特許第6430215号(P6430215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6430215レーダシステム及びそのレーダ信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430215
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】レーダシステム及びそのレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/46 20060101AFI20181119BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20181119BHJP
   G01S 13/32 20060101ALI20181119BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   G01S13/46
   G01S7/02 216
   G01S13/32
   G01S13/34
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-226040(P2014-226040)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-90431(P2016-90431A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
【審査官】 大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−198312(JP,A)
【文献】 特開2008−275382(JP,A)
【文献】 特開2013−044602(JP,A)
【文献】 特開2012−083143(JP,A)
【文献】 特開平8−271609(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/299773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数スイープ勾配をもつアップスイープまたはダウンスイープの少なくとも1つの連続波をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信する、少なくとも1台の送受信レーダ装置と、
前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置に配置され、前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信される前記レーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置と
を具備し、
前記送受信レーダ装置の送信系統は、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つ連続波またはFMICW(Frequency Modulated Interrupted Continuous Wave)によるパルス信号を送信し、
前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置は、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するレーダシステム。
【請求項2】
パルス信号をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信する、少なくとも1台の送受信レーダ装置と、
前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置に配置され、前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信される前記レーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置と
を具備し、
前記送受信レーダ装置の送信系統は、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つパルス信号を送信し、
前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置は、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するレーダシステム。
【請求項3】
少なくとも1台の送受信レーダ装置により周波数スイープ勾配をもつアップスイープまたはダウンスイープの少なくとも1つの連続波をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信するようにし、
前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置にNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置を配置して、個々の受信レーダ装置で前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信される前記レーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するようにしたレーダシステムに適用され、
