(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)ボーグの式により算出した値として、エーライト40〜50質量%、ビーライト30〜40質量%、アルミネート相2〜5質量%、フェライト相11〜14質量%の鉱物組成を有するポルトランドセメント、(b)BET比表面積が15〜20m2/gのシリカフューム、(c)無機粉末(ただし、セメントおよびシリカフュームを除く。)、(d)最大粒径3.5mm以下の細骨材、(e)減水剤、および(f)水、を含む水硬性組成物であって、前記(c)無機粉末が、ブレーン比表面積が5,000〜10,000cm2/gの無機粒子Aと、ブレーン比表面積が3,500〜5,000cm2/gの無機粒子B(ただし、無機粒子Bは、無機粒子Aよりも小さなブレーン比表面積を有する。)からなり、前記無機粒子Aの配合量が、前記(a)ポルトランドセメント100質量部に対して、20〜54質量部であり、前記無機粒子Bの配合量が、前記(a)ポルトランドセメント100質量部に対して、1質量部以上、5質量部未満である水硬性組成物からなる埋設型枠用ボードであって、
(i)前記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、
(ii)前記凸部分の3mmの高さ又は前記凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、前記凸部分の高さが3mm又は前記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、前記凸部分又は前記凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、
(iii)前記凸部分又は前記凹部分を有する片面の全表面積(S1)と、前記凸部分又は前記凹部分を有する片面の投影面積(S2)との面積比(S1/S2)が1.2〜7.0であることを特徴とする埋設型枠用ボード。
前記(b)シリカフュームの配合量が、前記(a)ポルトランドセメント100質量部に対して、10〜40質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の埋設型枠用ボード。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の埋設型枠用ボードは、(a)ボーグの式により算出した値として、エーライト40〜50質量%、ビーライト30〜40質量%、アルミネート相2〜5質量%、フェライト相11〜14質量%の鉱物組成を有するポルトランドセメント、(b)BET比表面積が15〜20m
2/gのシリカフューム、(c)無機粉末(ただし、セメントおよびシリカフュームを除く。)、(d)最大粒径3.5mm以下の細骨材、(e)減水剤、および(f)水、を含む水硬性組成物であって、前記(c)無機粉末が、ブレーン比表面積が5,000〜10,000cm
2/gの無機粒子Aと、ブレーン比表面積が3,500〜5,000cm
2/gの無機粒子B(ただし、無機粒子Bは、無機粒子Aよりも小さなブレーン比表面積を有する。)からなり、前記無機粒子Aの配合量が、前記(a)ポルトランドセメント100質量部に対して、20〜54質量部であり、前記無機粒子Bの配合量が、前記(a)ポルトランドセメント100質量部に対して、1質量部以上、5質量部未満である水硬性組成物からなる埋設型枠用ボードであって、(i)前記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、(ii)前記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、前記凸部分の高さが3mm又は前記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、前記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、(iii)前記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S
1)と、前記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S
2)との面積比(S
1/S
2)が1.2〜7.0であるものである。
以下、本発明で用いられる水硬性組成物について詳細に説明する。
【0010】
[(a)ポルトランドセメント]
上記水硬性組成物において使用するポルトランドセメントは、ボーグの式により算出した値として、エーライト40〜50質量%、ビーライト30〜40質量%、アルミネート相2〜5質量%、フェライト相11〜14質量%の鉱物組成を有するポルトランドセメントである。
エーライト等の好ましい含有率は、流動性等の観点から、以下のとおりである。
エーライト(3CaO・SiO
2;C
3Sと略記される。)の含有率は、40〜50質量%、好ましくは40.5〜49質量%、より好ましくは41〜48質量%、特に好ましくは41.5〜47.5質量%である。
ビーライト(2CaO・SiO
2;C
2Sと略記される。)の含有率は、30〜40質量%、好ましくは30.5〜39質量%、より好ましくは31〜38質量%、特に好ましくは31.5〜37質量%である。
アルミネート相(3CaO・Al
2O
3;C
3Aと略記される。)の含有率は、2〜5質量%、好ましくは2.1〜4.5質量%、より好ましくは2.2〜4.1質量%、特に好ましくは2.3〜3.8質量%である。
フェライト相(4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3;C
