特許第6430006号(P6430006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6430006タービンエンジンにおいて使用するための、トランジションダクトと第1列ベーンアセンブリとの間のシールアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430006
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】タービンエンジンにおいて使用するための、トランジションダクトと第1列ベーンアセンブリとの間のシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/28 20060101AFI20181119BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20181119BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   F02C7/28 C
   F01D25/00 M
   F01D25/24 P
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-523523(P2017-523523)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公表番号】特表2017-538063(P2017-538063A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】US2014062499
(87)【国際公開番号】WO2016068857
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー エル. スキアヴォ
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0200046(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0123797(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/161906(WO,A1)
【文献】 米国特許第08459041(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/28
F01D 25/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジションダクトの下流端部に関連したトランジションシール構造と、ガスタービンエンジンの第1列ベーンアセンブリにおけるベーン構造の上流端部に関連したベーンシール構造と、の間のシールアセンブリであって、該シールアセンブリは、
内側シール部材および外側シール部材を含む第1のシール構造を有し、各シール部材は、L字形またはV字形を備える各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、該第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有しており、各シール部材は、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方のエッジから前記接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有しており、
前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記シール部材のうちの一方が、他方のシール部材の前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置されるように、重なり合った関係で配置されており、これにより、前記内側シール部材および前記外側シール部材のそれぞれの接続部が互いに隣接しており、
前記内側シール部材および前記外側シール部材のうちの両方の、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方が、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されており、
前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記内側シール部材の切欠のうちの少なくとも幾つかが、前記外側シール部材の切欠と周方向で整列しないように配置されていることを特徴とする、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記スロットは、全体が、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの一方によって画成されている、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部および前記第2の脚部は、対応する第1のスロットおよび第2のスロットに収容されており、前記第1のスロットは、少なくとも部分的に前記トランジションシール構造によって画成されており、前記第2のスロットは、少なくとも部分的に前記ベーンシール構造によって画成されている、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの少なくとも一方から、前記内側シール部材および前記外側シール部材に形成された対応する回転防止スロット内へ延びる回転防止ピンをさらに有し、該回転防止ピンは、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの少なくとも一方に対する前記内側シール部材および前記外側シール部材の周方向移動を妨げる、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記内側シール部材および前記外側シール部材は、あいじゃくり状に配置されており、前記内側シール部材の第1の周方向端部は、前記外側シール部材の第1の周方向端部と周方向で整列しておらず、前記内側シール部材の第2の周方向端部は、前記外側シール部材の第2の周方向端部と周方向で整列していない、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記ベーンシール構造は、環状のベーンシールリテーナを有しており、該ベーンシールリテーナは、前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方を収容するスロットを少なくとも部分的に画成しており、前記環状のベーンシールリテーナは、前記ベーンシール構造に対する前記シール構造の半径方向移動を妨げるための、前記シール構造の半径方向束縛を提供する、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記トランジションシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のトランジションシールリテーナを有し、該トランジションシールリテーナは、集合的に、前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部を収容するスロットを少なくとも部分的に画成している、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記ベーンシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のベーンシールリテーナを有し、該ベーンシールリテーナは、集合的に、前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第2の脚部を収容する第2のスロットを少なくとも部分的に画成している、請求項7記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