前記送受信レーダ装置の送信系統が、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つ連続波またはFMICW(Frequency Modulated Interrupted Continuous Wave)によるパルス信号を送信し、
前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置が、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するレーダシステムの信号処理方法。
【請求項4】
少なくとも1台の送受信レーダ装置によりパルス信号をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信するようにし、
前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置にNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置を配置し、個々の受信レーダ装置が、前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信される前記レーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するようにし、
前記送受信レーダ装置の送信系統が、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つパルス信号を送信し、
前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置が、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するレーダシステムの信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、互いに離間された複数のレーダ装置を用いて目標の位置を検出するレーダシステム及びそのレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、レーダシステムにあっては、主とする送受信レーダ装置と共に1または複数の送受信レーダ装置または受信レーダ装置を離間して配置し、各レーダ装置の観測結果により目標の位置を検出するマルチスタティック方式が開発されている。この種のレーダシステムでは、各レーダ装置が送信ビームを向けた方向に受信ビームを形成する。この場合、システム利得を向上させるためにペンシルビームが用いられる。ところが、多数の送受信ビームを送受信すると、観測時間の制約により観測範囲が限定されたり、観測時間が増加するという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】位相モノパルス(位相比較モノパルス)方式、電子情報通信学会、改訂レーダ技術、pp.262-264(1996)
【非特許文献2】テーラー分布、吉田、‘改定レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.134-135(1996)
【非特許文献3】FMCW方式(アップチャープとダウンチャープ)、吉田、‘改定レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.274-275(1996)
【非特許文献4】符号コード(M系列)発生方式、M.I.Skolnik, Introduction to radar systems,pp.429-430,McGRAW-HILL(1980)
【非特許文献5】MIMO処理、JIAN LI,PETER STOICA, ‘MIMO RADAR SIGNAL PROCESSING’,WILEY,pp.1-5(2009)
【非特許文献6】パルス圧縮、吉田、‘改定レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.278-280(1996)
【非特許文献7】FMICW、FRED E.Nathanson, ‘RADAR DESIGN PRINCIPLES second edition’,Scitech,pp452-454(1999)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来のマルチスタティック方式のレーダシステムでは、ペンシルビームにて送信ビームを向けた方向に多数の受信ビームを向けるために、観測範囲が限定されたり、観測時間が増加する課題があった。
