(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
1.一般式(1)で表される(メタ)アクリレート
本発明は一般式(1):
【0018】
【化3】
(式中、R
1a、R
1b、R
2a及びR
2bは、同一又は異なって、炭化水素基、基:−OR
5a、基:−SR
5b、基:−(CO)−R
5c、基:−(CO)−O−R
5d、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又は置換アミノ基を示す。R
5a、R
5b、R
5c及びR
5dは、炭化水素基を示す。m1a、m1b、m2a及びm2bは同一又は異なって、0〜4の整数を示す。R
3a及びR
3bは、同一又は異なって、アルキレン基を示す。na及びnbは同一又は異なって1以上の整数を示す。R
4a及びR
4bは、同一又は異なって、水素又はメチル基を示す。)
で表される、(メタ)アクリレートに関する。
【0019】
前記R
1a、R
1b、R
2a及びR
2bは、同一又は異なって、炭化水素基、基:−OR
5a、基:−SR
5b、基:−(CO)−R
5c、基:−(CO)−O−R
5d、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又は置換アミノ基を示す。
【0020】
炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基等を挙げることができる。
【0021】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。
【0022】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基を挙げることができる。
【0023】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げることができる。
【0024】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数1〜4のアルキル基を挙げることができる。
【0025】
アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基等の炭素数1〜12のアルケニル基、好ましくは炭素数1〜8のアルケニル基を挙げることができる。
【0026】
シクロアルケニル基としては、シクロヘキセニル基等の炭素数5〜8のシクロアルケニル基を挙げることができる。
【0027】
アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜12のアルキニル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキニル基を挙げることができる。
【0028】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。これらの中でも、耐熱性の観点よりフッ素原子であることが好ましい。
【0029】
置換アミノ基としては、エチル基等のアルキル基等の基が1又は2個(好ましくは2個)置換したアミノ基を挙げることができる。
【0030】
m1a、m1b、m2a及びm2bは同一又は異なって、0〜4の整数を示す。好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0031】
R
5a、R
5b、R
5c及びR
5dは、炭化水素基を示す。R
5a、R
5b、R
5c及びR
5dにおける炭化水素基としては、上記R
1a、R
1b、R
2a及びR
2bにおいて例示した炭化水素基を挙げることができる。
【0032】
R
3a及びR
3bは同一又は異なって、アルキレン基を示す。R
3a及びR
3bは、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタジイル基、テトラメチレン基等の炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることがさらに好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0033】
na及びnbは同一又は異なって1以上の整数を示す。好ましくは1〜14の整数であり、より好ましくは1〜10の整数である。
【0034】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、9,9’−ビアントラセン骨格を有しており、硬化物の作製に使用した場合に、得られる硬化物の屈折率等の物性を向上することが期待される。
【0035】
また、9,9’−ビアントラセン骨格は、2つのアントラセン部位が互いに直交している特徴的な構造を有し、結晶中において密なパッキング構造を有することが予測される。そのため、本発明の一般式(1)の化合物を用いた高分子化合物において、高い耐熱性を示すことが期待される。
【0036】
2.(メタ)アクリレートの製造方法
一般式(1)で表される(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(2):
【0037】
【化4】
(式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、m1a、m1b、m2a、m2b、na及びnbは、上記と同じ)
で表される化合物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とを反応させることにより製造できる。
【0038】
前記式(2)で表される化合物との反応に使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体において、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のC1−4アルキル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸ハライド(例えば、(メタ)アクリル酸クロライド等)、(メタ)アクリル酸無水物等が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル酸又はその誘導体の割合は、下記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、2〜20モル、好ましくは2.2〜10モル、さらに好ましくは2.5〜5モル程度であってもよい。
【0040】
反応では、適宜、触媒(酸触媒、塩基触媒等)を使用してもよい。酸触媒としては、エステル化酸触媒であれば特に限定されず、例えば、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸等)、有機酸[スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアレーンスルホン酸等)等]等が例示でき、固体化酸[担体に酸(硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸、有機酸)を担持させた固体化酸(固体リン酸等)]、陽イオン交換樹脂、金属酸化物(ZnO等)、金属ハロゲン化物(CuCl
2等)、金属塩系触媒[金属硫酸塩(NiSO
4等)、金属リン酸塩(Zr、Ti等の遷移金属のリン酸塩等)、金属硝酸塩(Zn(NO
3)
2・6H
2O等)等]、天然鉱物(酸性白土、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト等)等の固体酸触媒も含まれる。酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
塩基触媒としては、例えば、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等)、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等)等の無機塩基;アミン類[例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、ピリジン等の複素環式第3級アミン)等]等の有機塩基等が例示できる。塩基触媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