サイドシールをさらに有し、該サイドシールは、前記第1のシール構造から半径方向に延びており、前記トランジションシール構造と、周方向で隣接するトランジションダクトのトランジションシール構造との間の間隙をシールする、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記第1のシール構造は、前記トランジションシール構造の半径方向外側部分に関連した外側シール構造を有し、さらに、
内側シール部材および外側シール部材を含む内側シール構造を有する第2のシール構造を有し、該第2のシール構造の各シール部材は、L字形またはV字形を備える各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、該第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有しており、各シール部材は、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方のエッジから前記接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有しており、
前記第2のシール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記シール部材のうちの一方が、他方のシール部材の前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置されるように、重なり合った関係で配置されており、これにより、前記第2のシール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材のそれぞれの接続部が互いに隣接しており、
前記第2のシール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材のうちの両方の、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方が、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されており、
前記第2のシール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記内側シール部材の前記切欠のうちの少なくとも幾つかが、前記外側シール部材の前記切欠と周方向で整列しないように配置されている、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
トランジションダクトの下流端部に関連したトランジションシール構造と、ガスタービンエンジンの第1列ベーンアセンブリにおけるベーン構造の上流端部に関連したベーンシール構造との間のシールアセンブリにおいて、該シールアセンブリは、
内側シール部材および外側シール部材を含む外側シール構造を有し、各シール部材は、L字形またはV字形を備える各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、該第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有しており、
前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記シール部材のうちの一方が、他方のシール部材の前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置されるように、重なり合った関係で配置されており、これにより、前記内側シール部材および前記外側シール部材のそれぞれの接続部が互いに隣接しており、
前記内側シール部材および前記外側シール部材のうちの両方の、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方は、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されており、かつ、
前記内側シール部材および前記外側シール部材を含む内側シール構造を有し、該内側シール構造の各シール部材は、L字形またはV字形を備える各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、該第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有しており、
前記内側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記シール部材のうちの一方が、他方のシール部材の前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置されるように、重なり合った関係に配置されており、これにより、前記内側シール部材と前記外側シール部材とのそれぞれの接続部は互いに隣接しており、
前記内側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材のうちの両方の、前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方が、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されていることを特徴とする、シールアセンブリ。
【請求項12】
前記外側シール構造および前記内側シール構造の前記スロットは、全体が、前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のそれぞれ1つによって画成されている、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項13】
前記内側シール構造および前記外側シール構造のそれぞれの前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部および前記第2の脚部は、対応する第1のスロットおよび第2のスロットに収容されており、前記第1のスロットは、少なくとも部分的に前記トランジションシール構造によって画成されており、前記第2のスロットは、少なくとも部分的に前記ベーンシール構造によって画成されている、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項14】
前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの少なくとも一方から、それぞれの前記内側シール構造および前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材に形成された対応する回転防止スロット内へ延びる、それぞれの外側回転防止ピンおよび内側回転防止ピンをさらに有し、該回転防止ピンは、それぞれの前記トランジションシール構造および前記ベーンシール構造のうちの少なくとも一方に対する前記外側シール構造および前記内側シール構造の対応する前記内側シール部材および前記外側シール部材の周方向移動を妨げる、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項15】