【0006】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、マルチスタティック方式でも比較的短時間に広範囲の目標を観測することのできるレーダシステム及びそのレーダ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1の実施形態に係るレーダシステムは、周波数スイープ勾配をもつアップスイープまたはダウンスイープの少なくとも1つの連続波をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信する、少なくとも1台の送受信レーダ装置と、前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置に配置され、前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信されるレーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置とを具備し、前記送受信レーダ装置の送信系統は、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つ連続波またはFMICW(Frequency Modulated Interrupted Continuous Wave)によるパルス信号を送信し、前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置は、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するようにしたものである。
【0008】
また、第2の実施形態に係るレーダシステムは、パルス信号をレーダ波としてアンテナ装置から送信し、前記レーダ波の反射波を前記アンテナ装置で受信する、少なくとも1台の送受信レーダ装置と、前記送受信レーダ装置とは互いに異なる位置に配置され、前記送受信レーダ装置の少なくとも位置、送信ビーム方向、送信周波数、送信波形の情報を取得し、前記送受信レーダ装置から送信されるレーダ波の反射波をアンテナ装置で受信するNr台(Nr≧1)の受信レーダ装置とを具備し、前記送受信レーダ装置の送信系統は、前記アンテナ装置の送受信アンテナ開口面をN(N≧2)個のサブアレイに分割し、前記N個のサブアレイそれぞれで移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に異なるコード系列によるN通りの変調信号を持つ連続波またはFMICW(Frequency Modulated Interrupted Continuous Wave)によるパルス信号を送信し、前記送受信レーダ装置の受信系統及び前記受信レーダ装置は、前記アンテナ装置の開口面をM(M≧2)個のサブアレイに分割し、前記サブアレイの移相器の移相量を順次変えながら、サブアレイ毎に送信のN通りの変調信号に対応した復調信号により復調し、各々のサブアレイの出力としてN×M個の出力を得て、観測域のAZ角度及びEL角度の範囲をNb本の複数ビームで覆うためのNb種類の送受信ビーム形成用のウェイトを乗算し、合成して目標位置を観測するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るレーダシステムの構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態に用いられる送受信レーダ装置のアンテナ部の構成を示すブロック図。
図3】第1の実施形態に用いられるレーダ装置の送信用アンテナ部、受信用アンテナ部の構成を示すブロック図。
図4】第1の実施形態に用いられる受信レーダ装置の受信用アンテナ部の構成を示すブロック図。
図5】第1の実施形態のレーダシステムの信号処理手順を示すフローチャート。
図6】第1の実施形態の信号処理におけるMRAVによる測距・測速の手順を示すフローチャート。
図7】第1の実施形態のMRAVによって処理される2スイープの送信信号波形を示す波形図。
図8】第1の実施形態のMRAVにおいて目標のビート周波数を観測するための周波数バンク群を示す周波数分布図。
図9】第1の実施形態のMRAVにおいて目標のビート周波数を観測して誤差電圧を算出するための特性図。
図10】第1の実施形態のMRAVによって処理される4スイープの送信信号波形を示す波形図と、目標のビート周波数を観測するための周波数バンク群と4スイープそれぞれの2目標観測結果を示す周波数分布図。
図11】第1の実施形態のMRAVに用いるスイープ信号の波形を示す波形図。
図12】第1の実施形態において、3次元に拡張した場合のバイスタティック送受信を説明するための概念図。
図13】第1の実施形態において、3次元バイスタティック送受信を行うアンテナ素子それぞれの一般的な配置座標とその部分配置例を示す概念図。
図14】第1の実施形態において、バイスタティック送受信によるビーム形成の様子を示す概念図。
図15】第2の実施形態に係るレーダシステムの構成を示すブロック図。
図16】第2の実施形態のレーダシステムの信号処理手順を示すフローチャート。
図17】第2の実施形態のレーダ送受信に用いる送信パルスの波形を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)(MRAVによる位置出力)
以下、第1の実施形態に係るレーダシステムを説明する。
