特許第6430217号(P6430217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6430217-プロファイル研削盤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430217
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】プロファイル研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 47/12 20060101AFI20181119BHJP
   B24B 5/06 20060101ALI20181119BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B24B47/12
   B24B5/06
   B24B5/04
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-229439(P2014-229439)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-93850(P2016-93850A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−255284(JP,A)
【文献】 特開平07−080763(JP,A)
【文献】 特開平04−372361(JP,A)
【文献】 実開平04−122451(JP,U)
【文献】 特開平04−008474(JP,A)
【文献】 特開2010−023164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00−7/30
B24B41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの研削面を非真円形状に研削するためのプロファイル研削盤であって、
前記ワークを保持するとともに該ワークを所定の回転軸回りに回転させるワーク回転部と、
前記ワークを研削する砥石と、該砥石を回転させるモータとを有する加工装置と、
前記加工装置の砥石を前記ワークの研削面に対して切り込み送りさせるとともに、該砥石を該ワークの前記回転軸回りの回転動作に同期して往復移動させることでプロファイル研削を行う砥石移動部と、
前記プロファイル研削中に、前記砥石の前記ワークに対する切り込み方向の相対加速度が速くなるように、前記ワーク回転部を移動させるワーク移動部とを備えたことを特徴とするプロファイル研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロファイル研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークの円筒状の内面又は端面を異形状に加工するためのワークの加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ワークの軸心を中心にしてワークを回転させるとともに、ワークの内径より小径の砥石をワークの軸心上の所定の位置で回転させる一方、ワークの内面又は端面に対して加工しようとする所定の異形状を示す加工形状情報に基づいて、砥石をワークの軸心方向と直角の方向に相対移動して、ワークの内面又は端面を異形状に研削することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−023164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プロファイル研削を行う際には、ワークの回転速度が速いほど、砥石によって研削される切り屑が薄くなるため、砥石やワークに加わる負荷が小さくて済み、加工面の見た目も向上する。
【0006】
しかしながら、従来のワークの加工装置では、砥石を切り込み送りする駆動装置の性能に応じて切り込み方向の加速度の上限が決定されてしまうため、砥石の加速度に合わせてワークの回転速度を遅くしなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、砥石のワークに対する切り込み方向の相対加速度を速くすることができるプロファイル研削盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークの研削面を非真円形状に研削するためのプロファイル研削盤を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、前記ワークを保持するとともに該ワークを所定の回転軸回りに回転させるワーク回転部と、
前記ワークを研削する砥石と、該砥石を回転させるモータとを有する加工装置と、
前記加工装置の砥石を前記ワークの研削面に対して切り込み送りさせるとともに、該砥石を該ワークの前記回転軸回りの回転動作に同期して往復移動させることでプロファイル研削を行う砥石移動部と、
前記プロファイル研削中に、前記砥石の前記ワークに対する切り込み方向の相対加速度が速くなるように、前記ワーク回転部を移動させるワーク移動部とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、砥石移動部によって砥石をワークに向かって移動させるとともに、ワーク移動部によってワークを砥石に向かって移動させるようにしている。これにより、砥石のワークに対する切り込み方向の相対加速度は、砥石移動部の加速度とワーク移動部の加速度との和と見なすことができる。その結果、砥石のワークに対する追従性が向上するので、ワーク回転部の回転速度を速くすることができ、砥石やワークに加わる負荷を小さくするとともに、加工面の見た目を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、砥石移動部によって砥石をワークに向かって移動させるとともに、ワーク移動部によってワークを砥石に向かって移動させ、砥石のワークに対する切り込み方向の相対加速度を速くすることで、ワーク回転部の回転速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るプロファイル研削盤の構成を示す斜視図である。
図2】砥石とワークとの位置関係を示す平面図である。
