特許第6429852号(P6429852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウの特許一覧

特許6429852プラスチックを結合させるための方法、及びプラスチック複合体における結合を解離させるための方法、及びプラスチック複合体
<>
  • 特許6429852-プラスチックを結合させるための方法、及びプラスチック複合体における結合を解離させるための方法、及びプラスチック複合体 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429852
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】プラスチックを結合させるための方法、及びプラスチック複合体における結合を解離させるための方法、及びプラスチック複合体
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/36 20060101AFI20181119BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B29C65/36
   C08J7/06 A
【請求項の数】1
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-253892(P2016-253892)
(22)【出願日】2016年12月27日
(62)【分割の表示】特願2014-555169(P2014-555169)の分割
【原出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-65265(P2017-65265A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年1月26日
(31)【優先権主張番号】102012201426.8
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500525405
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】コルデリア ツィメラー
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト シュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ハインリヒ
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−525433(JP,A)
【文献】 特開2001−354915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C65/00−65/82
C08J 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック間で化学反応を介して共有結合が形成されているプラスチック複合体における結合を解離させるための方法であって、プラスチックを結合させるために、結合させるべきプラスチックのうち少なくとも1つに、少なくとも1つの、5〜500nmの平均直径を有する粒子の形の導電性材料を含んでおり、かつこれらのプラスチックを部分的にのみ覆う材料を施与し、次いで、これらのプラスチックを、少なくともこの材料を伴う範囲において互いに接触させ、その後、少なくともこの範囲を少なくとも1回交流電磁場に曝し、前記結合を解離させるために、この範囲を少なくとも1回交流電磁場に曝し、その際、この範囲を、交流電磁場に、結合に用いたのよりも高い場の強度で、又は同じ場の強度で、かつ同じ時間で、しかしながら結合に用いたのよりも多くの数のパルスで曝す前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学の分野に関し、かつ、例えば自動車工業、飛行機製造、また家庭用品や日用品の製造、包装工業のような多岐にわたる工業的用途で半製品又は部品の使用特性を改善するのに使用可能なプラスチックを結合させるための方法に関する。本発明はさらに、例えば安全工学やリサイクルプロセスにおいて必要とされるような、プラスチック複合体における結合を解離させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック表面の結合については、種々の技術が公知である。その際、特にプラスチックの溶着が極めて重要である。
【0003】
