(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6429897
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 5/25 20060101AFI20181119BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20181119BHJP
C09D 121/00 20060101ALI20181119BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20181119BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20181119BHJP
H01B 3/46 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
C09D5/25
C09D183/06
C09D121/00
C08L83/04
C08L21/00
H01B3/46 E
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-562746(P2016-562746)
(86)(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公表番号】特表2017-511417(P2017-511417A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】CN2014075414
(87)【国際公開番号】WO2015157914
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】クイ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー, キン
(72)【発明者】
【氏名】ジン, ツォウ
(72)【発明者】
【氏名】グァン, ツェン
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−26735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/25
C09D 183/06
C09D 121/00
C08L 83/04
C08L 21/00
H01B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温加硫性(RTV)シリコーンと、架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーと、触媒とを含む、硬化性組成物であって、前記ゴム及び/又はエラストマーが、前記組成物に初期の強度を与えるものであり、前記RTVシリコーンと前記架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーとの割合が重量で1:2〜15:1の範囲であり、
前記RTVシリコーンが、ヒドロキシルシリコーン樹脂を含み、
前記架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーが、フルオロエラストマー(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリレートゴム(ACM)、ポリウレタンゴム(PUR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリスルフィドゴム(PSR)、クロロヒドリンゴム(CO)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記触媒が、チタン錯体、ジブチル錫ジアセテート、(テトラメチルグアニジノ)プロピルトリエトキシシラン、ジブチル錫ジラウレート、及びオクタン酸第一スズからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
電気又は電子の素子又は装置の絶縁保護塗布用の、硬化性組成物。
【請求項2】
前記RTVシリコーンが、アルコキシルシリコーン樹脂を更に含み、
前記アルコキシルシリコーン樹脂が、メトキシルシリコーン樹脂、エトキシルシリコーン樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーが、フルオロエラストマー(FKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記RTVシリコーンと前記ゴム及び/又はエラストマーとの割合が、重量で1:1.5〜10:1の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
架橋剤、共架橋剤、補強材料、接着促進剤、顔料、調光剤、難燃剤、表面変性剤、増粘剤、レオロジー変性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤の量が、前記RTVシリコーンの量に基づいて0.1重量%〜20重量%である、請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、室温加硫性(RTV)シリコーン組成物に関する。特に、本発明は、電気又は電子の素子又は装置の絶縁保護塗布用のRTVシリコーン組成物に関する。本発明は更に、シリコーン組成物から得られた又は得ることが可能な物品、及びその組成物の調製方法に関する。