4AFと略記される。)の含有率は、11〜14質量%、好ましくは11.2〜13.5質量%、より好ましくは11.4〜13.1質量%、特に好ましくは11.6〜12.8質量%である。
【0011】
ボーグの式とは、次の(1)〜(4)の式をいう。ポルトランドセメントの化学分析の結果から、次の(1)〜(4)の式を用いて、鉱物組成が算出される。式中の「C
3S」、「CaO」等は、「C
3S」、「CaO」等の各含有率を表す。単位は、いずれも質量%である。
(1) エーライト(C
3S)=(4.07×CaO)−(7.60×SiO
2)−(6.72×Al
2O
3)−(1.43×Fe
2O
3)−(2.85×SO
3)
(2) ビーライト(C
2S)=(2.87×SiO
2)−(0.754×C
3S)
(3) アルミネート相(C
3A)=(2.65×Al
2O
3)−(1.69×Fe
2O
3)
(4) フェライト相(C
4AF)=(3.04×Fe
2O
3)
従来、ボーグの式により鉱物組成を算出する方法は、ポルトランドセメントの鉱物組成を求める最も一般的な方法として用いられている。
上述の鉱物組成の条件を満たすポルトランドセメントの好ましい一例として、中庸熱ポルトランドセメントが挙げられる。
【0012】
上記水硬性組成物において使用するポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは3,000〜3,500cm
2/g、より好ましくは3,100〜3,450cm
2/g、特に好ましくは3,150〜3,400cm
2/gである。該値が3,000cm
2/g以上であると、水和反応がより活発になって、圧縮強度等がより大きくなる。該値が3,500cm
2/g以下であると、ポルトランドセメントの粉砕に要する時間を短縮することができ、また、所望の流動性を得るための水量が少なくなるため、硬化後の収縮量を低減することができる。
【0013】
[(b)シリカフューム]
上記水硬性組成物においては、BET比表面積が15〜20m
2/gのシリカフュームが、配合される。該シリカフュームを配合することによって、流動性および強度発現性を向上させることができる。
上記シリカフュームのBET比表面積は、15〜20m
2/g、好ましくは16〜19m
2/g、より好ましくは17〜19m
2/gである。該値が15m
2/g未満であると、このようなシリカフュームの入手が困難である。該値が20m
2/gを超えると、水硬性組成物の流動性が低下することがある。
シリカフュームの配合量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは12〜40質量部、さらに好ましくは20〜35質量部、特に好ましくは25〜35質量部である。
【0014】
[(c)無機粉末]
上記水硬性組成物においては、上述のポルトランドセメントおよびシリカフューム以外の他の無機粉末が、配合される。該無機粉末を配合することによって、流動性および強度発現性を向上させることができる。
該無機粉末は、ブレーン比表面積が5,000〜10,000cm
2/gの無機粒子Aと、ブレーン比表面積が3,500〜5,000cm
2/gの無機粒子B(ただし、無機粒子Bは、無機粒子Aよりも小さなブレーン比表面積を有する。)からなる。
このように粒度の異なる2種の無機粉末を用いることによって、流動性および強度発現性を向上させることができる。
無機粉末の例としては、石英粉末、石灰石粉末、スラグ粉末、フライアッシュ、長石類の粉末、ムライト類の粉末、アルミナ粉末、火山灰、シリカゾル粉末、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。
無機粉末を構成する無機粒子A、Bとしては、同じ種類の粉末(例えば、石英粉末)を用いてもよいし、異なる種類の粉末(例えば、石英粉末および石灰石粉末)を用いてもよい。ただし、本発明においては、無機粒子A、Bとして、同じ種類の粉末を用いることが好ましい。
上記水硬性組成物において好ましい実施形態の一例は、無機粒子A、Bとして、石英粉末を用いることである。
【0015】
無機粒子Aのブレーン比表面積は、5,000〜10,000cm
2/g、好ましくは5,500〜9,500cm
2/g、より好ましくは6,000〜9,000cm
2/g、特に好ましくは6,500〜8,500cm
2/gである。該値が5,000cm
2/g未満であると、ポルトランドセメントや無機粒子Bのブレーン比表面積との差が小さくなり、流動性および強度発現性を十分に向上させることが困難となる。該値が10,000cm
2/gを超えると、このような小さな粒度の無機粒子Aを得るのに粉砕等の手間がかかるなどの問題がある。
【0016】
無機粒子Bのブレーン比表面積は、3,500〜5,000cm
2/g、好ましくは3,500〜4,800cm
2/g、より好ましくは3,500〜4,500cm
2/g、特に好ましくは3,500〜4,200cm
2/gである。該値が3,500cm
2/g未満であると、水硬性組成物の流動性が低下することがある。該値が5,000cm
2/gを超えると、無機粒子Aのブレーン比表面積との差が小さくなり、流動性および強度発現性を十分に向上させることが困難となる。
【0017】
上記水硬性組成物において、無機粒子Aと無機粒子Bのブレーン比表面積の差は、好ましくは2,000cm
2/g以上、より好ましくは2,500cm
2/g以上、さらに好ましくは3,000cm
2/g以上、特に好ましくは3,500cm
2/g以上である。該差が2,000cm
2/g以上であると、流動性および強度発現性をより向上させることができる。
【0018】