前記ベーンシール構造は、前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第2の脚部を収容するスロットを少なくとも部分的に画成する環状のベーンシールリテーナを有しており、該環状のベーンシールリテーナは、前記ベーンシール構造に対する前記外側シール構造の半径方向移動を妨げるために前記外側シール構造のための半径方向束縛を提供し、前記トランジションシール構造は、さらに、前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部を収容する第2のスロットを少なくとも部分的に画成する少なくとも1つの軸方向トランジションシールリテーナを有しており、該軸方向トランジションシールリテーナは、前記トランジションシール構造に対する前記外側シール構造の軸方向移動を妨げるために前記外側シール構造の軸方向束縛を提供する、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項16】
前記トランジションシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のトランジションシールリテーナを有し、該トランジションシールリテーナは、集合的に、前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第1の脚部を収容する、前記外側シール構造に関連したスロットを少なくとも部分的に画成している、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項17】
前記ベーンシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のベーンシールリテーナを有し、該ベーンシールリテーナは、集合的に、前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材の双方の前記第2の脚部を収容する、前記外側シール構造に関連した第2のスロットを少なくとも部分的に画成している、請求項16記載のシールアセンブリ。
【請求項18】
サイドシールをさらに有し、該サイドシールは、前記外側シール構造から前記内側シール構造まで半径方向に延びており、前記トランジションシール構造と、周方向で隣接するトランジションダクトのトランジションシール構造との間の間隙をシールする、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項19】
前記内側シール構造および前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材のそれぞれは、それぞれの前記シール部材の前記第1の脚部および前記第2の脚部のうちの少なくとも一方のエッジから対応する接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有する、請求項11記載のシールアセンブリ。
【請求項20】
前記内側シール構造および前記外側シール構造の前記内側シール部材および前記外側シール部材は、前記内側シール部材の切欠のうちの少なくとも幾つかが、対応する前記外側シール部材の切欠と周方向で整列しないように配置されている、請求項19記載のシールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンにおいて使用するためのシールアセンブリに関し、より詳細には、トランジションダクトの下流端部と、エンジンのタービンセクションへの入口における第1列ベーンアセンブリとの間のシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃焼可能なガスタービンエンジンは、圧縮機セクションと、複数の燃焼器を有する燃焼セクションと、タービンセクションとを有する。周囲空気は、圧縮機セクションにおいて圧縮され、燃焼セクション内の燃焼器へ搬送される。燃焼器は、圧縮空気を燃料と組み合わせ、混合物を点火し、乱流形式で高速で流れる高温の作動ガスを生成する燃焼生成物を発生する。作動ガスは、複数のトランジションダクトを介してタービンセクションへ送られる。タービンセクション内には、固定ベーンアセンブリおよび回転ブレードアセンブリの複数の列が設けられている。回転ブレードアセンブリはタービンロータに結合されている。作動ガスがタービンセクションを通って膨張するとき、作動ガスは、ブレードアセンブリ、ひいてはタービンロータを回転させる。タービンロータは、発電機に接続されてもよく、タービンロータの回転は、発電機において電気を発生するために使用することができる。
【0003】
トランジションダクトは、燃焼器に隣接して配置されており、第1列ベーンアセンブリに関連したタービン入口構造を通じて作動ガスをタービンセクションへ案内する。トランジションダクトとタービン入口構造とは異なる材料から形成されているので、異なる量の熱成長を生じる。すなわち、トランジションダクトおよびタービン入口構造の双方は、それぞれの構成部材の熱成長の結果、互いに対して半径方向、周方向および/または軸方向に移動し得る。すなわち、タービンセクション内へ通過する作動ガスと、ガスタービンエンジン内の構造を冷却するために使用される冷却空気、すなわち低温の圧縮機排出空気との間の漏れを最小限に減じるために、シールアセンブリが、通常、ガスタービンエンジンにおいて、トランジションダクトとタービン入口構造との間において使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、シールアセンブリは、トランジションダクトの下流端部に関連したトランジションシール構造と、ガスタービンエンジンの第1列ベーンアセンブリにおけるベーン構造の上流端部に関連したベーンシール構造との間に設けられている。シールアセンブリは、内側シール部材および外側シール部材を有する第1のシール構造を有しており、各シール部材は、L字形またはV字形を有する各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、第1の脚部との接続部から横方向に延びる軸方向に延びる第2の脚部とを有している。各シール部材は、第1の脚部および第2の脚部の少なくとも一方のエッジから接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有する。内側シール部材および外側シール部材は、シール部材の一方が、他方のシール部材の第1の脚部と第2の脚部との間に配置されるように、重なり合う関係で配置されており、これにより、内側シール部材および外側シール部材のそれぞれの接続部が、互いに隣接する。内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部の少なくとも一方は、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されている。内側シール部材および外側シール部材は、内側シール部材の切欠のうちの少なくとも幾つかが外側シール部材の切欠と周方向で整列しないように配置されている。
【0005】
スロットは、全体が、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの一方によって画成されていてもよい。
【0006】
