特許第6429731号(P6429731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429731
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】インパルス電圧裁断波試験装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 9/00 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   H02M9/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-115494(P2015-115494)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2016-52243(P2016-52243A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-173643(P2014-173643)
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝田 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】日野 悦弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 大佑
(72)【発明者】
【氏名】洞▲崎▼ 浩
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−152666(JP,A)
【文献】 特開2002−340958(JP,A)
【文献】 特開平10−332758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 9/00
G01R 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試機器にインパルス電圧裁断波を印加するインパルス電圧裁断波試験装置であって、
始動信号に応答してインパルス電圧を出力するインパルス電圧発生装置と、
前記始動信号を予め定められた時間だけ遅延させた第1の裁断信号を出力する第1の信号発生器と、
前記インパルス電圧に応答して第2の裁断信号を出力する第2の信号発生器と、
前記インパルス電圧が出力されている場合において前記第1および第2の裁断信号のうちのいずれかの裁断信号が出力されたときに前記インパルス電圧を裁断する裁断装置とを備える、インパルス電圧裁断波試験装置。
【請求項2】
前記供試機器を接続するための第1および第2の出力端子を備え、
前記第2の出力端子は接地電圧を受け、
前記インパルス電圧発生装置は、
予め定められた電圧に充電されるコンデンサと、
前記始動信号に応答して導通し、前記コンデンサの正極から前記第1の出力端子に電流を流す第1の放電スイッチと、
前記コンデンサの正極から前記第1の出力端子に流れる電流の一部を前記接地電圧のラインに流出させて前記インパルス電圧の波形を調整する抵抗器とを含み、
前記裁断装置は、前記第1および第2の出力端子間に前記インパルス電圧が印加されている場合に、前記第1および第2の信号発生器から前記第1および第2の裁断信号のうちのいずれかの裁断信号が出力されたことに応じて導通する第2の放電スイッチを含む、請求項1に記載のインパルス電圧裁断波試験装置。
【請求項3】
前記抵抗器は分圧器を有し、前記分圧器は前記抵抗器の端子間電圧を分圧して出力し、
前記第2の信号発生器は、前記分圧器の出力電圧が予め定められたしきい値電圧を超えたことに応じて前記第2の裁断信号を出力する、請求項2に記載のインパルス電圧裁断波試験装置。
【請求項4】
さらに、前記第1および第2の出力端子間の電圧を分圧して出力する分圧器を備え、
前記第2の信号発生器は、前記分圧器の出力電圧が予め定められたしきい値電圧を超えたことに応じて前記第2の裁断信号を出力する、請求項2に記載のインパルス電圧裁断波試験装置。
【請求項5】
前記第1の放電スイッチは放電時に発光する放電ギャップを有し、
さらに、前記放電ギャップが発光しているか否かを検出する光検出器を備え、
前記第2の信号発生器は、前記光検出器によって前記放電ギャップが発光していることが検出されたことに応じて前記第2の裁断信号を出力する、請求項2に記載のインパルス電圧裁断波試験装置。
【請求項6】
前記裁断装置は、前記第1および第2の出力端子間に直列接続されたインピーダンス素子および前記第2の放電スイッチを含み、
前記インピーダンス素子は、前記インパルス電圧に重畳した高周波振動電圧に対して大きなインピーダンスを有し、前記インパルス電圧の低周波成分に対して小さなインピーダンスを有し、前記高周波振動電圧が前記第2の放電スイッチの電極間に印加されることを抑制する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のインパルス電圧裁断波試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインパルス電圧裁断波試験装置に関し、特に、供試機器にインパルス電圧裁断波を印加するインパルス電圧裁断波試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