上記水硬性組成物において、ポルトランドセメントと無機粒子Bのブレーン比表面積の差は、好ましくは200cm
2/g以上、より好ましくは250cm
2/g以上、さらに好ましくは350cm
2/g以上、特に好ましくは450cm
2/g以上である。該差が200cm
2/g以上であると、流動性および強度発現性をより向上させることができる。
【0019】
無機粒子Aの配合量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、20〜54質量部、好ましくは25〜50質量部、より好ましくは30〜45質量部、さらに好ましくは30〜40質量部である。該配合量が20〜54質量部の範囲外であると、水硬性組成物の流動性が低下することがある。
【0020】
無機粒子Bの配合量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、1質量部以上、5質量部未満、好ましくは1.2〜4.8質量部、より好ましくは1.4〜4.6質量部、特に好ましくは1.5〜4.4質量部である。該配合量が1質量部以上、5質量部未満の範囲外であると、水硬性組成物の流動性が低下することがある。
【0021】
[(d)細骨材]
上記水硬性組成物において、最大粒径3.5mm以下の細骨材が配合される。
細骨材の最大粒径は、3.5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。該最大粒径が3.5mmを超えると、水硬性組成物の強度発現性が低下する。
本発明において、細骨材中の75μm以下の粒子の含有率は、流動性の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。
細骨材の例としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、珪砂、または、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0022】
細骨材の配合量の上限値は、水硬性組成物の流動性および強度発現性の観点から、ポルトランドセメント、シリカフュームおよび無機粉末(無機粒子A、B)の合計量100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。
細骨材の配合量の下限値は、特に限定されないが、水硬性組成物の収縮量の低減、および、水和発熱量の低減等の観点から、ポルトランドセメント、シリカフュームおよび無機粉末(無機粒子A、B)の合計量100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。
【0023】
[(e)減水剤]
上記水硬性組成物において使用する減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系またはポリカルボン酸系の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。中でも、減水効果の大きなポリカルボン酸系高性能減水剤を使用することが好ましい。
減水剤の配合量は、ポルトランドセメント、シリカフューム、無機粒子A、無機粒子Bの合計量100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.15〜0.7質量部である。該配合量が0.1質量部以上であると、水硬性組成物の流動性をより高めることができる。該配合量が1質量部以下であると、著しい凝結遅延等の発生を避けることができ、また、コストの上昇を抑えることができる。
減水剤の形態は、液状と粉末状のいずれでもよい。
【0024】
[(f)水]
上記水硬性組成物において使用する水の量は、ポルトランドセメント、シリカフューム、無機粒子A、無機粒子Bの合計量100質量部に対して、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは11〜25質量部、さらに好ましくは12〜20質量部、特に好ましくは12〜17質量部である。水の量が10質量部以上であると、流動性をより高めることができる。水の量が30質量部以下であると、強度発現性をより高めることができる。
【0025】
[(g)補強繊維]
上記水硬性組成物において、補強繊維を配合することができる。該補強繊維を配合することによって、水硬性組成物の曲げ強度や破壊エネルギーを、より向上させることができる。
補強繊維としては、金属繊維、有機繊維、炭素繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、強度に優れており、また、コストや入手のし易さの点から、好ましいものである。金属繊維の寸法は、水硬性組成物中における金属繊維の材料分離の防止や、硬化後の曲げ強度の向上の点から、好ましくは、直径が0.01〜1.0mm、長さが2〜30mmであり、より好ましくは、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mmである。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
【0026】
金属繊維の配合量は、水硬性組成物中の体積百分率で、好ましくは4%以下、より好ましくは0.5〜3%、特に好ましくは1〜3%である。該配合量が4%以下であれば、高い流動性を維持しつつ、ファイバーボールが生じ難くなるなどの点で、好ましい。該配合量が0.5%以上であれば、水硬性組成物の曲げ強度等の向上の効果を高めることができる。
【0027】
