特許第6430209号(P6430209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6430209燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430209
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20181119BHJP
   H01M 8/04291 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20181119BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20181119BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04291
   H01M8/04746
   H01M8/04828
   H01M8/04537
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-215699(P2014-215699)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-1587(P2016-1587A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0070475
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】チョン、クィ、ソン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ヘン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】クム、ヨン、ボム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、サン、ボク
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−053182(JP,A)
【文献】 特開2007−012419(JP,A)
【文献】 特表2001−519081(JP,A)
【文献】 特開2010−165463(JP,A)
【文献】 特開2013−109949(JP,A)
【文献】 特開2013−125604(JP,A)
【文献】 特開2006−252864(JP,A)
【文献】 特表2012−530925(JP,A)
【文献】 特開2012−139484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックに、第1周波数と前記第1周波数より高い第2周波数を有する電流を同時に印加する段階と、 前記印加された電流に応じて、前記燃料電池スタックから出力される電流と電圧をフーリエ変換する段階と、
前記変換された出力電流および電圧のうち、前記第1周波数および前記第2周波数の電圧と電流の振幅および位相を用いて第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部を演算する段階と、
前記演算された第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさおよび第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさに応じて前記燃料電池スタックの水分含量の状態を診断する段階とを含んでなり、
前記診断された燃料電池スタックの水分含量の状態によって前記燃料電池スタックの状態を複数の状態に分類する段階をさらに含み、
前記分類された状態のうちどの状態に属するかによって、前記燃料電池スタックの空気流量、空気圧力、水素流量、水素圧力および水素排出量を含む複数の因子を可変させる段階をさらに含み、
前記複数の状態は、所定の境界値によって前記水分含量の高い順に分類された第1状態〜第5状態を含み、
前記複数の因子を可変させる段階は、
前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第1状態に属する場合、前記燃料電池スタックの空気流量、水素圧力、水素流量および水素排出量を増加させ、空気圧力は減少させ、
前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第2状態に属する場合、前記燃料電池スタックの水素流量を増加させ、空気流量を増加させ、
前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第4状態に属する場合、前記燃料電池スタックの空気流量および水素圧力を減少させ、
前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第5状態に属する場合、前記燃料電池スタックの水素流量および空気圧力を増加させ、空気流量および水素圧力を減少させることを特徴とする、燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項2】
前記第1周波数が100Hz以上であり、前記第2周波数が1Hz〜100Hzであることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項3】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、
前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさに対応して既にマッピングされた燃料電池スタックの状態マップに基づいて、前記演算された実数部および虚数部の大きさに応じて前記燃料電池スタックの状態を診断する段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項4】
前記燃料電池スタックの状態マップは、
前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさを複数の所定の境界値によって複数の状態に分類し、分類された状態と前記燃料電池スタック内の水分含量との関係が既にマッピングされた状態マップであることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項5】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、
