けて、回転軸4に右側の軸力を与える。始動時には羽根10の回転速度が低く風量が小さいため軸力は小さいものの、定常回転時には羽根10の回転が上がり風を送る量が増加するため、右方向に向かう軸力も増加する。
【0021】
羽根10は回転軸4に右側の軸力を与えるため、回転子2の磁気中心C2は固定子1の磁気中心C1から見て常に
図1の紙面右側にずれるように可動範囲が制限されている。回転子2の磁気中心C2が固定子1の磁気中心C1から見て常に
図1の紙面右側にずれているため、回転子2は始動時のみならず定常時においても軸方向左側に向かう力を受ける。
【0022】
図1に示されるように、回転子2よりも
図1の紙面左側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と反対方向、すなわち軸方向左側)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間にはゴム6aが設けられている。ゴム6aのヤング率は、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、ゴム6aと、からなる系の共振周波数がトルクの脈動周波数と一致するように規定される値となっている。
【0023】
このため、羽根10が発生する軸方向右側に向かう力よりも、回転子2が磁気中心に引き寄せられる軸方向左側に向かう力が大きい始動時には、回転子2が左側に移動して、移動制限部材5及びスリーブ7がゴム6aを挟み込み、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、ゴム6aと、からなる系の軸方向の振動の共振周波数がトルク脈動の周波数と一致して、羽根10及び回転子2が大きく振動する。このため、羽根10に付着した塵埃を払い落とすことができる。
【0024】
図1に示されるように、回転子2よりも
図1の紙面右側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と同じ方向、すなわち軸方向右側)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間にはゴム6bが設けられている。ゴム6bのヤング率は、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、ゴム6bと、からなる系の共振周波数がトルクの脈動周波数と相違するように規定される値となっている。
【0025】
このため、回転子2が磁気中心に引き寄せられる軸方向左側に向かう力よりも、羽根10が発生する軸方向右側に向かう力が大きい定常回転時には、回転子2が右側に移動して、スリーブ7及び移動制限部材5がゴム6bを挟み込み、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、ゴム6bと、からなる系の軸方向の振動の共振周波数がトルク脈動の周波数と一致せず、羽根10及び回転子2の振動が減衰する。このため、羽根10の振動及び騒音を低減できる。
【0026】
以上のような効果により、羽根10を清掃する作業なしに羽根10の塵埃を除去でき、羽根10と回転軸4の間にボスゴムを挟んだり、吸音材及び遮音材等を使用したりすることなく、振動及び騒音を低減できる安価な回転電機100を提供することができる。
【0027】
図2に示されるように、ティースは4本設けられている。ティースが4本である理由は、コンデンサモータの場合はティースの本数が2の倍数となるためである。なお、3相モータの場合はティースが3の倍数となる。各電機子巻線1bは、各磁極ティース部に個別に設けられている。従って、各電機子巻線1bは、固定子鉄心1aの周方向について等間隔に配置されている。固定子1には、各電機子巻線1bへの通電により回転磁界が発生する。回転子2は、固定子1の回転磁界の発生により回転軸4の軸線を中心に回転される。
【0028】
図3において、回転子2は、回転子鉄心2aと、導体棒2bと、短絡環2cと、を備える。導体棒2bは回転子2の外周面に露出しているが、回転子鉄心2aの回転子ティース先端部を接続し、外周面に導体棒2bが露出しない構造を採用することもできる。
図4に示されるように、導体棒2b及び短絡環2cは、導電性の高い金属で構成される。導体棒2bは、回転軸4に対して一定の角度が付いたスキューがかかっている。
【0029】
図5は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の固定子1及び回転子2の磁気中心及び回転子2が受ける力を示す図である。
図5において、F1は回転子2が受ける力を示している。
【0030】
固定子1の磁気中心と回転子2の磁気中心とが一致する場合、スラスト力は発生しない。一方で、
図5に示す例においては、固定子1の磁気中心と回転子2の磁気中心とがずれているため、磁束密度の分布が回転子2の左半分と右半分で異なり、右半分よりも左半分が強くなる。このため、回転子2は左側に吸引される力を受ける。電源を投入すると、回転子2が固定子1の磁気中心に向かって移動するため、羽根10を大きく振動させることができ、羽根10の塵埃を落とす能力が高まる。
【0031】
図6は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の導体棒2bが受ける力を示す図である。
図6に示されるように、回転子2の回転方向は左側から見て反時計回りとなっている。このとき、導体棒2bが受ける力はF2となる。導体棒2bにはスキュー角度θが付いているため、導体棒2bに垂直にかかる力は回転子2の周方向とは一致しない。ここで、スキュー角度θを用いて周方向の力F3を表現すると、F3=F2×Cosθとなる。また、スキュー角度θを用いて軸方向の力F4を表現すると、F4=F2×Sinθとなる。