有機繊維としては、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。中でも、ビニロン繊維は、コストや入手のし易さの点で好ましく用いられる。
有機繊維の寸法は、水硬性組成物中における有機繊維の材料分離の防止や、硬化後の破壊エネルギーの向上の点から、好ましくは、直径が0.005〜1.0mm、長さが2〜30mmであり、より好ましくは、直径が0.01〜0.5mm、長さが5〜25mmである。
有機繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
【0028】
有機繊維の配合量は、水硬性組成物中の体積百分率で、好ましくは5%以下、より好ましくは1〜4.5%、特に好ましくは2〜4%である。該配合量が5%以下であれば、高い流動性を維持しつつ、ファイバーボールが生じ難くなるなどの点で、好ましい。該配合量が1%以上であれば、水硬性組成物の破壊エネルギーの向上の効果をより高めることができる。
炭素繊維としては、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が挙げられる。
炭素繊維の寸法、アスペクト比および配合量は、有機繊維と同様である。
【0029】
[(h)消泡剤]
上記水硬性組成物は、上記の各材料に加えて、さらに消泡剤を含むことが好ましい。該消泡剤を配合することによって、流動性および強度発現性が向上する。また、水硬性組成物中の気泡の量が低減するため、後述する静置工程における静置時間を短くすることができる。
消泡剤の配合量は、水硬性組成物1m
3中、消泡剤成分(市販等されている消泡剤中の水以外の成分)の量として、好ましくは3〜70g、より好ましくは5〜50g、特に好ましくは7〜30gである。
【0030】
本発明の埋設型枠用ボードにおいて用いられる上記水硬性組成物は、流動性に優れるものである。このため、後述する埋設型枠用ボードの製造において、型枠への投入等の作業性が良く、該ボードの製造時間を短縮し、生産効率を向上することができる。また、形状成形性が向上するため、精度の高い製品を製造することができ、歩留まりが向上する。
また、上記水硬性組成物は、強度発現性に優れるものである。このため、埋設型枠用ボードの脱型や、該ボードの保管や、施工現場への輸送等の過程における、埋設型枠用ボードの角欠けやひび割れ等の発生率を減少することができ、歩留まりを向上することができる。
【0031】
以下、上述した水硬性組成物からなる埋設型枠用ボードについて、
図1〜5に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す斜視図、
図2は、本発明の埋設型枠用ボードの一例(部分)を示す断面図、
図3は、本発明の埋設型枠用ボードを含むコンクリート構造体の一例(部分)を示す断面図である。
図1〜3に示すように、本発明の埋設型枠用ボード1は、上述した水硬性組成物の硬化体からなる板状の本体部2と、本体部2の片面4(後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面)の全面に略均一に形成された、特定の形状を有する複数の凸部分3からなる。
図1〜3に示す埋設型枠用ボード1は、円柱形状の凸部分3を本体部2の片面4(基準面)に形成した例を示している。
本発明の埋設型枠用ボードは、例えば、
図3に示すような形態で用いられる。
図3に示すように、2つの埋設型枠用ボード1,1は、複数の凸部分3を有する側の面(片面4)が相対するように配置され、このように配置された2つの埋設型枠用ボード1,1の間に、後打ちコンクリート6が打設されて、コンクリート構造体5が構成される。2つの埋設型枠用ボード1,1は、後打ちコンクリート6の硬化後も、取り外されることなく、コンクリート構造体5の構成部分として存置される。
【0032】
図4は、本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す斜視図、
図5は、本発明の埋設型枠用ボードの他の一例(部分)を示す断面図である。
図4及び5に示すように、本発明の埋設型枠用ボード10は、上述した水硬性組成物の硬化体からなる板状の本体部11と、本体部11の片面13(後打ちコンクリートが打ち込まれる側の面)の全面に略均一に形成された、特定の形状を有する複数の凹部分12とからなる。
図4及び
図5に示す埋設型枠用ボード10は、四角柱形状の凹部分12を本体部11の片面13(基準面)に形成した例を示している。
【0033】
上述した水硬性組成物を成形し、養生、硬化させることによって、本発明の埋設型枠用ボードを製造することができる。
成形方法は、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の成形方法を採用することができる。
また、養生方法も特に限定されるものではなく、常温養生や蒸気養生等を行なえばよい。
さらに、流し込み成形等を行った後、上記水硬性組成物が流し込まれた打設面に散水したり、打設面をビニールシート等で覆ったり、あるいは、これら両方(散水およびビニール等で覆うこと)を行い、所定時間静置する静置工程を行うことが好ましい。
静置工程を行うことで、水硬性組成物中の気泡の量を低減することができ、凸部分または凹部分の周辺に空洞が生じることがなく、後打ちコンクリートとの付着性を向上させることができる。
上記水硬性組成物は、流動性に優れており、上記静置工程における静置時間が短くても、後打ちコンクリートとの付着が良好な埋設型枠用ボードを得ることができる。
静置する時間は、水硬性組成物中の気泡の量を減らす効果を得るとともに、製造時間を短くする観点から、好ましくは15分間〜2時間、より好ましくは30分間〜1時間である。
