(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記疎水化球状シリカ微粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.080μm以上0.200μm以下であり、前記疎水化球状シリカ微粉末の最大粒子径が0.800μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の疎水化球状シリカ微粉末。
前記球状シリカ微粉末は、水分量が0.4wt%以下であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.070μm以上0.170μm以下であり、最大粒子径が0.300μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複写機やレーザープリンター等に使用される静電荷像現像用トナーにおいて、その流動性改善や帯電特性の安定化のために、表面処理されたシリカ微粉体がトナー外添剤として用いられている。このシリカ微粉体に要求される特性は、湿度による帯電量の変化を少なくするため高い疎水性を有し、しかもトナー表面を均一に被覆できるように、凝集が少なく高分散であることである。シリカ微粉体の比表面積については、200〜500m
2/g程度の超微紛末が使用されるが、繰り返しの画像形成を行っていくうちにトナー粒子表面にシリカ超微粉末が埋没し、トナーの流動性、摩擦帯電量、転写性等が低下して画像不良を引き起こすことが確認されている。
【0003】
このシリカ超微粉末の埋没を低減させるため、比表面積80m
2/g未満の比較的粒子径の大きな無機微粉末を併用する方法(特許文献1、特許文献2)がある。比較的粒子径の大きな無機微粉末はトナー同士が直接接して生じるストレスを低減させるスペーサー効果を発現する。これにより、シリカ超微粉末の埋没を抑え、トナーの長寿命化を図る方法などがとられている。
【0004】
トナーの流動性において、比較的粒径の大きな無機微粉末の外添量を増加させると、流動性が悪化する問題がある。この問題の解決を狙い、20〜100m
2/gのフュームドシリカをヘキシル基以下のアルキルアルコキシシランを用い、アミン系触媒の存在下で表面処理する方法(特許文献3)が提案されている。
また、ゾルゲル法によって得られる親水性球状シリカ微粒子を疎水化処理して得られる20〜500nmの疎水性球状シリカ微粒子に電荷制御剤を被着せしめた外添用電荷制御粒子が、摩擦帯電量を一定範囲に保つ方法として提案(特許文献4)されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の方法において、比較的粒径の大きな無機微粉末は、超微粉末に比べて帯電量が小さい傾向があり、スペーサー効果向上を狙って外添量を増加させると帯電量の低下を招く。
特許文献3では、フュームドシリカの形状、及びアルキルシランによる凝集により、外添量を増加させると流動性が悪化する恐れがある。
特許文献4では、トナー同士が直接接して生じるストレスを低減させるスペーサー効果についてはまだ十分とは言えず、繰り返し使用による電荷制御剤の脱落により帯電量の低下を招く恐れがある。その為、比較的粒径の大きな微粉末の帯電特性、流動特性に対する更なる改善が求められている。
本発明の目的は、帯電安定性、流動性、スペーサー効果、帯電量に優れたトナー外添剤を生産するために好適な疎水化球状シリカ微粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するべく鋭意研究を進めたところ、粉体抵抗、水分量、タップ密度を制御することに成功し、これを達成する疎水化球状シリカ微粉末を見いだした。本発明はかかる知見に基づくものであり、本発明は上記の課題を解決するために、下記(1)の手段を採用する。
(1)粉体抵抗が1.0×10
13Ω・cm以上3.0×10
14Ω・cm以下であり、水分量が0.5wt%以下であり、タップ密度が0.10g/cm
3以上0.40g/cm
3以下であることを特徴とする疎水化球状シリカ微粉末。
また、好ましくは、以下の手段を採用する。
(2)前記疎水化球状シリカ微粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.080μm以上0.200μm以下であり、前記疎水化球状シリカ微粉末の最大粒子径が0.800μm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の疎水化球状シリカ微粉末。
(3)前記疎水化球状シリカ微粉末において顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子は、平均球形度0.88以上であり、
前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子個数割合が20%以下であり、
