(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429839
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
A61F2/44
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-175572(P2016-175572)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-60749(P2017-60749A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】15184164.0
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516270821
【氏名又は名称】ウルリヒ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ulrich GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユリア シリング
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュレーター
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヴィンクラー
(72)【発明者】
【氏名】ハリー クリステンフス
(72)【発明者】
【氏名】フーベルテュス パウル マリア テア ブラーク
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0324687(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/179655(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0164019(US,A1)
【文献】
特開2003−305068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎の椎体間に挿入するインプラント(1)であって、長手方向軸線(2)に沿って形成された本体(3)を備えており、該本体(3)の少なくとも一方の端部には、隣接する椎体に接触する接触面(5)を有する接合板(4)が配置されており、該接合板(4)は、前記長手方向軸線(2)に対して実質的に垂直に配置された旋回軸線(6)を中心として旋回可能に前記本体(3)に支持されていて、該本体(3)に対して又は前記長手方向軸線(2)に対して所定の角度で位置固定可能である、インプラントにおいて、
前記本体(3)に、少なくとも1つの緊締要素(7)が対応配置されており、前記接合板(4)は、前記本体(3)に面した側に、緊締面(8)を有しており、前記緊締要素(7)は、前記接合板(4)が旋回可能な旋回形態位置と、前記緊締要素(7)と前記緊締面(8)との相互作用に基づき前記角度延いては前記接合板(4)が位置固定可能な緊締形態位置との間で変位可能であり、前記緊締要素(7)は、前記長手方向軸線(2)に対して実質的に垂直に配置された軸線を中心として旋回可能に、前記本体(3)に支持されていることを特徴とする、脊椎の椎体間に挿入するインプラント(1)。
【請求項2】
前記緊締要素(7)は、前記本体(3)を周側において少なくとも部分的に包囲して前記本体(3)に係合する緊締枠(9)として形成されている、請求項1記載のインプラント(1)。
【請求項3】
前記本体(3)の外周に突起(10)が形成又は配置されており、該突起(10)は、少なくとも部分的に平らな位置固定面(11)を有している、請求項2記載のインプラント(1)。
【請求項4】
前記突起(10)は、前記長手方向軸線(2)に対して所定の傾斜角で傾けられて、又は実質的に平行に向けられている、請求項3記載のインプラント(1)。
【請求項5】
緊締形態位置を付加的に位置固定するために、前記緊締要素(7)に少なくとも1つの連結部材(12)が、前記緊締面(8)に面した側に対応配置されている、請求項2から4までのいずれか1項記載のインプラント(1)。