【0032】
図7は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の回転子2のトルク波形、平均トルク及びトルク脈動の振幅の図である。なお、
図7の横軸には時間を規定し、
図7の縦軸にはトルクを規定している。また、
図7のグラフ上には、時間経過に伴うトルク波形、回転子2が受ける平均トルクA、及びトルク脈動の振幅Bが示されている。導体棒2bのスキュー角度をθとすれば、平均軸力A´はA´=A×Tanθとなり、軸力の振幅B´はB´=B×Tanθとなる。トルク脈動は、単相コンデンサモータであれば電源周波数の2倍の脈動が大きく、3相モータであれば電源周波数の6倍の脈動が大きい。単相コンデンサモータの電源周波数の2倍の脈動は、始動時が特に大きく、始動時に羽根10を大きく振動させることができる。
【0033】
図8は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の始動時に回転子2に加わる軸方向の力と、羽根10が回転して発生する風向きと、を示す図である。
図8において、W1は羽根10が回転して発生する風を示し、F5は回転子2が固定子1の磁気中心に引き寄せられる力を示し、F6は羽根10が発生させる風W1の反作用による力を示している。
【0034】
回転電機100の始動時は、羽根10の回転速度が遅く、風量が少ないため、反作用による力F6は力F5よりも小さい。このため、回転子2は
図8の紙面左方向に移動し、回転子2よりも
図8の紙面左側に設けられるスリーブ7及び移動制限部材5がゴム6aを挟み込み、羽根10及び回転子2が大きく振動する。したがって、羽根10に付着した塵埃を払い落とすことができる。これにより、羽根10を清掃する作業なしに羽根10の塵埃を除去でき安価な回転電機100を提供することができる。
【0035】
図9は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の定常回転時に回転子2に加わる軸方向の力と、羽根10が回転して発生する風向きと、を示す図である。
図9において、W2は羽根10が回転して発生する風を示し、F7は回転子2が固定子1の磁気中心に引き寄せられる力を示し、F8は羽根10が発生させる風W2の反作用による力を示している。
【0036】
回転電機100の定常回転時は、羽根10の回転速度が上がっており、風量が多いため、反作用F8はF7よりも大きくなる。このため、回転子2は
図8の紙面右方向に移動し、回転子2よりも
図9の紙面右側に設けられるスリーブ7及び移動制限部材5がゴム6bを挟み込み、羽根10及び回転子2の振動が小さくなる。したがって、羽根10の振動及び騒音を低減できる。これにより、羽根10と回転軸4との間にボスゴムを挟んだり、吸音材及び遮音材などを使用したりしなくても振動及び騒音を低減できる安価な回転電機100を提供することができる。
【0037】
図10は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の始動時の回転子2の状態と、その振動特性の模式図である。
図10に示されるように、始動時のため、左側の共振となるようなヤング率を持ったゴム6aが挟み込まれている。フレーム3が回転電機100よりも質量の大きい構造物や建築物などに固定されている場合、近似的に振動しないと考えてよく、共振させたい周波数は電源周波数の2倍又は6倍と低いため、回転子2及び羽根10は近似的に剛体として扱える。
【0038】
このとき、回転子2及び羽根10が質量となり、ゴムがバネ及びダンパーとなる系とみなせる。この系を電源周波数の2倍又は6倍で共振するヤング率を有するゴムを挿入すればよい。ゴムは組成及び形状によりヤング率を調整できるため、容易に本発明を実現でき、またゴムは安価であることから、安価な回転電機100を提供することができる。
【0039】
図11は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の定常回転時の回転子2の状態と、その振動特性の模式図である。
図11において、定常回転時のため、右側の振動を減衰させるようなヤング率を持ったゴムが挟み込まれている。フレーム3が回転電機100よりも質量の大きい構造物や建築物などに固定されている場合、それは近似的に振動しないと考えてよく、加えられる振動の周波数は電源周波数の2倍又は6倍と低いため、回転子2及び羽根10は近似的に剛体として扱える。
【0040】
このとき、回転子2及び羽根10が質量となり、ゴムがバネ及びダンパーとなる系とみなせる。この系を電源周波数の2倍又は6倍の振動を減衰させるヤング率をもったゴムを挿入すればよい。ゴムは組成及び形状によりヤング率を調整できるため、容易に本発明を実現でき、またゴムは安価であることから、安価な回転電機100を提供することができる。
【0041】
図12は本発明の実施の形態1に係る回転電機100の周波数とゴム6a、6bの振幅倍率との関係を示す図である。
図12において、周波数ωは、加えられる力の周波数である。また、共振周波数ω
0は次の式で表される。kはゴムのヤング率、mは羽根10及びロータの合計質量である。
【数1】
【0042】
また、x
sは静加重を受けるときの変位であり次のように示される。
x
s=m/k
【0043】
振幅倍率x
a/x
sは静加重をかけたときの変異量の何倍になるかを示すものである。
振幅倍率x
a/x
sの式は、次のように示される。
【数2】
【0044】
図12においては、減衰率ξを0.1としている。このとき、共振周波数ω
0の時の振幅倍率は5となる。ここで、ゴムのヤング率を1/10にすると、ω
0´はω
0の1/√10倍となり、ω