【0002】
[背景技術]
電気市場には、絶縁、耐熱エージング、耐UVエージング、及び接着強度を含む特性を有する材料で保護される必要がある、張力クランプ、母線接続、及びアンテナなどの電気及び電子素子が多数存在する。
【0003】
米国特許第5,412,324A号は、長期の屋外暴露に耐えうる電気母線上の絶縁被覆を開示する。絶縁被覆は、ポリ塩化ビニル、マイラー、及びエポキシ、特にエポキシ樹脂などのポリマーによって作られることができる。
【0004】
米国特許第6,548,763B2号は、ポリマーマトリックス樹脂をベースとする液体又はペースト状のキャスティング組成物を開示する。キャスティング組成物は、カプセル化された形態の選択された疎水性若しくは撥水性化合物又はそのような化合物の混合物を均一な分布で含む。
【0005】
米国特許第7,232,609B2号は、低粘度を有するポリジオルガノシロキサン液体の大部分を含む一液型RTVオルガノポリシロキサンゴム組成物のモノリシック保護被覆を有する、ポリマーベースの高電圧絶縁体を開示する。
【0006】
米国特許第7,553,901B2号は、低粘度を有するオルガノポリシロキサン、有機シリコーン化合物又は部分加水分解縮合物、及び非芳香族アミノ基含有化合物を含む、電気及び電子部品を保護するためのRTVシリコーン組成物を開示し、該組成物は、封入又は密封された部品を硫黄含有ガスによる腐食から防ぐ又は腐食を遅らせることができる。
【0007】
典型的には、シリコーン被覆は、エポキシ樹脂の被覆と比べて、低い反応度及び低い毒性を有する。通常使用されるシリコーンは、表面に塗布される前に硬化され不活性であるHTVゴム、又は表面に塗布されるまで活性で典型的には液体状態であるRTVゴムのどちらかである。
【0008】
既知であるように、液剤を作る際に通常使用される低粘度を有するRTVシリコーンは、被覆工程中に泡が導入され、絶縁性能に影響を及ぼすので、鋭い輪郭など特別な形状を有する継手又は部品上への塗布には適していない。
【0009】
[発明の概要]
一態様では、本発明は、操作及び塗布、熱伝導度、電気絶縁、耐UV及び熱エージング、並びに金属、半導体、木などの基材との良好な接着強度に関する改善の少なくとも1つを含む特性を有する硬化性組成物を提供することを目的とする。好ましくは、硬化性組成物の形状は、十分な強度及び優れた自己融着性能を有して、必要に応じて変化してもよい。
【0010】
したがって、本発明は、10,000cps超の粘度を有する室温加硫性(RTV)シリコーン、及び初期の強度を与える架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーから調製される硬化性組成物を提供する。硬化性組成物は、テープ状及びプラスティシン状の両方の塗布特性を有する配合として形成されてもよい。
【0011】
本発明の一態様では、RTVシリコーンと、架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーとを含む硬化性組成物であって、ゴム及び/又はエラストマーが、該組成物に初期の強度を与えるものである、硬化性組成物が提供され、シリコーンとゴム及び/又はエラストマーとの割合は、重量で1:2〜15:1の範囲、好ましくは重量で1:1.5〜10:1の範囲、好ましくは重量で1:1〜5:1の範囲、より好ましくは重量で1.5:1〜3:1の範囲である。例えば、シリコーンとゴム及び/又はエラストマーとの割合は、重量で2:1である。
【0012】
好ましくは、RTVシリコーンは、10,000g/mol〜3,000,000g/mol、好ましくは100,000g/mol〜2,000,000g/mol、より好ましくは500,000g/mol〜2,000,000g/molのMnを有する。例えば、RTVシリコーンは、1,000,000g/molのMnを有する。「Mn」は「数平均分子量」を指す。
【0013】
好ましくは、RTVシリコーンは、少なくとも10,000cps、好ましくは10,000cps〜2,000,000cps、より好ましくは100,000cps〜1,500,000cps、更により好ましくは300,000cps〜1,000,000cpsの粘度を有する。例えば、RTVシリコーンは、400,000cps又は800,000cpsの粘度を有する。RTVシリコーンの粘度は、ASTM D 2196−1999に準じて、回転(Brookfield)粘度計で測定される。
【0014】
好ましくは、ゴム及び/又はエラストマーは、100℃で少なくとも10、好ましくは100℃で20〜200の範囲、好ましくは100℃で40〜150の範囲、より好ましくは100℃で50〜100の範囲のムーニー粘度(ML1+4)を有する。
【0015】
好ましくは、ゴム及び/又はエラストマーは、ブチルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0016】
好ましくは、硬化性組成物は、100℃で3〜100の範囲、好ましくは100℃で4〜60の範囲、好ましくは100℃で8〜50の範囲、より好ましくは100℃で15〜40の範囲のムーニー粘度(ML1+4)を有する。例えば、硬化性組成物は100℃で20のムーニー粘度(ML1+4)を有する。