前記顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.80以下の粒子個数割合が10%以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の疎水化球状シリカ微粉末。
(4)温度35℃以上55℃以下、絶対湿度40g/m
3以上100g/m
3以下の条件下で24時間以上放置した球状シリカ微粉末に、前記球状シリカ微粉末1m
2当たり、4.0×10
−6mol以上1.5×10
−5mol以下のヘキサメチルジシラザンを噴霧することを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。
(5)前記球状シリカ微粉末は、水分量が0.4wt%以下であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.070μm以上0.170μm以下であり、最大粒子径が0.300μm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の疎水化球状シリカ微粉末の製造方法。
(6)前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の疎水化球状シリカ微粉末を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー外添剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、帯電安定性、流動性、スペーサー効果、帯電量に優れたトナー外添剤を生産するために好適な疎水化球状シリカ微粉末が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末は、粉体抵抗が1.0×10
13Ω・cm以上3.0×10
14Ω・cm以下であることが必要である。粉体抵抗が1.0×10
13Ω・cm未満であると、帯電量が小さくなり、トナー外添剤に使用した際に、トナー帯電量が低下する問題が発生する。一方、粉体抵抗が3.0×10
14Ω・cmを超えると、初期の帯電量は大きくなるものの、経時変化による帯電劣化が大きくなり、トナー外添剤として使用した際に、印字特性の経時安定性が悪化する問題が発生する。好ましい粉体抵抗は1.5×10
13Ω・cm以上2.5×10
14Ω・cm以下、より好ましくは、2.0×10
13Ω・cm以上2.0×10
14Ω・cm以下である。また、粉体抵抗は、例えば、1.5×10
13、1.6×10
13、2.0×10
13、5.0×10
13、1.0×10
14、1.9×10
14、2.0×10
14、2.1×10
14、2.5×10
14、2.9×10
14、又は3.0×10
14Ω・cmであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0010】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末の粉体抵抗は、三菱化学アナリテック社製「粉体抵抗測定システムMCP‐PD51、4探針プローブ」を用いて測定することが出来る。疎水化球状シリカ粉末2.0gを、温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置した後、φ20mmの測定用金型に充填し、38.2MPaの加圧下で測定を行った。また、印加電圧は1000V、電圧印加時間は20秒とした。
【0011】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末は、水分量が0.5wt%以下であることが必要である。水分量は、トナー外添剤に使用した際に、帯電量の大きさと環境差(高温高湿下と低温低湿化での帯電量の差)に影響を及ぼす。水分量が多くなり、0.5wt%を超えると、帯電量が低下し、環境差の悪化も招く。好ましい水分量は0.4wt%以下であり、より好ましくは0.3wt%以下である。また、水分量は、例えば、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05又は0.01wt%以下であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0012】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末の水分量は、カールフィッシャー法を用いて測定することが出来る。カールフィッシャー測定には三菱化学社製水分気化装置VA−122と三菱化学社製水分測定装置CA−100を使用し、水分測定装置の陽極液にはアクアミクロンAX(三菱化学社製)、陰極液にはアクアミクロンCXU(三菱化学社製)を使用した。カールフィッシャー測定に際してはバックグラウンド値を0.20(μg/sec)に固定し、検出される水分がバックグラウンド値を下回るまで継続して測定を行った。水分気化装置の電気ヒーターによる加熱処理時は疎水化球状シリカ微粉末が外気にさらさないようにし、水分気化装置から発生した水分を高純度アルゴン300ml/minに同伴させカールフィッシャー装置に導入し、水分量を測定した。本発明においては、疎水化球状シリカ微粉末を、温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置させた後に装置に仕込み、水分気化装置の電気ヒーターの加熱温度が200℃となるまでに発生した水分を水分量とした。
