(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、媒体の画像を読み取る画像読取装置が備えるイメージセンサのセンサICは、主走査方向に読み取り幅に相当する画素数の受光素子を1列に並べた構成になっている。高速に搬送される媒体の読み取りを行う場合、センサICの受光感度が低いと十分な出力を得ることができずSN比(signal-to-noise ratio)が低下してしまう。これを回避するためには、センサICの受光素子自体の光電効率を上げるか、受光素子に入射される光量を上げる必要がある。また、イメージセンサの高解像度化にともない、センサICの高感度化が必要となっている。
【0003】
特許文献1には、受光素子の面積を大きくすることで入射される光量を増加させることが可能となり、センサの受光感度を向上させる方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、受光素子は主走査方向に画素密度にあわせて並べられており、画素密度を保ったまま主走査方向に受光面積を広げることは困難である。また、副走査方向に受光面積を広げる場合は、画素密度の比率に応じて搬送速度を遅くする必要が生じる。また、画素の値が受光面積内の移動平均の値になってしまうので画質が落ちる。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、読取対象の媒体の画像を読み取るイメージセンサにおいて、画素密度を保ったまま、かつ、搬送速度を変えることなく画質を落とさず、受光面積を広げることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る
画像読取装置は、イメージセンサと、信号処理ICと、を備える。イメージセンサは、読取対象の媒体の画像を読み取るイメージセンサである。イメージセンサは、レンズと複数の受光素子とを備える。レンズは、読取対象の媒体からの反射光および透過光の少なくとも一方を結像する。複数の受光素子は、主走査方向に一列に並べられた配列が、読取対象の媒体の搬送速度と読み取り周期との積を正の整数で除した値の間隔で副走査方向に複数列配置され、レンズが結像した光を電気信号に変換する。
信号処理ICは、複数列それぞれの受光素子が変換した、読取対象の媒体の同じ箇所に対応する電気信号を合算して1つの画素の電気信号とする。信号処理ICは、1回の読み取り周期の間に、読取対象の媒体の搬送速度と受光素子の配列の間隔とに合わせてずらした読み取りタイミングで得た、読取対象の媒体の同じ箇所に対応する電気信号を合算して1つの画素の電気信号とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、読取対象の媒体の画像を読み取るイメージセンサにおいて、主走査方向に一列に並べられた受光素子の配列を、読取対象の媒体の搬送速度と読み取り周期との積を正の整数で除した値の間隔で副走査方向に複数列並べることで、画素密度を保ったまま、かつ、搬送速度を変えることなく画質を落とさず、受光面積を広げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るイメージセンサの斜視図である。イメージセンサ1は、レンズ11、ガラス板12、センサIC13、センサ基板14、フレーム15で構成される。レンズ11は、読取対象の媒体からの反射光を結像する。ガラス板12は、レンズ11と読取対象の媒体との間に設置されるガラス板であり、異物の侵入を防ぐために設けられている。センサIC13には、受光素子が配列されており、レンズ11が結像した反射光を電気信号に変換する。センサ基板14は、センサIC13を搭載した基板である。フレーム15は、これらの部材を保持する筐体である。
【0012】