【0017】
一実施形態では、本発明による硬化性組成物は更に、架橋剤、触媒、共架橋剤、補強材料、接着促進剤、顔料、調光剤、難燃剤、表面変性剤、増粘剤、レオロジー変性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む。
【0018】
本発明の更に別の態様では、RTVシリコーンと、架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーとを、重量で1:2〜15:1、好ましくは重量で1:1.5〜10:1の範囲、好ましくは重量で1:1〜5:1の範囲、より好ましくは重量で1.5:1〜3:1の範囲の割合でブレンドする工程を含む、本発明による硬化性組成物を調製する方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様では、本発明による硬化性組成物から得られた又は得ることが可能な物品が提供される。
【0020】
本発明の別の態様では、硬化を受けた本発明による組成物を含む装置が提供される。
【0021】
本発明の更に別の態様では、物品を保護される表面に塗布する工程、及び物品を水分に曝して物品を水分下で硬化させる工程を含む、本発明による物品を使用する方法が提供される。
【0022】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0023】
[発明の詳細な説明]
以下に、本発明の実施形態がより詳細に説明される。
【0024】
一実施形態では、本発明は、室温加硫性(RTV)シリコーンと、架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーとを含む、硬化性組成物であって、ゴム及び/又はエラストマーが、組成物に初期の強度を与えるものであり、シリコーンとゴム及び/又はエラストマーとの割合が重量で1:2〜15:1の範囲である、硬化性組成物を提供する。
【0025】
本明細書で使用するとき、RTVシリコーンは、RTVシリコーンが活性であり、水分との反応で環境温度にて架橋され得る限り、特に限定されない。例えば、RTVシリコーンは、式(I)のヒドロキシル末端シリコーン又は式(II)の部分を含むアルコキシ末端シリコーンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0026】
【化1】
式中、R
1及びR
2は独立に、H、置換された又は置換されていないC1〜12アルキル、C2〜12アルケニル、C2〜12アルキニル、C1〜12アルコキシル、及びC6〜12アリールからなる群から選択され、かつ、nは、1,000〜3,000,000、好ましくは100,000〜2,000,000、より好ましくは500,000〜2,000,000の整数である。
【0027】
【化2】
式中、Rはそれぞれ独立に、置換された又は置換されていないC1〜12アルキル、具体的にはC1〜10アルキル、より具体的にはC1〜6アルキル、更により具体的にはメチル又はエチルからなる群から選択される。
【0028】
前述のように、RTVシリコーンは、大気に存在する水分で、環境温度にて架橋され硬化され得る。一般に、硬化速度は、環境温度及び湿度、並びに架橋剤及び/又は触媒の有無に依存する。例えば、ヒドロキシル末端RTVシリコーンの架橋反応機構は、一般に以下のとおりである。
【0030】
ケトンタイプ、オキシムタイプ及びアルコールタイプなど、いくつかの異なるタイプの架橋反応がある。
【0031】
好ましくは、RTVシリコーンは、ヒドロキシルシリコーン、メトキシシリコーン、エトキシシリコーン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0032】
RTVシリコーンは、10,000g/mol〜3,000,000g/mol、好ましくは100,000g/mol〜2,000,000g/mol、より好ましくは500,000g/mol〜2,000,000g/molのMnを有してもよい。RTVシリコーンの分子量は、高粘性を示すように選択されるべきである。したがって、RTVシリコーンは、10,000cps以上、好ましくは10,000cps〜2,000,000cps、より好ましくは100,000cps〜1,500,000cps、更により好ましくは300,000cps〜1,000,000cpsの粘度を有する。例えば、RTVシリコーンは、500,000cpsの粘度を有するヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含む。
【0033】
架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーは、硬化性組成物に初期の強度を与える。組成物が硬化すると、ゴム及び/又はエラストマーが、架橋されたシリコーンネットワークの全体にわたって分散され、均一に相互浸透するポリマーネットワークを形成する。ゴム及び/又はエラストマーは、連続的なリニア構造で、架橋されたシリコーンネットワークに分散されることも可能である。
【0034】