前記演算された実数部および虚数部の大きさが前記分類された状態のうちどの状態に属するかによって前記燃料電池スタックの水分含量を判断する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項6】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、
前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさに対応して、パージロジックが実現されたパージロジック診断器の出力を用いて前記燃料電池スタックの状態を診断する段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項7】
前記パージロジック診断器の出力は前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさによって決定され、前記パージロジック診断器の出力は所定の境界値によって複数の状態に分類されることを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【請求項8】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、
前記分類された複数の状態のうちどの状態に属するかによって前記燃料電池スタックの水分含量を判断する段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池スタックの状態診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法に係り、特に、多重周波数の電流を印加することにより、多重周波数のインピーダンスの大きさを用いて燃料電池スタックの内部水分状態、たとえば燃料電池スタックのドライアウト/フラッディングなどを把握することができる、燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、動力源として使用する複数の燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックや、燃料電池スタックに燃料としての水素などを供給する燃料供給システム、電気化学反応に必要な酸化剤としての酸素を供給する空気供給システム、燃料電池スタックの温度を制御する水/熱管理システムなどを含む。
【0003】
燃料供給システムは、水素タンク内部の圧縮水素を減圧してスタックの燃料極(アノード)へ供給し、空気供給システムは、空気ブロワーを作動させ、吸入した外部空気をスタックの空気極(カソード)へ供給する。
【0004】
スタックの燃料極に水素が供給されるとともに空気極に酸素が供給されると、燃料極では触媒反応を介して水素イオンが分離される。分離された水素イオンは電解質膜を介して空気極としての酸化極へ伝達される。酸化極では、燃料極で分離された水素イオンと電子及び酸素が共に電気化学反応を起こすことにより、電気エネルギーを得ることができる。具体的に、燃料極では水素の電気化学的酸化が起こり、空気極では酸素の電気化学的還元が起こる。この際、生成される電子の移動により電気と熱が発生し、水素と酸素とが結合する化学作用によって水蒸気または水が生成される。
【0005】
燃料電池スタックの電気エネルギー生成過程で発生する水蒸気と、水および熱などの副産物と反応しない水素および酸素などを排出するために排出装置が設けられ、水蒸気、水素および酸素などのガスは排気通路を介して大気中に排出される。
【0006】
燃料電池を駆動するための空気ブロワー、水素再循環ブロワー、ウォーターポンプなどの構成は、メインバス端に連結されて燃料電池の始動を容易にする。メインバス端には、電力遮断および連結を容易にするための各種リレー、および燃料電池へ逆電流が流れないようにするダイオードが連結され得る。
【0007】
空気ブロワーを介して供給された乾燥空気は、加湿器を介して加湿された後、燃料電池スタックのカソード(空気極)に供給され、カソードの排気ガスは、内部から発生した水成分によって加湿された状態で加湿器に伝えられ、空気ブロワーによってカソードへ供給される乾燥空気の加湿に使用できる。
【0008】
燃料電池スタックがドライアウト状態またはフラッディング状態である場合、燃料電池スタックの出力が減少し、正常出力に回復するまで多くの時間が必要である。また、フラッディング状態またはドライアウト状態が持続すると、燃料電池スタックの耐久寿命が減少するという問題点がある。よって、燃料電池スタックのドライアウト状態またはフラッディング状態を正確に診断し、診断された燃料電池スタックの状態に応じてスタック回復運転を行うことにより、速く回復できるように制御することが必要である。
【0009】
これに関連し、特許文献1は、時間経過に伴うインピーダンスの変化によって燃料電池スタックの水分含量を診断する方法を開示している。インピーダンスの変化がない場合には正常状態、インピーダンス値の変動性が大きい場合にはフラッディング状態、インピーダンス値が増加する場合にはドライアウト状態とそれぞれ診断する方法を開示している。
【0010】
前記特許文献1は、インピーダンス値の変動性の大きさからフラッディングを判断することにより、2つ以上の時間経過に伴って累積したインピーダンス値を測定し、インピーダンスの変動を計算しなければならないので、フラッディングを判断する時間が長くなる。また、数百Hz周波数のインピーダンスを測定するので、フラッディングに対する測定精度が低い。
【0011】
また、特許文献2は、ブロワー出口の温度、加湿器入口の温度および冷却水出口の温度の実測データに基づいた相対湿度マップを用いて燃料電池スタックの相対湿度を判断し、相対湿度減少の際に空気流量を減らし、運転圧力を高めて燃料電池スタックのドライアウトを防止する方法を開示している。
【0012】
前記特許文献2の場合、燃料電池スタック内の湿度は、燃料電池スタックへ供給される空気の温度および湿度、空気出口の温度および湿度、供給水素の温度および湿度、燃料電池スタックの生成水の量、燃料電池スタックの温度などの影響を受けるため、ブロワー出口の温度、加湿器入口の温度および冷却水出口の温度からスタックの相対湿度を推定する場合に精度が低い。
【0013】