【0034】
本発明の埋設型枠用ボードは、上述した水硬性組成物からなり、(i)前記埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、高さが3mm以上である複数の凸部分又は深さが3mm以上である複数の凹部分を有し、(ii)上記凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、上記凸部分の高さが3mm又は上記凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積が、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積に対して10〜80%であり、かつ、(iii)上記凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積(S
1)と、上記凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S
2)との面積比(S
1/S
2)が1.2〜7.0である。
本発明の埋設型枠用ボードは、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、特定の形状の凸部分又は凹部分を有することによって、埋設型枠用ボードの凸部分又は凹部分を有する片面と、後打ちコンクリートとの付着強度を1N/mm
2以上に向上させることができる。
【0035】
上記凸部分又は凹部分は、本体部と同じ材料を用いて一体的に形成することができる。上記凸部分又は凹部分を形成する方法としては、例えば、底面が平面である通常の型枠内に、配合物を打設した後、特定の凹形状、凸形状、円柱状の穴、または角柱状の穴等を備えた押さえ型枠(例えば、ゴムマットやエアーキャップからなる型枠)を、打設後の配合物の上面から押し付けて、水硬性組成物の片面に凸部分又は凹部分を形成する方法が挙げられる。
【0036】
図1中、埋設型枠用ボード1の片面4に形成される凸部分3の高さ(又は凹部分12の深さ;
図4参照)は、埋設型枠用ボード1の片面4(又は片面13;
図4参照)から、3mm以上であり、埋設型枠用ボードの強度やコスト等の観点から、好ましくは3〜10mm、より好ましくは4〜9mmである(
図1参照)。
凸部分3の高さ(又は凹部分12の深さ)が3mm未満では、埋設型枠用ボード1と後打ちコンクリート6(
図3参照)との付着力が低下し、1N/mm
2以上の付着強度が得られ難い。凸部分3の高さ(又は凹部分12の深さ)が10mmを超えても、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力は、それほど向上しない。そればかりか、凸部分3の高さ(又は凹部分12の深さ)が10mmを超えると、該値が10mm以下である場合に比べて、運搬や工事現場に設置の際に、凸部分3に欠け等が生じやすくなる。また、凹部分12の深さが10mmを超えると、埋設型枠用ボード10(
図4参照)の強度を保つために、部材(本体部)を厚くする必要があり、コスト高になる。
なお、付着強度が1N/mm
2未満では、後打ちコンクリートの厚さにもよるが、後打ちコンクリートの剥離が生じる可能性があり、好ましくない。
【0037】
本発明の埋設型枠用ボードは、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、複数の凸部分又は凹部分を有する。複数の凸部分又は凹部分が、埋設型枠用ボードの片面に、部分的に集中して形成されている場合や、一方に偏って形成されている場合は、埋設型枠用ボードの片面の凸部分又は凹部分が形成されていない部分(平面部分)と、後打ちコンクリートとの付着力が小さくなり、該部分における埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートの界面に剥離が生じやすくなるので、好ましくない。
なお、埋設型枠用ボードの片面の全面に略均一に、複数の凸部分又は凹部分を有する形態とは、凸部分(又は凹部分)を有する片面を、100cm
2(10cm×10cm)に区分けし、1つの区域における凸部分(又は凹部分)の個数と、他の1つの区域における凸部分(又は凹部分)の個数との差が、5個以内になるように、複数の凸部分(又は凹部分)が、埋設型枠用ボードの片面に形成されている形態をいう。上記凸部分(又は凹部分)は、埋設型枠用ボードの片面の全面に、等間隔で均等に形成することが好ましい。
【0038】
図1中、凸部分3の3mmの高さ(又は凹部分12の3mmの深さ;
図4参照)における切断面(但し、凸部分3の高さが3mm又は凹部分12の深さが3mmの場合は、表面積)の面積は、凸部分3(又は凹部分12)を有する片面4全体(又は片面13全体;
図4参照)の投影面積(100%)に対する割合として、10〜80%であり、好ましくは20〜70%であり、より好ましくは30〜65%である。
上記割合が10%未満では、埋設型枠用ボード1と後打ちコンクリート6(
図3参照)との付着力が低下し、1N/mm
2以上の付着強度が得られ難い。上記割合が80%を超えると、製造が困難であるうえに、凸部分3(又は凹部分12)を有する面に欠けやひび割れ等が生じやすくなる。
【0039】
凸部分3の3mmの高さ(又は凹部分12の3mmの深さ)における切断面とは、凸部分3の高さが3mm以上(又は凹部分12の深さが3mm以上)の場合に、各々の凸部分3の3mmの高さ(又は凹部分12の3mmの深さ)における切断面の面積を合計した面積(Ca)をいう。また、凸部分3の高さが3mm(又は凹部分12の深さが3mm)である場合の表面積とは、各々の凸部分3の3mmの高さ(又は凹部分12の3mmの深さ)における表面積を合計した面積(Sa)をいう。