内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部は、対応する第1のスロットおよび第2のスロットに収容されてもよく、第1のスロットは、少なくとも部分的にトランジションシール構造によって画成されており、第2のスロットは、少なくとも部分的にベーンシール構造によって画成されている。
【0007】
シールアセンブリは、さらに、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの少なくとも一方から、内側シール部材および外側シール部材に形成された対応する回転防止スロット内へ延びる回転防止ピンを有してもよく、回転防止ピンは、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの少なくとも一方に対する、内側シール部材および外側シール部材の周方向移動を妨げる。
【0008】
内側シール部材および外側シール部材は、あいじゃくり状に配置されてもよく、内側シール部材の第1の周方向端部は、外側シール部材の第1の周方向端部と、周方向で整列しておらず、内側シール部材の第2の周方向端部は、外側シール部材の第2の周方向端部と、周方向で整列していない。
【0009】
ベーンシール構造は、環状のベーンシールリテーナを有してもよい。ベーンシールリテーナは、少なくとも部分的に、内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部のうちの少なくとも一方を収容するスロットを画成しており、環状のベーンシールリテーナは、ベーンシール構造に対するシール構造の半径方向移動を妨げるための、シール構造の半径方向束縛を提供する。
【0010】
トランジションシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のトランジションシールリテーナを有してもよい。トランジションシールリテーナは、集合的に、内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部を収容するスロットを少なくとも部分的に画成している。
【0011】
ベーンシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のベーンシールリテーナを有してもよい。ベーンシールリテーナは、集合的に、内側シール部材および外側シール部材の双方の第2の脚部を収容する第2のスロットを少なくとも部分的に画成している。
【0012】
シールアセンブリは、さらに、サイドシールを有してもよい。サイドシールは、第1のシール構造から半径方向に延びており、トランジションシール構造と、周方向で隣接するトランジションダクトのトランジションシール構造との間の間隙をシールする。
【0013】
第1のシール構造は、トランジションシール構造の半径方向外側部分に関連した外側シール構造を有してもよく、シールアセンブリは、さらに、内側シール部材および外側シール部材を有する内側シール構造を有する第2のシール構造を有してもよい。第2のシール構造の各シール部材は、L字形またはV字形を有する各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有しており、各シール部材は、第1の脚部および第2の脚部のうちの少なくとも一方のエッジから接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有する。第2のシール構造の内側シール部材および外側シール部材は、シール部材の一方が、他方のシール部材の第1の脚部および第2の脚部の間に配置されるように、重なり合う関係で配置されてもよく、これにより、第2のシール構造の内側シール部材および外側シール部材のそれぞれの接続部は、互いに隣接する。第2のシール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部の少なくとも一方は、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されてもよい。第2のシール構造の内側シール部材および外側シール部材は、内側シール部材の切欠のうちの少なくとも幾つかが外側シール部材の切欠と周方向で整列しないように配置されてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、シールアセンブリは、トランジションダクトの下流端部に関連したトランジションシール構造と、ガスタービンエンジンの第1列ベーンアセンブリにおけるベーン構造の上流端部に関連したベーンシール構造との間に設けられている。シールアセンブリは、内側シール部材および外側シール部材を有する外側シール構造を有しており、各シール部材は、L字形またはV字形を有する各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有している。内側シール部材および外側シール部材は、シール部材の一方が、他方のシール部材の第1の脚部と第2の脚部との間に配置されるように、重なり合う関係で配置されており、これにより、内側シール部材および外側シール部材のそれぞれの接続部は、互いに隣接する。内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部の少なくとも一方は、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されている。シールアセンブリは、さらに、内側シール部材および外側シール部材を有する内側シール構造を有しており、内側シール構造の各シール部材は、L字形またはV字形を有する各シール部材を提供するように、半径方向に延びる第1の脚部と、第1の脚部との接続部から横方向に延びる、軸方向に延びる第2の脚部とを有している。内側シール構造の内側シール部材および外側シール部材は、シール部材の一方が、他方のシール部材の第1の脚部と第2の脚部との間に配置されるように、重なり合う関係で配置されており、これにより、内側シール部材および外側シール部材のそれぞれの接続部は、互いに隣接する。内側シール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部および第2の脚部の少なくとも一方は、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの一方によって少なくとも部分的に画成された対応するスロットに収容されている。
【0015】
外側シール構造および内側シール構造のスロットは、全体が、トランジションシール構造およびベーンシール構造のそれぞれ1つによって画成されていてもよい。
【0016】
内側シール構造および外側シール構造それぞれの内側シール部材および外側シール部材の双方の第1および第2の脚部は、対応する第1のスロットおよび第2のスロットに収容されてもよく、第1のスロットは、少なくとも部分的にトランジションシール構造によって画成されており、第2のスロットは、少なくとも部分的にベーンシール構造によって画成されている。
【0017】
シールアセンブリは、さらに、トランジションシール構造およびベーンシール構造のうちの少なくとも一方から、それぞれの内側シール構造および外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材に形成された対応する回転防止スロット内へ延びる、それぞれの外側回転防止ピンおよび内側回転防止ピンを有してもよい。回転防止ピンは、それぞれのトランジションシール構造およびベーンシール構造の少なくとも一方に対する、外側シール構造および内側シール構造の対応する内側シール部材および外側シール部材の周方向移動を妨げる。