0での振幅倍率は約11%となる。このように、電源周波数の2倍又は6倍の振動で共振するヤング率を有するゴムと、ヤング率を小さくして振動を減衰させるヤング率を有するゴムと、を用いることで、始動時には回転子2と羽根10が大きく振動して羽根10に付着した塵埃を落とし、定常回転時には振動が減衰して振動及び騒音が低減された回転電機100を提供することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態1に係る回転電機100は、ゴム6aのヤング率は、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、該ゴム6aと、によって生じる回転子2の軸方向の振動の共振周波数がトルク脈動の周波数と一致するように規定された値であり、ゴム6bのヤング率は、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1と、該ゴム6bと、によって生じる回転子2の軸方向の振動の共振周波数がトルク脈動の周波数と相違するように規定された値であり、回転子2は、回転子2の磁気中心が固定子1の磁気中心よりも回転子2の他方の軸方向側に位置するように設けられている。
このため、回転電機100の始動時においては、回転子2が一方の軸方向に移動して、回転子2の一方の軸方向に設けられるスリーブ7と回転子2の一方の軸方向に設けられる移動制限部材5が、ゴム6aを挟み込み、羽根10及び回転子2が大きく前後に振動する。したがって、羽根10に付着した塵埃を除去することができる。また、モータの回転速度が上昇すると、羽根10が軸力を発生するため、回転子2が他方の軸方向に移動して、回転子2の他方の軸方向に設けられるスリーブ7と回転子2の他方の軸方向に設けられる移動制限部材5が、ゴム6bを挟み込み、羽根10及び回転子2の振動は低減される。したがって、羽根10の振動及び騒音を低減しつつ、羽根10の汚れを軽減できる回転電機100を提供することができる。また、設備を管理するコストを抑制しつつ安価な回転電機100を提供することができる。
【0046】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る回転電機100を構成した場合について、
図13〜
図20を参照して説明する。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0047】
図13は、本発明の実施の形態2に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図14は、
図13のA−A線に沿った断面図である。
図15は本発明の実施の形態2に係る回転電機100の回転子2の斜視図である。
【0048】
図13〜
図15に示されるように、回転子2は、円筒形の回転子鉄心2aと、回転子鉄心2aの円周面に等間隔に並べられた複数の永久磁石20と、を備える。永久磁石20の貼り付け方向は、回転軸4と並行ではなく、一定の角度が付いたスキューがかかっている。
【0049】
図16は本発明の実施の形態2に係る回転電機100の固定子1及び回転子2の磁気中心と、回転子2が受ける力と、を示す図である。
図16に示されるように、C3は固定子1の磁気中心、C4は回転子2の磁気中心を示し、F9は回転子2が受ける力を示している。
【0050】
固定子1の磁気中心と、回転子2の磁気中心と、が一致する場合、スラスト力は発生しない。一方で、
図16では、固定子1の磁気中心と、回転子2の磁気中心と、がずれているため、磁束密度の分布が、回転子2の左半分と回転子2の右半分とで異なり、回転子2の右半分よりも回転子2の左半分が強くなる。このため、回転子2は、
図16の紙面左側に吸引される力を受ける。回転子2には永久磁石20が取り付けられているため、電源が投入されていなくても、回転子2の軸方向の力が発生し、電源投入時に回転子2が急激に固定子1の磁気中心に引き寄せられて衝撃音を発生しない利点がある。
【0051】
図17は本発明の実施の形態2に係る回転電機100の永久磁石20が受ける力を示す図である。
図17において、回転子2の回転方向は左側から見て反時計回りとなっている。すなわち、
図17において、回転子2の回転方向は、
図17の紙面左側から紙面右側を見たときに反時計回りとなっている。このとき、永久磁石20が受ける力はF10となる。導体棒2bにはスキュー角度θが付いているため、導体棒2bに垂直にかかる力は回転子2の周方向とは一致しない。ここで、スキュー角度θを用いて周方向の力F11はF11=F10×Cosθと示すことができる。また、スキュー角度θを用いて軸方向の力F12はF12=F10×Sinθと表すことができる。
【0052】
図18は本発明の実施の形態2に係る回転電機100のトルク波形、平均トルク、及びトルク脈動の振幅の図である。
図18において、トルクの時間波形、回転子2が受ける平均トルクC、トルク脈動の振幅Dが示されている。このとき、導体棒2bのスキュー角度をθとすれば、平均軸力C´はC´=C×Tanθと表すことができる。また、導体棒2bのスキュー角度をθとすれば、軸力の振幅D´はD´=D×Tanθと表すことができる。トルク脈動は、3相モータであれば電源周波数の6倍の脈動が大きい。
【0053】
図19は本発明の実施の形態2に係る回転電機100の始動時に回転子2に加わる軸方向の力と、羽根10が回転して発生する風向きと、を示す図である。
図19において、W3は羽根10が回転して発生する風向きである。F13は回転子2が固定子1の磁気中心に引き寄せられる力、F14は羽根10が発生させる風W3の反作用による力である。始動時は、羽根10の回転速度が遅く、風量が少ないため、反作用F14はF13よりも小さい。
【0054】
したがって、回転子2は
図19の紙面左方向に移動し、回転子2よりも