なお、本明細書においては、便宜上、凸部分の3mmの高さ又は凹部分の3mmの深さにおける切断面(但し、凸部分の高さが3mm又は凹部分の深さが3mmの場合は、表面積)の面積(Ca又はSa)と、凸部分又は凹部分を有する片面全体の投影面積(S
2)との比を断面積率(Ca/S
2×100%、又は、Sa/S
2×100%)と称する。
【0040】
図1中、凸部分3(又は凹部分12;
図4参照)を有する片面4(又は片面13;
図4参照)の全表面積(S
1)と、凸部分3(又は凹部分12)を有する片面4(又は片面13)の投影面積(S
2)との面積比(S
1/S
2)は、1.2〜7.0であり、好ましくは1.25〜6.0であり、より好ましくは1.3〜5.0である。面積比が1.2未満では、埋設型枠用ボード1と後打ちコンクリート6(
図3参照)との付着力が低下し、1N/mm
2以上の付着強度が得られ難い。面積比が7.0を超えると、製造が困難であるうえに、凸部分又は凹部分を有する面に欠けやひび割れ等が生じやすくなる。
なお、面積比とは、次の式のように算出される値である。
面積比=(凸部分又は凹部分を有する片面の全表面積;S
1)/(凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積;S
2)
なお、埋設型枠用ボードの凸部分又は凹部分を有する片面の投影面積(S
2)は、凸部分又は凹部分を有しない場合の埋設型枠用ボードの片面全体の面積と同一である。
【0041】
本発明において、埋設型枠用ボードが片面に凸部分を有するものである場合は、該凸部分は、直径が4〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが4〜25mmの四角柱形状を有するものであることが好ましい。凸部分が、直径が4mm未満の円柱形状又は1辺の長さが4mm未満の四角柱形状を有するものであると、直径又は1辺の長さが4mm以上である場合と比べて、凸部分に欠けや割れ等が生じやすくなるので、好ましくない。一方、凸部分が、直径が25mm以下の円柱形状又は1辺の長さが25mm以下の四角柱形状を有するものであると、埋設型枠用ボードの面積比(S
1/S
2)を大きくすることができ、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が大きくなり、1N/mm
2以上の付着強度を得ることが容易となる。
【0042】
本発明において、埋設型枠用ボードが片面に凹部分を有するものである場合は、該凹部分は、直径が5〜25mmの円柱形状又は1辺の長さが5〜25mmの四角柱形状を有するものであることが好ましい。凹部分が、直径が5mm未満の円柱形状又は1辺の長さが5mm未満の四角柱形状を有するものであると、直径又は1辺の長さが5mm以上である場合と比べて、後打ちコンクリートが凹部分に入り込むことが困難となり、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm
2以上の付着強度が得られ難い。一方、凹部分が、直径が25mm以下の円柱形状又は1辺の長さが25mm以下の四角柱形状を有するものであると、埋設型枠用ボードの面積比(S
1/S
2)を大きくすることができ、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が大きくなり、1N/mm
2以上の付着強度を得ることが容易となる。
【0043】
本発明において、上記凸部分同士又は凹部分同士の間隔は、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは3mm以上であり、特に好ましくは4mm以上である。凸部分同士又は凹部分同士の間隔が2mm以上であれば、製造が容易であるうえに、製造時や運搬時、工事現場への設置の際に、凸部分や凹部分に欠け等が生じにくくなる。
凸部分同士又は凹部分同士の間隔が大きすぎると、凸部分同士又は凹部分同士の間隔が大きすぎない場合に比べて、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリートとの付着力が低下し、1N/mm
2以上の付着強度を得ることが難しくなる。このため、凸部分同士又は凹部分同士の間隔は、20mm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、凸部分同士の間隔とは、凸部分3と凸部分3の間の空隙の距離d
1(
図2参照)をいう。また、凹部分同士の間隔とは、凹部分12と凹部分12の間の距離d
2(
図5参照)をいう。
【0044】
本発明の埋設型枠用ボードは、好ましくは120N/mm
2以上、より好ましく150N/mm
2以上、さらに好ましくは180N/mm
2以上、特に好ましくは200N/mm
2以上の圧縮強度を有する水硬性組成物からなるものであり、極めて緻密で、表面処理等を行わなくても凍結融解抵抗性、耐摩耗性、非透水性等に非常に優れている。
水硬性組成物の圧縮強度が120N/mm
2以上であれば、運搬や工事現場への設置の際に、凸部分又は凹部分を有する面に欠けやひび割れ等が生じにくくなり好ましい。また、埋設型枠用ボード自体の強度や耐久性を高めるために、埋設型枠用ボード内に鉄筋を配筋したり、厚さを大きくする必要がなくなり、製造や運搬、工事現場への設置に手間がかからず、好ましい。
【0045】