【請求項6】
前記連結部材(12)は、単一の又は複数の小突起(13)として形成されている、請求項5記載のインプラント(1)。
【請求項7】
前記接合板(4)と前記本体(3)とは、旋回ユニット(14)により互いに結合されており、該旋回ユニット(14)には、本体(3)に面した、結合部材受容部(16)を備えた張出し部(15)と、前記本体(3)に形成された、結合部材用開口(18)を備えた張出し部受容部(17)と、前記結合部材受容部(16)と前記結合部材用開口(18)とに挿入される結合部材(19)とが含まれる、請求項2から6までのいずれか1項記載のインプラント(1)。
【請求項8】
前記張出し部(15)は、少なくとも部分的に凸状に形成されており、前記張出し部受容部(17)は、少なくとも部分的に凹状に形成されている、請求項7記載のインプラント(1)。
【請求項9】
前記緊締要素(7)と前記本体(3)とは、旋回手段(20)により互いに結合されており、該旋回手段(20)には、前記緊締要素(7)に形成された緊締要素結合部材用受容部(21)と、前記本体(3)に形成された緊締要素結合部材用開口(22)と、前記緊締要素結合部材用受容部(21)と前記緊締要素結合部材用開口(22)とに挿入される緊締要素結合部材(23)とが含まれる、請求項7又は8記載のインプラント(1)。
【請求項10】
前記本体(3)は、前記旋回ユニット(14)に面した端部に補強部(24)を有しており、該補強部(24)には、前記結合部材用開口(18)を備えた張出し部受容部(17)と、前記緊締要素結合部材用開口(22)とが形成されている、請求項9記載のインプラント(1)。
【請求項11】
前記本体(3)は、前記緊締枠(9)に形成された緊締枠突起(26)を受容するための、緊締枠受容部(25)を有している、請求項2から10までのいずれか1項記載のインプラント(1)。
【請求項12】
緊締形態位置において前記緊締要素(7)を位置固定するために、前記本体(3)に、ばね弾性的な部材(27)が配置されている、請求項11記載のインプラント(1)。
【請求項13】
前記ばね弾性的な部材(27)は、旋回形態位置において半径方向に予荷重を加えられている、請求項12記載のインプラント(1)。
【請求項14】
前記ばね弾性的な部材(27)は、旋回形態位置において前記緊締枠突起(26)に軸方向に作用し、該緊締枠突起(26)は、緊締形態位置において半径方向で、前記緊締枠受容部(25)と協働する、請求項12又は13記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎の椎体間に挿入するインプラントであって、長手方向軸線に沿って形成された本体を備えており、該本体の少なくとも一方の端部には、隣接する椎体に接触する接触面を有する接合板が配置されており、該接合板は、前記長手方向軸線に対して実質的に垂直に配置された旋回軸線を中心として旋回可能に前記本体に支持されていて、該本体に対して又は前記長手方向軸線に対して所定の角度で位置固定可能である、インプラントに関する。
【0002】
このようなインプラントは、例えば本体を備えた脊椎インプラントが記載された独国特許出願公開第4417629号明細書から公知であり、前記本体の両端部には接合板が配置されており、接合板は、本体に対する角度位置調整後に、本体と不動に結合可能である。この場合の欠点は、角度調整した後で、角度の位置固定が、骨材の充填又は硬化可能な材料の注入のいずれかによって行われる、という点にある。これは、調整した角度を後から位置固定するという手間のかかる方法である上に、非可逆的でもある。角度を後から変更することは、位置固定後は修正不可能である。
【0003】
よって本発明の課題は、改良されたインプラントを提供することにある。
【0004】