図2は、実施の形態に係る画像読取装置の断面図である。画像読取装置10は、イメージセンサ1に加え、LED光源ユニット16、信号処理IC17および信号処理基板18を備える。LED光源ユニット16は、読取対象の媒体に光が照射されるように配置されている。LED光源ユニット16から照射された光は、読取対象の媒体で反射し、ガラス板12を透過して、レンズ11に入射する。信号処理IC17は、センサIC13から出力された電気信号をデジタル変換する。信号処理IC17は、デジタル変換された電気信号に対して、演算および並べ替えなどの処理を行い、外部に出力する。信号処理基板18は、信号処理IC17を搭載した基板である。
【0013】
図3は、実施の形態に係るセンサICの配置図および拡大図である。センサIC13はセンサ基板14上で、主走査方向を長手方向とし直線状に配置されている。センサIC13上では、主走査方向に一列に並べた受光素子19が、副走査方向に3列になるように配置されている。受光素子19は、主走査方向の画素密度にあわせて間隔Phで配列されている。
【0014】
ここでは、主走査方向に一列に並べた受光素子19が、副走査方向に3列になるように配置されている場合について説明するが、これに限らない。センサIC13上で主走査方向に一列に並べた受光素子19が副走査方向にm列(mは2以上の整数)になるように配置すればよい。
【0015】
受光素子19は、副走査方向に間隔Pvで配列されている。読取対象の媒体の搬送速度をV(mm/sec)とし、読み取り周期をT(sec/dot)とすると、間隔Pv(mm/dot)は、Pv=V×T/kで表すことができる。ここではk=1であるとし、Pv=V
1×Tとする。
【0016】
図4は、実施の形態に係るセンサIC上の受光素子の配列状態の一例を示す図である。センサIC13上の受光素子19のA列、B列およびC列からそれぞれ、1画素目からX画素目までの電気信号が信号処理IC17に順次出力される。A列、B列およびC列の受光素子19の配列は、同じ配列であれば等間隔に配列されていなくてもよい。
【0017】
図5は、実施の形態に係るn番目の画素における読取位置の時間推移を示す図である。
図5の例では、ある読み取りタイミング(時刻t)で読み取ったn画素目の電気信号を(D(n
A(t))、D(n
B(t))およびD(n
C(t))、ひとつ前の読み取りタイミング(時刻t−1)で読み取ったn画素目の電気信号をD(n
A(t−1))、D(n
B(t−1))およびD(n
C(t−1))、ひとつ後の読み取りタイミング(時刻t+1)で読み取ったn画素目の電気信号をD(n
A(t+1))、D(n
B(t+1))およびD(n
C(t+1))とする。
【0018】
Pv=V
1×Tである場合、電気信号D(nB(t))は、電気信号D(nA(t−1))に対して、ひとつ後の読み取りタイミングで読取対象の媒体の同じ箇所を読み取った電気信号であり、電気信号D(nC(t+1))は、電気信号D(nB(t))に対して、ひとつ後のタイミングで読取対象の媒体の同じ箇所を読み取った電気信号である。したがって、D(nA(t−1))とD(nB(t))とD(nC(t+1))とは読取対象の媒体の同じ箇所を異なる読み取りタイミングで読み取った電気信号となる。
【0019】
画像読取装置10の信号処理IC17は、D(nA(t−1))、D(nB(t))およびD(nC(t+1))の電気信号を合算して1つの画素の電気信号とする。これにより、n画素目におけるセンサ感度を擬似的に3倍とみなすことが可能となる。
【0020】
続いて、k=1でない場合について説明する。例えば、k=3である場合、Pv=V
2×T/3である。
図4に示すような、センサIC13上の受光素子19の配列状態である場合、Pv=V
2×T/3であると、A列、B列およびC列全ての画素を同じ読み取りタイミングで読み取ることとなる。ある読み取りタイミング(時刻t)で読み取ったn画素目の電気信号をD(nA(t))、D(nB(t))およびD(nC(t))とする。これらは、読取対象の媒体のほぼ同じ箇所を同じ読み取りタイミングで読み取った電気信号となる。
【0021】
画像読取装置10の信号処理IC17は、D(nA(t))、D(nB(t))およびD(nC(t))の電気信号を合算し、n画素目の電気信号として処理する。Pv=V
2×T/3(k=3)である場合、間隔Pvと読み取り周期Tが固定値であれば、搬送速度V
2は搬送速度V
1の3倍になる。搬送速度が3倍になったことで、各列の受光素子に入射される光量は、搬送速度V