また、特許文献3は、燃料電池の水均衡が所定の値以下となるドライ運転の場合に空気量論比の減少、水素極圧力の減少、水素極再循環量の増加および空気圧力の増加を段階的な順で処理して燃料電池の出力を制限することにより、水収支を回復させる方法を開示している。
【0014】
前記特許文献3は、順次ドライを防止する方法を適用することにより、燃料電池スタックが急激にドライされる場合に速く回復することができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国公開特許第2008−0166609号明細書
【特許文献2】特開2011−029158号公報
【特許文献3】特開2010−251096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、多重周波数の電流を印加することにより多重周波数のインピーダンスを測定し、測定された抵抗を用いて燃料電池スタックの水分含量、例えばドライ/フラッディングなどを速く診断し、燃料電池スタックの状態診断性能を向上させ、燃料電池スタックの状態に応じて燃料電池工程を制御して非正常状態を迅速に克服し、燃料電池状態を正常条件に回復させることができる、燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法は、燃料電池スタックに、第1周波数と第2周波数を有する電流を同時に印加する段階と、前記印加された電流に応じて、前記燃料電池スタックから出力される電流と電圧をフーリエ変換する段階と、前記変換された出力電流および電圧のうち前記第1周波数および第2周波数の電圧と電流の振幅および位相を用いて第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部を演算する段階と、前記演算された第1周波数のインピーダンスおよび第2周波数のインピーダンスの大きさに応じて前記燃料電池スタックの状態を診断する段階とを含んでなり、前記第1周波数は前記第2周波数より高いことを特徴とする。
【0018】
前記第1周波数は100Hz以上であり、前記第2周波数は1Hz〜100Hzであることを特徴とする。
【0019】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさに対応して既にマッピングされた燃料電池スタックの状態マップに基づいて、前記演算された実数部および虚数部の大きさに応じて前記燃料電池スタックの状態を診断する段階を含むことができる。
【0020】
前記燃料電池スタックの状態マップは、前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさを複数の所定の境界値によって複数の段階に分類し、分類された段階と前記燃料電池スタック内の水分含量との関係が既にマッピングされた状態マップであることを特徴とする。
【0021】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、前記演算された実数部および虚数部の大きさが前記分類された段階のうちどの段階に属するかによって前記燃料電池スタックの水分含量を判断する段階をさらに含むことができる。
【0022】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさに対応して、パージロジックが実現されたパージロジック診断器の出力を用いて前記燃料電池スタックの状態を診断する段階を含むことができる。
【0023】
前記パージロジック診断器の出力は前記第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさと前記第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさによって決定され、前記パージロジック診断器の出力は所定の境界値によって複数の段階に分類されることを特徴とする。
【0024】
前記燃料電池スタックの状態を診断する段階は、前記分類された複数の段階のうちどの段階に属するかによって前記燃料電池スタックの水分含量を判断する段階を含むことができる。
【0025】
前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度によって前記燃料電池スタックの状態を複数の段階に分類する段階をさらに含むことができる。
【0026】
前記分類された段階のうちどの段階に属するかによって、前記燃料電池スタックの空気流量、空気圧力、水素流量、水素圧力および水素排出量を含む複数の因子を可変させる段階をさらに含むことができる。
【0027】
前記複数の段階は、所定の境界値によって前記水分含量の高い順に分類された第1段階〜第5段階を含み、前記複数の因子を可変させる段階は、前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第1段階に属する場合には、前記燃料電池スタックの空気流量、水素圧力、水素流量および水素排出量を増加させ、空気圧力を減少させ、前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第2段階に属する場合には、前記燃料電池スタックの水素流量を増加させ、空気流量を増加させ、前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第4段階に属する場合には、前記燃料電池スタックの空気流量および水素圧力を減少させ、前記判断された燃料電池スタックの水分含量の程度が第5段階に属する場合には、前記燃料電池スタックの水素流量および空気圧力を増加させ、空気流量および水素圧力を減少させる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法および燃料電池システムの制御方法によれば、燃料電池スタックに複数の周波数の正弦波電流を同時に印加し、相異なる周波数を有する燃料電池の出力および電圧に基づいてインピーダンスを燃料電池スタックの状態診断に利用することにより、一層短時間で燃料電池スタックの状態を診断することができるという効果がある。
【0029】
また、インピーダンス演算の際に、インピーダンスの絶対値ではなく、高周波数インピーダンスの実数値と低周波数インピーダンスの虚数値を用いて診断することにより、燃料電池スタックの水分含量をさらに正確に判断することができ、それにより燃料電池スタックのフラッディング状態、ドライアウト状態をさらに正確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】燃料電池スタックのセル電圧、インピーダンスの絶対値および低周波数インピーダンスの虚数部の時間による変化を示すグラフである。