本発明の埋設型枠用ボードの寸法は、埋設型枠用ボード自体の強度や耐久性、さらには、製造や運搬、工事現場への設置等の手間を考慮して、縦0.3〜5.0m×横0.3〜5.0m×厚さ1〜7cmであることが好ましい。なお、ここで、埋設型枠用ボードの厚さとは、片面(基準面)に凸部分が形成されている場合は、該凸部分の頂部分の面から、該凸部分が形成されていない反対側の片面までの距離をいう。片面(基準面)に凹部分が形成されている場合は、該凹部分が形成されている片面(基準面)から、凹部分が形成されていない反対側の片面までの距離をいう。
【0046】
本発明の埋設型枠用ボードは、当該埋設型枠用ボードを固定するためのインサート孔を有することができる。固定具をインサート孔に挿通して、法面や天井等に打ち付けることによって、埋設型枠用ボードをアーチ状、板状等の形状に容易に組み立てることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用原料]
(a)ポルトランドセメント
中庸熱ポルトランドセメント(エーライト:44.1質量%、ビーライト:34.9質量%、アルミネート相:3.0質量%、フェライト相:12.3質量%(以上、ボーグの式によって算出した値である。);ブレーン比表面積:3,250cm
2/g;太平洋セメント社製)
低熱ポルトランドセメント(エーライト:27.3質量%、ビーライト:55.8質量%、アルミネート相:1.9質量%、フェライト相:9.1質量%(以上、ボーグの式によって算出した値である。);ブレーン比表面積:3,400cm
2/g;太平洋セメント社製)
(b)シリカフューム
シリカフューム(BET比表面積:18m
2/g)
(c)無機粉末
無機粒子A:石英粉末A(ブレーン比表面積:7,500cm
2/g)
無機粒子B:石英粉末B(ブレーン比表面積:3,800cm
2/g)
(d)細骨材
珪砂(粒径:0.15〜0.6mm、75μm以下の粒子の含有率:1質量%未満)
(e)減水剤
ポリカルボン酸系高性能減水剤
(f)水
水道水
(g)補強繊維
鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:13mm)
ビニロン繊維(直径0.3mm、長さ13mmのモノフィラメントタイプ)
(h)消泡剤
消泡剤(ポリエーテル系)
(i)繊維状粒子
ウォラストナイト(平均長さ:0.3mm、長さ/直径の比:4)
【0048】
[実施例1]
中庸熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末A、B(合計量:35質量部、石英粉末Bの配合量:4.0質量部)、細骨材120質量部、水22質量部、減水剤0.4質量部(固形分換算)、鋼繊維(配合量:水硬性組成物中の体積割合で2.0%)、消泡剤(配合量:水以外の成分の量として水硬性組成物1m
3当たり15g)を混練して、水硬性組成物を調製した。
混練は、パン型ミキサを使用して、以下の方法で行った。
中庸熱ポルトランドセメント、シリカフューム、石英粉末A、石英粉末B、および細骨材をパン型ミキサに投入して、15秒間空練りした後、水、減水剤および消泡剤を投入して、7分間混練し、さらに鋼繊維を投入して、2分間混練した。
【0049】
得られた水硬性組成物について、以下の方法でフロー値および圧縮強度を測定した。
(イ)フロー値
「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行なわないで、フロー値を測定した。
(ロ)圧縮強度
水硬性組成物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で24時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)を得た。該硬化体(3本)の圧縮強度の測定値の平均値を、圧縮強度の値とした。
【0050】
得られた水硬性組成物を、400mm×400mm×30mm(厚さ)の底面が平面である型枠に流し込んだ後、該打設面を、ビニールシートを用いて覆って30分間静置した。静置後、直径が10mmである略円柱状の穴を複数有し、厚みが6mmであるゴムマットを、未硬化の水硬性組成物の上面に押し付けて養生(20℃で48時間前置き後、90℃で48時間蒸気養生)した後、脱型して、片面4の全面に略均一に、高さが6mmであり、直径が10mmである複数の凸部分3を有する埋設型枠用ボード1(実施例1)を製造した(
図1参照)。なお、凸部分同士の間隔は5mmであった。
得られた埋設型枠用ボード1の断面積率(凸部分3の3mmの高さにおける切断面の面積(合計;Ca)と、凸部分3を有する片面4全体の投影面積(S
2)との比(Ca/S
2×100%))は、35%であり、面積比(凸部分3を有する片面4の全表面積(S
1)と、凸部分3を有する片面4全体の投影面積(S
2)との比(S
1/S
2))は1.7であった。
【0051】
得られた埋設型枠用ボードについて、以下の方法で不良品の発生率の算出および後打ちコンクリートとの付着性の評価を行った。
(ハ)不良品の発生率
得られた埋設型枠用ボード1,000枚を、施工現場に移動した後、施工現場において該ボードを施工する際に、角欠けまたはひび割れが発生しているボード(不良品)の枚数を数え、得られた結果から、不良品の発生率を算出した。
【0052】
(ニ)後打ちコンクリートとの付着性の評価
[後打ちコンクリートの材料]
(a)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(b)細骨材;小笠産陸砂
(c)粗骨材;岩瀬産5号砕石と岩瀬産6号砕石の混合物(最大粒径20mm)
(d)減水剤;リグニンスルホン酸系AE減水剤
(e)AE剤;アルキルアリルスルホン化合物系陰イオン界面活性剤
(f)水 ;水道水
[後打ちコンクリートの配合]