図19の紙面左側に設けられるスリーブ7及び移動制限部材5が、ゴム6aを挟み込み、羽根10及び回転子2が大きく振動する。このため、羽根10に付着した塵埃を払い落とすことができる。また、電源投入時だけでなく、電源遮断時においても、回転子2が磁気中心に引き寄せられるため、羽根10の回転速度が遅くなってくると上述したことと同じ現象が起こり、羽根10が大きく振動して塵埃を振り落とすことができる。これにより、羽根10を清掃する作業なしに羽根10の塵埃を除去でき安価な回転電機100を提供することができる。
【0055】
図20は本発明の実施の形態2に係る回転電機100の定常回転時に回転子2に加わる軸方向の力と、羽根10が回転して発生する風向きと、を示す図である。
図20において、W4は羽根10が回転して発生する風向きである。
図20において、F15は回転子2が固定子1の磁気中心に引き寄せられる力を示している。
図20において、F16は羽根10が発生させる風W4の反作用による力である。
【0056】
回転電機100の定常回転時は、羽根10の回転速度が上がっており、風量が多いため、反作用F16はF15よりも大きくなる。このため、回転子2は
図20の紙面右方向に移動し、回転子2の
図20の紙面右方向に設けられているスリーブ7及び移動制限部材5がゴム6bを挟み込み、羽根10及び回転子2の振動が小さくなる。このため、羽根10の振動及び騒音を低減できる。これにより、羽根10と回転軸4との間にボスゴムを挟んだり、吸音材及び遮音材などを使用したりしなくても振動及び騒音を低減できる安価な回転電機100を提供することができる。
【0057】
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3に係る回転電機100を構成した場合について、
図21を参照して説明する。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0058】
図21は本発明の実施の形態3に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図21に示されるように、回転電機100は、ばね63a,63bを有する。ばね63a,63bは、例えば金属製の部材である。
【0059】
ばね63aは、回転子2よりも
図21の紙面左側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と反対方向)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられている。ばね63aのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致して共振するように規定されている。
【0060】
ばね63bは、回転子2よりも
図21の紙面右側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と同一方向)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられている。ばね63bのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致せずに振動を減衰させるように規定されている。
【0061】
一般に、金属製のばねは、ヤング率の変更が容易で、繰り返し応力に強いという特徴がある。例えば、ベリリウム銅合金やりん青銅などのばねを用いれば、信頼性が高く、安価な回転電機100を提供することができる。
【0062】
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4に係る回転電機100を構成した場合について、
図22を参照して説明する。なお、本実施の形態4において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図22は本発明の実施の形態4に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図22に示されるように、回転電機100は、ウェーブワッシャー64a,64bを有する。ウェーブワッシャー64a,64bは、例えば、金属製の部材である。
【0063】
ウェーブワッシャー64aは、
図22の紙面左側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と同じ方向、すなわち軸方向右側)に位置する移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられている。ウェーブワッシャー64aのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致して共振するように規定されている。
【0064】
ウェーブワッシャー64bは、
図22の紙面右側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と反対方向、すなわち軸方向左側)に位置する移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられている。ウェーブワッシャー64bのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致せずに振動を減衰させるように規定されている。
【0065】
金属製のウェーブワッシャーは、一周あたりの波数を変更するだけでヤング率が容易に変更でき、繰り返し応力に強く、軸長が短いという特徴がある。例えば、ベリリウム銅合金やりん青銅などのばねを用いれば、信頼性が高く、軸長が短く小型で、安価な回転電機100を提供することができる。
【0066】
実施の形態5.