図2】本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法を簡略に示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器を概略的に示すブロック図である。
図4】本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器における第1周波数のインピーダンスの実数部の大きさによるパージ所属関数を示す図である。
図5】本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器における第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさによるパージ所属関数を示す図である。
図6】本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器における燃料電池スタックの状態による所属関数を例示する図である。
図7】本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法によって診断された後の燃料電池システムの制御方法を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書または出願に開示されている本発明の実施態様に対して、特定の構造的または機能的説明は単に本発明に係る実施態様を説明するために例示されたものに過ぎず、本発明に係る実施態様は、様々な形態で実施でき、本明細書または出願に説明された実施態様に限定されるものではない。
【0032】
本発明に係る実施態様は、多様な変更を加えることができ、種々の形態を有することができるので、特定の実施態様を図面に例示して本明細書に詳細に説明する。しかし、これは本発明の概念による実施様態を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むと理解されるべきである。
【0033】
本明細書において、「第1」および/または「第2」等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこのような用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、同様に第2構成要素も第1構成要素とも命名できる。
【0034】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる或いは「接続されて」いると言及された場合には、該他の構成要素に直接連結または接続されていることも意味するが、それらの間に別の構成要素が介在する場合も含むと理解されるべきである。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いる或いは「直接接続されて」いると言及された場合には、それらの間に別の構成要素が介在しないと理解されるべきである。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「〜間に」と「すぐに〜間に」または「〜に隣り合う」と「〜に直接隣り合う」等も同様に解釈されるべきである。
【0035】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施態様を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0036】
また、別に定義しない限り、技術的或いは科学的用語を含んで、本明細書において使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば一般的に理解されるのと同一の意味を有する。 一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上において有する意味と一致する意味であると解釈されるべきであり、本明細書において明白に定義しない限りは、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施態様を説明することにより、本発明を詳細に説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0038】
図1は燃料電池スタックのセル電圧、低周波数インピーダンスの絶対値および低周波数インピーダンスの虚数部の時間による変化を示すグラフである。図1のグラフを参照すると、水素の供給流量減少の際にセル電圧が時間経過に伴って急激に降下することが分かる。また、図1はこれと同一の時間に低周波数インピーダンスの絶対値の大きさと低周波数インピーダンスの虚数部の大きさの変化を示している。低周波数インピーダンスの絶対値の大きさは減少してから増加するパターンを示すが、低周波数インピーダンスの虚数部の大きさはセル電圧が減少するにつれて持続的に増加するパターンを示す。
【0039】
すなわち、低周波数インピーダンスの絶対値を用いて燃料電池スタックの水分含量による燃料電池スタックの状態を診断することより、低周波数インピーダンスの虚数部の大きさから燃料電池スタックの状態を診断することがさらに正確な方法であることをグラフから分かる。
【0040】
図2は本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法を簡略に示すフローチャートである。各段階の主体は燃料電池制御器であってもよく、燃料電池を構成する分散した制御器であってもよい。
【0041】
本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法は、燃料電池スタックに、第1周波数と第2周波数を有する電流を同時に印加する段階(S201)と、印加された電流に応じて、燃料電池スタックから出力される電流および電圧をフーリエ変換する段階(S203)と、変換された出力電流および電圧のうち第1周波数および第2周波数の電圧および電流の振幅および位相を用いて第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部を演算する段階(S205)と、演算された第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさから燃料電池スタックの状態を診断する段階(S207)とを含むことができる。