更に、ゴム及び/又はエラストマーは、金属製等の基材又は構造の表面への組成物の接着強度を低下させない。ゴム又はエラストマーはRTVシリコーンとブレンドされ、相分離なく実質的に均一な硬化性組成物を得ることができる。好ましくは、ゴム又はエラストマーは耐熱性及び耐エージング性である。
【0035】
文脈中、「部分的に架橋されたゴム」とは、完全に架橋されない、好ましくは90%以下の架橋度を有する、より好ましくは75%以下の架橋度を有する、及び最も好ましくは50%以下の架橋度を有するゴムを指す。
【0036】
ゴム及び/又はエラストマーは、ムーニー粘度(ML1+4)が100℃で少なくとも10、好ましくは100℃で20〜200の範囲、好ましくは100℃で40〜150の範囲、より好ましくは100℃で50〜100の範囲であってもよい。例えば、ゴム及び/又はエラストマーは、100℃でのムーニー粘度が50である。ムーニー粘度は、材料、特にゴムの変形性の測定値である。低いムーニー粘度は高い変形性を示し、高いムーニー粘度は低い変形性を示す。ゴム及び/又はエラストマーのムーニー粘度は、硬化性組成物が容易に自己融着でき、十分な初期の強度も有するように選択されてもよい。したがって、硬化性組成物は、特殊形状の金属構造体上に塗布されるのに十分な柔軟性を有する。
【0037】
架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーは、ブチルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリレートゴム(ACM)、ポリウレタンゴム(PUR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリスルフィドゴム(PSR)、及びクロロヒドリンゴム(CO)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。好ましくは、ゴム及び/又はエラストマーは、ブチルゴム、フルオロエラストマー(FKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0038】
好ましくは、ゴム及び/又はエラストマーは、有利に燃焼を遅らせる性能、熱伝導性能、UVエージング及び熱エージング性能、及び電気絶縁性能など、追加の利点を与えるように選択される。例えば、架橋されていない又は部分的に架橋されたブチルゴムは、電気絶縁、熱伝導度、接着強度、及びコストを考慮して、本発明では好ましくは使用される。
【0039】
硬化性組成物は、テープ状又はプラスティシン状の形であり得る。強さ及び粘着性能という意味では、硬化性組成物は、100℃で3〜100の範囲、好ましくは100℃で4〜60の範囲、より好ましくは100℃で8〜40の範囲のムーニー粘度(ML1+4)を有する。ムーニー粘度は、当該技術分野において一般的な方法で測定されてもよい。
【0040】
文脈中、「プラスティシン状」とは、べたつかずに任意の形状に練ることができる組成物又は物品を指し、「テープ状」とは、基材上にテープのように巻かれることができるようにある強さを有するプラスティシン状の組成物又は物品を指す。
【0041】
硬化性組成物は更に、架橋剤、触媒、共架橋剤、補強材料、接着促進剤、顔料、調光剤、難燃剤、表面変性剤、増粘剤、レオロジー変性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を含み得る。
【0042】
特に、架橋剤、触媒、及び任意選択の共架橋剤は、RTVシリコーンが水分に曝されて短時間以内にネットワーク構造を形成するような量で組成物中に加えられる。好ましくは、組成物の架橋速度は、架橋剤及び触媒の種、並びに、操作者が組成物を塗布するための十分な時間を与えるようにそれらの量を選択することで制御可能である。
【0043】
架橋剤は、アルコキシ官能性硬化剤、アセトキシ官能性硬化剤、オキシミノ官能性硬化剤、ケト官能性硬化剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、架橋剤は、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリ(イソプロペニルオキシ)シラン、メチルトリメチルエチルケトキシメシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラエトキシシラン、及びエチルトリアセトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0044】
より好ましくは、架橋剤は、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシランなどの少なくとも1つのアルコキシシランを含む。アルコキシルシラン架橋剤は、組成物の中程度の架橋速度を可能にし、その速度は、一方では組成物が短時間で硬化することを可能にし、他方では操作者が組成物を塗布するのに速すぎないのが有利である。
【0045】
架橋剤は、RTVシリコーンの量に基づいて、0.1重量%〜20重量%、好ましくは1%重量〜10重量%、より好ましくは3重量%〜8重量%の量で、組成物に加えられてもよい。
【0046】