雷撃に対する供試機器の絶縁耐力を検証する雷インパルス耐電圧試験には、インパルス電圧をそのまま供試機器に印加する全波電圧試験と、インパルス電圧を裁断して供試機器に印加する裁断波電圧試験とがある(図2(a)(b)参照)。
【0003】
従来のインパルス電圧裁断波試験装置では、始動信号発生器から始動信号が出力されると、始動高圧パルス発生器からインパルス電圧発生装置に始動高圧パルスが出力され、一定時間の経過後に遅延高圧パルス発生器から裁断装置に遅延高圧パルスが出力される。インパルス電圧発生装置では、始動高圧パルスに応答して放電スイッチが導通し、インパルス電圧が生成される。裁断装置は、遅延高圧パルスに応答してインパルス電圧を裁断する(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−135690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のインパルス電圧裁断波試験装置では、インパルス電圧発生装置に含まれる放電スイッチの電極間のギャップの放電開始時間がばらつき、インパルス電圧の出力開始時間がばらつくという問題がある。インパルス電圧の出力開始時間が裁断装置による裁断のタイミングよりも遅延すると、インパルス電圧が裁断されずに供試機器に印加されてしまう。裁断波の試験電圧は全波の試験電圧の110%程度に設定されていることが多いので、裁断に失敗した場合には供試機器に過剰なストレスを印加されて供試機器が損傷する恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、インパルス電圧の出力開始時間がばらつく場合でもインパルス電圧裁断波を発生することが可能なインパルス電圧裁断波試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るインパルス電圧裁断波試験装置は、供試機器にインパルス電圧裁断波を印加するインパルス電圧裁断波試験装置であって、始動信号に応答してインパルス電圧を出力するインパルス電圧発生装置と、始動信号を予め定められた時間だけ遅延させた第1の裁断信号を出力する第1の信号発生器と、インパルス電圧に応答して第2の裁断信号を出力する第2の信号発生器と、インパルス電圧が出力されている場合において第1および第2の裁断信号のうちのいずれかの裁断信号が出力されたときにインパルス電圧を裁断する裁断装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るインパルス電圧裁断波試験装置では、始動信号を予め定められた時間だけ遅延させた第1の裁断信号を出力する第1の信号発生器と、インパルス電圧に応答して第2の裁断信号を出力する第2の信号発生器とが設けられ、裁断装置は、インパルス電圧が出力されている場合において第1および第2の裁断信号のうちのいずれかの裁断信号が出力されたときにインパルス電圧を裁断する。したがって、第1の裁断信号に応答してインパルス電圧を裁断できなかった場合でも、第2の裁断信号に応答してインパルス電圧を裁断することができる。よって、インパルス電圧の出力開始時間がばらつく場合でもインパルス電圧裁断波を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2】インパルス電圧全波の波形とインパルス電圧裁断波の波形とを示す図である。
図3図1に示したインパルス電圧裁断波試験装置の動作を示すタイムチャートである。
図4図1に示したインパルス電圧裁断波試験装置の他の動作を示すタイムチャートである。
図5】この発明の実施の形態2によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。
図6】この発明の実施の形態3によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。
図7】この発明の実施の形態4によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。
図8】この発明の実施の形態5によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図である。図1において、このインパルス電圧裁断波試験装置は、始動信号発生器1、高圧パルス発生器2,5、裁断信号発生器3,4、インパルス電圧発生装置10、裁断装置15、出力端子T1,T2、および分圧器18を備える。出力端子T1,T2間には、供試機器17が接続される。供試機器17は、たとえば変圧器である。
【0011】
始動信号発生器1は、始動信号S1を高圧パルス発生器2と裁断信号発生器3に出力する。高圧パルス発生器2は、始動信号S1に応答して第1の高圧パルスP1をインパルス電圧発生装置10に出力する。裁断信号発生器3は、始動信号S1を予め定められた時間Tdだけ遅延させた第1の裁断信号S2を出力する。裁断信号発生器4は、インパルス電圧発生装置10からインパルス電圧VIPが出力されたことに応じて第2の裁断信号S3を出力する。高圧パルス発生器5は、第1の裁断信号S2に応答して第2の高圧パルスP2を出力するとともに、第2の裁断信号S3に応答して第3の高圧パルスP3を出力する。
【0012】