原則的に、プラスチック境界層を溶着する際には、熱エネルギーを2つのプラスチックの間の境界層に導入する必要がある。境界面のアクセス容易性や形状のような特性は、それぞれの方法を用いるための重要な基準である。プラスチック溶着の公知の工業技術では熱可塑性樹脂のみが用いられている。何故ならば、熱可塑性プラスチックを直接加熱することにより(赤外線溶着、加熱要素又は加熱コイルを介した溶着)、2つのプラスチックのうち少なくとも一方のレオロジー変化(溶融物形成)が生じ、それによってのみ溶着が実現可能であるためである。溶融した範囲の冷却及び凝固の後には新たな材料構造が生じ、これが一般に2つのプラスチック間の持続的な付着性をもたらす。接合させるべき境界層(接合継目)へのエネルギー導入は、プラスチック間の堅固な結合のための重要な工程である。実地においては、多くの場合、かなりの割合のプラスチックが、接合継目に加えて一緒に可塑化されるか、又は所望の特性に関してマイナスの影響を受けている。
【0004】
応用分野に応じて、例えばレーザー溶着、加熱要素溶着、振動溶着又は超音波溶着のような種々の溶着法が用いられている。
【0005】
レーザー溶着の場合には(DE102008038014A1号;DE112007002109T5号)、プラスチック部品の少なくとも1つに、例えばカーボンブラックのような伝導性添加剤が添加される。カーボンブラック粒子による光エネルギーの吸収により、周囲のプラスチックの加熱がもたらされる。このプラスチック部品は部分的に溶融し、さらに第二のプラスチック部品との溶着が行われる。
【0006】
振動溶着では、プラスチック間に溶融域を生じさせるため、一般には固体摩擦と高い圧力が利用される(EP1346817A1号;EP1772253B1号;DE10211875A1号;DE60207248T2号)。振動は直線的に行われてもよいし、軌道を描くように行われてもよい。
【0007】
スピン溶着の場合には、接合部材の相対運動により相互に必要な熱導入が行われる。2つの接合部材のうち少なくとも一方は回転対称性を有していなければならず、かつ、プラスチック間に高い押圧力をかける必要がある(EP110914A1号;WO002009018804A2号)。
【0008】
摩擦溶着法の群におけるもう1つの方法では、高周波機械振動による分子摩擦が利用される。これは超音波溶着と称される。この場合、振動が圧力下にプラスチックへと、好ましくはシート又は比較的小さな接合面へと伝播される。
【0009】
同様に公知であるのが、プラスチックを接合するためのもう1つの方法である熱ガス溶着である。この場合、プラスチックの可塑化を達成するために、高温のガス、大抵は空気が用いられる(AU3094371A号;AU2882189A号;EP521755A1号;CH702860A1号)。
【0010】
さらにDE2851612A1号から、電流を用いたプラスチック溶着及びプラスチック液化が公知である。この場合、直流としての電流をプラスチックにおいて用いるプラスチック溶着及びプラスチック液化のために、また、局所的に高められた電場の生成のために、プラスチックに、電流が流れ得るようにするための導電性材料が導入又は施与されかつ電気力線の局所的な集中のために局所的に特定的に導入された金属屑によって、局所的に特定的な誘電損失、ひいては加熱がもたらされる。
【0011】
この場合、単純なプラスチック溶着ワイヤの代わりに、熱風溶着の際に、例えば金属屑又は金属粉のような導電性材料の導入により導電性となっている溶着ワイヤが溶着継目全体に敷設される。例えば金属の電気メッキによりプラスチック表面上に形成されている溶着ワイヤに印加された電圧によって、伝導性となっているプラスチックにおいて電流が生じる。プラスチック溶着ワイヤへの、又は溶着継目への金属屑の局所的な導入によって誘電加熱溶着の際に金属屑層への電気力線の集中が生じ、それにより、局所的に集中した損失、ひいては意図的な加熱が生じる。
【0012】
この方法の欠点は、一方で、十分な加熱を得るためには直流が必要であり、かつ電流の極めて厳密な調節を行う必要があることである。何故ならば、プラスチック表面は溶着ワイヤにおいて互いに直に接しておらず、プラスチックの熱的損傷を十分に避ける必要があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008038014号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第112007002109号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1346817号明細書
【特許文献4】欧州特許第1772253号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10211875号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第60207248号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第110914号明細書
【特許文献8】国際公開第2009/018804号
【特許文献9】豪国特許出願公開第3094371号明細書
【特許文献10】豪国特許出願公開第2882189号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第521755号明細書