触媒(酸触媒、塩基触媒等)の使用量は、触媒の種類にもよるが、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モル、さらに好ましくは0.1〜3モル程度であってもよい。
【0043】
また、上記反応は、必要に応じて、重合禁止剤(熱重合禁止剤)の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、ヒドロキノン類(例えば、ヒドロキノン;ヒドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)等のヒドロキノンモノアルキルエーテル等)、カテコール類(例えば、t−ブチルカテコール等のアルキルカテコール等)、アミン類(例えば、ジフェニルアミン等)、2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−1−オキシル等が例示できる。重合禁止剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0044】
重合禁止剤の使用量は、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜8重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
【0045】
反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(有機溶媒)としては、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、アニソール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン類等)等が挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、前記触媒が液体である場合、前記触媒を溶媒として使用してもよい。
【0046】
反応温度や反応時間は、使用する(メタ)アクリル酸又はその誘導体の種類に応じて適宜選択できる。反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度である。
【0047】
反応は、還流しながら行ってもよく、副生する水やアルコール類を除去しながら行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガス等)中で行ってもよく、常圧、加圧下又は減圧下で行ってもよい。特に、減圧下で反応させると、着色を低減したり、反応時間を短縮できる。
【0048】
上記式(2)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、下記反応式:
【0049】
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子を示し、R
3はR
3a又はR
3bを示し、nはna又はnbを示す。R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、m1a、m1b、m2a、m2b、na及びnbは前記に同じ。)
の反応のように、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とを、不活性雰囲気下、塩基存在下、反応させることにより、一般式(2)で表される化合物を製造することができる。特に、一般式(2)においてna=nb=1の化合物(AD−EO)では、原料の入手容易性から当該方法が好ましい。なお、一般式(3)で表される化合物は、特開2013−107847号公報に記載された方法等により公知化合物から製造することができる。
【0050】
当該反応で用いる塩基としては、有機塩基及び無機塩基を併用して用いる。本発明において、有機塩基及び無機塩基を組み合わせて用いることで、副反応である一般式(4)の化合物の脱ハロゲン化水素化反応に優先して当該反応を進行させることができる。
【0051】
有機塩基としては、トリアルキルアミン(トリエチルアミン等)等のアルキルアミン、ピリジン等の含窒素芳香族塩基等が好ましく、特にトリエチルアミンが好ましい。無機塩基としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物が好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
【0052】
上記Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0053】
当該反応は溶媒を用いても用いなくともよい。当該反応で用いる溶媒の具体例としては、トルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。
【0054】
当該反応は、不活性雰囲気下で行われる。例えば、アルゴン雰囲気下、窒素雰囲気下等で反応を行うことができる。必要に応じて、液体の原料や溶媒に不活性ガスをバブリングしておき、液体中に残存する空気を予め除去することが好ましい。
【0055】
当該反応における一般式(4)で表される化合物の使用量は、一般式(3)の化合物 1モルに対して2モル以上であればよく、過剰量を用いてもよい。一般式(4)の化合物が液体である場合、溶媒量の一般式(3)の化合物を用いることもできる。
【0056】
当該反応における有機塩基の使用量は、一般式(3)の化合物 1モルに対して、2モル以上であればよく、過剰量を用いてもよい。具体的には、一般式(3)の化合物 1モルに対して、5〜100モルであることが好ましく、5〜20モルであることがより好ましい。
【0057】
当該反応における無機塩基の使用量は、一般式(3)の化合物 1モルに対して、2モル以上であればよく、過剰量を用いてもよい。具体的には、一般式(3)の化合物 1モルに対して、5〜50モルであることが好ましく、10〜30モルであることがより好ましい。
【0058】
当該反応における反応温度は、例えば、室温〜100℃で行うことができる。反応時間は反応が十分に進行する程度であればよい。
【0059】
一般式(4)で表される化合物、有機塩基及び無機塩基は、一度に加えてもよいが、複数回に亘って段階的に加えてもよい。
【0060】
本発明の一般式(1)においてna及び/又はnbが2以上である化合物は、上記反応のように、対応する一般式(2)で表される化合物を用いて製造してもよい。また、一般式(1)においてna及びnbが1である化合物を得た後、アルキレングリコール鎖を伸長することによっても得ることができる。
【0061】
アルキレングリコール鎖を伸長する方法としては、既知の方法を用いればよい。具体的には、例えば、特開2001−139651号公報に記載の方法等を挙げることができる。
【0062】
なお、生成した化合物(前記式(1)で表される化合物及び/又は前記式(2)で表される化合物)は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
【0063】
3.(メタ)アクリル系樹脂及びその硬化物
本発明の化合物は、高い屈折率を有することが期待される。従って、本発明の化合物を用いて高屈折率である熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂が作製される。熱又は光硬化性樹脂は、通常、重合開始剤等を含む樹脂組成物を構成してもよい。本発明は、このような前記化合物を含む樹脂組成物をも包含する。
【0064】