インパルス電圧発生装置10は、充電用コンデンサ11、放電スイッチ12、放電用抵抗器13、および制動用抵抗器14を含む。充電用コンデンサ11の正極は放電スイッチ12の一方電極に接続され、その負極は接地電圧GNDを受ける。放電用抵抗器13は、放電スイッチ12の他方電極と接地電圧GNDのラインとの間に接続される。制動用抵抗器14は、放電スイッチ12の他方電極と出力端子T1との間に接続される。出力端子T2は、接地電圧GNDを受ける。
【0013】
充電用コンデンサ11は、試験毎に予め定められた電圧に充電される。放電スイッチ12は、予め定められた間隔を開けて配置された2つの電極を含む。2つの電極間は、放電ギャップを構成する。放電ギャップが一旦放電すると、ある値以上の電流が流れている限り放電が維持されて放電スイッチ12が導通状態に維持される。電流がある値よりも小さくなると放電ギャップの放電が消滅して放電スイッチ12は非導通状態になる。
【0014】
充電用コンデンサ11が予め定められた電圧に充電された場合において、高圧パルス発生器2から第1の高圧パルスP1が出力されると、放電ギャップが放電して放電スイッチ12が導通する。放電スイッチ12が導通すると、充電用コンデンサ11から放電スイッチ12および抵抗器13,14を介して供試機器17に電流が流れる。出力端子T1,T2間の電圧がインパルス電圧VIPとなる。
【0015】
放電用抵抗器13は、充電用コンデンサ11の正極から接地電圧GNDのラインに流出する電流を調整するために設けられている。放電用抵抗器13は、分圧器を含む。分圧器は、充電用コンデンサ11から放電スイッチ12を介して与えられた電圧(放電用抵抗器13の端子間電圧)を分圧して出力端子13aに出力する。出力端子13aの電圧は、裁断信号発生器4に与えられる。裁断信号発生器4は、出力端子13aの電圧が予め定められたしきい値電圧を超えたことに応じて第2の裁断信号S3を出力する。制動用抵抗器14は、充電用コンデンサ11の正極から出力端子T1に流れる電流を調整するために設けられている。
【0016】
裁断装置15は、放電スイッチ16を含む。放電スイッチ16は、予め定められた間隔を開けて配置された2つの電極を含む。2つの電極間は、放電ギャップを構成する。2つの電極は、それぞれ出力端子T1,T2に接続される。出力端子T1,T2間のインパルス電圧VIPが高電圧である場合において、高圧パルス発生器5から高圧パルスP2またはP3が出力されると、放電ギャップが放電して放電スイッチ16が導通する。放電スイッチ16が導通すると、インパルス電圧VIPが高電圧から0Vに急激に下降する。
【0017】
分圧器18は、出力端子T1,T2間に直列接続された2つの回路素子19,20と、回路素子19,20間に接続された出力端子18aとを含み、出力端子T1,T2間のインパルス電圧VIPを分圧して出力端子18aに出力する。回路素子19,20の各々は、たとえば、抵抗素子、コンデンサ、リアクトル、またはそれらの組み合わせを含む。出力端子18aの電圧は、レコーダ(図示せず)に記録され、正常に試験が行なわれたか否かをチェックするために使用される。
【0018】
図2(a)は、インパルス電圧全波の波形を示す図である。インパルス電圧全波とは、裁断装置15がない場合に、インパルス電圧発生装置10によって発生されるインパルス電圧VIPそのものである。図2(a)において、インパルス電圧VIPは、0Vから波高値まで急峻に上昇した後、緩やかに低下する。インパルス電圧VIPが波高値の30%から90%まで上昇するのに必要な時間を0.6で除した時間は波頭長と呼ばれる。インパルス電圧VIPが規約原点から上昇し、波高値を経て波高値の50%まで低下するのに必要な時間は波尾長と呼ばれる。制動用抵抗器14の抵抗値を調整することによって波頭長を調整することができ、放電用抵抗器13の抵抗値を調整することによって波尾長を調整することができる。したがって、抵抗器13,14の抵抗値を調整することによってインパルス電圧全波の波形を調整することができる。なお、放電用抵抗器13は、出力端子T1,T2間に接続されていてもよい。
【0019】
図2(b)は、インパルス電圧裁断波の波形を示す図である。インパルス電圧裁断波とは、インパルス電圧発生装置10によって発生されたインパルス電圧VIPを裁断装置15によって裁断したものである。図2(b)において、インパルス電圧裁断波は、0Vから波高値まで急峻に上昇した後、緩やかに低下し、あるタイミングで0Vに急激に低下する。
【0020】
インパルス電圧裁断波を供試機器17に印加する場合の波高値は、インパルス電圧全波を供試機器17に印加する場合の波高値の110%程度に設定されていることが多い。したがって、インパルス電圧VIPの裁断に失敗し、波高値が大きなインパルス電圧全波が供試機器17に印加された場合には、供試機器17に過剰なストレスを印加して損傷させる恐れがある。本実施の形態1では、この問題の解決が図られる。
【0021】
次に、このインパルス電圧裁断波試験装置の動作について説明する。図3は、第1の高圧パルスP1に応答して放電スイッチ12の放電ギャップが遅延せずに放電した場合を示すタイムチャートである。充電用コンデンサ11は、予め定められた電圧に充電されているものとする。まず、始動信号発生器1から正パルスである始動信号S1が出力されると、回路応答時間Tr1の経過後に高圧パルス発生器2から第1の高圧パルスP1が出力される。