この課題は、本発明に基づき冒頭で述べた形式のインプラントにおいて、本体に少なくとも1つの緊締要素が対応配置されており、接合板が、前記本体に面した側に、緊締面を有しており、前記緊締要素は、前記接合板が旋回可能な旋回形態位置と、前記緊締要素と前記緊締面との相互作用に基づき角度延いては前記接合板が位置固定可能な緊締形態位置との間で変位可能であることによって解決される。緊締要素と緊締面との相互作用に基づく緊締結合により、長手方向軸線に対する接合板の角度を、極めて簡単に位置固定することができる。これにより、ねじ又は位置固定材料の注入による、接合板の角度の時間のかかる位置固定は不要になる。更に、本体に対する接合板の旋回可能な支持は、最適な角度の無段階調整延いては極めて正確な微調整を可能にする。旋回形態位置と緊締形態位置との間での緊締要素の旋回性に基づき、角度を可逆的に位置固定することが可能である、即ち、既に事前に調整されて位置固定された、接合板と長手方向軸線との間の角度を、後で修正若しくは最適化することができるようになっている。このことは、執刀医が最適な角度を迅速に見つけて調整することを可能にし、その結果、接触面は椎体に最適に接触した状態になる。これにより、椎体代替物の、隣接する椎体への侵入も、最適な荷重分散により防止される。択一的又は付加的に有利なのは、角度が非可逆的に位置固定可能である場合であり、つまり緊締要素が最終的な緊締形態位置に変位させられると、もはや旋回形態位置に戻すことができなくなっている場合である。本発明の枠内で更に有利には、本体の各端部に、隣接する椎体に接触する接触面を備えた接合板が対応配置されており、これらの接合板はそれぞれ、長手方向軸線に対して実質的に垂直に配置された旋回軸線を中心として旋回可能に本体に支持されており、本体又は長手方向軸線に対して所定の角度で位置固定可能であり、本体には、各接合板用に少なくとも1つの緊締要素が対応配置されており、各接合板は、本体に面した側に、それぞれ少なくとも1つの緊締面を有しており、緊締要素は、接合板が旋回可能な旋回形態位置と、緊締要素と緊締面との相互作用に基づき角度延いては接合板が位置固定可能な緊締形態位置との間で、変位可能である。このことは、インプラントがより正確に、隣接する椎体の構成及び向きに適合され得る、ということを可能にする。
【0005】
1つの好適な実施形態において、接合板は複数の緊締面を、本体に面した側に有している。この場合、緊締面は、接合板の長手方向軸線に沿って、又は1つの好適な実施形態では長手方向軸線に対してほぼ垂直に形成されていてもよい。1つの有利な実施形態において、本体は、接合板に面した側に縁部を有している。この縁部はとりわけ、調整可能な角度を制限するために働き、且つ緊締要素用のストッパとして用いられる。更に本体は、好適には中空体として形成されていて、周側において本体の周面に、1つ又は複数の切欠きを有している。
【0006】
1つの特に簡単な実施形態において、緊締要素は、緊締旋回体として形成されており、各接合板には、旋回可能に本体に支持された2つの緊締旋回体が対応配置されている。緊締軸線を中心として緊締旋回体を旋回させることにより、緊締形態位置の枠内で、緊締旋回体と接合板の緊締面との間に緊締結合が生じる。
【0007】
1つの択一的な実施形態において、緊締要素は、本体に支持されていて、接合板に向かって且つ接合板とは反対の方向に可動なスリーブとして形成されていてよい。本体の長手方向軸線に沿ったスリーブの可動性に基づき、接合板の緊締面とスリーブとの間にはやはり、緊締結合が形成され得る。
【0008】
1つの別の択一的な実施形態において、緊締要素は、摺動部材として形成されていてよく、摺動部材は、本体に接する接合板に向かって且つ接合板とは反対の方向に、長手方向軸線に沿って摺動させられてよく、これにより好適には可逆的に、緊締面と緊締結合することができる。
【0009】
本発明の枠内では更に、緊締要素が、長手方向軸線に対して実質的に垂直に配置された軸線を中心として旋回可能に、本体に支持されている。本体における緊締要素の旋回可能な支持により、緊締形態位置の特に迅速な調整若しくは位置固定を行うことができる。この場合、1つの実施形態において緊締要素と接合板とは、同一の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されている。1つの好適な実施形態では択一的に、緊締要素は、長手方向軸線に対して垂直に向けられて、緊締軸線として形成された軸線を中心として旋回可能であり、この場合、好適には旋回軸線と緊締軸線とは、実質的に互いに平行に向けられている。