図1は第1の実施形態に係るレーダシステムの全体構成を示すブロック図、図2は第1の実施形態に用いられる送受信レーダ装置のアンテナ部の構成を示すブロック図、図3図2に示す送受信レーダ装置のアンテナ部における送信機能の構成を示すブロック図、図4は第1の実施形態に用いられる受信レーダ装置のアンテナ部における受信機能の構成を示すブロック図、図5は第1の実施形態のレーダシステムの信号処理手順を示すフローチャートである。尚、図1乃至図4において、同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0012】
図1に示すレーダシステムは、一つの送受信レーダ装置Aと、この送受信レーダ装置Aから送信されたレーダ信号の反射波を受信可能な位置に配置される1または複数(ここでは1台)の受信レーダ装置Bを備える。これらの送受信レーダ装置A及び受信レーダ装置Bは、通信装置(図示せず)により、制御情報、信号処理結果等の情報を相互に送受信可能となされている。
【0013】
送受信レーダ装置Aにおいて、アンテナ部A1は、図2に示すように、アンテナ開口面を分割したN個のサブアレイA111〜A11Nと、各サブアレイA111〜A11Nの送受信を制御する制御器A12と、各サブアレイA111〜A11Nで得られた受信信号を入力して任意の方向に受信ビームを形成するビーム形成器A13とを備える。
【0014】
ここで、サブアレイA111を代表してアンテナ部A1の内部構成を説明する。
まず、送信系統では、制御器A12の制御のもとにサブアレイ毎に異なるM系列(引用文献4参照)等の符号化コードを変調器11で発生し、連続波によるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:引用文献3参照)またはパルス変調したFMICW(Frequency Modulated Interrupted Continuous Wave:引用文献7参照)によるスイープ信号(図11に一例を示す)をローカル信号発生器12で発生させ、周波数変換器13によりRF信号に変換して、電力分配器14でm系統に分配する。i(iは1〜m)番目の系統では、分配されたRF信号を送信移相器15iにより位相制御してビーム形成し、送信増幅器16iにより増幅してサーキュレータ17iを経由してアンテナ素子18iから送出する。尚、制御器A12は、例えば送信ビーム方向等の送信信号に対する制御情報を通信回線(図示せず)を介して受信レーダ装置Bに送る。
【0015】
受信系統では、第iの系統において、目標から反射した信号をアンテナ素子18iで受信し、サーキュレータ17iを経由して受信増幅器19iで低雑音増幅し、受信移相器1Aiで受信ビーム形成用の位相を与えた後、電力合成器1Bにより他の系統からの受信信号と共にサブアレイ内で合成する。そして、合成された受信信号を送信波形と同様のFMCWスイープ信号を用いたローカル信号により周波数変換器1Cでベースバンドに周波数変換して、AD(Analog-Digital)変換器1Dによりディジタル信号に変換する。その後、制御器A12の制御のもと、送信時にサブアレイ毎に生成された互いに異なるn個の変調信号の各々により復調することで、サブアレイ毎に受信信号を得て、ビーム形成器A13により受信ビ−ムを形成する。この受信ビームとしては、モノパルス測角用のΣchとΔch(AZ軸とEL軸)がある。このようにしてアンテナ部A1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号は信号処理部A2に送られる。
【0016】
信号処理部A2は、図1に示すように、アンテナ部A1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号をそれぞれΣchとΔchのFFT(fast Fourier transform)A21,A22で周波数領域の信号に変換することで、Σビームを形成するΣchのビート信号とΔビームを形成するΔchのビート信号を生成する。そして、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理部A23によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し、MRAV(Measurement Range After measurement Velocity)処理部A24により周波数軸のΣ(f)とΔ(f)を用いたCFAR検出結果に基づいて測距・測速演算を行い、測角演算部A25によりΔchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行う。
【0017】
尚、図2では、送信及び受信それぞれのサブアレイ(アンテナ開口を分割したアンテナ素子のグループ単位)を同一アンテナ開口に含めたアンテナ部A1の構成を説明したが、図3に示すように、アンテナ部A1を送信系と受信系とを分離して、少なくともマルチスタティック用の送信アンテナ部と受信アンテナ部を備えるようにしてもよい。尚、図3において、図2に示す構成と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0018】