以下、本発明の実施の形態5に係る回転電機100を構成した場合について、
図23を参照して説明する。なお、本実施の形態5において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0067】
図23は本発明の実施の形態5に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図23に示されるように、回転電機100は皿ばね65a,65bを有する。皿ばね65a,65bは、例えば金属製の部材である。
【0068】
皿ばね65aは、回転子2よりも
図23の紙面左側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と反対方向)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられる隙間に位置している。皿ばね65aのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致して共振するように規定された値である。
【0069】
皿ばね65bは、回転子2よりも
図23の紙面右側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と同一方向)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられる隙間に位置している。皿ばね65bのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と相違して振動を減衰させるように規定された値である。
【0070】
一般に、皿ばねは、複数枚重ねるだけでヤング率を容易に変更でき、繰り返し応力に強く、軸長が短いという特徴がある。例えば、ベリリウム銅合金やりん青銅などのばねを用いれば、信頼性が高く、軸長が短く小型で、安価な回転電機100を提供することができる。また、同じ皿ばねを複数枚重ねるだけでヤング率が変更できることから、共振するヤング率と振動を減衰させるヤング率を同じ皿ばねで実現可能で、生産性に優れた回転電機100を提供できる。
【0071】
実施の形態6.
以下、本発明の実施の形態6に係る回転電機100を構成した場合について、
図24,
図25を参照して説明する。なお、本実施の形態6において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0072】
図24は本発明の実施の形態6に係る回転電機100を示す縦断面図である。
図25は本発明の実施の形態6に係る回転電機100の減衰率の異なる場合の2つの振幅倍率を示した図である。
図24に示されるように、回転電機100は、ばね66a,ゴム66bを有する。ばね66aは、金属製の部材である。
【0073】
ばね66aは、回転子2よりも
図24の紙面左側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と反対方向、すなわち軸方向左側)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間には、ばね66aが設けられている。ばね66aのヤング率は、羽根10及び回転子2とフレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致して共振となるように規定されている。
【0074】
ゴム66bは、回転子2よりも
図24の紙面右側(回転子2から見て羽根10が回転軸4に与える軸力と同じ方向、すなわち軸方向右側)に設けられる移動制限部材5とスリーブ7との間に設けられる隙間にはゴム66bが設けられている。ゴム66bのヤング率は、羽根10及び回転子2と、フレーム3及び固定子1の両者の間の共振周波数がトルクの脈動成分と一致せずに振動を減衰させるように規定されている。
【0075】
一般に、ゴムは減衰率が高いという特徴があるため、羽根10の振動及び騒音を低減することができる。金属製のばねは、繰り返し応力に強く、減衰率が低いという特徴があるため、共振時の振幅倍率が大きく、羽根10を大きく振動させることができる。このため、始動時には塵埃を落とす能力が高く、定常回転時には振動及び騒音を低減する能力が高く、信頼性が高い安価な回転電機100を提供できる。
【0076】
図25に示されるように、
図25の横軸には周波数ωを共振周波数ω
0で除した値を規定しており、
図25の縦軸には振幅倍率xa/xsを規定している。
図25においては減衰率が0.01の場合のグラフを実線で示している。また、
図25においては、減衰率が1.0の場合のグラフを破線で示している。
【0077】
減衰率が0.01の場合には、共振時の振幅倍率が高く、羽根10を大きく振動させることができる。減衰率が1.0の場合には、振動を減衰させることができ、羽根10の振動及び騒音を低減することができる。
【0078】
なお、ゴム6a、ばね63a、ウェーブワッシャー64a、皿ばね65a、ばね66aが、本発明の「第1弾性体」に相当する。また、ゴム6b、ばね63b、ウェーブワッシャー64b、皿ばね65b、ゴム66bが、本発明の「第2弾性体」に相当する。