硬化触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、及びジブチル錫ジオクテートなどのアルキル錫エステル化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、及びチタンイソプロポキシオクチレングリコールなどのチタン酸及びチタンキレート;ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2−エチルオクト酸亜鉛、2−エチルヘキソ酸鉄、2−エチルヘキソ酸コバルト、2−エチルヘキソ酸マンガン、ナフテン酸コバルト、及びアルコキシアルミニウム化合物などの有機金属化合物;酢酸ベンジルトリエチルアンモニウムなどの四級アンモニウム塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム及びシュウ酸リチウムなどの低級脂肪酸アルカリ金属塩;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(テトラメチルグアニジノ)プロピルトリエトキシシランなどのグアニジルを含有するシラン又はシロキサン、及び上記のうちの1つ又は2つ以上を含む混合物が挙げられる。より好ましくは、触媒は、チタン錯体、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウリル、2−エチルヘキサン酸錫などのスズ塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0047】
チタン錯体は、アルコキシルシラン架橋剤と結合することができ、組成物の中程度の架橋速度を可能にすることが判明したので、とりわけ、チタン錯体が本発明の組成物中に触媒として好ましく使用される。
【0048】
触媒、特に、チタン錯体は、RTVシリコーンの量に基づいて、0.5重量%〜10重量%、好ましくは1%重量〜8重量%、より好ましくは2重量%〜6重量%の量で組成物に加えられてもよい。
【0049】
硬化前後に、組成物が改善された強さを有するように、補強材料が混合されてもよい。更に、補強材料は組成物の粘度を増加させ得る。好適な補強充填剤としては、超微粒子状シリカ、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、沈降シリカ、珪藻土、酸化鉄、酸化チタン、及び酸化アルミニウムなどの金属酸化物、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムなどの金属窒化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸亜鉛などの金属炭酸塩、アスベスト、ガラス綿、粉末マイカ、溶融シリカ粉末、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリプロピレンなどの合成樹脂粉末等が挙げられる。
【0050】
これらの補強充填剤は、組成物の特性に不利な影響を及ぼさない任意の所望量で加えられてもよい。例えば、補強充填剤は、RTVシリコーンの量に基づいて、10重量%〜300重量%、好ましくは30%重量〜240重量%、より好ましくは60重量%〜180重量%の量で、組成物に加えられる。
【0051】
好ましくは、充填剤は、使用に先立って水を除去するために前もって乾燥される。一実施形態では、補強材料は、ヒュームドシリカ、CaCO
3、酸化チタン、マイカ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0052】
接着促進剤、顔料、調光剤、難燃剤、表面変性剤、増粘剤、レオロジー変性剤などの他の添加剤が、本発明の組成物に加えられてもよい。一実施形態では、組成物は、γ−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、カーボンブラック、DecaBDE、三酸化アンチモン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0053】
硬化性組成物は、混合物を形成するために、RTVシリコーンと、架橋されていない又は部分的に架橋されたゴム及び/又はエラストマーとをブレンドする工程を含む方法によって調製されてもよく、RTVシリコーンとゴム及び/又はエラストマーとの割合は、重量で1:2〜15:1の範囲、好ましくは重量で1:1.5〜10:1の範囲、好ましくは重量で1:1〜5:1の範囲、より好ましくは重量で1.5:1〜3:1の範囲である。ブレンドする工程は更に、架橋剤、触媒、共架橋剤、補強材料、接着促進剤、顔料、調光剤、難燃剤、表面変性剤、増粘剤、レオロジー変性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成成分を加える工程、及び混合物をブレンドして均一に形成する工程を含んでもよい。方法は、混合物を所望の形状に成形する更なる工程を含んでもよい。好ましくは、ブレンドする工程は真空条件下で実行されてもよい。
【0054】
あるいは、ブチルゴムなど架橋されていない又は部分的に架橋されたゴムが、活性触媒及び架橋剤以外の構成成分とブレンドされて、第1の複合体を形成する。RTVシリコーン、補強材料、並びに活性触媒及び架橋剤以外の任意選択の構成成分が、第1の複合体とブレンドされ、第2の複合体を形成する。次いで、触媒、架橋剤、及び接着促進剤などの活性構成成分が第2の複合体の中に分散され、硬化性組成物を形成する。ブレンド又は分散は、従来のニーダー又はミキサーによって行うことができる。