上記材料を表1に示す割合で配合し、該材料を一括してパン型ミキサに投入し、90秒間混練して後打ちコンクリート用の配合物を得た。この配合物のスランプ値は12cmであった。また、後打ちコンクリートの圧縮強度は32N/mm
2(28日間水中養生)であった。
【0053】
【表1】
【0054】
[付着強度の試験方法]
得られた埋設型枠用ボード200枚について、各々、凸部分3を有する片面4を底面とした型枠内に、上記後打ちコンクリート用の配合物を流し込み、20℃で24時間湿空養生した後、脱型し、さらに28日間水中養生し、硬化させて、埋設型枠用ボードと後打ちコンクリート(厚さ50mm)からなる試験体(硬化体)を得た。
図6(a)に示すように、試験体20の一つ側端面21から80mm、200mm、320mmの位置に、埋設型枠用ボード20aの側から後打ちコンクリート20bに達する程度まで、側端面21に対して平行に3本の切り込み線22、23、24を形成した。この3本の切り込み22、23、24に対して直交するように、上記側端面21と直交する一つの側端面25から80mm、200mm、320mmの位置に、さらに3本の切り込み線26、27、28を形成し、試験体20の表面に、6本の切り込み線22〜24及び26〜28同士が直交する9点の試験位置(a〜i)を形成した。
図6(b)に示すように、上方に埋設型枠用ボード20a、下方に後打ちコンクリート20bが配置されるように試験体20を設置し、それぞれの試験位置(a〜i)に鋼製の上部引張用のアタッチメント30をエポキシ樹脂接着剤で貼り付け、該アタッチメントの上に重石を載せて、20℃の乾燥炉で試験体20を一日静置した。その後、上部引張用のアタッチメント30を介して載荷速度1.0kN/mm
2で鉛直方向(
図4(b)中の矢印方向)に引張載荷したときの最大荷重を求め、この数値を上部引張用のアタッチメント30の接着面積で除して付着強度とし、後打ちコンクリートとの付着強度が1.0N/mm
2未満となった枚数を調べた。該枚数が少ないほど後打ちコンクリートとの付着性が良好である。
なお、実施例1において試験体20の9点の試験位置(a〜i)の各々に、アタッチメントを接着し、該アタッチメントを介して測定した付着強度の平均値は2.4N/mm
2であった。
【0055】
[比較例1]
石英粉末Aと石英粉末Bの合計量35質量部中の石英粉末Bの配合量を、4.0質量部から0質量部(配合せず)に変更した以外は、実施例1と同様にして実験した。ただし、圧縮強度は測定しなかった。
[比較例2]
石英粉末Aと石英粉末Bの合計量35質量部中の石英粉末Bの配合量を、4.0質量部から7.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実験した。
【0056】
[比較例3]
水硬性組成物として、低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム32質量部、石英粉末A35質量部、細骨材105質量部、ウォラストナイト4質量部、水22質量部、減水剤0.8質量部(固形分換算)、及び鋼繊維(配合量:水硬性組成物中の体積割合で2.0%)を混練して調整する以外は実施例1と同様にして実験した。
以上の結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
[実施例2]
鋼繊維に代えてビニロン繊維(配合量:水硬性組成物中の体積割合で3.0%)を配合し、かつ、減水剤の配合量を0.40質量部(固形分換算)から0.43質量部(固形分換算)に変更した以外は、実施例1と同様にして実験した。なお、付着強度の平均値は2.2N/mm
2であった。
【0059】
[比較例4]
鋼繊維に代えてビニロン繊維(配合量:水硬性組成物中の体積割合で3.0%)を配合し、かつ、減水剤の配合量を0.80質量部(固形分換算)から0.85質量部(固形分換算)に変更した以外は、比較例3と同様にして実験した。
以上の結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表2〜3から、本発明の埋設型枠用ボード(実施例1〜2)は、比較例1〜4と比べて不良品の発生率が低く、また、製造時に静置工程における静置時間が30分間と短くても、後打ちコンクリートとの付着性に優れていることがわかる。
【0062】
[実施例3]
直径が10mmである略円柱状の穴を複数有し、厚みが6mmであるゴムマットの代わりに、直径が10mmであり、高さが6mmである略円柱状の凸部分を複数有するゴムマットを使用した以外は、実施例1と同様にして、片面の全面に略均一に、深さが6mmであり、直径が10mmである複数の凹部分を有する埋設型枠用ボードを製造した。なお、凹部分同士の間隔は5mmであった。
得られた埋設型枠用ボードの断面積率(凹部分の3mmの深さにおける切断面の面積(合計;Ca)と、凹部分を有する片面全体の投影面積(S
2)との比(Ca/S
2×100%))は、35%であり、面積比(凹部分を有する片面の全表面積(S
1)と、凹部分を有する片面全体の投影面積(S
2)との比(S
1/S
2))は1.7であった。
得られた埋設型枠用ボードの不良品の発生率の算出および後打ちコンクリートとの付着性の評価を実施例1と同様にして行った。
その結果、不良品の発生率は1.0%未満であった。また、後打ちコンクリートとの付着強度が1.0N/mm
2未満となった枚数は0枚であった。
なお、付着強度の平均値は1.9N/mm
2であった。
実施例3より、本発明の埋設型枠用ボードは、不良品の発生率が低く、また、製造時に静置工程における静置時間が30分間と短くても、後打ちコンクリートとの付着性に優れていることがわかる。