次に、受信レーダ装置Bにおいて、アンテナ部B1は、図4に示すように、それぞれm個のアンテナ素子211〜21mを備え、アンテナ開口面を分割したM個のサブアレイB111〜B11Mと、各サブアレイB111〜B11Mの送受信を制御する制御器B12と、各サブアレイB111〜B11Mで得られた受信信号を入力して任意の方向に受信ビームを形成するビーム形成器B13とを備える。
【0019】
ここで、サブアレイB111を代表してアンテナ部B1の内部構成を説明する。
まず、送信系統では、制御器B12において、送受信レーダ装置Aから通信回線を介して伝送される送信ビーム方向等の送信信号に対する制御情報を受け取り、制御器B12の制御のもとにサブアレイ毎に連続波によるFMCWまたはパルス変調したFMICWによるスイープ信号をローカル信号発生器21で発生させる。受信系統では、第iの系統において、目標から反射した信号をアンテナ素子22iで受信し、サーキュレータ23iを経由して受信増幅器24iで低雑音増幅し、受信移相器25iで受信ビーム形成用の位相を与えた後、電力合成器26により他の系統からの受信信号と共にサブアレイ内で合成する。そして、合成された受信信号を送信波形と同様のFMCWスイープ信号を用いたローカル信号により周波数変換器27でベースバンドに周波数変換して、AD(Analog-Digital)変換器28によりディジタル信号に変換する。その後、制御器B12の制御のもと、送信時にサブアレイ毎に生成された互いに異なるn個の変調信号の各々により復調することで、サブアレイ毎に受信信号を得て、ビーム形成器B13により受信ビ−ムを形成する。この受信ビームとしては、モノパルス測角用のΣchとΔch(AZ軸とEL軸)がある。このようにしてアンテナ部B1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号は信号処理部B2に送られる。
【0020】
信号処理部B2は、図1に示すように、アンテナ部B1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号をそれぞれΣchとΔchのFFTB21,B22で周波数領域の信号に変換することで、Σビームを形成するΣchのビート信号とΔビームを形成するΔchのビート信号を生成する。そして、CFAR処理部B23によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し、MRAV処理部B24により周波数軸のΣ(f)とΔ(f)を用いたCFAR検出結果に基づいて測距・測速演算を行い、測角演算部B25により、Δchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行い、位置算出部B26にて目標位置を算出し、レーダ検出結果として出力する。
【0021】
すなわち、図1に示すレーダシステムでは、図5に示すように、送受信レーダ装置Aにおいて、送信ビーム方向等の制御情報が与えられると、制御情報に基づく制御を開始し(ステップS11)、スイープ信号を生成してスイープ送受信を行う(ステップS12)。スイープ受信信号の受信処理として、ΣchとΔchのビーム受信信号をそれぞれFFT処理してΣchのビート信号とΔchのビート信号を生成する(ステップS131)。そして、CFAR処理によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し(ステップS132)、MRAV処理によりCFAR検出結果に基づいて測距・測速演算を行い(ステップS133)、Δchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行う(ステップS134)。
【0022】
一方、受信レーダ装置Bにおいて、送信ビーム方向等の制御情報が与えられると、制御情報に基づく制御開始し(ステップS14)、スイープ信号を生成してスイープ受信を行う(ステップS15)。スイープ受信信号の受信処理として、ΣchとΔchのビーム受信信号をそれぞれFFT処理してΣchのビート信号とΔchのビート信号を生成する(ステップS161)。そして、CFAR処理によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し(ステップS162)、MRAV処理によりCFAR検出結果に基づいて測距・測速演算を行い(ステップS163)、Δchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行う(ステップS164)。最終的に、測角演算結果に基づいて目標位置を算出し、レーダ検出結果として出力して(ステップS17)、次のサイクルに移行する。
【0023】
ここで、上記MRAV処理部A24,B24におけるMRAV手法(特許文献1参照)について、その一連の処理の概要を説明する。
図6はMRAV手法による測距・測速の手順を示すフローチャートである。ここでは、送信信号波形として、図7に示す時間間隔T12の2回のダウンスイープの場合で説明する。尚、ダウンスイープに限らず、ダウンスイープ−アップスイープの連続波形として、そのうちのダウンスイープのみ、またはアップスイープのみ処理する場合でもよい。また、簡単のため2回のスイープの場合について述べるが、N(N≧2)回の場合でも同様である。
【0024】