本発明の熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂(熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂成分)は、前記一般式(1)の化合物のみで構成してもよく、また、他の多官能性(メタ)アクリレートと組み合わせて用いてもよい。熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂を本発明の化合物のみで構成すると、硬化物に9,9’−ビアントリル骨格を高濃度で導入することができる。他の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ジ乃至テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(なお、以下において、例えば、「ジ乃至テトラエチレングリコール」等というとき、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含む)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ乃至テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート}、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート[例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート等のトリ又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート等]、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、前記式(1)で表される化合物の範疇に属さないフルオレン骨格を有する多官能性(メタ)アクリレート{9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等の9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類;9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン等の9,9−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)エトキシフェニル]フルオレン類等}等が挙げられる。これらの他の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
他の多官能性(メタ)アクリレートの割合は、前記式(1)で表される化合物100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは2〜60重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0066】
なお、前記樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤、希釈剤等を含んでいてもよい。
【0067】
重合開始剤には、熱重合開始剤や光重合開始剤が含まれる。熱重合開始剤と光重合開始剤とを組み合わせてもよい。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイド等)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド等)等]、過酸エステル類(過酢酸t−ブチル等)、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類等の有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等]、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等のアゾ化合物等が含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0068】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類等)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1等}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン等)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン等)、キサントン類等が例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミン等)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル等]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル等]等のジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)等のビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のジアルキルアミノベンゾフェノン等}等の慣用の光増感剤等が挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0070】
重合開始剤(及び光増感剤の総量)の使用量は、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜15重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
【0071】
希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)が含まれる。反応性希釈剤としては、特に限定されず、重合性単量体、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキル、好ましくは(メタ)アクリル酸C1−10アルキル等]、メタアクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキル等]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニル等]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート等]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸C1−4アルコキシアルキル等]、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリルアミド等)、アミノアルキル(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等)、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、非(メタ)アクリル系モノマー(例えば、芳香族ビニル系単量体(スチレン等)等)等を好適に使用できる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
反応性希釈剤の割合は、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
【0073】
溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;カルボン酸エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル等)、炭酸エステル(炭酸プロピレン等)等のエステル類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が例示できる。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
溶媒の割合は、例えば、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、1〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
【0075】
また、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)等を含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0076】