【0010】
更に本発明の枠内では、緊締要素は、本体を周側において少なくとも部分的に包囲して本体に係合する緊締枠として形成されている。緊締要素を緊締枠として形成することにより、緊締形態位置と旋回形態位置との間で簡単に変位可能な、特に簡単に取り扱うことのできる緊締要素が形成される。緊締形態位置が非可逆的であることが想定された1つの実施形態において、緊締枠には、好適には目標折れ箇所が材料内に、例えば刻み目の形態で形成されており、角度の最終的な位置固定後に緊締枠を折り取ることができるようになっている。
【0011】
特に有利なのは、本体の外周に突起が形成又は配置されており、突起は特に、少なくとも部分的に平らな位置固定面を有している。この突起は、緊締形態位置において緊締要素若しくは緊締枠を付加的に位置固定するために役立つ。この場合、緊締枠は緊締形態位置への変位に際して、位置固定面を覆うようにずらし被され、これにより、位置固定面と緊締枠とは、好適には力結合部を形成するようになっている。この場合、位置固定面は、位置固定線として形成されていてもよい。
【0012】
これに関連して、前記突起は長手方向軸線に対して所定の傾斜角で傾けられて、又は実質的に平行に向けられている。所定の傾斜角で傾けられた突起の場合、突起は平坦部を有しており、緊締形態位置において緊締要素に当接していることが考えられる。
【0013】
極めて特に有利なのは、緊締形態位置を付加的に位置固定するために、緊締要素に少なくとも1つの連結部材が、緊締面に面した側に対応配置されている場合である。この場合、連結部材は係止部材として、緊締面に形成された係止座と共に形成されていてよい。但し特に好適なのは、連結部材が単一の、又は複数の小突起として形成されている場合である。この場合、特に有利なのは、緊締形態位置を付加的に位置固定するために、小突起が緊締面に食い込むことができる場合である。
【0014】
更に1つの別の択一的な構成では、接合板と本体とは旋回ユニットにより互いに結合されており、旋回ユニットには、本体に面した、結合部材受容部を備えた張出し部と、本体に形成された、結合部材用開口を備えた張出し部受容部と、前記結合部材受容部と前記結合部材用開口とに挿入される結合部材とが含まれる。この場合、旋回ユニットは、接合板を旋回可能に本体に支持するために、構造上特に簡単な構成を成している。この場合、接合板の旋回運動は、張出し部受容部における張出し部の旋回運動により行われる。これにより、角度を特に微調整若しくは正確に調整することができる。特に有利なのは、結合部材がボルト又はピンとして形成されている場合である。更に、結合部材用開口は、長孔として形成されている。本発明の1つの別の構成において、長孔は、該長孔内での結合部材の制限された横方向移動、延いては本体に対する接合板の制限された横方向移動を可能にする。これにより、旋回軸線を中心とした接合板の旋回角度が拡大され、インプラントをより最適に、隣接する椎体の構成及び向きに適合させることができる。更に好適なのは、各接合板が2つの旋回ユニットを介して本体に結合されている場合、及び旋回ユニットが、それぞれ接合板若しくは本体の周にわたって均等に配分されて配置されている場合である。択一的に、長孔として形成された結合部材用開口は、接合板に形成されており、本体に結合部材受容部が配置されており、ピンとして形成された結合部材は、前記結合部材受容部と結合部材用開口とに受容されている。
【0015】
これに関連して好適なのは、張出し部が少なくとも部分的に凸状に形成されている場合、及び張出し部受容部が、好適には少なくとも部分的に凹状に形成されている場合である。これにより、旋回運動を特に良好に行うことができ、この場合は特に、張出し部が凸状に形成されており、これに適合するように、張出し部受容部は凹状に形成されている。換言すると、張出し部と張出し部受容部とは、1つのヒンジを形成している。このヒンジは、特に正確な角度調整、延いては特に簡単な角度位置固定を可能にする。この枠内で有利なのは、凸状の張出し部の一部だけが、凹状の張出し部受容部に受容される場合である。1つの択一的な実施形態において、張出し部受容部は平らに形成されていてもよい。
