(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による空調システムの概略構成図である。
情報通信機器が収容される設備としては、例えば、データセンタがある。データセンタは、建屋内の区画されたフロアまたは室内に、複数のサーバー等が複数のラックに収容されて、整然と配置されている。
図1は、そのような施設空間を想定し、情報通信機器としてサーバーを例に挙げて説明する。
室内には、複数のサーバー1が多段に収納された複数のラック2と、サーバー1に電力を供給するための電源装置3と、電源装置3から各サーバー1に分電する分電盤4を備えている。更に、ラック2のそれぞれに、ラック2に収容されたサーバー1を冷却する空調機5が設けられ、空調機5を制御する空調制御手段6を備えている。
【0010】
分電盤4内には、複数の配線用遮断器7が収容され、各配線用遮断器7の負荷側にはサーバー1が接続されている。また、分電盤4内の各配線用遮断器7の負荷側には、電流・電圧センサ8aを備えた電力計測手段8が設けられている。
空調制御手段6は、ラック2に設けられた空調機5を制御する空調制御部9と、プログラマブルロジックコントローラ10(以下、PLC10と略す)と、制御端末11とを有している。PLC10は、分電盤4の電力計測手段8に図示しない通信インタフェースを介して接続されている。
なお、サーバー1やラック2の個数は一例を示すものであり、図に限定するものではなく、実際には多数のラックが複数の列に配列されて構成されている。
【0011】
次に、各部の機能と作用を説明する。
電源装置3は、例えば、直流電源からなり、分電盤4の各配線用遮断器7に接続されており、配線用遮断器7を介してサーバー1に電力を供給する。このとき、分電盤4内に設けた電力計測手段8では、電流・電圧センサ8aにより配線用遮断器7に接続された負荷であるサーバー1に供給される電流値と電圧値を計測し、演算処理により負荷に供給されている電力値を求める。電力計測手段8は、空調制御手段6のPLC10の要求に応じて、求めた電力値をPLC10に送信する。空調制御手段6の制御端末11は、PLC10と接続されており、PLC10の設定情報の入力や変更する機能、また空調の状況をビジュアル的に表示する機能を備えている。
【0012】
PLC10には、予め、サーバー1の位置情報(例えば、どのラックのどの段に収納されているか等)と、電力計測手段8とを関連付けた相関データを保有している。こうすることで、例えば、
図1で分電盤4の最上段の配線用遮断器7から得られる電力値は、ラックBの最上段のサーバー1の情報であることが分かる。このような相関データを、全てのサーバー1に対して取得し記憶させておく。
また、各空調機5が受け持つサーバーグループ(
図1では、ラック単位)の電力値と空調機5の冷却能力の相関を、電力値−冷却能力特性として予め把握しておき、そのデータもPLC10に準備しておく。
【0013】
図2は、電力値−冷却能力特性の一例を説明する図である。横軸に電力値、左縦軸にサーバーの発熱量及び空調機の冷却能力、右縦軸に温度を示している。図中に細線で示すのはサーバーの発熱量、太線で示すのは空調機の冷却能力である。また、破線で示すのは、空調機を働かせた時のサーバーの機器温度の推移を参考に図示したものである。
負荷であるサーバー1の発熱量は、サーバー1に供給される電力に比例する。したがって、供給される電力値が増えるとサーバー1の温度が上がるので、所定温度(例えば、図のa点)以上になれば空調機を働かせ、サーバーの温度の上昇に比例して空調機の空調能力増やしていけば、発熱が増える分が空調機で冷却されて、サーバー1の機器温度をほぼ一定に保つことができる。
【0014】
配線用遮断器7がON状態であればそれに接続されたサーバー1は使用電力に応じて発熱するが、OFFの場合はそれに繋がるサーバー1の発熱はない。また、サーバー1の稼働状況によっても電力値は変わる。電力計測手段8は、各サーバー1に供給される電力値を計測して求める。
空調制御手段6では、PLC10が電力計測手段8に指令を出して電力値を受信し、ラック単位で電力値を集計することで、ラック2毎の使用電力が分かる。したがって、用意した電力値−冷却能力特性データと位置情報とを参照して、ラック単位の使用電力量に合わせて、空調制御部9を介して対応するラック2に搭載した空調機5に対し、その冷却能力の調整を行う。こうすることで、ラック2単位でサーバー1の温度上昇をほぼ一定に制御することが可能となる。
【0015】
次に、上記で説明した空調システムの変形例について説明する。
図3は、