1の場合の1/3となるが、信号処理IC17がD(nA(t))、D(nB(t))およびD(nC(t))の電気信号を合算し、n画素目の電気信号として処理することで3倍となり、搬送速度V
1の場合と同等のセンサ出力を得ることが可能となる。これにより、センサ感度を落とさず、より早く読取対象の媒体の画像を読み取ることが可能になる。
【0022】
つまり、m>kの場合、画像読取装置10の信号処理IC17が読取対象の媒体の同じ箇所を異なる読み取りタイミングで読み取った電気信号を合算して1つの画素の電気信号とすることで、センサ感度を擬似的にm/k倍とみなすことが可能となる。また、m=kである場合、間隔Pvと読み取り周期Tが固定値であれば、搬送速度Vの場合と同等のセンサ出力を得ることが可能となる。
【0023】
図6は、実施の形態に係るn番目の画素における読取位置の時間推移の他の例を示す図である。
図5の例では、k=1、m=3の場合について説明したが、
図6の例では、k=2、m=4の場合について説明する。ある読み取りタイミング(時刻t)で読み取ったn画素目の電気信号を(D(n
A(t))、D(n
B(t))、D(n
C(t))およびD(n
D(t))、ひとつ後の読み取りタイミング(時刻t+1)で読み取ったn画素目の電気信号をD(n
A(t+1))、D(n
B(t+1))D(n
C(t+1))およびD(n
D(t+1))とする。
【0024】
Pv=V
3×T/2であるので、D(nA(t))とD(nB(t))とは、読取対象の媒体のほぼ同じ箇所を同じ読み取りタイミングで読み取った電気信号となり、D(nC(t+1))とD(n
D(t+1))とは、読取対象の媒体のほぼ同じ箇所を同じ読み取りタイミングで読み取った電気信号となる。D(nA(t))およびD(nB(t))と、D(nC(t+1))およびD(n
D(t+1))とは、読取対象の媒体の同じ箇所を異なる読み取りタイミングで読み取った電気信号となる。つまり、D(nA(t))、D(nB(t))、D(nC(t+1))およびD(n
D(t+1))は、読取対象の媒体のほぼ同じ箇所を読み取った電気信号となる。
【0025】
画像読取装置10の信号処理IC17は、D(nA(t))、D(nB(t))、D(nC(t+1))およびD(n
D(t+1))の電気信号を合算して1つの画素の電気信号とする。これにより、n画素目におけるセンサ感度を擬似的に2倍とみなすことが可能となり、かつ、搬送速度V
3を搬送速度V
1の2倍にすることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態の読取対象の媒体の画像を読み取るイメージセンサ1によれば、主走査方向に一列に並べられた受光素子の配列を、読取対象の媒体の搬送速度と読み取り周期との積を正の整数で除した値の間隔で副走査方向に複数列並べることで、画素密度を保ったまま、かつ、搬送速度を変えることなく画質を落とさず、受光面積を広げることが可能になる。
【0027】
本発明は、読取対象の媒体からの反射光を受光するイメージセンサに限らず、読取対象の媒体からの透過光を受光するイメージセンサや、読取対象の媒体からの反射光および透過光を受光するイメージセンサに適用してもよい。
【0028】
上記の実施の形態では、画像読取装置10の信号処理IC17は、kが2以上であった場合に、読取対象の媒体のほぼ同じ箇所を同じ読み取りタイミングで読み取った電気信号を合算して1つの画素の電気信号とするが、これに限らない。読取対象の媒体の搬送速度Vと間隔Pvに合わせて、受光素子19の各列の読み取りタイミングをずらしてもよい。これにより、1回の読み取り周期Tで、より正確に読取対象の媒体の同じ箇所を読み取ることができる。
【0029】
上記実施の形態は、いずれも本発明の趣旨の範囲内で各種の変形が可能である。上記実施の形態は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は実施形態よりも添付した請求項によって示される。請求項の範囲内、および発明の請求項と均等の範囲でなされた各種変形は本発明の範囲に含まれる。