【0055】
硬化性組成物は、塗布の方法に基づいて、パッド、プレート、シート、フィルム、ロッド、テープ、ペースト、又はプラスティシンの形で、物品に成形又は形作られてもよい。当該技術分野において通常使用されるニーダー、押出機、又はカレンダーが、物品の調製に使用されてもよい。例えば、シート状物品は、本発明による組成物を押出加工又はカレンダー成形に供することを含む方法によって得られる。物品は、長期保管に適合するパッケージ化されたキットを形成するように、防水又は真空の包装体に入れられることができる。
【0056】
硬化性組成物又は物品の調製、形成、保管、配達の間に、偶然の又は副次的な硬化が起こり得ることに注目すべきである。即ち、本発明の硬化性組成物又は物品は、環境下で実質的に硬化性である、部分的に硬化された形状の組成物を含む。
【0057】
硬化性組成物又は物品は、金属で作られた電気誘導性の基材などの基材の表面に塗布されてもよい。具体的には、硬化性組成物又は物品は特に、張力クランプ、母線接続、又はアンテナなどの電気素子又は電子素子の特殊形状の構造体上に塗布される。次いで、組成物又は物品は、周囲環境下で水分硬化され、硬化した層又は継手を備えた製品が得られる。
【0058】
以下、本発明が以下の実施例からより完全に理解及び認識されよう。なお、実施例は本発明を説明する目的のためであって、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0059】
特に指定されない限り、各構成成分の量は重量部に基づく。
【0060】
原材料:
実施例で使用する原材料を下表1に列挙する。
【0061】
【表1】
【0062】
調製及び試験
混合物Aの調製:異なる粘度を有するシリコーンの選択及び評価
107シリコーン、補強材料Aerosil 8200、難燃剤F1、及び補強材料及び表面変性剤の両方として機能するCaCO
3を表2に示す量でブレンドし、ニーダーで均一混合物Aを形成した。混合物A1〜A7は、異なる粘度を有する107シリコーンの混合物Aを表わす。
【0063】
【表2】
【0064】
混合物A1〜A7は、プラスティシン状の性能を評価した。特に、混合物を、べたつかずに任意の形状に練ることができる場合のプラスティシン状として等級付けした。評価によると、10,000cps以上の粘度を有するシリコーン(混合物A2〜A7)は、プラスティシン状の複合体を形成するために有用であったが、5,000cpsの粘度を有するシリコーン(混合物A1)は、望ましいプラスティシン状の複合体を容易に産生しなかった。
【0065】
ヒュームドシリカ及びCaCO
3などの補強材料は、粘度を増加させることができ、プラスティシン状の複合体を形成するために役に立った。
【0066】
しかしながら、増加した粘度を有し、ヒュームドシリカ及びCaCO
3などの補強材料を使用したにもかかわらず、シリコーンは、プラスティシン状の複合体よりも操作を容易にするテープ状の複合体を形成させるのは難しい。
【0067】
混合物Bの調製
混合物Aにブレンドすることができる、ブチルゴムのような架橋されていないゴム又はエラストマーを含有する混合物Bを調製した。
【0068】
調光剤カーボンブラックN550及び難燃剤F1の更なる部を、架橋されていないブチルゴム、NBR、及びFKMにそれぞれ表3に示す量で、真空条件下でニーダーで分散させ、均一混合物Bを形成した。混合物B1〜B3は、上記の組成物の異なる量を有する混合物Bを表わす。
【0069】
【表3】
【0070】
混合物Aとブレンドされるときに初期の強度を提供するように、これらのゴム又はエラストマーを含有する混合物Bを以下の実施例で用いる。
【0071】
パッド試料1〜15の調製:異なる量での混合物Bの選択及び評価
混合物A(A2、A5、又はA7)を、表4に示す量でブチルゴムを含有する混合物B1とブレンドし、架橋剤D20、触媒D62、及び接着促進剤KH560を107シリコーンの重量に基づいてそれぞれ6%、3%及び1%の量で加え、ニーダーで硬化性組成物を得た。次に、硬化性組成物は、異なる用途に対応するように、所望の形状のパッドに成形することができる。実施例では、硬化性組成物をパッドに成形し、試料1〜15を得た。
【0072】
銅製の基材上に可撓性を有するパッドを巻くことで、パッド試料のテープ状の性能の評価を行い、試料は、プラスティシン状であり、かつ一定の強度を有して基材上にテープのように巻かれることができる場合に、テープ状として等級付けされた。
【0073】
試料の自己融着性能を混練によって評価し、試料は、混練時に肉眼で見える跡がなく融着する場合に、自己融着として等級付けされた。
【0074】
試料と銅製基材との接着強度を、GB/T 2790−1995に基づいて、条件:180°剥離、1インチの幅、50ミリメートル/秒で測定した。
【0075】
【表4】
【0076】
表4から、一定量の混合物Bは、良好なテープ状及び自己融着性能を有するパッド試料を形成するために役に立つことが分かる。混合物Bの量の範囲は、混合物Aに使用されたシリコーンの粘度と関係することが観察された。
【0077】
パッド試料16〜39の調製:異なる量での補強材料の選択及び評価
表5に示すように、異なる量のCaCO
3及びヒュームドシリカAerosil 8200など補強材料を用いたことを除けば、上記の試料2、5及び8と同じ手順で試料16〜39を得た。