【0016】
1つの択一的な実施形態において、接合板と本体とは、旋回ユニットにより互いに結合されており、この旋回ユニットには、旋回部材と、本体に形成された旋回部材受容部とが含まれる。この場合、旋回部材は、旋回部材受容部に係合し、その中で旋回可能に支持された、例えばピン又はボルトとして形成されていてよい。
【0017】
本発明の枠内で更に、緊締要素と本体とは、旋回手段により互いに結合されており、旋回手段には、緊締要素に形成された緊締要素結合部材用受容部と、本体に形成された緊締要素結合部材用開口と、前記緊締要素結合部材用受容部と前記緊締要素結合部材用開口とに挿入される緊締要素結合部材とが含まれる。これにより、緊締要素を旋回可能に本体に支持することが可能になる。この場合、特に有利なのは、緊締枠結合部材が、ボルト又はピンとして形成されている場合である。更に、各緊締要素に1つの旋回手段が対応配置されており、旋回手段はそれぞれ、本体の周にわたって均等に配分されて配置されている。一種の旋回ヒンジも形成されている。緊締要素が緊締枠として形成されている場合には、緊締枠が正確には2つの旋回手段を介して本体に結合されていると好適である。更に好適には、緊締要素は旋回手段の領域において、比較的大きな直径を備えて形成されている。このことは、緊締要素のより高い耐荷重能力を可能にすると共に、緊締形態位置への変位時に緊締要素が折れることを防止する。
【0018】
これに関連して、本体が旋回ユニットに面した端部に補強部を有しており、この補強部に、結合部材用開口を備えた張出し部受容部と、緊締枠結合部材用開口とが形成されていると有利である、ということが判った。この場合、補強部は、少なくとも部分的に本体の周側に延在している。補強部は、インプラントの耐荷重能力を改善すると共に、植込み時及び本体の位置固定時に接合板が折れることを防止する。
【0019】
極めて特に有利なのは、本体が、緊締枠に形成された緊締枠突起を受容するための、緊締枠受容部を有している場合である。緊締枠突起は、旋回形態位置において本体に緊締枠を位置固定するために役立つ。更に、緊締形態位置において緊締要素を位置固定するためには、本体に、ばね弾性的な部材が配置されていると有意である、ということが判った。好適には、ばね弾性的な部材は、半径方向外側に突出した端部を備えるスナップとして形成されている。更に好適なのは、ばね弾性的な部材が、旋回形態位置において好適には半径方向に予荷重を加えられている場合である。
【0020】
本発明の枠内で更に好適なのは、ばね弾性的な部材が、旋回形態位置において緊締枠突起に軸方向に作用し、且つ緊締枠突起は、緊締形態位置において半径方向で、緊締枠受容部と協働する場合である。この場合、緊締枠突起は、本体の長手方向軸線に沿って、ばね弾性的な部材に支持されるように設けられている。これにより、緊締枠は、旋回形態位置において位置固定されるようになっている。緊締形態位置における、緊締枠突起と緊締枠受容部との半径方向の協働は、緊締形態位置若しくは緊締結合部の付加的な位置固定に役立つ。
【0021】
まとめると、本発明の利点は、インプラントを簡単に取り扱うことができ、延いては比較的簡単に椎間に植え込むことができると共に、隣接する椎体に対して最適に位置調整することができる、という点にある。これにより、インプラントは脊椎に沿って可変に挿入可能である。本体に旋回可能に支持された接合板に基づき、本体に対する接合板の角度を簡単に確定することができ、これにより、接合板は隣接する椎体に対して最適に位置調整された状態になる。緊締要素と、接合板に配置された緊締面との間の相互作用に基づいて、緊締要素と緊締面との間には力結合が形成される、若しくは緊締結合が形成される。この緊締結合は、事前に選択された角度を、時間をかけずに確実に確定する若しくは位置固定することを可能にする。緊締形態位置と旋回形態位置との間での緊締要素の変位、並びに旋回形態位置における角度調整は、追加的な器具を一切必要としない、若しくは極少数しか必要としない。したがって、当該インプラントは特に簡単に、人体の脊椎における条件に適合可能である。