図3】ワークを回転させたときの図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
図1に示すように、プロファイル研削盤10は、いわゆるNC工作機械であり、数値制御によって自動的に研削加工を行うことが可能となっている。このプロファイル研削盤10では、中央部に非真円形状の研削孔11aが形成された金属製のワーク11が加工対象とされており、ワーク11の研削孔11aの内周面の研削加工を行う。
【0015】
なお、本実施形態では、ワーク11として、非真円形状の研削孔11aが形成されたハウジング、カムリング、オイルポンプ等を想定しているが、外周面が非真円形状に形成されたカム等であってもよい。
【0016】
プロファイル研削盤10は、左右方向に延びるベッド12と、ベッド12の奥側で上下方向に延びるコラム13とを備えている。
【0017】
ベッド12の上面には、ワーク11を左右方向(切り込み方向ともいう)に沿って移動させるワーク移動部15が設置されている。ワーク移動部15は、切り込み方向に平行なA軸に沿って延びるA軸ボールネジ16と、A軸ボールネジ16の右端部に設けられたA軸サーボモータ17と、A軸ボールネジ16の回転に伴って高精度に位置決めされながら横軸Aに沿って移動可能なA軸テーブル18とを有する。
【0018】
A軸テーブル18には、ワーク回転部20が設置されている。ワーク回転部20は、チャック21と、C軸サーボモータ22とを有する。チャック21には、電磁石(図示省略)が内蔵されており、電磁石に電流を供給することで、チャック21の上面に載置されたワーク11が固定されるようになっている。
【0019】
チャック21は、ベアリング(図示省略)を介してA軸テーブル18に回転可能に支持されており、上下方向に延びる回転軸としてのC軸を中心に回転する。C軸は、A軸と交わるように設けられている。チャック21は、C軸サーボモータ22と連結されており、C軸サーボモータ22によって回転駆動される。
【0020】
コラム13の前面には、砥石32を鉛直方向に沿って移動させる鉛直方向移動部25が設置されている。鉛直方向移動部25は、鉛直方向に平行なZ軸に沿って延びるZ軸ボールネジ26と、Z軸ボールネジ26の上端部に設けられたZ軸サーボモータ27と、Z軸ボールネジ26の回転に伴って高精度に位置決めされながらZ軸に沿って移動可能なZ軸テーブル28とを有する。
【0021】
Z軸テーブル28の前面には、加工装置30の砥石32を左右方向(切り込み方向ともいう)に沿って移動させる砥石移動部40が設置されている。砥石移動部40は、切り込み方向に平行なX軸に沿って延びるX軸ボールネジ41と、X軸ボールネジ41の右端部に設けられたX軸サーボモータ42と、X軸ボールネジ42の回転に伴って高精度に位置決めされながらX軸に沿って移動可能なX軸テーブル43とを有する。
【0022】
加工装置30は、ワーク回転部20のチャック21に支持されたワーク11の研削面(研削孔11aの内周面)に対して研削加工を行うものである。加工装置30は、上下方向に延びる工具軸31と、工具軸31の先端部に取り付けられた砥石32と、工具軸31の基端部に設けられて工具軸31及び砥石32をJ軸(軸心)回りに回転駆動させるモータ33とを有する。
【0023】
コラム13には、上述した駆動制御に関連するNC加工制御部19が設置されている。NC加工制御部19は、コンピュータやこれに実装されたプログラム等のソフトウエアで構成されている。ワーク移動部15、ワーク回転部20、鉛直方向移動部25、加工装置30及び砥石移動部40の各モータは、NC加工制御部19と電気的に接続されており、研削加工時には、これらの速度や位置、作動タイミング等がNC加工制御部19によって数値制御される。
【0024】
以下、本実施形態に係るプロファイル研削盤10を用いてワーク11の研削孔11aをプロファイル研削する手順について説明する。まず、ワーク移動部15及び砥石移動部40は、A軸サーボモータ17及びX軸サーボモータ42を駆動制御することで、平面視でワーク11の研削孔11aと砥石32とが重なり合う位置にA軸テーブル18及びX軸テーブル43を移動させる。
【0025】
鉛直方向移動部25は、Z軸サーボモータ27を駆動制御することで、Z軸テーブル28を下降させ、砥石32をワーク11の研削孔11a内に配置させる。
【0026】
ワーク回転部20は、C軸サーボモータ22を駆動制御することで、チャック21とともにワーク11をC軸回りに回転させる。
【0027】
次に、砥石移動部40は、ワーク11がC軸回りに回転している間に、X軸サーボモータ42を駆動制御することで、砥石32をワーク11の研削面に対して切り込み送りさせる(図2参照)。
【0028】
一方、ワーク移動部15は、砥石移動部40によって砥石32をワーク11に対して切り込み送りさせている間に、A軸サーボモータ17を駆動制御することで、ワーク11を砥石32に向かって移動させる。これにより、砥石32のワーク11に対する切り込み方向の相対加速度を速くすることができる。
【0029】
また、砥石移動部40は、ワーク11のC軸回りの回転動作に同期して、砥石32を切り込み方向に往復移動させる(図3参照)。これにより、ワーク11の研削孔11aの内周面が、予め設定された非真円形状となるようにプロファイル研削される。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るプロファイル研削盤10によれば、砥石32のワーク11に対する切り込み方向の相対加速度は、砥石移動部40の加速度とワーク移動部15の加速度との和と見なすことができる。その結果、砥石32のワーク11に対する追従性が向上するので、ワーク回転部20の回転速度を速くすることができ、砥石32やワーク11に加わる負荷を小さくするとともに、加工面の見た目を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明は、砥石のワークに対する切り込み方向の相対加速度を速くすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0032】
10 プロファイル研削盤
11 ワーク
15 ワーク移動部
20 ワーク回転部
30 加工装置
32 砥石
33 モータ
40 砥石移動部
図1
図2
図3