まず、時間差T12をもち、周波数を連続的にスイープする信号1(図7)を送受信して得られるスイープ1のサンプル系列をFFT処理し(ステップS21)、スイープ1のFFT結果をスレショルド検出して(ステップS22)、ピーク信号をもつ周波数fpを抽出し、目標のビート周波数として保存する(ステップS23)。次に、ステップS24のスイープ終了の判断処理、S25のスイープ番号の変更処理(+1)により、スイープ2についてステップS21〜S23の処理を実行し、スイープ2における目標のビート周波数fpを抽出し保存する。ビート周波数が複数ある場合には、それぞれ目標番号を付して保存する。
【0025】
次に、スイープ1とスイープ2それぞれのビート周波数fpを用いて、目標毎の速度vと距離Rを算出する(ステップS26,S27)。
ここで、距離Rは、
【数1】
【0026】
により算出できる。そこで、速度vをスイープ1,2の相対距離R1,R2と時間間隔T12に基づいて算出し、目標の距離Rを速度vとスイープ1,2のビート周波数fpに基づいて、次の連立方程式により算出する。
【数2】
【0027】
以上の方式は、ビート周波数により目標の速度を算出した後、距離を算出することから、MRAV(Measurement Range after measurement Velocity)(特許文献1)方式と呼ばれる。以上のMRAV処理により算出された目標の速度、距離の情報をデータベースに保存する(ステップS28)。ステップS29の目標終了判定処理、ステップS210の目標番号更新処理(+1)により全ての目標について距離と速度を求めて保存し、次の時間間隔の処理に移行する。
【0028】
ここで、上記ビート周波数の観測精度を向上する方式がある。特に、目標の速度が遅い場合等、スイープ間でビート周波数が同一バンク内になる場合には、同一バンク内で精度よくビート周波数を算出する必要がある。この対策として、図8の周波数バンクにΣ及びΔビームを形成し、図9(a)に示すように、角度軸で用いる位相モノパルス(引用文献1)を周波数軸に用いて、図9(b)に示す観測周波数と誤差電圧の関係からバンク内の周波数を高精度に観測する手法である。以下に手順を示す。
【0029】
(1)周波数軸モノパルスとして、抽出した目標の周波数のΣ(f)とΔ(f)を用いて、次式により誤差電圧εを算出する。
【数3】
【0030】
ここで、Σは受信データ1〜Nに重みづけ1を乗算した後、FFT処理する加算を意味し、Δは受信データの1〜N/2に重みづけ−1を、N/2+1〜Nに重みづけ1を乗算した後、FFT処理する減算を意味し、fpは検出したビート周波数、*は複素共役、Reは実数部を表す。なお、重みづけについては、サイドローブを低減するためにテーラーウェイト(引用文献2)等を乗算するようにしてもよい。
【0031】
(2)予め保存してあるΣとΔの周波数特性を用いて算出した誤差電圧εの基準値ε0をテーブル化(ε0と周波数fの対応)した基準テーブルを作成しておき、その基準テーブルを用いて、上記の観測値εから、高精度な周波数値fpを抽出する。
(3)上記ビート周波数fpを用いて、図6に示した手順により、距離Rと速度vを算出する。
【0032】
以上の説明では、2スイープの場合について述べたが、一般的に複数スイープの場合でもよく、例えば図10(a)に示すような1サイクル4スイープ(1スイープの時間T12)の場合でもよい。スイープ時間T12に対する4点のビート周波数の勾配より速度を算出する際には、図10(b)に示すように、直線フィッティング等の手法を用いればよい。
【0033】
本実施形態では、MRAV手法を適用する場合について述べたが、FMCW方式(引用文献3)として一般的なアップチャープとダウンチャープを用いる方式により、距離及び速度を算出する手法を適用してもよい。また、角度軸のモノパルス演算は、Σ信号を用いてCFAR処理して検出したセルについて行う。また、測角は、測角用のビーム出力のΣとΔを用いて行い、Az角及びEL角を算出する。
【0034】
次に、図12を参照して、マルチスタティック(2台の場合はバイスタティック)の場合の目標位置の算出方法を述べる。例えば受信レーダ装置Bを1台とすると、RDR1(送信)〜RDR2(受信)までの各々の距離として、R1,R2を得ることができる。この距離による楕円球面と受信RDR2から観測したAZ角、EL角による方向ベクトルの交点より、3次元の目標位置(x,y,z)を出力することができる。この位置算出手法としては他の手法でもよい。
【0035】
次に、本実施形態の主要な点である観測範囲を広範囲にする手法について述べる。従来のマルチスタティックレーダにおいては、システム利得を向上するために、送信ペンシルビームを観測範囲に向けて、その方向に受信ペンシルビームを向けていた。観測範囲を広げるには、所定の観測範囲内を覆うように、順次送信ペンシルビームを走査し、受信ペンシルビームもそれに合わせて走査するため、長い観測時間を要する問題があった。これに対して、本実施形態の対策手法について以下に述べる。
【0036】
図13(a)に送信及び受信のアンテナ座標系の一般例を示し、その一部を取り出して、図13(b)に、送信と受信がそれぞれ縦列と横列に配列したアレイの場合を示す。図13(a),(b)からわかるように、送信と受信の列アレイの向きは逆の場合等でもよいのは言うまでもない。
【0037】