【0078】
上述した試料1〜15に関して記載したのと同じ方法で、試料のプラスティシン状、テープ状、及び自己融着の性能、並びに銅製基材との接着強度を評価した。
【0079】
【表5】
【0080】
表5中の項目「混合物B1の割合」とは、ヒュームドシリカ、F1及びCaCO
3を含むシリコーンの量に対する混合物B1の量の割合を指し、試料2、16〜23、5、24〜31では、重量で3:7に、試料8、32〜39では、重量で2:8に、それぞれ割合が固定された。
【0081】
表5は、異なる量のCaCO
3及びヒュームドシリカを有するパッド試料の性能を示す。CaCO
3及びヒュームドシリカなどの補強材料の量は、良好なテープ状及び自己融着の性能を有するパッド試料を形成するために役に立つことが分かる。補強材料の量は、シリコーンの粘度及び混合物B1の量と関係したことが観察される。
【0082】
表5から、補強材料は、硬化性パッドの初期の強度を改善するための更なる材料として使用することができることが分かる。
【0083】
パッド試料40〜45の調製及び評価
1,000,000cpsの粘度を有するシリコーンを含有する混合物A7を、表6に示す量で混合物B2又はB3とブレンドし、架橋剤D20、触媒D62及び接着促進剤KH560をそれぞれ、シリコーンの重量に基づいて6%、3%及び1%の量で加え、ニーダーで均一な配合物を得た。次に、配合物を所望の形状のパッドに成形した。
【0084】
上述した試料1〜15に関して記載したのと同じ方法で、試料のプラスティシン状、テープ状、及び自己融着の性能、並びに銅製基材との接着強度を評価した。
【0085】
【表6】
【0086】
表6はRTV/FKM、RTV/NBR系パッドの性能を示す。表から、RTVシリコーンをブチルゴム以外の他のゴム又はエラストマーとブレンドし、同等な結果が得られることが分かる。
【0087】
異なる架橋剤及び触媒を有するパッド試料46〜57の調製及び評価
1,000,000cpsの粘度を有するシリコーンを含有する混合物A7を、ブチルゴムを含有する混合物B1とブレンドし、異なる架橋剤(D10、D20、D30、又はC1)及び触媒(D62、D80、又はC2)を接着促進剤KH560と共に表7に示す量で加え、ニーダーで均一な配合物を得た。次に、配合物を所望の形状のパッドに成形した。表7では、ブチルゴムを含有する混合物B1を3:7の重量比で混合物A7とブレンドした。
【0088】
【表7】
【0089】
試料1〜15に関して記載したのと同じ方法で、試料のプラスティシン状、テープ状、及び自己融着の性能、並びに銅製基材との接着強度を評価した。試料46〜57の全てが同等の望ましい結果を達成した。
【0090】
これらの試料から得た硬化したパッドに対して、以下の更なる試験を行った。
破壊電圧:GB\T507−2002準拠
難燃性性能:UL−94準拠
UVエージング性能:GB\T1865−1997準拠、2000時間
【0091】
熱エージング性能:硬化したパッドを120℃のオーブン内で2000時間熱エージングにふした。次に、エージングしたパッドの破壊電圧の試験を行った。破壊電圧20kV・mm
−1超が、熱エージング試験合格とする。
【0092】
試験の結果を下表8に要約した。
【0093】
【表8】
注記:「N/A」は、硬化速度が速すぎるために、硬化したパッドの接着強度を正確に試験することができないことを意味する。
【0094】
表8から、架橋剤D20及び触媒D62を有する試料49〜51から得た硬化したパッドが、硬化速度に関してより良い性能を有することが分かる。他の架橋剤及び触媒もまた、周囲環境に曝されたときの硬化が速すぎ、塗布する際に少々困難であるにもかかわらず、有用であった。
【0095】
代表試料の試験
銅及びアルミニウムとの接着強度、破壊電圧、難燃性、UVエージング、及び熱エージングの性能は、パッドの用途に関して検討されるべきである。したがって、更に他の試料から得た硬化したパッドで、これらの特性に対する試験を行った。いくつかの代表試料の試験の結果を下表9に要約した。
【0096】
【表9】
UVエージング>2000時間、及び熱エージング>2000時間は、接着強度、破壊電圧、及び難燃性が明らかに減少しておらず、エージング後のこの製品の用途に影響を及ぼさないことを意味する。
【0097】
表9から、RTV/ブチルゴム系パッドは、良好なUVエージング及び熱エージングの特性(2000時間超)、高破壊電圧(20kV・mm
−1超)、良好な難燃性能(V1〜V0)、及び銅及びアルミニウムとの適切な接着強度(30N/cm超)を含む有利な性能を有して得ることができることが分かる。
【0098】
当業者であれば、更なる説明がなくとも、上記の説明及び上述の例示的な実施例を用いて、は、本発明の組成物を作り利用することができ、請求項に係る方法を実行することができると考えられる。
【0099】
本発明の特定の現在好ましい実施形態が本明細書で特に説明されたが、発明の属する当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に示し説明する様々な実施形態を変更及び修正することができることは明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及び準拠法によって要求される範囲においてのみ限定されるものとする。