図1の空調システムの変形例を示す空調システムの構成図である。
図1と同等部分は同一符号を付して説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図1では、分電盤とは別に空調制御手段を備えていたが、
図3では、分電盤の中に空調制御手段を設けたものである。空調制御手段以外の分電盤の内部は
図1と同様である。
図3に示すように、この分電盤12は、内部に空調制御手段13を備えている。空調制御手段13は、
図1の空調制御手段6と同等の機能を備えている。すなわち、空調制御手段13はその内部にPLC10を有すると共に空調制御部9と同等の機能を備えている。
【0016】
電源装置3から配線用遮断器7を経由して負荷であるサーバー1に電力を供給する。電力計測手段8は電流・電圧センサ8aで負荷に供給される電源の電流値と電圧値を計測し演算処理により負荷の電力値を求め、空調制御手段13からの要求に応じ負荷の電力値を空調制御手段13へ送信する。
空調制御手段13には、
図1の場合と同様に、予めサーバー1の設置位置(列、段)と電力計測手段8との相関と、各空調機5が受け持つサーバー1の電力値と空調機5の冷却能力の相関を、電力値−冷却能力特性として予め把握しておき、そのデータを準備している。
空調制御手段13は、電力計測手段8から受信した電力値をラック2単位で集計し、相関データを参照してラック2単位で空調機5の冷却能力を制御することで、ラック2単位でサーバー1の温度をほぼ一定に制御できる。
【0017】
次に、以上までに説明した空調システムを、より具体的に、データセンタに適用した場合を説明する。
図4及び
図5は、
図1の空調システムをデータセンタに適用した場合の、サーバーと空調システム全体の斜視図である。
図1と同等部分は分かりやすいように同一符号で示す。
複数のサーバー1がラック2に多段に収納され、3列に配列されている。空調機5は、各ラック2単位に設置されており、
図4は、空調機5をラック2の上部に配置した場合であり、
図5はラック2の下部に配置した場合である。電源装置の図示は省略しているが、分電盤4に繋がっており、分電盤4を経由して各サーバー1に電力が供給される。また、空調制御手段である空調制御装置6は各空調機5に接続されている。
【0018】
空調方法は、
図1,2で説明した通りであり、サーバー1の配置位置と電力値の情報に基づき電力値の高いサーバー1を収納するラック2に設置された空調機5の冷却機能を高め、電力値の低いサーバー1を収納するラック2に設置された空調機5は冷却機能を下げるように制御する。
例えば、
図4,5において、網掛けで示すラック2aに収納された各サーバー1に供給される合計電力値が高いとすれば、この情報を分電盤4内の電力計測手段で把握し、空調制御装置6に伝えられるので、ラック2aの上部または下部に設けた空調機5aの空調機能を高めるように制御することで、発熱量の大きいサーバーグループ、この場合はラック2aをラック単位で重点的に冷却することができる。
なお、
図4及び
図5は、
図1に対応させて、分電盤4と空調制御装置6を個別に設けた構成であるが、
図3のように、分電盤内に空調制御手段を設ける構成にしても良い。
【0019】
図6は、空調システムをデータセンタに適用した、更に別の例を示す斜視図である。
これまでの説明では、冷却するサーバーグループがラック単位であったが、
図6は、空調機5をラック2の列単位で設けたものである。すなわち、冷却するサーバーグループを列単位とし、配列されたラック2の列に収納された複数のサーバー1をグループとして、1台の空調機5を対応させたものである。
ラック列単位で、そのラック列に収納されたサーバーの電力値と、対応する空調機の冷却能力との電力値−冷却能力特性データと、サーバーの配置位置の位置情報を予め用意しておき、上記と同様の方法でラック列単位に最適の空調制御を行うものである。
例えば、
図6に網掛けで示すラック列が電力値の高いサーバーのある配列群とすれば、その列に設置された空調機5aの冷却機能を高め、それ以外の電力値の低いサーバーのあるラック列に設置された空調機5は冷却機能を下げることで、発熱量の大きいサーバーのあるラック列を重点的に冷却できる。
【0020】
なお、分電盤4と空調制御装置6は、予め用意する相関データを、ラック単位からラック列単位に換えることで、
図4または
図5の場合と同じものを使用できる。
また、本願の空調システムを適用する施設をデータセンタとして説明したが、これに限定するものではなく、区画された室内に複数の情報通信機器が整然と収容される設備の空調全般に適用することができる。
【0021】