【特許文献12】スイス国特許発明第702860号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第2851612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、プラスチックを結合させるための方法であって、結合させるべきプラスチックの部分的な直の接触を実現し、かつ同時に、プラスチックのこの範囲の結合を達成する方法を記載すること、並びに、プラスチック複合体における結合を解離させるための方法であって、容易な様式で実現可能である方法を記載すること、さらに、プラスチック表面の持続的で安定な結合が実現しているプラスチック複合体を記載することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、特許請求の範囲に記載されている発明により解決される。好ましい実施態様は従属請求項の対象である。
【0016】
プラスチックを結合させるための本発明による方法において、結合させるべきプラスチックのうち少なくとも1つに、少なくとも1つの導電性材料を含んでおりかつこれらのプラスチックを部分的にのみ覆う材料を施与し、次いで、これらのプラスチックを、少なくともこの材料を伴う範囲において互いに接触させ、その後、少なくともこの範囲を少なくとも1回交流電磁場に曝す。
【0017】
好ましくは、プラスチックとして熱可塑性プラスチックを使用し、さらに好ましくはポリカーボナート又はポリエステルを使用する。
【0018】
さらに好ましくは、構造化された形態の、さらに好ましくは閉じた導体ループの形態の、規則的又は不規則的な形態の、又はメアンダー形の、さらに好ましくは100μm〜10mmの寸法を有する材料を使用する。
【0019】
同様に好ましくは、材料として、球状の、楕円状の、棒状の、又は星形の、さらに好ましくは5〜500nmの平均直径を有する粒子を使用する。
【0020】
そしてまた好ましくは、シートの構成要素である材料を使用する。
【0021】
金属材料からなる、好ましくは金又は銀からなる材料を使用する場合も好ましい。
【0022】
プラスチックの最大で50%を覆う材料を施与する場合も同様に好ましい。
【0023】
接触しているプラスチックを、短時間でかつ強力な交流電磁場に曝す場合、さらに好ましい。
【0024】
そして、接触しているプラスチックを、1つのパルスでの、又は複数の短く連続するパルスでの、又は他の時間的に変化し得る形態での場の強度を有する交流電磁場に曝す場合も好ましい。
【0025】
接触しているプラスチックを、少なくとも30Tの交流電磁場に、さらに好ましくは1μs〜10ms以内曝す場合も好ましい。
【0026】
接触している表面を、交流電磁場に、比較的高い場の強度で比較的短時間以内で曝すか、又は、比較的低い場の強度で同じ時間以内で複数のパルスで曝す場合、同様に好ましい。
【0027】
さらに、プラスチック複合体における結合を解離させるための本発明による方法において、プラスチックを結合させるために、結合させるべきプラスチックのうち少なくとも1つに、少なくとも1つの導電性材料を含んでおりかつこれらのプラスチックを部分的にのみ覆う材料を施与し、次いで、これらのプラスチックを、少なくともこの材料を伴う範囲において互いに接触させ、その後、少なくともこの範囲を少なくとも1回交流電磁場に曝し、そして、この結合を解離させるために、この範囲を少なくとも1回交流電磁場に曝し、その際、この範囲を、交流電磁場に、結合に用いたのよりも高い場の強度で、又は同じ場の強度で、かつ同じ時間で、しかしながら結合に用いたのよりも多くの数のパルスで曝す。
【0028】
本発明によるプラスチック複合体は、少なくとも材料結合的に結合しておりかつその結合の範囲においてせいぜい部分的に互いに結合しているに過ぎない少なくとも2つのプラスチックからなっており、その際、その結合の範囲において、少なくとも1つの導電性材料を含む材料が存在している。
【0029】
好ましくは、材料結合的な結合は化学反応を介してなされている。
【0030】
本発明により、結合させるべきプラスチックの部分的な直の接触を実現し、かつ同時にプラスチックのこの範囲の結合を達成する方法が初めて記載される。同様に、本発明により、プラスチック複合体における結合を解離させるための方法であって、容易でかつ残滓のない様式で結合の解離が実現可能である方法が初めて記載される。さらに、本発明による解決法によって、プラスチック表面の持続的で安定な結合が実現されているプラスチック複合体が初めて公知となる。
【0031】
このことは、結合させるべきプラスチックのうち少なくとも1つに、少なくとも1つの導電性材料を含んでおりかつこれらのプラスチックを部分的にのみ覆う材料を施与することにより達成される。次いで、これらのプラスチックを、少なくともこの材料を伴う範囲において互いに接触させ、さらに、少なくともこの範囲を1回又は数回交流電磁場に曝す。
【0032】