【0018】
ベーンシール構造は、環状のベーンシールリテーナを有してもよい。ベーンシールリテーナは、少なくとも部分的に、外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第2の脚部を収容するスロットを画成しており、環状のベーンシールリテーナは、ベーンシール構造に対する外側シール構造の半径方向移動を妨げるための、外側シール構造の半径方向束縛を提供する。トランジションシール構造は、少なくとも1つの軸方向トランジションシールリテーナを有してもよい。軸方向トランジションシールリテーナは、少なくとも部分的に、外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部を収容する第2のスロットを画成しており、軸方向トランジションシールリテーナは、トランジションシール構造に対する外側シール構造の軸方向移動を妨げるための、外側シール構造の軸方向束縛を提供する。
【0019】
トランジションシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のトランジションシールリテーナを有してもよい。トランジションシールリテーナは、集合的に、外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第1の脚部を収容する、外側シール構造に関連したスロットを少なくとも部分的に画成している。ベーンシール構造は、周方向に間隔を空けた複数のベーンシールリテーナを有してもよい。ベーンシールリテーナは、集合的に、外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材の双方の第2の脚部を収容する、外側シール構造に関連した第2のスロットを少なくとも部分的に画成している。
【0020】
シールアセンブリは、さらに、サイドシールを有してもよい。サイドシールは、外側シール構造から内側シール構造まで半径方向に延びており、トランジションシール構造と、周方向で隣接するトランジションダクトのトランジションシール構造との間の間隙をシールする。
【0021】
内側シール構造および外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材のそれぞれは、それぞれのシール部材の第1の脚部および第2の脚部のうちの少なくとも一方のエッジから対応する接続部に向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠を有してもよい。内側シール構造および外側シール構造の内側シール部材および外側シール部材は、内側シール部材の切欠のうちの少なくとも幾つかが、対応する外側シール部材の切欠と周方向で整列しないように配置されてもよい。
【0022】
明細書は、本発明を特に指摘し、かつ本発明を明瞭に請求する請求項によって結論づけるが、本発明は、同じ参照符号が同じ要素を表している添付の図面に関連した以下の説明からよりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】発明の1つの実施の形態によるシールアセンブリの一部を有するトランジションダクトの透視図である。
図2図1のシールアセンブリの外側シール構造の1つのセグメントの透視図である。
図3図1のトランジションダクトおよびシールアセンブリ、さらに、シールアセンブリを支持するためにトランジションダクトと協働するベーン構造の垂直断面図である。
図4図3に示された構造の外側部分を示す拡大図である。
図5図1のシールアセンブリの内側シール構造の1つのセグメントの透視図である。
図6図3に示された構造の内側部分を示す拡大図である。
図7図1のトランジションダクトおよびシールアセンブリ部分の一部の部分的透視図である。
図8】発明の別の実施の形態によるトランジションダクトおよびシールアセンブリ部分の透視図である。
図9】発明の別の実施の形態によるトランジションダクトおよびシールアセンブリ部分の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適な実施の形態の以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図面が参照され、図面には、例として、限定としてではなく、発明を実施可能な特定の好適な実施の形態が示されている。本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その他の実施の形態が使用されてもよく、変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0025】
図1を参照すると、本発明の1つの態様によるトランジションダクト10とシールアセンブリ12の一部とが示されている。シールアセンブリ12は、トランジションダクト10の下流端部16に関連したトランジションシール構造14と、ガスタービンエンジンの第1列ベーンアセンブリ24(図3参照)におけるベーン構造22の上流端部20に関連したベーンシール構造18と、の間に配置されており、これらによって支持されている。本明細書で説明するように、シールアセンブリ12は、トランジションダクト10からエンジンのタービンセクション28を通過する高温ガス通路26(図3参照)と、エンジン内の冷却すべき構造を冷却するための冷却流体を含むタービンセクション28内の、第1列ベーンアセンブリ24の近傍の領域と、の間の流体の漏れを制限する。すなわち、シールアセンブリ12は、これらの領域への高温ガス通路26内の高温作動ガスの漏れを制限し、また、高温ガス通路26へのこれらの領域における冷却流体の漏れを制限する。当業者によって理解されるように、ガスタービンエンジンにおける典型的なカニュラ形燃焼システムは、対応する燃焼器アセンブリに関連した、周方向に間隔を空けた複数のトランジションダクト10を有しており、第1列ベーンアセンブリ24は、タービンセクション28を通って延びるロータ(図示せず)の周囲に周方向に延びている。
【0026】
シールアセンブリ12は、シールアセンブリ12の半径方向外側部分に関連した外側シール構造30と、シールアセンブリ12の半径方向内側部分に関連した内側シール構造32とを有する(図3参照)。外側および内側シール構造30,32はそれぞれ、例えばINCONEL 718などの超合金材料の薄いシートから形成されてもよい、周方向で隣接する複数のシール構造セグメント30A,32Aから形成されている(INCONELは、ニューヨーク州ニューハートフォードに所在のSpecial Metals Corporationの登録商標である)。
【0027】
図2を参照すると、外側シール構造30は、それぞれV字形またはL字形の内側シール部材34および外側シール部材36を有する。各シール部材34,36のV字形またはL字形は、それぞれの半径方向に延びる第1の脚部34A,36Aと、対応する第1の脚部34A,36Aとの接続部34C,36Cから、横方向に、例えば約90°の角度で延びる、軸方向に延びる第2の脚部34B,36Bと、によって形成されている。図2に示すように、内側シール部材34および外側シール部材36は、重なり合った(nested)関係で配置されている。外側シール部材36は、内側シール部材34の第1の脚部34Aと第2の脚部34Bとの間に配置されており、したがって、内側シール部材34と外側シール部材36とのそれぞれの接続部34C,36Cは、互いに隣接しかつ互いに接触している。第1および/または第2の脚部34A,36A,34B,36Bは、内側および外側シール部材34,36の分離/相対移動を防止するように、互いにスポット溶接されていてもよい。