本発明には、前記式(1)で表される化合物(前記混合物を含む。以下同じ)又は前記樹脂組成物の硬化物も含まれる。このような硬化物は、前記式(1)で表される化合物又はその樹脂組成物を硬化処理することにより製造できる。例えば、フィルム状の硬化物は、基材に対して、前記式(1)で表される化合物又はその樹脂組成物を塗布して塗膜(又は薄膜)を形成した後、硬化処理を施すことにより製造してもよい。なお、フィルム状の塗膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm程度であってもよい。また、三次元的形状(例えば、レンズ状等)の硬化物は、注型成形等を利用して製造できる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
なお、各種特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
【0079】
(NMR)
NMRスペクトルは、Bruker BIOSPIN社製 AVANCE III HD (300MHz)を用いて測定した。
【0080】
(HPLC)
島津製作所(株)製HPLCシステムを用いて、
カラム:東ソー社製TSKgel ODS-80T
M (TOSOH) 4.6 mm X 25 cm
測定条件:水/アセトニトリル= 20/80、温度40 ℃、流量 1.0 mL/min
の条件にて測定した。
【0081】
参考例1
10,10’−ジ−(2−ヒドロキシエトキシ)−9,9’−ビアントリル(以下において、「AD-EO」とする)の製造
攪拌機、アルゴンインレット及び温度計を備えた、1Lセパラブルフラスコ中に、9,9’−ビアントラセン−10,10’(9H,9’H)−ジオン (15.2g、0.039mol)及び2−クロロエタノール(300mL)を仕込み、30分間アルゴンをバブリングした。その後、アルゴン雰囲気下で、攪拌しながら、トリエチルアミン(30mL)及び水酸化ナトリウム(顆粒、20.0g)を加え、50℃で40分間加熱した。その後、70℃にて、2時間加熱した後、追加の2−クロロエタノール(50mL)、トリエチルアミン(5mL)及び水酸化ナトリウム(10g)を加え、1時間加熱攪拌した後、さらに、追加の2−クロロエタノール(50mL)、トリエチルアミン(5mL)及び水酸化ナトリウム(10g)を加え、15時間加熱攪拌した。400mLの水を反応混合物に加えて、沈殿物を濾取し、メタノール(100mL)で洗浄した後、得られた固体を真空乾燥した。トルエンを用いて乾燥後の固体を再結晶し、AD-EO(13.3g、収率71%、薄黄色固体)を得た。
【0082】
AD-EOの
1H−NMRスペクトルは以下のとおりである。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ2.54 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 4.33 (m, 4H), 4.56 (t, J = 4.2 Hz, 4H), 7.12 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H) 7.20 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 7.50 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 8.52 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H)。
【0083】
実施例1
10,10’-ジ-(2-アクリロイルエトキシ)-ビアントリル(以下において、「AD-EO-A」とする)の製造
【0084】
【化6】
温度計、メカニカルスターラーを備えた1Lセパラブルフラスコ中で、AD-EO(9.50 g, 20.0 mmol)及びトリエチルアミン(7.1 g, 70 mmol)のTHF(500 mL)溶液を室温で調製した。この溶液を氷水浴で冷却し、塩化アクリロイル(5.4 g, 60 mmol)を、反応温度が10℃を超えない速度で滴下した。滴下が完了した後、氷水浴を外し、さらに26時間撹拌した。追加の塩化アクリロイル(2.7 g, 30 mmol)及びトリエチルアミン(3.1 g, 31 mmol)を加え、さらに18時間撹拌した。反応混合物に水(500 mL)を加え、ロータリーエバポレータにて、THFを留去した。生じた固体をろ取し、真空オーブン中、60℃で終夜乾燥させ、AD-EO-A(淡黄色固体、10.1g, 収率 87%:HPLC純度 92%)を得た。
【0085】
AD-EO-Aの
1H−NMRスペクトルは以下のとおりである。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ4.69 (dd, J = 3.5, 5.4 Hz, 4H), 4.83 (dd, J= 3.5, 5.4 Hz, 4H), 6.00 (dd, J = 1.4, 10.4 Hz, 2H), 6.35 (dd, J = 10.4, 17.3 Hz,2H), 6.58 (dd, J = 1.4, 17.3 Hz, 2H), 7.10 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H) 7.16 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 7.48 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 8.50 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H).
【0086】
実施例2
10,10’-ジ-(2-メタクリロイルエトキシ)-ビアントリル(以下において、「AD-EO-MA」とする)の製造
【0087】
【化7】
メカニカルスターラー、Dean-Starkトラップを備えた500 mLセパラブルフラスコ中にて、トルエン(250 mL)中、AD-EO(4.74 g, 10 mmol)、メタクリル酸(8.60 g, 100 mmol)、p-トルエン酸一水和物(0.88 g, 4.6 mmol)及びモノメチルヒドロキノン(ミクロスパーテル 1さじ)の混合物を、水を共沸させ除きながら、4時間還流した。追加のメタクリル酸(4.70 g, 55 mmol)を加え、さらに4時間還流した。加熱をやめ、放冷し、不溶物をろ過にて除いた。得られたろ液を、200 mLの10%NaOH水溶液(200 mL)にて洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。そのろ液を濃縮し、白色の固体を得た。この固体を2-プロパノール/トルエン(5/1 v/v, 150 mL)にて再結晶し、結晶をろ取した。この結晶を真空乾燥(70℃)し、AD-EO-MA(白色固体、 5.00 g, 収率 82%)を得た。
【0088】
AD-EO-MAの
1H−NMRスペクトルは以下のとおりである。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ2.07 (s, 6H), 4.68 (dd, J = 3.2, 5.4 Hz, 4H), 4.79 (dd, J = 3.2, 5.4 Hz, 4H), 5.69 (t, J = 1.5 Hz, 2H), 6.28 (s,2H), 7.07 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H) 7.12 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 7.46 (t, J = 7.5 Hz, Ar, 4H), 8.50 (d, J = 8.6 Hz, Ar, 4H).
(薄膜の作製)
AD-EO-A(0.20 g)を1,1,2,2―テトラクロロエタン(9.80 g)に溶解した。この溶液にIrgacure 184 (BASF社製)(5 mg)を加えた。この溶液を、水切放ガラス基板上に、スピンコート(500 rpm, 5 秒、その後、1000 rpm, 5秒)し、薄膜を形成した。
【0089】
(硬化膜の作製)
上記薄膜を、UV照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)製)を用いて、500mJ/cm
2でフィルムに光照射し、硬化膜を作製した。
【0090】
上記硬化膜の膜厚、及び屈折率を大塚電子(株)製FE−3000を用いて測定したところ、膜厚は400−700μmであり、589nmにおける屈折率は、1.674であった。