【0042】
ここで、第1周波数は第2周波数より高い。具体的に、第1周波数は第2周波数に比べて相対的に高周波数であり、第2周波数は第1周波数に比べて相対的に低周波数である。相異なる周波数の電流を合成して燃料電池スタックに診断電流として同時に印加することに特徴がある。第1周波数は100Hz以上であり、前記第2周波数は1Hz〜100Hz未満でありうる。相対的に高周波数を有する電流と低周波数を有する電流とを合成して印加することにより、燃料電池スタックの出力端における電流と電圧も、印加された電流の周波数と同一の周波数を有する電流成分および電圧成分を含む。
【0043】
さらに速く燃料電池スタックの状態を診断するために、燃料電池制御器は、互いに異なる周波数を有する複数の電流、すなわち第1周波数の正弦波電流と第2周波数の正弦波電流とを合成して燃料電池スタックに印加する。その後、燃料電池スタックから出力される電流と電圧を測定する。測定された電流と電圧をフーリエ変換して周波数ドメインに変更させる。測定された電流と電圧はそれぞれ第1周波数の電流、第2周波数の電流と第1周波数の電圧、第2周波数の電圧を含む。その後、燃料電池制御器は、第1周波数の電流振幅と第2周波数の電流振幅、第1周波数の電圧振幅と第2周波数の電圧振幅、そして第1周波数の電流および電圧の位相角と第2周波数の電流および電圧の位相角を算出する。
【0044】
その後、燃料電池制御器は、第1周波数の電圧と電流の振幅および位相角を用いて第1周波数のインピーダンスの実数部を演算する。また、燃料電池制御器は、第2周波数の電圧と電流の振幅および位相角を用いて第2周波数のインピーダンスの虚数部を演算する。
【0045】
燃料電池制御器は、第1周波数のインピーダンスの実数部および第2周波数のインピーダンスの虚数部から燃料電池スタックの水分含量を判断することにより、燃料電池スタックの状態を診断することができる。診断された状態に基づいて、燃料電池スタックに供給される水素の流量、空気の流量、水素の圧力、空気の圧力またはパージ周期などを可変制御することができる。次に、これについて後述する。
【0046】
図3は本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器を概略的に示すブロック図である。
【0047】
本発明の一実施態様に係るパージ論理診断器は、図2で説明された第1周波数のインピーダンスの実数部10および第2周波数のインピーダンスの虚数部20を入力として受け、パージ推論によって燃料電池スタックの状態を診断することができる。パージ論理診断器は、パージ化器30、パージ推論装置40、ルールベース45、および非パージ化器50を含むことができる。具体的に、パージ論理診断器は、数値的入力段階、パージ化器30によるパージ言語変換段階、パージ推論装置40を介しての規則推論とパージ言語出力段階、および非パージ化器50による数値的出力変換段階を含む過程によって燃料電池スタックの状態を診断する。
【0048】
言語的推論のためにパージルールベース45が利用される。パージルールベース45は、2つの入力値である第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20によって、一つの出力条件である燃料電池の状態を診断する規則が使用できる。
【0049】
第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20が数値的な値としてパージ化器に入力されると、「大きい(high)」または「小さい(low)」などの言語的パージ変数に変換される。このようにパージ変数に変換された言語的入力から、パージ推論装置40はさらに言語的パージ制御変数を発生させる。発生した言語的パージ制御変数は、非パージ化器50による非パージ化過程を経て、スタックの状態を診断するための数値的な制御変数に変換される。
【0050】
パージ論理制御器は、パージルールベース45に対応する2つの入力と一つの出力を有する。この2つの入力は第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20である。第1周波数のインピーダンスの実数部10は正規化されて最大値と最小値がそれぞれ「1」と「0」になる。第2周波数のインピーダンスの虚数部20は正規化されて最大値と最小値がそれぞれ「1」と「0」になる。第1周波数のインピーダンスの実数部20の大きさによるパージ所属関数を例示したものが図4であり、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさによるパージ所属関数を例示したものが図5である。第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20は、パージ化器30でパージ数に変換されてパージ推論装置40へ入力できる。
【0051】
パージ論理診断器の出力は、燃料電池スタックの状態を示すことができる。燃料電池スタックの水分含量が少ないドライアウト状態であるとき、パージ論理診断器の出力が「1」となり、燃料電池スタックの水分含量が多いフラッディング状態であるとき、パージ論理診断器の出力が「0」となるように正規化された値として表すことができる。燃料電池スタックの状態による所属関数を例示したものが図6である。
【0052】
パージ推論装置40は、設定されたパージルールベース45および2つの入力パージ所属関数から言語的出力を決定し、出力パージ所属関数を用いて燃料電池スタックの状態を計算することができる。
【0053】
但し、このようなパージ論理診断器は、第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20を入力値として、燃料電池スタックの状態を出力値として出力する一つのツールに過ぎず、第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさと第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさに対応して既にマッピングされた燃料電池スタックの状態マップを利用することができる。
【0054】