プラスチックとして、本発明によれば、電気伝導性でもなく熱伝導性でもないものを使用する。好ましくは、熱可塑性プラスチック、並びに付加的に官能性結合基をも含むプラスチックが本発明による解決法に好適である。好ましくは、ポリカーボナート又はポリエステルを使用することができる。
【0033】
材料として、少なくとも1つの導電性材料を含むものを使用する。これは、好ましくは金属材料であってよい。
【0034】
この材料は、構造化されていないか又は構造化された形態で存在及び/又は施与することができる。構造化されていない形態の材料は、例えば、球状の、楕円状の、棒状の、又は星形であり、好ましくは5〜500nmの平均直径を有する粒子であってよい。このような構造化されていない粒子を、その後、構造化された形態でプラスチックに施与することができる。さらに、しかしまた、例えば閉じた導体ループの形態の、規則的又は不規則的な形態の、又はメアンダー形の、さらに好ましくは100μm〜10mmの寸法を有する構造化された形態の材料をプラスチックに施与することもできる。材料の平均直径は、好ましくは溶着させるべきプラスチックの粗さの範囲内である。材料は、プラスチックに施与するシートの構成要素であってもよい。それによって、プラスチック上の材料の構造の分布及び配置又は配向をより良好に制御することができる。
【0035】
材料は、プラスチックをいかなる場合にも部分的にのみ覆っており、それによって、これらのプラスチックの中間にある範囲を互いに結合させることができる。この被覆は、好ましくはそれぞれのプラスチックの最大で50%である。
【0036】
次いで、プラスチックを、少なくともこの材料が存在している箇所で接触させ、その後、少なくともこの範囲を少なくとも1回、しかしまた数回、交流電磁場に曝す。
【0037】
好ましくは、この範囲を、短時間で(1〜10μs)かつ強い(60〜100T)交流電磁場に曝す。本発明によれば、結合させるべきプラスチック全体を交流電磁場に曝すことも可能である。
【0038】
その際、交流電磁場の場の強度を、1つのパルスで、又は複数の短く連続するパルスで、又は他の時間的に変化し得る形態で印加することができる。
【0039】
好ましくは、接触しているプラスチックを、磁場強度の変化が好ましくは1T/ms〜40T/msである交流電磁場に曝す。
【0040】
本発明によれば、接触しているプラスチックを、比較的高い場の強度を有する電磁場の変化に比較的長時間以内曝すか、又は、比較的低い場の強度を有する電磁場の変化に比較的短時間以内曝す場合、さらに好ましい。さらに、接触しているプラスチックを、場の強度の変化が比較的少ない周期的に変化し得る電磁場に比較的長時間曝すことも好ましい。
【0041】
前記課題はさらに、プラスチックの結合を解離させるための方法によって解決される。その際、結合が、上に記載したプラスチックを結合させるための方法により実現されていることが決定的に重要である。そのような結合を、プラスチックの結合を解離させるための本発明による方法により解離させることができる。
【0042】
このことは、本発明によれば、結合されたプラスチックの少なくとも1つの範囲を、結合の生成に用いたのよりも高い場の強度で、又は同じ場の強度で、結合の生成に用いたのよりも短い時間で交流電磁場に曝すことにより達成される。それにより、存在する結合が開かれる。
【0043】
そのようにして解かれた結合を、材料を再度施与し、さらに電磁場を印加することによって再度生成させ得ることは、殊に有利である。
【0044】
生じた本発明によるプラスチック複合体は、少なくとも材料結合的に結合しておりかつその結合の範囲においてせいぜい部分的に互いに結合しているに過ぎない少なくとも2つのプラスチックからなる。結合の範囲において、複合体は少なくとも1つの導電性材料を含む材料を有している。好ましくは、材料結合的な結合はプラスチックの化学反応を介して一緒になされている。
【0045】
通常、2つ以上のポリマーは互いに結合し得ない。化学反応と、それに伴って生じ得る共有結合の形成は、まずもって官能性結合基の存在により、さらに活性化エネルギーの達成後に可能となる。通常、活性化エネルギーは熱の供給によってのみ達成可能である。ポリマーは原則的に劣悪な熱伝導体であるため、多くの場合隠れているポリマー−ポリマー−境界層に必要とされる温度が達するためには著しいエネルギーをかける必要がある。これは極めてしばしばポリマー材料の熱分解を招くため、このような経路でのポリマー間の熱誘導反応は不可能である。
【0046】