【0013】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末は、タップ密度が0.10g/cm
3以上0.40g/cm
3以下であることが必要である。タップ密度が0.10g/cm
3未満であると、トナー外添剤として使用した際に、トナー樹脂表面の疎水化球状シリカ微粉末被覆率が低くなりやすく、スペーサー効果が低下する問題がある。一方、タップ密度が0.40g/cm
3を超えると、疎水化表面処理を行う際に均一処理を行うことが困難となり、経時変化による帯電劣化が大きくなる問題がある。好ましいタップ密度は0.13g/cm
3以上0.35g/cm
3以下であり、より好ましくは0.15g/cm
3以上0.30g/cm
3以下である。また、タップ密度は、例えば、0.10、0.11、0.15、0.19、0.20、0.21、0.25、0.29、0.30、0.31、0.35、0.39、又は0.40g/cm
3であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0014】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末のタップ密度はパウダテスターを用いて測定することが出来る。測定装置には、ホソカワミクロン社製「PT−E型」を使用した。温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置させた疎水化球状シリカ微粉末を100mlのカップに入れ、1秒に1回の速さで180回タッピング後に見掛け密度を測定した。
【0015】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.080μm以上0.200μm以下であることが好ましく、最大粒子径が0.800μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.080μm未満であると、トナー外添剤に使用した際に、経時変化に伴いトナーへの埋没が起こってスペーサー効果が徐々に低下する可能性がある。一方、平均粒子径が0.200μmを超、及び/又は最大粒子径が0.800μmを超えると、大径粒子の影響で、トナー外添剤の流動性が低下する可能性がある。平均粒子径は0.085μm以上0.180μm以下が更に好ましく、0.090μm以上0.160μm以下は最も好ましい。また、最大粒子径は0.700μm以下が更に好ましく、0.600μm以下が最も好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末のレーザー回折散乱式粒度分布は、ベックマンコールター社製「LS−230」を用いて測定することができる。測定に際しては、溶媒にはエタノールを用い、前処理として3分間、トミー精工社製「超音波発生器UD−200(超微量チップTP−040装着)」を用いて200Wの出力をかけて分散処理する。また、PIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)濃度を45〜55質量%に調整する。粒度分布の解析は0.04〜2000μmの範囲を粒子径チャンネルがlog(μm)=0.04の幅で116分割にして行った。エタノールの屈折率には1.36を用い、疎水化球状シリカ微粉末の屈折率には1.50を用いた。
なお、本発明では測定した粒度分布において、累積質量が50%となる粒子が平均粒子径、累積質量が100%となる粒子径が最大粒子径である。
【0017】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末は、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子が、平均球形度0.88以上であり、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子の個数割合が20%以下、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、0.80以下の粒子の個数割合が10%以下であることが好ましい。