【0022】
以下に、本発明を図示の実施例につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明によるインプラントの旋回形態位置を示す斜視図である。
【
図2】本発明によるインプラントの旋回形態位置を示す正面図である。
【
図3】本発明によるインプラントの旋回形態位置を示す側面図である。
【
図5】本発明によるインプラントの緊締形態位置を示す斜視図である。
【
図6】本発明によるインプラントの緊締形態位置を示す側面図である。
【
図7a】
図6に示したA部分を旋回形態位置で詳細に示す縦断面図である。
【
図7b】
図6に示したA部分を緊締形態位置で詳細に示す縦断面図である。
【0024】
図1に斜視図で示す、本発明によるインプラント1は、長手方向軸線2に沿って形成された本体3を有しており、本体3の一方の端部には、隣接する椎体に接触する接触面5を備えた接合板4が配置されている。本体3は、重量削減のため、若しくは骨材貫入部を提供するために、半径方向側の周面28において周方向に形成された複数の切欠き29を備えた中空体として形成されている。
【0025】
図1〜
図6において、本体3は、その長手方向軸線2に沿って部分的に図示されている。接合板4は、その接触面5に複数の鋭利な歯34を、椎体に対する転位防止手段として有している。また、接合板4は、本実施形態ではやはり長手方向に形成された少なくとも1つの接合板切抜き部30を有しており、接合板切抜き部30は、好適には骨材の成長又は骨セメントの注入に役立つ。
【0026】
この場合、接合板4は、長手方向軸線2に対して実質的に垂直に配置された旋回軸線6を中心として旋回可能に本体3に支持されていて、本体3に対して又は長手方向軸線2に対して所定の角度で位置固定可能である(
図2参照)。
【0027】
この場合、本体3における接合板4の旋回可能な支持(
図4参照)は、旋回ユニット14により行われ、旋回ユニット14は、本体3に面して接合板4に設けられた、結合部材受容部16を備えた張出し部15と、本体3に形成された、結合部材用開口18を備えた張出し部受容部17と、結合部材受容部16と結合部材用開口18とに挿入可能な結合部材19とを有している。旋回ユニット14の個々の構成部材は、
図4においてより正確に認められる。本実施形態では張出し部15が実質的に凸状に形成されているのに対して、張出し部受容部17は、張出し部15に適合するように実質的に凹状に形成されている。張出し部受容部17は、張出し部15を受容する若しくは支持する、本体3に形成されたショルダの形態で形成されている。
【0028】
本実施形態において結合部材用開口18は、長手方向軸線2に対して特に半径方向に設けられた長孔として形成されている。これに対して結合部材19は、横断面円形のピンとして形成されており、この場合、横断面非円形のボルトも同様に、結合部材19として考慮される。ピン若しくは結合部材19は、本体3に接合板4を位置固定するために用いられる。つまり換言すると、ピンはまず第1に、接合板4を本体3に結合し、且つ接合板4の、本体3からの持上がりを防ぐように設計されている。副次的に、本発明では最大旋回角度が制限される。
【0029】
本実施形態では接合板4に、周にわたって均等に配分された複数の、特に正確には2つの旋回ユニット14が対応配置されている。この場合、各旋回ユニット14は、共通の旋回軸線6を中心として旋回可能である。更に接合板4は、その本体3に面した側に、特に周にわたって均等に配分された複数の、本実施形態では正確には2つの緊締面8を有している。これらの緊締面8は、両張出し部15の、本体3に面した側に形成されている。
【0030】
長手方向軸線2若しくは本体3に対する接合板4の角度を固定することができるようにするためには、緊締要素7が設けられており、緊締要素7は、長手方向軸線2に対して実質的に垂直に向けられた緊締軸線31を中心として旋回可能に、本体3に支持されている。緊締要素7は、本実施形態では本体3の周側を少なくとも部分的に取り囲んで本体3に係合する、緊締枠9として形成されている。