次に、MIMOの処理について以下に示す(引用文献5)。MIMOでは、送信レーダにおいて、例えば図11に示すようなスイープ信号波形を、サブアレイ毎(サブアレイ数N)に異なるM系列(引用文献4)で変調して送信し、受信ではサブアレイ毎(サブアレイ数M)で受信した信号を周波数変換後にAD変換し、N通りのM系列で復調してN×Mの信号を得る。これを以下に定式化する。送信アンテナと受信アンテナの複素ウェイトをそれぞれA,Bと表すと次式となる。
【数4】
【0038】
これより、各要素は次式となる。
【数5】
【0039】
次に、各送受信素子信号を行列の要素で表現すると、次式となる。
【数6】
【0040】
送受信ビーム出力は、(6)式の要素にサイドローブ低減用のウェイトと、サイドローブ低減用のウェイトを乗算後加算となり、次式となる。
【数7】
【0041】
以上をふまえて、送信レーダから見て、所定の観測範囲をAZa1〜AZa2,ELa1〜Ela2とすると、各サブアレイのビーム幅に応じて観測範囲を分割し、分割単位毎に、サブアレイ内のアンテナ素子の位相を(6)式のビーム方向(AZa0,ELa0)を制御して送信する。一方、受信レーダでは、受信レーダから見て、送信レーダが送信した範囲にサブアレイ内のアンテナ素子の位相を(6)式により制御してビームを指向(AZb0,ELb0)し受信する。
【0042】
次に、サブアレイで送受信した信号をそのまま用いて、ビーム形成器により、図13に示すように、サブアレイが送受信した空間内で、(6)式のAZap、ELap、AZbp、ELbp(p=1〜P:Pはサブアレイ内に形成するビーム番号)を順次制御して複素ウェイトとして設定し、(7)式の演算により送受信ビームを形成する。これにより、サブアレイが指向したビーム方向を覆うことができる。さらに、図14に示すように、サブアレイビームの指向方向を変えて送受信することにより、観測範囲全体を覆って捜索することができる。
以上のビ−ム形成手法により、観測範囲全体をペンシルビームで順次捜索する場合に比べて、サブアレイで形成できる幅の広いビームを用いて捜索して、サブアレイビームの範囲内はビーム形成器でディジタル信号によりDBF(Digital Beam Forming)を形成できるため、捜索時間を短縮化できる効果が得られる。
【0043】
(第2の実施形態)(パルスレーダによる位置出力)
以下、第2の実施形態に係るレーダシステムを説明する。
図15は第2の実施形態に係るレーダシステムの全体構成を示すブロック図、図16は第2の実施形態のレーダシステムの信号処理手順を示すフローチャートである。尚、図15及び図16において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0044】
第1の実施形態に係るレーダシステムが送信信号にスイープ信号を用いたCWレーダを採用した場合であるのに対して、第2の実施形態に係るレーダシステムは、パルス信号を用いたパルスレーダを採用した場合である。
【0045】
図15の送受信レーダ装置A及び受信レーダ装置Bの各アンテナ部A1,B1については、第1の実施形態の図2図4と同様であるので説明を割愛する。
【0046】
送受信レーダ装置Aでは、パルスによる変調波を生成し、目標方向に指向させたビームをアンテナ部A1により送信し、目標から反射した信号を送受信レーダ装置A及び受信レーダ装置Bで受信する。各レーダ装置A,Bでは、アンテナ部A1,B1において、受信信号をAD変換した後、送信波形と同様の変調信号を用いたローカル信号により復調し、ΣchとΔchのビーム出力信号を信号処理部A2,B2に入力する。
【0047】
送受信レーダ装置Aの信号処理部A2では、アンテナ部A1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号をそれぞれΣchとΔchのFFT(fast Fourier transform)A21,A22で周波数領域の信号に変換することで、Σビームを形成するΣchのビート信号とΔビームを形成するΔchのビート信号を生成する。そして、それぞれパルス圧縮部A26,A27でM系列信号によるパルス圧縮(引用文献6)することで、SN(Signal to Noise Ratio)を向上させる。
【0048】
次に、CFAR処理部A23により、パルス圧縮されたΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し、測距演算部A28で測距を算出する。さらに、測角演算部A25により、パルス圧縮されたΔchのビート信号に基づいて、測距された位置における測角演算を行い、Az角及びEL角を算出する。
【0049】
同様に、受信レーダ装置Bの信号処理部B2では、アンテナ部B1で得られたΣchとΔchのビーム出力信号をそれぞれΣchとΔchのFFT(fast Fourier transform)B21,B22で周波数領域の信号に変換することで、Σビームを形成するΣchのビート信号とΔビームを形成するΔchのビート信号を生成する。そして、それぞれパルス圧縮部B27,B28でM系列信号によるパルス圧縮(引用文献6)することで、SN(Signal to Noise Ratio)を向上させる。
【0050】