球形度が低い粒子は、ストラクチャー構造を有している場合や凝集体を形成している場合が多く、球形度が低くなるほどその傾向は顕著になる。顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子が、平均球形度0.88以上であって、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子の個数割合が20%以下、球形度0.80以下の粒子の個数割合が10%以下であれば、ストラクチャー構造粒子や凝集体が少なく、トナー外添剤として用いた際に、より優れた帯電安定性を発揮することが出来る。顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の平均球形度は0.90以上が更に好ましく、0.92以上が最も好ましい。また、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の総数を100%とした場合、球形度0.85以下の粒子の個数割合が15%以下、球形度0.80以下の粒子の個数割合が8%以下が更に好ましく、球形度0.85以下の粒子の個数割合が10%以下、球形度0.80以下の粒子の個数割合が6%以下が最も好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態において疎水化球状シリカ微粉末の球形度は、下記方法で測定することができる。疎水化球状シリカ微粉末をカーボンペーストで試料台に固定後、オスミウムコーティングを行い、日本電子社製走査型電子顕微鏡「JSM−6301F型」で撮影した倍率50000倍、解像度2048×1356ピクセルの画像をパソコンに取り込んだ。この画像を、マウンテック社製画像解析装置「MacView Ver.4」に取り込み、粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)から球形度を測定した。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとなるので、試料の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr
2であるから、B=π×(PM/2π)
2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)
2となる。このようにして得られた任意の投影面積円相当径0.100μm以上の粒子200個の球形度を求め、その平均値を平均球形度とした。また、これらの粒子200個中の球形度0.85以下、あるいは0.80以下の粒子個数からそれぞれの粒子個数割合を計算した。
【0019】
本発明の一実施形態における球状シリカ微粉末の疎水化処理法について説明する。本発明者は、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理を行う前に、球状シリカ微粉末表面に予め水分を吸着させることでシラノール基が活性化し、ヘキサメチルジシラザンを球状シリカ微粉末表面に高反応率で結合させることが可能となり、疎水化球状シリカ微粉末の帯電安定性を向上させることが出来ることを見出した。本発明者は、さらに水分を吸着させる際、単に水を噴霧して吸着させるよりも、水蒸気の状態で、かつ特定の温度及び湿度条件で水分を吸着させることで、ヘキサメチルジシラザンを球状シリカ微粉末表面に高反応率で非常に均一に結合させることが可能となり、疎水化球状シリカ微粉末の帯電安定性を一層向上させることが出来ることが分かった。また、水分の影響による凝集の発生も著しく低下させることが可能となり、流動性向上に対しても効果的であることが分かった。
【0020】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の製造方法は、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理を行う前に、温度35℃以上55℃以下、絶対湿度40g/m
3以上100g/m
3以下の条件下で24時間以上放置した球状シリカ微粉末を用いることが好ましい。ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理する前に、球状シリカ微粉末を温度35℃以上55℃以下、絶対湿度40g/m
3以上100g/m
3以下の条件下で24時間以上放置することで、球状シリカ微粉末表面に非常に均一に水分を存在させることが出来る。これにより、ヘキサメチルジシラザンを噴霧した際に、均一疎水化処理を行うことが可能となり、トナー外添剤として使用した際に、経時変化による帯電安定性を向上させることが出来る。温度35℃未満、及び/又は絶対湿度40g/m
3未満であると、球状シリカ微粉末の表面に存在する水分量が少なくなるため、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理を行った際の均一疎水性が不十分となり、トナー外添剤として使用した際に、経時変化による帯電安定性を十分に向上させることが出来ない。放置時間が24時間未満の場合も同様で、球状シリカ微粉末の表面に存在する水分量が少なくなるため好ましくない。一方、温度55℃超、及び/又は絶対湿度100g/m