次に、具体的にパージ論理診断器のパージルールベースによるIF−THEN規則について整理する。第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさに応じて対応する水分含量の程度が5つの段階に区分されている。第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさは、所定の境界値によってそれぞれ3つの範囲に分けられる(L、M、H)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさがどの範囲に属するかによって、燃料電池スタックの水分含量は、最もフラッディングな状態(HH)である第1段階から最もドライな状態(LL)である第5段階まで5つの段階に分類できる。第1段階よりは少なくフラッディングな状態(H)である第2段階と、第5段階よりは少なくドライな状態(L)である第4段階と、正常状態である第3段階とを含むことができる。
【0055】
まず、第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、対応する燃料電池スタックの状態は最もフラッディングな状態である(HH)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、パージロジック診断器の出力結果は第1段階に該当し、これにより燃料電池スタックが最もフラッディングな状態(HH)であることを判断することができる。
【0056】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が中間であるとき(M)、対応する燃料電池スタックの状態はややフラッディングな状態である(H)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が中間であるとき(M)、パージロジック診断器の出力結果は第2段階に該当し、これにより燃料電池スタックがややフラッディングな状態(H)であることを判断することができる。
【0057】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部も小さいとき(L)、対応する燃料電池スタックの状態は正常状態である(M)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部も小さいとき(L)、パージロジック診断器の出力結果は第3段階に該当し、これにより燃料電池スタックが正常状態(M)であることを判断することができる。
【0058】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が中間であり(M)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が小さいか(L)中間であるとき(M)、対応する燃料電池スタックの状態は正常状態である(M)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が中間であり(M)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が小さいか(L)中間であるとき(M)、パージロジック診断器の出力結果は第3段階に該当し、これにより燃料電池スタックが正常状態(M)であることを判断することができる。
【0059】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が中間であり(M)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、対応する燃料電池スタックの状態はややドライな状態である(L)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が中間であり(M)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、パージロジック診断器の出力結果は第4段階に該当し、これにより燃料電池スタックのややドライな状態(L)であることを判断することができる。
【0060】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が小さいか(L)中間であるとき(M)、対応する燃料電池スタックの状態はややドライな状態である(L)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が小さいか(L)中間であるとき(M)、パージロジック診断器の出力結果は第4段階に該当し、これにより燃料電池スタックがややドライな状態(L)であることを判断することができる。
【0061】
第1周波数のインピーダンスの実数部10が大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、対応する燃料電池スタックの状態は非常にドライな状態である(LL)。すなわち、第1周波数のインピーダンスの実数部10が大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20が大きいとき(H)、パージロジック診断器の出力結果は第5段階に該当し、これにより燃料電池スタックが最もドライな状態(LL)であることを判断することができる。
【0062】
ここで、実数部と虚数部の大きさが「大きい」とは、大きさによって所定の境界値に分類された3つの範囲(大きい、中間、小さい)のうち大きい範囲内に属するという意味であり、「中間」とは3つの範囲のうち中間の範囲に属するという意味であり、「小さい」とは3つの範囲のうち小さい範囲に属するという意味であって、絶対的な大きさをいうものではない。
【0063】
また、燃料電池スタックの状態マップを利用する場合、このような状態マップは次のような判断基準によって予め設定できる。すなわち、パージロジック診断器を用いるときと同様に、燃料電池スタックのドライアウト状態(LL、L)、フラッディング状態(HH、H)および正常状態(M)は5つの状態段階に区分できる。具体的に、ドライアウト状態(LL、L)はドライアウトの程度によって2つに分類され、フラッディング状態(HH、H)をフラッディングの程度によって2つに分類され得る。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさは所定の境界値によって複数のカテゴリー(L、M、H)に分類でき、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさも所定の境界値によって複数のカテゴリー(L、M、H)に分類できる。分類された段階と燃料電池スタック内の水分含量との関係が既にマッピングできる。