【0028】
ここで図3および図4を参照すると、内側および外側のシール部材34,36の双方の第1および第2の脚部34A,36A,34B,36Bは、少なくとも部分的に、トランジションシール構造14およびベーンシール構造18によって画成された対応するスロットに収容されている。特に、内側および外側のシール部材34,36の第1の脚部34A,36Aは、外側トランジションスロット40に収容されている。外側トランジションスロット40は、トランジションダクト10の下流端部16から半径方向外向きに延びるトランジションシール構造14の環状のフランジ42と、フランジ42に固定された、例えばボルト締結された、(本明細書では「軸方向トランジションシールリテーナ」とも称される)環状の外側シールリテーナ44と、によって画成されている。外側シールリテーナ44およびフランジ42は、また、トランジションダクト10の構造的な支持を提供するために、エンジンの周囲に延びるエンジンケーシング46の一部に固定、例えばボルト締結されている。内側および外側のシール部材34,36の第2の脚部34B,36Bは、ベーンシール構造18の環状の外側ベーンシールリテーナ52によって画成された外側ベーンスロット50に収容されている。外側ベーンシールリテーナ52もまた、エンジンケーシング46に固定、例えばボルト締結されている(図3および図4参照)。外側ベーンシールリテーナ52は、外側ベーンシールリテーナ52と、第1列ベーンアセンブリ24の外側シュラウド58との間の間隙56をシールする第1列ベーンシール54も収容している。
【0029】
内側および外側シール部材34,36の第1の脚部34A,36Aは、好適には、トランジションシール構造14に対する外側シール構造30の軸方向移動を最小限に減じるように外側トランジションスロット40内に比較的きつく収容されており、軸方向は、タービンセクション28を通る高温ガス通路26を通る高温ガス流の一般的な方向、例えば、図3に示すように左から右への方向に相当する。すなわち、内側および外側のシール部材34,36の第1の脚部34A,36Aは、好適には、エンジンの作動中に外側シール構造30およびトランジションシール構造14のうちの一方または両方の僅かな熱膨張を依然として許容しながら、トランジションシール構造14に対する外側シール構造30の軸方向移動を妨げるための、外側シール構造30の軸方向束縛を提供するように、外側トランジションスロット40内に十分にきつく収容されている。同様に、内側および外側のシール部材34,36の第2の脚部34B,36Bは、好適には、ベーンシール構造18に対する外側シール構造30の半径方向移動を最小限に減じるために、外側ベーンスロット50内に比較的きつく収容されている。すなわち、内側および外側のシール部材34,36の第2の脚部34B,36Bは、好適には、エンジンの作動中に外側シール構造30およびベーンシール構造18のうちの一方または両方の僅かな熱膨張を依然として許容しながら、ベーンシール構造18に対する外側シール構造30の半径方向移動を妨げるための、外側シール構造30の半径方向束縛を提供するように、外側ベーンスロット50内に十分にきつく収容されている。
【0030】
内側および外側のシール部材34,36の第1の脚部34A,36Aは、トランジションシール構造14によって部分的にのみ画成された外側トランジションスロット40に収容されているが、すなわち、外側シールリテーナ44は、外側トランジションスロット40の軸方向下流側を画成しているので、外側トランジションスロット40は、トランジションシール構造14によって完全に画成することができ、例えば、溝またはスロットはフランジ42から切り取られており、内側および外側のシール部材34,36の第1の脚部34A,36Aは、トランジションシール構造14によって完全に画成された外側トランジションスロット内に配置されている、ということに留意されたい。外側トランジションスロットが、トランジションシール構造14によって完全に画成される場合、外側ベーンスロット50は、外側ベーンシールリテーナ52によって部分的にのみ画成されてもよい。例えば、外側ベーンスロット50は、外側ベーンシールリテーナ52の外面52Aと、軸方向に延びるプレートまたは周方向に間隔を空けた一連のタブとの間に画成することができる。
【0031】
図1に戻り、複数の外側回転防止ピン60は、フランジ42から、内側および外側シール部材34,36に画成された対応する外側回転防止スロット34D,36D(図2参照)を通って軸方向に延びている。図1に示した外側回転防止ピン60は、外側シールリテーナ44をも通って延びているが、そうである必要はない。すなわち、外側回転防止ピン60は、外側シールリテーナ44まで延びていて、外側シールリテーナ44を通過していなくてもよい。
【0032】
図2に示したように、スロット34D,36Dは、内側および外側のシール部材34,36の第1の脚部34A,36Aに画成されており、互いに周方向で整列している。したがって、外側回転防止ピン60が内側および外側のシール部材34,36を貫通し、トランジションシール構造14およびベーンシール構造18に対する外側シール構造30の周方向(回転)移動を妨げる。図1に示した外側回転防止ピン60はトランジションシール構造14のフランジ42から軸方向に延びているが、付加的にまたは代替的に、外側回転防止ピン60は、ベーンシール構造18の外側ベーンシールリテーナ52から半径方向に延びていてもよく、その場合、スロット34D,36Dは、対応して、シール部材34,36の第2の脚部34B,36Bに配置される。
【0033】
さらに図2を参照すると、各シール部材34,36は、さらに、周方向に間隔を空けた複数の切欠66を有する。切欠66は、それぞれの第2の脚部34B,36Bのエッジ34E,36E(エッジ34E,36Eは図4に示されている)から、対応する接続部34C,36Cに向かって延びている。図2に示したように、切欠66は、シール部材34,36の接続部34C,36Cを通って、半径方向外向きに第1の脚部34A,36A内へ延びている。切欠66は、作動中、すなわち、様々なエンジン作動状態の間に加熱または冷却されたときにシール部材34,36に所定量の収縮および/または膨張を許容することによって、シール部材34,36の熱膨張を可能にする。図2に示したように、切欠66は、第2の脚部34B,36Bのエッジ34E,36Eから遠位の切欠66の端部に、拡大した部分またはキーホール66Aを有する。
【0034】
内側および外側のシール部材34,36は、内側シール部材34の切欠66のうちの少なくとも幾つか(好適には、内側シール部材34の全ての切欠66)が、外側シール部材36の切欠66と周方向で整列していない(図2参照)。したがって、少量の冷却流体を、外側シール構造30を通して、すなわち切欠66を通して調量することができるが、外側シール構造30を通る漏れの合計量は、内側および外側のシール部材34,36の切欠66が周方向で整列していないことにより、減少する。なぜならば、内側および外側シール部材34,36を通る直接的な半径方向通路が提供されていないからである。
【0035】