本発明による解決法によって、意図的に熱エネルギーがプラスチック−プラスチック−境界層の範囲にのみ導入され、その際、プラスチックの分解や熱ひずみは生じない。その際、本発明によれば、必要とされる活性化エネルギーの結合が交流電磁場を介して生じ、この交流電磁場により、少なくとも1つの導電性材料を含む材料にプラズモン振動及び/又は渦電流が誘導されるが、これは、いかなる場合にも少なくとも1つの導電性材料を含む材料への電流の直接の印加によっては生じない。材料は、少なくとも2つのプラスチックを接合させる前に少なくとも1つのプラスチックに施与されるため、プラスチックの接合後はプラスチック−プラスチック−境界層中に存在する。1回誘導されたプラズモン振動又は渦電流は、電気抵抗により、局所的に限定された短時間の加熱をもたらす。プラスチックの活性化エネルギーが達成されると、化学反応及びプラスチック間の共有結合の形成が生じる。残りのプラスチック材料の熱的な変化は生じない。化学結合により共有結合が生じない場合には、プラスチック表面の結合は本発明によれば物理的な相互作用により行われる。
【0047】
本発明による解決法により、エネルギー導入をプラスチック境界層のみにおいて実現することができ、かつ、プラスチック体積のエネルギーによるひずみ、特に熱ひずみは生じない。
【0048】
本発明による解決法の利点は、以下の点である:
− 熱に起因する遅延がわずかであること、
− プラスチック−プラスチック−境界層へ意図的にエネルギーを導入すること、
− 交流電磁場の作用時間が短いこと、
− ほぼ同時に溶着すること、
− 内側の境界層におけるプラスチック厚さは制約を受けず、何故ならば、交流電磁場はプラスチックと相互作用しないためであること、
− 周囲雰囲気を自由に選択できること、
− 製造及び反応経過が煩雑でないこと、
− 極めて大きな作業間隔が可能であること、
− 方法を幅広く様々に変えることができ、かつ、強度、パルス長、パルス繰返し数といった磁場の調節や、材料、サイズ、形態といった材料の設計により、それぞれのプラスチックへの適合が可能であること、
− 他の化学添加剤や触媒が不要であること、
− 結合範囲及び境界層の形状、例えばサイズ、形態に制限がないこと、
− 物理的効果のみに基づくのではなく、さらに境界層における共有結合の形成によって、安定で永続的な結合付着性が得られること、
− ポリマー材料への反作用なしに、プラスチック−プラスチック−境界層にわたって化学反応が生じること、
− 新規の特性を有する新規のポリマー複合体が製造されること。
【0049】
公知のプラスチック溶着法に対して、本発明による解決法は、一方では堅固で永続的な複合体結合を目指すものである。この方法を、極めて多様なプラスチック系へ極めて柔軟に適用することができる。冷却の際に、ポリマー材料の熱収縮は生じない。本発明による方法はほぼ同時に作用するため、極めて短い接合時間を示し、かつ接合継目の形状における自由選択性をも有する。しかし同時に、交流電磁場の作用のバリエーションによって、本発明により、結合と、この結合の解離とを実現することができ、かつ同時に、このプロセスを数回連続して繰り返すことができる。
【0050】
本発明を実施例につき詳説する。
【0051】
図1は、本発明による複合体形成の概略断面図を示す。
【0052】
スキーム1は、ポリカーボナートとポリビニルアミンとの化学的結合形成に関する反応例を示す。
【0053】
スキーム2は、ポリカーボナートとポリビニルアミンとの化学的結合複合体の解離に関する反応例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明による複合体形成の概略断面図。
【実施例】
【0055】
寸法1cm×1cmのビスフェノールA系ポリカーボナート(PC)製プラスチック成形体試料を、寸法1cm×1cmのアミノ基官能化ポリビニルアミン(PVAm)製プラスチック成形体と結合させる。ポリカーボナート(PC)のガラス転移温度は約145℃であり、ポリビニルアミン(PVAm)に関しては約130℃である。
【0056】
PC製プラスチック体に、寸法:外径5mm、環幅1mm、環厚さ150nmの金製の環を施与する。それにより、プラスチックの被覆度約10%を実現する。
【0057】
その後、結合すべきPC製プラスチック体及びPVAm製プラスチック体を、上に環が存在している範囲において互いに接触させ、これら2つの物体を60Tの電磁パルスに7ms曝す。
【0058】
活性化エネルギーの導入後に引き起こされる結合反応は、以下に示す通りに行われる:
【化1】
【0059】
生じるPCとPVAmとの複合体は、境界層中に、変化していない環を有しており、かつ、直に接している範囲において、化学反応により2つのプラスチックの共有結合が実現されている。複合体は付着性が高くかつ耐久性を有している。
【0060】
新たに交流電磁場を、2回、それぞれ10T/msで作用させて、この化学結合プラスチック複合体の解離を行う。その際、このプラスチック複合体の境界層の内部で化学結合の切断が生じる。加熱状態で、エネルギー導入の間又はすぐ後に、2つのプラスチック成形部材の分離が生じる。
【0061】
【化2】
【符号の説明】
【0062】
1 プラスチック1、
2 プラスチック2、
1’ プラスチック2と組み合わせたもの、
2’ プラスチック1と組み合わせたもの、
3 表面上の材料、
3’ 境界層中の材料、
4 交流電磁場、
I 結合前のプラスチック、
II 組み合わせたがまだ結合させていないプラスチック、
III 交流電磁場の作用
図1