次に、CFAR処理部B23により、パルス圧縮されたΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し、測距演算部B29で測距を算出する。さらに、測角演算部B25により、パルス圧縮されたΔchのビート信号に基づいて、測距された位置における測角演算を行い、Az角及びEL角を算出した後、位置算出部B26により、目標位置を算出する。
【0051】
すなわち、図15に示すレーダシステムでは、図16に示すように、送受信レーダ装置Aにおいて、送信ビーム方向等の制御情報が与えられると、制御情報に基づく制御を開始し(ステップS31)、パルス信号を生成して送受信を行う(ステップS32)。送信パルス受信信号の受信処理として、ΣchとΔchのビーム受信信号をそれぞれFFT処理してΣchのビート信号とΔchのビート信号を生成する(ステップS331)。そして、パルス圧縮処理によりSNを向上させ(ステップS332)、CFAR処理によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し(ステップS333)、測距処理により測距演算を行い(ステップS334)、パルス圧縮されたΔchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行う(ステップS335)。
【0052】
一方、受信レーダ装置Bにおいて、送信ビーム方向等の制御情報が与えられると、制御情報に基づく制御開始し(ステップS34)、パルス信号を生成して送受信レーダ装置Aから送出された送信パルスの目標反射信号を受信する(ステップS35)。送信パルスの受信処理として、ΣchとΔchのビーム受信信号をそれぞれFFT処理してΣchのビート信号とΔchのビート信号を生成する(ステップS361)。そして、各ビート信号についてパルス圧縮を行い(ステップS362)、CFAR処理によりΣchのビート信号から所定のスレショルドを超える信号を検出し(ステップS363)、MRAV処理によりCFAR検出結果に基づいて測距・測速演算を行い(ステップS364)、Δchのビート信号に基づいて測距位置における測角演算を行う(ステップS365)。最終的に、測角演算結果に基づいて目標位置を算出し、レーダ検出結果として出力して(ステップS37)、次のサイクルに移行する。
【0053】
以上のように、角度軸のモノパルス演算は、Σ信号を用いてCFAR処理することにより検出したセルについて行う。また、ビーム出力のΣとΔを用いて測角を行い、Az角及びEL角を算出する。この距離とAZ角、EL角を用いて、マルチスタティックにおける目標位置を算出する手法は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
第2の実施形態では、第1の実施形態が連続波またはFMICWによる連続したパルス波形を送受信し、ビート周波数を用いてMRAVより距離を算出した手法であるのに対して、図17に示すパルス内をM系列で変調したパルス圧縮波形を用いた点が異なる。これは、図2または図3において、各サブアレイによりパルス変調して、送信し、受信は図2または図4の復調器1Eにおいて、M系列の参照信号を用いてパルス圧縮することにより実現できる。送信及び受信の捜索範囲を覆う手段については、第1の実施形態と同様であるため、その説明は割愛する。
【0055】
また、マルチスタティックの場合として、送信装置と受信装置が大きく離隔した場合について述べたが、同一アンテナ開口の場合で送信と受信が離隔する場合や、同一の搭載機体の場合で、送信と受信が離隔する場合でもよい。
【0056】
また、固定または移動用のマルチスタティック動作の場合には、複数台のレーダ間で、レーダ位置、送信ビーム方向、機体姿勢、アンテナ開口面の向き、移相器設定位相等、必要に応じた情報を通信手段で伝送してもよい。この通信手段としては、有線または無線のデータリンク通信の他に、レーダ波形に通信情報を重畳して、目標やクラッタ等の反射信号を用いて復調する方式でもよい。
【0057】
その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A…送受信レーダ装置、A1…アンテナ部、A111〜A11n…サブアレイ、A12…制御部、A13…ビーム形成器、A2…信号処理部、A21,A22…FFT処理部、A23…CFAR処理部、A24…MRAV処理部、A25…測角演算部、A26,A27…パルス圧縮部、A28…測距演算部、
B…送受信レーダ装置、B1…アンテナ部、B111〜B11n…サブアレイ、B12…制御部、B13…ビーム形成器、B2…信号処理部、B21,B22…FFT処理部、B23…CFAR処理部、B24…MRAV処理部、B25…測角演算部、B26,B27…パルス圧縮部、B28…測距演算部、
11…変調器、12…ローカル信号発生器、13…周波数変換器、14…電力分配器、151〜15m…送信移相器、161〜16m…送信増幅器、171〜17m…サーキュレータ、181〜18m…アンテナ素子、191〜19m…受信増幅器、1A1〜1Am…受信移相器、1B…電力合成器、1C…周波数変換器、1D…AD変換器、1E…復調器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図17