以上のように、実施の形態1の空調システムによれば、情報通信機器を多段に収納した複数のラックが整列して配置された設備を空調する空調システムであって、電源装置からの電力を分配して各情報通信機器に供給する分電盤と、分電盤内に設けられて各情報通信機器に供給される電力値を計測する電力計測手段と、情報通信機器を複数のグループに分け、グループに対応して設けられた空調機と、空調機を制御する空調制御手段と、を有し、空調制御手段では、電力計測手段で計測された電力値をグループ毎に集計し、集計した電力値に応じてグループに対応する空調機を制御するように構成されているので、発熱量と電力量の相関を利用して電力監視によりグループ単位での空調制御を行うことで、情報通信機器の発熱程度に応じて局所的に効率よく空調制御を行うことができるため、空調システム全体の電力消費を低減することができる。
また、サーバー,ストレージ,ルーター等の情報通信機器が収容されたデータセンタにおいて集約処理を行う場合には、機種毎、ラック毎の消費電力量の差が大きいので、局所的に空調制御を行う効果が大きい。
【0022】
また、空調制御手段は、分電盤の外部に設けられているので、一般の空調機の空調制御装置に空調制御手段を組み込んで、本システムを構築することができる。
【0023】
また、空調制御手段は、分電盤の内部に設けられているので、空調制御手段を設置する個別の設置スペースを必要としないため、全体の設置スペースを縮小できる。
【0024】
また、情報通信機器のグループは、ラック単位とし、空調機は、ラックの上方または下方にラック単位に設けられているので、ラック単位で使用電力に応じてきめ細かく空調制御を行うことができるため空調システム全体の電力消費を効果的に低減することができる。
【0025】
更にまた、情報通信機器のグループは、配列されたラックの列単位とし、空調機は、ラックの列方向の端面に設けられているので、空調機の設置個数を抑えながら、ラック列単位で使用電力に応じた空調制御を行って空調システム全体の電力消費を低減することができる。
【0026】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2による空調システムをデータセンタに適用した場合の、サーバーと空調システム全体の斜視図である。実施の形態1の
図4と同等部分は同一符号を付して説明は省略する。
【0027】
複数のサーバー1が多段に収納されたラック2を複数配列したラック列が複数列あり、分電盤4と空調制御装置6が室内に配置されているのは、
図4と同じである。しかし、空調機(図示せず)はラック2に直接搭載されてはなく、データセンタの室14の天井部及び側壁部に設置されている。そして、1台の空調機で冷却を担当するサーバーグループを予め決めておき、天井部及び側壁部に設ける空調機の吹き出し位置を、それぞれのサーバーグループに対応させて、複数箇所に設ける。図では吹き出し位置の吹き出し方向を矢印で示している。サーバーグループとの対応はダクトを用いれば柔軟に行うことができる。
【0028】
サーバーグループの配置情報及び電力値と、対応する空調機の冷却能力との相関データを予め用意して空調制御装置6に記憶させておく。
実施の形態1と同様に、分電盤4に搭載された電力計測手段で各サーバー1の電力値を計測し,空調制御装置6においてサーバーグループの電力値を集計し、相関データに基づき使用電力値に応じて対応する空調機を制御する。こうすることで、電力値の高いサーバーグループに対応する空調機の吹出口からの冷却能力を高め(一例として、図中に網掛けと太矢印で示す)、電力値の低いサーバーグループに対応する空調機の吹出口からの冷却能力を下げることができる。
なお、空調機は天井側と壁面側とに設置したもので説明したが、少なくともいずれかに一方に設置されていれば良い。
【0029】
以上のように、実施の形態2の空調システムによれば、情報通信機器のグループは、予め決められた複数のラック単位とし、空調機は、決められた複数のラックに対応させて、設備が収容される室の天井部または側壁部に設けられているので、空調制御を部屋全体ではなくスポットで行うことによって、発熱の高い情報通信機器に対して局所的に効率よく空調制御を行うことができるため、空調システム全体の電力消費を低減して、電力コストを低減することができる。
また、情報通信機器が配置される室に備えられた空調設備を利用できるので、実施の形態1に比較して、空調システムのコストを低減できる。
【0030】
なお、本願発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変更、省略したりすることが可能である。