3超であると、球状シリカ微粉末同士に働く液架橋の作用により、球状シリカ微粉末が凝集してしまう。そのため、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理を行った際に、球状シリカ微粉末の凝集内部の疎水性が低下し、結果として経時変化による帯電安定性を十分に向上させることが出来ない。温度37℃以上53℃以下が更に好ましく、40℃以上50℃以下が最も好ましい。また、絶対湿度45g/m
3以上90g/m
3以下が更に好ましく、50g/m
3以上80g/m
3以下が最も好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の製造方法は、上述の条件で水分を球状シリカ微粉末に均一に存在させた後に、球状シリカ微粉末1m
2当たり、4.0×10
−6mol以上1.5×10
−5mol以下のヘキサメチルジシラザンを噴霧することが好ましい。ヘキサメチルジシラザンの噴霧量が、球状シリカ微粉末1m
2当たり、4.0×10
−6mol未満であると、均一疎水性が不十分となり、トナー外添剤として使用した際に、経時変化による帯電安定性を十分に向上させることが出来ない。一方、1.5×10
−5molを超えると、疎水化球状シリカ微粉末が凝集してしまう結果、トナー樹脂表面の疎水化球状シリカ微粉末被覆率が低くなり、スペーサー効果が低下する問題がある。ヘキサメチルジシラザンの噴霧量は、球状シリカ微粉末1m
2当たり、5.5×10
−6mol以上1.4×10
−5mol以下が更に好ましく、7.0×10
−6mol以上1.3×10
−5mol以下が最も好ましい。
【0022】
ヘキサメチルジシラザンの噴霧法は、例えば、球状シリカ微粉末原料を浮遊させた状態で原液を噴霧する方法、又はヘキサメチルジシラザンを噴霧させた後にガス化させ球状シリカ微粉末に接触させる方法などがある。
【0023】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の製造方法においては、球状シリカ微粉末原料に対してヘキサメチルジシラザンを単独で処理しても良いし、2種類以上の表面処理剤で処理しても良い。例えば、正帯電性付与の為、アミノシランカップリング剤と併用する場合は、まず、球状シリカ微粉末にアミノシラン処理を行った後に、本発明の一実施形態における疎水化処理方法を実施すれば良い。
【0024】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末は、疎水化度が50%以上であることが好ましい。疎水化度が50%未満では、高湿度環境下におけるトナーの帯電特性が悪化したり、トナー粒子同士が凝集して流動性が低下したりする。55%以上が更に好ましく、60%以上が最も好ましい。疎水化度は以下の方法により測定することができる。すなわち、イオン交換水50ml、試料0.2gをビーカーに入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下する。ビーカー内のメタノール濃度が増加するにつれ粉体は徐々に沈降していき、その全量が沈んだ終点におけるメタノールとイオン交換水の混合溶液中のメタノールの容量%を疎水化度(%)とする。
【0025】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の製造方法に用いる球状シリカ微粉末は、本発明の水分量、球形度の疎水化球状シリカ微粉末を実現するために、金属シリコンの酸化反応で得られた球状シリカ微粉末を用いることが好ましい。
球状シリカ微粉末の製造方法を例示すれば、金属シリコンを化学炎や電気炉等で形成された高温場に投じて酸化反応させながら球状化する方法(例えば特許第1568168号明細書)、金属シリコン粒子スラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球状化する方法(例えば特開2000−247626号公報)などが挙げられる。
【0026】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の製造方法に用いる球状シリカ微粉末は、水分量が0.4wt%以下であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径が0.070μm以上0.170μm以下、最大粒子径が0.300μm以下である球状シリカ微粉末を用いることが好ましい。球状シリカ微粉末の水分量を0.4wt%以下、平均粒子径を0.070μm以上0.170μm以下、最大粒子径を0.300μm以下とすることで、本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末の水分量0.5wt%以下、平均粒子径0.080μm以上0.200μm以下、最大粒子径0.800μm以下の実現が容易となる。