【0031】
緊締枠9は複数の、本実施形態では正確には2つの緊締枠脚部32を有しており、2つの形態位置間で変位可能に、本体3に支持されている。緊締枠9は、接合板4が旋回可能となる旋回形態位置と、緊締要素7と緊締面8との相互作用に基づいて接合板4の角度延いては接合板4が位置固定可能となる緊締形態位置との間で変位可能である。
【0032】
この場合、緊締要素7若しくは緊締枠9は、旋回手段20により本体3に旋回可能に支持されており、この場合、旋回手段20は、緊締要素7に形成された緊締要素結合部材用受容部21と、本体3に形成された緊締要素結合部材用開口22と、緊締要素結合部材用受容部21及び緊締要素結合部材用開口22に挿入された緊締要素結合部材23とを有している。
【0033】
緊締枠9は複数の、本実施形態では正確には2つの旋回手段20を有しており、この場合、緊締枠9は、旋回手段20の領域の安定性を高めるために、補強部を有している。更に緊締枠9は各緊締枠脚部32に、小突起13として形成された連結部材12を有しており、小突起13は、本発明の1つの実施形態において張出し部15に設けられた緊締面8に食い込むことができる。換言すると、緊締枠9は緊締形態位置において、接合板4の緊締面8との固い結合部を形成する。この固い結合部は、力結合(例えば摩擦力等の、力による結合)部、形状結合(形状による結合、例えば係合)部、又は材料結合部(例えば付着結合)であってもよい。
【0034】
更に緊締枠9は、緊締枠突起26を有しており、緊締枠突起26は、本体3に形成された緊締枠受容部25において受容可能である。緊締枠受容部25にもやはり、スナップの形態のばね弾性的な部材27が付加的に形成されており、スナップは、半径方向外側に突出した端部を有していて、旋回形態位置において、好適には半径方向の予荷重を加えられる。
【0035】
このことは、インプラントの一部、つまり範囲Aを示す
図7a及び
図7bから、より詳細に看取される。
図7aは旋回形態位置の詳細を示すものであり、
図7bは緊締形態位置の詳細を示すものである。緊締枠9が旋回形態位置にある限りは、ばね弾性的な部材27が緊締枠9の内側で予荷重をかけられて、緊締枠9に当接している。緊締枠9が、緊締軸線31を中心として接合板4に向かって旋回させられると、ばね弾性的な部材27は半径方向に作用する戻し力に基づいて外側に変位し、このとき緊締枠9の、接合板4とは反対の側を支持するようになっている。換言すると、旋回形態位置では緊締枠突起26が、ばね弾性的な部材27の、半径方向外側に突出した端部に支持されており、緊締形態位置では、ばね弾性的な部材27が緊締枠9を位置固定している。これは、緊締枠9及び接合板4の緊締を担う形状結合の作用によるものである。
【0036】
1つの択一的な実施形態では、部材27がばね予荷重を加えられずに形成されており、この場合、緊締枠9を緊締形態位置において位置固定若しくは固定解除するためにはやはり、部材27は手動で半径方向外側若しくは内側に向かって、即ち位置固定位置と固定解除位置との間で、変位可能である。
【0037】
更に、本体3の外周には、平らな位置固定面11を有する突起10が形成されている(
図3参照)。この場合、平らな位置固定面11は、長手方向軸線2に対して平行に向けられており、緊締枠9が突起10を覆うようにずらし被され、これにより突起10との固い結合部、好適には力結合部を形成することにより、緊締形態位置において緊締枠9を付加的に位置固定するために働く。
【0038】
本実施形態において本体3は複数の、特に2つの平らな位置固定面11を有しており、これらの位置固定面11は周側において、緊締枠受容部25に続いて形成されている。本体3は更に周側において、主に旋回ユニット14の領域に補強部24を有しており、補強部24には、結合部材用開口18を備えた張出し部受容部17と、緊締要素結合部材用開口22とが形成されている。この補強部24は、頑丈な構成形式を可能にすると共に、本体3からの接合板4の脱離を防止する。選択的に旋回ユニット14だけに補強部24を形成することにより、材料もやはり節約される。更に補強部24は周側において、本体3に対する接合板4の角度位置を付加的に制限する縁部33の形態でも形成されている。