【0064】
第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが相対的に小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが相対的に大きい場合(H)は、最もフラッディングな状態(HH)に対応して既にマッピングされる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが相対的に小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが中間サイズ(M)である場合は、ややフラッディングな状態(H)に対応して既にマッピングされる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが相対的に小さく(L)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが相対的に小さい(L)場合は、正常状態に対応して既にマッピングされる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが中間サイズ(M)であり、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが中間サイズ(M)であり或いは相対的に小さい場合(L)は、正常状態(M)に対応して既にマッピングされる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが中間サイズ(M)であり、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが相対的に大きい場合(H)は、ややドライな状態(L)に対応して既にマッピングされる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが相対的に大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが相対的に小さいか(L)中間サイズ(M)である場合、ややドライな状態(L)に対応して既にマッピングできる。第1周波数のインピーダンスの実数部10の大きさが相対的に大きく(H)、第2周波数のインピーダンスの虚数部20の大きさが相対的に大きい場合(H)、最もドライな状態(LL)に対応して既にマッピングできる。相対的な大きさは所定の境界値によってそれぞれ相対的に小さい値(L)、中間値(M)、相対的に大きい値(H)の範囲に分けられる。
【0065】
すなわち、所定の境界値によって第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20が複数の段階に分類でき、演算された第1周波数のインピーダンスの実数部10と第2周波数のインピーダンスの虚数部20が分類された段階のうちどの段階に該当するか否かによって、既にマッピングされた状態マップを介して燃料電池スタックの水分含量および燃料電池スタックの状態を診断することができる。
【0066】
図7は本発明の一実施態様に係る燃料電池スタックの状態診断方法によって診断された後の燃料電池運転制御を示す表である。
【0067】
上述したように、HHは最もフラッディングな状態(第1段階)を示し、Hはややフラッディングな状態(第2段階)を示し、Mは正常状態(第3段階)を示し、Lはややドライな状態(第4段階)を示し、LLは最もドライな状態(第5段階)を示す。
【0068】
診断された燃料電池スタックの状態がHHに該当する場合、フラッディング状態を迅速に克服するために、燃料電池制御器は水素流量、水素圧力および空気流量を増加させ、空気圧力を低めるうえ、水素排出量を増加させることができる。
【0069】
診断された燃料電池スタックの状態がHに該当する場合、燃料電池制御器は水素流量を増加させ、空気流量を増加させることができる。すなわち、燃料電池スタックのフラッディング状態の程度に応じて調整、制御する因子の個数および制御程度を異ならせることができる。
【0070】
診断された燃料電池スタックの状態が正常状態Mに該当する場合、最適運転効率条件であるので現在状態を維持するようにし、診断された燃料電池スタックの状態がLに該当する場合、ドライアウト状態を回避するために空気流量と水素圧力を減少させることができる。診断された燃料電池スタックの状態がLL状態に該当する場合、ドライアウト状態を迅速に克服するために、燃料電池制御器は、水素供給流量と空気圧力を増加させ、空気流量と水素圧力を減少させることができる。
【0071】
すなわち、燃料電池制御器は、第1周波数と第2周波数の電流成分を有する合成電流が印加されて出力された電流と電圧の第1周波数および第2周波数の電流、電圧の振幅および位相を用いて第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部とを演算する。そして、演算された第1周波数のインピーダンスの実数部と第2周波数のインピーダンスの虚数部の大きさから、第1周波数インピーダンスの実数部の大きさおよび第2周波数インピーダンスの虚数部の大きさの大小による燃料電池スタック内の水分含量との関係が既にマッピングされている状態マップを用いて燃料電池スタックの水分含量を判断し、燃料電池スタックのフラッディング状態或いはドライアウト状態を診断することができる。
【0072】
本発明は図示した一実施態様を参考として説明されたが、これらの実施態様は例示的なものに過ぎない。当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明は様々な変形および均等な他の実施が可能であることを理解するであろう。よって、本発明の真正な技術的保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0073】
10 第1周波数のインピーダンスの実数部
20 第2周波数のインピーダンスの虚数部
30 パージ化器
40 パージ推論装置
45 ルールベース
50 非パージ化器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7