【0027】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末のトナーへの配合量は、通常、トナー100質量部に対して、0.1〜6質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜4質量部である。配合量が少なすぎると、トナーへの付着量が少なく十分なスペーサー効果が得られず、多すぎるとトナー表面から疎水化球状シリカ微粉末が脱離するおそれがある。
【0028】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末を含有するトナー外添剤のシリカ粉末には、本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末が単独で使用されるものとは限らず、例えば、流動性付与効果の高い200〜500m
2/g程度の超微粉末シリカと併用して使用することもできる。
【0029】
本発明の一実施形態における球状シリカ微粉末を含有するトナー外添剤が添加される静電荷像現像用トナーとしては、結着樹脂と着色剤を主成分として構成される公知のものが使用できる。また、必要に応じて帯電制御剤が添加されていてもよい。
【0030】
本発明の一実施形態における疎水化球状シリカ微粉末を含有するトナー外添剤が添加された静電荷像現像用トナーは、一成分現像剤として使用でき、また、それをキャリアと混合して二成分現像剤として使用することもできる。二成分現像剤として使用する場合においては、上記トナー外添剤は予めトナー粒子に添加せず、トナーとキャリアの混合時に添加してトナーの表面被覆を行ってもよい。キャリアとしては、鉄粉等、あるいはそれらの表面に樹脂コーティングされた公知のものが使用される。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜14 比較例1〜10
球状シリカ微粉末は、燃焼炉の頂部に内炎と外炎が形成できる二重管構造のLPG−酸素混合型バーナーが設置され、下部に捕集系ラインが直結されてなる装置を用いて製造した。上記バーナーの中心部には更にスラリー噴霧用の二流体ノズルが設置され、その中心部から、金属シリコン粉末(平均粒径10.5μm)と水からなるスラリー(金属シリコン濃度:10〜70質量%)を2〜30L/Hrのフィード量で噴射した。周囲からは酸素を供給した。火炎の形成は二重管バーナーの出口に数十個の細孔を設け、そこからLPGと酸素の混合ガスを噴射することによって行った。また、球状シリカ微粉末の水分量を調整するために、炉体中部側面に1流体ノズルを取り付け、0〜10L/Hrのフィード量で水を噴霧した。二流体ノズルから噴射され火炎を通過して生成した球状シリカ微粉末は、ブロワによって捕集ラインを空気輸送させ、バグフィルターで捕集した。なお、球状シリカ微粉末の粒子径及び球形度の調整を、スラリー濃度及びスラリーフィード量の調整により行った。また、水分量の調整を、水噴霧用のフィード量の調整により行った。
【0032】
それらを適宜配合し、各種の球状シリカ微粉末を得た。球状シリカ微粉末の水分量、平均粒子径、及び最大粒子径を表1に示す。得られた球状シリカ微粉末を、それぞれ恒温恒湿槽(日立アプライアンス社製「EC−45MHHP」)に入れ、種々の条件で、槽内に放置した。槽内に放置した際の、温度、絶対湿度、時間を表1、表2、表3に示す。
【0033】
恒温恒湿槽から取り出したそれぞれの球状シリカ微粉末100gを直ぐに流動層(中央化工機社製「振動流動層装置VUA−15型」)に仕込み、N
2ガスで流動させたところにヘキサメチルジシラザン(信越化学工業社製「SZ−31」)を、種々の噴霧量で噴霧し、20分間流動混合した。流動混合後、130℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら生成したアンモニアを除去し、疎水化球状シリカ微粉末A〜Wを得た。また、単純に水噴霧を行って水分吸着をさせた後に、上記と同様の方法で疎水化処理を行い、疎水化球状シリカ微粉末Xを得た。ヘキサメチルジシラザンの噴霧量を表1、表2、表3に示す。また、疎水化球状シリカ微粉末A〜Wの粉体抵抗、水分量、タップ密度、レーザー回折散乱式粒度分布測定機にて測定された平均粒子径、最大粒子径、顕微鏡法による投影面積円相当径0.100μm以上の粒子の平均球形度、球形度0.88以下の粒子個数割合、0.85以下の粒子個数割合を表1、表2、表3に示す。なお、得られた疎水化球状シリカ微粉末の疎水化度はいずれも65%以上であった。
【0034】
疎水化球状シリカ微粉末A〜Wの、トナー外添剤としての特性を評価するために、圧縮度変化比率、安息角、帯電量、帯電保持比率、外添剤被覆率を以下の方法に従って測定した。それらの結果を表1、表2、表3に示す。
【0035】
(1)圧縮度変化比率
疎水化球状シリカ微粉末A〜X5gと、平均粒子径5μmの架橋スチレン樹脂粉(綜研化学社製商品名「SX−500H」)490g、流動性付与のため市販のフュームドシリカ200m