【0039】
次に、2つの椎体間での、本発明によるインプラント1の挿入及び適合を説明する。所定の器具(詳しくは図示せず)を用いて脊椎の2つの椎体間にインプラント1を挿入した後で、本体3に旋回可能に支持されていて、接触面5を介して椎体と接触している接合板4は、所定の角度だけ変位させられ、これにより、接触面5は椎体に対して最適に位置調整された状態になる。これにより、安定した快適な椎間結合を生ぜしめることができる。この場合、接合板4の変位は、ねじ又はその他の位置固定手段の追加的な締付けを必要としない。接合板4は、旋回ユニット14により旋回軸線6を中心として、所定の角度だけ傾けられてよい。最適な角度が見つかると、緊締枠9が接合板4に向かって旋回させられ、これにより、緊締枠9に形成された小突起13が、張出し部15の緊締面8に食い込み、延いてはこの緊締面8と形状結合部を形成する。しかしまた付加的に、本体3に面した緊締面8も、本体3に旋回可能に支持された緊締枠9と協働して、緊締結合部、特に力結合部を形成する。つまり緊締部材9は、緊締形態位置において接合板4の緊締面8に荷重を加える、接合板4に面した対応緊締面を有している。緊締枠9はその緊締形態位置では、ばね弾性的な部材27及び/又は力結合部により(又は摩擦結合部によっても)、本体3の外側に形成された平らな位置固定面11間に位置固定される。したがって、本発明の1つの好適な変化態様において、緊締形態位置の位置固定は、最大4つの機構により行われる:即ち、
1.好適には半径方向に変位可能な、ばね弾性的な部材27による、緊締形態位置における緊締枠9の、好適には軸方向での位置固定、
2.択一的又は補足的には、緊締枠9と緊締面8との間の力結合による位置固定、
3.択一的又は補足的には、小突起13と緊締面8との間の形状結合による位置固定、
4.択一的又は補足的には、緊締枠9と位置固定面11との間の力結合による位置固定。
【0040】
可逆的な緊締形態位置の場合には、調整されて位置固定された角度は、緊締枠9が再び本体3に向かって変位若しくは旋回させられ、延いては緊締枠9と緊締面8との間の緊締結合が解除されることにより、追加的に再度修正若しくは最適化され得る。更に、小突起13と緊締面8との間の形状結合、並びに緊締枠9と位置固定面11との間の力結合を解除する必要があり、これにより、緊締枠9は再び旋回形態位置に変位された状態になる。今、接合板4は、改めて旋回軸線6を中心として旋回可能であり、接合板4と本体3との間の角度を改めて位置調整することができる。上述した、緊締枠9を変位させて緊締形態位置に戻すことにより、接合板4延いては角度を再び位置固定することができるようになっている。非可逆的な緊締形態位置の場合には、緊締枠9の材料に2つの目標折れ箇所が形成されており(例えば刻み目若しくは弱目箇所)、これにより、緊締枠9が緊締形態位置を取っていた場合には、緊締枠9の部分を折り取ることができるようになっている。緊締枠9は、可逆的な緊締形態位置と、非可逆的な緊締形態位置の両方を有していてもよい、即ち、緊締枠9は、緊締枠9が折り取られて非可逆的な緊締形態位置を取るまでは、緊締形態位置と旋回形態位置との間で可逆的に変位可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 インプラント
2 長手方向軸線
3 本体
4 接合板
5 接触面
6 旋回軸線
7 緊締要素
8 緊締面
9 緊締枠
10 突起
11 位置固定面
12 連結部材
13 小突起
14 旋回ユニット
15 張出し部
16 結合部材受容部
17 張出し部受容部
18 結合部材用開口
19 結合部材
20 旋回手段
21 緊締要素結合部材用受容部
22 緊締要素結合部材用開口
23 緊締要素結合部材
24 補強部
25 緊締枠受容部
26 緊締枠突起
27 ばね弾性的な部材
28 周面
29 切欠き
30 接合板切抜き部
31 緊締軸線
32 緊締枠脚部
33 縁部
34 歯