【0022】
第1の高圧パルスP1に応答してインパルス電圧発生装置10の放電スイッチ12の放電ギャップが即座に放電し、放電スイッチ12が導通して充電用コンデンサ11から供試機器17に電流が流れる。これにより、出力端子T1,T2間の電圧であるインパルス電圧VIPが0Vから波高値に向かって急激に上昇する。
【0023】
また、始動信号発生器1から始動信号S1が出力されてから裁断信号発生器3の遅延時間Tdの経過後に、裁断信号発生器3から正パルスである第1の裁断信号S2が出力される。裁断信号発生器3から第1の裁断信号S2が出力されると、回路応答時間Tr2の経過後に高圧パルス発生器5から第2の高圧パルスP2が出力される。
【0024】
第2の高圧パルスP2に応答して裁断装置15の放電スイッチ16の放電ギャップが放電し、放電スイッチ12が導通してインパルス電圧VIPが裁断され、インパルス電圧VIPが波高値に近い正電圧から0Vに急激に低下する。これにより、インパルス電圧裁断波が供試機器17に印加される。
【0025】
また、インパルス電圧VIPに従って放電用抵抗器13の出力端子13aの電圧が予め定められたしきい値電圧を超えると、裁断信号発生器4から正パルスである第2の裁断信号S3が出力される。第2の裁断信号S3が出力されると、回路応答時間Tr3の経過後に高圧パルス発生器5から第3の高圧パルスP3が出力される。図3の例では、第3の高圧パルスP3が出力されたときには既に裁断が完了して出力端子T1,T2間の電圧VIPが0Vになっているので、第3の高圧パルスP3に応答して裁断装置15の放電スイッチ16の放電ギャップが放電することはない。
【0026】
このように、インパルス電圧発生装置10の放電スイッチ12の放電ギャップが第1の高圧パルスP1に応答して比較的短時間で放電した場合には、第2の高圧パルスP2に応答して裁断装置15の放電スイッチ16が導通してインパルス電圧VIPが裁断され、供試機器17にインパルス電圧裁断波が正常に印加される。
【0027】
図4は、第1の高圧パルスP1に応答して放電スイッチ12の放電ギャップが遅延して放電した場合を示すタイムチャートである。充電用コンデンサ11は、予め定められた電圧に充電されているものとする。まず、始動信号発生器1から正パルスである始動信号S1が出力されると、回路応答時間Tr1の経過後に高圧パルス発生器2から第1の高圧パルスP1が出力される。
【0028】
この例では、放電スイッチ12の放電ギャップの放電が遅延した結果、インパルス電圧VIPがまだ0Vである期間に、裁断信号発生器3から第1の裁断信号S2が出力され、高圧パルス発生器5から第2の高圧パルスP2が出力されてしまう。第2の高圧パルスP2が出力されてもインパルス電圧VIPが0Vであるので、裁断装置15の放電スイッチ16の放電ギャップが放電せず、放電スイッチ16は導通しない。
【0029】
図4の例では、高圧パルス発生器2から第1の高圧パルスP1が出力されてから比較的長い時間TDの経過後にインパルス電圧発生装置10の放電スイッチ12の放電ギャップが放電し、放電スイッチ12が導通する。放電スイッチ12が導通すると、インパルス電圧VIPが0Vから波高値に向かって急激に上昇する。
【0030】
インパルス電圧VIPの上昇に伴って放電用抵抗器13の出力端子13aの電圧が上昇し、予め定められたしきい値電圧を超えると、裁断信号発生器4から正パルスである第2の裁断信号S3が出力される。第2の裁断信号S3が出力されると、回路応答時間Tr3の経過後に第3の高圧パルスP3が出力される。このときインパルス電圧VIPは高電圧になっているので、第3の高圧パルスP3に応答して裁断装置15の放電スイッチ16の放電ギャップが放電し、放電スイッチ16が導通する。これにより、インパルス電圧VIPが高電圧から0Vに急激に低下し、供試機器17にインパルス電圧裁断波が印加される。
【0031】
この実施の形態1では、始動信号S1を遅延させて第1の裁断信号S2を生成するとともに、インパルス電圧VIPに応答して第2の裁断信号S3を生成し、第1および第2の裁断信号S2,S3のうちのいずれかの裁断信号に応答してインパルス電圧VIPを裁断する。したがって、第1の裁断信号S2によるインパルス電圧VIPの裁断に失敗した場合でも、第2の裁断信号S3に応答してインパルス電圧VIPを裁断することができる。よって、インパルス電圧VIPの出力開始時間がばらつく場合でもインパルス電圧裁断波を発生することができ、供試機器17に波高値の高いインパルス電圧全波が印加されて供試機器17が損傷されるのを防止することができる。
【0032】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図5を参照して、このインパルス電圧裁断波試験装置が図1のインパルス電圧裁断波試験装置と異なる点は、裁断信号発生器4が裁断信号発生器21で置換されている点である。
【0033】
裁断信号発生器21は、分圧器18の出力端子18aの電圧が予め定められたしきい値電圧を超えたことに応じて、正パルスである第2の裁断信号S3を高圧パルス発生器5に出力する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0034】
[実施の形態3]