内側および外側のシール部材34,36はまた、あいじゃくり状(shiplap)に配置されている。内側シール部材34の第1の周方向端部34Fは、外側シール部材36の第1の周方向端部36Fと周方向で整列しておらず、内側シール部材34の第2の周方向端部34Gは、外側シール部材36の第2の周方向端部36Gと周方向で整列していない。しがたって、内側シール部材34と、周方向で隣接する外側シール構造セグメント30Aの内側シール部材34との間の周方向間隙は、外側シール部材36と、周方向で隣接する外側シール構造セグメント30Aの外側シール部材36との間の周方向間隙と周方向で整列しておらず、この結果、直接的な半径方向漏れ経路が回避されている。各セグメント30Aの第1および/または第2の脚部34A,36A,34B,36Bは、セグメント30Aの間の分離/相対移動を防止するために、隣接するセグメント30Aの第2および/または第1の脚部34B,36B,34A,36Aにスポット溶接されていてもよいが、以下で説明するように、セグメント30Aの間の接続は、エンジンの作動中、トランジションシール構造14の変形に従うためにヒンジとして機能してもよいことに留意されたい。
【0036】
図5を参照すると、内側シール構造32は、それぞれV字形またはL字形の内側および外側のシール部材74,76を有する。各シール部材74,76のV字形またはL字形は、半径方向に延びる第1の脚部74A,76Aと、対応する第1の脚部74A,76Aとの接続部74C,76Cから、横方向に、例えば約90°の角度で延びる、軸方向に延びる第2の脚部74B,76Bとによって画成されている。図5に示したように、内側および外側のシール部材74,76は、重なり合った関係に配置されており、外側シール部材76は、内側シール部材74の第1および第2の脚部74A,74Bの間に配置されており、これにより、内側および外側のシール部材74,76のそれぞれの接続部74C,76Cは、互いに隣接しかつ互いに接触している。第1および/または第2の脚部74A,76A,74B,76Bは、内側および外側のシール部材74,76の分離/相対移動を防止するために、互いにスポット溶接されていてもよい。
【0037】
ここで図3および図6を参照すると、内側および外側のシール部材74,76の双方の第1および第2の脚部74A,76A,74B,76Bは、少なくとも部分的にトランジションシール構造14およびベーンシール構造18によって画成された対応するスロットに収容されている。特に、内側および外側のシール部材74,76の第1の脚部74A,76Aは、トランジションダクト10の下流端部16から半径方向内向きに延びるトランジションシール構造14の(本明細書では「軸方向トランジションシールリテーナ」とも称される)内側フランジ82によって画成された内側トランジションスロット80に収容されている。内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bは、ベーンシール構造18の環状の内側ベーンシールリテーナ92と、環状の内側ベーンシールリテーナ92に固定、例えばボルト締結された、環状の内側シールリテーナプレート94とによって画成された内側ベーンスロット90に収容されている。
【0038】
内側および外側のシール部材74,76の第1の脚部74A,76Aは、好適には、トランジションシール構造14に対する内側シール構造32の軸方向移動を最小限に減じるために、内側トランジションスロット80内に比較的きつく収容されている。すなわち、内側および外側のシール部材74,76の第1の脚部74A,76Aは、好適には、エンジンの作動中に内側シール構造32およびトランジションシール構造14のうちの一方または両方の僅かな熱膨張を依然として許容しながら、トランジションシール構造14に対する内側シール構造32の軸方向移動を妨げるための、内側シール構造32の軸方向束縛を提供するように、内側トランジションスロット80内に十分にきつく収容されている。同様に、内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bは、好適には、ベーンシール構造18に対する内側シール構造32の半径方向移動を最小限に減じるために、内側ベーンスロット90内に比較的きつく収容されている。すなわち、内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bは、好適には、エンジンの作動中に内側シール構造32およびベーンシール構造18のうちの一方または両方の僅かな熱膨張を依然として許容しながら、ベーンシール構造18に対する内側シール構造32の半径方向移動を妨げるための、内側シール構造32の半径方向束縛を提供するように、内側ベーンスロット90内に十分にきつく収容されている。
【0039】
内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bは、ベーンシール構造18によって部分的にのみ画成された内側ベーンスロット90に収容されているが、すなわち、環状の内側ベーンシールリテーナプレート94は、内側トランジションスロット90の半径方向外側を画成しているので、内側ベーンスロット90は、ベーンシール構造18によって完全に画成することができる。例えば、溝またはスロットは環状の内側ベーンシールリテーナ92から切り取られており、内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bは、ベーンシール構造18によって完全に画成された内側ベーンスロット内に配置されている、ということに留意されたい。内側ベーンスロットが、ベーンシール構造18によって完全に画成される場合、内側トランジションスロット80は、内側フランジ82によって部分的にのみ画成されてもよい。例えば、内側トランジションスロット80は、内側フランジ82の軸方向上流または下流の面と、半径方向に延びるプレートまたは周方向に間隔を空けた一連のタブと、の間に画成することができる。
【0040】
図6に示すように、複数の内側回転防止ピン100(図6には1つのみが示されている)は、半径方向で、内側ベーンシールリテーナ92と、環状の内側シールリテーナプレート94との間に、内側および外側のシール部材74,76に形成された対応する外側回転防止スロット74D,76D(図5も参照)を通って延びている。図5に示したように、スロット74D,76Dは、内側および外側のシール部材74,76の第2の脚部74B,76Bに形成されており、互いに周方向で整列している。したがって、内側回転防止ピン100が内側および外側のシール部材74,76の双方を貫通し、トランジションシール構造14およびベーンシール構造18に対する内側シール構造32の周方向(回転)移動を妨げる。図6に示した内側回転防止ピン100は、内側ベーンシールリテーナ92から、内側シールリテーナプレート94まで半径方向に延びており、内側シールリテーナプレート94の一体的な部分として形成されているが、付加的にまたは代替的に、内側回転防止ピン100は、トランジションシール構造14の内側フランジ92から軸方向に延びることができ、スロット74D,76Dは、対応して、シール部材74,76の第1の脚部74A,76Aに配置される。
【0041】
図5に最も明らかに示されているように、各シール部材74,76は、さらに、それぞれの第2の脚部74B,76Bのエッジ74E,76Eから、対応する接続部74C,76Cに向かって延びる、周方向に間隔を空けた複数の切欠106を有する。図示した実施の形態では、切欠106は、シール部材74,76の接続部74C,76Cを貫通し、第1の脚部74A,76A内へ半径方向外向きに延びている。切欠106は、作動中、すなわち、様々な作動状態の間に加熱または冷却されたときにシール部材74,76に所定量の収縮および/または膨張を許容することによって、シール部材74,76の熱膨張を可能にする。図5に示したように、切欠106は、第2の脚部74B,76Bのエッジ74E,76Eから遠位の切欠の端部に、拡大した部分またはキーホール106Aを有する。