2/g品5gをヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製「FM−10B型」)に入れ、1000rpmで1分間混合し疑似トナーを作製した。この模擬トナーを、温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置後、パウダテスター(ホソカワミクロン社製「PT−E型」)を用いて圧縮度を評価した。圧縮度は下記式によって算出される。
圧縮度=(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重×100(%)
なお、ゆるみ見掛け比重は、100mlのカップに疑似トナーを入れ、タッピングをしない状態で測定した比重であり、固め見掛け比重は、100mlのカップに疑似トナーを入れ、1秒に1回の速さで180回タッピング後に測定した見掛け比重である。
次に、ヘンシェルミキサーの混合時間を3分から30分に変更して圧縮度測定を行い、圧縮度変化比率を下記式から算出した。
圧縮度変化比率=混合時間30分の時の圧縮度/混合時間3分の時の圧縮度
この圧縮度変化比率が1に近い、すなわち圧縮度の変化が小さいほど、スペーサー効果が良好であることを表す。
【0036】
(2)安息角
疎水化球状シリカ微粉末A〜X10gと、平均粒子径5μmの架橋スチレン樹脂粉(綜研化学社製商品名「SX−500H」)490gをヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製「FM−10B型」)に入れ、1000rpmで1分間混合し疑似トナーを作製した。この模擬トナーを、温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置後、パウダテスター(ホソカワミクロン社製「PT−E型」)を用いて安息角を評価した。温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置させた模擬トナーを目開き710μmの篩に乗せ、振動を与えながら、漏斗を通して直径8cmの円形測定用テーブルに堆積させた。円錐状に形成される堆積状態が一定になるまで堆積させた後、分度器を用いて水平面に対する堆積粉の陵線の角度を安息角とした。この安息角の値が小さいほど、流動性が良好であることを示す。
【0037】
(3)帯電量
疎水化球状シリカ微粉末A〜X15gと、平均粒子径5μmの架橋スチレン樹脂粉(綜研化学社製商品名「SX−500H」)485gをヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製「FM−10B型」)に入れ、1000rpmで1分間混合し疑似トナーを作製した。この疑似トナーを、温度25℃、相対湿度55%の条件下で24Hr静置した後、ブローオフ帯電量を以下の手法で測定した。模擬トナー0.20gと、キャリアとして負帯電極性トナー用標準キャリア(日本画像学会より頒布「N−01」)3.80gを100mlポリエチレン製容器に入れ、アサヒ理化製作所社製小型ボール回転架台「AV−1型」を用い、1秒間に1回転の速度で回転振とうさせた。振とう5分後、この模擬トナーとキャリアの混合物0.30gを用いて吸引分離式帯電量測定器(三協パイオテク社製「セパソフトSTC−1」)により、ブローオフ帯電量を測定した。吸引時間は3分間、吸引圧力は4.0kPaとし、模擬トナーとキャリアの分離に用いるスクリーンには目開き32μmの金網を使用した。
このブローオフ帯電量のマイナスの値が大きいほど帯電量が大きいことを表す。
【0038】
(4)帯電保持比率
ボールミル回転架台での回転振とう時間を5分から120分に変更して、ブローオフ帯電量測定を行い、下記式から帯電保持比率を算出した。
帯電保持比率=振とう120分後のブローオフ帯電量/振とう5分後のブローオフ帯電量
この帯電保持比率の値が1に近い、すなわち、帯電量の変化が少ないほど、帯電の経時安定性が良好であることを表す。
【0039】
(5)外添剤被覆率
帯電保持比率を測定する際に調製した模擬トナーをカーボンペーストで試料台に固定後、オスミウムコーティングを行い、電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−6301型」)観察を行った。倍率15000倍の画像をパソコンに取り込み、画像解析装置(マウンテック社製「MacView」)を用いて架橋スチレン樹脂粉の投影面積と球状シリカ微粉末の投影面積を測定し、下記式から疑似トナー1個当たりの外添剤被覆率を求めた。
疑似トナー1個当たりの外添剤被覆率=(1個の架橋スチレン樹脂粉表面に付着する球状シリカ微粉末の合計投影面積/1個の架橋スチレン樹脂粉の投影面積)×100(%)
疑似トナー20個について外添剤被覆率を計算し、その平均値を平均外添剤被覆率とした。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例と比較例の対比から明らかなように、本発明によれば、帯電安定性、流動性、スペーサー効果、帯電量に優れたトナー外添剤を提供することができる。また、前記トナー外添剤に好適な疎水化球状シリカ微粉末を提供することができる。