図6は、この発明の実施の形態3によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図6を参照して、このインパルス電圧裁断波試験装置が図1のインパルス電圧裁断波試験装置と異なる点は、電流検出器22が追加され、裁断信号発生器4が裁断信号発生器23で置換されている点である。
【0035】
供試機器17と電流検出器22は、出力端子T1,T2間に直列接続される。電流検出器22は、インパルス電圧VIPが供試機器17に印加されたときに流れる電流を検出し、その検出値を示す信号を裁断信号発生器23に出力する。裁断信号発生器23は、電流検出器22によって検出された電流値が予め定められたしきい値電流を超えたことに応じて正パルスである第2の裁断信号S3を高圧パルス発生器5に出力する。
【0036】
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態3でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
【0037】
[実施の形態4]
図7は、この発明の実施の形態4によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図7を参照して、このインパルス電圧裁断波試験装置が図1のインパルス電圧裁断波試験装置と異なる点は、光検出器24が追加され、裁断信号発生器4が裁断信号発生器25で置換されている点である。
【0038】
インパルス電圧発生装置10の放電スイッチ12の放電ギャップは、放電時に発光する。光検出器24は、放電スイッチ12の放電ギャップの近傍に配置され、その放電ギャップが発光しているかを検出し、その検出結果を示す信号を裁断信号発生器25に出力する。裁断信号発生器25は、放電ギャップが発光していることを示す信号が光検出器24から出力されたことに応じて正パルスである第2の裁断信号S3を高圧パルス発生器5に出力する。
【0039】
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態4でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。また、この実施の形態4では、第2の裁断信号S3がインパルス電圧VIPによるノイズの影響を受け難いので、実施の形態1よりも裁断の信頼性が高くなる。
【0040】
[実施の形態5]
実施の形態1〜4では、供試機器17のインピーダンスによってはインパルス電圧裁断波試験装置において高周波振動が発生し、インパルス電圧VIPに高周波振動電圧が重畳され、裁断装置15に含まれる放電スイッチ16の電極間の電圧が高周波で振動するという問題が想定される。放電スイッチ16のギャップ長(電極間距離)は、裁断を行なうときのインパルス電圧VIPに応じて適切な値に設定されている。放電スイッチ16の電極間の電圧が振動すると、放電スイッチ16のギャップ長と裁断時のインパルス電圧VIPとの関係が最適にならず、裁断の信頼性が低下してしまう。この実施の形態5では、この問題の解決が図られる。
【0041】
図8は、この発明の実施の形態5によるインパルス電圧裁断波試験装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図8を参照して、このインパルス電圧裁断波試験装置が図1のインパルス電圧裁断波試験装置と異なる点は、裁断装置15が裁断装置30で置換されている点である。裁断装置30は、出力端子T1,T2間に直列接続されたインピーダンス素子31および放電スイッチ16を含む。
【0042】
インピーダンス素子31は、高周波振動電圧に対しては大きなインピーダンスを有し、低い周波数の電圧に対しては小さなインピーダンスを有する素子である。インパルス電圧VIPに重畳した高周波振動電圧はインピーダンス素子31を通過することはできず、インパルス電圧VIPの低周波成分のみがインピーダンス素子31を通過して放電スイッチ16に印加される。インピーダンス素子31は、たとえば、インダクタ、抵抗素子などを含む。
【0043】
したがって、この実施の形態5では、インパルス電圧VIPに高周波振動電圧が重畳した場合でも、高周波振動電圧はインピーダンス素子16によって遮断されるので、高周波振動電圧が放電スイッチ16の電極間に印加されるのを抑制することができ、裁断の信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、この実施の形態5では、図1のインパルス電圧裁断波試験装置の裁断装置15を裁断装置30で置換した場合について説明したが、これに限るものではなく、図5図6図7のインパルス電圧裁断波試験装置の裁断装置15を裁断装置30で置換してもよいことは言うまでもない。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 始動信号発生器、2,5 高圧パルス発生器、3,4,21,23,25 裁断信号発生器、10 インパルス電圧発生装置、11 充電用コンデンサ、12,16 放電スイッチ、13 放電用抵抗器、14 制動用抵抗器、15,30 裁断装置、T1,T2 出力端子、17 供試機器、18 分圧器、19,20 回路素子、22 電流検出器、24 光検出器、31 インピーダンス素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8