【0042】
さらに図5を参照すると、内側および外側のシール部材74,76は、内側シール部材74の切欠106のうちの少なくとも幾つか(好適には、内側シール部材74の全ての切欠106)が、外側シール部材76の切欠106と周方向で整列していないように、配置されている。したがって、少量の冷却流体を、内側シール構造32を通して、すなわち切欠106を通して調量することができるが、内側シール構造32を通る漏れの合計量は、内側および外側のシール部材74,76の切欠106が周方向で整列していないことにより、減少する。なぜならば、内側および外側シール部材74,76を通る直接的な半径方向通路が提供されていないからである。
【0043】
内側および外側のシール部材74,76はまた、あいじゃくり状に配置されている。内側のシール部材74の第1の周方向端部74Fは、外側のシール部材76の第1の周方向端部76Fと周方向で整列しておらず、内側のシール部材74の第2の周方向端部74Gは、外側のシール部材76の第2の周方向端部76Gと周方向で整列していない。したがって、内側シール部材74と、周方向で隣接する内側シール構造セグメント32Aの内側シール部材74との間の周方向間隙は、外側シール部材76と、周方向で隣接する内側シール構造セグメント32Aの外側シール部材76との間の周方向間隙と周方向で整列しておらず、したがって、直接的な半径方向漏れ経路が回避されている。各セグメント32Aの第1および/または第2の脚部74A,76A,74B,76Bは、セグメント32Aの間の分離/相対移動を防止するために、隣接するセグメント32Aの第2および/または第1の脚部74B,76B,74A,76Aにスポット溶接されていてもよいが、セグメント32Aの間の接続は、以下で説明するように、エンジンの作動中、トランジションシール構造14の変形に従うためにヒンジとして機能してもよいということに留意されたい。
【0044】
図1に戻り、シールアセンブリ12は、さらに、周方向で隣接するトランジションダクト10の下流端部16の間に配置された、半径方向に延びる複数のサイドシール120(図1には1つのサイドシール120が示されている)を有している。サイドシール120は、外側シール構造30から内側シール構造32まで半径方向に延びており、周方向で隣接するトランジションダクト10の間の間隙122をシールしているが、所定量の冷却流体を、所望のようにサイドシール120を通って調量することができる。
【0045】
エンジンの作動中、本明細書に記載されたシールアセンブリ12は、高温ガス通路26と、上述のようにトランジションダクト10の下流端部16および第1列ベーンアセンブリ24の近くの冷却流体を含む領域と、の間の流体の漏れを制限する。外側および内側のシール構造30,32の配置および構成は、周囲の構成部材に対してシール負荷面を再配置する。この結果、これらの構成部材の有害な応力が中和されると考えられ、これは、部材寿命を改善する。さらに、外側および内側のシール構造30,32の寿命をさらに延長させるために、従来のプラズマ溶射された摩耗コーティングを外側および内側のシール構造30,32に提供することができる。
【0046】
さらに、上述のように熱膨張を可能にすることに加え、シール部材34,36,74,76に形成された切欠66,106は、エンジンの作動中にシール部材34,36,74,76が接触する面に従うための柔軟性を備えるシール部材34,36,74,76を提供し、これにより、シールアセンブリ12のシール効率を高めている。外側および内側のシール構造30,32の内側および外側のシール部材34,36,74,76のあいじゃくり状の配列もまた、シール構造セグメント30A,32Aのそれぞれを互いに対して回動させ、作動中に外側および内側のシール構造30,32をトランジションシール構造14の変形とともにゆがめさせることによって、シールアセンブリ12のシール効率を高めている。加えて、切欠66,106の端部のキーホール66A,106Aは、応力を拡散し、シール部材34,36,74,76におけるき裂形成の傾向を低減または回避するように機能する。外側シールリテーナ44もまた、柔軟性を備える外側シールリテーナ44を提供するとともに外側シールリテーナ44におけるき裂形成の傾向を低減または回避するために、対応するキーホール(図1参照)を備える、周方向に間隔を空けた溝44Aを有してもよい。
【0047】
ここで図8および図9を参照すると、本発明の別の態様によるシールアセンブリ212が示されており、図1図7について上述したものと同じ構造は、200を加えた同一の参照番号で示されている。図1図7について上述したものとは異なる構造のみ、図8および図9について説明する。
【0048】
図8に示すように、この実施の形態によるトランジションシール構造214は、周方向に間隔を空けた、複数の外側トランジションシールリテーナ215を有する。外側トランジションシールリテーナ215は、外側シール構造230の内側および外側のシール部材234,236の双方の第1の脚部234A,236Aを収容する外側トランジションスロット240を集合的に画成している。
【0049】
この実施の形態によるベーンシール構造218は、周方向に間隔を空けた、複数の外側ベーンシールリテーナ219を有する。外側ベーンシールリテーナ219は、外側シール構造230の内側および外側のシール部材234,236の双方の第2の脚部234B,236Bを収容する外側ベーンスロット250を集合的に部分的に画成している。この実施の形態では、ベーンシール構造218の環状の外側ベーンシールリテーナ(図示せず)は、外側ベーンスロット250の内側境界を形成している。
【0050】
ここで図9を参照すると、この実施の形態によるトランジションシール構造214は、さらに、周方向に間隔を空けた複数の内側トランジションシールリテーナ217(図9には1つの内側トランジションシールリテーナ217のみが示されている)を有している。内側トランジションシールリテーナ217は、内側シール構造232の内側および外側のシール部材274,276の双方の第1の脚部274A,276Aを収容する、内側トランジションスロット280を集合的に画成している。
【0051】
この実施の形態によるベーンシール構造218は、さらに、周方向に間隔を空けた、複数の内側ベーンシールリテーナ221を有している。内側ベーンシールリテーナ221は、内側シール構造232の内側および外側のシール部材274,276の双方の第2の脚部274B,237Bを収容する内側ベーンスロット290を集合的に部分的に画成している。この実施の形態では、ベーンシール構造218の環状の内側ベーンシールリテーナ(図示せず)は、内側ベーンスロット290の内側境界を形成している。
【0052】
シールアセンブリ212の残りの構造および機能は、上述のシールアセンブリ12のものと同じである。
【0053】
本発明の特定の実施の形態について例示し説明してきたが、本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々なその他の変更および改変をなし得ることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明の範囲に包含される全てのこのような変更および改変を、添付の請求項において網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9